Tony Cartalucci/Brian Berletic

2025年12月15日 (月)

アメリカの新たな「和平」提案は(またしても)「ミンスク3.0」焼き直し版

Brian Berletic
2025年11月28日
New Eastern Outlook

 ウクライナにおけるロシアとの代理戦争が続く中、アメリカは再び「和平計画」と呼ばれるものを提案した。

 

 提案内容は的外れだ。アメリカは一般的な和平を求めているわけではなく、ましてロシアとの具体的な和平を求めているわけではない。むしろ以前の提案と同様に、進行中の紛争を凍結し、ウクライナ軍を再建し、可能であれば西側諸国部隊をウクライナ国内に展開させて緩衝地帯を設け、ロシア軍の進撃を阻止しようとする試みだ。

 これは単なる憶測の域を出ず、今年2月にブリュッセルで欧州に向けて出された公開指令の中で、アメリカ国防長官(現在は「戦争長官」)ピート・ヘグセス自ら明らかにしたことだ。

 ヘグセス長官が「これはミンスク3.0であってはならない」とわざわざ主張したにもかかわらず、この指令は、進行中の紛争を凍結し(終わらせるのではなく)、ウクライナの「安全保障上のニーズ」に「倍増して」「再関与」し 、それによりウクライナ軍を再建することを含む「ミンスク 3.0」の枠組みを明示的に提示しただけでなく、実際は「欧州および非欧州の部隊」により課されるシリア式緩衝地帯を追加することでそれを上回っている。

 ミンスク1と2がウクライナ軍制圧を阻止し、実際の和平が実現されるのを阻止したのと同様、この新たな「ミンスク3.0」 提案は、紛争を再び凍結させ、具体的には真の解決策が生まれるのを阻止することを目指している。

 ウクライナに「欧州および非欧州の部隊」が配備され、アメリカが再びロシアとの合意に違反したことが明らかになった場合、ロシアが特別軍事作戦(SMO)を再開する能力は、ウクライナ国内に深く根付いたNATOの存在により複雑になるだろう。これはちょうど、アメリカとトルコ軍がダマスカスと同盟国のロシア、イランによるシリア完全奪還を困難にし、最終的に2024年後半、ロシアとイランが支援する政府の完全崩壊に至ったのと同じだ。

 ロシア主権を回復し、政策、制度を再構築し、産業を利益よりも目的に近づける優先順位に戻したのは、プーチン大統領とその政治的同盟者を含む、現在ロシアを運営している現在の政治的利益だった。

 たとえアメリカがこれらの可能性を明示的に排除した合意を提案しても、最初のミンスク合意とミンスク合意2も同様で、アメリカとウクライナおよびヨーロッパの代理勢力により単純に、露骨に、そして非常に意図的に違反されたのを忘れてはならない。

 また、ウクライナ紛争にとどまらず、アメリカはロシア、そしてそれ以前のソ連に対しても、これまで提案してきたあらゆる合意、条約、了解事項に違反してきたのを忘れてはならない。ドナルド・トランプ大統領自身を含む歴代アメリカ政権により、現在破棄されている中距離核戦力(INF)全廃条約やオープンスカイ条約など、一方的に破棄されてきた軍事条約、覚書、協定が数多く存在する。

 現在のトランプ政権は、政権発足から僅か一年足らずの間に、イランおよびレバノンに拠点を置くヒズボラとの「和平協定」や「停戦」提案を、アメリカの代理組織(イスラエル)による首切り攻撃の試みと、その成功や、アメリカ自身によるイラン攻撃の隠れ蓑として利用してきた。

 ロシアの対応

 これら提案をクレムリンがどのように解釈しているか確実に知ることは不可能だ。ロシア指導部がアメリカ提案を何でも信じるほど素朴だとは考えにくく、そもそもアメリカが平和を模索する可能性があると信じるなど到底考えられない。

 だが、ミンスク1と2を振り返ると、ロシアの国営メディアTASSによれ、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領自身も後に「全くの欺瞞」だったと認めたにもかかわらず、両方の提案に同意したことから、そもそもなぜこれら合意が受け入れられたのか、そしてロシアが西側諸国の将来提案を受け入れるのかどうかという疑問が生じる。

 2014年から2015年にかけて、ロシアは最終的に2022年のSMOとなるものを開始する準備がまだできておらず、ミンスク1と2で双方に生じた時間をロシアがより有効に活用し、SMO開始時に、ウクライナとそのスポンサー、アメリカより強い立場に立てると感じていたのかもしれない。

 アメリカのこの最新提案は、またしても明らかな欺瞞だとロシアは理解しなければならない。アメリカがロシアと同盟国の中国を包囲し封じ込めることに関し、これまでも、そして今も明らかに取り組んでいる真の狙いをヘグセス長官が認めているのだ。

 これに同意するのは、ロシアが自ら休戦を必要としており、休戦によって得られる時間をアメリカとその代理勢力より有効に活用できると確信した場合のみだろう。また、ロシアは、ウクライナへの「欧州および非欧州軍」派遣に対し、現在崩壊し壊滅状態にあるシリア・アラブ共和国でしたよりも効果的な方法で対処する用意があることを確信しなければならない。

 あるいは、ウクライナの戦闘力が崩壊する中、ウクライナの戦場でロシア軍が飛躍的に前進を続ける一方、次々と出される提案にロシアは単に応じるだけかもしれない。

 今や、現在の大統領政権やアメリカ議会の構成にかかわらず、アメリカには合意する能力がないこと、そして数十年にわたる世界覇権追求に直面している国々は、それに対する防衛戦略と、エスカレーションへの危険なスパイラルを回避する手段とのバランスを取らなければならないことは十分に明らかなはずだ。

 アメリカの外交政策の真の意味を理解する

 次々に提案されるアメリカの政策の意味を理解しようとする観察者にとって、アメリカ政策の様々な層を考慮するのは有益だろう。

 これらの層には、(1) 最も浅薄でほとんど意味のない言説、プロパガンダ、政治劇、(2) 進行中のアメリカの軍事作戦、態勢、準備、(3) 定評あるシンクタンク内部で行われている金融企業の政策決定 (そこで書類が弁護士チームにより法案に変えられ、その後ロビイストによりワシントンに送られ、承認されるだけ)、(4) 世界に対するアメリカの優位性を維持するという主な動機と「集団的国際主義」または「多極主義」に立ち向かい解体したいという切実な願望が他の全ての政策を推進している最も深い層が含まれる。

 言説、プロパガンダ、政治劇という上層部に焦点を当てて分析すると、常に混乱が生じ、予測は悲惨に外れ、アメリカの政策、動機、利益を全体的に理解できなくなる。

 これら以外の、より重要性の高い層を更に深く掘り下げることで、表面に作り出された意図的な混乱を切り抜けられる、アメリカの力、その本当の意図や方法や動機について、より深く根本的な理解ができる。

 またアメリカ政策の標的となった人々には、それに伴う欺瞞や、欺瞞によ目をそらすことを意図した裏切りの危険の両方から自らを守るための現実的戦略を策定する最良の機会が与えられる。

 第一階層:言説、プロパガンダ、政治劇

 そもそもアメリカが 「平和」について語っているのは、ロシアが戦場で客観的に成功しているからにすぎない。それはちょうど、2014年から2015年にかけての状況が、ミンスク合意1と2に先立ち、アメリカとそのヨーロッパ代理勢力に 「平和」について語らせたのと同じだ。

 そうでなければ、2024年にシリア政府を転覆させ、シリア・アラブ共和国を完全に政治的に掌握する機会が訪れたときと同様、アメリカとその代理勢力は、指定された敵対国に最大限の損害を与えることを目指して妥協のない政策を追求するだろう。

 この最初の表面的な層では、アメリカは、ウクライナや他の欧州諸国を含むその代理人とともに、ウクライナに関してロシアと不誠実な合意を形成する手段と、アメリカとその代理人がロシアが受け入れる合意を必然的に破る手段の両方を区分することを意図した一種の政治劇を演じている。

 ワシントンが意図する違反行為の中で、まず第一に挙げられるのは、 ウクライナへの侵攻を企図する「欧州および非欧州」部隊の創設と展開だ。アメリカとウクライナおよび欧州代理勢力との間の「意見の不一致」状況は、アメリカが「和平協定」を提案し、可能であれば実施することを可能にする。一方、ウクライナと欧州は協定違反の責任を負い、アメリカは凍結された紛争と、アメリカが計画する「欧州および非欧州」部隊の恩恵を享受しつつ、 ロシアとSMO再開の可能性との間に立ちはだかることになる。

 アメリカは、自国の政治体制でもこの芝居を演じている。「トランプ政権」が提案した内容は、民主党内のいわゆる反対派から自動的に攻撃され、トランプ支持者も同様に、その内容や、ドナルド・トランプ大統領が2024年の選挙運動で掲げた公約との矛盾に関わらず、自動的にその提案を支持するようになる。

 トランプ政権内でも、この芝居は行われている。トランプ大統領の閣僚の中でも「攻撃的」メンバーは、2024年の選挙公約に反する提案の責任を負い、一方、J・D・ヴァンス副大統領のような「理性的」メンバーは、政権が公約を露骨に破っているにもかかわらず、公約を守ろうとしているふりをし、トランプ政権が明らかに正反対の方向へ進んでいるにもかかわらず、少なくとも国民の支持と希望をある程度保とうとしている。

 第二階層: 運用実態

 運用上の現実にはウクライナで進行中の紛争に関するアメリカの実際の行動が含まれる。

 アメリカは2014年にウクライナを政治的に掌握し、現在では政治的、軍事的、経済的に完全支配している。

 アメリカは、ドイツのヴィースバーデンにある作戦基地を通じて、進行中の戦争のあらゆる側面を支配しており、ウクライナ軍指揮系統の最高位を形成し、高レベル戦略の立案から戦場、更にはロシア領奥深くの個々のロシア標的選択まで全てを監督している。

 2014年以来、アメリカはウクライナ諜報能力のあらゆる側面を掌握し、再建し、現在はその指揮を執っている。これは2024年の記事「スパイ戦争:CIAがいかにしてウクライナのプーチンとの戦いを秘密裏に支援しているか」でニューヨーク・タイムズが明らかにしている。

 アメリカは依然欧州全土に数万人の軍隊を駐留させており、2014年以降ウクライナに対して行ったのと同じやり方で、ロシア国境沿いのNATO加盟諸国や非NATO加盟諸国を軍事化するアメリカ政策を監督しており、そもそもこの紛争を引き起こしているのだ。

 これら全ては、上の層で行われている言説、プロパガンダ、政治的演劇と関係なく客観的に継続しており、いかなる政治的保証、約束、または提案された合意よりもアメリカの意図をはるかに正確に示している。

 第三階層:金融企業による政策立案

 更に深いのは、ワシントンの世界作戦の現実を導く戦略を提示する政策文書で、その言説、プロパガンダ、政治劇、約束に関係なく、ロシアに対する継続的な敵意や攻撃や再包囲が含まれる。

 ロシアに関するアメリカの作戦上の現実は、2019年のランド研究所論文「Extending Russia Competing from Advantageous Ground(ロシアの手を広げさせる:有利な立場からの競争)」の中で明確に示されており、同論文は、現在進行中のウクライナにおけるロシアとの代理戦争として「Measure 1: Provide Lethal Aid to Ukraine (対策1:ウクライナへの致死的援助の提供)」を提案し、その内容について次のように述べている。  
ウクライナへのアメリカの支援拡大(致死的な軍事支援を含む)は、ロシアにとってドンバス地域を掌握するための犠牲(血と財政の両面)を増大させる可能性が高い。分離主義者へのロシアの支援拡大とロシア軍の増派が必要になる可能性が高く、支出増大、装備損失と、ロシア軍死傷者の増加につながる。後者は、ソ連のアフガニスタン侵攻時と同様に、ロシア国内で大きな物議を醸す可能性がある。
 この文書はまた「ベラルーシの政権転覆を促進する」「南コーカサスの緊張を利用する」、「 中央アジアにおけるロシアの影響力を減らす」「シリア反政府勢力への支援を強化する」などの措置により、ロシア周辺地域全体、更には旧ソ連邦諸国でロシアに圧力をかけることを提案している。

 この文書では、更に「石油輸出の妨害」「天然ガス輸出の削減とパイプライン拡張の妨害」「制裁を課す」「 ロシア頭脳流出の促進」といった経済対策も提案されているが、これらは全て、オバマ政権、トランプ政権、バイデン政権、そして現在第二次トランプ政権にかけて、アメリカがこれまでに実施し現在も実施し続けている対策だ。

 繰り返しになるが、様々なアメリカ政権が公式に何を言ったか、あるいはロシアに非公式に何を約束したかにかかわらず、ランド研究所の「Extending Russia Competing from Advantageous Ground ロシアの手を広げさせる」のような政策文書は、ロシアに対するアメリカ政策を推進する実際の青写真となっており、過去と現在の運用上の現実に現れている。

 更に悪いのは、ロシアを標的としたこのような政策が当てはまる全体像だ。

 2018年にアメリカ海軍大学が発表した「A Maritime Blockade Against China 中国に対する海上封鎖」と題する論文では、ロシアは、その大きなエネルギー生産能力、中国と接する長い国境や、中国にエネルギーを供給するパイプライン建設が進行中であることなどから、中国包囲や封鎖の成功上、大きな障害になると指摘されている。

 たとえ中国の海上封鎖と、中国の一帯一路構想における陸上経路の標的化・破壊に成功したとしても、中国へのロシア・エネルギー輸出は、アメリカ封鎖を成功させる上で依然困難をもたらす。従って、これは長年にわたるロシア自身を封じ込める政策を遙かに超え、遙かに緊急かつ切実に望まれている中国封じ込め政策に合致するものだ。

 今年2月に欧州に送った指示の中で、中国封じ込めに向けて、アメリカは緊急に方向転換しなければならないとさえヘグセス長官は言及していた。

 仮にウクライナに関する全ての面で、ロシアがアメリカに全面的に譲歩したとしても、同様に中国との断絶、あるいは敵対的姿勢を取ることで譲歩しない限り、アメリカはウクライナにとどまらずロシア周辺への攻撃を続けるだろう。

 ランド研究所をはじめとする政策シンクタンクは、独立機関とは言い難い存在で、武器メーカー、大手石油企業、製薬業界、巨大IT企業、銀行、投資会社など西側諸国全体の最も強力で影響力ある利害関係者を代表する企業や金融機関から資金提供を受け、運営されている。これが、更に深い層へと繋がる。

 第四階層: 大企業・金融企業の主目的

 これら政策シンクタンクが大手企業や金融企業の利益によって動かされているとすれば、一体何がその利益を動かしているのだろう?

 答えは、権力と利益の永続的追求で、それは「株主至上主義」といった原則により制度化され、株主の富の最大化を要求する。有限、あるいは時に減少する人口と、同様に有限な市場における利益と権力への果てしない欲望は、あらゆる競争の排除を意味する。それは統合と独占の過程を通じて、アメリカ国内のみならず、世界全体での競争で、ロシアを含む世界全ての国の人口と市場への参入と独占を要求する。

 これら原則が究極的に具体化し、ロシアに与えた影響は、ソ連崩壊と新生ロシア連邦に対する欧米諸国による略奪が続く1990年代に顕著となった。目的志向の国営企業を解体し 「民営化」し、その後、利益のために資産を剥奪・売却しようとする動きは、何百万人もの人々を貧困に陥れ、将来の見通しを暗くした。

 「自由市場資本主義」の約束はロシア国民には全く受け入れられなかったが、それは その後何十年も西側資本主義の熱気に「温められてきた」旧ソ連諸国の人々にも受け入れられなかったのと同じだ。

 ロシア主権を回復し、政策、制度、産業を再構築し、利益より目標に優先順位を戻したのは、プーチン大統領と政治的同盟者を含む現在ロシアを運営している現在の政治的利害関係者で、それがロシア連邦の今日の世界大国復活につながったのだ。

 ウォール街とワシントンの観点からすると、これは権力と利益の追求という彼らの主目的に対する障害で、そのためロシア(と多極世界を構成する他の多くの国々、特に中国)は「敵」に指定され、ソ連がかつてそうだったように、そしてシリア、リビア、イラク、そして最近ではネパールなどの国々がずっと最近そうであったように、数十年にわたる政策により、侵略や包囲や最終的には転覆を狙われてきたのだ。

 これら主目的が変わらない限り(そして変わっていないが)、それらが生み出す政策は変化せず、実施されるこれら政策の運用上の現実も変化しない。

 唯一変わるのは、世界中の大衆と意思決定者の両方を、この現実からそらし、武装解除させ、更なる前進のための余地や時間や機会を得るために使われる言説とプロパガンダと政治劇だけだ。

 アメリカ外交政策の完全な分析は、これら全ての層を網羅し、アメリカ外交政策が実際どのように、そして、なぜ策定されるのかという基本原則を一貫して理解していく必要がある。言説、プロパガンダ、政治劇といった最も表面的な層に焦点を当てても、地政学的現実は理解できない。海の波を、いくら研究しても、その遙か下に潜む何百万もの生物や海流や地形が全て明らかにならないのと同じだ。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/11/28/new-us-peace-proposal-is-minsk-3-0-repackaged-yet-again/

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 本記事の筆者が同じ話題を語っているYoutbeは下記。
New US “Peace” Proposal is “Minsk 3.0” Repackaged (Yet Again) 1:06:37
 Alex Christoforou Youtube  
Italy warns Ursula. Odessa port hit. Iran strikes back. Zelensky Kupyansk iPhone. Article 5 Security 22:53
 Arc Times
高市首相の逆ギレ答弁、経済も/高市氏の経済音痴を全解説/伊東市長選どうなる/家計の大苦境と維新の「税金食い物」(金子勝❎尾形聡彦) 1:40:19
 

2025年11月28日 (金)

気候変動の脅威をビル・ゲイツが撤回したが、謝罪が必要



ジョージ・サミュエルソン
2025年11月9日
Strategic Culture Foundation

 何十年も、ただ生きているだけで人々に罪悪感を抱かせてきたこの億万長者慈善家は、今や科学の見方がずっと間違っていたことを認めている。

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お問い合わせ:info@strategic-culture.su
 何十年もの間、ただ生きているだけで人々に罪悪感を抱かせてきたこの億万長者の慈善家は、これまでずっと科学的見地から間違っていたこと、そして人類は地球温暖化による破滅の危機に瀕しているわけでないことを今や認めている。

 過去半世紀ほどの間、壊滅的気候変動が間もなく文明を滅ぼすという幻想の中で世界中の人々は生きてきた。そして、その悪の元凶は人間自身だった。ハンバーガーを食べることから車の運転、飛行機に乗ることまで、あらゆる人間行為が、わずか数年で地球を焼け焦げた居住不可能な岩石に変えることに加担していると非難された。こうした考え方は、世界中の人々に計り知れない罪悪感を植え付け、集団心理に計り知れない影響を与えた。

 長年、無分別な恐怖煽動をした後、今、ビル・ゲイツはその暗い口調を変え、人類には結局希望があることを認めた。「気候変動は、特に最貧国の人々にとって深刻な結果をもたらすだろうが、人類の滅亡につながることはない」とゲイツは17ページのメモで認めている。「人々は予見可能な将来、地球上のほとんどの場所で生活し、繁栄できるだろう。排出量の予測は下がっており、適切な政策と投資があれば、技術革新によって排出量を更に大幅に削減できるだろう。」(このゲイツ発言は、人類が地球温暖化を1.5℃に抑えるという目標を達成できなかったと国連が発表したわずか翌日に行われ、地球に「壊滅的な結果」をもたらすと国連事務総長は警告した。)

 マイクロソフトの共同創業者で、大学を中退したゲイツが気候学学位を持っていたら(彼は持っていないが、ウイルス学の学位も持っていない。だが、それでも彼はCOVID-19ワクチンについて世界に指示を出した)、何年も続いた政治的内紛、不必要な高額プロジェクト、そして日和見主義的な政治家による誤った意思決定から逃れられたかもしれない。だが、今にして思えば、科学が明らかに間違っていたにもかかわらず、これほど多くの人々がゲイツと仲間に騙されたのは奇妙なことだ。

 悲観論者の間でよく言われる主張は、21世紀の最初の数十年間に多くの気候変動の影響が観測されており、1850年に定期的追跡が始まって以来、+1.60°C(2.88°F)を記録し2024年がこれまでで最も暖かい年になるというものだ。しかし、多くの科学者がようやく認識しつつあるように、1850年は地球の年齢でいえば、ほんの一瞬の昔で、それ以前にも世界の気温は大きく変動していた。実際、科学者たちは、1850年と産業革命以前は地球が寒冷化していたのではなく、山の氷冠が消失し、北極と南極の氷河がほとんど存在しなかった長い期間(数百万年前)があったことを発見した。だが地球は死んだのではなく、繁栄した。

 一方、気候変動を煽る論者たちが台頭する以前、気候学者たちは全く逆のシナリオ、つまり地球規模の氷河期を警告していた。氷河期は約1万年ごとに発生すると言われている(現在、完新世と呼ばれる温暖期に入って約1万年経過している)。我々が再び氷河期を迎える事実は、海面上昇、極端な気象パターン、制御不能な山火事など、主に周期的現象である地球温暖化の最悪兆候のいくつかを実際相殺する可能性がある。地球はこれまでも気候変動を乗り越えてきたし、今回も乗り越えるだろう。

 いずれにせよ、人類がこれまで誤った科学にどれほどの苦しみを味わってきたかを思い起こす価値はある。気候変動を強く訴えるグレタ・トゥーンベリ(22歳)が、ガーディアン紙への寄稿でこう述べている。「しかし、気候は単に変化しているだけではありません。不安定化させ、崩壊させているのです。地球上の生命を支えるシステムの不可欠な要素である繊細なバランスを保つ自然のパターンとサイクルが乱されつつあり、その結果は壊滅的なものになる可能性がある。」

 トゥーンベリが国連の演壇から世界の指導者たちに説教し、脚光を浴びるずっと以前から、気候変動のカサンドラたちは終末論的警告を発し続けてきた。1992年、アメリカ上院議員アル・ゴアはニューヨーク・タイムズのベストセラー『The Earth in Balance 地球の掟-文明と環境のバランスを求めて』を出版したが、これは地球温暖化に関する誤報だった。簡単に言えば、人類が10年以内に二酸化炭素排出による大気汚染を止めなければ地球は焼け焦げてしまうと警告したのだ。そして10年が過ぎ、その続編として2006年にゴアは『An Inconvenient Truth 不都合な真実』を出版した。

『不都合な真実』の中で、政治家で環境保護活動家でもあるゴアは、人々は生活を根本的に変えるという考えに慣れなければならないと訴えた。「地球温暖化の政治化」という章で、ゴアは次のように述べている。「事実が明らかに示していることに、なぜこれほど多くの人々が依然抵抗するのか、理由の一つは、気候危機に関する真実が不都合なもの、つまり…我々が生き方を変えなければならないことにあると思う。」

 言い換えれば、特定の政府が人々の生活を直接支配するのを可能にする普遍的危機が到来したのだ。これは科学界の約半数の予測に基づけば「権威主義的環境保護主義」と表現するのが最も適切だろう(残りの反対意見はメディアにほぼ無視された)。人類を待ち受ける差し迫ったディストピア・シナリオは、世界経済フォーラムが発表した衝撃的記事「2030年へようこそ。私は何も所有せず、プライバシーもないが、人生はかつてないほど素晴らしい」に象徴されている。

 2010年代、こうした容赦ない暗雲が立ち込める中、民主党はグリーン・ニューディール政策を発表した。これは、2030年までに温室効果ガス排出をゼロにすることを目標とし、化石燃料からのアメリカの脱却を迫るものだった。この計画は2019年3月に上院で否決されたが、同年後半にジョー・バイデンが大統領選に勝利すると、その途方もなく野心的な提案の多くが実施に移された。

 2030年までに「ネット・ゼロ・エミッション」を達成したいという左派の狂信的願望がもたらした顕著な結果の一つは、キーストーンXL計画の中止だった。これは、カナダ西部のタールサンドから日量83万バレルの原油をアメリカ精製業者に供給する90億ドル規模のプロジェクトだった。この悲惨な決定の結果、アメリカ国民は、予測不可能な中東から供給される現在のエネルギー源と対照的に、安全で容易に利用できるエネルギー源を得る機会を失った。更に、数千もの高給職が失われる問題もあった。

 結局、ゲイツとお仲間が気候変動という神話をめぐって広めた誤った科学は、世界中の納税者に数千億ドル、あるいはそれ以上の損害を与えたのだ。これは法外な教訓で、二度と繰り返してはならないものだ。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/11/09/as-bill-gates-walks-back-climate-change-threats-an-apology-is-in-order/

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 アジアでアメリカのウクライナ役を熱心に演じて中国を挑発する日本

 The New Atlas  Brian Berletic
Japan Eagerly Fills Role as US’ East Asia “Ukraine” 36:35
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
毎日「「対中配慮」に傾くトランプ氏 経済・貿易問題の改善狙い前のめり。ガーディアン紙「習近平国家主席、トランプ大統領との電話会談で台湾の将来に言及、習はトランプに台湾の返還は「軍国主義に対する米中共同の戦いの中で築かれた戦後国際秩序の不可欠な一部」
 植草一秀の『知られざる真実』
同じ穴のムジナの党首討論

2025年10月24日 (金)

最近の情勢緊迫化を受けて、トマホーク巡航ミサイルでロシアを恫喝するアメリカ

Brian Berletic
2025年10月17日
New Eastern Outlook

 トマホーク巡航ミサイルをウクライナに配備するワシントンの最新計画は、アメリカが終結を望んでいると主張してはいるものの激化し続ける紛争の危険なエスカレーションを示しており、本当の平和の追求ではなく「ロシアの手を広げさせる」アメリカのより広範な戦略を示唆している。

 

 ここ数週間、ロシア奥深くのエネルギー生産施設を狙うアメリカ主導のドローン作戦が明らかになりつつあるのを受け、ウクライナに長距離トマホーク巡航ミサイルを配備する可能性についてドナルド・トランプ大統領が繰り返し言及しているが、これは全てロシアを欺き「ミンスク3.0」凍結を企てたアメリカの企みが完全に失敗した後のことだ。

 予想通りの緊張激化は、交渉の席でなく、ウクライナの戦場での紛争を終わらせるには、近未来から中期的未来にかけて軍事作戦を継続する必要があるのをロシアにとって裏付けるものになった。

 トマホーク巡航ミサイル導入は現在の戦争の更なるエスカレーションになるだろう。ジョー・バイデン前大統領が戦争を不必要に開始したと非難するとともに、そもそも大統領選挙運動中「24時間」以内の戦争終結をトランプ大統領は約束していたのだ。

 これはアメリカがエスカレートさせ続けている戦争でもあり、これはウクライナを通じてロシアに対し戦われているアメリカの代理戦争だと現アメリカ国務長官マルコ・ルビオ自身も述べている。

 それぞれの強みを生かしながら、物質的、軍事的、政治的な力の限界に近いところでアメリカとロシアは活動している。

 国家安全保障上の狙いを追求すべく、アメリカの挑発行為に対してロシアは忍耐強く粘り強く対応してきたが、トマホーク巡航ミサイルは、ロシアと欧州、あるいはアメリカとの間の直接紛争の誘発に一歩近づくことを意味する。

 狙いの継続が予想される中での、予想可能なエスカレーション

 トランプ政権は紛争を終わらせたいと主張していたものの、そのつもりは全くなく、中国封じ込めを優先して紛争を凍結しようとしただけだった。疲弊したウクライナ軍を再編し、欧米諸国の軍事産業生産が十分増強されたらロシアとの戦争を再開しようとしたのだ。

 2024年の選挙前でさえ、当時アメリカ副大統領候補だったJ・D・ヴァンスは、ロシアとの代理戦争よりも中国との戦争を優先し、アメリカが中国との対決に資源を向けられるよう、既存戦線に「強力に要塞化された非武装地帯」の設置を狙っていた。実際に紛争を解決するわけではなかった。

 2024年のアメリカ大統領選挙後、2月ブリュッセルの欧州諸国に送った指令で、軍事産業生産とウクライナへの兵器輸出を倍増させるとともに、実質的に「ミンスク3.0」 による紛争凍結を実施すべく、欧州および非欧州の部隊がウクライナに入る準備をするようピート・ヘグゼス国防長官は欧州諸国に指示したが、この指令は 「ミンスク3.0であってはならない」と明確に主張していた。

 またヘグゼス長官は、ロシアのエネルギー生産と、それが「ロシア戦争機械」に資金を提供する役割についても言及し、次のように主張した。  
トランプ大統領は、効果的外交を更に推進し、ロシア軍事力を支えるエネルギー価格を引き下げるため、アメリカのエネルギー生産を解放し、他国にも同様行動を促している。エネルギー価格低下とエネルギー制裁のより効果的執行はロシアを交渉の席に引き込むのに役立つ。
 ロシアの戦争機構に資金を与えるエネルギーの価格を下げるべく、ロシアのエネルギー生産を標的にする手段として、アメリカ・エネルギー生産と制裁についてヘグゼス国防長官は公に言及したが、その後、このアメリカ政策目標を推進するためロシアのエネルギー生産を攻撃したウクライナ・ドローンは、アメリカ自身が監視し、アメリカの諜報・監視・偵察(ISR)により可能になったとファイナンシャル・タイムズが暴露した。ISRなしで、このようなドローン攻撃は不可能だ。

 FT記事はロシア深部へのドローン攻撃におけるアメリカの役割を確認したものの、決して新事実を暴露するものではなかった。

 アメリカが2014年にウクライナ政府を転覆させた直後、アメリカ中央情報局(CIA)がウクライナに職員を派遣したのを、昨年ニューヨーク・タイムズが認めた。それ以来、CIAは基地網を構築し、ウクライナ諜報部隊全体を訓練し、2022年に開始されたロシアの特殊軍事作戦(SMO)に対するものを含むウクライナ諜報活動を指揮してきた。

 CIAはアメリカのISRを利用してロシアへのドローン攻撃に関与するSBU等のウクライナ諜報機関を監督しているのだ、これらの攻撃をアメリカ自身が実行しているに等しい。

 つまり、トランプ大統領が8月にロシアのプーチン大統領を「和平交渉」のためアメリカアラスカ州に招待した時点で、トランプ政権は既にロシアのエネルギー生産を標的としたドローンによる徹底攻撃作戦を開始しており、ロシアのエネルギー産業と経済両方を麻痺させ、事実上の「ミンスク 3.0」 の枠組みの下での停戦にモスクワを屈服させることを狙っていた。

 これを実現できなかったアメリカは、進行中のアメリカ主導のロシア深部攻撃の範囲と影響を拡大するためウクライナへのトマホーク巡航ミサイル配備で脅迫するなど更にエスカレーションを続けている。またロシア・エネルギー輸出の海上輸送に対する脅威も高まっている。

 トマホーク:危険ではあるが決定的ではない

 射程距離最大2,500キロのトマホーク巡航ミサイルは、モスクワを遙かに越える標的を攻撃可能で、ロシアのニジニ・タギル市にある伝説的なウラル・ヴァゴン・ザヴォード戦車工場まで攻撃対象にできる。またトマホークは、より多くのロシアのエネルギー生産施設を危険にさらすことになる。更に、ウクライナ無人機やミサイルによる攻撃の射程内にある施設に対し、トマホークは遙かに大型で破壊力も大きい弾頭を搭載しており、より大きな被害を与えられる可能性がある。

 2019年に第一次トランプ政権が中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱するまで、トマホークは海軍の水上艦艇や潜水艦から発射され、1990年代の湾岸戦争からのアメリカ侵略戦争、2000年代初頭のアメリカのアフガニスタンとイラクへの侵略と、2011年以降のアメリカのリビアとシリアに対する戦争で重要な役割を果たした。

 トランプ政権のINF条約離脱後、トマホークを発射できる地上発射ミサイルの開発と配備が始まり、現在アメリカ陸軍が中国に向けてフィリピンを含む各地に配備しているタイフォンや、アメリカ海兵隊が昨年まで試験用に開発し放棄していた長距離射撃(LRF)ランチャーが生産された。

 米海兵隊は、アジア太平洋地域の島嶼部で活動する厳しい環境下でのLRF発射装置使用が困難なことを理由に、小型で短距離の海軍攻撃ミサイルを発射する海軍・海兵隊遠征艦艇阻止システム(NMESIS)を採用した。実用段階のLRF発射装置は、早ければ来年にも米陸軍で試験運用することが検討されており、ロシアに向けトマホークを発射するための最有力候補としてウクライナに配備される可能性もある。

 LFRランチャーは、ランチャー1台につきMk 41垂直発射システム(VLS)セルを一つしか使用しない(タイフォン・ランチャーはセルを4つ使用)。そのためミサイルを発射するたびに再装填が必要になる。米軍が保有する他のトラック搭載型と併用される可能性があるが、ウクライナからロシアに向け一度に発射できるトマホークはごく少数に限られる。

 通常、厳重に防御された標的には大量のトマホークが必要になるが、これは2017年にアメリカがシリアのアル・シャイラート飛行場攻撃で、最大59発のトマホーク巡航ミサイルを使ったことからも明らかだ。

 ウクライナの地上発射装置からこれほどの規模の斉射を行うのは不可能なため、アメリカはトマホークと西欧諸国の空中発射巡航ミサイル、無人機、デコイを組み合わせる可能性が高い。これら性能の低い兵器は、トマホーク発射前に波状的に発射され、ロシア防空網を崩壊させようとするだろう。

 同様戦術はイギリスのストームシャドウやフランスの同等ミサイル(SCALP)など西側諸国の空中発射巡航ミサイルと組み合わせて使用され、限定的成功を収めていまる。

 SMOの過程で西側諸国がウクライナに移譲した他の多くの兵器同様、トマホークの小規模配備は、近い将来、より多くのミサイルと、より改良され、より多数の地上発射システムを送ることにより拡大される可能性がある。

 これらの中には、米軍が既に既存のタイフォン代替を探しているものも含まれる可能性がある。記事オシュコシュ地上配備型トマホーク発射装置が姿を現す」で、現在配備されている非常に扱いにくいタイフォンや、機動性は高いものの性能が限られているLRF発射装置と比較して、最大4発のトマホーク巡航ミサイルを搭載可能な遙かに機動性と自律性に優れた地上発射装置の開発についてNaval Newsが報じている。記事はこれらシステムの実用化時期には言及していないが、有人型は1~2年以内に開発・試験され、その後自律型システムが導入され、その間LRF発射装置が使用される可能性がある。

 本当の隘路になっているのはアメリカ軍需品の年間生産量で、それは今後も続くだろうが、トマホーク巡航ミサイルも例外ではない。

 トマホーク・ミサイルの年間生産数はわずか55発から90発に過ぎないとロイター通信が最近の記事で指摘した。これに対し、ロシアは同等の巡航ミサイル「カリブル」を年間300発から360発、その他数百種類の巡航ミサイルやゲラン2などの長距離攻撃ドローンを数万機生産していると推定される。2023年、2022年のSMO開始以来、ロシアはウクライナに向けて合計7,400発のミサイルと3,700機のドローンを発射したとの別のロイター通信記事は報じている。

 ロシアのミサイルとドローンによる作戦がウクライナに及ぼす影響と、ロシアの遙かに広大な地理的規模とロシア産業およびエネルギー生産の規模を考慮すると、ロシアの軍事、産業、エネルギー生産に同様またはそれ以上の規模で重大な影響を与えるには、同数かそれ以上のミサイルとドローンが必要になるだろう。

 現在進行中のアメリカ主導の深部攻撃がロシアのエネルギー生産に及ぼす影響については様々な報告がある。トマホーク巡航ミサイル導入は、この影響を増大させる可能性が高いが、どの程度まで影響が及ぶかは未だ不明だ。

 トマホークの有無にかかわらず、エスカレーションは続く

 アメリカがウクライナにトマホークを配備するかどうかに関わらず、アメリカはロシアとの代理戦争をエスカレートさせ続けるだろう。今年二月、ピート・ヘグゼス国防長官が明らかにした通り、徐々に低下するウクライナの戦闘能力によって生じた空白を埋める準備をアメリカは欧州に促している。

 アジア太平洋地域で中国との対立が激化しているのを受けて、アメリカは資源を向け直そうとしているが、一方、ウクライナでの代理戦争の監視も続けている。最新例としては、ロシアのエネルギー生産施設を狙った長距離ドローン攻撃作戦が挙げられる。

 ウクライナと欧米支援諸国がこの紛争の流れを変えられる可能性は低いと多くの専門家が同意しているが、早くも2019年にランド研究所が発表した「ロシアに手を広げさせる」 と題する論文で、そもそもウクライナが勝つ見込みがほとんどないことが明らかにされていたのは注目すべきだ。

 論文題名が示唆する通り、狙いは単に「複数圧力点に沿ってロシアの手を広げさせる」ことで、ウクライナはその一環に過ぎない。2022年にSMOが始まって以来、アメリカはロシアがウクライナに注力しているのにつけこみ、ロシア軍の介入で停滞していたシリア政権転覆戦争を再開し、シリア政府打倒を図った。シリア崩壊は、ロシア同盟国イランと米イスラエル直接紛争への道を開くために利用されている。イランも今や中東において不安定な孤立状態にある。

 ロシアのエネルギー部門への進行中の攻撃(トマホーク巡航ミサイル使用の可能性を含む)は、それ自体でロシアとの戦争に「勝利」することはないが、ロシアを更に「手を広げさせる」という、より大きな戦略に貢献するだろう。

 ロシアへの過剰攻撃や、分業や戦略的順位付けを通じて、近隣諸国におけるロシア権益を削ぐ戦略をワシントンは継続するだろう。同時に、ロシアは軍事力と産業力の拡大を継続し、中国、北朝鮮、イランといった同盟諸国と協調して対応することで、まずユーラシア大陸と、それ以遠の地域におけるアメリカの干渉を麻痺させ、その後、撤退させて、アメリカ戦略を凌駕しようとするだろう。

 アメリカとロシアは共に、物質的、軍事的、政治的な力の限界に迫り、それぞれの強みを活かしながら活動している。ロシアの強みは軍事力と工業生産にあるように見えるが、アメリカは軍事力を世界規模で展開するのに長けており、世界の情報空間をほぼ独占し、標的にした国を政治的に威圧し、掌握する強力な能力も依然有している。

 どちらがより強い持続力を持ち、自国の強みを最も効果的に活用しながら敵国の強みを無力化できるかによって将来の世界秩序は決まるだろう。ロシアと同盟諸国が伝統的軍事力と産業力を強化し、アメリカの政治的干渉と情報空間の独占に効果的に対抗できるようになる前に、アメリカとその属国ネットワークは、ロシア軍事産業力に匹敵、あるいは凌駕できるのだろうか。時が経てば分かるだろう。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/10/17/us-threatens-russia-with-tomahawk-cruise-missiles-amid-latest-escalation/

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 Judge Napolitano - Judging Freedom
SPECIAL-MUST WATCH] - Scott Ritter : Russia/Ukraine Today. 25:36
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
「中流消滅、7人に1人が「最下層、3人に1人となった非正規雇用の増加、日本の貧困率は15.4%と、G7中では米国に次ぐ高い水準、1993年に550万円だった世帯所得(年額)の中央値は、長期的に減少傾向が続き、2023年には410万円にまで落ち込んだ。(日経)
 RANDの「ロシアに手を広げさせる」記事にいては、当ブログには
 2022年8月31日
 F. William Engdah記事翻訳がある。
モスクワでなく、ベルリンとブリュッセル発のヨーロッパのエネルギー・アルマゲドン

2025年4月17日 (木)

最悪のシナリオ:アメリカを孤立させ、世界規模の紛争拡大を招くトランプ関税

Brian Berletic
2025年4月8日
New Eastern Outlook

 表面的にはホワイトハウスの無能さに起因する不合理な自滅行為のように見える世界各国を標的にしたアメリカの広範な関税導入に、経済学者や地政学専門家らは驚愕している。

 実際は、関税は超党派の外交、貿易、経済政策の中心的な柱で、前トランプ政権下で初めて実施され、次のバイデン政権下でも継続、更に拡大され、現トランプ政権下で更に拡大されている。

 アメリカは、自国国民だけでなく、いわゆる「同盟諸国」国民にも、長期にわたる経済的、社会的、政治的な大きな苦痛を与える準備をしている。

 広範囲にわたる関税は、ドナルド・トランプ大統領自身や閣僚の頭の中で生まれた行き当たりばったりの考え方ではなく、選挙で選ばれていない大企業・金融関係者が公言する政策で、ヘリテージ財団の「プロジェクト2025」論文の第26章「貿易政策」など特別権益団体が資金提供するシンクタンク文書の中で詳細に述べられている。

 この政策は、アメリカの再工業化やアメリカの貿易赤字の真の均衡を図る健全な計画からは程遠く、アメリカを「世界を支配する超大国」として維持することを目的としている。

 この論文は次のように主張している。  
この世界的地位を維持し、ひいては我が国と自国の民主主義制度を最大限に守るためには、アメリカが製造業と防衛産業基盤を強化すると同時に、世界的に分散したサプライチェーンの信頼性とレジリエンスを高めることが極めて重要だ。そのためには、必然的に、現在アメリカの多国籍企業が海外に委託している生産の大部分を国内に取り戻すことが必要になる。
 これは一見、アメリカ経済の全般的な再工業化を示唆しているように見えるが、実際にアメリカを再工業化するために必要な徹底的な教育改革や、インフラや産業への大規模な州の投資などの措置など、実際に必要な措置は全く真剣に議論されていない。

 プロジェクト2025の中で説明され、現在アメリカ現政権下で更に実施されている政策は、むしろ特に中国の貿易や産業を含む世界経済活動を混乱させ、海外の産業をアメリカに移転させるのを目的としている。

 一例として、半導体メーカーTSMC社はアメリカ本土のアリゾナ州への施設移転を余儀なくされた。インフラの未整備やサプライチェーンの脆弱さや、熟練労働者の不足のが重なって、予算とスケジュールの大幅な超過を引き起こしただけでなく、アメリカ人従業員だけでは対応できない職務を担うため、数百人もの労働者を台湾からアメリカへ移送する必要に迫られた。

 同様に、2014年にアメリカが画策したウクライナ政府の転覆とロシア連邦との代理戦争の勃発に始まり、その後アメリカと欧州が課した制裁とノルドストリーム・パイプラインの意図的破壊により、安価なロシア産炭化水素の供給が麻痺した。

 このため、ヨーロッパ製造業はアメリカに移転せざるを得なくなった。DWは2023年の記事「ドイツ産業はアメリカに移転しているのか?」で次のように指摘している。  
「一つは地政学的緊張の高まりだ。多くのドイツ企業はアメリカを『安全港』と見ている。他の理由としては、比較的低いエネルギー費用とインフレ抑制法に基づく非常に手厚い補助金が挙げられる。」
 長期的には、アメリカの関税と地政学的妨害により更に多くの産業がアジアやヨーロッパなどの地域からアメリカへ移転せざるを得なくなり、アメリカの不十分なインフラやサプライチェーンや人的資源や不十分な教育・医療制度への負担は増大する一方だろう。

 たとえアメリカに産業を移転するための上記基本的要素のいずれか、または全てを改善するために十分な資源が投入されたとしても、追いつくには何年もかかるだろう。

 短期的には、現在8年にわたる関税導入と貿易戦争の誘発政策が示しているように、既に莫大な生活費の危機が更に拡大し、食料品代、家賃、燃料費、医療費、教育費などで既に苦労している数千万人のアメリカ人の生活に影響を及ぼすことになるだろう。

 ワシントンが執着しているのは中国であり「MAGA」ではない

 欧州産業を弱体化させ剥奪するのにアメリカが成功したことは、最終的には中国に関して、世界中で遙かに大規模で野心的な政策を導くことになるのはほぼ確実だ。

 プロジェクト2025では、特に中国に関して取るべきいくつかの行動が列挙されており、その中には次のようなものが含まれている。  
戦略的に中国製品全てへの関税を拡大し、関税率を「中国製」製品を締め出す水準まで引き上げ、アメリカが主要医薬品などの必需品を入手できなくなることのないような方法とペースでこの戦略を実行する。
 そして  
重大な国家安全保障上のリスクをもたらし、アメリカ消費者をデータや個人情報の盗難にさらすTikTokやWeChatなどの中国のソーシャルメディア・アプリを全て禁止する。
 さらに  
医薬品、シリコンチップ、希土類鉱物、コンピューター・マザーボード、フラットスクリーン・ディスプレイ、軍事部品など、国家安全保障を脅かす可能性がある中国共産党サプライチェーンへのアメリカの依存を体系的に削減し、最終的には排除する。
 同様に  
スパイ活動や情報収集を防ぐため、中国人学生や研究者へのビザ発給を大幅に削減または廃止する。
 これらは全て現在アメリカの政策となっているか、あるいは現在のトランプ政権下でアメリカの政策へと変化しつつある。

 中国の製造業基盤は、医薬品や日用品から建設資材、大規模インフラ整備に至るまで、あらゆるものを世界各国にとって手頃な価格で提供し、世界の生活水準を急速に向上させている。世界は中国との協力を好機と捉えている。

 中国の人口の多さ(G7を合わせたより大きい)、巨大で成長を続ける工業基盤、そして世界クラスのインフラのため、アメリカは中国を脅威とみなしている。それは、純粋な国家安全保障上の懸念という観点ではなく、選挙で選ばれていないアメリカ大企業や金融独占企業が支援するプロジェクト2025や他の政策文書に示された「世界の支配的超大国」としてのアメリカの地位を維持するという観点だ。

 これら文書は、中国を「深刻な存亡の脅威」と宣言しているが、これは国民国家としてのアメリカやアメリカ国民に対する脅威ではなく(どちらも中国との協力から他の国々と同様利益を得るだろう)、中国製品やサービスだけでなく、中南米からアフリカ、ユーラシア全体にわたるあらゆる場所で中国と並んで台頭している国々の製品やサービスと競争できなくなった深く根付いた企業金融独占に対する脅威だ。

 最悪のシナリオ

 アメリカが世界各国に対して関税を引き上げている最も直接的で直感的な説明は、アメリカ内の競争力はないが深く根付いた企業金融の独占を外国との競争の激化から守るため、または世界中で拡大する中国の経済的影響力を抑制するための特定戦略から生じているが、多くの人が見落としている、遙かに懸念される可能性がある。それは、アメリカが経済戦争と実際の戦争の組み合わせを通じて意図的に破壊しようとしている世界経済から離脱することだ。

 関税がアメリカの生活費危機に及ぼす影響は明らかで、その影響は拡大しつつある。これはアメリカにとって、政治的、社会的、経済的に高くて持続不可能な費用を意味する。そのため、大きな紛争に先立つ予測以外に、そのような費用を容認できるものとして正当化できるものはほとんどない。

 アメリカが現在の世界経済体制の意図的な破壊、あるいは自らが公言している「敵国」の1つ以上との大規模戦争に備えているのであれば、まず自らの条件で世界経済から自らを切り離すこと、特に軍事産業基盤全体を含むサプライチェーンにおける中国への依存という点で、事前にそれが必要な前提条件になるだろう。

 半導体メーカーTSMCがアリゾナ州に工場を建設するという前述の例は、台湾にあるTSMCの施設が戦争により破壊される可能性に対するヘッジ手段であることは認めざるを得ない。中国自身が施設を破壊しない場合、アメリカは意図的に破壊して、中国による利用を阻止するとさえアメリカ政策立案者は公言している。

 2021年にアメリカ陸軍戦争大学が発表した論文「Broken Nest: Deterring China from Nest: Deterring China from Invading Taiwan,(壊れた巣:巣からの中国の抑止:中国の台湾侵攻の抑止)」では下記のように説明されている 。

…  アメリカと台湾は、台湾を武力制圧した場合に魅力を失わせるだけでなく、維持コストも莫大なものにする、標的を絞った焦土作戦を計画しておくべきだ。これは世界最大の半導体メーカーで、中国にとって最も重要なサプライヤーである台湾積体電路製造(TSMC)の施設を破壊すると脅すことで最も効果的に実行できるだろう。

 これは、この最新の、そして、そうでなければ不必要に極端な関税政策により促進された遙かに広範な準備の縮図を表している。

 特に中国を標的にした関税や関連政策は、軍事紛争が始まった場合、アメリカ自身への影響を最小限に抑えるのに役立つだけでなく、事前に中国を弱体化させるのにも役立つと考えられる。

 これはいかにも極端に聞こえるかもしれないが、アメリカが既にアジア太平洋地域において中国に対する大規模軍備増強を進めているのを忘れてはならない。またアメリカは、ユーラシア大陸全域でテロリストや過激派を駆使して、中国の一帯一路(BRI)インフラ、BRIプロジェクトに従事する中国人技術者や彼らを守ろうとする現地の治安部隊を標的に破壊して、長年にわたり中国との宣戦布告なき代理戦争を繰り広げてきた。近い将来の中国との紛争を想定して特別に設計された新兵器開発と配備をアメリカは進めている。

 それだけでなく、中国との非常に特殊な形の紛争、すなわち中国沿岸や国境内で中国軍そのものと戦うのではなく、世界中の中国の海上輸送を標的とする紛争にもアメリカは備えている。オバマ政権や現在二期目のトランプ政権やバイデン前政権を含む複数のアメリカ大統領政権は、中国の海上輸送の世界的封鎖となる可能性がある措置を講じてきた。

 オバマ政権の「アジアへの軸足」は、数十年にわたる「対テロ戦争」を軸に編成されたアメリカ軍から、同等または近似する競争相手との紛争に特化した戦闘力へと変貌を遂げ始めた。トランプ政権下で、アメリカは軍備管理条約から離脱し、弾道ミサイル防衛システムから中距離・長距離ミサイルに至るまで、条約違反のミサイル開発と配備を可能にし、現在アジア太平洋地域全体に配備されている。

 バイデン政権下で、米海兵隊全体が諸兵科連合の遠征戦闘部隊からアジア太平洋地域における対艦作戦に特化した部隊へと変貌を遂げ、戦車と歩兵部隊が対艦ミサイル部隊に置き換えられ、対等あるいは近似する勢力との紛争における沿岸機動や海上阻止作戦を目的とする海兵沿岸連隊」が創設された。

 米空軍もバイデン政権下で戦略実施を開始し、トランプ政権下でも継続されている。その戦略には、武力紛争の際、中国が米空軍を標的にして破壊するのをより困難にするため、米空軍力をアジア太平洋地域のより多くの空軍基地に分散させる「Agile Combat Employment(機敏な戦闘運用)」(ACE)戦略も含まれている。

 そして、ここ数カ月だけでも、アジア太平洋全域での米軍プレゼンスの拡大に加え、現トランプ政権は、紅海とホルムズ海峡の両方を標的とした中東での米軍増強、ロシアと中国の船舶輸送を動機として引用しての、具体的に挙げたグリーンランド併合の可能性や、具体的に、中国に対抗するため、特にパナマ運河占拠などにより、世界の海上輸送を締め付けるため思い切った措置を講じてきた。

 自ら計画的に世界経済を破壊することからアメリカ経済を遮断するための世界的関税政策は過激な政策だが、中国との戦争に特化した米軍の完全な再編や世界中の主要海上要衝の占拠も同様に過激で、その破壊を促進する戦略の一部としてのみ意味をなす。

 人類の歴史を通して、終末的衰退に陥った帝国は危険な絶望に陥ってきた。21世紀において、終末的衰退に陥った現代の帝国を代表するのは、核兵器を保有し、地球規模の軍事力を有し、世界経済の支配力により世界体制全体を破壊しうる力を持つアメリカだ。アメリカは、自ら何十年にもわたり主導権を握ってきた世界秩序が制御された破壊を生き延び、最強のプレイヤーとして浮上し「世界を支配する超大国」として再び自らを確立するための最良の立場を確立することを目指している。

 世界の他の国々や、アメリカが追求している新たな多極世界秩序にとって、抑止力や代替経済や貿易や金融体制やアメリカの経済戦争や、実際の戦争から経済と国民を隔離し保護する対抗戦略の組み合わせが必要になるだろう。

 アメリカは、自国国民のみならず、いわゆる「同盟諸国」国民にも計り知れない長期的な経済的、社会的、政治的苦痛を強いる準備をしている。アメリカの生活費高騰危機は、今後更に悪化するだろう。新興の多極化世界よりも国内外の経済的苦痛と混乱にうまく耐えられるとアメリカは期待している。多極化の存続は、その逆を証明できるかどうかにかかっている。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/04/08/worst-case-scenario-trumps-tariffs-walling-us-off-ahead-of-wider-world-conflict/

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 The New Atlas 本記事筆者が語る。トランプ関税は、彼の思いつきではなく、ヘリテージ財団論文を実施しているだけ。
Worst Case Scenario: Trump’s Tariffs Walling US Off Ahead of Wider World Conflict 31:03
 BreakThrough News
Trade War Will Be a ‘Colossal Blunder’ For U.S. w/ Prof. Richard Wolff 29:55
 日刊IWJガイド
「世界中を騒がせる『トランプ関税』政策の青写真判明! 昨年11月に大統領経済諮問委員会委員長が発表した論文にすべて書かれていた!」2025.4.16号

■はじめに~世界中を騒がせている「トランプ関税」政策の青写真が判明! 予測不能な「トランプ関税」政策は、大統領経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長が昨年11月の論文で提唱した「マールアラーゴ合意」に、実はすべて書かれていた!「米国から製造業と雇用が失われたのはドル高のせい」! ドル安誘導のため、関税で「既存の経済秩序を破壊し、各国を交渉のテーブルに引きずり込む」! 欧州が関税に屈しなければ、米国はNATOを離脱! 中国との金融戦争で、中国を疲弊させ、旧ソ連崩壊のように弱体化させる! その先にあるのは、強い米国の復活か、それとも世界から孤立し、没落する米国か!?

■万博開会中なのに、カジノ事業の工事を、24日、大阪府が反対を押し切って強行! 結局、ボッタクリ、手抜きだらけの大阪万博は、カジノのための「踏み台」か!? 万博本体の総事業費は3000億円規模だが、万博を口実に、真の目的であるカジノのために進められるインフラ整備事業は10.2兆円規模と30倍! しかし、夢洲(ゆめしま)は、まだ地盤が安定せず、メタンガスが噴出するゴミ捨て場!恒久的建築物を建てるには、あと20~30年必要!?

■IWJの財政は崖っぷちです! 4月は1日から15日までの15日間で、14件、9万8700円のご寄付・カンパをいただいていましたが、これは月間目標額の350万円の約3%と、たいへん厳しい状況です! どうか、緊急のご支援を! 緊急のご寄付、カンパをお願いします!

2024年12月28日 (土)

誰にも止められないワシントンの超兵器

Brian Berletic
2024年12月24日
New Eastern Outlook

 地政学的緊張が高まるにつれ、アメリカは最も強力な武器を振るっている。それは軍事力ではなく、自国の利益にかなうように国家や地域を再編する洗練された政治・情報統制ネットワークだ。

 誰にも止められないワシントンの超兵器

 ここ数カ月、欧米諸国のメディア全体で、ロシアと中国の優れた軍事力を認める声が高まっている。ロシアが初めて中距離弾道ミサイル「オレシニク」を使用したことで、ロシア(と、おそらく中国)が欧米諸国に現在欠如している強力な軍事力を有していることが認められた。

 NATOがウクライナに武器を供給し、訓練し、支援する共同の取り組みにもかかわらず、ロシア特別軍事作戦(SMO)が進行する中、戦線全体で、ウクライナ軍は加速度的後退を続けている。

 詳しく調べてみるとNEDや他のアメリカの取り組みは最も破壊的「大量破壊兵器」だ。

 だが、この新しいパラダイムが浸透する中、アメリカは依然強力で、比類のない、未だ対抗手段のない超兵器を保有していることを実証している。アメリカはそれを利用して、アラブ世界全体で、シリア経済とシリア・アラブ軍両方をゆっくり着実に空洞化させる状況を作り出し、国を制圧しようとするアメリカが支援するテロリストに何年も歯止めをかけた後、2024年12月中旬、両者の完全崩壊をもたらした。

 シリア経済や軍隊や政府が崩壊しただけでなく、国連リストに掲載されているテロ組織がダマスカスで権力を掌握し、シリアの街頭で民族的、宗教的、政治的反対派に公然と残虐行為を行っているのを世界中の多くの人々が歓喜している。

 これら全て、反撃しようのないワシントンの「超兵器」と世界中の情報と政治空間に対する支配力によるものだ。

 ワシントンの超兵器:政治干渉と攻略と支配

 オレシニク・ミサイルほど魅力的ではないが、ワシントンの超兵器は、実際は何倍も強力で、防御するのがより困難だ。

 アメリカ中央情報局(CIA)による政権転覆作戦として始まり、長年にわたって、現在では全米民主主義基金(NED*)として知られる組織へと変貌を遂げた。

 NEDは、世界中の居住可能な全大陸の何百もの組織やプロジェクトや反政府集団や政党に資金提供する子会社ネットワーク (フリーダム ハウス、国際共和党研究所 (IRI)、全米民主研究所 (NDI)) と関連政府組織 (USAID*) および民間財団 (オープン・ソサエティ、オミダイア・ネットワーク) を監督している。

 中東:イランとの戦争のため戦場設定

 近年、2011年の「アラブの春」の何年も前から、アメリカは扇動者の部隊を訓練し、彼らが母国に戻り、それぞれの政府を打倒するよう指導してきた。アメリカが支援するこれら扇動者が作り出した政治的混乱は、同様にアメリカが支援する武装過激派に利用され、政治的圧力に屈しない政府を暴力的に打倒した。

 「世界中で自由を推進する」とNEDウェブサイトは主張しているが、その政治的干渉は国家全体、更に世界中を不安定化させ、破壊し、数十万人の死者と数百万人の避難民をもたらしている。これらの国々に残されたものは、内部で争い続ける破綻国家や、標的となった国の最大の利益を犠牲にして、ワシントンの利益に完全に奉仕する従属政権に変貌し、時には、その両方が組み合わさった状態になっている。

 地域自体が、この地域におけるアメリカ覇権に対する抵抗の中心であるイランと同盟諸国を包囲し、孤立させ、最終的に標的にして打倒するのを目的とする非常に意図的な形をとっている。

 ヨーロッパにおけるNED:「民主的」ロシアの創造

 もう一つの例はウクライナだ。ガーディアン報道によると、独立中立のウクライナを打倒しようとするアメリカNED*の取り組みは2004年という早い時期に始まった。2014年にも同じ作戦が繰り返され、今回は成功した。この作戦にはNED*資金援助を受けた政治活動家だけでなく、ネオナチなどの武装過激派も参加し、キーウではアメリカ上院議員らが舞台上で彼らを応援した。

 NED*が資金提供する政治介入により標的国の政治的独立を損なう狙いは、その国自体を政治的に掌握するだけでなく、その国を地域内の他の掌握された国々とまとめて、ワシントンの主要敵国に対する統一戦線を形成することだ。

 ヨーロッパでは、敵は明らかにロシアだ。

 デイモン・ウィルソンは、NED*の社長兼CEOに就任する前は、アトランティック・カウンシル執行副社長を務めており、NATOとロシア間の「グレーゾーン」と呼ばれる場所の解消について語っていた。これら「グレーゾーン」とは、NATOとロシア間に緩衝地帯を提供する中立国に過ぎない。

 2018年に大西洋評議会で行った発言の中で、ウィルソンは次のように認めている。

 この戦略は、ヨーロッパに新たな分断線を作ることを意図したものではない。目的は、不安定で脆弱な地域を、安定し繁栄し自由なヨーロッパという確固たる基盤の中に固定することで、長期的に、この構想には民主的ロシアも含まれる。

 だが、モスクワ改革への道は、キーウ、キシナウ、エレバン、トビリシでなされる選択から始まるのかもしれない。

 これは意図を認めたものだ。ウクライナ、モルドバ、アルメニア、ジョージアの打倒と政治的掌握は、ロシアを更に包囲し孤立させ、NATOとロシア間の緩衝地帯を排除し、最終的にロシア自体を打倒し、政治的に掌握することを意図している。

 「民主的ロシア」とは、NED*が資金提供する組織やメディアや機関や政党に管理・運営され、アメリカとNATOが押し付ける「民主主義」に従属するロシアの婉曲表現だ。

 2018年にウィルソンが述べた発言は、ロシアに対するアメリカとNATOの政策だけでなく、ウィルソンが現在社長兼CEOを務めるNED*の行動にも反映されている。

 アジアにおけるNED:対中国統一戦線構築

 NED*の「アジア」ウェブページは、現在「透明性」という幻想を支えていた財務情報開示を全て削除し、16か国で338以上のプロジェクトが運営されており、2023年度だけで少なくとも5,170万ドルの資金が調達されていると自慢している。

 NEDは地域選挙への関与、反政府政党結成、更に分離主義推進を公然と認めている。

 このページは、国際法で中国の新疆ウイグル自治区として認められている地域を「東トルキスタン」と呼んでいるが、これはワシントンDCに設立され拠点を置く「東トルキスタン亡命政府」が主張している実在しない地域だ。

 国連憲章第2条の「全ての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全や政治的独立に対するものも、また国際連合の目的と矛盾する他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」という規定に、アメリカ政府による中国分離主義支援は明らかに違反している。

 ワシントンDCに分離主義者をかくまっているだけでなく、NEDを通じて、アメリカ政府は公然と分離主義を追求する多くの組織に資金提供している。これにはアメリカNEDの助成金受給者である世界ウイグル会議(WUC)も含まれ、ウェブサイトで「WUCは東トルキスタンの中国占領に対する非暴力的かつ平和的な反対運動を宣言する」と同会議は公然と述べている。

 NEDを通じてアメリカ政府から資金提供を受けているWUCは、新疆を中国から分離させることを企て、国際法に違反する陰謀を公然と行っている。WUCはこれを「平和的反対運動」として行っていると主張しているが、それでも、その分離主義は、現在シリアに拠点を置く「東トルキスタン・イスラム運動」(ETIM)などの過激ウイグル分離主義者による暴力的テロ行為と合致しており、国連リストに掲載されているテロ組織ハヤト・タハリール・アル・シャム(別名ジャバト・アル・ヌスラ戦線)と長年共に戦い、今や中国を標的にすることを公然と誓っていると、テレグラフ紙が最近報じた。

 NEDの現在の「アジア」ウェブ・ページを見れば、取り組みがアジア全域個々の国の政治的掌握のみに焦点を当てるのではなく、中国に対抗する地域統一戦線の構築を目指しているのは十分明らかだ。

 「民主的統一促進」という婉曲表現でNED*は次のように宣言している。  
中国は地域および世界大国として台頭し、経済的影響力によって、この地域の政権にとって強力な支援者および影響力を持つようになった。中国は大きな経済力を利用して、民主主義と人権の尊重は、いかなる可能性がある提携相手にとって必須条件ではなく、望ましい特徴でもないことを示唆している。

 アジアの民主主義国は、民主主義の価値、法の支配、ルールに基づく制度を守り、維持し、地域で高まる非自由主義的傾向に効果的に対抗する必要性を認識し、国際的に認められた規範と価値の擁護と維持において協力し、より大きな責任を負う方法を模索している。
 また、次のようにも述べている。  
そのため、NED*は、アジアの民主主義国家間の民主的統一と協力の強化、および民主主義主体間の地域的連帯と協力の強化と拡大に焦点を当てた様々な取り組みを支援している。具体的には、NED*と中核機関は、対話を促進し、支援を構築し、民主主義の規範と価値観を守るためのリーダーシップ強化を促進するため、地域の主要民主主義国を支援している。また、メディアの自由、自由で公正な選挙、デジタル・セキュリティと保護、基本的人権などの主要な民主主義の問題に関し、民主的な声を増幅し、交流を促進し、地域の連帯を強化するために活動する民主主義と人権の活動家と擁護者の地域ネットワークを支援している。
 これら全て、アメリカNED*が、中国を標的としたアメリカ国務省の偽情報を熱心にオウム返しする地域的反中国運動を構築し、中国に対して地域住民に悪影響を与え、同時に、ヨーロッパでロシアに対して行ったのと同様に、中国周辺のアジア全土へのワシントンの影響力と支配を拡大しようとしていることを認めるくどい言い方だだ。

 BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)とSCO(上海協力機構)は、アメリカを本拠とするソーシャルメディアに代わる多極的プラットフォームを立ち上げる取り組みを主導し、アメリカや欧州の検閲や操作の及ばないところで世界の国々が情報を共有できるようにすることが可能だ。現在、ロシアと中国のソーシャルメディアは、国際的用途ではなく国内向けに最適化されている。

 最後に、地域および国家のNGO透明性法の促進や、この危険を暴露し、立法を通じてこれに対抗する行動をとる加盟国を支援するフォーラムの創設を通じて、BRICSは、アメリカ (および欧州) の干渉を暴露し、対峙する取り組みを主導することも可能だ。これには、アメリカの政治、情報支配に従わせることを目的とするアメリカによる脅迫や制裁や他の強制措置の標的となった国への保護提供が含まれる。

 これら全ての措置は、国連憲章の核心原則に沿って、多極化した世界における国家主権の強化と国家の自決権の維持を目的としている。アメリカの全米民主主義基金は、名目上でさえ、世界中で「民主主義」を推進していると見せかけているが、民主主義は自決権の手段で、全米民主主義基金が資金提供するものは全て、全米民主主義基金の資金が注がれる国々ではなく、ワシントンにより、ワシントンのために決定される。

 NEDはワシントン最大の「超兵器」だ。国家の政治、情報、学術の領域に侵入し、占領するその能力は、世界中でアメリカ覇権を阻む最大の通常軍さえも回避する。NEDは世界中の国家や地域の不安定化と破壊に関与し、ロシアが設計し配備できるいかなるミサイルより大きな被害をもたらしている。真に多極化した世界の未来は、ワシントンとウォール街の全ての兵器、特に最も広範囲で効果的な兵器から身を守ることにかかっている。

 アメリカNEDがどのようにこれを行っているかの一例は、2020年10月にタイの視聴者を対象に開催された「Beyond Boundaries」Facebookライブ・イベントだ。この催しは「中国におけるウイグル人の状況と我々が彼らを助ける方法」と題され、元NED職員で現在NED*の助成金受給者「ウイグル人権プロジェクト対外関係担当部長」ルイーザ・グレーブが出演した。

 司会者には、タイ国内を狙ったNED資金による破壊活動に参加し、推進したとされる「民主化活動家」Netiwit Chotiphatphaisalが含まれていた。

 フェイスブック・ライブイベントの狙いは、中国がタイにとって最大の貿易相手国、投資国、観光地で、タイ初の高速鉄道建設を含むインフラ整備のパートナーであるにもかかわらず、中国に対して受容的なタイ国民を継続的に攻撃することだった。

 NED*が資金提供している野党集団も進行中のタイと中国の高速鉄道プロジェクトを含む、タイと中国の協力を完全に阻止することに重点を置いている。最も明白な例は、億万長者の野党指導者タナトーン・ジュアンルーンルアンキットがアメリカを訪問し、アメリカ国務省、NED*傘下のフリーダム・ハウス、アリゾナ州に拠点を置くハイパーループ・ワンの代表者と会談した後、タイに戻って中国が建設する高速鉄道プロジェクトを非難したことだ。

 その代わりに、タイは現在廃止されている「ハイパーループ技術」に投資すべきだとタナトーンは主張した。

 ある公開プレゼンテーションで「過去5年間、我々は中国を重視しすぎていたと思う。その重要性を減らし、欧州や日本やアメリカとの関係のバランスを取り戻したい」とタナトーンは主張した。

 2019年のタイ総選挙で敗北した後、タナトーンはタイの街頭でNEDが支援する抗議活動を率いた。その後、彼の政党は選挙でより良い成績を収めたが、これは保護されていないタイの情報空間全体にNEDが及ぼした腐食的影響によるものだ。

 現在、タイでも東南アジア全域でも、客観的に見て中国の方がより良い未来を提供しているにもかかわらず、NEDや破壊的な政治的反対派集団のネットワークやメディアや更にはアメリカが支配する政党により、依然不当な影響力をアメリカが行使しており、この地域の本来明るい未来は2014年以前のウクライナのように不安定な立場に置かれている。

 フィリピンは既にアメリカに完全占領され、中国と対峙し、対立するため利用されており、依然、台頭するアジアは欧州や中東同様、地域戦争に巻き込まれる可能性に直面している。

 ワシントンの超兵器に対する防衛

 ロシアと中国はともに、アメリカによる政治掌握という「超兵器」に対する有効な防衛策を考案した。

 両国は、海外から資金提供を受けているいわゆる「非政府組織」(NGO)に対して透明性を要求するか、あるいはそれらを全面的に禁止するか、いずれかを行っている。

 また両国はアメリカ国務省と連携して標的国の世論や国家アイデンティティを操作するアメリカを本拠とするソーシャルメディアを制限または禁止し、自国の国内ソーシャルメディアにより情報の流れを監視し、それぞれの情報空間を確保している。

 両国には、それぞれの価値観を推進する強力な国内メディア産業と自国の立場を世界中の視聴者に伝える国際メディアがある。

 だが両国がこれまでできなかったのは、この専門知識をパートナー諸国に広めることだ。

 既に両国は、空域、国境、海岸を含む伝統的な国家安全保障領域を防衛するため、パートナー諸国に幅広い防衛システムを販売している。だが、どちらの国も、これら輸出品に国家の情報空間を防衛する手段を組み込んでいない。実際、これまで、そもそも国家情報空間を防衛することが21世紀には極めて重要なことを両国は伝えられていない。

 ロシアと中国は、各国がそれぞれの情報空間に設置し、監視できるターンキー・ソーシャルメディアを輸出し、アメリカを拠点とするネットワークに取って代わり、自国国内の情報の流れに対する統制を再確立できる。これにより、シリコン・バレーやアメリカ国務省パートナーに委ねるのではなく、各国と国民が、どの情報を共有できるか、できないか決定できるようになる。

 同様のパッケージを提供して、各国がロシアのRTやスプートニクや中国のCGTNのような国際的メディアを立ち上げるのを支援するとともに、アメリカ国務省のフルブライトやヤング・リーダーシップ・イニシアチブなどのプログラムのようにワシントンやウォール街の利益ではなく、対象国の最善の利益を反映する現地ジャーナリストや教育者や将来の政治家や外交官を育成するための国内教育体制の構築支援もできるだろう。

 BRICS主要メンバーたるロシアと中国

 一見しただけでは、NEDや世界中の政治および情報空間を支配しようとするアメリカの他の取り組みは、全く「武器」には見えない。だが詳細に調べてみると、これらは21世紀に使用される最も破壊的「大量破壊兵器」だ。これらは世界の平和、安定、繁栄に対する深刻な脅威だ。同様に、これらを暴露し、防御するため真剣な努力を払う必要がある。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/12/24/washingtons-unstoppable-superweapon/

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 2024年12月31日追記

 素人翻訳に不満な方は、英語を専門とする方々による「寺島メソッド翻訳NEWS」記事をお読み願いたい。
米国政府の「超兵器」!!CIAの別働隊NED(全米民主主義基金)が、アジア含め世界中で破壊活動を展開!!
 Dialogue Works
Larry C. Johnson: Israel fighting Yemen  45:17
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
韓国国会議員が韓悳洙大統領代行を弾劾、韓国が暫定指導者を弾劾するのは初めて。韓国の指導部の危機はさらに深刻。尹氏罷免を裁く憲法裁判所は定員9名の三分のニ必要。しかし3名欠員、したがって一名でも反対すれば弾劾不能。野党の補充する動きを韓大統領代行が拒否→韓大統領代行を弾劾。
 耕助のブログ
No. 2374 レバント地域は無政府状態

2024年11月20日 (水)

トランプ政権:「戦争タカ派なし」から「全員戦争タカ派」へ

Brian Berletic
2024年11月13日
New Eastern Outlook

 2024年のアメリカ大統領選挙までの数週間、前大統領で現在次期大統領のドナルド・トランプがアメリカの海外での戦争を中止し、代わりにアメリカ自体に投資してくれるだろうとアメリカ人や世界中の多くの人々は期待していた。



 トランプ政権:「戦争タカ派なし」から「全員戦争タカ派」へ

 こうした期待は、トランプ陣営を取り巻く言論に基づいていた。候補者の息子、ドナルド・トランプ・ジュニアは「全てのネオコンと戦争タカ派をトランプ政権から締め出すには最大限の圧力が必要だ」と公に発言したが、これはトランプ候補の選挙運動中の言論を反映している。

 トランプ次期大統領の考慮対象と被任命者は全員強烈なネオコンだ

 残念ながら、ドナルド・トランプ次期大統領の前回任期時と同様に、これは、ワシントンDCで暮らし、息をしている最も声高な「ネオコンと戦争タカ派」で内閣を埋める前に、戦争に疲れたアメリカ人の支持を確保して、海外の国々のバランスを崩すことを意図した空約束だった。

 思惑の継続

 トランプ次期大統領の前回政権では、ジョン・ボルトンやマイク・ポンペオやニッキー・ヘイリー等の筋金入りネオコンや戦争タカ派が閣僚を構成し、連中はトランプ大統領がオバマ政権から引き継いだ全ての戦争を継続し、中国やイラン、更にロシアも含め、アメリカの特殊権益集団が長年求めてきた更なる戦争を誘発しようと絶えず働いてきた。

 第一次トランプ政権中に、アメリカは中国との貿易戦争を開始し、スマート・フォン・メーカー、ファーウェイを含む中国最大で最も成功している企業を骨抜きにすることを狙った措置を講じ、全欧米諸国での販売禁止や、アメリカを拠点とするグーグルによる、ファーウェイへのAndroidオペレーティング・システム供給停止や、更に、カナダ旅行中のファーウェイCFO孟晩舟を拘留するまでに至った。

 第一次トランプ政権下でも、アメリカはオバマ政権から引き継いだ政策として、中国を領土内に包囲・封じ込める手段としてアジア太平洋全域で軍備増強を継続した。

 中東では、オバマ政権下で始まったシリア不法占領をトランプ政権は継続し、シリア政府と同盟諸国に対する攻撃を続け、シリアの石油をくすねるのをトランプ大統領は自慢していた。またトランプ政権第一期には、公務でイラクを訪問中のイラン高官カセム・ソレイマニ将軍をアメリカが暗殺したが、これはイラン、イラク両国に対する紛れもない戦争行為だった。それまで、自称「イスラム国」との戦いの上で、シリアとイラクを含む地域全体で、ソレイマニ将軍は成功していた。

 ロシア権益の代理人だとトランプ大統領は非難されたが、実際は彼の政権がウクライナ軍に武器供与し始め、ウクライナにおけるロシアとの代理戦争を加速させ、2022年2月に特別軍事作戦(SMO)をモスクワに開始させる最後の一線を越えたのはほぼ確実だ。中距離核戦力全廃条約からアメリカが脱退し、その後、ロシアに向ける中距離ミサイルをバイデン政権がヨーロッパに配備する道を開いたのも第一次トランプ政権の時だった。

 アメリカの海外介入を終わらせるという選挙公約に、第一次トランプ政権が著しく違反したため、多くのトランプ支持者は、トランプ大統領の「経験不足」を含む様々な言い訳に頼り、ポンペオやボルトンやヘイリーが本当は何者か彼は知らなかった可能性があり、第二次政権では彼の内閣は、そこで学んだ教訓に基づいて行動するはずだと主張した。

 沼地を補充する

 時は流れ、トランプ新政権は、ボルトンやポンペオやヘイリーが新政権では役職につかないと発表し、教訓を実際に学んだのだという希望を一時的に高めた。

 しかし、この状態は長くは続かなかった。その後、次期国家安全保障担当大統領補佐官はジョン・ボルトンと思想的に似ているマイク・ウォルツになる可能性が高いと発表された。ニッキー・ヘイリーと思想的に良く似たエリス・ステファニックが国連大使に就任すると発表された。またマルコ・ルビオリチャード・グレネル両人が次期アメリカ国務長官候補として検討されているが、彼らの考えは、トランプの前国務長官マイク・ポンペオやバイデン政権下のアメリカ国務長官アンソニー・ブリンケンと区別がつかない。

 トランプ次期大統領が検討し任命した人物は、いずれも海外での戦争、特にロシアや中国やイランに対する戦争を擁護して暮らしてきたが、リビアやシリアやベネズエラや他の多くの国々に対する戦争も主張してきた強烈なネオコンや戦争タカ派だ。ステファニックは、2014年のウクライナを含め、世界中で政治干渉に関与しているネオコン主導の組織、全米民主主義基金の 「専門家 」としてリストアップされている。

 トランプ次期政権によるネオコンや戦争タカ派指名は「釣り餌」だと主張する人もいるかもしれないが、トランプ政権がJ・D・ヴァンスを副大統領候補に選んだのは、実際、ウクライナ以外では、戦争と好戦主義が続くぞという公然の宣言だった。

 ニューズウィークは「アメリカはロシアではなく中国と戦うための武器が必要だとJD・ヴァンスがティム・ディロンに語る」という記事で「ウクライナへの軍事支援より、インド太平洋の安定と台湾支援をアメリカは優先するべきだ」と明言している。

 彼が反対を唱えて選挙戦で勝利した政策に関与していたネオコンや戦争タカ派と、トランプ次期大統領が親密で、彼らを任命したことは、そうでないことを示唆する魅力的な言辞にもかかわらず、トランプ第一次政権によるアメリカ外交政策を切れ目なく継続したのを繰り返すことを意味する。

 他地域で戦争を加速させるために、ウクライナを一時停止

 すると、ウクライナ紛争を終わらせるとトランプ新政権が決意しているように見えるのは矛盾するように思えるかもしれない。これはアメリカにおける政治移行というより、ホワイトハウスの主やアメリカ議会の支配者が誰だろうと、アメリカ外交政策を左右する選挙で選ばれないアメリカ特別権益団体間での優先順位の変化を表しているにすぎない。

 ウクライナでのアメリカ代理戦争は、それを引き起こす上で、一期目トランプ政権も役割を演じた戦争だが、どう見ても終焉しつつある。ウクライナを犠牲にして「ロシアに手を広げさせる」狙いは、可能な限り最大限に実現された。アメリカの備蓄は枯渇し、残されたアメリカ軍事力は、エスカレーションで、イランや中国とのより大規模で危険な戦争のため温存する必要があるため、ワシントンの選択肢は、ウクライナでの攻撃を強化するか、二つの、あり得る戦争の成功可能性が完全に閉ざされる前に、イランと/または中国に軸足を移すかの、いずれかだ。

 トランプ次期政権はネオコンや戦争タカ派で占められており、アメリカが据えた分離主義台湾政権の武装を彼らは公然と推進し、最終的に、台湾を中国から永久に切り離そうとしている。台湾独立をアメリカ国務省は公式には支持しておらず、中国は一つで、台湾は中国の一部で、北京に承認された中国政府は中華人民共和国(PRC)のみだとする「一つの中国」政策で北京と二国間協定を結んでいるにもかかわらずだ。

 この紛争に備える一環として、オバマ、トランプ、バイデン政権を通じて、アジア太平洋地域における軍事的存在をアメリカは拡大しており、この政策の最も声高な支持者で構成される第二次トランプ政権下でも間違いなく継続されるだろう。

 この過程には、現在フィリピン最大の貿易相手国で、最近まで重要なインフラ構築パートナーだった中国とフィリピン間に対立を作り出し、かつてアメリカ植民地の東南アジアの国フィリピに対する米軍の足跡を拡大する口実を作ることも含まれる。これにより、アメリカは、中国と台湾周辺の紛争地帯を近隣の米軍で更に包囲することが可能になる。

 バイデン政権は中国に対し「軟弱」だと、アメリカの政治「右派」は主張したが、中国との戦争に備えるため、米軍の徹底的再編が行われたのもバイデン政権下だった。

 これには、米海兵隊を高度に機動性がある対艦ミサイル部隊への再編や、戦争が始まった場合、米軍施設に中国が報復するのをより困難にするために、米空軍基地をアジア太平洋地域全体に分散させる機敏な戦力展開(ACE)の採用などが含まれる。

 トランプ政権が、その後のバイデン政権下で始まったウクライナにおける対ロシア・アメリカ代理戦争の舞台を整えたのと同様、公然と敵対的な反中国政権が権力を握れば、これら変革された米軍部隊が今や完全配備されることになるだろう。

 極めて明らかなのは、アメリカ外交政策が、アメリカの選挙により決定されるわけではないことだ。選挙は、継続する思惑に過ぎないものを国民に売り込むために使われる口実や、その口実を言う人物や、アメリカ外交政策が、選挙があるにもかかわらず、継続的に変化しそこねている理由の言い訳を決めるにすぎない。

 今後四年、アメリカの敵意に直面する世界中の国々は、アメリカによる海外侵略が全く不可能な状況を作り出す多極的国際秩序の構築に引き続き取り組まなければならない。これは、アメリカの制裁や強力な軍事的抑止力が及ばない、金融や経済的代替手段を通じて、制裁であれ軍事力であれ、代理介入であれ直接介入であれ、アメリカの強制力を抑制する金融、経済、外交、軍事手段を使用することで実現可能であり、実現されつつある。これにより、もはや自らを押し付けられない世界と建設的に協力するという唯一の選択肢がアメリカの特殊権益集団に残される。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、ライター。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/11/13/the-trump-administration-from-no-war-hawks-to-all-war-hawks/

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 The New Atlasで筆者本人が本記事について語っている。
The Trump Administration: From “No War Hawks” to ALL War Hawks 35:10
 Alex Christoforou Youtube
Gabbard DNI. Gaetz AG. Bolton BALLISTIC. EU freak out as Russia wins. Economist, Elensky clueless 31:12
 トゥルシー・ギャバードが国家情報長官
 対イラン強硬派のマルコ・ルビオが国務長官
 国連大使にエリス・ステファニク下院議員
 ステファニク:大学内反戦デモなど「反ユダヤ主義」対応を下院公聴会で追及し、ハーバード大など複数の学長辞任をもたらした議員

  Judging Freedom
COL. Lawrence Wilkerson : Trump and the Defense Department 27:56
 日刊IWJガイド
 「ウクライナ軍が米国製ミサイルでロシアを攻撃! プーチン大統領は改定核ドクトリンに署名! 退陣間際のバイデン政権による核戦争の危機!」2024.11.20号

 ■はじめに~ウクライナ軍が、米国製ATACMSミサイルでロシア領内を攻撃したことが明らかに! 一方、プーチン大統領は改定した核ドクトリンに署名!「ロシアが核保有国に支援された非核保有国によるいかなる攻撃も共同攻撃と見なす」との内容は、米国がウクライナに許可したATACMSミサイルでのロシア攻撃に該当! 退陣間際のバイデン政権が、停戦を公約に掲げたトランプ氏を選んだ直近の大統領選で示された「現在の民意」を踏み躙り、ウクライナ紛争の火に油を注いで、核戦争の危機に! スロバキアのフィツォ首相は、「和平交渉を妨害し、遅らせる試みだ」と非難!

2024年9月29日 (日)

イランに罠を仕掛けたワシントン イランは餌に食いつくだろうか?

ブライアン・バーレティック
9月24日
New Eastern Outlook

 ウクライナ紛争が続き、アジア太平洋地域で緊張が高まる中、ワシントンは中東で、代理勢力イスラエルと増え続ける近隣諸国や組織との間での同様に危険な地域戦争に動いている。

 イランに罠を仕掛けたワシントン イランは餌に食いつくだろうか?

 これには、レバノンとレバノンを拠点とする軍事・政治組織のヒズボラや、シリア・アラブ共和国や、イランやイラク全土のシーア派民兵や欧米メディアが「フーシ派」と呼ぶイエメンを拠点とするアンサル・アッラーが含まれる。

 この地域に広がるこの大規模な国家や組織の集団には共通点がある。つまり、それらは全て、この地域におけるアメリカ優位に対する障害となっており、第二次世界大戦終結以来、それぞれに対してアメリカ自身も直接的および/または間接的に戦争を仕掛けてきた。

 東ヨーロッパでロシアとの代理戦争を仕掛けるため、アメリカがウクライナを取り込み、アジア太平洋地域で台湾を政治的に掌握して中国に対して利用しているのと同様、アメリカはイスラエルを何十年にもわたって政治的、軍事的に注意深く育て、暗殺やテロ攻撃や軍事攻撃、更にはアメリカ自身がもっともらしい否認を求める戦争を誘発するための代理として利用してきた。

 代理であろうとなかろうと、ワシントンは遅かれ早かれイランとの戦争を望んでいる。 この目的のため、武器や弾薬の継続的供給も含まれる毎年数十億ドルの援助をアメリカはイスラエルに行っている。これなしに、イスラエルの様々な侵略戦争は遂行できない。表向き、ワシントンはは中東の平和と安定を求めるふりをしているが、イスラエルへの継続的支援は、この地域を蝕む永続的紛争と不安定さを助長している。

 最近、イスラエルに対し、ガザへの軍事作戦の自制を促しているとアメリカは繰り返し主張している。しかし今年6月、実際は、イスラエル空爆に使用される数千発の爆弾を含む軍需品をアメリカは継続的に送付して、ガザの大規模破壊を可能にしているとロイター通信が報じた

 アメリカとその代理イスラエルは、イスラエルの行動は自衛のためだと主張しているが、暴力は一方的で、ガザはほぼ平らげられ、何万人もの人々が死亡や負傷や避難を余儀なくされている。ガザでの作戦と並行して、イスラエルはレバノンやシリアやイラン攻撃も行っているが、イスラエル軍自身によれば、これらの国々はいずれも昨年10月のハマスによる攻撃に関与していないという。

 これら三国はイスラエルの挑発行為に対する報復に繰り返し抵抗してきた。

 イスラエル:ウクライナ式破城槌の元祖

 イスラエルの好戦的性格は明白で、中東全域でより広範な戦争を誘発し、アメリカが介入を正当化するための十分に文書証拠があるアメリカ政策の一環だ。そして、アメリカと代理勢力イスラエルは、核兵器を含む、正当化が困難または不可能な兵器や戦術を使用する際、その戦争を引用できる。

 2009年、ブルッキングス研究所は「ペルシャへの道はいずれか? イランに対するアメリカの新たな戦略の選択肢」と題する170ページの論文で、イランとの戦争遂行を含む、イラン政府を強制し、封じ込め、最終的に打倒するための様々な手段を詳述した。

 この論文は、アメリカ自身がイランに対し軍事攻撃を開始するのが、いかに困難かを認め、次のように述べている。
…いかなる対イラン軍事作戦も世界中で非常に不評を買う可能性が高く、作戦に必要な兵站支援を確保し、その反動を最小限に抑えるため適切な国際的文脈が必要となるだろう。
 また、次のようにも述べている。
…アメリカが空爆を開始する前に、イランの挑発を理由にして空爆を正当化できれば、遙かに望ましい。明らかに、イランの行動がより非道で、致命的で、いわれのないものであればあるほど、アメリカにとって有利になる。もちろん、世界に気付かせずに、そのようにイランを挑発し、弱体化するようアメリカがこの駆け引きを推進するのは非常に困難だろう。
 イスラエルを利用して最初のイラン攻撃を遂行し、その責任からアメリカが距離を置くことに一章丸々充てられている。「ビビに任せろ:イスラエルの軍事攻撃を許すか、奨励する」と題されたこの報告書は、はっきり次のように述べている。
…この政策選択肢の狙いは、イランの主要核施設を破壊し、それによりイランの国産核兵器能力の獲得を大幅に遅らせることだ。しかしながら、この場合、国際社会による批判とイランの報復両方が、アメリカを逸れ、イスラエルに向けられるのを期待して、イスラエル自身による攻撃をアメリカが奨励したり、場合によっては、支援したりしかねない。
 イスラエルの攻撃は 「自らがイランに対して起こす侵略戦争の前にアメリカ必要な口実をえることになる、アメリカや他の国々を巻き込む可能性があるイスラエルとイラン間のより広範な紛争を引き起こしかねない」とこの報告書は指摘している。

 この政策を念頭に置くと、イランと同盟諸国に対し、イスラエルが着実に挑発的攻撃を強化している理由が理解しやすくなる。イスラエルの挑発行為を通じて、アメリカは自らも参戦できる、より大規模な戦争を誘発し、中東で新たな侵略戦争を始めるのではなく、同盟国を支援しているように見せかけようとしているのだ。

 究極的に、この罠が成功するためには、こうした数多くの挑発行為の一つにイランが報復し、不釣り合い、あるいは「いわれない」とさえ言えるような形でアメリカと同盟諸国が報復しなければならない。

 これまでのところ、イランの対応は極めて慎重だ。

 短期的復讐と長期的勝利

 イスラエルによる暗殺やテロ攻撃や、更には一方的軍事攻撃が、レバノンとシリア両国に対し長年行われてきたが、両国の存続が深刻に脅かされることはなかった。

 実際、アメリカが仕掛けたシリアの生存を脅かしていた代理戦争は、シリア国内でのシリア軍とロシアとイランの安全保障協力により打倒された。

 同様に、長年にわたり、テロや政治干渉や暗殺など直接的、間接的攻撃にイランは耐えてきたが、これら敵対行為が国民国家としてのイランの存続を深刻に脅かすことはなかった。イランを弱体化させ不安定化させることを狙ったアメリカ制裁と政治干渉は、アメリカや代理勢力への報復ではなく、今年初めBRICSに加盟して以来、イランが台頭しつつある多極世界との緊密な協力と参加を通じて、これまで慎重に管理され克服されてきた。

 より広い意味では、多極化した世界が規模と複雑さを増し、アメリカ主導の国際秩序が衰退するにつれ、中東を含む世界のどこででも優位を主張するワシントンの能力が衰えている。このため、世界の勢力均衡が更に不利になる前に、経済力と軍事力の残りの優位性を利用して敵を排除しようとして、ワシントンは時間との戦いを繰り広げている。

 代理戦争であろうとなかろうと、遅かれ早かれ、ワシントンはイランとの戦争を望んでいる。益々必死な挑発行為に対するイランや同盟諸国の短期的復讐心を感情的に満たすための報復は地域全体を破壊しかねない、より広範で、より多大な犠牲を伴う戦争を引き起こしたいワシントンの願望を助長するに過ぎない。

 むしろ、安全保障を強化すべきなのだ。イランと同盟諸国は、国内や地域全体で経済力と政治力を強化するのと同様、軍事力強化を継続する必要がある。レバノンで最近起きた爆発物を仕掛けた電子機器を国内にばらまくテロ攻撃などのイスラエルが実行した挑発の多くは完全に予測可能で予防可能だ

 アメリカと代理勢力が中東を不安定化させようとするあらゆる試みに対し、中東地域とそのパートナーは安定の維持に一層力を入れ、紛争拡大を回避しなければならない。将来の挑発行為が効果を弱め、実行困難になるようにするには、安全保障と外交の努力を継続的に組み合わせる必要がある。

 こうした挑発に反撃するのではなく、それを克服することで、アメリカ主導の一極主義から、より良い多極主義の世界へと世界の勢力バランスを根本的に転換し続けるために必要な時間が他の国々とともに中東は得られる。しかし、それが実現するまでは、アメリカが仕掛けたワシントンが多極主義を葬り去ろうと破壊的戦争を引き起こすことを意図した罠罠を各国は避けなければならない。

 ブライアン・バーレティックはバンコクを拠点とする地政学研究者、ライター。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/09/24/washington-sets-trap-for-iran-will-iran-take-the-bait/

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 The Chris Hedges Report イスラエル人ジャーナリスト、新刊The Killing of Gazaを語る。
The Looming Catastrophe in the Middle East (w/ Gideon Levy) | The Chris Hedges Report  54:15

Chris Hedges
Sep 28, 2024
 耕助のブログ
No. 2283 アメリカ流の戦争
No. 2282 ウクライナ紛争について知っておくべきこと
 植草一秀の『知られざる真実』
総裁選裏側の自民長老優勝劣敗

2024年9月22日 (日)

最近のレバノン・ポケベル・テロ攻撃は予測可能、予防可能だった

ブライアン・バーレティック
9月20日
New Eastern Outlook

 レバノン全土でイスラエルが起こし、最少子ども一人を含む、数人を殺害し、数千人を負傷させたこの無差別テロ攻撃を「未曾有の」「 巧妙な」ものと欧米メディアは呼んでいる。この攻撃で、遠隔操作で爆発物を爆発させたポケベル5,000台が使われたと報じられているが、この攻撃には予測不可能なものても、防げないものでもなかった。


 最近のレバノン・ポケベル・テロ攻撃は予測可能、予防可能だった。

 「イスラエルがヒズボラのポケベル5,000台に爆発物を仕掛けたと情報筋が語る」という記事で、ロイターは次のように報じている。  
この作戦はヒズボラにとって未曾有のセキュリティー侵害であり、レバノン全土で数千台のポケベルが爆発し、ヒズボラの戦闘員やベイルート駐在のイラン特使を含む9人が死亡、約3,000人が負傷した。

 レバノン治安筋によると、ポケベルは台湾のゴールド・アポロ社製だが、同社がポケベルを製造したのではなく、自社のブランドを使用する権利を持つ欧州企業が製造したものだと主張している。
 新品のポケベルの中に最大3グラムの爆発物が隠されており、「暗号化されたメッセージが送信され、同時に爆発物が作動した」時に爆発したとロイター通信は報じた。

 ポケベルは台湾を拠点とするメーカーが製造したもので、メーカーは自社ブランドの使用許可を得てヨーロッパで組み立てられたと主張しているとロイター通信は報じている。

 ヒズボラの治安、行政、医療、救援や関連ネットワークに配布するため購入されたポケベルは、製造から出荷までの間ずっと敵の手にあり、その後レバノンに到着したため、少なくともアメリカと代理組織が10年以上にわたり実行してきた十分証拠のあるセキュリティー侵害にさらされた。

 安全保障の防衛は、適切に行われてさえ、ひるむほど困難な作業だ。

 今回、この装置は遠隔起爆装置に改造され、装置を所有している人を重傷または死亡させるか近くにいる人を重傷または死亡させるに十分なエネルギーを持つものになった。

 この攻撃が可能になったのは、安全保障対策の不備や、脅威がこれまで考えられなかったからではなく、国外から技術を調達する危険性が良く知られているにもかかわらず、公的や国内での使用を目的とした製品調達に関わる国家や運用上の安全保障政策と手順が全く欠如していたためだ。

 IT機器を時限爆弾に変える長い実績

 アメリカ国民で元アメリカ国家安全保障局(NSA)契約職員のエドワード・スノーデンはポケベル攻撃はイスラエルの「ハッキング」により装置のバッテリーが改ざんされた結果ではなく、工場または出荷施設で装置が改ざんされて爆発物が挿入された結果だと最初に疑った人物の一人だった。2024年9月18日ソーシャル・メディアXへの投稿で、2013年にNSAチームが輸送中に荷物を開けてIT機器を改ざんした写真をスノーデンは掲載した。

 スノーデンは下記のように発言している。

 
2013年に暴露された大規模監視の極秘写真のことを私は常に考えている。この写真では輸送中の商用貨物 (多くの場合、空港) をNSAが改変し、最終受取人をスパイしていたことが明らかになっている。10年経っても貨物のセキュリティーは改善されていない。

 2015年の記事で、情報技術を他国に依存することによる国家安全保障への影響について、筆者は警告した。その記事で、ポピュラー・サイエンス誌が「interdiction(阻止)」と呼ばれる過程に言及しているのを引用し、その過程について「郵送される物品を途中で取り押さえて、改変した物と入れ替えること」と説明した。

 また、2013年のオーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー記事「インテル・チップがアメリカ・スパイを内部侵入させる可能性:専門家」も引用して、多数のサイバー・セキュリティー侵害について説明し、アメリカ国家安全保障局(NSA)が 「インテルとAMDが製造したチップにバックドアを埋め込み、装置にアクセスして制御できるようにしている」可能性を指摘した。

 既に2013年には、海外で製造されたIT機器が、工場内や輸送中に「セキュリティを損なわれる」リスクが非常に高いため、ロシアや中国などの国々は、公務に不可欠なプロセッサやオペレーティングシステムやコンピューターなどのハードウェアを独自に製造し始めたり、そのようなハードの使用を完全に排除したりする作業手順を作成していた。

 10年以上、海外から調達するITハードは、隠喩的に、情報セキュリティーを危険にさらす時限爆弾だった。今回、この長年のセキュリティーの欠陥に対処する真剣さが欠けていたために、ITハードが文字通り爆弾に改変されたのだ。

 今回はレバノンにとって、余に少な過ぎ、余に遅すぎた

 今日、こうした脅威の危険性はより深く理解されているだけでなく大幅に増大している。現代のスマートフォンはレバノン中で、イスラエル諜報機関に頻繁にセキュリティが損なわれており、ヒズボラ指導部はスマートフォンを捨てるよう構成員に奨励している。

 ロイターは次のように報じている。

 
2月13日のテレビ演説で、携帯電話はイスラエル・スパイより危険で、壊すか埋めるか鉄の箱に閉じ込めるべきだとヒズボラのハッサン・ナスララ事務局長は支持者に厳しく警告した。

 その代わり、ヒズボラは、戦闘員から救援活動に従事する医療従事者まで、この集団の様々な支部の構成員へのポケベル配布を選んだ。

 ITハードのセキュリティ侵害がもたらす一般的危険性は理解されてはいたものの、それを防ぐための効果的な対策は実施されていなかった。

 ハードとソフト全てが海外製造されており、アメリカが頻繁に(多くの場合、業界パートナーと協力して)両方のセキュリティを侵害しているため、侵害されたスマートフォンを廃棄して、アメリカや、その代理組織と結託、または影響下にある業界が同様に製造したポケベルに置き換えるのは、レバノンの国家安全保障やヒズボラの作戦上の安全性を損ねる機会を増やすだけだ。

 ITセキュリティを本気で考える

 ITハードや、それが可能にする情報空間は、国家にとって国境や空域や海岸同様、保護すべき重要な国家安全保障の新領域だ。

 重要な防衛機器が改ざんや破壊や他の方法で危険にさらされると知りながら、アメリカや、その代理組織から、そのような物品を、ヒズボラやイランやロシアや中国が購入しないのと同様に、国家や組織は、自分の情報空間を維持し、使用し、保護するために、敵からの、そうした手段の購入は避けなければならない。

 ヒズボラやレバノン政府や軍や、新興の多極世界の政府や軍や重要機関や組織は、国家安全保障の他分野と同様に、情報技術の面でも、緊急に自立を確立する必要がある。

 コンピュータやプロセッサやスマートフォンや無線やポケベルや他の全ての電子装置を含むコンピュータの個々の部品やソフトやオンライン・プラットフォームの製造は、国家自身または信頼できる同盟諸国により設計、製造、および/またはコーディングされる必要がある。情報領域全体で使用されるハードやソフト設計、製造やコーディング・プロセスは、情報技術を有する政府や組織や機関で働く専門家が監督する必要がある。

 ヒズボラがITハードとソフトを組織の安全保障とレバノンの国家安全保障の中心として優先していれば、この技術の取得、使用、安全保障の確保に専念する組織を創設していたはずだ。専門家が、スマートフォンの代替として検討していたポケベル製造を監督し、エンドユーザーへの輸送を監督していたはずだ。5,000台のポケベルに爆発装置を埋め込む可能性は考えられなかったはずなのだ。

 言い換えれば、ITハードやソフトの購入には、無害な消費者向け商品の購入としてではなく、国家および運用上の安全保障の中心として、この重要技術を危険にさらす機会が与えられれば潜在的な敵がそれを利用するという前提で取り組む必要がある。

 これら商品がどのように設計され、製造され、出荷され、誰に出荷されるかが非常に重要だ。保管チェーンのどこかで、この技術が潜在的な敵の手に渡った場合、購入した機器やソフトは侵害されたと想定する必要がある。

 多極化世界における情報領域のセキュリティー確保

 ロシアや中国のような国々は情報領域とそれを構成するハードやソフトの安全保障確保の点で他国より遙かに進んでいるように見えるが、多くの同盟諸国や潜在的同盟諸国はそうではない。情報空間を国家安全保障領域ではなく、周辺的なものと見なす情報空間に対する時代遅れの考え方が、自己満足や無知や無能という根深い文化を生み出している。

 アメリカやイスラエルや、おそらく台湾に拠点を置くポケベル製造会社(またはヨーロッパのパートナー)が、レバノン全土でこの悪意ある無差別テロ攻撃を実行するのに成功したのは、彼らの特別な能力のせいでも、レバノン側の一時的な安全保障の不備のせいでもなく、レバノンの情報領域が事実上無防備なまま、保護されるべきだという認識すらなく、まして保護するための効果的な戦略がなかったためなのだ。

 この攻撃は阻止できた。将来の攻撃も阻止できる。

 ロシアや中国が陸、空、海の伝統的な国防領域に関する伝統的フォーラムや演習を実施しているのと同様に、情報領域の防衛に焦点を当てたフォーラムや演習も不可欠だ。国家、政府、行政、組織、機関、更には個人に、情報技術主権の重要性、つまり、この技術を自ら作るか、近い同盟諸国から入手するか、工場の現場から輸送、配布まで、透明なプロセスで自ら監督する重要性を印象づけることで、アメリカや代理組織が最近の攻撃で悪用した開いた無防備な門は排除可能だ。

 国家安全保障領域を守ることは、適切に行ってさえ困難な作業だ。情報空間は、これら領域の中でおそらく最も複雑で最も理解されていない領域だ。しかし多くの場合、政治および軍事指導者は、情報空間が、そもそも国家安全保障領域であることを理解していない。この姿勢を変え、既存の共同防衛協力を情報空間に拡大することが、この悲劇が少なくとも簡単に繰り返されないように、また再び試みられた場合に、大規模にならないようにするための第一歩だ。

 ブライアン・バーレティックはバンコクを拠点とする地政学研究者、ライター。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/09/20/latest-lebanon-pager-terrorist-attack-predictable-preventable/

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2024年9月11日 (水)

超大国として君臨すべく「超兵器」を探し求めるアメリカ

2024年3月9日
ブライアン・バーレティック
New Eastern Outlook

 唯一の超大国として君臨するために、アメリカは「超兵器」を探し求めている。

 冷戦が終結し、アメリカが唯一の超大国となった後も、「国際秩序」の形成を独占的に維持することを目指しているとアメリカは公然と宣言している。

 この政策は何ら新しいものではない。

 1992年の「アメリカの戦略計画は、ライバル国家が生まれないようにすると主張」という記事で、「建設的行動と十分な軍事力により、その地位を永続させ、いかなる国や国家集団もアメリカの優位性に挑戦するのを阻止できる超大国が支配する」世界を国防総省が作ろうとしていたとニューヨーク・タイムズは指摘している。

 数十年にわたるアメリカの侵略戦争や政治介入や政権転覆や、アメリカが支援するテロや経済制裁や、再台頭するロシアや台頭する中国とアメリカの直接対立激化の舞台を、この政策が整え、これらは全て今日まで続いている。

 冷戦から唯一の「超大国」として浮上したアメリカは、同様に慎重に選んだ紛争を通して自国の軍事的優位性を誇示し、世論を慎重に育成してきた。アメリカは今日に至るまで、1990年と2003年のイラクとの戦争や2011年のリビア政府転覆を、無敵の軍事力の証拠として挙げているが、実際は、標的になった両国は当時欧米メディアが主張したほど強力でも危険でもなかった。

 この見せかけはその後崩壊した。「アメリカの優位性」は今や深刻な課題に直面しているだけでなく、その前提である、世界人口の一部を代表する一国が地球上の他の国々に対して優位性を保持できる、あるいは保持すべきだという概念は、自己破壊的ではないにせよ、完全に持続不可能なことが明らかになった。

 アメリカの軍事力と経済力が目に見えて衰えているだけでなく、中国やロシアや益々多くの他の国々の軍事力と経済力が急速に成長している。

 アメリカ国内の特別利益団体は、世界的優位性を追求し、富と権力を絶えず追求し、近代的で機能的な国民国家が果たすべき多くの目的を犠牲にすることが多い。この過程は近代国民国家の力の重要な柱である産業、教育、文化、社会の調和を意図的に略奪することが含まれることが多い。これはアメリカの経済力と軍事力の崩壊を加速させるだけだ。

 ウクライナがアメリカの弱点を露呈した

 ウクライナにおけるワシントンの代理戦争は、この根本的弱点を世界に明らかにした。アメリカ兵器は、同等の敵国であるロシアに対して無力であることが証明された。

 アメリカの高価な精密誘導砲弾やロケットやミサイルは、従来の砲弾より少量しか製造されなかった。これは従来の砲弾数発で実現できることを、一発で実現できるためだと言われている。たとえば、アメリカ製155mm GPS誘導エクスカリバー砲弾一発で、従来の砲弾10発を必要とする効果を実現できるとレイセオン社は主張している

 量より質という神話は、ウクライナの戦場で崩れ去った。ロシアはアメリカや欧州の代理国より遙かに多くの通常兵器を生産できるだけでなく、独自の精密誘導砲弾(レーザー誘導クラスノポリ)、精密誘導多連装砲システム(トルネードS)、更に大量の弾道ミサイルや巡航ミサイル(イスカンデル、カリブル、Kh-101)など遙かに多くのハイテク精密誘導兵器も生産できる。

 他の分野で、アメリカが持っていない能力をロシアは持っている。キンジャール極超音速弾道ミサイルとジルコン極超音速巡航ミサイルという2種類の極超音速ミサイルをロシアは配備している。また質の上でも、量の上でも、アメリカがかなわない防空・ミサイル防衛能力や電子戦能力もロシアは持っている。

 もしロシアの軍事産業の生産量に匹敵あるいは上回れず、東欧での代理戦争でアメリカが敗れたら、中国沿岸部で中国を包囲し封じ込めようというアメリカの計画は一体どのように展開するのだろう?

 拡大する格差とそれを克服しようとする超兵器

 中国とのいかなる紛争もアメリカが準備不足で脆弱な状態に置かれることを米軍は恐れている。Defense One誌の最近の記事「空軍は太平洋周辺に多くの基地を建設したいと考えている。しかし、それらをどのように守るかはまだ決めていない」で、アメリカの防空・ミサイル防衛システムは、中国とのあり得る戦争に備えて設置される米軍基地の増加を防衛するには高価すぎるし、数が少なすぎると認めている。

 しかし、アメリカの防空ミサイルシステム、特にパトリオット・ミサイルの不足は、アメリカがウクライナにシステムを送り始める前から始まっていたのを忘れてはならない。イエメンのアンサル・アッラーとの紛争の最中にあるサウジアラビアの需要さえアメリカ軍事産業生産は満たせなかった。

 アジア太平洋地域で中国と紛争が起きた場合、米軍の航空機、海軍艦艇、ミサイルの数についても同様の懸念が存在する。

 アメリカの世界覇権獲得の野望と、それを実現するための実際の軍事的手段との間には大きな乖離があり、それが拡大していることを理解して、ワシントンと、アメリカに拠点を置く兵器メーカーは、より安価でより多数の兵器を生産できる新世代兵器を生産するための新たな設計・生産哲学を模索している。

 この取り組みの最前線にいるのは、アレスやアンドゥリルなどの「新興」兵器メーカーだ。アメリカは本質的に中国より革新的だという考えに基づき、アメリカは中国より革新的だと両社は考えている。しかし、この拡大する格差に対処しようとする両社の試みは、アメリカが支配しようとしている現実世界から、アメリカ外交政策が、いかにかけ離れているかを露呈している。

 アレス:より安価だが、より多くのミサイル…

 War Zone誌は「シリコンバレーの支援を受けた新興企業が新しい『安価な』巡航ミサイルのコンセプト飛行をテスト」という記事で、アレス社がどのようにして、高価だが数が少ないアメリカの既存の長距離精密誘導ミサイル兵器庫を、より小型で安価で、より多数のミサイルで増強しようとしているかを説明している。

 小型で安価なミサイルは、レイセオン社のトマホーク巡航ミサイルやロッキード・マーティン社の統合空対地スタンドオフミサイル(JASSM)など、より高価なミサイルに比べると性能は劣るが、大量生産される予定だ。より安価なアレス社製ミサイルは優先度の低い標的に使用され、性能は高いが数が少ない同種ミサイルは重要な標的に使用される。

 記事は次のように主張している。
 
現在の仕様も計画中の仕様もまだ公表していないようだが、ミサイルの単価を30万ドルにすることを目標にしているとアレス社は述べている。

 アレス社のミサイルが実際戦場に届くまでにどれほど時間がかかるかということに加え、これらミサイルを1発30万ドルで製造するという公表された目標すら、中国どころかロシアの軍事産業生産に匹敵するか、それを上回るために必要な革命的イノベーションには程遠いように思われる。

 ウクライナを拠点とするメディアによれば、ロシアは既に遙かに高性能なミサイルを1基30万ドルという低価格で生産しているためだ。ディフェンス・エクスプレスは2022年の記事「ロシア・ミサイルの実際の価格はいくらか:「カリブル」、「Kh-101」、「イスカンデル」ミサイルのコストについて」で、カリブル巡航ミサイルのコストは30万ドルから100万ドルの間としている。これは欧米諸国で生産される同等ミサイルより遙かに安い。

 2022年の記事は、当時ロシアのミサイル備蓄が枯渇したと欧米が報じていたため簡単に却下されたが、その後、ロシアはウクライナ全土の標的に向け毎年4,000発以上のミサイルを発射していることを同じ欧米メディアが認めている。これは、ロシアのミサイル生産が大量なのと同様に、経済的なことを示唆している。

 したがって、アレス社が最初のミサイルを製造する前でさえ、同社が実現しようとしていることの前提そのものが、ロシアの軍事産業基盤が既に大規模に行っていることに遠く及ばず、まして中国の軍事産業基盤が何を成し遂げられるかは言うまでもない。

 また、アレスが提案する低価格ミサイルと同じくらい安価な高性能兵器に加えて、ロシアと中国両国は、より安価でそれほど高度でない兵器で既存兵器を増強することも十分可能な現実もある。

 UMPKを搭載したFABシリーズ滑空爆弾をロシアが配備したのは、この好例だ。誘導滑空爆弾は、特殊軍事作戦の過程で構想から量産へと進み、戦闘での性能に基づいて改良が加えられ、より高価な長距離精密誘導兵器に代わる、より安価で、より多く、それでも効果的な代替品となった。

 多くの点で、アレスがやろうとしていることは、ロシアと中国が既に行ってきたこと、そして今後も行っていくだろうことの劣悪な模倣だ。

 Anduril: 中国とロシアを上回る革新…

 アレス社と同様、アメリカに拠点を置く兵器製造会社アンドゥリル社は、ウクライナ紛争の中でロシアが欧米諸国より生産量が多く、中国の軍用機、艦船、ミサイルの生産量がアメリカや欧州の代理諸国を上回る中、より安価でより多数のシステムが戦況を均衡させるのに役立つと考えている。

 アンドゥリルは、これを「ソフトウェア定義製造」を通じて実現するよう提案している。同社によれば、このプロセスにより、電気自動車メーカーのテスラは、自社のソフトウェアと電子機器を中心に車両を製造することで、従来の自動車メーカーより優れた車両をより多く製造できるようになったという。

 利点は明らかだ。従来の自動車メーカーは物理的な自動車を自社で製造しているが、現代の自動車で使用されているオペレーティング・システムやセンサーや他の電子部品やシステムなど、サブシステムの多くは他企業に外注されている。多くの場合、このソフトウェア、センサー、その他様々な部品は、多数の異なる企業に外注されている。自動車設計を変更するには、この多数の企業と連携する必要があり、変更や改善が面倒になる。

 すべてのサブシステムを単一の社内開発ソフトウェアに組み込み、その周りにハードウェアを構築することで、変更をより迅速に行うことができ、結果として、より高品質の自動車をより迅速に大量生産できるようになる。

 アンドゥリルは、この同じプロセスを使用して、中国に匹敵するか、中国を上回る大量のドローンやミサイルや他の武器や弾薬を製造することを想定している。アンドゥリルにとっての問題は、ソフトウェア定義の製造が中国の広大で高度な産業基盤で既に広く使用されていることだ。この「利点」が意味をなさなくなったため、アメリカは再び大きな不利な立場に立たされている。中国は、従来の軍事兵器、弾薬、装備をアメリカより遙かに大量に製造できるだけでなく、ドローンやミサイルなどの高度で急速に改良されたソフトウェア定義システムを構築することもできる。

 これは、アメリカが何をしようと、中国はそれを遙かに上回る規模でより良く実行できることを意味する。

 誤った前提、悲惨な結末

 アレスとアンドゥリルの前提は根本的に間違っている。両社は、ウォール街やワシントンで彼らが奉仕する特別利益団体と同様、アメリカはロシアや中国のような敵国より本質的に優れていると信じている。彼らの共通認識では、アメリカが直面する不利は偶発的なもので、それを克服するには十分な政治的意志を喚起するだけでよいのだ。ロシアと中国がより大規模で有能な産業基盤を持っていることは、アメリカ自身の政治的焦点と意志の一時的欠如と見なされており、アメリカの産業基盤を拡大する措置を講じることで、アメリカは必然的に再びトップに立つことになる。

 現実には、ロシアと中国の産業基盤は、アメリカの政治的意志がどんなに強くても克服できない要因を含む様々な要因により、アメリカより大きい。特に中国の人口はアメリカの4倍だ。中国は毎年、科学、技術、工学、数学の分野でアメリカより何百万人も多く卒業しており、その産業基盤(軍事や他のもの)の物理的規模は、この人口統計上の不均衡を反映している。

 たとえアメリカが軍事産業基盤を改革し、利益主導の民間産業を解体して目的志向の国有企業に置き換える政治的意思を持っていたとしても、アメリカが同様に教育制度を改革し、学生から一銭残らず搾り取るのではなく、熟練労働者を育成するようにしたとしても、アメリカが産業基盤拡大の基本的前提条件である国家インフラに投資したとしても、中国が既に、これら全てを実行し、アメリカとG7諸国を合わせたより人口が多い中でそれを実行した現実に直面することになる。

 世界人口の5%未満しかないアメリカが、他の95%に対して優位性を維持すべきだという前提は根本的に間違っている。

 アメリカ人が他の国々より本質的に本当に優れているのでなければ(実際はそうではないが)、世界を支配するには世界の人口の残り95%を分裂させ破壊するしかない。多くの点で、これが何世代にもわたる欧米諸国の世界覇権を特徴づけてきたものであり、今日ワシントンがやろうとしていることなのだ。

 それにもかかわらず、経済力と軍事力の面で世界が追いついてきたのは、まさにアメリカが本質的に優れているわけではないからだ。欧米の覇権は歴史上の例外で、欧米の優位性の証明ではない。経済力と軍事力の面で世界が追いつき、数でも優位に立ったことで、次の世紀は多極化した世界によって決まるだろう。

 この台頭しつつある多極世界では、それを生み出した要因、すなわち紛争より協力に基づく地政学的勢力均衡、利益より目的によって推進される産業やインフラや、闇雲な権力の追求よりも、実践的教育と勤勉によって築かれる進歩が、この新しい世界の基本原則としてしっかり定着されなければならない。

 多極化世界がアメリカの分断と破壊の試みを乗り越え、そもそも多極化した世界を生み出した原理に投資し続ければ、アメリカ製のいかなる超兵器もそれを克服できない。

 ブライアン・バーレティックはバンコクを拠点とする地政学研究者、ライター。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

 記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/09/03/us-seeks-super-weapons-to-reign-as-sole-superpower/

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 Judging Freedom
Pepe Escobar : Russia, China, and Global Cooperation  27:48

 植草一秀の『知られざる真実』
吉田晴美氏だけが消費税減税公約

 日刊IWJガイド
 「大手メディアが報じない『令和の米騒動』の真実! 大阪でコメ先物取引が始動直後に連日ストップ高を記録! 主食である米が投機対象に!」

■はじめに~大手メディアが報じないコメ不足と価格高騰の真実! 大阪でコメの先物取引「堂島コメ平均」が始動すると、連日ストップ高を記録! 山田正彦元農水相は、投機目当てのコメの買い占めで、米価が急騰し、死者まで出た大正7年の米騒動をあげ、「私達の大事な主食である米を絶対に投機の対象にしてはいけない」と批判! さらに補助金を払って減反政策を進める一方、1993年のWTOウルグアイ・ラウンドで決められた「アクセス米」を、義務でもないのに国内米価の2倍以上で米国から購入している事実を指摘し、「そのようなお金があるならすぐにでも食料備蓄を始めるべき」と、米国を利するだけの売国政治を批判!!

■9月になり、IWJの第15期も2ヶ月目に入りました! IWJの財政的状況は大ピンチです! 岩上安身の体調不良も、7月、8月と続き、たいへんご迷惑をおかけしました! 8月は31日間で、85件、156万2260円のご寄付・カンパをいただきました! 第14期の月間目標額は400万円で、仮にその目標額に当てはめると、39%どまり! 相当に厳しい状況です! 他方で、「IWJしか報じられない情報」が、激増しています! 岩上安身のコロナ感染以降、続く体調不良もあり、この週末も、岩上安身の体調不良で、発行が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。こうした時だからこそ、ぜひご支援をお願いいたします!

■<インターネット上の「言論の自由」と「検閲」(その5)>ブラジルがSNSのX(旧ツイッター)を禁止! ブラジルのアレクサンドル・デ・モラエス最高裁判事対イーロン・マスク氏の戦いの背後に何があるのか? ルラ大統領派がボルソナロ前大統領派の勢力拡大を阻止!?

2024年7月22日 (月)

宇宙を拠点とする戦争:問われるアメリカの優位性

2024年7月12日
ブライアン・バーレティック
New Eastern Outlook

 上空の戦場

 アメリカは冷戦中から21世紀最初の10年間で、全地球測位システム(GPS)による衛星航法や様々な偵察・通信衛星など、宇宙ベースの軍事能力において優位を確立した。これにより米軍は地球上のどこでも標的データを利用して部隊を調整できるようになった。

 衛星航法により、155mmエクスカリバー砲弾、HIMARSおよびM270から発射される誘導多連装ロケットシステム(GMLRS)ロケット、米軍戦闘機から投下される統合直接攻撃弾(JDAM)など、GPS誘導兵器の配備が実現した。

 GPSとデジタル・シーン・マッチング・エリア・コレレータ (DSMAC) と呼ばれるプロセスの両方を使用する長距離精密誘導兵器は、偵察衛星から提供される画像を利用して標的を見つけ、特定座標を取得して、兵器自体を誘導する。

 このような兵器は1990年代以降、アメリカの様々な戦争で使用され、大きな効果を発揮した。

 ソ連は独自の衛星航法システム、全地球航法衛星システム(GLONASS)を開発し、現在もロシア連邦はこれを採用しているが、このシステムの兵器誘導使用は比較的最近まで広く行われていなかった。大規模な使用は2015年以降シリアで確認され、最近では特別軍事作戦(SMO)で確認されている。

 公開情報によると、ソ連とロシアの偵察衛星は、アメリカの偵察衛星に比べて遙かに少ない数しか使用されていない。アメリカとロシアは、どちらも通信衛星を持っているが、6,000基を超える衛星からなる低軌道(LEO)インターネット衛星群「スターリンク」を持っているのはアメリカだけだ。

 スターリンクは、地球上のどこにでも低遅延のインターネット接続を提供する。スターリンクを使用する軍隊は、部隊同士の通信が可能になるだけでなく、従来の無線信号による伝送より遙かに優れた空中ドローンや海上ドローンなどの遠隔制御兵器の誘導が可能になる。スターリンクとの接続が維持されている限り、このようなドローンの航続距離は燃料や電気の充電量によってのみ制限される。

 これにより、今日の戦場でもアメリカと同盟諸国は優位に立っているが、こうした優位性は打ち消されており、ロシアだけでなく中国も同様の能力を開発している。

 対策

 こうしたアメリカ兵器は最近まで現代の戦闘を特徴づけており、多くの欧米専門家は戦場で比類のない優位性をアメリカと同盟諸国が享受していると信じていた。ソ連と当初ロシア連邦は宇宙ベースの能力を利用した精密誘導兵器の製造を優先していなかったが、両国ともこうした能力を利用したアメリカ-NATO兵器の危険性を認識し、対抗手段に多額投資を行った。

 その結果、ロシアは近代的な防空・ミサイル防衛システムや、様々な電子戦能力を開発し、どちらも世界最高レベルとみなされるようになった。

 アメリカ製GPS誘導兵器がウクライナ軍に移管されれば、ウクライナの「状況は一変する」と欧米の専門家は予測した。数週間の使用で、これら兵器の多くはロシアの迎撃能力やGPS信号の妨害により無力化され、標的を逸れた。

 2023年5月の「ロシアによるアメリカ提供のロケット・システム妨害がウクライナの戦争努力を複雑化」と題した記事で、ロシアの電子戦によりHIMARS発射のGMLRSが目標を外したとCNNは報じた。

 2024年5月の「ロシアの妨害によりウクライナでアメリカのハイテク兵器の一部が無効に」と題した記事で、空中投下されたJDAMや155mmエクスカリバー砲弾など、他のアメリカ製GPS誘導兵器も妨害されているとワシントンポスト紙は報じている。

 ロシアの妨害問題があまりにも深刻になり「ワシントンは故障率の高さを理由にエクスカリバー砲弾の提供を中止した」と記事は指摘している。

 ロシアはアメリカ製GPS誘導兵器を妨害する能力があり、ロシア軍に多大な防衛力を与えている。ロシアはまた、独自の衛星誘導兵器を開発し、現在では大規模に配備している。これにはトルネードS誘導ロケット、イスカンデル弾道ミサイル、様々な長距離巡航ミサイルやFAB爆弾シリーズと呼ばれるロシア版JDAM(弾薬250~3,000kg)が含まれる。

 ロシアは、衛星誘導兵器を妨害し、自国の同種兵器で対抗するだけでなく、ウクライナのアメリカ衛星通信ネットワークへのアクセスを妨害することにも成功している。これには、ロシアの妨害によって妨害されたスペースXの革新的なスターリンク・ネットワークも含まれると、2024年5月の「ロシア、新たな取り組みでウクライナのスターリンク・サービスを益々妨害」と題した記事でニューヨークタイムズは報じている。

 ウクライナのスターリンク使用の妨害について報じただけでなく、独自のスターリンク端末をロシアが保有し、ウクライナ軍が持っていた多くの優位性をロシア軍が享受できるようになっているともニューヨーク・タイムズ紙は報じた。

 「ゲームチェンジャー」となるはずだったアメリカの宇宙拠点能力に依存する兵器とネットワークは、ウクライナを極めて不利な立場に置いた。欧米諸国が共同で少量の高度に洗練された兵器とネットワークに投資した代償として、砲弾や装甲車など大量の安価な兵器に十分な投資ができず、ウクライナはどちらもほとんど手に入らなかった。

 アメリカと欧州は、これらのより単純だが依然として不可欠な武器や弾薬の面でロシア(および中国)に追いつくため軍事産業能力の再構築を試みる一方、ロシアと中国は高度な宇宙ベースの能力の面で追いつきつつある。

 ギャップを埋める

 ロシアと中国はともに、独自のLEOインターネット衛星群を展開する計画だ。両国は、偵察衛星増設にも投資している。特に中国は、欧米諸国を驚かせるほどの速度で差を縮めている。

 2024年3月号の「中国の衛星は急速に進歩している。人民解放軍は恩恵を受ける」という記事でエコノミスト誌は次のように報じている。

 
中国は過去10年間で運用中の衛星の数を大幅に増やし、現在合計600基を超えている。そのうち360基以上が情報収集・監視・偵察(ISR)衛星で、太陽光、赤外線、レーダーパルスの反射を利用して地球を観測する。中国のISR艦隊はアメリカに次ぐ規模で、その能力は世界市場で注目を集めている。最近、ウクライナの衛星画像をロシアの傭兵組織ワグナー・グループに提供した疑いで、アメリカは中国企業2社に制裁を科した。


 中国衛星の量と質は向上しており、幅広い経済的、軍事的用途が可能となっている。

 欧米諸国の企業と同様、衛星画像を顧客に提供している中国企業は、ロシア軍がウクライナが受け取っているのと同じ最新の画像を利用できるようにし、ISRの面で公平性を保つ一方、ロシアが遙かに大規模な長距離ミサイルとドローン兵器の優位性を活かして標的データをより有効に活用できるようにしているのかもしれない。

 ロシアは独自の宇宙ベースのISR機能を備えているが、高解像度の画像を撮影するLEO衛星は対象地域を短時間しか通過できず、同じ地域を再び通過するには時間が必要なため(衛星の軌道によって数時間から数日かかる場合もある)、ロシアが利用できる衛星の数が増えるほど、特定の地域からより頻繁に写真を受信できるようになる。

 また、静止軌道(GEO)にある中国衛星が太平洋を含む地球の広大な地域を「監視」し、アメリカの軍艦や他の船舶をリアルタイムで追跡できるともエコノミストは述べている。中国の宇宙能力が急速に成長していることを踏まえ、「その結果、宇宙における相互確証脆弱性の時代が到来するかもしれない」とエコノミストは結論付けている。

 これには、地球上の戦争を支援する宇宙ベースの能力だけでなく、軌道上の他国の宇宙ベースの能力を標的にできる能力も含まれる。

 軌道戦争

 アメリカ、ロシア、中国はいずれも、航空機または地上から発射された対衛星ミサイルのデモンストレーションを実施し、各国の古くて機能不全の衛星破壊に成功した。

 更にアメリカは、一度に数百日間軌道上に打ち上げ、1回のミッション中に軌道を数回変更し、地球に戻って修理され、再び打ち上げられる無人宇宙飛行機X-37を開発した。

 この宇宙飛行機の任務は機密扱いだが、他国の衛星を「検査」したり、標的衛星を無力化したり破壊したりできる兵器を搭載したりすることも可能だと推測されている。

 しかし、そのような能力を持つのはアメリカだけではない。中国の再使用型実験宇宙船も同様に打ち上げられ、長期間にわたり軌道上に留まり、軌道を変え、様々な積荷を運び、地球に戻って改修され、再利用される。理論上、アメリカのX-37が実行できるあらゆるミッションを実行できるはずだ。

 再利用可能な打ち上げシステム

 ロシアや中国がアメリカとの差を完全に埋められるかどうかは、いくつかの重要な能力にかかっている。アメリカがそれら能力をすべて保有できるのは、アメリカの伝統的航空宇宙大手であるロッキード、ボーイング、および両社の合弁企業であるユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)に勝る比較的新しい企業、スペースXのおかげだ。

 SpaceXの成功は、人類文明を多惑星にすることに重点を置いた同社の目的主導の哲学から生まれている。この目標を追求して、SpaceXは再利用可能なロケットに革命を起こし、経費を大幅削減しながら年間の打ち上げ頻度を大幅に増やした。

 ファルコン 9 ロケットはペイロードを軌道に打ち上げ、第1段のブースターは独自のロケット・エンジンの力で地球に帰還する。ブースターは回収され、検査され、1週間ほどで飛行再開可能だ。

 中国は現在、年間60回以上の軌道打ち上げを行っている。2020年と2021年には、中国の打ち上げ回数はアメリカを上回った。しかし、スペースXのファルコン9ロケットファミリーの成功と使用拡大により、アメリカは2022年と2023年に更に多くの打ち上げを実施しており、今年も中国を上回ると予想されている。

 ペイロードを迅速かつ安価に軌道に打ち上げる能力により、SpaceXはStarlink衛星群を構築できる。また、アメリカや他の顧客は、ほぼオンデマンドで衛星を打ち上げることも可能になる。

 将来、敵によって衛星が無力化または破壊される紛争が発生した場合、この能力により、アメリカは衛星が製造され次第、または戦略的に保管されている重要な衛星が準備され、ファルコン9ロケットに統合され次第、衛星を交換できるようになる。

 これは現在ロシアと中国が欠いている能力だ。再利用性は、SpaceXがアメリカ政府に提供している打ち上げ頻度と能力を達成するための鍵となる。

 ロシアと中国は再利用可能なロケットを開発している。ロシアのアムールロケットは、外見はスペースXのファルコン9に似ているが、最初の試験飛行までまだ何年もかかる。

 一方、中国には再使用型を含むロケット開発に携わる国有企業、民間企業が多数あり、2024年6月には中国航天科技集団傘下の上海航天技術研究院が直径3.8mの再使用型第1段ブースターの12km試験飛行を実施した。来年には実物大ロケットの試験飛行が予定されている。

 SpaceX がアメリカ政府に提供している機能は、組織的逸脱の結果だ。アメリカ政府と、外交政策と国内政策を支配する特別利益団体は、富と権力の蓄積を動機としている。ロッキード、ボーイング、および彼らの共同企業であるユナイテッド ローンチ アライアンスは、現代の典型的なアメリカのイノベーションと進歩をより正確に表している。ULA は昨年、3 機のロケットしか打ち上げなかった。この企業は、SpaceX が追求してきた広範囲にわたるイノベーションへの投資を避けることで利益を最大化している。SpaceX の急速なイノベーションは、アメリカ産業の大半が利益主導であるのに対し、SpaceX は目的主導であるため、アメリカ産業全体で再現できない。

 だからこそ、中国が目的志向の政策と産業を維持すれば、宇宙拠点の能力に関するアメリカとの差は、差が拡大する前に、最終的には中国に有利な形で縮まることになるだろう。

 民間企業と国有企業の組み合わせと目的志向の政治体制を組み合わせて、中国は、半導体生産、電気自動車、スマートフォンから造船、ミサイル、鉄道に至るまで、既にあらゆる分野で産業と技術の格差を埋める能力を発揮している。

 再使用型ロケットを中国が習得すれば、スターリンクを模倣した膨大な数の衛星群を軌道上に投入し、衛星を製造したり、打ち上げロケットに統合したり、できる限り早く交換する能力や、地球の経済圏や戦場上空の軌道上で必要とされる他の重要な能力が、中国にとって十分に手の届く範囲になるだろう。

 アメリカの優位性が経済や軍事の領域で他の分野でも損なわれてきたと同様に、宇宙での優位性も長くは続かないかもしれない。アメリカが他の全ての国々に対して建設的な役割を担うのではなく、持続不可能な覇権を追求する限り、ロシアや中国や他の多極化世界が地球上や上空で拡大を続ける一方、アメリカは財政面でも人的資源の不当な配分に苦しみ続けることになるだろう。

 ブライアン・バーレティックはバンコクを拠点とする地政学研究者、ライター。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/07/12/space-based-warfare-americas-dominance-challenged/

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 ブライアン・バーレティック youtubeで同じ話題を語っている。

Space-Based Warfare: America’s Dominance Challenged 36:13


益々使いにくくなるココログに辟易、というか追い出されたようなものだが、以後下記に移行する。

https://eigokiji.livedoor.blog/

 Alex Christoforou YouTube バイデン撤退。カマラを後継指名。

Biden out. Dems unite behind Kamala 5:01


東京新聞も号外。

 日刊IWJガイド
「ウクライナのネオナチ『アゾフ』が欧州資金集めツアーを開催! ドイツはナチスの反省も忘れ、ベルリンとハンブルクでトークショーを実施!」

7月17日付ロシア『RT』は、次のように報じています。

 「ウクライナ陸軍第3独立強襲旅団は、フェイスブックへの投稿で、7月下旬から8月上旬にかけて、ポーランド、ドイツ、オランダ、ベルギー、チェコ共和国、リトアニアの9都市を訪問すると発表した」。

 「投稿の1つには、『イベント参加者はウクライナ軍兵士と話をして、旅団での任務の真実を知り、前線での話を聞くことができる』と書かれていた」。

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