Tony Cartalucci/Brian Berletic

2023年2月 4日 (土)

アメリカ、エイブラムス戦車をウクライナに供与。それで変化が起きるか?

2023年1月27日
Brian Berletic
New Eastern Outlook

 ウクライナ軍が多くの戦線で敗北する中、益々多くのドイツ・レオパルト2主力戦車とともにアメリカも少なくとも31台のM1エイブラムス戦車を送ると最近発表した。

 「「団結した」取り組みとバイデンは称賛し、ドイツと共にウクライナに戦車を送る」というガーディアン記事はこう書いている。

 ジョー・バイデンは31台のM1 エイブラムス戦車のウクライナへの送付を承認したが、これは多くの国々が戦線に戦車を送るのを
いやがるのを止め、ロシア攻勢に対処するアメリカの取り組みの本格的エスカレーションだ。

 ウクライナの戦争遂行用にドイツがレオパルト2戦車14輌を供与し、キーウを支援するため同盟諸国に他の戦車を再輸出する許可を与えると確認した後、アメリカもこれまでの姿勢を逆転させた。

 記事にはこうもある。

 ホワイトハウスのルーズベルト・ルームで「ヨーロッパとアメリカが決意を弱めるのをプーチンは期待していた」とバイデンは述べた。「我々の対ウクライナ支援が時間と共に崩壊すると彼は期待していた。彼は間違っていた。彼は間違っていた。彼は最初から間違っていたし彼は今後も間違い続ける。」

 だが外見上明白な支援の増加にもかかわらず、詳しく分析するとウクライナに対する実際的な支援はとっくの昔に底を突き、これまでの支援策より戦場に対する効果が更に少ない「奇跡の兵器」策に欧米が出たように思える。

 多くの人々が考えているような「形勢を一変させるもの」ではない

 ウクライナに欧米が主力戦車を供与すれば「形勢を一変させる」だろうという考えは欧米の主力戦車はロシア戦車より「優れている」という神話に根ざしている。この神話は1991年にイラクで、そして2003年にアメリカやイギリスの最新主力戦車がソ連時代に輸出されたT-72と対戦したアメリカによるイラク侵略の際の実績に基づいている。

 数人の経験豊富なアメリカ軍将校がこの誤解を警告しているだけでなく最近の紛争における欧米主力戦車の実績は大いに異なっている。

 元米軍中佐ダニエル・デイビスは最近の記事でイラクでの欧米戦車の実績を巡る神話を一掃し、これらハイテク戦車が相違をもたらし、ウクライナのものだと主張する地域からキーウがロシア軍を追い出すのを可能にするかどうか問うている。

 イラクで実際アメリカの勝利をもたらした重要な要因を彼は指摘している。彼はこう説明している。

 デザート・ストームではアメリカM1A1エイブラムス戦車がサダム・フセインのソ連製T-72戦隊を殲滅し、再び2003年にエイブラムスが先導したアメリカ攻勢はT-72がアメリカ戦車にかなわないことを明らかにした。そして実際アメリカ戦車は大いに成功していた。デザート・ストームの際、例えばアメリカと連合諸国は3,000台以上のイラク戦車を破壊した。だがサダムの軍は一輌のエイブラムス戦車も破壊しなかった。ロシアが持っている戦車に対してそれほど有効だと分かった時、誰であれエイブラムスかそれに匹敵する戦車を持ちたいと望むのは理解できる。

 だがデイビス中佐はデザート・ストームの際にイラク軍が使った戦車がロシアが今持っている種類の戦車と違うことを言っていない。

 デザート・ストームの際イラク軍が使ったT-72は元来生産された時の鋼鉄装甲でしか守られていなかった。彼らには暗視能力や赤外線画像装置や温度や砲弾の種類や風速や方向を含め多くの要素を考慮して射撃手のため自動的に砲撃方法を計算する射撃管制装置のコンピュータ化が欠如していた。

 アメリカはこれらの遙かに劣ったイラク戦車と戦うために1,900輌以上のエイブラムスを配備し、この巨大な戦車勢力が、全てがまとまった際、諸兵科連合戦と呼ばれる大規模空軍力や砲兵隊や機甲化歩兵に支援された事実にデイビス中佐記事は言及していない。

 だがデイビス中佐は、ほぼ完全にアメリカを優位にするのに効果があった非常に重要な要因、訓練に言及している。

 訓練は重要で訓練には何年も要する

 デイビス中佐は記事でこう説明している。

 まずアメリカ人乗務員は個人として大いに訓練されている。私の部隊では、運転手、砲弾装填者、射撃手と指揮官が全員個々の業務を習得し、戦闘の一年以上前に小隊として、更に中隊レベルでかなりの時間訓練を行っており、その後我々は戦隊、最終的に連隊レベルで訓練した。誰も我々以上に戦う準備ができていたはずはない。

 逆にイラク軍はこうした訓練を全く受けていなかった。デイビス中佐は多くのイラク戦車兵は皆無ではないにせよ、ほとんど主砲を撃つ訓練をしておらず、主力戦車のような重装備兵器を戦場で維持するのに必要な部隊レベルの訓練や保守計画が「事実上実在しなかった」と説明している。

 訓練における相違は非常に極端で、たとえアメリカ戦車兵がイラクのT-72を運用し、イラク人がアメリカのM1エイブラムスを与えられたとしてもアメリカが勝っただろうとデイビス中佐は結論している。

 彼が更にこう説明している。

 戦車戦では最初に正確に発砲する側がほとんど常に勝つ。デザート・ストームで、我々はほぼ最初に発砲し、我々の訓練のおかげでほとんど決して外れなかった。だがイラク射撃手が砲撃した時でさえ、めったに命中しなかった。結果は彼らにとって致命的だった。

 今のロシア戦車にはコンピュータ化射撃管制装置や暗視装置や赤外線画像装置や高度な爆発反応装甲(ERA)がある。彼らは少なくとも欧米がウクライナに供与した主力戦車と同じぐらい有能だろう。しかもロシア戦車は何倍も多いだろう。訓練は別として、ウクライナでの戦車戦で誰が最初に相手を見つけ最初に正確な砲撃をするかという問題では欧米戦車を探し、それに攻撃をしかける能力があるロシア戦車のほうがずっと多いだろう。

 初心者レベルの戦車隊員を最新の欧米主力戦闘戦車を操作するよう訓練するにはほぼ半年かかる(米軍ウェブサイトによれば22週間)。欧米の戦車乗組員は運転手、射撃手、装填係と指揮官で構成される。戦車指揮官は往々にして何年も特定の戦車を操作する経験を持っており、初心者戦車兵で構成された欧米戦車の乗組員はいないことを意味する。

 これはウクライナには到底克服できない問題だ。欧米メディアはウクライナ人が欧米戦車を操作し配備する方法を学ぶには数カ月要すると認めているが、これは乗組員が、どのように戦車を部隊として一緒に使用すべきかに関するどんな訓練も省いて、いかに個別戦車を操作するかという集中特訓を与えられた場合の話だ。

 多くの人々が訓練は短縮可能で、ウクライナ軍は「士気が高く」何年も必要な訓練や経験を何らかの方法で数週間に縮められると主張している。これは本当ではない。

 (退役)米軍中将マーク・ヘルトリングはTwitterの最近のスレッドで同意している。

 彼は訓練は「ごまかせる」はずがないと警告している。もしそうであれば乗務員は実際戦車自身の損害をもたらし戦場では役に立たないだろう。

 M1エイブラムスは損害を与えるのを避けるため相当な時間の注意深い操縦士訓練が必要なタービンエンジンで動く。破損したエンジンは交換する必要があるがウクライナの前線では容易な作業ではない。エンジンは普通の機械工では保守できず訓練され免許を持った技術者が対処する必要がある。

 ヘルトリング中将はウクライナ国内で修理を行うのは不可能なので、M1エイブラムスの故障部品がなんであれ、事実上、800kmの兵站線が必要だと指摘している。

 イラクやサウジアラビアを含めM1エイブラムスを使っている他の国々が戦隊を立ち上げるのに、それぞれ5年、7年訓練が必要だったと彼は指摘している。両国とも技術者も自身でする訓練も装置をないため依然ゼネラル・ダイナミクス(戦車製造企業)に保守を頼っている。

 だからウクライナにいきなりこのような兵器を配置しようと試みれば生ずる困難を想像するのは容易だ。

 ウクライナの欧米戦車は単独で戦うことになる。

 デイビス中佐は「戦車は単独では戦えず、さもないと死ぬ」と記事で指摘している。

 彼はウクライナがこの現在の紛争の間終始持ち得ない支援で、アメリカがイラクに侵攻する際豊富に持っていた航空や火砲支援や機甲化歩兵諸兵科連合戦に言及している。

 ヘルソンに対するウクライナ攻撃に言及し、前進するウクライナ戦車が主に砲弾やロケット弾や対戦車ミサイルの標的にされ破壊されたと指摘している。「戦車対戦車」交戦が行われた例は極めて少数しかない。ロシアはウクライナがロシア陣地に対して行った複数の攻撃の際、旅団に相当するウクライナ兵や兵器を殲滅した。デイビス中将は、たとえウクライナがT-72の代わりにM1エイブラムスやレオパルト2戦車を操作したとしても結果的に同じことになるだろうと推測している。

 これは戦場で戦車以外にもロシアがウクライナより際立って大きな空軍力や砲兵隊を持っているためだ。ロシアは装甲車両やヘリコプターや軍用機から発射する対戦車誘導ミサイル(ATGM)や、歩兵隊が操作する携行式ロケット弾(RPG)に至るまで様々な対戦車火器を開発し大量に所有している。

 これらATGMやRPGは最近の世界中の紛争で、とりわけイギリスのチャレンジャー2やアメリカのM1エイブラムスやイスラエルのメルカバやドイツのレオパルト2などの欧米主力戦車に対して有効なことが分かっている。しばしばこれらの損失は空軍力や大砲や戦車のような統合された兵器支援の恩恵なしで古いロシアの対戦車火器で武装した非正規軍の手によってこうむっている。

 負けた紛争を長引かせる

 2022年2月ロシア特別軍事作戦の初め、ウクライナは多数の近代化されたソ連時代の戦車、大砲、軍用機と機械化歩兵隊を持っていた。

 ロシアはそれらを破壊しソ連時代の装置を持っているNATOの東ヨーロッパ加盟諸国兵器の大洪水を引き起こした。この「第二」軍もウクライナのハルキウとヘルソン攻撃の際に破壊された。

 今NATOはウクライナにウクライナ軍が戦場で使ったり保守したりした経験のない兵器で構成される「第三」軍を構築している。たとえ訓練や補充問題が存在しないとしてもロシア兵器に対して大きな優位をもたない兵器だ。なお悪いことに、ロシアは主力戦車を含め戦場で様々な種類の膨大な兵器を保有し、西側諸国全体には出来ない勢いで戦車の損失を穴埋めする能力がある。

 ウクライナへの欧米兵器供給はこの紛争を確実に引き延ばし双方に更に多くの死傷者をもたらしウクライナをより徹底的に破壊するだろうが戦闘結果は変えるまい。

 砲兵や航空援護の恩恵なしに未経験のウクライナ戦車隊員が乗員として働く欧米戦車はウクライナ軍が長年操作してきた兵器よりかえって悪いだろう。これら戦車の乗務員として欧米の戦車操縦士が働くことに対する疑念は事実に基づいている。だがたとえ欧米の操縦者がこれら戦車の乗員として働いたとしても彼らは依然数で負け、アメリカがイラクで勝つの要した類の複合的兵器援護がない戦闘に入るはずだ。

 しまいにウクライナは始めの時点に戻り彼らの膨大な損失を穴埋めするにはもう一つの軍隊分の兵器が必要で、それを操作する訓練した人的資源が縮小しているのに気づくだろう。

  Brian Berleticは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2023/01/27/us-to-send-abrams-tanks-to-ukraine-will-it-make-any-difference/

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 Scott Ritter

More Weapons for Ukraine... Just a ploy for Political Cover 1:07

 佐高信の隠し味

岸田よ、中村哲に学べ! 松元ヒロさん 20230126 1:02:55

 今朝の孫崎享氏メルマガ題名

ソ連侵攻当初、米国民はウクライナへの武器提供を圧倒的に支持。共和党支持者(カッコ内は全体)、昨年3月支援多すぎるが9%(7)、現在は40%(26)。共和党は下院支配し、本年秋頃から対ウクライナ軍事支援額は減少が予想される。当然戦況に影響。

 日刊IWJガイド

「2022年、エネルギー大手がウクライナ紛争とインフレと賃金抑制でぼろもうけ! エクソンモービル、シェブロンなど年間利益が過去最高を更新」

はじめに~2022年、米エネルギー大手がウクライナ紛争とインフレと賃金抑制でぼろもうけ! エクソンモービル、シェブロンなどの年間利益が過去最高を更新! ウクライナ紛争は、米国国家と米エネルギー大手にとって「金のなる木」に他ならない!「自由・民主主義対専制主義の戦い」とは、この実態を隠すための虚飾のキャンペーン!

2023年1月23日 (月)

ウクライナにおける欧米戦車の問題

2023年1月17日
Brian Berletic
New Eastern Outlook

 欧米諸国はウクライナに様々な装甲車両や主力戦車さえ提供する約束を始めた。今まで、ウクライナに送られてきた大多数の装甲車両はウクライナ軍が操作修繕に精通しているソ連時代のものだった。

 だがウクライナのヘルソンとハルキウ攻勢後、これら車両の多くが破壊され、欧米車両を供給し始めるか、戦場のウクライナ軍を小火器だけで放置するか欧米にとってほとんど選択の余地がない状態になっている。

 欧米指導者メディアは欧米装甲車両はウクライナ能力の大幅な強化だと主張しているが現実は全く逆だ。戦場でウクライナが有利になるどころかウクライナ軍が戦場で車両を入手し、そこで車両を維持するのに苦闘するだろう。更に世界他地域での最近の戦闘で主力戦車を含め欧米装甲車両は「無敵」でも「形勢を一変させる」ものでもないことが証明されている。

 だから、ウクライナのソ連時代の何百輌もの戦車や歩兵戦闘車や装甲兵員輸送車がキーウにとって好ましい結果を達成するのに失敗しているなら、これら車両を欧米車両で置き換えても相違をもたらす可能性はありそうにない。

 兵站、訓練と保守

 ウクライナが欧米装甲車両を入手するには彼らは戦車や他の車両と一緒に戦場で効果的に使用し、それらを戦場で維持する(保守)上で基本操作訓練をしなければならない。新人戦車兵がこれら技能を習得するのに半年はかかり、ウクライナにその時間的余裕はなく、ロシア特別軍事行動の初めに、ウクライナ戦車乗員が自身の車両を戦場で駆使できた練度や効率と比較して大いに短縮した訓練では欧米人操縦者がウクライナ人になりすまして車両に要員を配置しない限りは基準に満たない操縦士しか得られないことを意味する。

 大半の欧米主力戦車のもう一つの問題は、優れた主砲自動装填装置のソ連やロシアの主力戦車と異なり、レオパルト2やチャレンジャー2やM1エイブラムスは(主砲に手作業で装填装する乗員が必要要だ。それでソ連時代やロシアの戦車は運転手、射撃手と指揮官の3人の乗員だが、欧米の主力戦車は四人目の装填係が必要だ。これはウクライナに送られた3輌の欧米主力戦車ごとに、4人のウクライナ戦車乗員を配置する必要があることを意味する。十分訓練された戦車隊員がより少ない戦車に配備されるのだ。

 これら新たに訓練されたウクライナ戦車隊員が欧米装甲車両乗員として働ける前に戦場に動員しなければならない。アメリカのブラッドリーやドイツのMauder等の欧米の歩兵戦闘車はソ連やロシアの車両より重い。イギリスとポーランドが約束した二輌の戦車チャレンジャー2とレオパルト2も同様だ。アメリカのM1エイブラムスは更に重い。

 これは戦場に送達するためトラックや鉄道で車両移動する上で難題が生じる。二番目の選択肢、鉄道はロシアのウクライナ送電網の組織的標的設定と破壊で酷く抑制され、ウクライナ鉄道車両の多くが電力で動く事実から更に困難になっている。それらを戦場で使用する際、これら装甲車両を維持する問題がある。それらはより多く燃料、しばしば非常に多く必要で、ウクライナのこれまでの装甲車両より遙かに大量の燃料を消費する。

 より重い車両はトランスミッション、緩衝装置、車輪と無限軌道を含め車両部品の摩耗を招く。新たに訓練された未経験の乗員に必要な維持管理の増大は最大能力で車両を運転するのを阻止するだろう。更なる問題は欧米装甲車両-歩兵戦闘車と特に欧米主力戦車の両方が複雑な光学系で射撃管制装置がコンピュータ化されていることだ。実際それらを修理する経験を得るのに数カ月を要し技術者がこれらシステムを診断するだけで一年かそれ以上必要だ。

 ありそうなのはウクライナの装甲車両乗員が修繕のため頻繁にポーランド国境に壊れた車を送るよう強いられることだ。戦いがどこで行われるか次第で、前線から最高1,000キロ離れる可能性がある。戦線に戻すのにも更に1,000キロだだ。欧米技術要員が配置されたウクライナの保守施設は、ロシアには巡航ミサイルや無人機などの長距離精密誘導兵器でそれらを標的にし破壊する手段があるので、ウクライナ内には建設できない。

 これは欧米装甲車両が戦場で実際に戦うより輸送や修理により多くの時間を過ごす可能性を意味する。

 NATO装甲車両はウクライナ自身の装甲車両とは異なる弾薬を使うので、戦線でこれら車両を発砲させておくために常に戦線に送る必要がある。多くのNATO主力戦車は滑腔主砲から120ミリ砲弾を発射するがイギリスのチャレンジャー2は120ミリ施条主砲から独特の砲弾を発射する。これはチャレンジャー2とレオパルト2戦車のため二つのサプライチェーンを設立する必要があることを意味する。ウクライナ乗員が戦場で行える機械修理用の基本的保守部品にも同じことが言える。

 欧米の主力戦車は無敵からはほど遠い

 チャレンジャー2やレオパルト2という主力戦車とともに、ブラッドリーやマルダー歩兵戦闘車を使用する上でウクライナが直面する多くの課題にもかかわらず、これら車両の性能が戦場でウクライナ軍にロシア軍に対して決定的優位をもたらすと評論家は主張している。だが最近の戦争におけるこれら装甲車両の実績はまさに反対のことを示している。

 レオパルト2主力戦車はトルコを含めNATOで広く使われている。トルコは北シリアで正規兵でないクルド族や「イスラム国」軍へのいくつかの攻勢でレオパルト2戦車を配置した。彼らの実績は不吉な題名の2019年のナショナル・インタレスト記事「トルコのレオパルト2戦車はシリアで破壊されている」でこう書かれている。

 デア・シュピーゲルによればISISが占領するアル・バブでの激しい戦闘、トルコ軍指導者が「トラウマ」だと述べた戦いで多数のレオパルト2が破壊された証拠が出現した。オンラインで発表された文書が無敵なはずのレオパルト2をISISが10輌破壊したと記載した。報道によれば対戦車ミサイルで5輌、地雷かIEDにより2輌、ロケットか迫撃砲攻撃により一輌と、不明な原因による他の複数車両だ。

 破壊されたレオパルト2戦車、時にトルコの歩兵戦闘車と一緒に、少なくとも二輌は砲塔が完全に戦車車体から吹き飛ばされた状態の写真を記事は載せて、ロシアであれ欧米製であれ主力戦車が近代的対戦車火器にどれぐらい脆弱か示している。ナショナル・インタレストはいずれもソ連と今ロシア連邦が生産するAT-7 MetisとAT-5 Konkurs対戦車ミサイルに、少なくとも5台の破壊されたレオパルト2戦車の犯人だとしている。

 最も広く生産されている欧米主力戦車はM1エイブラムスだが極端に燃料を食うタービンエンジンと極端に重い重量のため、ウクライナ用に大量注文するのは実際的ではない。大量に生産され、NATOで広く使われているディーゼル・エンジンのレオパルト2はウクライナ戦車勢の大半に取って代わる最もありそうな候補者だが戦場の非正規軍に対する実績を考えると、ウクライナにとって暗い見通ししかない。

 イギリスのチャレンジャー2は戦場で決して優れているわけではない。それが持つ神話は隠蔽と意図的な戦争プロパガンダのおかげで、2007年のテレグラフ記事「国防省は最良の戦車の失敗を隠していた」で暴露された。

 国防省は戦車の装甲を破った先月の攻撃が4年間のイラク戦争でその種の最初のものだと主張した。だが去年の8月もう一輌のチャレンジャー2が兵士の脚の一部を吹き飛ばし、他に何人か傷つけた攻撃の強力なロケット手りゅう弾に貫通された。

 記事はチャレンジャー2に損害を与えた武器はおそらくロシア製RPG-29だと指摘した。こう報じている。

 RPG-29は反抗分子がイギリス部隊を攻撃すのに通常使う在来型よりずっと強力な兵器だ。これがチャレンジャー2に損害を与えるのに成功した最初だが特に戦車装甲を貫通するよう意図されている。

 類似の設計と哲学を共有する他の欧米主力戦車はどうだろう? より良く能力を発揮しただろうか? それは欧米装甲車両の戦闘能力全般を評価し、これら車両を含むかもしれないウクライナへの追加提供で考慮に入れる価値がある質問だ。

 M1エイブラムスはチャレンジャー2同様伝説的評判がある。だがアメリカ自身2003年以来イラクで複数のM1エイブラムスが破壊されている。2003年「イラクでアメリカ戦車が攻撃されGIが二人死亡」という見出しのCBS記事はM1エイブラムスが爆弾か即席爆発装置で損害を与えられたと指摘した。

 M1エイブラムスはサウジアラビアを含めアメリカ同盟諸国に送られている。2016年の「アメリカとの戦車取り引きでイエメン戦争でのサウジアラビアの敗北が暴露された」という見出しのディフェンス・ワン記事が記事はこう説明している。

 火曜日国務省と国防総省はサウジアラビアへの153輌の12億ドルのエイブラムス戦車の販売を承認した。だがそれは本当のニュースではない。

 これが判明。アメリカでゼネラル・ダイナミクス・ランド・システムズが製造した戦車の20台が戦闘で失われたサウジアラビア戦車の「戦闘被害の代替物」だ。

 販売の正式発表は戦車がどこで戦っていたか言わないがイランに支援されるフーシ分離主義者と戦っているサウジアラビア軍はイエメンで400台以上のエイブラムス戦車を失ったと考えられている。

 M1エイブラムスの大きい重量と大量の燃料消費にもかかわらず非正規軍隊さえアメリカの主力戦車を撃破できることで、無敵からほど遠いのは非常に明白だ。

 サウジアラビアのM1エイブラムスの大きな損失はそれら酷い性能の原因である特殊装甲や射撃管制部隊を含めM1エイブラムスの主要特徴が欠けている事実にあると評論家は主張している。だがアメリカがグレー・イーグルのような先進的無人機を送らなかったのと同じ理由から機密の装甲や大いに先進的な射撃管制装置のM1エイブラムスをウクライナに引き渡すことはありそうもない。特別軍事行動のさなか非常によくある現象でロシア軍によるこれら兵器システムのどれかの捕獲は、これら高度な特徴がロシア人技術者に素早く実験されることを意味するだろう。

 そして最終的にイスラエルのメルカバ主力戦車がウクライナ軍の手中に入ることは到底ありそうにないがメルカバは地球上最良主力戦車の一台と思われる。だが彼らは近代的対戦車火器、ロシア連邦が生産する対戦車火器に対する能力発揮が不十分なだけではない。

 2006年の「ヒズボラ対戦車砲レバノンで大半のIDF死傷者をもたらしている」という記事でハアレツはこう報じている。

 ヒズボラの対戦車チームは、モスクワがシリアに売り更にシーア派組織に移されたロシア製のRPG、特に効果的なRPG-29という新機種を使っている。

 RPG-29の貫通能力はタンデム弾頭に由来し、多くの場合メルカバ戦車の強力な装甲を貫通するのに成功している。

 北シリアでのトルコ軍、イエメンのサウジアラビア軍、イラクのアメリカとイギリス軍、南部レバノンに押し行っているイスラエル軍のいずれかにかかわらず、それぞれの場合、それぞれの軍事行動が歩兵隊や砲兵隊や航空援護を含め大規模な兵站経路により高度に組織的で結合された兵器戦闘の一環として支援される良く訓練された戦車乗員のおかげで成立していることを指摘するべきだ。

 トルコやアメリカやイギリスやサウジアラビアやイスラエルには可能な適切な兵站や結合した兵器支援なしで短期訓練しか受けないウクライナ戦車乗員が戦場で欧米主要戦車を使おうと試みたら何が起きるだろう? これら戦車に対する火器はロシア軍の手中にあり今これらウクライナ戦車乗員が数年にまさに最良の欧米主力戦車に対し大いに効果的だと証明されたロシア製対戦車火器に向かって行くと何が起きるだろう?

 特別軍事行動の間に何百輌ものウクライナ装甲車両を破壊し、ウクライナの当初の在庫そして次にNATOのソ連時代の装置在庫両方を使い果たし、欧米に自身の装甲車両を送ることを考えるよう促したのはロシア戦力だった。

 誘導AT-7メチスやAT-5コンクールスなどのようなロシア製対戦車火器は効果的だが、RPG-29と合わせ、より新しい9M133 KornetミサイルやRPG-30ロケット手りゅう弾はトルコやアメリカ、イギリス、サウジアラビア、イスラエルの戦車乗員が経験したのと同じ破壊的結果を確実に引き起こすだろう。ウクライナ軍は、より新しいT-90プラルィヴや近代化されたT-72やT-80戦車を含め何百輌ものロシア主力戦車と対峙するだろう。ロシア航空部隊は装甲車両に対する高精度な攻撃能力がある様々な兵器を持っており、ロシア砲兵隊はレーザー誘導のクラスノポール弾を使い主力戦車を破壊可能な能力を越えている。

 換言すれば、ウクライナ戦車乗員がそれほど用意ができておらず、欧米の対応部隊より理想的とほど遠い条件下で戦い、量と品質に関して対戦車火器の遙かに大きい兵器庫に対して戦うのだ。M777 155ミリ曲射砲やHIMARSの複数GPS誘導ロケットを含め「形成を逆転する」他の欧米「奇跡的な兵器」と同じように、ウクライナは「形成逆転」をもたらす更にもう一つの「奇跡兵器」を必要としている。欧米主力戦車はウクライナが戦争を継続するのには役立つだろうが、究極的にキーウとその欧米のスポンサーは自身が結局始めたところにすぐ戻るだけなことに気がつくだろう。

Brian Berleticは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2023/01/17/the-trouble-with-western-tanks-in-ukraine/

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 Democracy Now!

 アメリカでのアサンジ擁護の催しにジェレミー・コービンが参加

U.K. MP Jeremy Corbyn on Freeing Julian Assange, the Working Class, Brazil, Peru & Ending Ukraine War 32:32

 The Jimmy Dore Show アメリカ人10人に4人が費用のため医療にかかるのを遅らせている

4 Out Of 10 Americans Delaying Medical Care Over Costs 7:35

 耕助のブログ Pepe Escobar記事翻訳

No. 1682 静かな(パニック)の西部戦線

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みんなが暮らしに困っているのに何が異次元の防衛費だ!【The Burning Issues vol.35】20230120 1:30:06

 日刊IWJガイド

はじめに~ロシアのメドベージェフ前大統領が、ダボス会議での西側諸国の「ロシアは戦争に負けるに違いない」との主張に「核保有国が通常戦争に負けた場合、核戦争を引き起こす可能性がある」と警告! ポーランドのモラヴィエツキ首相は逆に「ウクライナの敗北は第三次世界大戦につながる」と武器支援の強化を主張! 即時停戦を主張していたキッシンジャー元米国務長官ですらダボス会議でウクライナのNATO加盟と米国による軍事支援の継続を提言!! どちらの勢力も一歩も引かず、第3次世界大戦へ向かうのか!?領が『核保有国が通常戦争に負けた場合、核戦争を引き起こす可能性がある』と警告!」

2023年1月11日 (水)

中国のCOMAC C919ジェット旅客機と多極主義への跳躍

2023年1月6日
Brian Berletic
New Eastern Outlook

 まさに2022年末、中国COMAC(中国商用飛機有限責任公司)のC919定期便ジェット一号機が中国の国内航空会社中国東方航空に引き渡された。

 「東方航空世界初の中国製C919ジェット機を受け取る」という見出しの記事でロイターはこう報じている。

 世界初のC919、中国製ナローボディ・ジェット機は金曜日、上海の最大顧客である中国東方航空(CEA)に引き渡され、歴史的瞬間を記念する15分の飛行のため離陸した。

 国有通信社新華社によればエアバス(EADSY)A320neoとボーイング(BA)737 MAX単通路型航空機シリーズのライバルであるこの旅客機は来春初商用飛行すると予想されている。

 引き渡しから初商用飛行までの間に、最初のC919は最高100時間のテスト飛行をするとSimply Flyingが報じた。テスト飛行には複数の目的地への飛行が含まれる。一方中国は既にパイロット9人、フライト・アテンダント24人と維持管理人員13人を含め広範な人員を航空機運営のために訓練している。

 この日程はCOMACや東方航空や中華人民共和国にとって明らかに大きな業績だが、それは多極世界のための大きな跳躍でもある。

 飛行機を越える影響

 この旅客機と既に飛行認証されているロシアのイルクート MS-21の二機と、国内のみならず彼らの背後にある国際需要を満たしている企業の可能性から考えると欧米のボーイングとエアバス社が享受した複占は終わるかもしれない。

 「エアバスとボーイングにとっての新たな競争相手」という見出しのドイツのドイチェ・ヴェレ記事は、こう報じている:

 新しい航空機が定期航空市場の大いに儲かる主要部分に参入する。エアバスとボーイングはそれを真剣に受けとめる必要がある。特にMC-21は今売られているエアバスとボーイングの在来型と比較して一部分野でより良い性能を提供できる。アメリカとヨーロッパの大手は何十年間も栄光の座であぐらをかいていたのでそれは少しも不思議ではない。ボーイング737の起源は1967年にまで遡り、他方エアバスA320は1987年に初飛行した。

 ロシアと中国の旅客機が欧米独占企業に挑戦するのを阻止するためロシアと中国の航空機企業に対し損害が大きな制裁を課する取り組みで国家安全保障から人権に至るまであらゆることが特にアメリカ政府に実行された。アメリカ政府が中国通信企業にしたのと全く同様、これら制裁はロシアと中国の航空機企業が国際的に競争するのを阻止する企てで、可能なら、これらの企業を完全に排除するだろう。

 だがG7諸国の合計より大きな人口を持つ中国は国際市場への参入にかかわらずCOMACや他の中国航空機企業を強化する可能性がある空旅市場がある。ロシアや隣接する市場は、時間とともにMC-21を大量販売する可能性を与え、自身を証明し、魅力的でより多数の国に買いやすくなるだろう。

 アメリカ制裁の影響と意図を重々承知して、ロシアと中国両国ともエンジンや制御システムを含め、かつては欧米依存していた部品の代替品を開発している。

 多極主義には複数選択肢が必要

 多極主義は現在普及している欧米率いる単極の「規則に基づく」秩序に対する単なる政治宣言や代替の国際秩序に対する願望というだけではない。それは金融と貿易に関する代替制度を物理的に作り出すだけでなく、産業や製造の代替システム構築だ。

 欧米が持っている権力はボーイングやエアバスのような独占企業から生じ、莫大な利益は株主の手中に集中する。それら利益は集中した権力と影響力を意味する。これら独占に対する代替物の創成は利益集中を弱め、結果として生じる権力と影響力を再分配する。

 これが中国のC919とロシアのMC-21の成功の可能性を特に重要にする。彼らの成功は複雑さで悪名が高く参入困難な産業における欧米複占の集中権力と影響力を削り取るだろう。C919とMC-21の成功は中国とロシアのみならず、他の新たに登場しつつある工業経済に対する将来の成功のためのケーススタディと手本になるだろう。

 単なる貪欲や嫉妬深い複占保護以上に、ボーイングとエアバスと彼らの周辺の圧力団体はこれは単なる飛行機販売を越える問題だと悟っている。欧米覇権を維持するか取って代わられるかだ。

 C919や産業の広範で、様々な領域で拡大する中国企業の他の製品こそグローバル段階への中国上昇の要因だが、北京とその勃興を拒否するワシントン間の緊張は増大する。

 多極主義の政治的側面を支える産業的、経済的要因の理解は、アメリカが課そうとしている制裁と、中国がそれらを回避し乗り越えるため使用する方法に関し、ワシントンと北京両者が下す決定を理解するのに役立つ。C919とMC-21の継続的な開発と適応の拡大は避けられないようだ。欧米がこれら新たな当事者を認め尊重していたら、これらの新旅客機が生み出す繁栄を共有できだろう。どちらの航空機も欧米のプラット & ホイットニー製エンジンを使用している。これら航空機開発を阻止するというワシントンの決定のため、中国とロシア両国が国産の代替品があるか開発中だ。これらエンジンは最終的に国内で採用され、実績が証明されてから世界市場に参入して欧米製品を打倒する可能性がある。

 アメリカが制裁に依存しすぎることで政治的に自身を孤立したのと全く同様に、それはその産業のために解決する以上に多くの問題を作り出している。

 中国とロシアの航空機企業とその製品がボーイングやエアバスと大きな市場シェアをめぐって一体いつ、どの程度競争し始めるかは時がたてばわかるが、そうなった場合、対象は航空機企業とその利益だけではない。富、権力、影響力を入手するための利益源が決まることで、ワシントンに一方的に決定されるか、北京とモスクワが始めた多極主義を通じて将来が決定されるかということだ。

 Brian Berleticは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2023/01/06/china-s-comac-c919-passenger-jet-and-a-leap-for-multipolarism/

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 あえなく潰れた日の丸旅客機構想を思い出す。

 東京新聞に記事が連載されたが悲しくて読めなかった。

「今日は、一緒に飛ぼうな」MRJ初飛行の機長が見た現場 三菱の国産ジェット事業凍結

2023年1月 3日 (火)

ウクライナのアメリカ・パトリオット・ミサイル:絶望的で危険なエスカレーション

2022年12月28日
Brian Berletic
New Eastern Outlook

 アメリカはパトリオット防空ミサイル・システムをウクライナに移管する過程にあるようだ。CNN記事「独占:アメリカはパトリオット・ミサイル防衛システムをウクライナに送る計画を最終決定」は、アメリカは承認し決定が下されてからわずか数日でシステムをウクライナに迅速に出荷すると主張している。

 逆説的だがCNNは、システム運用に必要な多数のウクライナ人を訓練するには数か月かかると認めている。これにより専門家たちは実際は既にシステムに精通しているNATO要員が「ウクライナ人」を装ってシステムを操作すると推測している。

 これは大幅なエスカレーションだ。欧米軍は様々な役割でロシア軍に対しウクライナ全土で密かに活動していると考えられているが、益々多くの高度な兵器を操作する欧米要員は、欧米航空機や戦車を含む他の高度な欧米兵器制御の背後にいる欧米操縦者が紛争に入る点で当初の狙いを越えて計画が膨張するミッション・クリープとなる可能性がある。
 
 パトリオット・ミサイルを送る決定は電力網を含む軍事および軍民両用インフラを標的としたウクライナ全土でのロシア・ミサイルとドローン攻撃の着実なテンポに続くものだ。欧米メディアはウクライナ自身のソ連時代防空システムの数が減り、迎撃ミサイルが不足していると認めている。

 フィナンシャル・タイムズは記事「軍事ブリーフィング:航空戦激化はウクライナの武器備蓄を枯渇させる」で次のように認めている。

...ウクライナ防空の主力であるS300とブク・システムの弾薬と予備は減少している。ロシアはウクライナ防空システムを使い果たさせるためX-55核ミサイル弾頭を通常弾に交換して発射しているというイギリス軍事諜報機関の主張を確認した。

 この記事はシステム用の追加弾薬と予備部品購入は実用的でないと述べている。またウクライナに独自防空システムを提供する欧米の取り組みにも言及しているが、そのようなシステムは限られた量と弾薬への入手制限という点で同様の問題に苦しんでいる。

 フィナンシャル・タイムズはドイツの「ゲパルト」自走対空砲を「非常に効果的」だと書いている。その主張を立証する証拠は提供されず、皮肉なことに記事が公開された直後、スイスがウクライナに追加弾薬を供給するのを望まなかったのと同様ゲパルト・システムの弾薬不足が報告された。

 アナドル通信社によるとスイスの決定を補うためドイツのラインメタル社は弾薬生産を拡大すると発表したが生産は早くとも6月まで開始されずウクライナは少なくとも7月まで弾薬の受け取りを開始せず、それもドイツ政府がゲパルト35mm弾を注文した場合に限る。

 IRIS-TとNASAMS、2つの欧米の短距離・中距離防空ミサイル・システムの少数がウクライナに提供されているが数は数年間に徐々に増加している。これはウクライナの減少しつつあるソビエト時代の防空システムを置き換えるには遅すぎる速度だ。

 この現実を考えるとパトリオット・ミサイル・システムをウクライナに移管するというアメリカ決定はワシントンが彼らが違いを生みだせると思っているからではなく単にアメリカや同盟諸国が代わりに送るべきこれ以上適切なものや数がないからかもしれない。

 しかしパトリオット防空システムでさえ自身の深刻な弾薬不足からドローンや巡航ミサイルに対するウクライナ防衛を提供できないことに至るまでの問題に悩まされている。

 パトリオット・ミサイル:少なすぎて弱すぎる?

 「ロシア・プロパガンダ」どころかパトリオットの欠点は何年間も欧米マスコミに報じられてきた。アルジャジーラは2022年早々の記事「サウジアラビアは『数カ月』で迎撃ミサイルを使い果たすかもしれない」でパトリオット迎撃ミサイルのサウジ備蓄が不足しており、アメリカがそれを埋め合わせるほど製造できないのを認めている。

 ウォールストリート・ジャーナルは2022年3月に追加ミサイルが最終的に取得されたと報じているがアメリカが更に製造できたためでなく代わりにアメリカがサウジアラビア近隣諸国にミサイルを自国備蓄からサウジアラビア防空軍に移すよう説得したためだ。

 ディフェンス・ニュースによるとミサイル不足が深刻化する中ロッキード・マーティンは2018年にミサイルの年間生産量を250から500に倍増すると約束した。2021年までに、カムデン・ニュースはロッキードが既存の生産施設に新たに500平方フィート拡張を建設した後、2024年までに年間85,000発のミサイル目標を達成する予定だと報じている。

 しかし年間500発のミサイルでさえ、そして全てのミサイルがその後ウクライナに直接送られたとしてもロシアが継続中の特別軍事作戦の一環として使用している巡航ミサイル、ドローンその他の長距離精密兵器の数に匹敵するのに十分ではない。

 ニューヨーク・タイムズ紙は「ロシアはウクライナに対し古いウクライナ・ミサイルを使用していると将軍は言う」という見出しの記事で、ロシアが月に少なくとも40発の巡航ミサイルを製造している可能性が高いと主張するウクライナ情報源を引用している。年間を通じると巡航ミサイル480発になる。パトリオット・ミサイルシステムが有効性100%からほど遠いことを考えると、480発のロシア巡航ミサイルから500発のパトリオット・ミサイルがウクライナを防衛できるという考えは非現実的だ。

 しかしロシアの年間ミサイル生産量はもっと多い可能性がある。BBCは10月以降だけでも、ロシアがウクライナ全土の標的に1,000発以上のミサイルとドローンを発射したと報じている。これはロッキードが毎年生産する予定のミサイル数の2倍だ。

 この現実は非常に明白なので欧米専門家はパトリオット・ミサイルがもたらす影響に関する疑問について公にコメントしている。Breaking Defenseは記事「パトリオット・ミサイル・システムはウクライナの万能薬ではないと専門家は警告」でパトリオット・ミサイルのウクライナ移転を「政治的支援のジェスチャー」だと呼んだ戦略国際問題研究所のミサイル防衛専門家トム・カラコを引用している。

 記事はまた、カラコを引用して、次のように述べている。

 「これらの希少で貴重な資産には慎重さが必要だ」とカラコは述べた。「私たちは装置を一式しか送らないが、一度そこにおいたら、おそらく戻って来るまい。そして彼らが軍需品を使い始めたら彼らは更に多く要求するだろう。そして私たちが使えるPAC-2やPAC-3[ミサイル]が何トンもゴロゴロしているわけではない。

 カラコはまたパトリオットは「台湾紛争を抑止する」ため必要だと指摘し、ロシアとの代理戦争における欧米兵器備蓄の着実な枯渇は地政学的真空の中で起きておらず世界の他地域、特に東アジアで他の国々を脅かす欧米の能力に影響を与えている事実を強調する。

 同じ記事はパトリオット・ミサイルが迎撃しようとしている比較的安価なドローンと比較してどれほど高価かも指摘した。しかし、それもパトリオット・ミサイル・システムがそれらを迎撃できたとしてもだ。

 NBCニュースは2019年の記事「アメリカのパトリオット・ミサイルがサウジアラビア石油サイトを攻撃するドローンと巡航ミサイルを阻止できなかった理由」でアメリカが提供するパトリオット・ミサイル・システムがサウジアラビア石油生産施設に対しイエメンが使用した巡航ミサイルと「三角形」ドローンに対しどう失敗したか指摘している。

 パトリオット・ミサイル部隊が施設を守っているにもかかわらずサウジアラビア軍はドローンを撃墜する試みに失敗し小火器発砲に頼った。ある攻撃でサウジアラビアの毎日石油生産量の半分が一時的に混乱した。

 記事はこう主張している。

 ドローンやミサイルはレーダーで探知できるがレーダー反射断面積が小さい傾向があり、地表近くを飛ぶ可能性があるので検出範囲が大幅に減少し遠くから発射する可能性がある。また操作が簡単で、レーダーとパトリオット部隊間の対象範囲の間隙につけこみかねない。またドローンや巡航ミサイルは、200万ドルや300万ドルのパトリオット・ミサイルより安いことが多く、攻撃するドローンの群れよりもパトリオット供給は遙かに早く枯渇する可能性がある。

 NBCニュースは、ウクライナに移送されたパトリオット・ミサイルシステムが直面する遙かに大きく、より高度な規模の脅威を正確に説明している。

 この記事はパトリオットが防御に適さない脅威に対抗するためアメリカが取っている広範な措置(2021年時点で配備されつつある措置)について説明しているが、アメリカが準備している、またはウクライナに大量に送れる措置ではない。

 アメリカとNATO同盟国は戦場になる可能性がある場所での優位より、戦闘機を使用して制空権の達成・維持を優先し地上ベースの防空システムを長い間無視してきた。空軍に似たものが欠如した敵との数十年の「小さな戦争」での戦いは問題を悪化させただけだ。

 欧米がウクライナを武装させ続けるにつれ直面する現在の武器と弾薬不足を解決するのには何年も、多額の金もかかるのと同様、ウクライナの要求の量と質の両方で防空システムを構築するにはウクライナに残されたより時間がかかり欧米が費やそうとしているより多くの資源が必要だ。

 戦争は優れた兵站、軍事技術、戦略で勝利するのは周知の事実だが「政治的支援のジェスチャー」で戦争に勝った時のことを想起するのは困難だ。

 Brian Berleticは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/12/28/us-patriot-missiles-in-ukraine-a-desperate-dangerous-escalation/

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 Scott Ritter

The American Military is not Prepared

 今朝の孫崎享氏メルマガ題名

スティーヴン・キング「監獄では、権威ある立場にある者はみな主人になり、あなた(人々)は主人の犬になる。多分、あなたも犬になったことを知っているだろう。しかし他の皆も犬なので、あなたはそれほど気にしない。」監獄=日本社会(指導層)

2022年12月29日 (木)

ウクライナの武器枯渇

2022年12月23日
Brian Berletic
New Eastern Outlook

 欧米とウクライナの軍幹部両方の何ヶ月にもわたるニセの自信と楽観主義の後、亀裂が現れ始めている。エコノミストとのウクライナ最高司令官ヴァレリー・ザルジニー将軍の最近のインタビューで、ウクライナの追加武器の切実な必要性とそれらを受け取れない場合の結果は非常に明白になった。

 議論は、防空ミサイルから戦車、装甲車両、大砲、砲弾自体に至るまで資源の切実な必要性を中心に展開された。欧米とウクライナ双方が認めている全てが不足しており、おそらく近い将来または中期的未来にも供給できない。

 「ロシアを背伸びさせる」からNATO「非軍事化」へ

 ウクライナにおけるワシントンの対ロシア代理戦争はアメリカ政策立案者に、ウクライナ東部での敵対行為を拡大して「血と財政の両方でドンバス地域を維持するためロシアの費用を増加させる」ことを期待して「ウクライナに致死的援助を提供する」よう勧告したランド研究所の2019年論文「ロシアを背伸びさせる」の現実化だ。

 この論文はドンバスにおけるロシアの装備と人命損失がソ連がアフガニスタンで被った費用の再現になるよう望んでいた。ロシア連邦は確かにウクライナで積み上がる費用に直面しているが、アメリカや他のNATO諸国、そして何よりウクライナ自体少なくともそれ以上ではないにせよ同じくらい苦しんでいると簡単に主張できる。

 紛争でどちら側がどれだけ失っているかよりおそらく重要なのは戦闘中に人員と装備を再生する各々の軍事産業能力にとって、どちらがどれだけ失う余裕があるのかということだ。ほぼ一年の戦闘後ロシアの備蓄と軍隊がこの種の長引く激しい大規模な軍事紛争に備えていたことは明らかだ。ウクライナとその欧米スポンサーはそうではなかった。

 ウクライナのザルジニー将軍はキーウがウクライナだと主張する2022年2月23日の国境を回復するため必要と主張する武器の「欲しいものリスト」をエコノミストに明かした。リストには戦車300両、歩兵戦闘車600?700両、榴弾砲500門が含まれていた。

 この「欲しいものリスト」は、いわゆるハリコフとヘルソンの攻撃に先立ち西側諸国がウクライナに送付した武器、車両、弾薬で構成される大規模予備軍をウクライナが消費したことに続くものだ。複数旅団に相当する喪失に加えて、ロシア地上部隊が撤退し、代わりに長距離兵器を使用して現在十分構築された防御線の背後からウクライナ軍を攻撃したため膨大な量の装備も失われた。

 領土を占領することで得られたウクライナ攻撃の一時的な政治的得点は欧米がウクライナに送る余裕があるものの大部分を費やす犠牲を払って得たのだ。

 今やウクライナに対する西側援助の限界が益々認識されつつある。

 11月のニューヨーク・タイムズ紙記事「アメリカとNATOはウクライナを武装させ自国の兵器を補充するために緊急発進している」は下記のように認めている。

 昨年夏ドンバス地域でウクライナは毎日6,000から7,000発の砲弾を発射したとNATO高官は述べた。ロシアは一日あたり40,000から50,000発の弾丸を発射していた。

 比較するとアメリカは毎月15,000発しか製造していない。

 そのため欧米は、S-300防空ミサイル、T-72戦車、特にソ連口径の砲弾などウクライナが現在使用できるソ連時代の装備と弾薬が益々不足するのを見て緊急発進している。

 ザルジニー将軍は300両の戦車を望んでいるがアメリカは改修が必要な90両のT-72戦車しかかき集められなかった。アメリカ政府メディアのラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオリバティによると、戦車は年末までにウクライナに到着すると予想されている。

 ザルジニーが必要とする500基の榴弾砲はNATO備蓄には存在しない。しかし、たとえ彼らが持っていたとしても、それで発射する155mm弾は不足している。ニューヨーク・タイムズはロシアの40,000から50,000発に対し、ウクライナは一日に6,000から7,000発の弾丸を発射していたと主張しており、ウクライナと欧米支援者の備蓄とロシアの備蓄との間の格差を示している。

 ウクライナ向けアメリカ助成案はM777用の追加155mm弾やNATOの他の国々がウクライナに提供する他のもの除外することが多い。これはアメリカが月に15,000発しか生産しておらず、ウクライナが通常2-3日で発砲するのとほぼ同数の弾丸を生産しているので備蓄が不足しているためだ。

 生産を増やすには何年もかかるだろう。アメリカはウクライナに譲渡したもの置き換えるための追加武器と弾薬調達を手配している。しかしこれら調達計画はウクライナが今の戦闘能力を維持するのに必要なものを提供し続けるのに必要なレベルにほど遠い。

 最近発表されたBreaking Defense記事にアメリカが今後数年間に調達する多くの軍需品や兵器システムが列記されている。今後数年にわたる調達プロセスを通じて取得される砲弾の数はわずか864,000発でウクライナが半年に発射するのとほぼ同数の砲弾だ。

 現在のアメリカ調達計画はウクライナの長期支援を考慮していないようで、議論されている調達計画もない。ウクライナ「非軍事化」が進行中の特別軍事作戦の主目的の一つだとロシアは主張しているがアメリカとNATOもある意味で非武装化されているようだ。

 ウクライナが枯渇する中、ロシア兵器は到着し続ける

 ウクライナの二つの主要秋攻勢に直面してロシア軍は戦闘能力を維持しただけでなく、30万人以上の追加軍隊を部分的に動員した後、ロシアの戦闘能力は実際拡大した。余分な人員に加えて、ロシアは新しい兵器の着実な流れももたらしている。

 アメリカが復元された90両のT-72戦車をかき集め、Army Recognitionは最大200両の真新しいT-90主力戦車が前線に納入されたと報じている。

 ニューヨーク・タイムズは欧米がウクライナに送る武器と弾薬の数が減少していることについて論じ、ロシアが少なくとも月に40発の巡航ミサイルを製造している可能性があると認めているが、その数は遙かに多い可能性が高い。

 ゲラン2長距離神風ドローンの着実な流れは欧米専門家がロシアがそれらを使い果たしたと主張した後もウクライナに「到着」し続けている。巡航ミサイルやドローンはウクライナ電力網を標的にするため使用されてきたが、他の長距離弾薬や重砲撃がウクライナ要員や装備を戦場で排除し続けている。

 大半が国有の広大なロシア軍産複合体全体の生産量は捉えどころがないが、ロシア備蓄がどのように特に大規模な激しく長引く軍事紛争用に製造されたのか、同様にロシア軍もそのような軍事紛争を行うよう構成された方法を考えると、ロシア軍産複合体がそのような軍事紛争に必要なものを生産するため何年も前から大規模準備をした可能性が高い。

 アメリカとNATO同盟諸国の合同資源に対してロシアが戦闘作戦をどれほど準備していたのか維持する用意がどれほど調っていたのかは時が経てばわかるだろう。確かなのはウクライナの秋攻勢が止まり、再びロシア軍が戦場を横断していることだ。

 エコノミスト・インタビューでザルジニー将軍が次のように述べているのは言及する価値がある。

 私は得るものを手に入れているが必要とするより少ない。マンネルヘイムがフィンランド兵に訴えたようにウクライナ兵士に訴える時ではまだない。我々はもっと多くの領土を取れるし、そうすべきだ。

 ザルジニー将軍は勝つために必要と考えているものを欧米が提供するのを期待してマンネルヘイムがソ連に降伏する際フィンランド兵士にしたように対ロシア降伏についてウクライナ軍に呼びかける時が来たとは思わないかもしれないが、欧米も彼が勝つために必要なものを持っていないのは明らかで、それを得るべく真剣な準備もしていない。

 唯一の希望はウクライナへの減少する供給が最終的に使い果たされる前にロシアが武器と弾薬を使い果たすという考えにかかっているようだ。それは新しいロシア巡航ミサイルやドローンがウクライナ中のインフラを攻撃するたび、または真新しいT-90主力戦車がドンバス地域で鳴り響くたび揺さぶられる願望だ。

  Brian Berleticは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/12/23/the-ukraine-arms-drain/

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 最新のDuranも二人のトップの話題を語っている。

 Duran: Episode 1468 Alex Christoforou, Alexander Mercouris

West Ukraine trap set for Poland 49:39

 今日の孫崎享氏メルマガ題名

中東の不安定の最大の要因の一つがパレスチナ問題。イスラエルは近年パレスチナに対して常に攻勢。ネタニヤフ首相の再登場で、政権は一段と右傾・強硬に。東イスラエルの地位を一段とイスラエル化する動き。これに対してヨルダン国王は対応すると表明。

 日刊IWJガイド

「激動の2022年も残すところあと3日! IWJは2022年注目のハイライト記事・日刊記事を集めた年末年始特設ページを開設しました!」

2010年12月の創業以来、IWJは最大の経済的危機です! 12月1日から12月26日までのご寄付は238万5900円。今月の月間目標額390万円の61%です。第13期が始まった8月から11月までの4ヶ月間の累積の不足額931万7470円を合計すると、12月末までに1321万7470円が必要ですが、現時点で18%にとどまっています! 1年の3分の1に相当する4ヶ月間で、すでに約1000万円不足していますから、このペースだと、第13期が終わる頃には、約3000万円近く不足することに! 皆さまの支持・応援、会費、そしてご寄付・カンパによるご支援がなければ、活動規模を縮小しても立ち行かなくなります。今後とも精いっぱい頑張ってまいりますので、緊急のご支援のほど、よろしくお願いします!

2021年4月25日 (日)

南シナ海紛争を狙うアメリカ

2021年4月20日
Tony Cartalucci
New Eastern Outlook

 ジョー・バイデンで、アメリカ外交政策が新しくなるだろうという一部の人々の願望にもかかわらず、アントニー・ブリンケン国務長官は「東南アジアの領有権主張諸国を支持する」という名のもとで、南シナ海での紛争を目指すワシントンの姿勢を再確認した。
 ロイターは「アメリカは、中国の圧力に対して、アジア諸国を支持するとブリンケンが述べた」記事で、こう主張している。

ブリンケン長官は中華人民共和国の圧力に直面している東南アジアの領有権主張諸国を支持すると誓った」と中華人民共和国に言及して述べている。

中国はエネルギーが豊富で、主要通商路でもある南シナ海のほぼ全ての領有権を主張している。フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシアと台湾は重複する領有権を主張している。

中国は、コロナウイルス流行騒ぎにつけこんで、南シナ海におけるプレゼンスを推進していると言って、アメリカは非難した。

 中国とのアメリカの緊張は、選挙で選ばれない欧米の既得権益集団と、アメリカ政策報告書が「アジアにおけるアメリカの優位性」と言う通り、中国を、競争相手、潜在的権力簒奪者から排除したいという彼らの願望に根ざしているので、アメリカのこの声明は、ホワイトハウスの主が誰であれ、中国に対する対決的姿勢は続くことを裏付けている。

 アジアにおけるアメリカの優位性

 2015年に、外交問題評議会CFRが発表した「Revising US Grand Strategy Toward China(対中国アメリカ大戦略見直し)」という題の論文は、中国に対して、アジアで優位を維持するというアメリカの願望を明文化したのみならず、この地域での軍事的プレゼンスの継続、あるいは拡大さえ正当化するため、そして、中国の近隣諸国を、対中国共同戦線参加を強要する大義名分として、アメリカが、どのように、南シナ海における重複する領有権主張を、口実として利用するかを詳述している。

 この論文は、東南アジアに軍隊を配備し、この地域を、アメリカ率いる対中国共通の防衛アーキテクチャに統合するというアメリカの具体的な目標を書いている。

 それは2011年に公表されたアメリカの「アジア回帰」と、過去四年間、トランプ政権下で作り上げられた政策を基盤として作られた、アメリカ外交政策に浸透している狙いの連続性を示す政策だ。

 論争を紛争に変える

 海事紛争は世界中でよくあり、欧米でさえ、そうだ。

 去年末「合意なきEU離脱の場合に備え、漁業水域防衛に役立つ四隻の海軍艦船」という題の記事で「ガーディアン」はこう報じている

1970年代の「タラ戦争」を想起させる派遣で、合意なきEU離脱の場合、1月1日から、四隻のイギリス海軍監視船が、イギリスが漁業水域防衛を助ける準備ができている。

長さ80メートルの武装艦船は、岸から200マイルのイギリス排他的経済水域(EEZ)内で操業する全てのEU漁船を停止し、点検し、没収する力を持っている。

 このような論争という点で、南シナ海水域は例外ではない。

 中国がロイター記事で言及されている国々と重複する領有権主張をしているだけでなく 、上記各国が、お互い重複する主張をしているのだ。

 それで、この全ての国々間での散発的論争がおき、時に船の捕獲や乗組員の一時拘留がある。

 だが東南アジア諸国と中国との紛争を含め、これらの論争は決まったように二国間で解決されている 。

 この顕著な例が、2015年に展開した、中国の南シナ海領有権主張に対し、フィリピンのために、アメリカが率先しての、ハーグ仲裁裁判所への訴訟だ。

 ハーグ仲裁裁判所は、フィリピンに有利な裁定をしたが、マニラは北京に対し、この裁定を影響力として利用したり、ワシントンの支援を求めたりするのを拒否し、代わりに、自身と北京との直接二国間交渉を選んだ。

 地域の永久軍事占領を正当化するため、アメリカが使う中東戦略同様、良くある海事論争を地域や国際危機にエスカレートさせたいワシントンの願望を示す例だ。

 最近、南シナ海問題は、ASEANサミットでも生じた。

 「ASEANサミット:南シナ海、コロナウイルス世界流行が影を落とす」という記事でアルジャジーラは、この問題に関するマレーシアの対応を書いている。

会議で「南シナ海問題は合理的な形で、対処解決しなければならない」とマレーシアのヒシャムッディン・フセイン外務大臣が述べた。「我々全員、南シナ海問題を複雑にする活動に着手するのは控えなければならない。我々はあらゆる手を尽くし、あらゆる方法で地域が他国に更に複雑にされないよう保証する方法を考えねばならない。」

 アメリカは東南アジア諸国の擁護者を装っているが、その取り組みは歓迎されておらず、逆に、解決に向かう道ではなく、不安定化の源と見なされているのは明らかだ。マレーシア外務大臣が「他国」に言及した際、ワシントンを意味していたのは、ほぼ確実だ。

 ロシア・ドイツのノルドストリーム2パイプラインを妨害しようとして、アメリカがヨーロッパ「エネルギー安全保障」の保護者を自称しているのと全く同様、南シナ海の比較的ありふれた海事紛争 - 地域諸国を「支持する」ためではなく、彼らにその「優位」を押し付ける口実として、アメリカが割り込んでいるのだ。

 東南アジア諸国は、中国を、最大の貿易相手国、観光産業の源、一部の国々では、重要な軍事とインフラのパートナーと見なしている。南シナ海で長年続く紛争を巡って生じる地域を不安定化する紛争の可能性は、実際にアジアにある国々の誰のためにもならず、彼らを分割し、再び支配を強化しようと努めるアジア以外の国々の権益に役立つだけだ。

 Tony Cartalucciは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2021/04/20/us-seeks-south-china-sea-conflict/

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 紛争の先兵がこの属国。

 デパートに行ってみた。大変な混雑。大型書店も長蛇の列。

 オリンピックありきの緊急事態宣言記者会見、生で見る気力なし。官房長官時代の「鉄壁」益々磨きがかかり、まるでロボット。毛ば部とる子氏のyoutube解説拝聴で十分。

 緑のタヌキ、2月2日に明言している。「コロナには、カレンダーも時計も地図もない。人間が自粛期間を勝手に設定しても、コロナは付け入る隙を常に狙っていると考えてもいいのではないか。」コロナにオリンピック日程を押しつけても無視される。

2020年12月14日 (月)

東南アジアへの関与強化を目指すアメリカの苦闘

2020年12月2日
Tony Cartalucci
New Eastern Outlook

 世界中で多くの人々が、ホワイトハウスでの変化が、アメリカ外交政策の変更になるのを期待しているが、これまで四年にわたり行われてきたアメリカ外交政策の、最も論争的な、破壊的な局面の多くは、既に何年間も続いてきた政策の継続だった。だから政策は近いうちに変化することはありそうにない。
 これは特に、中国を「封じ込める」益々必死の取り組みで、アジアと東南アジアで再び幅をきかせたがっているワシントンの願望にも当てはまる。

 東南アジア諸国を、中国から、アメリカと、太西洋対岸ヨーロッパのパートナー寄りに向けさせるための、いかなる実際の誘因に欠けるアメリカは、その代わり、二つの中心的存在が南シナ海で「紛争」している状態で、一連の「危機」と「懸念」を発明し、メコン川に沿いの中国ダム下流の国々に対するアメリカの「懸念」を高めた。

 下流の国々には、ラオス、ミャンマー、タイ、カンボジアとベトナムがある。

 南シナ海でのアメリカ干渉と同様、メコン沿いの国々は、ワシントンの「懸念」共有し、ワシントンが展開する枠組みを採用し、懸念に「対処する」よう常に圧力をかけられている。

 だが、ベトナムを例外として、これらの国々は、全て中国との堅実な、増大する関係を維持しており、ベトナムすら、経済的に中国に強く依存している。

 メコン川沿いのダム建設が生み出す問題がなんであれ、緊張を高め、絆をほつれさせ、アジアの集合的な勃興を阻止するのを目指す、あからさまな動機の腹に一物ある調停者の干渉なしで、中国を含め関係する全ての国々が、双方で解決する十分な誘因がある。

 この明白な事実のため、メコン沿いの国々が、ワシントンの取り組みを真剣に受けとめなかったのは驚くべきことではない。その代わり、時間をかせぎ、ワシントンの更なる強制的措置を避けるために、彼らは主に口先だけで同意しているように思われる。

 だが既にワシントンが、南シナ海とメコン戦略で、更なる強制的措置を取り込んでいるのは明確だ。これは、この地域中で、これらの問題に関し、アメリカの枠組みや提案を採用するのに反対する政権を排除し、それを、確実に、自ら招く逆転不可能な損失をもたらすにもかかわらず、中国との結びつきを切断するのを熱心に望む傀儡政権に置き換える政権転覆を追求する反政府派への資金提供もある。

 東南アジアとタイに対するアメリカ干渉を主張しているのは、特にタイのチュラロンコン大学準教授ティティナン・ポンスディラックだ。

 最近彼がバンコク・ポストに書いた「メコン流域地帯での、中国-アメリカのライバル関係」と題する論説で、彼は具体的にこう書いた(強調は筆者による)。

アメリカ条約同盟者として、2014年の軍事クーデター以来、軍が後援する体制下、タイは中国への旋回で際立っているが、抗議する青年たちの運動の要求に従って、正真正銘民主的な制度になれば、この傾向も方向が変わり得る。同様にカンボジアでも、もし若い世代と反政府派支持者が立ち上がることができれば、フン・セン首相の「一括」中国手法は異なる路線を行くかもしれない。だが、予測可能な将来、メコン流域地帯は一層中国路線に引き寄せられる可能性が高い。

 ここで、ティティナンは、東南アジア諸国政府が中国に軸を移しており、南シナ海やメコン川を巡る問題の緊急性とされるものをアメリカが主張しても、北京との結びつきを強化し続けるのを認めている。

 彼は、これを変える唯一の方法が「抗議する青年たちの運動の要求に従って、本当に民主的な制度が実現する」かどうかであるのも認めている。

 ティティナンは、タイの伝統的制度と、現政府打倒を目指す、ここ数カ月、益々過激な反中国姿勢を見せている、タイで進行中の反政府抗議のことを言っているのだ。

 ティティナンが省いているのは、これらの抗議行動が、アメリカ政府が資金供給する組織、全米民主主義基金(NED)に支援されていることだ。その理事会が、イラク、シリア、リビア、ウクライナや、最近では香港を含め、世界中でのアメリカ政権転覆プロジェクトの最も著名な設計者の一部とつながっているフロント組織だ。

 そしてこれは、究極的に、アメリカに残された唯一の切り札だ。中国とのつながり切断する傀儡政権を据えるための、東南アジアじゅうでの政権転覆未遂や、北アフリカと中東が、 2011年に始まった「アラブの春」という、似たような政権転覆キャンペーン後に苦しんだように、アジアの集団的勃興を、長期の、つらい段階が続く、何十年もの内部抗争に変えるのに十分な混迷を作りだすのだ。

 多くの人々が、香港からタイに至るまでの抗議行動や騒動を、孤立した国内政治論争や「民主化運動」として描写し続けているが、実際は、彼らは、躍進中の中国に対して、再び幅をきかせようとするワシントンによる、身勝手で、異様な地域作戦の一環なのだ。アジアでのアメリカ外交政策を擁護する「準教授」さえ、これらの抗議が、アメリカが成功できる唯一の方法だと認めている。

 東南アジアにとって、アメリカ干渉を失敗させ、2011年の「アラブの春」に似た地域規模になり得る問題を防ぐことは、今後数年、アジアの継続的勃興を保証するか、それとも、今後数年、紛争を封じ込め、その余波の中、高価な再建で過ごすかの問題だ。

 Tony Cartalucciは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2020/12/02/us-struggles-for-relevance-in-southeast-asia/

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 インパール・ガースー、今日何を言うか知らないが、一日も早く「大阪が危ない。日本も危ない。」を書いた和歌山県知事に代わって貰いたい。見識、実行力桁違い。

 岩波書店の月刊誌『世界』1月号を、ページ通りの順序で読んでみた。実に興味深かった。

  • ヒジャブを纏ったアーダーン首相がめざすもの
  • ペンと権力
  • 非対称な国家間のメガ協定
  • GIGAスクールというディストピア
  • メディア批評

 以下の要約、実際にお読みいただけない限り、意味が通じないだろうが、ともあれ書いておこう。

 白人による、イスラム教徒に対するテロのあとマオリ族にも配慮したアーダーン首相。戦争時の言論弾圧に目を向けない身勝手な俯瞰的思考で、反対意見を封じ込め、宗主国の侵略戦争用戦地への変身に邁進する狂気の首相は対照的。TPPの問題点を鋭く指摘してこられた方による簡潔なRCEP解説。これこそ俯瞰的思考の手本。コロナに便乗して、過激な教育政策変革を狙う経産省と、比較的斬新的な文科省。そして「杉田官房副長官を会見の場に」

 昨夜、BSで、原発推進か否かの論議のあと、報道番組らしきものを、ちらり見た。TPPを大絶賛するので、すぐさま切り換えた。呆導番組「非対称な国家間のメガ協定」と比較にならない無内容さ。中国憎しだけ。

 TBS NEWS

学術会議問題「外すべき者」 杉田副長官関与の資料判明

 IWJの岩上安身氏は12月25日に、任命拒否された6名の一人、早稲田大学教授・岡田正則氏にインタビューとのこと。公開日は未定のようだ。

2020年12月11日 (金)

イランを待ち受ける危険な挑発

2020年12月8日
Tony Cartalucci
New Eastern Outlook

 最近のイラン人核科学者モフセン・ファフリザデ暗殺は、ほとんど大喜びの欧米メディアは、次期アメリカ大統領ジョー・バイデンが副大統領だった2015年に署名された、いわゆる「イラン核合意」に戻らないのを確実にする試みと決めつけている。
 記事は、バイデンは、世界的な舞台で、アメリカを顕著なリーダーに戻そうと望んでおり、イランとの和解は彼の優先事項にあったと報じている。

 欧米メディアは今、競ってイスラエル政府を非難しているが、イスラエルは、これら非難を軽視したり、誤りを立証しようとしたり焦っていないように思われる。この狙いは、最近のエスカレーションで、アメリカを無関係に見せることだ。イスラエルとイラン間で増大する緊張の中、世論を形成し、アメリカを無力だと描写する競争は、近い将来、あり得るどのようなアメリカの関与も、ワシントンとしては、招かれておらず、非計画的で、気が進まないように見せるよう意図されているのだ。

 だが、イラン政府に悪影響を及ぼし、転覆するという狙いは、バラク・オバマを含め、複数の大統領に及ぶ、何十年も、アメリカ外国の政策にとっての強迫観念だった。

 2009年という早い時期から、アメリカ政策立案者たちは、アメリカと同盟諸国を、イランとの紛争に更に向けて動かすため、アメリカではなく、イランが、侵略者のように見えるのを最小化するような方法で、この種の戦術を使う計画を詳述している。

 ジョー・バイデン次期大統領が、アメリカ外国政策の危険な路線を逆転するのを待って、息をこらしている人々は、そもそも彼が、8年間副大統領として、この方向に進むのを推進していたことを忘れているのだ。

 オバマ-バイデン政権は、実際、包括的共同作業計画(JCPOA)つまりイラン核合意を締結したが、同時に、アメリカは、地域でのイランの親密な同盟国シリアに対し、いまだに継続中の代理戦争を引き起こしており、これは、イランと直接対決する前に、イランの主要同盟国の一つを構図から外すことを狙った代理戦争なのだ。多くの点で、イラクでのアメリカの駐留と、イエメンで継続中のサウジアラビア戦争での役職も、この狙いに役立っている。

 署名される何年も前から「イラン核合意」は崩壊の運命にあった

 オバマ-バイデン政権のイランとの和平に対する見かけ上熱烈な願望にもかかわらず、それが署名される前から、JCPOAは崩壊の運命にあった。

 当時、アメリカ政府による和平工作は、全くみかけだけで、合意が公的に論じられる何年も前、署名されるずっと前に考案された計画のだった。

 地球上最大の欧米企業既得権益に資金供給されるブルッキングズ研究所の2009年の“ペルシャへの道: アメリカの対イラン新戦略の選択肢”と題する(PDF)文書は、イランにアメリカ制裁の下から逃げる機会を、アメリカが不誠実に申し出るよう要求しているが、この申し出が、アメリカに意図的に妨害され、更なるエスカレーションに向かう口実として使用されるのを認めていた。

 文書には、このような声明(強調は筆者)がある。

アメリカが空爆を開始する前に、イランの挑発を引用して、空爆の正当化に利用できれば、遥かに望ましい。明らかに、イランの動きが、より法外で、より致命的で、より理不尽であれば、益々アメリカに好都合だろう。もちろん、このゲームの仕組みがばれてしまえば台無しになるので、世界の他の国々にはそうと悟らせずに、アメリカが、イランをこのような挑発に駆り立てるのは非常に困難だろう。(多少成功の可能性がある一つの方法は、テヘランが公然と、あるいは半公然と報復し、それが、いわれのないイランの侵略行為として描写されるのを期待して、秘密の政権転覆の取り組みを強化することだ。)

 ブルッキングス文書は、こうも提案している。

同じように、イランに対するいかなる軍事作戦も、世界中で大いに不評となる可能性が高いので、作戦に必要な後方支援を確保し、その作戦による負の結果、ブローバックを最小化する適切な国際的文脈が必要だ。国際的な非難を最小化し、(いやいやながらであれ、こっそりとしたものであれ)支持を最大化する最善の方法は、核兵器を入手しようと固く決意していて、不純な動機で入手しようとする政権しか拒絶するはずがない、余りにも素晴らしい最高の提案を提示されたのに、イランが拒絶したという考えが広まっている場合にのみ、攻撃することだ。そうした状況下では、アメリカ合州国(あるいはイスラエル)は、怒ってではなく、悲しみながらの作戦のように描きだすことができ、少なくとも国際社会の一部は、最高の提案を拒否したイランが“自ら招いたのだ”と結論するだろう

 合意を作りだし、それを破壊し、それをイランを軍事攻撃する口実として利用するのは常に計画だった-JCPOAが署名されるずっと前から。

 2009年の200ページ以上のブルッキングス文書は、明らかにアメリカと同盟国が、イラン自身に、より直接的な行動をする前に、イランの同盟国、シリアとレバノンのヒズボラを構図から排除する試みや、アメリカが政治的に実行できない計画の一部を実行するためのイスラエルの利用も含め、出版以来ずっと、その枠組みに従っているのがわかる。

 いろいろな点で、ブルッキングス文書の中で詳述されている方法の全てが、事実上、実行されるか、少なくとも試みられている。

 最近のエスカレーションは予測可能だった。最近の「バイデンのアメリカは「イランに対する圧力を続けるだろう」という記事は、「トランプの」アメリカであれ、「バイデンの」アメリカであれ、イランとの和平は、決してアメリカ対外政策の一部ではなかったことを指摘している。

 必要なのは、大統領に就任次第、バイデンが優先順位をにしていると欧米メディアが主張する、望ましい「和平」からアメリカを「いやいやながら」「引き離す」ように見える挑発とエスカレーションだ。

 モフセン・ファフリザデ暗殺で、既にドミノはそれに向かって倒れ始めた。イランと欧米の大衆を、中東での、代理あるいは別の、もう一つの悲惨な戦争に引きずり込まれる可能性に直面する危険な時期が待ち構えている。この政策を推進するのに必要なのは、従順な欧米メディアが再びアメリカの関与を支援する役職を果たすのを熱心に待っている、アメリカが、より直接関与するために引き合いに出せる、本物であれ仕組まれた挑発であれ、イランの挑発だ。

 Tony Cartalucciは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2020/12/08/dangerous-provocations-ahead-for-iran/

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 文中にある“ペルシャへの道: アメリカの対イラン新戦略の選択肢”は、下記の記事でも言及されている。

シリア戦争は始まりに過ぎない 2017年1月5日 (検索エンジンで隠蔽されている記事)

案の定“イラン合意”を対決に転換するアメリカ 2017年3月14日

 昨日の「赤旗」で下記記事を見た。

「大阪、看護学校閉校へ 相次ぎ二校 維新府政が補助削減」

 LITERAにも下記記事がある。自分で首をしめておいて、自衛隊のお世話になるという不思議な異神論理。

大阪の医療崩壊と看護師不足は維新の医療削減政策のせい! 橋下徹は大阪市長時代、看護師の給料を「バカ高い」と攻撃

 昨日の感染者、東京602人

 日刊ゲンダイDIGITAL

「勝負の3週間」途中経過を検証 重症者・死者は悪化度2倍

 緑のタヌキ・カルタ遊び最新版「ひきしめよう」。一方GO TOは放置。

 常に、森永卓郎氏説を連想。

「生産性の低い」と考える高齢者を清算しようとしているのではないかと思ってしまうほどの動きの鈍さだ。

2020年6月20日 (土)

アメリカは、なぜまだシリアを制裁しているのだろう?

2020年6月18日
Tony Cartalucci
New Eastern Outlook

 中国メディアは、シリアに対する制裁を撤廃するようにというアメリカに対する北京の最近の要求を強調した。

中国使節、アメリカにシリアに対する一方的制裁を撤廃するよう要求」という題名の記事で中国CGTNはこう報じている。

火曜、中国使節、アメリカにシリアに対する一方的制裁を即座に解除するよう要求。

長年の経済封鎖が、シリア国民、特に女性と子供に途方もなく大きな困難をもたらしている。食品価格を含め急騰する商品価格とシリア通貨デノミで、ひき起こされた苦しみは、全国的に一般人にとって大変な負担だと、中国の張軍国連大使が述べた。

 経済的にシリアを援助し、ダマスカスに狙いを定めたアメリカ制裁に挑戦する中国の試みは、シリア政府に対する、アメリカ率いる代理戦争への、アメリカが武装させている反政府組織をシリア全土で殲滅する上でのロシアの主導的役割など、モスクワによる直接的な軍事介入を含めたロシアの公然の反対に続くものだ。

 シリアに対するアメリカ制裁がずっと以前に紛争におけるアメリカ介入のための動機づけと主張されていることなき後も生き残った - シリアの人々の民主的な念願を支持して、シリア政府によって人権侵害と主張されていることに反対するというクレーム。

 2011年以前に、抗議行動の計画から、2011年の街頭抗議行動を、破壊的代理戦争に移行させるため、シリアで、過激派闘士を武装させ、派遣したことを含め、アメリカが意図的に紛争を画策したことは議論の余地なく明らかにされている。いわゆる「自由の戦士」が、アルカイダやその多くの分派を含め、実際、様々なテロ組織から集められた過激派だったこともずっと前から明らかだ。

 シリアの治安作戦が、シリア政府に対するアメリカ「代理部隊による攻撃」と、最終的には直接の米軍攻撃に反撃するものだったことが明らかになった今、制裁は、シリア国家を崩壊させるためのアメリカの取り組みの経済的要素に過ぎなかったことは明らかだ。どんな形でも、シリア国民を援助したり、支援したりするな。

 そして、もちろんシリアに対するアメリカ制裁は、全てのシリア人の生活を困難にした。紛争中、終始シリア政府を支持し続け、シリア政府に支配される地域に暮らし圧倒的多数の人々から、最終的に、武器を引き渡し政府軍に降伏した、アメリカに支援されていた過激派闘士まで、 全員が、国家再建の上で、経済的苦難と困難な道に直面している。

 そこで、アメリカが最初にシリアに制裁を課す際、それを正当化するのに使い、今益々、薄弱になっている利他的な口実は、プロパガンダ以外の何ものもでもないことが明らかで、アメリカがなぜ他国に制裁を課するか疑う際に、考慮に入れられるべきだ。

 アメリカはシリアで人道的大惨事を画策し、実行し、できる限り長く永続させようと、いまでも積極的に試みており、明らかに「シリアをロシアにとっての泥沼にする」ため永続させようとしている。シリアに制裁を加えることに対するワシントンの「人道的」正当化は、空虚なだけでなく、ワシントンはシリアで人権を踏み潰す罪を犯しているのだ。

 中国や他の多くの国々は、これら制裁を撤廃するよう求めている。誰も驚かないが、ワシントンは拒否しているが、いわゆる「国際」団体が、ワシントンに責任をとらせたり、シリアの現在の問題を緩和したりする能力のなさは、これら団体が奉仕する国際秩序が機能不全に陥っていて、是非とも代替策を見いだす必要があることを明らかにしている。

 シリアを再建するための中国の経済援助と努力は最終的に実現するだろう - それは時間と、中国がいかにアメリカ制裁を回避するかの問題に過ぎない。

 これは、直接彼らに反対するか、アメリカの干渉から完全に独立し、絶縁された世界システムを作り出すかのいずれかによって実現されるだろう。いずれの場合でも、もしワシントンが、現在の政策を維持すると強く主張するのであれば、アメリカから独立し、隔離された世界体制の中で、アメリカ自身が、切り離されて、衰退するのに気づく、アメリカ国民にも、アメリカを支配する既得権益組織にさえも利益にならないことになろう。

 Tony Cartalucciは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2020/06/18/why-is-the-us-still-sanctioning-syria/

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 今朝の孫崎氏メルマガ題名に納得。

「フジと産経の世論調査で不正、両社調査業務を委託。調査は千名対象。再委託企業は半数の5百担当。内各回100以上を架空回答入力。ちなみに5月8?10日共同は内閣支持41.7、不支持43.0、同時期産経支持44、不支持41%。各社が不支持多数を出している中、支持多数と発表

 鼎談での平野氏の指摘は鋭い。

【佐高×早野+平野の3ジジ放談】経産国家の宿痾 二階小池の正体20200617

 Paul Craig Roberts氏の最新記事題名にびっくり。話題は剖検によるフロイド氏の死因。薬物過剰摂取。

George Floyd Was Not Killed By Police

 Roberts氏、下記Unzレビュー記事を参照しておられる。

Or Did George Floyd Die of a Drug Overdose?
Fatal Fentanyl: A Forensic Analysis

 

2020年6月18日 (木)

アメリカにとって、黒人の命は時々大切なだけ

2020年6月5日
Tony Cartalucci
New Eastern Outlook

 アメリカ国内の問題の根源に、植民地主義と人種差別があることに疑いようがない。外国の人々を支配しようとする行動は、直接、国内で、異なる人々も、支配されるべきだという信念につながる。

 いまでも、黒人アメリカ人に、彼らの基本的権利や尊厳を与えることを拒否した人種差別法を覚えているアメリカ人がいる。その前には、公然の奴隷制度があった。

 今日でさえ、人種差別は、依然、制度化されている。それは寛容と平等という表層の下、アメリカの文化に染み込んでいる。

 これは、黒人や他の少数人種に対して人種差別的な白人だけの問題ではない。アメリカの末期的症状文化の産物 - それは、まだアメリカの対外、国内政策の中心にある基本的な人種差別主義だ - 黒人だけでなく、アフリカ人から、アジア人や、スラブ人まで、地球上のほとんどあらゆる人種に対して。

 アメリカは不当な戦争を正当化するため、外国の人々の集団全体を憎悪するよう、自国民に奨励する国だ。アラブ人も中国人もロシア人も全て、主流アメリカ文化に認められ偏狭と憎悪で非難される。このような国で、他の集団に対する憎悪が、人種差別主義者や不公平な人々の心の中で、一体なぜ容易に正当化されるのか理解するのは困難ではない。

 アメリカ警察だけではなく、人種差別は、アメリカ外交政策の主要特徴

 アメリカが、アフリカの尊厳と進歩の擁護者で、カダフィが残酷に殺され、彼の政府がアメリカとそのヨーロッパの同盟国に支援される重武装した人種差別的なテロリストに置き換えられるまで、彼らに提供していた仕事とより良い人生を見いだすためリビアに旅したアフリカじゅうからの何万という黒人の擁護者であるリビア指導者ムアマル・カダフィを権力の座から追放し、北アフリカの国リビアを崩壊させたのは、バラク・オバマ大統領の下でのことだった。

 アメリカに支援されるリビア人過激派戦士が、リビアの黒人国民を追い詰め、捕まえ、殺害し、拷問にかけ、戸外奴隷市場で、彼らを奴隷にする、21世紀には到底想像もできない光景ながら、それは、当時「黒人」が大統領だったにもかかわらず、アメリカと、その外交政策と根深い人種差別と支配権の感覚が可能にしたものだった。

 オバマ大統領は、決して、責任を負うべき唯一の人物ではない。彼はただ他の連中が放っておいたものを拾い上げたに過ぎず、彼の後継者ドナルド・トランプ大統領はアメリカの組織的な不正を世界中で継続推進しているだけのことだ。オバマ大統領が黒人だった事実は何の相違も生まず、アメリカの顔の表層的な象徴が一時的に揺れようとも、基本的に腐敗した不正、人種差別主義や白人至上主義が根強く残っていることを実証している。

 ある国が人々の、ある集団の尊厳や価値や、人間としての権利を与えることを拒否するのを正当化することが可能になれば、他の集団も、容易に彼らの人間性を剥奪され、虐待される状況になりかねない。

 もし黒人の命が重要なら、いつでも、どこでも、常に重要なはずだ

 警察暴力のどんな事例も悲劇的で、対処する必要があり、それ自体問題だ。警官たちが、もし彼が黒人だったからジョージ・フロイドを殺害したのであれば、それは対処すべき追加の問題だ。

 もしアメリカ人が、黒人の命が重要だと本気で考えているなら、彼らに対する不正と、アメリカの人種差別や支配の他の全ての被害者に対する戦いに全力を注ぐべきだ。もし、それが話題で、「最新流行」の時だけ、声を高めて話すのなら、率直に話さないのと同じことだ。

 もし、アメリカが海外で黒人を大量虐殺し、世界中で肌が褐色の人々を殺したり、アジア人、特に中国人に対し、人種差別を常態化しようとしたりする際、彼らが黙っているなら、彼らは、アメリカ外交政策を支える非常に根深い、制度化された人種差別と、全世界地に及ぶ工業化された不正行為、まさに国内で黒人に対する不正としてあらわれる類の人種差別に共謀しているのだ。

 アメリカでは人種差別に対する本物の反対が必要だ。機に便乗した振る舞いではなく。

 アレクサンドリア・オカシオ・コルテスのようなアメリカ政治家は、人種的平等のために専念し、人種差別主義と戦っているような態度を取っている。それでも彼女は、黒人や肌が褐色のアジアの人々が多く暮らす国々をもっぱら標的に定める米軍の外国侵略を決まったように支持している。

 最近の、彼女の究極的な偽善の発露は、大英帝国による中国領土の没収と、その支配の延長である香港に干渉するアメリカへの彼女の支持だった。

 もちろん大英帝国は、白人西洋人は、他の全ての人々より優れており、「異教徒」人種にイギリス「文明」を押しつけるのは彼らの権利であり、義務でさえあるという信念に基づいて外交政策を追求したのだが、中国もこの信念の例外ではなかった。

 アレクサンドリア・オカシオ・コルテスは、香港「民主主義」支持は、より敏感な世界の聴衆のために、英米の人種差別の同じブランドの単なるイメージチェンジではないと信じて、香港に干渉するアメリカ政府への彼女の支持が、このみっともない伝統と狙いを継続するのを助けるのを理解しているかもしれないし、していないかもしれない。だが彼女は、結局、人種差別と優位と覇権を支持しているのだ。

 「Black Lives Matter(黒人の命は大切だ)」が、アメリカが、黒人を含め、外国で他の国々に対して行う不正を平気で無視したり、更に支持さえしたりするのが可能な権益集団に大声で叫ばれるうつろな政治的スローガンである限り、黒人の命は決して大切にはなるまい。

 アメリカの根深い人種差別は、覇権に対する全体的な願望と、それを支える人種的、政治的、文化的優位という概念の多くの徴候の一つに過ぎない。これが取り組まれるまで、人種差別は、それを止めようとする皮相的な持続不可能な努力がされるだけで続くだろう。

 アメリカが他のあらゆる外国の人々より優れていると信じる限り、自分の主張を押し通し、「権益」を追求するために、搾取し、強要し、軍事攻撃さえ正当化することが可能な限り、人種差別と不正は国内で続くだろう。外国でアメリカの不正を推進している、まさに同じ大企業・金融業者の権益は、白人であれ黒人であれ、アメリカ国民を、自分たちの利益のために、分割して支配し、酷使し、虐待すべきもう一つのマーケット・セグメントとしか見ていないのだ。

 アメリカで人種差別的な白人警官によって締め殺されようと、リビアでアメリカ軍用飛行機に爆弾を投下されようと、黒人の命は大切だ。アメリカ人が、これを理解し、全面的なこの人種差別と不正行為反対で結束できれば、警官による虐待の次のビデオがオンラインで出現するまで数カ月先送りするだけでなく、何か実際にできるかもしれない。

 外国での憎悪と分裂を計画し、利益を得つづけるなら、アメリカ国内の憎悪と分裂は癒えるまい。マーティン・ルーサー・キング・ジュニアのような有名な平等の擁護者が、国内では、人種差別と不正に反対し、外国でのアメリカによる攻撃と覇権に絶えず反対だったのは偶然の一致ではなかった。この二つは基本的な不正という共通の主題でつながっているのだ。この二つが完全に暴露され、破壊されるまで、二つは共に続くだろう。

 Tony Cartalucciは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2020/06/05/to-america-black-lives-only-sometimes-matter/

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 LITERA

安倍政権が軍艦島世界遺産で約束した徴用工の説明センターに「朝鮮人差別ない」の一方的証言! センター長は安倍首相の幼馴染のあの女性

 あの島についての、アンドレ・ヴルチェク氏の記事を翻訳したことがある。

端島 - 残虐な歴史と、世界で最も霊にとりつかれた島

 『アメリカ・インディアン悲史』新刊書は入手困難かも知れないが、『アメリカン・ドリームという悪夢―建国神話の偽善と二つの原罪』は購入可能なはず。この話題で、必読書。

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