Tony Cartalucci/Brian Berletic

2026年5月 3日 (日)

ヨーロッパとアジアでの覇権を目指すアメリカのエネルギー覇権戦争

Brian Berletic
2026年5月3日

 明らかな軍事的後退にもかかわらず、アメリカによる対イラン戦争は、世界のエネルギーの流れを再構築し、ワシントンの地政学的影響力強化を目的とする広範な戦略の可能性がある。

 

 表面上、アメリカの対イラン戦争は、アメリカ軍事力の限界を示し、軍事産業能力の限界を更に露呈させた、壊滅的な戦術的・戦略的失敗のように見える。

 だが、ウクライナで、ロシアとの代理戦争が依然続いているのと同様に、標的国を圧倒的軍事力で制圧できない事実は、他の手段によって、地政学的な狙いをアメリカが依然推進している多くの方法から人々の注意をそらしてしまう。

 ウクライナでは、ウクライナ代理勢力への支援を通じてロシア軍を打ち負かすことにアメリカは完全に失敗した。だが、アメリカはこの戦争を利用して、費用のかかる長期にわたる高強度紛争にロシアを巻き込み、ヨーロッパ以外の地域、特に2024年のシリア崩壊に関して、ロシアの国益を明らかに損なわせた。

 確かにアメリカは軍事力と軍事産業基盤の面で増大する課題に直面しているが、軍事力だけでなく経済力や金融力も含む多領域戦争を用いて、あらゆる領域における覇権を追求している。

 またこの戦争は、ヨーロッパを安価で信頼性が高く豊富なロシア・エネルギー供給から切り離すのに成功し、ヨーロッパをアメリカ・エネルギーへの依存度を高めさせ、おそらく不可逆的なものにしようとしている。

 アメリカ・エネルギーへの依存は、明らかにアメリカ・エネルギー企業に経済的利益をもたらすだけでなく、欧州に対するワシントンの戦略的影響力、ひいては支配力を強化することにもつながる。そして、この支配力は、ロシアに対抗する欧州統一戦線の構築に効果的に利用されている。

 同様に、アメリカは対イラン戦争を利用して、中東全域からアジアへのエネルギー輸出を締め付け、アジアを安価で安定した豊富なガスと石油から切り離し、アメリカ・エネルギーへの依存状態に陥らせようとしている。こうしてアメリカは、アジアに対する戦略的影響力を獲得し、中国に対する統一戦線を構築しようとしているのだ。

 戦争によって、ヨーロッパをロシア・エネルギーから切り離す計画があった

 2019年にランド研究所が発表した「Extending Russia: Competing from Advantageous Ground(ロシアの手を広げさせる:有利な立場からの競争)」と題する論文で、ロシアの「手を広げさせ」させて、冷戦終結時のようなソ連崩壊を引き起こす可能性がある数々の「経済的」「地政学的」措置が提示されていた。

 「経済措置」として「石油輸出の妨害」「天然ガス輸出の削減とパイプライン拡張の妨害」「制裁措置の実施」「ロシアからの頭脳流出の促進」などを同文書は挙げている。

 本稿ではまず、これらの措置を実施する主要方法の一つは、アメリカの石油・ガス生産を拡大し、欧州への輸出を増やすことだと主張する。

 だが「成功の可能性」と題する節で、論文は下記の通り明確に認めている。  
欧州におけるロシア産ガスの平時消費量削減成功の可能性は中程度から低程度だ。ロシア依存から脱却するには費用がかかり、プロジェクトの実現は困難かもしれない。
 当時、アメリカは既にLNG輸出施設に投資し、欧州市場を標的にLNGを輸出していたことを忘れてはならない。しかも、アメリカの政策立案者たちは、そうすることに財政的にも経済的にも何の利点もないと認めていたにもかかわらずだ。

 だが、この文書はまだ完成には程遠かった。「地政学的措置」の項目で、文書は第一に「ウクライナへの殺傷兵器提供」を挙げている。

 同論文は、以下の点を認めている。  
「ウクライナへのアメリカの支援拡大、特に殺傷能力のある軍事支援は、ドンバス地域を維持するためのロシアの人的・経済的費用を増大させる可能性が高い。分離主義者へのロシアの支援強化とロシア軍の増派が必要になり、結果として支出の増加、装備の損失と、ロシア側死傷者の増加につながる。後者については、ソ連がアフガニスタンに侵攻した時と同様、ロシア国内で大きな論争を巻き起こす可能性がある。」
 言い換えれば、アメリカによるウクライナへの殺傷兵器供与(これはトランプ政権の一期目にアメリカが始めたことだ)は、アメリカがウクライナで、ロシアとの戦争を意図的に引き起こそうとしていることを意味する。

 その結果として起きる戦争は、ロシアにとって軍事的に大きな負担をもたらすだけでなく、ロシアの石油・ガス輸出の削減・阻害、およびアメリカLNG輸出の拡大に対する最大の障害である「平時」を、終わりのない戦争へと明らかに変えてしまう。

 実際、2014年以降、ロシア経済を標的とした制裁が始まった一方、アメリカがロシア国境沿いのウクライナを軍事的に強化する政策によって引き起こされたウクライナ戦争は、ノルド・ストリーム・パイプライン破壊と、ロシアのエネルギー輸出に対して益々厳しくなる制裁をもたらし、それまで非合理的だったアメリカからのLNG輸入をヨーロッパにとって不可欠なものにした。

 エネルギー支配のバランスを更にアメリカに有利に傾けるために、2025年後半に、ロシアの石油施設やタンカーに対するウクライナ・ドローン攻撃作戦を強化していたのは、アメリカ中央情報局(CIA)と米軍だったとニューヨーク・タイムズが報じた

 アメリカが引き起こした戦争は、平時には安価で信頼性が高く、豊富なロシアのエネルギー輸出からヨーロッパを切り離す絶好の機会になった。この切り離し過程は何年もかかり、いまだに完全実施はされていないものの成功を収めている。そのため、アメリカが中東やアジアに関し同様の成功を再現しようと考えていないとは、ほとんど考えられないほどだ。

 中国を締め付ける

 数十年にわたるアメリカ外交政策文書は、選択肢を議論し、政策を提案し、封鎖を通じて中国を経済的に締め付ける実際の兵器や軍事の組織的計画を導いてきた。封鎖は多くの場合、特にアジア太平洋地域を対象としていたが、世界中の海上交通の要衝や港湾も対象にしていた。

 2018年に海軍大学校が発表した「A Maritime Oil Blockade Against China – Tactically Tempting but Strategically Flawed(中国に対する海上石油封鎖 ― 戦術的には魅力的だが戦略的には欠陥がある)」と題された論文では、そのような政策が直面する障害と、それを克服するための様々な手段が列挙されている。

 同報告書は、マラッカ海峡などの要衝で中国への海上輸送を遮断する「遠隔封鎖」(中国の軍事力の大部分が及ばない範囲で実施される封鎖)に焦点を当てるだけでなく、中国がこれら要衝を迂回できるようにするために特別に構築された中国の「一帯一路」構想(BRI)プロジェクトを断ち切ることも論じていた。

 論文のある箇所では、ミャンマー・中国石油パイプラインについて論じている。このパイプラインにより、中国は中東のエネルギーをミャンマー沿岸の港湾施設で荷揚げし、ミャンマー国内を横断して中国南部の雲南省に直接輸送できる。

 論文は次のように示唆している。  
「遠隔地からの封鎖は、ミャンマーと中国を結ぶ石油パイプラインの遮断も必要とするだろう。このパイプラインは、ミャンマー沿岸部のチャウピューから中国南西部の雲南省まで、最終的には日量最大44万バレルの原油を輸送する可能性がある。チャウピューのターミナルでタンカーの荷揚げを阻止するには、海軍のプラットフォームを現地に留めておく必要はほとんど、あるいは全くない。紛争期間中は当該地域を立ち入り禁止区域に指定することができ、ミャンマー当局がこれに従わない場合、空爆、空中機雷、その他の武力行使により施設を無力化できる。要するに、米軍は、マラッカ海峡や、更に東にある他の要衝を回避し、他の海上侵入ルートを封鎖するために必要な戦力を中国が転用するのを阻止するため、中国が海上石油輸入のために利用する陸路を迅速に無力化できる可能性が高い。」
 単なる理論上の提案にとどまらず、アメリカは長年にわたり、ミャンマー中央政府と戦う武装勢力を支援してきた。これら武装勢力は、ミャンマー・中国間の石油パイプラインを繰り返し攻撃し、最近は、パイプラインが通過する地域を占拠しようと試みている。

 言い換えれば、アメリカは米中紛争が勃発するのを待ってから米軍の戦力でパイプラインを攻撃するのではなく、米中直接紛争が始まる前に、代理勢力を使って攻撃を仕掛けているのだ。こうした攻撃は、アメリカが中国に対する「遠隔封鎖」という概念を検討しただけでなく、既に段階的に実施すると決定している証拠だと言える。

 アメリカはパキスタンで同様のパイプラインや経済回廊を妨害する武装勢力を支援しており、同時にアメリカ自身もアジア太平洋地域での軍事的存在を拡大し続け、台湾近海と南シナ海での海上輸送を脅かしている。

 だが「遠隔封鎖」という概念は、アジア太平洋地域に限ったものではない。アメリカによるイラン攻撃は、中国から更に遠く離れた中東地域で事実上の封鎖を生み出している。

 この戦争は、イランとアメリカ双方による制限により、ホルムズ海峡を通る海上交通を阻害しただけでなく、アメリカによるイラン・エネルギー生産施設攻撃は、米軍を受け入れているペルシャ湾岸アラブ諸国のエネルギー生産施設への報復攻撃を招いた。

 地域全体のエネルギー生産量の減少に加え、ホルムズ海峡を通る海上交通の混乱が重なり、中東からのエネルギー輸入に依存している国々、特に中国を含むアジア諸国にとってエネルギー危機を引き起こしている。

 アジアと中東を切り離す

 Politicoなどの欧米メディアによると、パキスタン、ミャンマー、ベトナム、フィリピン、タイ、日本、韓国といったアジア諸国は、輸入エネルギーの50%から90%を中東から得ている。

 中国は輸入エネルギーの最大50%を中東から得ている。台湾では輸入エネルギーの60%以上を中東から得ている。

 アメリカが引き起こした新たな戦争により生産と輸出が混乱したため、アジア諸国は欧州ではなく、エネルギー需要を満たすため他地域に目を向けざるを得なくなった。

 アメリカは、欧州をロシアからのエネルギー輸入から意図的に切り離したのと同様に、アジア市場を特に標的としたLNG輸出施設の提案、投資、建設と稼働開始に何年も費やしてきた。この能力は既に一部稼働しており、アメリカ自身が中東で引き起こしたエネルギー危機や、今やアジア諸国を脅かしているこの危機を最大限に活用できる絶好のタイミングになっている。

 例えばベトナムのような国は選択肢は二つしか残されていない。数千万人の国民に調理用ガスなどの生活必需品を含むエネルギーを供給しないままにするか、中東からの輸入が途絶えた分を補うために、他に選択肢のない代替品を購入するかのどちらかだ。

 ベトナムの国営ガス大手は、アメリカから最大6万6000トンのLPG(液化石油ガス)を購入したと報じられている。これは中東からの4万4000トンを上回る量だ。なお同社がアメリカ産エネルギーを購入したのは今年が初めてだ。

 ベトナムは当然モスクワと緊密な関係にあり、エネルギー構成の一部をロシアから購入しているほか、中国からも石炭を輸入しているが、いずれもベトナムが依存していた中東からのエネルギー輸入の80%以上が現在途絶えている状況を直ちに補うだけの十分な能力はない。

 タイ、日本、韓国や台湾といった他の国々も同様に代替策を模索せざるを得なくなっている。ロシアに協力を要請し、不足分を補うことができた例もあるが、アメリカは意図的に自らを唯一の代替候補として位置づけている。

 近年、アメリカがアジア市場を標的に投資してきたLNG輸出プロジェクトは、提案および承認の初期段階で実行可能なビジネス・モデルを提示するのに苦労したことを指摘しておくべきだろう。これは、アメリカがロシアに対する代理戦争を開始するまで、欧州市場を標的にしたLNG輸出プロジェクトが抱えていた問題と同じだ。

 グレンファーン社によるアラスカLNGプロジェクトは、 2025年時点では「エネルギー安全保障」と「争いのない安全な航路」を主要セールスポイントとしていた。だが当時、アジアへのエネルギー輸出の流れを妨げるような競争が激化したり危険な航路は存在せず、このセールスポイントを正当化できる状況ではなかった。

 将来的に争いの対象となったり、安全が脅かされたりする可能性がある唯一の航路は、アメリカが数十年にわたり争い、安全を脅かす準備を進めてきた様々な海峡で、それはアジア太平洋地域だけでなく、中東のホルムズ海峡やそれ以外の地域にも及ぶ。

 もちろん、現在、アメリカによる対イラン戦争により、中東からのエネルギー輸出が阻害されているため、アラスカLNGのようなプロジェクトは、当初は採算の取れない事業計画だったものが、切実に必要とされ、かつ最適位置にあるエネルギー源へと変化した。これは、アメリカからヨーロッパへのLNG輸出と同様に、全て計画通りだ。

 ウォール・ストリート・ジャーナルの最近の記事「U.S. Energy Exports Hit Records as World Adjusts to a Closed Persian Gulf(ペルシャ湾閉鎖への世界の適応に伴い、アメリカのエネルギー輸出が記録を更新)」は「oil, and gas shipments have soared, but the U.S. will face obstacles turning wartime demand into a permanent boost(石油とガスの出荷量は急増したが、アメリカは戦時中の需要を恒久的増加につなげる上で障害に直面するだろう)」と指摘している。

 誤った前提は、アメリカによる対イラン戦争は、アメリカの石油・ガス出荷量の急増や「戦時需要」とは無関係で、これは単なる好都合な偶然に過ぎない。

 しかし、ランド研究所が2019年に明らかにしたように、ヨーロッパをロシアのエネルギーから切り離す政策提案は、「平時」には機能しないとしても 「平時」を「戦時」に変えることで機能させることが可能だ。

 それはアメリカがヨーロッパに対して行ったことと同じで、今アメリカは明らかにこの過程を繰り返し、アジアを標的にしている。

 ロシア、中国、イラン、そしてアジア諸国、特に南アジアと東南アジア諸国を含む他の独立諸国は、アメリカが仕掛けたこの危険な罠を慎重に回避し、ヨーロッパに強いられたようなアメリカへの完全なエネルギー依存を避ける必要があるだろう。

 アメリカによる政治的支配と、アメリカへのエネルギー依存の高まりによって、既にヨーロッパは恐らく回復不可能な政治的・経済的損害を被っている。

 同様に、アジアも、アメリカへのエネルギー依存の高まりによって弱体化し、アメリカによる政治的支配の可能性が遙かに高まり、今度はロシアではなく中国に対する統一戦線へと変貌させられ、アジアの人々や平和や繁栄を犠牲にして、アメリカのために戦争を遂行するために利用される危険性がある。

 確かにアメリカは軍事力と軍事産業基盤の面で増大する課題に直面してはいるが、軍事力だけでなく経済力や金融力も含む多領域戦争を用いて、あらゆる領域における支配を追求している。これは、多くの人が戦争と結びつける戦場という物理的空間だけでなく、政治空間と、最も重要な情報空間においても展開される。

 アメリカは、他の国々と比較して軍事力が弱体化しているにもかかわらず、それを回避し、世界各国の政治的支配、グローバル情報空間の独占と、今やエネルギーの兵器化拡大といった手段を活用する能力を繰り返し示してきた。

 アメリカは、アメリカ国内でのエネルギー生産と輸出と、ベネズエラ、ロシア、イランなどにおける代替エネルギー源への組織的攻撃や押収や破壊を通じて、エネルギーを兵器化している。

 多極化世界が、軍事力の領域だけでなく、アメリカが戦争を仕掛けている他の全ての領域においても、適切に組織化できるかどうかは、時が経ってみなければ分からない。

 Brian Berleticは、バンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/05/03/the-us-war-for-energy-dominance-seeks-dominance-over-europe-and-asia/

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 植草一秀の『知られざる真実』
高市内閣横暴を許さない

2026年5月 1日 (金)

アメリカがイランと戦争状態にある理由と、戦争が一時中断する可能性はあるものの終結しない理由

Brian Berletic
2026年4月28日
New Eastern Outlook

 イランに対するアメリカ侵略戦争に関する議論の多くは、アメリカが「イスラエルのために」イランと戦っているという神話など地域特有の要因に焦点を当てているが、この戦争を引き起こし、またこの戦争により進展してゆく遙かに現実的で重要な世界的要因が存在している。

 

 対イラン戦争は、中東地域と地域で生産・輸出される石油・ガスを完全支配しようとする数十年にわたるアメリカの計画の一環だ。これはエネルギーをアメリカ自身のために利用するためではなく、アメリカ自身や、アメリカが支配権を握ろうとしている国々や地域からのエネルギー生産と輸出に対するアメリカの独占を確立し強化するためだ。

 これには、最近では中南米のベネズエラも含まれる。2026年初頭にアメリカがベネズエラに対して行った侵略戦争や、ベネズエラ大統領誘拐や、残ったベネズエラ政府関係者の人質化により、ベネズエラから中国への石油輸出はほぼ即座に停止し、ベネズエラの石油資源による富はアメリカ企業に分配された。

 アメリカが「同盟国」に対し、しばしば「安全保障の保証」と呼ぶものは、実際は同盟国ではなく代理勢力である国々に対するアメリカの軍事占領や政治支配や統制を婉曲的に表現するものに過ぎない。

 アメリカがウクライナを通じてロシアに対して行っている侵略戦争は、ドローン使用を通じてロシアのエネルギー生産、貯蔵、輸出インフラに対する直接的戦争へと急速に拡大している。これらドローンはウクライナのものとされているが、ニューヨーク・タイムズは、実際には米中央情報局(CIA)と米軍が管理していることを明らかにした。

 同様に、アメリカは「分業」の下で、欧州の代理勢力に対し、ロシア・エネルギーを運ぶタンカーの海上追跡、阻止、拿捕を拡大するよう促しており、更にアメリカは、海上ドローンを使ってタンカーを攻撃する作戦も展開している。中央情報局(CIA)と米軍が、名目上「ウクライナ」作戦 とされるものを「強化」しているとニューヨーク・タイムズが指摘している

 イランに対する戦争と相まって、アメリカがアジア全般、特に中国へのエネルギー輸出を意図的に妨害、破壊、更には停止させている明確な世界的パターンが浮かび上がる。

 アメリカはおそらく、イラン政府を迅速に打倒して、地域に対する支配力を強化し、ロシアと中国を更に孤立させようとしていたのだろうが、より広範でグローバルな狙いは、イランからアジア、特に中国へのエネルギー供給だけでなく、中東全体からアジアと中国へのエネルギー供給を遮断することだった。

 対イラン・アメリカ攻撃の最新段階は、2月下旬に始まり、トランプ政権下の2025年、とバイデン政権末期の2024年にイランに対して行われた暴力の継続として、イラン・エネルギー生産施設を標的とするとともに、イランの主要エネルギー輸出施設、カーグ島攻撃を含んでいた。

 アメリカによるイラン・エネルギー生産施設攻撃は、イランによる報復攻撃につながり、クウェート、カタール、アラブ首長国連邦、サウジアラビアなど、アメリカのペルシャ湾岸アラブ諸国の代理勢力に対して攻撃が行われた。

 こうした暴力行為が複合的に作用した結果、地域全体の生産量が減少し、戦前と比較して中東全域から中国へのガスと石油のエネルギー輸出量が減少した。

 ロイター通信によると、2月下旬の戦闘開始から最近の停戦合意までの間に、この地域全体から中国へのエネルギー輸出は、中国の輸入需要全体の約52%から約30%に減少した 。

 2026年3月のPolitico記事は、中国がエネルギー面で中東地域に依存しているだけでなく、アジア全体がエネルギー輸入需要の70%から90%以上を中東からの輸入に依存していることを明らかにしている。特に、日本、韓国、フィリピンや台湾といったアメリカ代理勢力は、その傾向が顕著だ。

 中国を孤立させ、アジアを支配する

 以前アメリカはウクライナでの対ロシア戦争を扇動し、ノルド・ストリーム・パイプラインを破壊し、ロシアからのあらゆるエネルギー輸入に制裁を課し、更にロシアのエネルギー生産、貯蔵、輸出施設や、ロシア・エネルギーを運ぶタンカー自体を攻撃するなどして、ヨーロッパをアメリカのエネルギー輸出に依存させる政策をとったが、今度は中東からのエネルギーの入手を意図的に妨害して、中国とアジアの国々を標的に同様政策を推進している。

 イランに対する戦争は、ホルムズ海峡を通る海上交通のイランによる厳格な規制につながり、その後、アメリカは主にイランから中国へエネルギーを輸出する船舶を標的とする封鎖を実施した。アメリカがイランとの間の海上交通を完全に支配しているという主張は誤りだが、アメリカの封鎖により、イランから中国へ向かおうとする海上交通の少なくとも半分が引き返させられたり拿捕されたりしたとフィナンシャル・タイムズが報じた

 これは、この地域から中国へのエネルギー輸出総量が再び減少したことを意味し、アメリカはアジア、特に中国への地域からの輸出を更に削減するための多くの選択肢を温存している。

 一つの選択肢は、アメリカによる対イラン軍事侵略再開の脅威で、これにより、イランのエネルギー生産および輸出インフラに対する意図的な標的攻撃と広範な破壊と、アメリカがペルシャ湾岸の代理勢力として利用しているアラブ諸国のエネルギー生産施設に対するイランの報復攻撃が更に発生する可能性がある。

 アメリカによる対イラン戦争と地域への影響が明らかになりつつあることは、アメリカによるノルド・ストリーム・パイプライン破壊や、ロシアからヨーロッパへのエネルギーの流れに対する段階的な標的化、制裁、制限と似ており、アメリカ・エネルギー輸出だけが唯一の選択肢として残された。そして、アメリカが既存の、より安価で信頼性の高い代替手段を排除するまで、この選択肢は経済的に実行可能ではなかったのだ。

 アメリカの戦争は2024年末から今日まで続いており、終結の見通しは立っていない。アメリカ軍事侵略作戦の間には、わずか数ヶ月の比較的平穏な時期しかなく、中国やアジア諸国が中東から安価で安定したエネルギーを入手できる見込みは着実に薄れつつある。

 「偶然にも」アメリカは既に巨大なエネルギー生産・輸出産業の拡大に着手しており、特にアジア市場を標的にしている。

 2025年、アメリカに拠点を置くエネルギー企業グレンファーンとそのCEOブレンダン・デュバルは、アラスカで建設中の同社の新たなLNGプロジェクトが「競争のない安全な航路を通じて」アジアにエネルギーを輸出できる事実を繰り返し言及した

 当時、アメリカ自身が航路を争奪し、航路を危険なものにすることで、グレンファーンのアラスカLNGプロジェクトの実現可能性を高め、ひいてはアメリカ・エネルギー輸出能力全般の拡大を促進することになるという点は一切言及されなかった。

 グレンファーン社がLNG輸出入に関する専門知識を磨いてきたのは隣国ベネズエラに対するアメリカの制裁と、本来ならコロンビアにガスを供給するはずだったパイプラインの閉鎖によってのみ可能になったコロンビア・プロジェクトを通じてのことだった点に留意すべきだ。アメリカによるベネズエラでのパイプライン閉鎖があったからこそ、グレンファーン社によるテキサス産LNGのコロンビア輸入が経済的に意味を持つようになったのだ。

 同様に、アメリカが紛争をちらつかせ、実際紛争を起こして世界中の重要な海上交通の要衝を危険にさらす場合にのみ、LNGをアジアや、それ以外の地域に輸出することが経済的に意味を持つようになる。ちょうど、ノルド・ストリームが破壊され、遙かに安価で入手しやすいロシア・エネルギーに制裁が課された後、初めて、アメリカ産LNGをヨーロッパに輸出することが意味を持つようになったのと同じだ。

 本末転倒だが、それには理由がある

 2030年代初頭までに、アメリカはLNG輸出能力を倍増させ、韓国や日本といった主要アジア諸国や台湾の需要を満たせるようになると予想されている。だが、これもまた、より安価で信頼性の高い代替エネルギー源が市場に出回らない場合に限られる。

 これはつまり、アメリカは本質的に本末転倒なことをしているものの、最終的に本題に入った時に、アメリカだけが利益を得られるような理想的状況を整えていることだ。

 ヨーロッパが安価なロシア・エネルギー輸入ができなくなったのと同様、アジアにおけるアメリカ代理勢力が、エネルギー面でアメリカに完全依存するようになれば、それらの国々は、地域および世界におけるアメリカの地政学的野望の延長として、更に完全に変貌を遂げるだろう。

 ヨーロッパの場合と同様、アメリカの国益追求は、アジアにおけるアメリカの代理勢力の犠牲、地域全体の平和と安定の犠牲と、特に継続的な中国台頭の犠牲を伴うことになるだろう。これは、ロシアを標的にするためにヨーロッパが利用され、ロシアとヨーロッパの国々両方を犠牲にしてきたのと同じだ。

 アメリカがこれらのアジアの代理勢力を政治的に掌握し、その領土に米軍を駐留させ、更にエネルギー依存を強要していることに加え、最近のアメリカ上院公聴会では、日本、韓国、フィリピンといった国々が、この地域における、アメリカ軍事産業拠点へと変貌を遂げ、地球の裏側に位置する中国との戦争をアメリカが挑発する際に直面する「遠距離の厳しさ」を最小限に抑えるのに役立つことが明らかになっている。

 アジアにおけるアメリカ製兵器の製造工場や、アメリカ艦船修理を行うための港湾施設建設は既に始まっており、日本がパトリオット迎撃ミサイルを製造し、場合によって アメリカに送っているほか、韓国は米海軍貨物船の保守に関する契約を締結している

 こうした準備は、全てアメリカが避けられないと考えている中国との紛争に先立って行われている。そもそも、アメリカがロシア、イラン、ベネズエラや他の多くの国々と対立する根本的理由は、中国と直接対決する前に、まず中国を孤立させ、封じ込めることにあるのだ。

 欧州諸国やペルシャ湾岸アラブ諸国が、アメリカへの従属と、それぞれの地域におけるアメリカ侵略戦争受け入れと推進上の役割に支払っている代償を考慮すれば、日本、韓国、フィリピンも、中国とのいかなる対立に先立ち、自らを標的にしていると言える。

 アメリカが「同盟諸国」 に対して、しばしば「安全保障」と呼んでいるものは、実際は同盟国ではなく、代理勢力である国々に対するアメリカの軍事占領や政治的支配や統制を婉曲的に表現しているに過ぎない。ヨーロッパから中東、アジア太平洋地域に至るまで、代理勢力のグローバル・ネットワークを維持する狙いは、アメリカ外交政策にかかる全ての費用を他国に負担させ、全ての利益をアメリカが独占することにある。

 近未来から中期的に、アメリカが世界中で戦争をエスカレートさせ続ける可能性は避けられない。現在行われている戦争は、将来の中国との紛争に備えるために意図的に行われているからだ。このため、アメリカがロシアやイランと何らかの「和平」合意に達する可能性はほぼゼロに近い。

 アメリカの外交政策を推進する利害関係者(兵器産業、石油・ガス大手、ハイテク大手、自動車産業など)が、多極化で提供される代替案によって世界中で取って代わられるまで、また多極世界がアメリカの軍事侵略だけでなく、侵略につながる経済的強制や政治的干渉や支配に対しても十分な抑止力を生み出せるようになるまで、世界一極覇権継続という要求のために、アメリカは世界の平和、繁栄、安定を人質に取り続けるだろう。

 Brian Berleticは、バンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/04/28/why-the-us-is-at-war-with-iran-and-why-the-war-might-pause-but-wont-end/

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 東京新聞 朝刊 三面  
 米、イラン再攻撃検討か

 核合意まで港湾封鎖継続
 テヘラン大学、マランディ英文学教授 最新Youtube イラン・ミサイル攻撃でイスラエル軍戦闘機100機破壊の大打撃と主張。
Iran ACTIVATES 800 Fateh-110 — IDF Bases PARALYZED, 100 Jets MISSION-KILLED 46:01

2026年4月 5日 (日)

アメリカの対イラン戦争はアメリカの対多極主義戦争だ。

Brian Berletic
2026年4月3日
New Eastern Outlook

 2026年2月28日にアメリカがイランに対して開始した侵略戦争は多極世界を弱体化させ、解体するためにアメリカが起こした侵略行為の最新のものに過ぎない。

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 アメリカはイランという国家の存続と中東全体の安全保障を脅かしただけでなく、エネルギー輸出の混乱や破壊や、経済の安定性の急速な崩壊という形で、死と破壊は既に世界中に波及し始めている。

 アメリカはエネルギー自給自足を実現することで、ロシアのエネルギー輸出に制裁を課し、他の潜在的競争相手を全て掌握、妨害、あるいは破壊し、世界の多くの地域をアメリカのエネルギー独占体制に追い込んできた。

 これには、今年初め、アメリカがベネズエラに侵攻し、ベネズエラ大統領を拉致し、残った政府を人質に取り、石油を含むベネズエラ天然資源を公然と奪取し、アメリカ自身のために利用していることも含まれる。

 現在アメリカがイランに対して行っている侵略戦争は、イランのエネルギー生産を標的にしているだけでなく、地域紛争を引き起こし、ペルシャ湾全域のエネルギー生産に損害を与えたり、完全に破壊したりしている。

 残された課題は、世界規模でアメリカが死と破壊をもたらす能力が、中国や多極化世界の回復力や経済的、技術的、文明的な拡大能力を上回れるかどうかだ。

 中東におけるエネルギー生産と輸出の混乱または破壊を補うのに必要な量の石油とLNGをアメリカは全く生産していないため、これは世界的エネルギー不足を引き起こし、ひいては産業と消費者需要の崩壊につながる。

 これまでアメリカ覇権の及ばないところで共に発展を遂げてきた世界は、今やアメリカにより意図的に不安定化され、引きずり下ろされる事態に直面している。

 第一次世界大戦、第二次世界大戦後に自らが築き上げた世界秩序の中で競争する能力を失ったアメリカは、残された軍事力、経済力、財政力、政治力を用いて秩序を崩壊させ、崩壊後の瓦礫の中から再び「最強」の地位を築こうと決意したのだ。

 これは決して知られていない理論ではなく、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相も指摘している点だ。最近のインタビューで「中南米と中東で起きている出来事は、西側諸国が自らの支配の残滓を維持しようとする試みに直接起因する」とし「欧米諸国のエリート連中は、残された政治的・経済的資源を我が国との対立に注ぎ込み続けている」とラブロフ外相は述べている

 これは土壇場での計画などではなく、21世紀の大部分を、現在進行中のイランとの戦争だけでなく、ウクライナにおけるロシアとの代理戦争やアジア太平洋地域における中国包囲網の拡大にも備えることにアメリカは費やし、多極化の主要な柱全て、そしてその間の多くの要素を標的にしてきた。

 ペルシャへの道

 イランを包囲弱体化させるため、アメリカはブッシュJr.政権下の2001年に東のアフガニスタン、2003年に西のイラクにそれぞれ侵攻した。同政権下で、アメリカはイランとその地域同盟国(レバノン南部のヒズボラ、シリア、イエメンのアンサール・アッラーなど)に対する代理戦争を仕掛けるため、過激派軍の準備を開始した。

 オバマ政権時代、少なくとも2008年には、アメリカはアラブ世界各地の反体制派集団に、最終的に2011年のいわゆる「アラブの春」につながる訓練と装備提供の準備を開始した。

 ブッシュJr.前政権下で準備された過激派軍隊と、アメリカが仕組んだ抗議活動や準備された暴力行為は、地域的混乱を引き起こすための隠れ蓑として機能し、結果としてアメリカによるリビア、イエメン、シリアに対する戦争や代理戦争を引き起こし、これら三カ国全てが統一国家としての地位を失うことに繋がった。

 同じオバマ政権が2012年にいわゆる「イラン核合意」に署名した一方、2009年まで遡るアメリカ政策文書は、こうした外交を、戦争を回避するためではなく、戦争の口実として利用しようとしていた。

 ブルッキングス研究所が発表した「Which Path to Persia?(ペルシャへの道はどれか?)」と題する論文は「この場合の理想的シナリオは、アメリカと国際社会がイラン国民が支持するほど魅力的な一連の積極的誘因を提示するものの、イラン政権がそれを拒否するものだ」と指摘した上で、「そのような状況下で、アメリカ(またはイスラエル)は、自らの作戦を、怒りではなく悲しみから行ったものとして描くことが可能で、国際社会の少なくとも一部は、イランが非常に有利な取り引きを拒否したことで『自業自得』だと結論づけるだろう」と述べている。

 そしてまさにその通りになった。2018年、トランプ政権下で、アメリカはイランが合意条件に違反したと根拠なく非難した後、一方的に合意から離脱し、その後、現在アメリカがイランに対して行っている戦争に至るまでの過程で、イランに「最大限の圧力」をかけてきた。

 2024年、バイデン政権下でシリア政府が崩壊すると、シリアの高度な統合防空網が破壊され、イランへの空域回廊が出現し、ほぼ即座に2024年から2025年にかけて、そしてもちろん今年も、アメリカとイスラエルによる直接攻撃につながった。

 現在進行中の対イラン戦争は、アメリカの一極支配が必然的に取って代わられる前に、多極世界を不安定化させ、破壊するための、より広範な世界戦略の一環に過ぎない。

 拡張するロシア

 台頭する多極化のもう一つの中心的柱であるロシアは、冷戦終結以来、アメリカ主導のNATO拡大により包囲されてきた。

 21世紀を通じて、アメリカはロシア周辺諸国を組織的に不安定化させ、政治的に掌握しようと試みてきた。2000年のセルビア、2003年のジョージア、そして2001年と2004年のベラルーシとウクライナの掌握未遂などがその例だ。

 2003年にジョージアが占領されると、アメリカは直ちに同国を軍事化し、隣国ロシアに対する攻撃拠点へと変貌させた。そして2008年の戦争へと発展したが、欧州連合自身の調査で、この戦争はアメリカが支援するジョージアに引き起こされたと結論づけられている

 2014年までに、アメリカはウクライナも掌握することに成功し、2003年から2008年にかけてのジョージアよりも遙かに大規模な軍事化を直ちに開始した。これには、ウクライナ軍の再編成と訓練だけでなく、アメリカ中央情報局(CIA)によるウクライナ治安機関と情報機関の掌握と支配も含まれていた。

 2017年、トランプ政権下で、アメリカはウクライナへの武器供与を公然と開始した。これはおそらく最後の超えてはならない一線を越えたもので、ロシアは2008年のジョージア戦争のような戦争が再び勃発する前に先制攻撃を余儀なくされたが、その規模ははるかに大きく、より危険なものとなった。

 その結果起きた戦争は、ロシアの膨大な資源と注意力を費やし、シリアの安定を維持する能力を損ない、2024年のシリア政府崩壊の一因となり、今日のアメリカによるイランへの直接攻撃の舞台を整える一因となった可能性が高い。

 アメリカが引き起こしたウクライナでの代理戦争とシリアへの追加圧力は、いずれも2019年のランド研究所の論文「ロシアの手を広げさせる」で概説されていた。これらシナリオは、その後ロシアに対して実行された他の多くの選択肢とともに、ロシアの勢力拡大を図り、最終的にはソ連型の崩壊を招こうとするものだった。

 ウクライナで、アメリカによる対ロシア代理戦争が続く中、米中央情報局(CIA)は、ロシア領奥深くにあるロシアのエネルギー生産施設に対する長距離ドローン攻撃を調整・指揮するとともに、ロシアのエネルギー輸出を輸送するタンカーに対する海上ドローン攻撃も実施してきた。

 アメリカのベネズエラ侵攻、対イランの継続的戦争とロシアのエネルギー生産と輸出に対する攻撃と併せて考えると、憂慮すべきパターンを示している。世界各地における中国の主要なエネルギー供給国の奪取、破壊、または劣化だ。

 中国封じこめ

 アメリカは、中国の最大かつ最も重要なエネルギー同盟国を標的にするだけでなく、長年にわたり、中国の近隣地域、更には中国内でも、同様に不安定化、破壊、あるいは意図的に紛争を誘発しようと試みてきた。

 これには、中国の新疆ウイグル自治区を標的とした長年にわたるテロ行為、2019年に発生したアメリカが支援した香港での暴動や、中国の島嶼省、台湾における分離主義政権への支援と武器供与などが含まれる。

 中国領を超えて、第二次世界大戦終結以来、アメリカは何十年にもわたり、日本・韓国、インド・パキスタン、東南アジアという三つの戦線で、各国を政治的に掌握し、中国に対する攻撃拠点として利用しようと試みてきた。これにはフィリピンも含まれる。フィリピンは中国との近代的インフラ整備協定を破棄し、国家資源を旧米植民地における米軍の駐留拡大と南シナ海における中国との対立拡大に振り向けた。

 ミャンマーとパキスタンの中国国境に近い地域では、アメリカはテロリストを支援し、ミャンマーと中国のパイプラインを含む中国の一帯一路構想(BRI)の主要構成要素を攻撃してきた。2018年のアメリカ海軍大学校レビューを含むアメリカ政策文書は、中国に対するより広範な「海上石油封鎖」の一環として、中国とのいかなる公然たる紛争の際にも爆撃を行うことを以前から提案していた。

 アメリカが支援するテロリスト連中は、中国との全面的衝突を待つのではなく、昨年を含め、長年にわたりパイプラインを繰り返し攻撃してきた。

 今年初め、中国寄り中央政府を打倒しようとするアメリカ支援を受けた反政府勢力を支援する狙いで、ドローンをミャンマーに密輸しようとして、アメリカ人一人とウクライナ人数人が逮捕された。

 総合的に見ると、アメリカは中国の主要同盟諸国に対して戦争や代理戦争を仕掛けてきただけでなく、中国の国境沿い、更には中国国内でも汚い戦争を仕掛けてきた。

 最近の対イラン戦争は、中国のエネルギー輸入の大部分を標的としており、中国がエネルギー自給を達成するまでの5~10年の好機が失われる前に、中国の経済発展にできる限り打撃を与えることを目的としている。

 中国は準備を整えている

 何十年にもわたり、アメリカによる封鎖の試みを中国は十分認識しており、それに備えるため、また封鎖から身を守るため、国内外で投資を行ってきた。

 2018年に米海軍大学校論文で提案されたマラッカ海峡の遠隔封鎖は、それ以降中国の軍事力が飛躍的に拡大したため、もはや実現不可能な可能性が高い。中国は、遙かに大規模で高性能なミサイル戦力を保有しているだけでなく、物理的にもアメリカより規模の大きい海軍を擁し、その海軍力をアジア太平洋地域に集中させている。

 これが、アメリカが中国の軍事力から遥かに遠いホルムズ海峡で封鎖措置を取った理由だろう。だが中国もこれに備えていたようだ。

 中国は膨大な戦略的原油備蓄を構築し、石炭液化燃料の生産を急速に拡大しており、人類史上未曾有の規模で再生可能エネルギー資源への投資と導入を進めている。

 中国の道路を走る車両の大部分は依然精製石油燃料に依存しているものの新車の乗用車、トラック、オートバイの50%以上が電気自動車だ。中国は世界最大かつ最速の旅客鉄道網を有し、また、これまで製造された中で最も強力な電気貨物機関車も保有している。

 アメリカは中国と同盟諸国や同盟国ネットワークに対し、世界規模で大胆な攻勢をかけているように見えるが、中国は何十年にもわたりまさにこのような事態に備えてきた。

 残る課題は、世界規模殺戮と破壊のアメリカ能力が、中国や多極化世界の回復力や経済的、技術的、文明的な拡大能力を凌駕できるかどうかだ。時が経てば明らかになる。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/04/03/the-us-war-on-iran-is-a-us-war-on-multipolarism/

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 ネットで強制的に見せられる「ニュース」なるもの全てゴミ。無意味なものだけ。
 題して、阿呆ニュース。

 正気の論理でブラウザ設計すればゴミ記事でなく重要話題だけ出すのは容易なはず。
 もちろん、これは、裏返せば、誰が反体制派なのを把握する手法と同意義。

 阿呆ページを見ると全く興味が無い芸能・政治洗脳ニュースを見せられる。
 感心する阿呆ニュースに出会った経験や記憶は皆無だ。
 人々を白痴にするため意図的にゴミを流していると考えるのが妥当だろう。
 どなたか阿呆ニュースを見ずに済むブラウザーを開発してくれないだろうか?  

2026年3月 4日 (水)

アメリカの対ロシア代理戦争:今後何が起きるのか?

Brian Berletic
2026年2月25日
New Eastern Outlook

 平和への願いを声高に宣言する裏で、遙かに広範かつ過酷な戦略が展開されており、その影響はウクライナを遙かに超えるものだ。

 

 トランプ政権が発足すると、ウクライナで進行中の戦争を早期に終結させたいと主張していたにもかかわらず、2024年後半から2025年初頭にかけて、アメリカはむしろ戦争を着実にエスカレートさせてきた。

 今日、西側メディアは、ロシア領奥深くへの継続的な長距離ドローン攻撃と、ロシアのエネルギー輸出に対する海上ドローン攻撃がアメリカ中央情報局(CIA)が実行しているのを公然と認めている。その間、アメリカは紛争の公平な「調停者」を装い続けている。

 これに加えて、現在、アメリカは欧州代理勢力がウクライナ国内の戦闘でより直接的かつ危険な役割を果たすよう準備しており、国家資金を欧州国民向けから、ロシアに特化した軍事費向けに移行させている。

 アメリカは、ロシアと中国が主導する多極世界の主要な同盟諸国をロシアと中国しか残らなくなるまで削減しようとしている。

 アメリカはロシア国内でロシアのエネルギー生産施設を攻撃し、国境を越えてロシアのエネルギーを輸送するタンカーに対し海上ドローン攻撃を行っていることを認めているが、いわゆる「ロシアの影の艦隊」を迎撃し、乗り込み、最終的に封鎖するという、より積極的な役割を欧州に担わせようとしている。

 ワシントンのヨーロッパ代理勢力も、徐々に崩壊しつつあるウクライナが作り出す大きな空白を埋めるために、ウクライナ国内への直接介入を迫られている。

 他の地政学的目的を追求するためウクライナでのロシアに対する代理戦争から距離を置きたいとアメリカは主張しているが、この狙いは中南米のベネズエラやキューバ、中東のイラン、アジア太平洋地域の中国など世界中の最も重要なロシア同盟諸国と関係する。

 本質的には、主張に関係なく、アメリカは、台頭する多極主義自体に対して行っている遙かに大規模な戦争の一環として、ロシアに対する代理戦争に依然全力を注いでおり、その全てはアメリカの世界的優位性を維持するための一部なのだ。

 ウクライナにおけるアメリカの狙いは変わらない

 2022年に、ロシアがウクライナで特別軍事作戦(SMO)を開始するずっと前から、アメリカの政策文書は、ウクライナを支配するだけでなく、冷戦終結前に崩壊したソ連と同様に、ウクライナをロシアに対する好戦的代理として利用して過度に拡大させる論理を展開していた。

 ランド研究所が2019年に発表した論文「ロシアの手を広げさせる:有利な立場からの競争」は、二つの重要かつ示唆に富む事実を明らかにしている。第一に、ウクライナ軍への殺傷力ある兵器供与(第一次トランプ政権下で開始)を含む、アメリカによるウクライナへの継続的支援は、ウクライナを守るためではなく、ロシアを挑発するために行われたのだ。

 第二に、報告書は、結果として生じる紛争は「ウクライナ側の不均衡に甚大な犠牲や領土喪失や難民流出をもたらす可能性が高い。ウクライナにとって不利な和平にさえつながる可能性がある」と認めている。

 そして、まさにこれが起きている。

 当時も今も、アメリカの目的は、ウクライナ(あるいはヨーロッパでさえ)がロシアを打倒することではなく「ロシアが軍事的または経済的に過剰拡張し、政権に国内および/または国際的威信と影響力を失わせる」ことを狙った遙かに大きな戦略の一環として、ロシアの負担を可能な限り高くすることだ。

 論文の他部分、特にウクライナに関しては、1980年代にソ連を巻き込んだアメリカ主導のアフガニスタン紛争がアメリカが現在再現しようとしているものと比較されている。

 その目的のため、ウクライナだけでなくヨーロッパの他の国々にも犠牲を強いているにもかかわらず、アメリカはこの代理戦争を継続し、ロシアに膨大な軍事力と装備を前線に投入することを強いている。その結果、シリアを含む他地域に対するロシアの関与がまず損なわれ、ついには2024年にシリアが完全崩壊するに至った。

 そして、アメリカCIAのドローン攻撃がロシア国内のエネルギー生産とロシア国境を遙かに超えた海上エネルギー輸出を標的としていることは認められているが、その全てがロシアの経済力、ひいては軍事力を弱体化させることを目的としている。ロシアのエネルギー生産と輸出を標的とすることは、アジア太平洋地域で中国を包囲し封じ込めることを狙った、遙かに大規模な戦略の一部でもある。

 2018年にアメリカ海軍戦争大学が発表した論文「中国に対する海上石油封鎖」は、(その後実施された措置)アジア太平洋地域での米軍の能力を強化し「遠隔封鎖」を実施することを推奨しただけでなく、中国の一帯一路構想と、中国へのロシア・エネルギー輸出の両方が、中国自体を完全に遮断し、締め付ける上での障害だと指摘した。

 この文書は、一帯一路を物理的に攻撃し断絶するため、アメリカによる「空爆や空中機雷敷設」を含む「軍事行動」を推奨したが 、中国へのロシア・エネルギー輸出を削減するための具体的軍事行動は規定していなかった。

 だが、それ以降、CIAが組織したロシアのエネルギー生産施設へのドローン攻撃は、まさにこの報告書がBRIに対して推奨した「運動行動」を反映している。BRI自体に関しては、アメリカによるBRIインフラ攻撃には至らず、ワシントンは、その代わりに、特にミャンマーとパキスタンにおいて、過激派に武器と支援を提供し、プロジェクトや技術者や現地治安部隊をアメリカに代わって攻撃させている。

 形成されつつあるのは、ロシアと、その同盟諸国、そしてもちろん中国を第一に相手にしてアメリカが戦っている多正面戦争だ。

 ロシアを弱体化させるのは目的ではなく、むしろ手段だ。

 ウクライナ現地の現実

 2014年にアメリカが初めてウクライナを政治的に支配し、その後2022年にSMOを挑発する以前も、それ以降も、ロシアは急速に軍事力を近代化し、拡大してきた。

 以来、ロシアは装甲車、砲弾、巡航ミサイル、弾道ミサイル、ドローン、防空システム、電子戦能力の面で、ヨーロッパのどの国やアメリカ単独より生産量が多いだけでなく、西側諸国全体を凌駕することに成功している。これは、2022年、SMOを開始するずっと前に何年もの計画と準備を必要とした偉業だ。

 ロシアの軍事計画立案者たちは、ウクライナ(および他地域)での紛争が本質的に消耗戦になると知っていて、西側諸国の軍事産業生産とは正反対のやり方で、利益より生産を優先するように国営企業を組織したのはほぼ確実だ。

 これは、西側諸国による着実なエスカレーションや挑発行為にもかかわらず、一貫してロシアに有利な消耗戦の戦場で現れている。

 西側諸国の専門家連中は、領土獲得を唯一の尺度として、ウクライナにおけるロシアの前進を度々否定してきた。だが実際は、前線は何年も停滞したまま、その後、どちらかの勢力が突如急に崩壊することもある。

 消耗戦における本当の成功を測るには、その代わりに、人材徴募と訓練や、軍需産業生産、死傷率といった指標を考慮する必要がある。これら指標はアメリカの説明に合わないため、嘘が報じられるか、全く言及されない。

 2025年後半から2026年にかけて、ウクライナが占領するドンバス領土の残存地域南部のポクロフスクとミルノグラードが陥落し、ロシア軍が北部のリマン付近に向けて着実に進軍した後、ウクライナが占領するスロビャンスクとクラマトルスクは、ロシア軍がこれまでドンバス全域の多くの都市を孤立させ占領するため利用したのと同じ種類の軍隊の交代と補給線の混乱に直面することになる。

 ロシア軍は、ウクライナがドンバスの強固に要塞化された二つの都市を制圧するために利用している通信線に、ドローンや砲火や他の兵器を益々接近させながら、前線全域で圧力をかけ続けるだろう。これら兵器が接近し数が増えるほど、部隊の交代や都市への補給は複雑化し、ウクライナがこれら都市を維持し続けるのは益々困難になる。

 同時に、ウクライナ軍は現在さらに南で攻勢を行っている。

 しかし、これまでのウクライナの攻勢と同様、表面上どれほど成功しているように見えても、人員、武器、弾薬の不足が是正されない限り(そして是正はされていない)、そのような作戦はより多くの犠牲者と、既に不足している資源のより急速な枯渇をもたらすだけで、犠牲者と資源の枯渇はロシアの消耗戦勝利を加速させるだけだ。

 今後何が起きるのか

 既に、ウクライナにおけるロシアとの代理戦争をすぐに終わらせるつもりがないことをアメリカは明確に示している。むしろ急速に勢力を弱めつつあるウクライナ軍が残した空白にヨーロッパが入り込み、前線でロシアに継続的圧力をかけ続ける態勢を整えている。一方、アメリカ自身はロシア国内のエネルギー生産施設攻撃を継続し、ヨーロッパ代理勢力はロシア・エネルギーを海外に輸送する船舶を標的とし、拿捕さえするなど、より積極的な戦略を準備している。

 ベネズエラを政治的に支配し、キューバに圧力をかけ、イランとの戦争準備が急速に進む中、アメリカは、ロシアと中国が主導する多極世界で、ロシアと中国しか残らないようになるまで主要同盟国を減らそうとしている。

 ウクライナ紛争の将来を理解するには、アメリカ主導の一極世界と多極世界がどのように組織され運営されているか、そして多極化に対してアメリカが世界中で仕掛けているより広範な戦争で、ウクライナにおける対ロシア・アメリカ代理戦争がどのような役割を果たしているかを理解する必要がある。

 ヨーロッパはアメリカに反対するのではなく、従属しており、欧州指導者が公式に何を主張しようと、ウクライナ紛争におけるヨーロッパのより大規模で、より危険で、より直接的役割に関わるアメリカの命令を実行する準備が既に進行中だと理解すべきこと。

 更に、ワシントンの主要な地政学的狙いを明確に理解する必要がある。狙いは世界の全ての国々に対する優位性の追求だ。交渉を求める相手を従属させ、更には排除することを究極の目的とする相手と交渉の余地はない。

 アメリカの世界的侵略を防御し、抑止し、最終的に武装解除するために必要な軍事力、経済力、政治力、社会力を構築することによってのみ、ウクライナの紛争や他のあらゆる場所での紛争を公正かつ永久に終わらせることが可能だ。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/02/25/us-proxy-war-on-russia-what-comes-next/

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 植草一秀の『知られざる真実』
米国暴挙諫められない高市首相

2025年12月15日 (月)

アメリカの新たな「和平」提案は(またしても)「ミンスク3.0」焼き直し版

Brian Berletic
2025年11月28日
New Eastern Outlook

 ウクライナにおけるロシアとの代理戦争が続く中、アメリカは再び「和平計画」と呼ばれるものを提案した。

 

 提案内容は的外れだ。アメリカは一般的な和平を求めているわけではなく、ましてロシアとの具体的な和平を求めているわけではない。むしろ以前の提案と同様に、進行中の紛争を凍結し、ウクライナ軍を再建し、可能であれば西側諸国部隊をウクライナ国内に展開させて緩衝地帯を設け、ロシア軍の進撃を阻止しようとする試みだ。

 これは単なる憶測の域を出ず、今年2月にブリュッセルで欧州に向けて出された公開指令の中で、アメリカ国防長官(現在は「戦争長官」)ピート・ヘグセス自ら明らかにしたことだ。

 ヘグセス長官が「これはミンスク3.0であってはならない」とわざわざ主張したにもかかわらず、この指令は、進行中の紛争を凍結し(終わらせるのではなく)、ウクライナの「安全保障上のニーズ」に「倍増して」「再関与」し 、それによりウクライナ軍を再建することを含む「ミンスク 3.0」の枠組みを明示的に提示しただけでなく、実際は「欧州および非欧州の部隊」により課されるシリア式緩衝地帯を追加することでそれを上回っている。

 ミンスク1と2がウクライナ軍制圧を阻止し、実際の和平が実現されるのを阻止したのと同様、この新たな「ミンスク3.0」 提案は、紛争を再び凍結させ、具体的には真の解決策が生まれるのを阻止することを目指している。

 ウクライナに「欧州および非欧州の部隊」が配備され、アメリカが再びロシアとの合意に違反したことが明らかになった場合、ロシアが特別軍事作戦(SMO)を再開する能力は、ウクライナ国内に深く根付いたNATOの存在により複雑になるだろう。これはちょうど、アメリカとトルコ軍がダマスカスと同盟国のロシア、イランによるシリア完全奪還を困難にし、最終的に2024年後半、ロシアとイランが支援する政府の完全崩壊に至ったのと同じだ。

 ロシア主権を回復し、政策、制度を再構築し、産業を利益よりも目的に近づける優先順位に戻したのは、プーチン大統領とその政治的同盟者を含む、現在ロシアを運営している現在の政治的利益だった。

 たとえアメリカがこれらの可能性を明示的に排除した合意を提案しても、最初のミンスク合意とミンスク合意2も同様で、アメリカとウクライナおよびヨーロッパの代理勢力により単純に、露骨に、そして非常に意図的に違反されたのを忘れてはならない。

 また、ウクライナ紛争にとどまらず、アメリカはロシア、そしてそれ以前のソ連に対しても、これまで提案してきたあらゆる合意、条約、了解事項に違反してきたのを忘れてはならない。ドナルド・トランプ大統領自身を含む歴代アメリカ政権により、現在破棄されている中距離核戦力(INF)全廃条約やオープンスカイ条約など、一方的に破棄されてきた軍事条約、覚書、協定が数多く存在する。

 現在のトランプ政権は、政権発足から僅か一年足らずの間に、イランおよびレバノンに拠点を置くヒズボラとの「和平協定」や「停戦」提案を、アメリカの代理組織(イスラエル)による首切り攻撃の試みと、その成功や、アメリカ自身によるイラン攻撃の隠れ蓑として利用してきた。

 ロシアの対応

 これら提案をクレムリンがどのように解釈しているか確実に知ることは不可能だ。ロシア指導部がアメリカ提案を何でも信じるほど素朴だとは考えにくく、そもそもアメリカが平和を模索する可能性があると信じるなど到底考えられない。

 だが、ミンスク1と2を振り返ると、ロシアの国営メディアTASSによれ、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領自身も後に「全くの欺瞞」だったと認めたにもかかわらず、両方の提案に同意したことから、そもそもなぜこれら合意が受け入れられたのか、そしてロシアが西側諸国の将来提案を受け入れるのかどうかという疑問が生じる。

 2014年から2015年にかけて、ロシアは最終的に2022年のSMOとなるものを開始する準備がまだできておらず、ミンスク1と2で双方に生じた時間をロシアがより有効に活用し、SMO開始時に、ウクライナとそのスポンサー、アメリカより強い立場に立てると感じていたのかもしれない。

 アメリカのこの最新提案は、またしても明らかな欺瞞だとロシアは理解しなければならない。アメリカがロシアと同盟国の中国を包囲し封じ込めることに関し、これまでも、そして今も明らかに取り組んでいる真の狙いをヘグセス長官が認めているのだ。

 これに同意するのは、ロシアが自ら休戦を必要としており、休戦によって得られる時間をアメリカとその代理勢力より有効に活用できると確信した場合のみだろう。また、ロシアは、ウクライナへの「欧州および非欧州軍」派遣に対し、現在崩壊し壊滅状態にあるシリア・アラブ共和国でしたよりも効果的な方法で対処する用意があることを確信しなければならない。

 あるいは、ウクライナの戦闘力が崩壊する中、ウクライナの戦場でロシア軍が飛躍的に前進を続ける一方、次々と出される提案にロシアは単に応じるだけかもしれない。

 今や、現在の大統領政権やアメリカ議会の構成にかかわらず、アメリカには合意する能力がないこと、そして数十年にわたる世界覇権追求に直面している国々は、それに対する防衛戦略と、エスカレーションへの危険なスパイラルを回避する手段とのバランスを取らなければならないことは十分に明らかなはずだ。

 アメリカの外交政策の真の意味を理解する

 次々に提案されるアメリカの政策の意味を理解しようとする観察者にとって、アメリカ政策の様々な層を考慮するのは有益だろう。

 これらの層には、(1) 最も浅薄でほとんど意味のない言説、プロパガンダ、政治劇、(2) 進行中のアメリカの軍事作戦、態勢、準備、(3) 定評あるシンクタンク内部で行われている金融企業の政策決定 (そこで書類が弁護士チームにより法案に変えられ、その後ロビイストによりワシントンに送られ、承認されるだけ)、(4) 世界に対するアメリカの優位性を維持するという主な動機と「集団的国際主義」または「多極主義」に立ち向かい解体したいという切実な願望が他の全ての政策を推進している最も深い層が含まれる。

 言説、プロパガンダ、政治劇という上層部に焦点を当てて分析すると、常に混乱が生じ、予測は悲惨に外れ、アメリカの政策、動機、利益を全体的に理解できなくなる。

 これら以外の、より重要性の高い層を更に深く掘り下げることで、表面に作り出された意図的な混乱を切り抜けられる、アメリカの力、その本当の意図や方法や動機について、より深く根本的な理解ができる。

 またアメリカ政策の標的となった人々には、それに伴う欺瞞や、欺瞞によ目をそらすことを意図した裏切りの危険の両方から自らを守るための現実的戦略を策定する最良の機会が与えられる。

 第一階層:言説、プロパガンダ、政治劇

 そもそもアメリカが 「平和」について語っているのは、ロシアが戦場で客観的に成功しているからにすぎない。それはちょうど、2014年から2015年にかけての状況が、ミンスク合意1と2に先立ち、アメリカとそのヨーロッパ代理勢力に 「平和」について語らせたのと同じだ。

 そうでなければ、2024年にシリア政府を転覆させ、シリア・アラブ共和国を完全に政治的に掌握する機会が訪れたときと同様、アメリカとその代理勢力は、指定された敵対国に最大限の損害を与えることを目指して妥協のない政策を追求するだろう。

 この最初の表面的な層では、アメリカは、ウクライナや他の欧州諸国を含むその代理人とともに、ウクライナに関してロシアと不誠実な合意を形成する手段と、アメリカとその代理人がロシアが受け入れる合意を必然的に破る手段の両方を区分することを意図した一種の政治劇を演じている。

 ワシントンが意図する違反行為の中で、まず第一に挙げられるのは、 ウクライナへの侵攻を企図する「欧州および非欧州」部隊の創設と展開だ。アメリカとウクライナおよび欧州代理勢力との間の「意見の不一致」状況は、アメリカが「和平協定」を提案し、可能であれば実施することを可能にする。一方、ウクライナと欧州は協定違反の責任を負い、アメリカは凍結された紛争と、アメリカが計画する「欧州および非欧州」部隊の恩恵を享受しつつ、 ロシアとSMO再開の可能性との間に立ちはだかることになる。

 アメリカは、自国の政治体制でもこの芝居を演じている。「トランプ政権」が提案した内容は、民主党内のいわゆる反対派から自動的に攻撃され、トランプ支持者も同様に、その内容や、ドナルド・トランプ大統領が2024年の選挙運動で掲げた公約との矛盾に関わらず、自動的にその提案を支持するようになる。

 トランプ政権内でも、この芝居は行われている。トランプ大統領の閣僚の中でも「攻撃的」メンバーは、2024年の選挙公約に反する提案の責任を負い、一方、J・D・ヴァンス副大統領のような「理性的」メンバーは、政権が公約を露骨に破っているにもかかわらず、公約を守ろうとしているふりをし、トランプ政権が明らかに正反対の方向へ進んでいるにもかかわらず、少なくとも国民の支持と希望をある程度保とうとしている。

 第二階層: 運用実態

 運用上の現実にはウクライナで進行中の紛争に関するアメリカの実際の行動が含まれる。

 アメリカは2014年にウクライナを政治的に掌握し、現在では政治的、軍事的、経済的に完全支配している。

 アメリカは、ドイツのヴィースバーデンにある作戦基地を通じて、進行中の戦争のあらゆる側面を支配しており、ウクライナ軍指揮系統の最高位を形成し、高レベル戦略の立案から戦場、更にはロシア領奥深くの個々のロシア標的選択まで全てを監督している。

 2014年以来、アメリカはウクライナ諜報能力のあらゆる側面を掌握し、再建し、現在はその指揮を執っている。これは2024年の記事「スパイ戦争:CIAがいかにしてウクライナのプーチンとの戦いを秘密裏に支援しているか」でニューヨーク・タイムズが明らかにしている。

 アメリカは依然欧州全土に数万人の軍隊を駐留させており、2014年以降ウクライナに対して行ったのと同じやり方で、ロシア国境沿いのNATO加盟諸国や非NATO加盟諸国を軍事化するアメリカ政策を監督しており、そもそもこの紛争を引き起こしているのだ。

 これら全ては、上の層で行われている言説、プロパガンダ、政治的演劇と関係なく客観的に継続しており、いかなる政治的保証、約束、または提案された合意よりもアメリカの意図をはるかに正確に示している。

 第三階層:金融企業による政策立案

 更に深いのは、ワシントンの世界作戦の現実を導く戦略を提示する政策文書で、その言説、プロパガンダ、政治劇、約束に関係なく、ロシアに対する継続的な敵意や攻撃や再包囲が含まれる。

 ロシアに関するアメリカの作戦上の現実は、2019年のランド研究所論文「Extending Russia Competing from Advantageous Ground(ロシアの手を広げさせる:有利な立場からの競争)」の中で明確に示されており、同論文は、現在進行中のウクライナにおけるロシアとの代理戦争として「Measure 1: Provide Lethal Aid to Ukraine (対策1:ウクライナへの致死的援助の提供)」を提案し、その内容について次のように述べている。  
ウクライナへのアメリカの支援拡大(致死的な軍事支援を含む)は、ロシアにとってドンバス地域を掌握するための犠牲(血と財政の両面)を増大させる可能性が高い。分離主義者へのロシアの支援拡大とロシア軍の増派が必要になる可能性が高く、支出増大、装備損失と、ロシア軍死傷者の増加につながる。後者は、ソ連のアフガニスタン侵攻時と同様に、ロシア国内で大きな物議を醸す可能性がある。
 この文書はまた「ベラルーシの政権転覆を促進する」「南コーカサスの緊張を利用する」、「 中央アジアにおけるロシアの影響力を減らす」「シリア反政府勢力への支援を強化する」などの措置により、ロシア周辺地域全体、更には旧ソ連邦諸国でロシアに圧力をかけることを提案している。

 この文書では、更に「石油輸出の妨害」「天然ガス輸出の削減とパイプライン拡張の妨害」「制裁を課す」「 ロシア頭脳流出の促進」といった経済対策も提案されているが、これらは全て、オバマ政権、トランプ政権、バイデン政権、そして現在第二次トランプ政権にかけて、アメリカがこれまでに実施し現在も実施し続けている対策だ。

 繰り返しになるが、様々なアメリカ政権が公式に何を言ったか、あるいはロシアに非公式に何を約束したかにかかわらず、ランド研究所の「Extending Russia Competing from Advantageous Ground ロシアの手を広げさせる」のような政策文書は、ロシアに対するアメリカ政策を推進する実際の青写真となっており、過去と現在の運用上の現実に現れている。

 更に悪いのは、ロシアを標的としたこのような政策が当てはまる全体像だ。

 2018年にアメリカ海軍大学が発表した「A Maritime Blockade Against China 中国に対する海上封鎖」と題する論文では、ロシアは、その大きなエネルギー生産能力、中国と接する長い国境や、中国にエネルギーを供給するパイプライン建設が進行中であることなどから、中国包囲や封鎖の成功上、大きな障害になると指摘されている。

 たとえ中国の海上封鎖と、中国の一帯一路構想における陸上経路の標的化・破壊に成功したとしても、中国へのロシア・エネルギー輸出は、アメリカ封鎖を成功させる上で依然困難をもたらす。従って、これは長年にわたるロシア自身を封じ込める政策を遙かに超え、遙かに緊急かつ切実に望まれている中国封じ込め政策に合致するものだ。

 今年2月に欧州に送った指示の中で、中国封じ込めに向けて、アメリカは緊急に方向転換しなければならないとさえヘグセス長官は言及していた。

 仮にウクライナに関する全ての面で、ロシアがアメリカに全面的に譲歩したとしても、同様に中国との断絶、あるいは敵対的姿勢を取ることで譲歩しない限り、アメリカはウクライナにとどまらずロシア周辺への攻撃を続けるだろう。

 ランド研究所をはじめとする政策シンクタンクは、独立機関とは言い難い存在で、武器メーカー、大手石油企業、製薬業界、巨大IT企業、銀行、投資会社など西側諸国全体の最も強力で影響力ある利害関係者を代表する企業や金融機関から資金提供を受け、運営されている。これが、更に深い層へと繋がる。

 第四階層: 大企業・金融企業の主目的

 これら政策シンクタンクが大手企業や金融企業の利益によって動かされているとすれば、一体何がその利益を動かしているのだろう?

 答えは、権力と利益の永続的追求で、それは「株主至上主義」といった原則により制度化され、株主の富の最大化を要求する。有限、あるいは時に減少する人口と、同様に有限な市場における利益と権力への果てしない欲望は、あらゆる競争の排除を意味する。それは統合と独占の過程を通じて、アメリカ国内のみならず、世界全体での競争で、ロシアを含む世界全ての国の人口と市場への参入と独占を要求する。

 これら原則が究極的に具体化し、ロシアに与えた影響は、ソ連崩壊と新生ロシア連邦に対する欧米諸国による略奪が続く1990年代に顕著となった。目的志向の国営企業を解体し 「民営化」し、その後、利益のために資産を剥奪・売却しようとする動きは、何百万人もの人々を貧困に陥れ、将来の見通しを暗くした。

 「自由市場資本主義」の約束はロシア国民には全く受け入れられなかったが、それは その後何十年も西側資本主義の熱気に「温められてきた」旧ソ連諸国の人々にも受け入れられなかったのと同じだ。

 ロシア主権を回復し、政策、制度、産業を再構築し、利益より目標に優先順位を戻したのは、プーチン大統領と政治的同盟者を含む現在ロシアを運営している現在の政治的利害関係者で、それがロシア連邦の今日の世界大国復活につながったのだ。

 ウォール街とワシントンの観点からすると、これは権力と利益の追求という彼らの主目的に対する障害で、そのためロシア(と多極世界を構成する他の多くの国々、特に中国)は「敵」に指定され、ソ連がかつてそうだったように、そしてシリア、リビア、イラク、そして最近ではネパールなどの国々がずっと最近そうであったように、数十年にわたる政策により、侵略や包囲や最終的には転覆を狙われてきたのだ。

 これら主目的が変わらない限り(そして変わっていないが)、それらが生み出す政策は変化せず、実施されるこれら政策の運用上の現実も変化しない。

 唯一変わるのは、世界中の大衆と意思決定者の両方を、この現実からそらし、武装解除させ、更なる前進のための余地や時間や機会を得るために使われる言説とプロパガンダと政治劇だけだ。

 アメリカ外交政策の完全な分析は、これら全ての層を網羅し、アメリカ外交政策が実際どのように、そして、なぜ策定されるのかという基本原則を一貫して理解していく必要がある。言説、プロパガンダ、政治劇といった最も表面的な層に焦点を当てても、地政学的現実は理解できない。海の波を、いくら研究しても、その遙か下に潜む何百万もの生物や海流や地形が全て明らかにならないのと同じだ。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/11/28/new-us-peace-proposal-is-minsk-3-0-repackaged-yet-again/

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 本記事の筆者が同じ話題を語っているYoutbeは下記。
New US “Peace” Proposal is “Minsk 3.0” Repackaged (Yet Again) 1:06:37
 Alex Christoforou Youtube  
Italy warns Ursula. Odessa port hit. Iran strikes back. Zelensky Kupyansk iPhone. Article 5 Security 22:53
 Arc Times
高市首相の逆ギレ答弁、経済も/高市氏の経済音痴を全解説/伊東市長選どうなる/家計の大苦境と維新の「税金食い物」(金子勝❎尾形聡彦) 1:40:19
 

2025年11月28日 (金)

気候変動の脅威をビル・ゲイツが撤回したが、謝罪が必要



ジョージ・サミュエルソン
2025年11月9日
Strategic Culture Foundation

 何十年も、ただ生きているだけで人々に罪悪感を抱かせてきたこの億万長者慈善家は、今や科学の見方がずっと間違っていたことを認めている。

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お問い合わせ:info@strategic-culture.su
 何十年もの間、ただ生きているだけで人々に罪悪感を抱かせてきたこの億万長者の慈善家は、これまでずっと科学的見地から間違っていたこと、そして人類は地球温暖化による破滅の危機に瀕しているわけでないことを今や認めている。

 過去半世紀ほどの間、壊滅的気候変動が間もなく文明を滅ぼすという幻想の中で世界中の人々は生きてきた。そして、その悪の元凶は人間自身だった。ハンバーガーを食べることから車の運転、飛行機に乗ることまで、あらゆる人間行為が、わずか数年で地球を焼け焦げた居住不可能な岩石に変えることに加担していると非難された。こうした考え方は、世界中の人々に計り知れない罪悪感を植え付け、集団心理に計り知れない影響を与えた。

 長年、無分別な恐怖煽動をした後、今、ビル・ゲイツはその暗い口調を変え、人類には結局希望があることを認めた。「気候変動は、特に最貧国の人々にとって深刻な結果をもたらすだろうが、人類の滅亡につながることはない」とゲイツは17ページのメモで認めている。「人々は予見可能な将来、地球上のほとんどの場所で生活し、繁栄できるだろう。排出量の予測は下がっており、適切な政策と投資があれば、技術革新によって排出量を更に大幅に削減できるだろう。」(このゲイツ発言は、人類が地球温暖化を1.5℃に抑えるという目標を達成できなかったと国連が発表したわずか翌日に行われ、地球に「壊滅的な結果」をもたらすと国連事務総長は警告した。)

 マイクロソフトの共同創業者で、大学を中退したゲイツが気候学学位を持っていたら(彼は持っていないが、ウイルス学の学位も持っていない。だが、それでも彼はCOVID-19ワクチンについて世界に指示を出した)、何年も続いた政治的内紛、不必要な高額プロジェクト、そして日和見主義的な政治家による誤った意思決定から逃れられたかもしれない。だが、今にして思えば、科学が明らかに間違っていたにもかかわらず、これほど多くの人々がゲイツと仲間に騙されたのは奇妙なことだ。

 悲観論者の間でよく言われる主張は、21世紀の最初の数十年間に多くの気候変動の影響が観測されており、1850年に定期的追跡が始まって以来、+1.60°C(2.88°F)を記録し2024年がこれまでで最も暖かい年になるというものだ。しかし、多くの科学者がようやく認識しつつあるように、1850年は地球の年齢でいえば、ほんの一瞬の昔で、それ以前にも世界の気温は大きく変動していた。実際、科学者たちは、1850年と産業革命以前は地球が寒冷化していたのではなく、山の氷冠が消失し、北極と南極の氷河がほとんど存在しなかった長い期間(数百万年前)があったことを発見した。だが地球は死んだのではなく、繁栄した。

 一方、気候変動を煽る論者たちが台頭する以前、気候学者たちは全く逆のシナリオ、つまり地球規模の氷河期を警告していた。氷河期は約1万年ごとに発生すると言われている(現在、完新世と呼ばれる温暖期に入って約1万年経過している)。我々が再び氷河期を迎える事実は、海面上昇、極端な気象パターン、制御不能な山火事など、主に周期的現象である地球温暖化の最悪兆候のいくつかを実際相殺する可能性がある。地球はこれまでも気候変動を乗り越えてきたし、今回も乗り越えるだろう。

 いずれにせよ、人類がこれまで誤った科学にどれほどの苦しみを味わってきたかを思い起こす価値はある。気候変動を強く訴えるグレタ・トゥーンベリ(22歳)が、ガーディアン紙への寄稿でこう述べている。「しかし、気候は単に変化しているだけではありません。不安定化させ、崩壊させているのです。地球上の生命を支えるシステムの不可欠な要素である繊細なバランスを保つ自然のパターンとサイクルが乱されつつあり、その結果は壊滅的なものになる可能性がある。」

 トゥーンベリが国連の演壇から世界の指導者たちに説教し、脚光を浴びるずっと以前から、気候変動のカサンドラたちは終末論的警告を発し続けてきた。1992年、アメリカ上院議員アル・ゴアはニューヨーク・タイムズのベストセラー『The Earth in Balance 地球の掟-文明と環境のバランスを求めて』を出版したが、これは地球温暖化に関する誤報だった。簡単に言えば、人類が10年以内に二酸化炭素排出による大気汚染を止めなければ地球は焼け焦げてしまうと警告したのだ。そして10年が過ぎ、その続編として2006年にゴアは『An Inconvenient Truth 不都合な真実』を出版した。

『不都合な真実』の中で、政治家で環境保護活動家でもあるゴアは、人々は生活を根本的に変えるという考えに慣れなければならないと訴えた。「地球温暖化の政治化」という章で、ゴアは次のように述べている。「事実が明らかに示していることに、なぜこれほど多くの人々が依然抵抗するのか、理由の一つは、気候危機に関する真実が不都合なもの、つまり…我々が生き方を変えなければならないことにあると思う。」

 言い換えれば、特定の政府が人々の生活を直接支配するのを可能にする普遍的危機が到来したのだ。これは科学界の約半数の予測に基づけば「権威主義的環境保護主義」と表現するのが最も適切だろう(残りの反対意見はメディアにほぼ無視された)。人類を待ち受ける差し迫ったディストピア・シナリオは、世界経済フォーラムが発表した衝撃的記事「2030年へようこそ。私は何も所有せず、プライバシーもないが、人生はかつてないほど素晴らしい」に象徴されている。

 2010年代、こうした容赦ない暗雲が立ち込める中、民主党はグリーン・ニューディール政策を発表した。これは、2030年までに温室効果ガス排出をゼロにすることを目標とし、化石燃料からのアメリカの脱却を迫るものだった。この計画は2019年3月に上院で否決されたが、同年後半にジョー・バイデンが大統領選に勝利すると、その途方もなく野心的な提案の多くが実施に移された。

 2030年までに「ネット・ゼロ・エミッション」を達成したいという左派の狂信的願望がもたらした顕著な結果の一つは、キーストーンXL計画の中止だった。これは、カナダ西部のタールサンドから日量83万バレルの原油をアメリカ精製業者に供給する90億ドル規模のプロジェクトだった。この悲惨な決定の結果、アメリカ国民は、予測不可能な中東から供給される現在のエネルギー源と対照的に、安全で容易に利用できるエネルギー源を得る機会を失った。更に、数千もの高給職が失われる問題もあった。

 結局、ゲイツとお仲間が気候変動という神話をめぐって広めた誤った科学は、世界中の納税者に数千億ドル、あるいはそれ以上の損害を与えたのだ。これは法外な教訓で、二度と繰り返してはならないものだ。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/11/09/as-bill-gates-walks-back-climate-change-threats-an-apology-is-in-order/

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 アジアでアメリカのウクライナ役を熱心に演じて中国を挑発する日本

 The New Atlas  Brian Berletic
Japan Eagerly Fills Role as US’ East Asia “Ukraine” 36:35
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
毎日「「対中配慮」に傾くトランプ氏 経済・貿易問題の改善狙い前のめり。ガーディアン紙「習近平国家主席、トランプ大統領との電話会談で台湾の将来に言及、習はトランプに台湾の返還は「軍国主義に対する米中共同の戦いの中で築かれた戦後国際秩序の不可欠な一部」
 植草一秀の『知られざる真実』
同じ穴のムジナの党首討論

2025年10月24日 (金)

最近の情勢緊迫化を受けて、トマホーク巡航ミサイルでロシアを恫喝するアメリカ

Brian Berletic
2025年10月17日
New Eastern Outlook

 トマホーク巡航ミサイルをウクライナに配備するワシントンの最新計画は、アメリカが終結を望んでいると主張してはいるものの激化し続ける紛争の危険なエスカレーションを示しており、本当の平和の追求ではなく「ロシアの手を広げさせる」アメリカのより広範な戦略を示唆している。

 

 ここ数週間、ロシア奥深くのエネルギー生産施設を狙うアメリカ主導のドローン作戦が明らかになりつつあるのを受け、ウクライナに長距離トマホーク巡航ミサイルを配備する可能性についてドナルド・トランプ大統領が繰り返し言及しているが、これは全てロシアを欺き「ミンスク3.0」凍結を企てたアメリカの企みが完全に失敗した後のことだ。

 予想通りの緊張激化は、交渉の席でなく、ウクライナの戦場での紛争を終わらせるには、近未来から中期的未来にかけて軍事作戦を継続する必要があるのをロシアにとって裏付けるものになった。

 トマホーク巡航ミサイル導入は現在の戦争の更なるエスカレーションになるだろう。ジョー・バイデン前大統領が戦争を不必要に開始したと非難するとともに、そもそも大統領選挙運動中「24時間」以内の戦争終結をトランプ大統領は約束していたのだ。

 これはアメリカがエスカレートさせ続けている戦争でもあり、これはウクライナを通じてロシアに対し戦われているアメリカの代理戦争だと現アメリカ国務長官マルコ・ルビオ自身も述べている。

 それぞれの強みを生かしながら、物質的、軍事的、政治的な力の限界に近いところでアメリカとロシアは活動している。

 国家安全保障上の狙いを追求すべく、アメリカの挑発行為に対してロシアは忍耐強く粘り強く対応してきたが、トマホーク巡航ミサイルは、ロシアと欧州、あるいはアメリカとの間の直接紛争の誘発に一歩近づくことを意味する。

 狙いの継続が予想される中での、予想可能なエスカレーション

 トランプ政権は紛争を終わらせたいと主張していたものの、そのつもりは全くなく、中国封じ込めを優先して紛争を凍結しようとしただけだった。疲弊したウクライナ軍を再編し、欧米諸国の軍事産業生産が十分増強されたらロシアとの戦争を再開しようとしたのだ。

 2024年の選挙前でさえ、当時アメリカ副大統領候補だったJ・D・ヴァンスは、ロシアとの代理戦争よりも中国との戦争を優先し、アメリカが中国との対決に資源を向けられるよう、既存戦線に「強力に要塞化された非武装地帯」の設置を狙っていた。実際に紛争を解決するわけではなかった。

 2024年のアメリカ大統領選挙後、2月ブリュッセルの欧州諸国に送った指令で、軍事産業生産とウクライナへの兵器輸出を倍増させるとともに、実質的に「ミンスク3.0」 による紛争凍結を実施すべく、欧州および非欧州の部隊がウクライナに入る準備をするようピート・ヘグゼス国防長官は欧州諸国に指示したが、この指令は 「ミンスク3.0であってはならない」と明確に主張していた。

 またヘグゼス長官は、ロシアのエネルギー生産と、それが「ロシア戦争機械」に資金を提供する役割についても言及し、次のように主張した。  
トランプ大統領は、効果的外交を更に推進し、ロシア軍事力を支えるエネルギー価格を引き下げるため、アメリカのエネルギー生産を解放し、他国にも同様行動を促している。エネルギー価格低下とエネルギー制裁のより効果的執行はロシアを交渉の席に引き込むのに役立つ。
 ロシアの戦争機構に資金を与えるエネルギーの価格を下げるべく、ロシアのエネルギー生産を標的にする手段として、アメリカ・エネルギー生産と制裁についてヘグゼス国防長官は公に言及したが、その後、このアメリカ政策目標を推進するためロシアのエネルギー生産を攻撃したウクライナ・ドローンは、アメリカ自身が監視し、アメリカの諜報・監視・偵察(ISR)により可能になったとファイナンシャル・タイムズが暴露した。ISRなしで、このようなドローン攻撃は不可能だ。

 FT記事はロシア深部へのドローン攻撃におけるアメリカの役割を確認したものの、決して新事実を暴露するものではなかった。

 アメリカが2014年にウクライナ政府を転覆させた直後、アメリカ中央情報局(CIA)がウクライナに職員を派遣したのを、昨年ニューヨーク・タイムズが認めた。それ以来、CIAは基地網を構築し、ウクライナ諜報部隊全体を訓練し、2022年に開始されたロシアの特殊軍事作戦(SMO)に対するものを含むウクライナ諜報活動を指揮してきた。

 CIAはアメリカのISRを利用してロシアへのドローン攻撃に関与するSBU等のウクライナ諜報機関を監督しているのだ、これらの攻撃をアメリカ自身が実行しているに等しい。

 つまり、トランプ大統領が8月にロシアのプーチン大統領を「和平交渉」のためアメリカアラスカ州に招待した時点で、トランプ政権は既にロシアのエネルギー生産を標的としたドローンによる徹底攻撃作戦を開始しており、ロシアのエネルギー産業と経済両方を麻痺させ、事実上の「ミンスク 3.0」 の枠組みの下での停戦にモスクワを屈服させることを狙っていた。

 これを実現できなかったアメリカは、進行中のアメリカ主導のロシア深部攻撃の範囲と影響を拡大するためウクライナへのトマホーク巡航ミサイル配備で脅迫するなど更にエスカレーションを続けている。またロシア・エネルギー輸出の海上輸送に対する脅威も高まっている。

 トマホーク:危険ではあるが決定的ではない

 射程距離最大2,500キロのトマホーク巡航ミサイルは、モスクワを遙かに越える標的を攻撃可能で、ロシアのニジニ・タギル市にある伝説的なウラル・ヴァゴン・ザヴォード戦車工場まで攻撃対象にできる。またトマホークは、より多くのロシアのエネルギー生産施設を危険にさらすことになる。更に、ウクライナ無人機やミサイルによる攻撃の射程内にある施設に対し、トマホークは遙かに大型で破壊力も大きい弾頭を搭載しており、より大きな被害を与えられる可能性がある。

 2019年に第一次トランプ政権が中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱するまで、トマホークは海軍の水上艦艇や潜水艦から発射され、1990年代の湾岸戦争からのアメリカ侵略戦争、2000年代初頭のアメリカのアフガニスタンとイラクへの侵略と、2011年以降のアメリカのリビアとシリアに対する戦争で重要な役割を果たした。

 トランプ政権のINF条約離脱後、トマホークを発射できる地上発射ミサイルの開発と配備が始まり、現在アメリカ陸軍が中国に向けてフィリピンを含む各地に配備しているタイフォンや、アメリカ海兵隊が昨年まで試験用に開発し放棄していた長距離射撃(LRF)ランチャーが生産された。

 米海兵隊は、アジア太平洋地域の島嶼部で活動する厳しい環境下でのLRF発射装置使用が困難なことを理由に、小型で短距離の海軍攻撃ミサイルを発射する海軍・海兵隊遠征艦艇阻止システム(NMESIS)を採用した。実用段階のLRF発射装置は、早ければ来年にも米陸軍で試験運用することが検討されており、ロシアに向けトマホークを発射するための最有力候補としてウクライナに配備される可能性もある。

 LFRランチャーは、ランチャー1台につきMk 41垂直発射システム(VLS)セルを一つしか使用しない(タイフォン・ランチャーはセルを4つ使用)。そのためミサイルを発射するたびに再装填が必要になる。米軍が保有する他のトラック搭載型と併用される可能性があるが、ウクライナからロシアに向け一度に発射できるトマホークはごく少数に限られる。

 通常、厳重に防御された標的には大量のトマホークが必要になるが、これは2017年にアメリカがシリアのアル・シャイラート飛行場攻撃で、最大59発のトマホーク巡航ミサイルを使ったことからも明らかだ。

 ウクライナの地上発射装置からこれほどの規模の斉射を行うのは不可能なため、アメリカはトマホークと西欧諸国の空中発射巡航ミサイル、無人機、デコイを組み合わせる可能性が高い。これら性能の低い兵器は、トマホーク発射前に波状的に発射され、ロシア防空網を崩壊させようとするだろう。

 同様戦術はイギリスのストームシャドウやフランスの同等ミサイル(SCALP)など西側諸国の空中発射巡航ミサイルと組み合わせて使用され、限定的成功を収めていまる。

 SMOの過程で西側諸国がウクライナに移譲した他の多くの兵器同様、トマホークの小規模配備は、近い将来、より多くのミサイルと、より改良され、より多数の地上発射システムを送ることにより拡大される可能性がある。

 これらの中には、米軍が既に既存のタイフォン代替を探しているものも含まれる可能性がある。記事オシュコシュ地上配備型トマホーク発射装置が姿を現す」で、現在配備されている非常に扱いにくいタイフォンや、機動性は高いものの性能が限られているLRF発射装置と比較して、最大4発のトマホーク巡航ミサイルを搭載可能な遙かに機動性と自律性に優れた地上発射装置の開発についてNaval Newsが報じている。記事はこれらシステムの実用化時期には言及していないが、有人型は1~2年以内に開発・試験され、その後自律型システムが導入され、その間LRF発射装置が使用される可能性がある。

 本当の隘路になっているのはアメリカ軍需品の年間生産量で、それは今後も続くだろうが、トマホーク巡航ミサイルも例外ではない。

 トマホーク・ミサイルの年間生産数はわずか55発から90発に過ぎないとロイター通信が最近の記事で指摘した。これに対し、ロシアは同等の巡航ミサイル「カリブル」を年間300発から360発、その他数百種類の巡航ミサイルやゲラン2などの長距離攻撃ドローンを数万機生産していると推定される。2023年、2022年のSMO開始以来、ロシアはウクライナに向けて合計7,400発のミサイルと3,700機のドローンを発射したとの別のロイター通信記事は報じている。

 ロシアのミサイルとドローンによる作戦がウクライナに及ぼす影響と、ロシアの遙かに広大な地理的規模とロシア産業およびエネルギー生産の規模を考慮すると、ロシアの軍事、産業、エネルギー生産に同様またはそれ以上の規模で重大な影響を与えるには、同数かそれ以上のミサイルとドローンが必要になるだろう。

 現在進行中のアメリカ主導の深部攻撃がロシアのエネルギー生産に及ぼす影響については様々な報告がある。トマホーク巡航ミサイル導入は、この影響を増大させる可能性が高いが、どの程度まで影響が及ぶかは未だ不明だ。

 トマホークの有無にかかわらず、エスカレーションは続く

 アメリカがウクライナにトマホークを配備するかどうかに関わらず、アメリカはロシアとの代理戦争をエスカレートさせ続けるだろう。今年二月、ピート・ヘグゼス国防長官が明らかにした通り、徐々に低下するウクライナの戦闘能力によって生じた空白を埋める準備をアメリカは欧州に促している。

 アジア太平洋地域で中国との対立が激化しているのを受けて、アメリカは資源を向け直そうとしているが、一方、ウクライナでの代理戦争の監視も続けている。最新例としては、ロシアのエネルギー生産施設を狙った長距離ドローン攻撃作戦が挙げられる。

 ウクライナと欧米支援諸国がこの紛争の流れを変えられる可能性は低いと多くの専門家が同意しているが、早くも2019年にランド研究所が発表した「ロシアに手を広げさせる」 と題する論文で、そもそもウクライナが勝つ見込みがほとんどないことが明らかにされていたのは注目すべきだ。

 論文題名が示唆する通り、狙いは単に「複数圧力点に沿ってロシアの手を広げさせる」ことで、ウクライナはその一環に過ぎない。2022年にSMOが始まって以来、アメリカはロシアがウクライナに注力しているのにつけこみ、ロシア軍の介入で停滞していたシリア政権転覆戦争を再開し、シリア政府打倒を図った。シリア崩壊は、ロシア同盟国イランと米イスラエル直接紛争への道を開くために利用されている。イランも今や中東において不安定な孤立状態にある。

 ロシアのエネルギー部門への進行中の攻撃(トマホーク巡航ミサイル使用の可能性を含む)は、それ自体でロシアとの戦争に「勝利」することはないが、ロシアを更に「手を広げさせる」という、より大きな戦略に貢献するだろう。

 ロシアへの過剰攻撃や、分業や戦略的順位付けを通じて、近隣諸国におけるロシア権益を削ぐ戦略をワシントンは継続するだろう。同時に、ロシアは軍事力と産業力の拡大を継続し、中国、北朝鮮、イランといった同盟諸国と協調して対応することで、まずユーラシア大陸と、それ以遠の地域におけるアメリカの干渉を麻痺させ、その後、撤退させて、アメリカ戦略を凌駕しようとするだろう。

 アメリカとロシアは共に、物質的、軍事的、政治的な力の限界に迫り、それぞれの強みを活かしながら活動している。ロシアの強みは軍事力と工業生産にあるように見えるが、アメリカは軍事力を世界規模で展開するのに長けており、世界の情報空間をほぼ独占し、標的にした国を政治的に威圧し、掌握する強力な能力も依然有している。

 どちらがより強い持続力を持ち、自国の強みを最も効果的に活用しながら敵国の強みを無力化できるかによって将来の世界秩序は決まるだろう。ロシアと同盟諸国が伝統的軍事力と産業力を強化し、アメリカの政治的干渉と情報空間の独占に効果的に対抗できるようになる前に、アメリカとその属国ネットワークは、ロシア軍事産業力に匹敵、あるいは凌駕できるのだろうか。時が経てば分かるだろう。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/10/17/us-threatens-russia-with-tomahawk-cruise-missiles-amid-latest-escalation/

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 Judge Napolitano - Judging Freedom
SPECIAL-MUST WATCH] - Scott Ritter : Russia/Ukraine Today. 25:36
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
「中流消滅、7人に1人が「最下層、3人に1人となった非正規雇用の増加、日本の貧困率は15.4%と、G7中では米国に次ぐ高い水準、1993年に550万円だった世帯所得(年額)の中央値は、長期的に減少傾向が続き、2023年には410万円にまで落ち込んだ。(日経)
 RANDの「ロシアに手を広げさせる」記事にいては、当ブログには
 2022年8月31日
 F. William Engdah記事翻訳がある。
モスクワでなく、ベルリンとブリュッセル発のヨーロッパのエネルギー・アルマゲドン

2025年4月17日 (木)

最悪のシナリオ:アメリカを孤立させ、世界規模の紛争拡大を招くトランプ関税

Brian Berletic
2025年4月8日
New Eastern Outlook

 表面的にはホワイトハウスの無能さに起因する不合理な自滅行為のように見える世界各国を標的にしたアメリカの広範な関税導入に、経済学者や地政学専門家らは驚愕している。

 実際は、関税は超党派の外交、貿易、経済政策の中心的な柱で、前トランプ政権下で初めて実施され、次のバイデン政権下でも継続、更に拡大され、現トランプ政権下で更に拡大されている。

 アメリカは、自国国民だけでなく、いわゆる「同盟諸国」国民にも、長期にわたる経済的、社会的、政治的な大きな苦痛を与える準備をしている。

 広範囲にわたる関税は、ドナルド・トランプ大統領自身や閣僚の頭の中で生まれた行き当たりばったりの考え方ではなく、選挙で選ばれていない大企業・金融関係者が公言する政策で、ヘリテージ財団の「プロジェクト2025」論文の第26章「貿易政策」など特別権益団体が資金提供するシンクタンク文書の中で詳細に述べられている。

 この政策は、アメリカの再工業化やアメリカの貿易赤字の真の均衡を図る健全な計画からは程遠く、アメリカを「世界を支配する超大国」として維持することを目的としている。

 この論文は次のように主張している。  
この世界的地位を維持し、ひいては我が国と自国の民主主義制度を最大限に守るためには、アメリカが製造業と防衛産業基盤を強化すると同時に、世界的に分散したサプライチェーンの信頼性とレジリエンスを高めることが極めて重要だ。そのためには、必然的に、現在アメリカの多国籍企業が海外に委託している生産の大部分を国内に取り戻すことが必要になる。
 これは一見、アメリカ経済の全般的な再工業化を示唆しているように見えるが、実際にアメリカを再工業化するために必要な徹底的な教育改革や、インフラや産業への大規模な州の投資などの措置など、実際に必要な措置は全く真剣に議論されていない。

 プロジェクト2025の中で説明され、現在アメリカ現政権下で更に実施されている政策は、むしろ特に中国の貿易や産業を含む世界経済活動を混乱させ、海外の産業をアメリカに移転させるのを目的としている。

 一例として、半導体メーカーTSMC社はアメリカ本土のアリゾナ州への施設移転を余儀なくされた。インフラの未整備やサプライチェーンの脆弱さや、熟練労働者の不足のが重なって、予算とスケジュールの大幅な超過を引き起こしただけでなく、アメリカ人従業員だけでは対応できない職務を担うため、数百人もの労働者を台湾からアメリカへ移送する必要に迫られた。

 同様に、2014年にアメリカが画策したウクライナ政府の転覆とロシア連邦との代理戦争の勃発に始まり、その後アメリカと欧州が課した制裁とノルドストリーム・パイプラインの意図的破壊により、安価なロシア産炭化水素の供給が麻痺した。

 このため、ヨーロッパ製造業はアメリカに移転せざるを得なくなった。DWは2023年の記事「ドイツ産業はアメリカに移転しているのか?」で次のように指摘している。  
「一つは地政学的緊張の高まりだ。多くのドイツ企業はアメリカを『安全港』と見ている。他の理由としては、比較的低いエネルギー費用とインフレ抑制法に基づく非常に手厚い補助金が挙げられる。」
 長期的には、アメリカの関税と地政学的妨害により更に多くの産業がアジアやヨーロッパなどの地域からアメリカへ移転せざるを得なくなり、アメリカの不十分なインフラやサプライチェーンや人的資源や不十分な教育・医療制度への負担は増大する一方だろう。

 たとえアメリカに産業を移転するための上記基本的要素のいずれか、または全てを改善するために十分な資源が投入されたとしても、追いつくには何年もかかるだろう。

 短期的には、現在8年にわたる関税導入と貿易戦争の誘発政策が示しているように、既に莫大な生活費の危機が更に拡大し、食料品代、家賃、燃料費、医療費、教育費などで既に苦労している数千万人のアメリカ人の生活に影響を及ぼすことになるだろう。

 ワシントンが執着しているのは中国であり「MAGA」ではない

 欧州産業を弱体化させ剥奪するのにアメリカが成功したことは、最終的には中国に関して、世界中で遙かに大規模で野心的な政策を導くことになるのはほぼ確実だ。

 プロジェクト2025では、特に中国に関して取るべきいくつかの行動が列挙されており、その中には次のようなものが含まれている。  
戦略的に中国製品全てへの関税を拡大し、関税率を「中国製」製品を締め出す水準まで引き上げ、アメリカが主要医薬品などの必需品を入手できなくなることのないような方法とペースでこの戦略を実行する。
 そして  
重大な国家安全保障上のリスクをもたらし、アメリカ消費者をデータや個人情報の盗難にさらすTikTokやWeChatなどの中国のソーシャルメディア・アプリを全て禁止する。
 さらに  
医薬品、シリコンチップ、希土類鉱物、コンピューター・マザーボード、フラットスクリーン・ディスプレイ、軍事部品など、国家安全保障を脅かす可能性がある中国共産党サプライチェーンへのアメリカの依存を体系的に削減し、最終的には排除する。
 同様に  
スパイ活動や情報収集を防ぐため、中国人学生や研究者へのビザ発給を大幅に削減または廃止する。
 これらは全て現在アメリカの政策となっているか、あるいは現在のトランプ政権下でアメリカの政策へと変化しつつある。

 中国の製造業基盤は、医薬品や日用品から建設資材、大規模インフラ整備に至るまで、あらゆるものを世界各国にとって手頃な価格で提供し、世界の生活水準を急速に向上させている。世界は中国との協力を好機と捉えている。

 中国の人口の多さ(G7を合わせたより大きい)、巨大で成長を続ける工業基盤、そして世界クラスのインフラのため、アメリカは中国を脅威とみなしている。それは、純粋な国家安全保障上の懸念という観点ではなく、選挙で選ばれていないアメリカ大企業や金融独占企業が支援するプロジェクト2025や他の政策文書に示された「世界の支配的超大国」としてのアメリカの地位を維持するという観点だ。

 これら文書は、中国を「深刻な存亡の脅威」と宣言しているが、これは国民国家としてのアメリカやアメリカ国民に対する脅威ではなく(どちらも中国との協力から他の国々と同様利益を得るだろう)、中国製品やサービスだけでなく、中南米からアフリカ、ユーラシア全体にわたるあらゆる場所で中国と並んで台頭している国々の製品やサービスと競争できなくなった深く根付いた企業金融独占に対する脅威だ。

 最悪のシナリオ

 アメリカが世界各国に対して関税を引き上げている最も直接的で直感的な説明は、アメリカ内の競争力はないが深く根付いた企業金融の独占を外国との競争の激化から守るため、または世界中で拡大する中国の経済的影響力を抑制するための特定戦略から生じているが、多くの人が見落としている、遙かに懸念される可能性がある。それは、アメリカが経済戦争と実際の戦争の組み合わせを通じて意図的に破壊しようとしている世界経済から離脱することだ。

 関税がアメリカの生活費危機に及ぼす影響は明らかで、その影響は拡大しつつある。これはアメリカにとって、政治的、社会的、経済的に高くて持続不可能な費用を意味する。そのため、大きな紛争に先立つ予測以外に、そのような費用を容認できるものとして正当化できるものはほとんどない。

 アメリカが現在の世界経済体制の意図的な破壊、あるいは自らが公言している「敵国」の1つ以上との大規模戦争に備えているのであれば、まず自らの条件で世界経済から自らを切り離すこと、特に軍事産業基盤全体を含むサプライチェーンにおける中国への依存という点で、事前にそれが必要な前提条件になるだろう。

 半導体メーカーTSMCがアリゾナ州に工場を建設するという前述の例は、台湾にあるTSMCの施設が戦争により破壊される可能性に対するヘッジ手段であることは認めざるを得ない。中国自身が施設を破壊しない場合、アメリカは意図的に破壊して、中国による利用を阻止するとさえアメリカ政策立案者は公言している。

 2021年にアメリカ陸軍戦争大学が発表した論文「Broken Nest: Deterring China from Nest: Deterring China from Invading Taiwan,(壊れた巣:巣からの中国の抑止:中国の台湾侵攻の抑止)」では下記のように説明されている 。

…  アメリカと台湾は、台湾を武力制圧した場合に魅力を失わせるだけでなく、維持コストも莫大なものにする、標的を絞った焦土作戦を計画しておくべきだ。これは世界最大の半導体メーカーで、中国にとって最も重要なサプライヤーである台湾積体電路製造(TSMC)の施設を破壊すると脅すことで最も効果的に実行できるだろう。

 これは、この最新の、そして、そうでなければ不必要に極端な関税政策により促進された遙かに広範な準備の縮図を表している。

 特に中国を標的にした関税や関連政策は、軍事紛争が始まった場合、アメリカ自身への影響を最小限に抑えるのに役立つだけでなく、事前に中国を弱体化させるのにも役立つと考えられる。

 これはいかにも極端に聞こえるかもしれないが、アメリカが既にアジア太平洋地域において中国に対する大規模軍備増強を進めているのを忘れてはならない。またアメリカは、ユーラシア大陸全域でテロリストや過激派を駆使して、中国の一帯一路(BRI)インフラ、BRIプロジェクトに従事する中国人技術者や彼らを守ろうとする現地の治安部隊を標的に破壊して、長年にわたり中国との宣戦布告なき代理戦争を繰り広げてきた。近い将来の中国との紛争を想定して特別に設計された新兵器開発と配備をアメリカは進めている。

 それだけでなく、中国との非常に特殊な形の紛争、すなわち中国沿岸や国境内で中国軍そのものと戦うのではなく、世界中の中国の海上輸送を標的とする紛争にもアメリカは備えている。オバマ政権や現在二期目のトランプ政権やバイデン前政権を含む複数のアメリカ大統領政権は、中国の海上輸送の世界的封鎖となる可能性がある措置を講じてきた。

 オバマ政権の「アジアへの軸足」は、数十年にわたる「対テロ戦争」を軸に編成されたアメリカ軍から、同等または近似する競争相手との紛争に特化した戦闘力へと変貌を遂げ始めた。トランプ政権下で、アメリカは軍備管理条約から離脱し、弾道ミサイル防衛システムから中距離・長距離ミサイルに至るまで、条約違反のミサイル開発と配備を可能にし、現在アジア太平洋地域全体に配備されている。

 バイデン政権下で、米海兵隊全体が諸兵科連合の遠征戦闘部隊からアジア太平洋地域における対艦作戦に特化した部隊へと変貌を遂げ、戦車と歩兵部隊が対艦ミサイル部隊に置き換えられ、対等あるいは近似する勢力との紛争における沿岸機動や海上阻止作戦を目的とする海兵沿岸連隊」が創設された。

 米空軍もバイデン政権下で戦略実施を開始し、トランプ政権下でも継続されている。その戦略には、武力紛争の際、中国が米空軍を標的にして破壊するのをより困難にするため、米空軍力をアジア太平洋地域のより多くの空軍基地に分散させる「Agile Combat Employment(機敏な戦闘運用)」(ACE)戦略も含まれている。

 そして、ここ数カ月だけでも、アジア太平洋全域での米軍プレゼンスの拡大に加え、現トランプ政権は、紅海とホルムズ海峡の両方を標的とした中東での米軍増強、ロシアと中国の船舶輸送を動機として引用しての、具体的に挙げたグリーンランド併合の可能性や、具体的に、中国に対抗するため、特にパナマ運河占拠などにより、世界の海上輸送を締め付けるため思い切った措置を講じてきた。

 自ら計画的に世界経済を破壊することからアメリカ経済を遮断するための世界的関税政策は過激な政策だが、中国との戦争に特化した米軍の完全な再編や世界中の主要海上要衝の占拠も同様に過激で、その破壊を促進する戦略の一部としてのみ意味をなす。

 人類の歴史を通して、終末的衰退に陥った帝国は危険な絶望に陥ってきた。21世紀において、終末的衰退に陥った現代の帝国を代表するのは、核兵器を保有し、地球規模の軍事力を有し、世界経済の支配力により世界体制全体を破壊しうる力を持つアメリカだ。アメリカは、自ら何十年にもわたり主導権を握ってきた世界秩序が制御された破壊を生き延び、最強のプレイヤーとして浮上し「世界を支配する超大国」として再び自らを確立するための最良の立場を確立することを目指している。

 世界の他の国々や、アメリカが追求している新たな多極世界秩序にとって、抑止力や代替経済や貿易や金融体制やアメリカの経済戦争や、実際の戦争から経済と国民を隔離し保護する対抗戦略の組み合わせが必要になるだろう。

 アメリカは、自国国民のみならず、いわゆる「同盟諸国」国民にも計り知れない長期的な経済的、社会的、政治的苦痛を強いる準備をしている。アメリカの生活費高騰危機は、今後更に悪化するだろう。新興の多極化世界よりも国内外の経済的苦痛と混乱にうまく耐えられるとアメリカは期待している。多極化の存続は、その逆を証明できるかどうかにかかっている。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/04/08/worst-case-scenario-trumps-tariffs-walling-us-off-ahead-of-wider-world-conflict/

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 The New Atlas 本記事筆者が語る。トランプ関税は、彼の思いつきではなく、ヘリテージ財団論文を実施しているだけ。
Worst Case Scenario: Trump’s Tariffs Walling US Off Ahead of Wider World Conflict 31:03
 BreakThrough News
Trade War Will Be a ‘Colossal Blunder’ For U.S. w/ Prof. Richard Wolff 29:55
 日刊IWJガイド
「世界中を騒がせる『トランプ関税』政策の青写真判明! 昨年11月に大統領経済諮問委員会委員長が発表した論文にすべて書かれていた!」2025.4.16号

■はじめに~世界中を騒がせている「トランプ関税」政策の青写真が判明! 予測不能な「トランプ関税」政策は、大統領経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長が昨年11月の論文で提唱した「マールアラーゴ合意」に、実はすべて書かれていた!「米国から製造業と雇用が失われたのはドル高のせい」! ドル安誘導のため、関税で「既存の経済秩序を破壊し、各国を交渉のテーブルに引きずり込む」! 欧州が関税に屈しなければ、米国はNATOを離脱! 中国との金融戦争で、中国を疲弊させ、旧ソ連崩壊のように弱体化させる! その先にあるのは、強い米国の復活か、それとも世界から孤立し、没落する米国か!?

■万博開会中なのに、カジノ事業の工事を、24日、大阪府が反対を押し切って強行! 結局、ボッタクリ、手抜きだらけの大阪万博は、カジノのための「踏み台」か!? 万博本体の総事業費は3000億円規模だが、万博を口実に、真の目的であるカジノのために進められるインフラ整備事業は10.2兆円規模と30倍! しかし、夢洲(ゆめしま)は、まだ地盤が安定せず、メタンガスが噴出するゴミ捨て場!恒久的建築物を建てるには、あと20~30年必要!?

■IWJの財政は崖っぷちです! 4月は1日から15日までの15日間で、14件、9万8700円のご寄付・カンパをいただいていましたが、これは月間目標額の350万円の約3%と、たいへん厳しい状況です! どうか、緊急のご支援を! 緊急のご寄付、カンパをお願いします!

2024年12月28日 (土)

誰にも止められないワシントンの超兵器

Brian Berletic
2024年12月24日
New Eastern Outlook

 地政学的緊張が高まるにつれ、アメリカは最も強力な武器を振るっている。それは軍事力ではなく、自国の利益にかなうように国家や地域を再編する洗練された政治・情報統制ネットワークだ。

 誰にも止められないワシントンの超兵器

 ここ数カ月、欧米諸国のメディア全体で、ロシアと中国の優れた軍事力を認める声が高まっている。ロシアが初めて中距離弾道ミサイル「オレシニク」を使用したことで、ロシア(と、おそらく中国)が欧米諸国に現在欠如している強力な軍事力を有していることが認められた。

 NATOがウクライナに武器を供給し、訓練し、支援する共同の取り組みにもかかわらず、ロシア特別軍事作戦(SMO)が進行する中、戦線全体で、ウクライナ軍は加速度的後退を続けている。

 詳しく調べてみるとNEDや他のアメリカの取り組みは最も破壊的「大量破壊兵器」だ。

 だが、この新しいパラダイムが浸透する中、アメリカは依然強力で、比類のない、未だ対抗手段のない超兵器を保有していることを実証している。アメリカはそれを利用して、アラブ世界全体で、シリア経済とシリア・アラブ軍両方をゆっくり着実に空洞化させる状況を作り出し、国を制圧しようとするアメリカが支援するテロリストに何年も歯止めをかけた後、2024年12月中旬、両者の完全崩壊をもたらした。

 シリア経済や軍隊や政府が崩壊しただけでなく、国連リストに掲載されているテロ組織がダマスカスで権力を掌握し、シリアの街頭で民族的、宗教的、政治的反対派に公然と残虐行為を行っているのを世界中の多くの人々が歓喜している。

 これら全て、反撃しようのないワシントンの「超兵器」と世界中の情報と政治空間に対する支配力によるものだ。

 ワシントンの超兵器:政治干渉と攻略と支配

 オレシニク・ミサイルほど魅力的ではないが、ワシントンの超兵器は、実際は何倍も強力で、防御するのがより困難だ。

 アメリカ中央情報局(CIA)による政権転覆作戦として始まり、長年にわたって、現在では全米民主主義基金(NED*)として知られる組織へと変貌を遂げた。

 NEDは、世界中の居住可能な全大陸の何百もの組織やプロジェクトや反政府集団や政党に資金提供する子会社ネットワーク (フリーダム ハウス、国際共和党研究所 (IRI)、全米民主研究所 (NDI)) と関連政府組織 (USAID*) および民間財団 (オープン・ソサエティ、オミダイア・ネットワーク) を監督している。

 中東:イランとの戦争のため戦場設定

 近年、2011年の「アラブの春」の何年も前から、アメリカは扇動者の部隊を訓練し、彼らが母国に戻り、それぞれの政府を打倒するよう指導してきた。アメリカが支援するこれら扇動者が作り出した政治的混乱は、同様にアメリカが支援する武装過激派に利用され、政治的圧力に屈しない政府を暴力的に打倒した。

 「世界中で自由を推進する」とNEDウェブサイトは主張しているが、その政治的干渉は国家全体、更に世界中を不安定化させ、破壊し、数十万人の死者と数百万人の避難民をもたらしている。これらの国々に残されたものは、内部で争い続ける破綻国家や、標的となった国の最大の利益を犠牲にして、ワシントンの利益に完全に奉仕する従属政権に変貌し、時には、その両方が組み合わさった状態になっている。

 地域自体が、この地域におけるアメリカ覇権に対する抵抗の中心であるイランと同盟諸国を包囲し、孤立させ、最終的に標的にして打倒するのを目的とする非常に意図的な形をとっている。

 ヨーロッパにおけるNED:「民主的」ロシアの創造

 もう一つの例はウクライナだ。ガーディアン報道によると、独立中立のウクライナを打倒しようとするアメリカNED*の取り組みは2004年という早い時期に始まった。2014年にも同じ作戦が繰り返され、今回は成功した。この作戦にはNED*資金援助を受けた政治活動家だけでなく、ネオナチなどの武装過激派も参加し、キーウではアメリカ上院議員らが舞台上で彼らを応援した。

 NED*が資金提供する政治介入により標的国の政治的独立を損なう狙いは、その国自体を政治的に掌握するだけでなく、その国を地域内の他の掌握された国々とまとめて、ワシントンの主要敵国に対する統一戦線を形成することだ。

 ヨーロッパでは、敵は明らかにロシアだ。

 デイモン・ウィルソンは、NED*の社長兼CEOに就任する前は、アトランティック・カウンシル執行副社長を務めており、NATOとロシア間の「グレーゾーン」と呼ばれる場所の解消について語っていた。これら「グレーゾーン」とは、NATOとロシア間に緩衝地帯を提供する中立国に過ぎない。

 2018年に大西洋評議会で行った発言の中で、ウィルソンは次のように認めている。

 この戦略は、ヨーロッパに新たな分断線を作ることを意図したものではない。目的は、不安定で脆弱な地域を、安定し繁栄し自由なヨーロッパという確固たる基盤の中に固定することで、長期的に、この構想には民主的ロシアも含まれる。

 だが、モスクワ改革への道は、キーウ、キシナウ、エレバン、トビリシでなされる選択から始まるのかもしれない。

 これは意図を認めたものだ。ウクライナ、モルドバ、アルメニア、ジョージアの打倒と政治的掌握は、ロシアを更に包囲し孤立させ、NATOとロシア間の緩衝地帯を排除し、最終的にロシア自体を打倒し、政治的に掌握することを意図している。

 「民主的ロシア」とは、NED*が資金提供する組織やメディアや機関や政党に管理・運営され、アメリカとNATOが押し付ける「民主主義」に従属するロシアの婉曲表現だ。

 2018年にウィルソンが述べた発言は、ロシアに対するアメリカとNATOの政策だけでなく、ウィルソンが現在社長兼CEOを務めるNED*の行動にも反映されている。

 アジアにおけるNED:対中国統一戦線構築

 NED*の「アジア」ウェブページは、現在「透明性」という幻想を支えていた財務情報開示を全て削除し、16か国で338以上のプロジェクトが運営されており、2023年度だけで少なくとも5,170万ドルの資金が調達されていると自慢している。

 NEDは地域選挙への関与、反政府政党結成、更に分離主義推進を公然と認めている。

 このページは、国際法で中国の新疆ウイグル自治区として認められている地域を「東トルキスタン」と呼んでいるが、これはワシントンDCに設立され拠点を置く「東トルキスタン亡命政府」が主張している実在しない地域だ。

 国連憲章第2条の「全ての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全や政治的独立に対するものも、また国際連合の目的と矛盾する他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」という規定に、アメリカ政府による中国分離主義支援は明らかに違反している。

 ワシントンDCに分離主義者をかくまっているだけでなく、NEDを通じて、アメリカ政府は公然と分離主義を追求する多くの組織に資金提供している。これにはアメリカNEDの助成金受給者である世界ウイグル会議(WUC)も含まれ、ウェブサイトで「WUCは東トルキスタンの中国占領に対する非暴力的かつ平和的な反対運動を宣言する」と同会議は公然と述べている。

 NEDを通じてアメリカ政府から資金提供を受けているWUCは、新疆を中国から分離させることを企て、国際法に違反する陰謀を公然と行っている。WUCはこれを「平和的反対運動」として行っていると主張しているが、それでも、その分離主義は、現在シリアに拠点を置く「東トルキスタン・イスラム運動」(ETIM)などの過激ウイグル分離主義者による暴力的テロ行為と合致しており、国連リストに掲載されているテロ組織ハヤト・タハリール・アル・シャム(別名ジャバト・アル・ヌスラ戦線)と長年共に戦い、今や中国を標的にすることを公然と誓っていると、テレグラフ紙が最近報じた。

 NEDの現在の「アジア」ウェブ・ページを見れば、取り組みがアジア全域個々の国の政治的掌握のみに焦点を当てるのではなく、中国に対抗する地域統一戦線の構築を目指しているのは十分明らかだ。

 「民主的統一促進」という婉曲表現でNED*は次のように宣言している。  
中国は地域および世界大国として台頭し、経済的影響力によって、この地域の政権にとって強力な支援者および影響力を持つようになった。中国は大きな経済力を利用して、民主主義と人権の尊重は、いかなる可能性がある提携相手にとって必須条件ではなく、望ましい特徴でもないことを示唆している。

 アジアの民主主義国は、民主主義の価値、法の支配、ルールに基づく制度を守り、維持し、地域で高まる非自由主義的傾向に効果的に対抗する必要性を認識し、国際的に認められた規範と価値の擁護と維持において協力し、より大きな責任を負う方法を模索している。
 また、次のようにも述べている。  
そのため、NED*は、アジアの民主主義国家間の民主的統一と協力の強化、および民主主義主体間の地域的連帯と協力の強化と拡大に焦点を当てた様々な取り組みを支援している。具体的には、NED*と中核機関は、対話を促進し、支援を構築し、民主主義の規範と価値観を守るためのリーダーシップ強化を促進するため、地域の主要民主主義国を支援している。また、メディアの自由、自由で公正な選挙、デジタル・セキュリティと保護、基本的人権などの主要な民主主義の問題に関し、民主的な声を増幅し、交流を促進し、地域の連帯を強化するために活動する民主主義と人権の活動家と擁護者の地域ネットワークを支援している。
 これら全て、アメリカNED*が、中国を標的としたアメリカ国務省の偽情報を熱心にオウム返しする地域的反中国運動を構築し、中国に対して地域住民に悪影響を与え、同時に、ヨーロッパでロシアに対して行ったのと同様に、中国周辺のアジア全土へのワシントンの影響力と支配を拡大しようとしていることを認めるくどい言い方だだ。

 BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)とSCO(上海協力機構)は、アメリカを本拠とするソーシャルメディアに代わる多極的プラットフォームを立ち上げる取り組みを主導し、アメリカや欧州の検閲や操作の及ばないところで世界の国々が情報を共有できるようにすることが可能だ。現在、ロシアと中国のソーシャルメディアは、国際的用途ではなく国内向けに最適化されている。

 最後に、地域および国家のNGO透明性法の促進や、この危険を暴露し、立法を通じてこれに対抗する行動をとる加盟国を支援するフォーラムの創設を通じて、BRICSは、アメリカ (および欧州) の干渉を暴露し、対峙する取り組みを主導することも可能だ。これには、アメリカの政治、情報支配に従わせることを目的とするアメリカによる脅迫や制裁や他の強制措置の標的となった国への保護提供が含まれる。

 これら全ての措置は、国連憲章の核心原則に沿って、多極化した世界における国家主権の強化と国家の自決権の維持を目的としている。アメリカの全米民主主義基金は、名目上でさえ、世界中で「民主主義」を推進していると見せかけているが、民主主義は自決権の手段で、全米民主主義基金が資金提供するものは全て、全米民主主義基金の資金が注がれる国々ではなく、ワシントンにより、ワシントンのために決定される。

 NEDはワシントン最大の「超兵器」だ。国家の政治、情報、学術の領域に侵入し、占領するその能力は、世界中でアメリカ覇権を阻む最大の通常軍さえも回避する。NEDは世界中の国家や地域の不安定化と破壊に関与し、ロシアが設計し配備できるいかなるミサイルより大きな被害をもたらしている。真に多極化した世界の未来は、ワシントンとウォール街の全ての兵器、特に最も広範囲で効果的な兵器から身を守ることにかかっている。

 アメリカNEDがどのようにこれを行っているかの一例は、2020年10月にタイの視聴者を対象に開催された「Beyond Boundaries」Facebookライブ・イベントだ。この催しは「中国におけるウイグル人の状況と我々が彼らを助ける方法」と題され、元NED職員で現在NED*の助成金受給者「ウイグル人権プロジェクト対外関係担当部長」ルイーザ・グレーブが出演した。

 司会者には、タイ国内を狙ったNED資金による破壊活動に参加し、推進したとされる「民主化活動家」Netiwit Chotiphatphaisalが含まれていた。

 フェイスブック・ライブイベントの狙いは、中国がタイにとって最大の貿易相手国、投資国、観光地で、タイ初の高速鉄道建設を含むインフラ整備のパートナーであるにもかかわらず、中国に対して受容的なタイ国民を継続的に攻撃することだった。

 NED*が資金提供している野党集団も進行中のタイと中国の高速鉄道プロジェクトを含む、タイと中国の協力を完全に阻止することに重点を置いている。最も明白な例は、億万長者の野党指導者タナトーン・ジュアンルーンルアンキットがアメリカを訪問し、アメリカ国務省、NED*傘下のフリーダム・ハウス、アリゾナ州に拠点を置くハイパーループ・ワンの代表者と会談した後、タイに戻って中国が建設する高速鉄道プロジェクトを非難したことだ。

 その代わりに、タイは現在廃止されている「ハイパーループ技術」に投資すべきだとタナトーンは主張した。

 ある公開プレゼンテーションで「過去5年間、我々は中国を重視しすぎていたと思う。その重要性を減らし、欧州や日本やアメリカとの関係のバランスを取り戻したい」とタナトーンは主張した。

 2019年のタイ総選挙で敗北した後、タナトーンはタイの街頭でNEDが支援する抗議活動を率いた。その後、彼の政党は選挙でより良い成績を収めたが、これは保護されていないタイの情報空間全体にNEDが及ぼした腐食的影響によるものだ。

 現在、タイでも東南アジア全域でも、客観的に見て中国の方がより良い未来を提供しているにもかかわらず、NEDや破壊的な政治的反対派集団のネットワークやメディアや更にはアメリカが支配する政党により、依然不当な影響力をアメリカが行使しており、この地域の本来明るい未来は2014年以前のウクライナのように不安定な立場に置かれている。

 フィリピンは既にアメリカに完全占領され、中国と対峙し、対立するため利用されており、依然、台頭するアジアは欧州や中東同様、地域戦争に巻き込まれる可能性に直面している。

 ワシントンの超兵器に対する防衛

 ロシアと中国はともに、アメリカによる政治掌握という「超兵器」に対する有効な防衛策を考案した。

 両国は、海外から資金提供を受けているいわゆる「非政府組織」(NGO)に対して透明性を要求するか、あるいはそれらを全面的に禁止するか、いずれかを行っている。

 また両国はアメリカ国務省と連携して標的国の世論や国家アイデンティティを操作するアメリカを本拠とするソーシャルメディアを制限または禁止し、自国の国内ソーシャルメディアにより情報の流れを監視し、それぞれの情報空間を確保している。

 両国には、それぞれの価値観を推進する強力な国内メディア産業と自国の立場を世界中の視聴者に伝える国際メディアがある。

 だが両国がこれまでできなかったのは、この専門知識をパートナー諸国に広めることだ。

 既に両国は、空域、国境、海岸を含む伝統的な国家安全保障領域を防衛するため、パートナー諸国に幅広い防衛システムを販売している。だが、どちらの国も、これら輸出品に国家の情報空間を防衛する手段を組み込んでいない。実際、これまで、そもそも国家情報空間を防衛することが21世紀には極めて重要なことを両国は伝えられていない。

 ロシアと中国は、各国がそれぞれの情報空間に設置し、監視できるターンキー・ソーシャルメディアを輸出し、アメリカを拠点とするネットワークに取って代わり、自国国内の情報の流れに対する統制を再確立できる。これにより、シリコン・バレーやアメリカ国務省パートナーに委ねるのではなく、各国と国民が、どの情報を共有できるか、できないか決定できるようになる。

 同様のパッケージを提供して、各国がロシアのRTやスプートニクや中国のCGTNのような国際的メディアを立ち上げるのを支援するとともに、アメリカ国務省のフルブライトやヤング・リーダーシップ・イニシアチブなどのプログラムのようにワシントンやウォール街の利益ではなく、対象国の最善の利益を反映する現地ジャーナリストや教育者や将来の政治家や外交官を育成するための国内教育体制の構築支援もできるだろう。

 BRICS主要メンバーたるロシアと中国

 一見しただけでは、NEDや世界中の政治および情報空間を支配しようとするアメリカの他の取り組みは、全く「武器」には見えない。だが詳細に調べてみると、これらは21世紀に使用される最も破壊的「大量破壊兵器」だ。これらは世界の平和、安定、繁栄に対する深刻な脅威だ。同様に、これらを暴露し、防御するため真剣な努力を払う必要がある。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/12/24/washingtons-unstoppable-superweapon/

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 2024年12月31日追記

 素人翻訳に不満な方は、英語を専門とする方々による「寺島メソッド翻訳NEWS」記事をお読み願いたい。
米国政府の「超兵器」!!CIAの別働隊NED(全米民主主義基金)が、アジア含め世界中で破壊活動を展開!!
 Dialogue Works
Larry C. Johnson: Israel fighting Yemen  45:17
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
韓国国会議員が韓悳洙大統領代行を弾劾、韓国が暫定指導者を弾劾するのは初めて。韓国の指導部の危機はさらに深刻。尹氏罷免を裁く憲法裁判所は定員9名の三分のニ必要。しかし3名欠員、したがって一名でも反対すれば弾劾不能。野党の補充する動きを韓大統領代行が拒否→韓大統領代行を弾劾。
 耕助のブログ
No. 2374 レバント地域は無政府状態

2024年11月20日 (水)

トランプ政権:「戦争タカ派なし」から「全員戦争タカ派」へ

Brian Berletic
2024年11月13日
New Eastern Outlook

 2024年のアメリカ大統領選挙までの数週間、前大統領で現在次期大統領のドナルド・トランプがアメリカの海外での戦争を中止し、代わりにアメリカ自体に投資してくれるだろうとアメリカ人や世界中の多くの人々は期待していた。



 トランプ政権:「戦争タカ派なし」から「全員戦争タカ派」へ

 こうした期待は、トランプ陣営を取り巻く言論に基づいていた。候補者の息子、ドナルド・トランプ・ジュニアは「全てのネオコンと戦争タカ派をトランプ政権から締め出すには最大限の圧力が必要だ」と公に発言したが、これはトランプ候補の選挙運動中の言論を反映している。

 トランプ次期大統領の考慮対象と被任命者は全員強烈なネオコンだ

 残念ながら、ドナルド・トランプ次期大統領の前回任期時と同様に、これは、ワシントンDCで暮らし、息をしている最も声高な「ネオコンと戦争タカ派」で内閣を埋める前に、戦争に疲れたアメリカ人の支持を確保して、海外の国々のバランスを崩すことを意図した空約束だった。

 思惑の継続

 トランプ次期大統領の前回政権では、ジョン・ボルトンやマイク・ポンペオやニッキー・ヘイリー等の筋金入りネオコンや戦争タカ派が閣僚を構成し、連中はトランプ大統領がオバマ政権から引き継いだ全ての戦争を継続し、中国やイラン、更にロシアも含め、アメリカの特殊権益集団が長年求めてきた更なる戦争を誘発しようと絶えず働いてきた。

 第一次トランプ政権中に、アメリカは中国との貿易戦争を開始し、スマート・フォン・メーカー、ファーウェイを含む中国最大で最も成功している企業を骨抜きにすることを狙った措置を講じ、全欧米諸国での販売禁止や、アメリカを拠点とするグーグルによる、ファーウェイへのAndroidオペレーティング・システム供給停止や、更に、カナダ旅行中のファーウェイCFO孟晩舟を拘留するまでに至った。

 第一次トランプ政権下でも、アメリカはオバマ政権から引き継いだ政策として、中国を領土内に包囲・封じ込める手段としてアジア太平洋全域で軍備増強を継続した。

 中東では、オバマ政権下で始まったシリア不法占領をトランプ政権は継続し、シリア政府と同盟諸国に対する攻撃を続け、シリアの石油をくすねるのをトランプ大統領は自慢していた。またトランプ政権第一期には、公務でイラクを訪問中のイラン高官カセム・ソレイマニ将軍をアメリカが暗殺したが、これはイラン、イラク両国に対する紛れもない戦争行為だった。それまで、自称「イスラム国」との戦いの上で、シリアとイラクを含む地域全体で、ソレイマニ将軍は成功していた。

 ロシア権益の代理人だとトランプ大統領は非難されたが、実際は彼の政権がウクライナ軍に武器供与し始め、ウクライナにおけるロシアとの代理戦争を加速させ、2022年2月に特別軍事作戦(SMO)をモスクワに開始させる最後の一線を越えたのはほぼ確実だ。中距離核戦力全廃条約からアメリカが脱退し、その後、ロシアに向ける中距離ミサイルをバイデン政権がヨーロッパに配備する道を開いたのも第一次トランプ政権の時だった。

 アメリカの海外介入を終わらせるという選挙公約に、第一次トランプ政権が著しく違反したため、多くのトランプ支持者は、トランプ大統領の「経験不足」を含む様々な言い訳に頼り、ポンペオやボルトンやヘイリーが本当は何者か彼は知らなかった可能性があり、第二次政権では彼の内閣は、そこで学んだ教訓に基づいて行動するはずだと主張した。

 沼地を補充する

 時は流れ、トランプ新政権は、ボルトンやポンペオやヘイリーが新政権では役職につかないと発表し、教訓を実際に学んだのだという希望を一時的に高めた。

 しかし、この状態は長くは続かなかった。その後、次期国家安全保障担当大統領補佐官はジョン・ボルトンと思想的に似ているマイク・ウォルツになる可能性が高いと発表された。ニッキー・ヘイリーと思想的に良く似たエリス・ステファニックが国連大使に就任すると発表された。またマルコ・ルビオリチャード・グレネル両人が次期アメリカ国務長官候補として検討されているが、彼らの考えは、トランプの前国務長官マイク・ポンペオやバイデン政権下のアメリカ国務長官アンソニー・ブリンケンと区別がつかない。

 トランプ次期大統領が検討し任命した人物は、いずれも海外での戦争、特にロシアや中国やイランに対する戦争を擁護して暮らしてきたが、リビアやシリアやベネズエラや他の多くの国々に対する戦争も主張してきた強烈なネオコンや戦争タカ派だ。ステファニックは、2014年のウクライナを含め、世界中で政治干渉に関与しているネオコン主導の組織、全米民主主義基金の 「専門家 」としてリストアップされている。

 トランプ次期政権によるネオコンや戦争タカ派指名は「釣り餌」だと主張する人もいるかもしれないが、トランプ政権がJ・D・ヴァンスを副大統領候補に選んだのは、実際、ウクライナ以外では、戦争と好戦主義が続くぞという公然の宣言だった。

 ニューズウィークは「アメリカはロシアではなく中国と戦うための武器が必要だとJD・ヴァンスがティム・ディロンに語る」という記事で「ウクライナへの軍事支援より、インド太平洋の安定と台湾支援をアメリカは優先するべきだ」と明言している。

 彼が反対を唱えて選挙戦で勝利した政策に関与していたネオコンや戦争タカ派と、トランプ次期大統領が親密で、彼らを任命したことは、そうでないことを示唆する魅力的な言辞にもかかわらず、トランプ第一次政権によるアメリカ外交政策を切れ目なく継続したのを繰り返すことを意味する。

 他地域で戦争を加速させるために、ウクライナを一時停止

 すると、ウクライナ紛争を終わらせるとトランプ新政権が決意しているように見えるのは矛盾するように思えるかもしれない。これはアメリカにおける政治移行というより、ホワイトハウスの主やアメリカ議会の支配者が誰だろうと、アメリカ外交政策を左右する選挙で選ばれないアメリカ特別権益団体間での優先順位の変化を表しているにすぎない。

 ウクライナでのアメリカ代理戦争は、それを引き起こす上で、一期目トランプ政権も役割を演じた戦争だが、どう見ても終焉しつつある。ウクライナを犠牲にして「ロシアに手を広げさせる」狙いは、可能な限り最大限に実現された。アメリカの備蓄は枯渇し、残されたアメリカ軍事力は、エスカレーションで、イランや中国とのより大規模で危険な戦争のため温存する必要があるため、ワシントンの選択肢は、ウクライナでの攻撃を強化するか、二つの、あり得る戦争の成功可能性が完全に閉ざされる前に、イランと/または中国に軸足を移すかの、いずれかだ。

 トランプ次期政権はネオコンや戦争タカ派で占められており、アメリカが据えた分離主義台湾政権の武装を彼らは公然と推進し、最終的に、台湾を中国から永久に切り離そうとしている。台湾独立をアメリカ国務省は公式には支持しておらず、中国は一つで、台湾は中国の一部で、北京に承認された中国政府は中華人民共和国(PRC)のみだとする「一つの中国」政策で北京と二国間協定を結んでいるにもかかわらずだ。

 この紛争に備える一環として、オバマ、トランプ、バイデン政権を通じて、アジア太平洋地域における軍事的存在をアメリカは拡大しており、この政策の最も声高な支持者で構成される第二次トランプ政権下でも間違いなく継続されるだろう。

 この過程には、現在フィリピン最大の貿易相手国で、最近まで重要なインフラ構築パートナーだった中国とフィリピン間に対立を作り出し、かつてアメリカ植民地の東南アジアの国フィリピに対する米軍の足跡を拡大する口実を作ることも含まれる。これにより、アメリカは、中国と台湾周辺の紛争地帯を近隣の米軍で更に包囲することが可能になる。

 バイデン政権は中国に対し「軟弱」だと、アメリカの政治「右派」は主張したが、中国との戦争に備えるため、米軍の徹底的再編が行われたのもバイデン政権下だった。

 これには、米海兵隊を高度に機動性がある対艦ミサイル部隊への再編や、戦争が始まった場合、米軍施設に中国が報復するのをより困難にするために、米空軍基地をアジア太平洋地域全体に分散させる機敏な戦力展開(ACE)の採用などが含まれる。

 トランプ政権が、その後のバイデン政権下で始まったウクライナにおける対ロシア・アメリカ代理戦争の舞台を整えたのと同様、公然と敵対的な反中国政権が権力を握れば、これら変革された米軍部隊が今や完全配備されることになるだろう。

 極めて明らかなのは、アメリカ外交政策が、アメリカの選挙により決定されるわけではないことだ。選挙は、継続する思惑に過ぎないものを国民に売り込むために使われる口実や、その口実を言う人物や、アメリカ外交政策が、選挙があるにもかかわらず、継続的に変化しそこねている理由の言い訳を決めるにすぎない。

 今後四年、アメリカの敵意に直面する世界中の国々は、アメリカによる海外侵略が全く不可能な状況を作り出す多極的国際秩序の構築に引き続き取り組まなければならない。これは、アメリカの制裁や強力な軍事的抑止力が及ばない、金融や経済的代替手段を通じて、制裁であれ軍事力であれ、代理介入であれ直接介入であれ、アメリカの強制力を抑制する金融、経済、外交、軍事手段を使用することで実現可能であり、実現されつつある。これにより、もはや自らを押し付けられない世界と建設的に協力するという唯一の選択肢がアメリカの特殊権益集団に残される。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、ライター。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/11/13/the-trump-administration-from-no-war-hawks-to-all-war-hawks/

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 The New Atlasで筆者本人が本記事について語っている。
The Trump Administration: From “No War Hawks” to ALL War Hawks 35:10
 Alex Christoforou Youtube
Gabbard DNI. Gaetz AG. Bolton BALLISTIC. EU freak out as Russia wins. Economist, Elensky clueless 31:12
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 対イラン強硬派のマルコ・ルビオが国務長官
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 「ウクライナ軍が米国製ミサイルでロシアを攻撃! プーチン大統領は改定核ドクトリンに署名! 退陣間際のバイデン政権による核戦争の危機!」2024.11.20号

 ■はじめに~ウクライナ軍が、米国製ATACMSミサイルでロシア領内を攻撃したことが明らかに! 一方、プーチン大統領は改定した核ドクトリンに署名!「ロシアが核保有国に支援された非核保有国によるいかなる攻撃も共同攻撃と見なす」との内容は、米国がウクライナに許可したATACMSミサイルでのロシア攻撃に該当! 退陣間際のバイデン政権が、停戦を公約に掲げたトランプ氏を選んだ直近の大統領選で示された「現在の民意」を踏み躙り、ウクライナ紛争の火に油を注いで、核戦争の危機に! スロバキアのフィツォ首相は、「和平交渉を妨害し、遅らせる試みだ」と非難!

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