Tony Cartalucci/Brian Berletic

2026年10月 5日 (月)

多極主義に対する戦争が拡大するにつれ属国と自国を食い尽くすアメリカ

Brian Berletic
2026年9月29日
New Eastern Outlook

 ワシントンは多極化に対する戦争を拡大するにつれて欧米経済を兵器生産に転換し、属国を疲弊させ、自らの社会基盤を蝕んでいる。これは大英帝国の末期的軌跡の繰り返しだと言える。

 

 数十年にわたり、アメリカは多くの友好国を自国の軍事力、経済力、金融力、政治力の延長として利用し、欧米諸国と属国を、戦争、代理戦争、経済的強制に巻き込み、世界各地でのアメリカの行動に政治的正当性があるという幻想を作り出してきた。

 これらは全て大英帝国が戦争遂行と世界覇権維持のために植民地を利用してきた歴史の流れの延長線上にあり、第一次世界大戦と第二次世界大戦を通してその傾向は続いた。

 そして末期に国力が衰退するにつれ、大英帝国が植民地への依存度を高め、そこから血と財宝を搾取し、その過程で植民地を疲弊させ、破壊していったのと同様に、アメリカも多極化主義に対する戦争を、再興するロシア、台頭する中国や依然影響力を強めるイランと、その他の多くの国々に対し拡大するにつれ属国への依存度を高めている。

 アメリカが提案する世界覇権の維持方法は、多極化の増大する力と繁栄にアメリカが匹敵または凌駕するのではなく、台頭する多極化世界を不安定化させ弱体化させることに完全に依存している。

 イギリスが植民地全体に服従を促すために行政支配と政治的プロパガンダを組み合わせたのと同様、アメリカは属国を政治的に掌握し、未曽有の情報優位性を利用して、属国を戦争や代理戦争の態勢に誘導し、国内および現代の帝国全体における社会保障制度や経済的存続可能性を犠牲にして軍事力への支出を増やすことを正当化している。

 負担分担ネットワーク

 オバマ政権、トランプ政権(第1期)、バイデン政権や現在のトランプ政権(第2期)を通して、世界におけるアメリカ権力を強化するために、アメリカは政治的、経済的、軍事的同盟の組み合わせを益々積極的に導入してきた。

 これには「クアッド」や「AUKUS」、拡大を続けるNATO、ウクライナを中心とした欧州「有志連合」のような偽反米同盟や、カナダの欧州連合「準加盟」案など、あらゆるものが含まれる。これら取り決めは全て複数友好国にまたがる地域的影響力を活用するため行政手続きを効率化することを目的としており、同時に、これら標的国のできるだけ多くの人々を、アメリカ外交政策目標の標的に対し、これらの国を利用するのに賛同させるための政治的物語を作り上げている。

 クアッドとAUKUSは「中国の拡張主義」や「侵略」といった捏造された脅威を利用して、アジア太平洋地域の何百万人もの人々を騙して、国家開発から軍事費や中国との潜在的対立に増え続ける資源を振り向けさせている。

 いわゆる「有志連合」(2003年のアメリカによるイラク侵攻時に使われた用語を再利用したもの)と、カナダに提案されているEU準加盟は「ロシアによる侵攻」という脅威を捏造し、ワシントンがウクライナで継続している代理戦争のための資源を更に引き出すことを目的としている。

 西アジアにおいて、アメリカは、いわゆる「メッカ共同防衛協定」や「アブラハム合意」を利用して、地域の同盟国を結束させようとしている。これは、イスラエルを中心とした地域全体の緊張維持というアメリカ戦略を、数十年にわたって矛盾したプロパガンダで発信してきたにもかかわらずだ。

 意図的に作り出された国民の憎悪や恐怖は、ヨーロッパ、西アジアにまたがる相互に関連した紛争やアジア太平洋地域における緊張の高まりの中、世界中のアメリカ傀儡国家の資源と権力を統合しようとする様々な試みを推進するために利用されている。この過程の一環として、中南米からアフリカ大陸に至るまで、あらゆる場所で隣接する紛争も発生している。

 プロパガンダを取り除けば、非常に基本的な法則が浮かび上がってくる。これらの政治的連携はすべて、軍事費の増額と、アメリカ自身が製造した兵器、あるいは世界各地における米軍の相互運用性に関わる兵器への支出という、たった一つの共通目標を共有しているのだ。更に、これら連携を構成するアメリカ友好国(アメリカが主導して創設した国であれ、アメリカの行動に反対するふりをしている国であれ)の社会保障制度、経済発展、国家開発、更に政治的安定さえも犠牲にし、軍事費が増大しているのだ。

 この「負担分担ネットワーク」は21世紀の複数アメリカ政権下で形成されたが、それは単に、かつての大英帝国そのものの継続の上に成り立っているに過ぎない。「負担分担ネットワーク」という用語は、2025年のアメリカ国家安全保障戦略でそのまま導入され、大英帝国が世界権力の終焉に向けて自らの権力を維持するために必要としたのと同様、アメリカの過剰拡大を防ぐ手段として具体的に売り込まれた。

 属国を食い尽くし、自らの経済を食い尽くす

 中国の人口と産業基盤はアメリカと欧州を合わせたものを遥かに凌駕しており、更に中国が台頭する多極化世界の一環として構築しているパートナーのネットワークは拡大し続けているため、属国に対するアメリカの圧力拡大だけでは十分ではない。

 これが、アメリカが低迷する欧米経済を民生生産から兵器生産へと転換しようとしている理由だ。その例は、ヨーロッパ各地、そして今やアメリカでも、益々使われなくなった生産能力を兵器や弾薬の部品製造に転用する形で、欧米諸国ニュースの見出しに急速に現れている。

 欧米諸国は自らを「自由市場」社会と謳っているが、政治的宣言ではなく、社会政治的・経済的状況を巧みに操作し、民間生産を軍事産業生産へと強制的に転換させ「自由市場」を積極的に抑圧している。そうすることで、他に選択肢はほとんど残されていない。

 アメリカは、2014年のウクライナ政権転覆工作と、それに続くロシア国境沿いでのアメリカ侵略行為により、欧州経済を安価で豊富かつ安定したロシア・エネルギー供給から切り離すことに成功した。ロシア・エネルギー輸入を断つことで、アメリカは他のあらゆる経済活動を極めて高コストにし、欧州経済を軍事産業生産へと大きく転換させた。

ん  軍事産業の生産も同様に高額になるが、欧州各国政府はアメリカとの間で演出された芝居を用いて、ロシアによる存亡の危機という幻想と「ロシアの脅威」にアメリカから「見捨てられた」幻想を作り出し、実際の自由市場環境下では不可能だった規模の軍事産業生産への支出を可能にしている。

 トランプ政権とバイデン政権を含む近年のアメリカ政権は、アメリカの再工業化に向けた政策を宣言してきたが、教育改革、特に職業教育改革、国家インフラへの投資、主要産業の国有化など実際に再工業化に必要な政策は提案されたどころか、実施されたことすらない。

 その代わり、アメリカの巨額の税金が兵器産業やサプライチェーンの上流にある企業に流れ込み、武器や弾薬の生産拡大に充てられている。だが、これら企業は利益追求型であるため、実際の生産拡大に回される資金は最小限に抑えられている。

 アメリカの再工業化を約束した歴代政権はいずれも根本的問題に取り組んでこなかったため、自動車産業をはじめとするアメリカ産業全体が衰退の一途を辿っている。非効率で無能な企業が「自由市場」によって淘汰されるのを待つのではなく、企業はアメリカの税金を不正に利用し、益々使われなくなっている生産能力を自動車ではなく兵器部品製造に転用している。

 例えば、最近GMは、パトリオット・ミサイル外装ケース生産を誇らしげに発表した。GMは、通常試作品製作や金型製作に使われるものの、あまり活用されていないコンピュータ数値制御(CNC)加工装置を用いて、ロッキード・マーティンが同様設備に投資しなければ達成できないような量の外装ケースを生産している。

 腐敗した無能な企業が自らの貪欲さの重みで崩壊し、マルチ商法とでも言うべきものをできるだけ長く維持するため互いに結束していくように、アメリカでは「軍民融合」が形成されつつある。政府は絶え間ない戦争と、戦うための武器や弾薬に対する不必要な必要性を生み出し、アメリカ企業はそのために税金を自由に使うのだ。

 帝国が、末期的衰退期に経済運営を誤るのは決して目新しいことではない。大英帝国も、持続不可能な行為であることや、略奪的帝国から機能的で生産的な国民国家へと再編成する必要性を認めるのではなく、世界覇権を維持しようと必死になるあまり国家資源や産業を不正に流用した。

 そうすることで、イギリスは帝国を失っただけでなく、存続可能な国民国家を運営するための社会経済的、政治的基盤も失い、帝国崩壊後の全期間を、主権を持つイギリス国民国家としてではなく、アメリカ帝国の延長として過ごしてきた。

 アメリカは、かつての大英帝国と同様、この現実を認めようとしないことで、世界における覇権を永続させるための時間を稼いでいるに過ぎず、それを現実的に維持するための実行可能な計画を実際に策定しているわけではない。その過程で、機能的で生産的な国民国家に必要な基盤を著しく軽視しており、国民の足元を蝕むインフラ、利用しにくい教育や医療や、分断され、益々機能不全に陥る社会を生み出している。

 更に悪いことに、アメリカが提案する世界覇権の維持方法は、多極化世界の増大する力と繁栄に、アメリカが匹敵、あるいは凌駕するのではなく、台頭する多極化世界を不安定化させ、弱体化させることに完全に依存している。

 最終的結果として、アメリカは自らを空洞化させ、属国を搾り取る過程で世界の他の国々を弱体化させ不安定化させることになる。多極化体制がこの過程をうまく抑え込み、アメリカ覇権から世界の多極化への比較的安定した移行を管理できなければ、これら三つ全て破壊と困窮に陥る。

 この過程全体がどう展開していくのかは時が経たなければ分からない。双方の利害関係者は計画を提案し、それを世界舞台で実行に移している。歴史と持続可能な地政学的・経済的基盤を味方につけているのは、ウォール街やワシントンではない。とはいえ、破壊する方が築くよりも常に容易だ。従って、多極化は、アメリカが示してきた破壊力を凌駕するために驚異的な速さと規模で構築されなければならない。それぞれのやり方で、より優れた能力を発揮した方が、新たな、より良い世界秩序を確立するか、あるいは世界を破滅へと導くことになるだろう。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、ライター。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/09/29/us-cannibalizes-its-proxies-and-itself-as-war-on-multipolarism-expands/

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 しんぶん赤旗 一面  
 沖縄米兵を強殺容疑逮捕

 普天間基地海兵隊 30代女性殺害・財布奪取か

 綱紀粛正より基地撤去

2026年9月17日 (木)

姿を現しつつあるアメリカの「負担分担のネットワーク」

Brian Berletic
2026年9月15日
New Eastern Outlook

 2025年のアメリカ「国家安全保障戦略」文書は、アメリカがこれまで追求してきた世界覇権から脱却を図り、代わりに西半球に後退しつつ、従来のアメリカの侵略対象国と何らかの形で和解あるいは共存を図るアメリカ計画だと広く誤解されることになるだろう。

 

 長年にわたる「大国間競争」の一環として、ロシアや中国について直接言及された箇所が全くなかったと多くの専門家は主張した。

 だが文書全体を通して「敵対的で破壊的な影響力」といった用語は単に「ロシア」や「中国」の代わりとして用いられており、アメリカの外交政策目標を覆したり、そこから逸脱したりするどころか、その継続性を再確認しているに過ぎない。

 33ページにわたるこの文書には、ロシアや中国だけでなく、アメリカ覇権を阻害する他の全ての国々に対し、いかにしてアメリカが「大国間競争」を継続していくかに関する詳細説明が含まれている。

 このアメリカ戦略は、永続的覇権の維持というよりも、避けられない衰退に対する必死の賭けだ。多極化の台頭を阻止するため、属国諸国の資源や安定を犠牲にすることで、ワシントンとウォール街は自らの継続的衰退を招く要因そのものを加速させているのだ。

 「優先事項」と題された章には「負担分担と負担の転嫁」に関する方針が明記されており、そこでは下記の通り述べられている。  
「…アメリカは、我が政府を招集者および支援者として、負担分担ネットワークを組織する。この手法により、負担が確実に分担され、あらゆる取り組みが、より広範な正当性を得られるようになる。そのモデルは、経済的手段を用いて動機を整合させ、志を同じくする同盟国と負担を分担し、長期的安定の基盤となる改革を強く求める、的を絞った協力関係となる。この戦略的明確さにより、アメリカは敵対的かつ破壊的な影響力に効率的に対抗できるとともに、過去の取り組みを損なった過剰拡大や焦点分散を避けられる。」
 注目すべきは、他国を強制的にアメリカ権力と影響力の延長として利用するアメリカの「負担分担のネットワーク」導入は「全ての国が国益を第一に考え、主権を守るのは自然で正当なことだ」と主張する「国家の優位性」と題された章の後に続くため、完全な矛盾が生じている点だ。

 だが、それはアメリカが「国家の優位性」を、国際法上の義務から、アメリカ自身(そしてアメリカのみ)を免責する手段としてではなく、全ての国に適用される一般原則として議論したと仮定した場合に限られる。

 アメリカが主張する「長期的安定」のために「動機を一致させる」ための「経済的手段」や「改革を強要する」脅しは、明らかに、各国をアメリカの外交政策目標に奉仕させ、特に、これらの国々の客観的な最善の利益を犠牲にしてでも、アメリカ覇権を維持するための強制の婉曲表現だ。

 負担分担のネットワーク実践

 この「負担分担ネットワーク」の最も露骨な具体例の一つは、実は国家安全保障戦略文書が公表される数ヶ月前に既に公式発表されていた。2025年2月、ピート・ヘグセス国防長官は、自身が「ウクライナの差し迫った安全保障上のニーズ」および「欧州の長期的な防衛・抑止目標」と呼ぶものに対し、欧州が「一層の努力を払い、改めて誓約する」よう公式に要求した。

 トランプ新政権下のアメリカは、ウクライナで続く戦争を終わらせようとしているか、あるいはそこから距離を置こうとしていると一般市民や専門家の多くが依然信じていた時期に、ウクライナに対するアメリカ政策のいかなる変化も、彼が「役割分担」と呼ぶものに過ぎないことをヘグセス戦争省長官が明らかにした。欧州と太平洋におけるアメリカの国益と、同盟諸国から更なる資源を引き出さなければ両方は追求できないという現実的制約との間の「役割分担」だ。

 こうした指令で、軍事費を各国GDPの2%から5%に拡大するようヘグセス国防長官は欧州各国に強く主張した。欧州諸国はこれに素直に従った(例えば、イギリス、ドイツ、フランス)。

 更にヘグセス長官は以下のことを明確に要求している。  
「つまり、より多くの弾薬と兵器を寄贈すること、比較優位を活用すること、防衛産業基盤を拡大すること、そして何よりも重要なのは、ヨーロッパが直面している脅威について国民に正直に伝えることだ。」

 その一環として、この脅威に対処するには防衛費を増額するしかないという点を、国民と率直に話し合うことが挙げられる。
 ヨーロッパ大陸全体で軍事費増加が非常に不評なため、ワシントンの「負担分担のネットワーク」構築と活用には「ヨーロッパが直面する脅威」を作り出し、売り込むことが不可欠だ。この脅威は、ロシア連邦と、その同盟諸国および協力諸国(中国、イラン、北朝鮮)に関する捏造された主張で描かれるだけでなく、ロシアと、そのいわゆる「侵略」で、ヨーロッパをアメリカが「見捨てる」という恫喝も加わる。

 米欧関係は「分業」だとヘグセス国防長官は公式に認め、後に2025年国家安全保障戦略で「負担分担のネットワーク」として更に詳しく説明し、アメリカが「過去の取り組みを損なった過剰拡大や焦点分散を避けつつ、敵対的かつ破壊的な勢力に効率的に対抗できる」ようにした。

 ウクライナ戦争は、ロシアに対してアメリカが仕掛けた代理戦争として始まり、現在もそのまま続いている。この代理戦争は、まずアメリカが2014年にウクライナを政治的に掌握し、次にロシア国境沿いのウクライナ軍事・情報機関を支配下に置き、利用したことから始まった。そして2022年以降「ウクライナ」指揮系統の最上位に位置する在ドイツ米軍基地から対ロシア戦争を指揮している。これには、ロシア領内のエネルギー・インフラに対する攻撃やロシア・エネルギーを輸出する船舶へのドローン攻撃の指揮も含まれる。

 欧米メディアが主張する米欧「分裂」という物語を信じるなら、アメリカがヨーロッパを「見捨て」更にウクライナでの対ロシア代理戦争さえ放棄したと信じなければならない。だが、それは、在ドイツ軍事基地からアメリカがウクライナでの戦争を指揮し、ウクライナに直接武器供給しているだけでなく、ウクライナへの引き渡しを目的とした武器をヨーロッパにも供給している事実を無視することになる。

 また、アメリカは代理戦争を放棄しているわけではなく、単に「負担の分担ネットワーク」を稼働させ、2025年2月に策定された米欧間の「役割分担」を実行しているに過ぎないとピート・ヘグセス国防長官が認めた事実も無視することになるはずだ。

 負担分担のネットワーク:サウジ支部

 その後カナダがウクライナと100年協定を締結し、アメリカ代理戦争への関与を言葉の上で確固たるものにしたアメリカ・カナダ間でも同様の茶番劇は行われている。

 更に最近、サウジアラビアがドナルド・トランプ大統領に電話をかけて、最近の隣国イエメン南西沿岸部でのアンサール・アッラー進攻に対する軍事支援を要請したとされている。欧米メディアが連日繰り広げる政治騒ぎの中、アメリカはリヤドの要請を拒否したと報じられている。

 実際には、サウジアラビアのイエメン介入は、名目上はともかく、事実上、アメリカの戦争で、アメリカの広範な対イラン戦争の一部でもある。

 何十年にもわたり、サウジアラビアの軍事力をアメリカは強化してきた。

 サウジアラビアによるイエメン標的攻撃は、長年にわたり、アメリカの請負業者に整備され、アメリカ弾薬を搭載し、アメリカの情報、監視、偵察で標的に誘導されるアメリカ製戦闘機により実行されてきた。これらの情報は、戦場上空のアメリカ航空機だけでなく、イエメンの戦場で活動するアメリカ特殊部隊に収集されたものでもある。

 サウジアラビアからの軍事支援要請をドナルド・トランプ大統領が公式に拒否したにもかかわらず、サウジアラビアの対イエメン作戦へのISR(情報収集・監視・偵察)支援をアメリカは拡大していると報じられている。

 アンサールアッラー攻勢が、サウジアラビアの国家安全保障および地域全体の経済的安定に対する存亡を脅かす脅威であるかのようにサウジアラビア・メディアで描かれているが、これは、イエメンおよびイエメンのイラン同盟者に対する、過去も現在も続くアメリカによる代理戦争を継続・拡大するのに必要な軍事費(財力と人命両面)を国民に受け入れさせるための企みだ。

 アメリカと欧州の「決裂」や、最近のアメリカとカナダの「対立」と同様、 イエメンでの本質的にアメリカによる代理戦争の最中、アメリカがサウジアラビアを「見捨てた」とされる事態は、単にリヤド政権が自国民に対して、彼らが直面している「脅威」について「正直に説明」し、ワシントンの「負担分担ネットワーク」の一環としてサウジ社会に要求される「防衛費増額」や他の不人気な犠牲を正当化するための口実として利用されているに過ぎない。

 西アジア全域(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタールなどのアメリカ友好諸国を含む)からのエネルギー輸出をアメリカが意図的に妨害する一方、これらの国々にメリカ兵器の大量購入を要求し、そのために地域全体の社会保障プログラムを削減するとなると、国内の不安定化を避けるために十分な政治的言説と支配が必要になる。

 属国諸国の共食い

 何十年にもわたり、自国の政治的、経済的、軍事的権力の延長として、世界的属国ネットワークをアメリカは利用してきた。ロシアが再び台頭し、中国が勢力を拡大し、アメリカが不正に獲得し濫用してきた世界権力を多極化世界が脅かし続ける中、アメリカはこれら属国諸国を更に締め付ける必要に迫られるだろう。

 2025年のアメリカ国家安全保障戦略は、これまで以上に多くの資源をアメリカ友好諸国から搾取するための「負担分担のネットワーク」を公然と提唱しているが、2025年初頭にピート・ヘグセス国防長官が欧州に向けて発した指令で示された通り、そのためには彼らが直面する十分な「脅威」をアメリカ友好諸国国民に納得させる必要がある。

 架空の「ロシアによる欧州侵攻」やサウジアラビアに対する「アンサラッラーによるミサイル攻撃」といった話でさえ、アメリカ属国諸国の人々をパニックに陥らせ、社会福祉制度や共同体の未来を、衰えつつあるアメリカ世界覇権維持のために犠牲にさせるのに不十分なら、おそらく、そもそもアメリカが巻き込んだ代理戦争の最中に、アメリカが自らの代理勢力を見捨てるという脅威で十分だろう。

 アメリカとその属国諸国との間に亀裂が生じつつあるという政治的茶番劇が繰り広げられているにもかかわらず、アメリカ属国諸国は、冷戦終結後、かつてないほど軍事力強化に巨額支出を行っている。具体的には、アメリカから追加兵器を購入するか、あるいは社会福祉への公的支出を軍事産業への生産に振り向けて、世界中で続くアメリカの戦争や代理戦争を支援している。

 皮肉にも、アメリカ同盟諸国政府は、ロシア、中国、イランなどの国々を平和、安定、繁栄に対する「脅威」だと非難しているが、実際は、アメリカへの従属と、アメリカの戦争や代理戦争への従順な参加こそが各国経済を破壊し国民生活を破滅させているのだ。

 そして、アメリカはこの「負担分担ネットワーク」を通じて、属国諸国への締め付けを加速させているが、その手法のいかなる点も持続可能なものではない。アメリカの戦略は、自国に残された力を駆使し、代理勢力を徹底的に搾り尽くすことで、多極世界が定着し、世界中でワシントンやウォール街の不当な影響力を排除する前に、多極世界の台頭を阻止しようとしているように見える。

 このアメリカ戦略は、覇権の永続的維持というよりも、避けられない衰退に対する必死の賭けだ。多極化の台頭を阻止するために、属国諸国の資源や安定を犠牲にすることで、ワシントンとウォール街は自らの継続的衰退を招く要因自体を加速させているのだ。

 この戦略を維持するためにアメリカが用いる政治茶番劇に惑わされるのではなく、アメリカやその属国に暮らす人々は、アメリカが「負担分担のネットワーク」を通じてこれらの属国を道連れにして崩壊させる前に、多極化世界へ手を差し伸べ、つながりの構築に努めなければならない。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/09/15/the-us-burden-sharing-network-takes-shape/

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 ジェフリー・サックス教授がトランプを激しく長時間批判。
Jeffrey Sachs Live: 'Very Dangerous Person', Jeffrey Sachs Launches Scathing Attack on Trump 6:10:40
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
最新の世論調査で、トランプ氏は危険人物で腐敗と大多数が判断(アクシオス)%、腐敗:該当53、該当しない23%、危険:該当51。該当しない。23、 残酷:該当46、非該当25、知的:該当35、非該当37、刺激を与える:該当19、非該当40

2026年8月19日 (水)

「アメリカ軍産複合体の最悪部分を『ハイパースケール化』する」アンドゥリル社

Brian Berletic
2026年8月13日
Newe Eastern Outlook

 億万長者のパーマー・ラッキー率いる兵器製造の「新興企業」アンドゥリルは、レイセオン、ロッキード、ボーイングといった従来のアメリカ兵器企業の、より小規模で効率的なバージョンに急速に変貌を遂げた。これは、捏造された脅威と巧妙な約束に基づき、数十億ドルもの税金を民間企業に効率的に移転させる新たなモデルだが、最終的には、誤った国民の期待を大きく裏切る結果となった。

 

 ラッキーとアンドゥリルは「ソフトウェア定義生産」といった概念を用いて、ロシアや中国の軍事産業生産と同等かそれ以上の規模で生産を「ハイパースケール化」すると誓っているが、中国の工場が既に長年にわたり、中国の圧倒的に大規模な産業基盤の中で取り入れている過程であるにもかかわらず、実際「ハイパースケール化」されているのは戦争プロパガンダと、それに伴う戦争利得だけだ。

 アメリカの既存大企業より「優れている」ものの、ロシアや中国には及ばない

 確かにアンドゥリル社は、従来のアメリカ兵器メーカーが製造する兵器に比べて遙かに低価格の兵器を開発しているかもしれないが、その品質、量、コスト削減の面ではロシアの同等品に及ばず、中国の軍事産業能力には遠く及ばない。

 アメリカはイランを実際に爆撃し、ウクライナを介してロシア国内で代理戦争を繰り広げているにもかかわらず、ロシアもイランも(中国も)アメリカ国内を攻撃したことは一度もない。

 アンドゥリル巡航ミサイルはレイセオン社製のものより安価だと言えるかもしれないが、射程距離や破壊力において、レイセオン社のミサイルに遠く及ばない。

 破られた数々のアンドゥリルの約束は、アメリカが海外で起こした数々の侵略戦争の戦場で白日の下に晒されてきた。

 戦場に革命をもたらすと謳われたアンドゥリル社のドローンは、既にウクライナに送られたものの、ロシア製ドローンの量と質に圧倒され、更に急速に進化するロシアの電子戦能力により、アンドゥリル社のドローンはまたしても高価で性能の低い兵器に変貌してしまった。

 ウォール・ストリート・ジャーナルは2025年後半の記事で下記のように認めている。  
アンドゥリル唯一の実戦経験であるウクライナでの運用も、敵の妨害電波に対する脆弱性など、様々な問題に悩まされてきたと元従業員やウクライナ・システムに詳しい関係者は述べている。例えば、ウクライナ保安庁(SBU)の最前線兵士の中には、アルティウス徘徊型ドローンが墜落し、目標に命中させられなかった者もいた。関係者によると、ドローンは問題が多発したため、2024年に使用中止し、それ以降配備されていないという。
 アンドゥリル社が開発中のその他の製品には「手頃な価格で大量生産可能な」巡航ミサイル「バラクーダ」シリーズが含まれる。既に「量産体制に入っている」とされているものの、2027年から年間約1,000発納入される見込みだ。

 バラクーダ500型は、同シリーズ中、最も射程が長く、射程930km、速度930km/時を誇るミサイルだが、弾頭重量は僅か45kgだ。

 このミサイルはまだ納入されていないが、ロシアが戦場で使用している様々な「手頃な価格の大量生産型」ミサイルや徘徊型弾薬、例えばゲラン系列の徘徊型弾薬などと比べても性能は遙かに劣っている。

 そのプロペラ駆動型は、バラクーダ500より射程が長く、より重い弾頭を搭載できる。

 ゲラン・ファミリーには、ジェット・エンジンを搭載した派生型もいくつかあり、その中にはゲラン5が含まれる。ゲラン5は、最大航続距離1,000km、速度450~600km/hで、90kgの弾頭(バラクーダ500の2倍)を搭載できる。

 これら派生型は全てアンドゥリル社の同等バラクーダ・ミサイルより遙かに安価だ。

 ロシアは他にも、バンデロール、Kh-69、イズデリエ-30巡航ミサイルなど、様々な「手頃な価格で大量生産可能な」兵器を開発してきた。これらは全て、アンドゥリル・バラクーダの様々な派生型の性能と同等かそれ以上で、しかも全てアンドゥリルの同等機種より安価だ。

 言い換えれば、ロシアだけが、戦場内外でアンドゥリルが宣伝で約束した性能に匹敵するか、それを上回る「手頃な価格の量産型」兵器を生産したのだ。

 アメリカの欠点は構造的なもの。

 アンドゥリルは、より根深い問題の単なる症状に過ぎない。

 アメリカの経済・政治体制の根本的特徴と、それが助長する営利主義と、莫大な軍事費増額を正当化するために用いられる脅威の空虚さが相まって、アメリカが目指す「手頃な価格の大量生産」は、ロッキード、レイセオン、ボーイングなどのアメリカ企業と比較した場合にのみ「手頃な価格」で、ロシアや中国で、より多く、より良く、より安価な兵器を大量生産している国営企業と比較した場合、そうではないことが明らかになった。

 アンドゥリアルをはじめとする西側諸国の「新興」企業は、欧米諸国の兵器製造にそもそもなぜ欠陥が存在するのかという一般の人々の無知につけこむマーケティング戦略を通じて、ロシアや中国の軍事産業生産に匹敵、あるいはそれを上回ると約束している。

 アメリカ覇権の基盤となっている経済・政治体制は、永続的利益と権力の追求に基づいている。軍事産業の生産拡大は権力増強の重要な前提条件ではあるが、永続的利益を犠牲にしてまでそれを行うことは、アメリカとその代理勢力が、ロシアや中国が武器や弾薬の開発・大量生産に用いる目的志向型の国営企業ネットワークに匹敵する規模に達するのを阻止する。たとえ利益を犠牲にしてでも、こうしたネットワークを構築することは不可能なのだ。

 ロシアと中国の軍事産業生産を監督する国営企業は、設計局と産業企業の間で「知的財産」を交換することが義務付けられており、あらゆる問題に対する最良の解決策がそれぞれの軍事産業基盤全体に普及するようにしている。これは個々の企業が財務帳簿上の利益を最大化するために「知的財産」を独占するのではなく、これら解決策を現実世界の目的に最大限活用するためだ。

 ロッキード、ボーイング、レイセオンといった既存の大手兵器製造企業と、アンドゥリルなどの「シリコンバレー新興企業」両方を含むアメリカ軍事産業基盤全体で兵器と弾薬生産を加速させるよう求める最近の政治的圧力は更なる資金提供の要求と結びついている。

 こうした更なる資金援助要求は、ロシア、中国、イランといった国々がアメリカに及ぼすとされる「脅威」によって正当化されているが、これはアンドゥリルを含む兵器製造企業自身が繰り返している嘘だ。

 これら実際の脅威は、漠然としたものから完全に捏造されたものまで多岐にわたるが、動機は、より具体的で、より大きな「安全」という幻想のために、より大きな利益を得ることなのだ。

 アメリカは既にロシア、中国、イランを合わせたより多くの軍事費を費やしているにもかかわらず、ロシアや中国の軍事産業生産にすら及ばず、場合によっては、イランの生産率や能力にも及ばない。

 ロシア、中国、イランの場合、追加軍事資金は、既存工場の拡張、新規工場の建設、研究開発への投資、サプライチェーンの強化、労働力増強や、実際の生産拡大に必要なその他の要素に直ちに充てられる。目的別システムにおける追加生産能力は、たとえ短期的に収益性を損なうとしても、たとえ使用されなくとも、長期的戦略的資産とみなされる。

 営利企業では、兵器製造、ひいては利益創出に継続的に活用されない余剰製造能力は負債とみなされる。アメリカ兵器企業は、生産拡大のために公的資金を要求するだけでなく、その能力を最大限に活用するための厳格な契約も要求する。

 アンドゥリルなどの「新興企業」は、兵器の研究開発と製造の両方で革命を起こしたと主張しているが、実際はどちらも実現しておらず、既存の経費削減策(例えば、既製部品を使用するなど)を利用して、高度にカスタマイズされた(そして高価な)部品で供給される従来型組み立てラインに依然依存している既存企業よりも比較的安価な兵器を製造しているに過ぎない。

 このことがいかに非現実的かは、一兆ドルを超えるアメリカ軍事予算と軍事産業生産量との間に既に存在する大きな格差と、その僅か10%に過ぎないロシア軍事予算だけで、アメリカの3~10倍もの武器弾薬を生産している事実を見れば明らかだ。中国の軍事産業生産量は言うまでもない。

 昨年同様、「新興」企業アンドゥリルと、その指導者パー​​マー・ラッキーなどの人物の本質は、アンドゥリルをはじめとする欧米諸国の営利目的の軍事産業基盤が、ロシアや中国の軍事産業生産量に匹敵するどころか、それを超えることさえ阻んでいる。ウクライナでの紛争が続く中、明らかになったこの事実は、アンドゥリルとラッキーがそれを理解しているか否か、あるいは認めたがっているか否かにかかわらず、彼らの利益追求の本当の動機を反映している。

 ラッキーの主張に説得されて、ロシアか中国どちらかが自分や自分の生活様式にとって本当に差し迫った脅威だと信じ込んでいるアメリカ人にとって、実際は、パルマー・ラッキー社やアンドゥリル社や、彼らのような企業や個人こそ、アメリカが国内の繁栄に必要な資源を、不必要に他国を敵視し、威圧する活動に転用し続けるよう要求しているのだ。

 その結果、アメリカ国民の富は、平均的アメリカ人の男性、女性、子どものためのより良い教育や医療やインフラ整備ではなく、パーマー・ラッキーの高価な兵器や、最終的には彼の次の新たな商売に流れていくことになる。

 アメリカはイランを爆撃し、ウクライナを通じてロシア国内で代理戦争を繰り広げているにもかかわらず、ロシアもイランも(中国も)アメリカ本土を攻撃したことは一度もない。だが、同じアメリカ国内での、教育や医療やインフラ整備の怠慢は、一般アメリカ人の生活の質を明らかに具体的に低下させている。

 アンドゥリル社のような企業が、ありもしない海外の脅威のために税金を流用し、アメリカ国内に存在しているアメリカ国民への脅威に対処するための資金を奪っていることが、この事態の問題なのだ。

 結局、パルマー・ラッキー社やアンドゥリル社や、その他の兵器製造業者やアメリカ外交政策を推進する営利企業は、虚構の中で、ロシアや中国がもたらすとされる脅威より、平均的アメリカ人とその生活様式にとって現実に遥かに大きな脅威になっている。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/08/13/anduril-hyperscaling-the-worst-of-americas-military-industrial-complex/

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 Brian Berletic氏、彼のYoutube番組The New Atlasでも本記事と同じ話題を語っている。33:17

US Shell Factory Exposed: Why US For-Profit Industry Can't Compete with Russian/Chinese Production
 東京新聞 朝刊 三面 総合  
 トランプ氏、オマーン威嚇

 イラン交渉「邪魔したら爆撃」

2026年7月 9日 (木)

続くアメリカの対イラン戦争

Brian Berletic
2026年7月3日
New Eastern Outlook

 イランとの間で最近締結した「了解覚書」(MOU)に関し、アメリカは外交ごっこを続けており、署名後すぐに、アメリカが違反し、再交渉し、そして再び合意されたとされている。これは全面戦争の一時停止を利用して、必然的に起きる次の大規模攻撃に備えて、戦場を慎重に形成するためだ。

 

 一方、イランと同盟国に対して、アメリカは地域全体で恣意的攻撃を続けている。

 この過程は、外交自体が、戦争を防ぐ手段としてではなく、対イラン戦争の口実を作り出すために利用されることを認めて、長年アメリカ政策で展開されておいる。

 いわゆる「核合意」(包括的共同行動計画、JCPOA)違反や2025年から2026年にかけてアメリカ・イラン「交渉」中に、立て続けに行った米軍による二度の首脳部攻撃など、外交過程を意図的に裏切る数々の事例を通じてアメリカはこの政策を実行してきた。

 こうしたアメリカの二枚舌の最新章は、数十年にわたる西アジアを標的とする戦争に続くもので、アメリカは、この地域に支配を押し付け、イランだけでなく、イラン同盟国ネットワークをも標的とする干渉やテロ、軍事侵略を通じて、イランを徐々に包囲し孤立させている。

 イランの地域同盟国ネットワークが国家安全保障政策の要であることをアメリカ政策文書は長年指摘しており、防衛力や報復能力の観点から具体的に説明することさえある。

 この移行に必要な努力とエネルギーを受け止める準備が、世界にできているのか、それとも自己満足と近視眼的考え方が蔓延し、アメリカが権力と権益追求を続け、海外のみならずだ国内の多くのアメリカ人さえ犠牲にするのかは時間が経たなければ分からない。

 そのような論文の一つ、ランド研究所の2009年論文「Dangerous But Not Omnipotent: Exploring the Reach and Limitations of Iranian Power in the Middle East(危険だが全能ではない:中東におけるイランの影響力の範囲と限界を探る)」の「Iran Pursues a Multifaceted Regional Strategy Marked by Strengths and Limitations(強みと限界を特徴とする多面的あ地域戦略をイランは追求している)」という章で、下記のように説明されている。  
「イランの通常戦力は脆弱だ。耐え難い損害を侵略者に与える非対称的な国土防衛戦略への転換をイラン指導者たちは長年声高に主張している。この戦略の多くは『モザイク防衛』、ゲリラ戦や、バシジ民兵動員といった概念に基づいている。」
 そして、さらに  
「いわゆる代理勢力に対して、イランには限られた影響力しかない。従来型軍事力の劣勢を補うため、様々な非国家イスラム主義集団に、長年、財政的・軍事的支援をイランは提供してきた。革命防衛隊の教義によれば、この「周辺戦略」は、イランの国土防衛に戦略的深みを与え、敵陣深くまで戦いを仕掛けることを目的にしている。ハマスやヒズボラの場合、この戦略は、現状維持主義的政権運営に不満を抱くアラブ諸国の人々の間で、イランに正当性を与えることにも繋がっている。事実上、テヘランはパレスチナ問題などにおいて「アラブ人以上にアラブ的な」姿勢を示している。」

 イラクとレバノンの主要シーア派武装勢力を支援して、イランは一定の相互主義的対応を期待している可能性がある。特にアメリカによる攻撃が発生した場合、報復手段として、これら勢力が躊躇なく行動するのをイランが期待している可能性がある。
 従って、レバノンのヒズボラ、イエメンのアンサール・アッラー、あるいはイラクの人民動員部隊といった組織に対するイランの支援は、本質的には防衛的なもので、アメリカがイランに対する侵略戦争をアメリカ国民や世界中の世論に売り込む過程で、アメリカの政治演出で描写するような、非合理で攻撃的で、拡張主義的な強制政策や、更には「テロ」などでないことをアメリカ政策立案者は十分認識している。

 これはまた、イラン自身を孤立させ弱体化させるためには、まずイランが地域全体に構築してきた戦略的奥行きを弱体化させるか、完全排除する必要があることをアメリカ政策立案者たちが強く認識していることを意味する。

 そして、これこそが、まさに、少なくとも過去26年、レバノン、イエメン、イラクや、シリアにおけるアメリカの戦争、占領、代理戦争も含む、イランに関するアメリカの地域政策を推進してきた原動力だ。

 また継続的な対イラン攻撃の核心にも、それが存在している。「失敗した政権転覆」戦争だと多くの人は誤解しているが、実際は、同時に地域を遙かに超えてアメリカ政策を推進しながら、イランと地域における同盟関係を徐々に弱体化さているのだ。

 21世紀を通じて、アメリカはイランの同盟国を直接攻撃したり、あるいはペルシャ湾岸諸国やトルコの代理勢力など、イスラエルや過激派組織を含む地域代理勢力ネットワークを通して攻撃したりしてきた。2006年にアメリカが支援したイスラエルによるレバノン侵略戦争と、今年再び行われた侵攻は、結果がまちまちだった対イエメン戦争と、2024年にイランの親密な同盟国シリアを最終的に転覆した出来事を挟む形になっている。

 2000年から2026年までの地域地図を見ると、イランの同盟ネットワークをアメリカが徐々に包囲・排除し、今やイラン自体に直接戦争を仕掛けていることがわかる。

 こうした現実こそが、アメリカ・イラン間停戦には、地域におけるイランの同盟勢力、特にレバノンのヒズボラに対する停戦も含まれるべきだとイランが主張した理由だ。また、アメリカがイスラエルを通じて、レバノンのヒズボラに対する侵略戦争を継続した際、イランが覚書の一部条項を停止したのも、おそらくこうした理由からだ。

 それ以下の対応では、イランに対する「凍結された戦線」をアメリカに提供することに等しい。つまり、アメリカが軍備を再整備し、部隊や戦略を再編成するのを可能にする一方、地域におけるイランの非対称防衛戦略を徐々に弱体化させ続け、最終的に、近未来から中期的将来に、アメリカがイランに対し行うだろう避けられない大規模戦争に先立ち、アメリカに更なる優位性を与えることになる。

 悪質な戦争を遂行しながら平和を装う

 額面通りに受け取れば、そもそもアメリカがイランに要求を突きつけるという考え方は国際法に反する。北半球・西半球の北米に位置し、イランや(中東とも呼ばれる)西アジアから数千キロ離れたアメリカには、西アジアやイランに関して正当な権益や「国家安全保障」上の懸念は一切ない。

 アメリカは「エネルギーは自給自足」だと自慢するのは、西アジア情勢が何らかの形でアメリカの正当な権益につながるというアメリカのあらゆる主張を更に弱めるだけだ。

 「47年間」イランがアメリカ人を標的に殺害してきたという主張は、それらのアメリカ人が度重なる違法攻撃や占領や他地域での、いわれがなく弁解の余地がない軍事介入で、アメリカ本土よりイランに近い場所で活動していたアメリカ軍兵士だった事実を無視している。

 違法な侵略戦争を開始するためのあらゆるアメリカの口実と同様、これら攻撃の責任がイランにあるという実際の「証拠」は乏しい。

 同様に、ドナルド・トランプ大統領に対する暗殺未遂事件の背後に「イラン」がいたという主張も根拠のないものだ。これは容疑者とされる人物が、イランから指示を受けて暗殺を実行したと主張していることに基づいているが、これら主張が真実だと示す実際の証拠は存在しない。

 今や意図的に捏造された虚偽の口実に基づいていたことが認められている対イラク制裁や、弱体化工作、内部分裂工作や、最終的に侵攻と占領を再現するかのように、アメリカは自国本土から地球半分も離れた西アジアで、正当な根拠のない違法占領と支配を拡大しようとしており、真の狙いを隠そうとする努力はほとんど見られない。

 イランがアメリカ人を「殺害」し「核兵器」を追求しているという主張を、アメリカ政治家や政策立案者は繰り返すが、イランを従属させたり打倒したりするのは、中国を包囲・封じ込めるアメリカの狙いと、現在のアメリカ主導の一極世界秩序に代わるものとして中国や同盟諸国が提案する多極世界秩序を解体する狙いに直接資するという公然の認識が高まっている。

 イランと西アジアを超えて:アジアにおけるエネルギー支配

 西アジアを支配すれば、中国や他のアジア諸国へのエネルギー輸出をアメリカが抑制できるようになり、エネルギー輸入量の最大半分を代替するために中国は奔走せざるを得なくなり、他のアジア諸国は、アメリカへのエネルギー依存度を高めることになる。

 不安定な覚書の下、イラン港湾に対する独自封鎖をアメリカは解除し、イランのエネルギー輸出に対する制裁も解除するとされている。これは中国やアジアの他の国々に対する封鎖からの「撤退」だと解釈したくなるかもしれないが、ペルシャ湾における全エネルギー生産の18~20%が、アメリカのイラン侵略戦争によって混乱または破壊されており、復旧には数週間、数ヶ月、場合によっては一年以上かかることを指摘しておくべきだ。

 たとえ現在の覚書のあらゆる点が遵守されたにせよ、これだけでも2026年2月のアメリカの戦争で引き起こされたエネルギー危機の深刻化を助長し続けるはずだ。ワシントンはいつでも、自ら、あるいはイスラエル代理勢力を通じて、紛争を再燃させ、混乱または破壊された18~20%のエネルギー生産を再開させるためのあらゆる進展を攻撃し、覆せるのだ。あるいは地域全体に更に大きな混乱や破壊をもたらす可能性もある。

 アメリカは、イラン港湾に対する封鎖を縮小すると発表する一方、キューバに対する封鎖や、ロシアのエネルギー輸出を標的とする欧州海軍による継続的阻止作戦や、ウクライナによるとされてはいるものの、アメリカ情報機関と軍に組織・監督されているとニューヨーク・タイムズが認めたロシア船舶への海上ドローン攻撃などを通じて、世界各地で海上輸送を妨害し続けている。

 またしても、ワシントンが望む時に、いつでも、イランの海上輸送が再び標的にされ、妨害される可能性がある。その規模は以前と同程度かもしれないし、今年に入ってから、これまでよりも更に攻撃的な規模になるかもしれない。

 ペルシャ湾のホルムズ海峡から、アジア太平洋地域のマラッカ海峡までのあらゆる海域で船舶を拿捕する能力だけでなく、米軍艦艇から発射される対艦ミサイルや、同地域で活動する米軍機から発射されるミサイルを用いて、イランの対空・対艦能力の射程圏外にある船舶を標的として無力化する能力もアメリカは実証した。アメリカが望めば、臨検部隊による拿捕数を増やす能力がなくても、標的にして無力化する船舶の数を増やすのは容易に可能だ。

 地域全体のエネルギー生産をどの程度混乱させ、あるいは破壊したか、また地域からのエネルギーの海上輸送をどの程度阻害するのかをアメリカが管理することは、市場価格を管理し、侵略戦争でアメリカが意図的に引き起こした新たな経済危機に対処する上で極めて重要だった。アメリカ産LNGの長期輸出契約をアジア諸国が結ばざるを得ないほどの混乱をアメリカは引き起こした。このLNGは、不可解にも、それまで存在しなかった需要のために近年積み上げていたものだった。

 ホルムズ海峡が脅威にさらされ閉鎖されるようになったのが2026年であるにもかかわらず、これらプロジェクトの中には、2025年という比較的最近の時点で「係争中の水路」をセールスポイントとして挙げるものさえあった。

 だがアメリカは、西アジアからのエネルギー輸出の途絶だけでなく、アメリカによるそれらエネルギー資源の搾取の試みで、各国が自国を守るための緊急措置を講じるよう促すような壊滅的崩壊や危機を引き起こすことはしなかった。

 こうして、アメリカは、西アジアのエネルギー供給能力と、このエネルギーに依存するアジア諸国経済の両方を「計画的に破壊」して、アメリカ自身やアメリカによる世界安定転覆に対する統一戦線を引き起こさないようにしながら、西アジアへの依存を、徐々にアメリカへ移行させるのに十分な損害を与えているのだ。

 もし多極化する世界にアメリカが対応できなければ、アメリカは世界を自分のレベルにまで引きずり下ろす。

 多くの専門家が正しく指摘している通り、アメリカは西アジアのエネルギー輸出を代替するのに十分なエネルギー生産能力を全く持ち合わせておらず、ヨーロッパ全体のエネルギー需要を満たすのに十分なエネルギーも持ち合わせていない。だがヨーロッパとアジア両方のエネルギー入手を全体的に制限し、それに続く脱工業化を進めることは、ワシントンの最も差し迫った課題、すなわち産業、イノベーション、軍事力で急速にアメリカを追い越しつつある世界で、いかに優位性を維持するかという課題を解決することになる。

 ヨーロッパ、アジアや他の地域へのエネルギー供給を制限して、アメリカは人為的なエネルギー不足を作り出し、経済的挫折、脱工業化や世界的な地政学的弱体化という避けられない過程を引き起こそうとしているのだ。

 アメリカは、単独では、公平かつ開かれた市場で、中国と真っ向から競争する能力がなく、攻撃的な関税、制裁、禁輸措置、情報操作など、中国に対する優位性を確保するため、あらゆる手段を講じているにもかかわらず、事実上あらゆる指標で後れを取っている。あらゆる条件が同じなら、アメリカが全世界で競争し、支配力を維持できるなどというのは幻想に過ぎない。

 そのため、より攻撃的な手段が追求されている。過去の帝国が広大な地理的地域と人口に対し覇権を維持してきたのと同様の手段で、他国を分断し、弱体化させて、競争の必要性自体を回避するのだ。

 台頭する多極化世界が、破壊的で略奪的なアメリカ地政学に対抗する統一戦線を形成せず、各国を一国ずつ標的にして弱体化させるのを許容し続ける限り、アメリカが多極化世界の規模と力を管理し続け、最終的には、そもそも、アメリカがその台頭を促した中核諸国を孤立させ、封じ込めることになる。

 中国を除けば、どの国も単独ではアメリカに挑戦できない事実にアメリカは依存している。

 アメリカが、破壊工作、強制、侵略行為を、世界的脅威になる寸前のところで維持して、他国とのエスカレーションを慎重に回避しながら、個々の国に焦点を当てる限り、アメリカの覇権追求が世界全体にもたらす脅威を、完全に最終的に無力化するのに必要な統一的努力を世界の国々は実現できない。

 世界各国の支配層の利害は、余りに近視眼的かつ自己中心的で、過去数世紀の帝国と同様に、アメリカが、これら全ての国に対して、同時に明白かつ遍在的脅威をもたらさない限り、アメリカ覇権を覆すほど十分には協力はしない。

 その結果、他の国々全てが十分な行動を起こさないという理由だけで、今後もアメリカは支配的地位を享受し続けることになる。

 この転換に必要な努力とエネルギーを、他の国々が準備ができているのか、それとも自己満足と近視眼的な考え方が蔓延していて、その結果、海外だけでなく国内の大多数のアメリカ国民をも犠牲にして、権力と権益の追求をアメリカに続けさせてしまうことになるのかは時が経てば明らかになる。アメリカの攻撃に耐え、西アジアでのアメリカの野望を挫折させる能力は多極化の拡大を示しているイランは、この全体的な戦いのベクトル和の、いくつかの指標の一つに過ぎない。逆に、西アジアにおけるアメリカ覇権の持続と、それにより、世界の他地域にアメリカが混乱をもたらす能力は、現状における多極化の限界を示していると言える。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/07/03/the-us-war-on-iran-continues/

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 昨日のアンカラ発Reuters報道  
トランプは

イランについて「病んだ人々だ。病んだ人々に率いられている」と語った。

その上で「私に言わせればイランと関わるのは時間の無駄だ」と述べた。
 アメリカ最大属国庶民の一人として、

 トランプは「病んだ人だ。アメリカは病んだ人々に率いられている。」し
 「私に言わせれば、アメリカと関わるのは時間の無駄だ」と確信している。

2026年7月 8日 (水)

反射池と藻類の政治

フィル・バトラー
2026年7月6日
New Eastern Outlook

 政策によって支配する国もあれば、見せかけによって支配する国もあるが、いずれ自らの神話に囚われてしまう国もある。



 2026年の夏までに、失敗の原因が、拙劣な判断、誤った前提、あるいは単純な人的ミスでない世界を築こうとトランプ政権は益々固く決意しているように見えた。あらゆる失望には敵が必要で、あらゆる恥辱には陰謀が求められ、あらゆる失敗には必ずどこか別のところを指し示す説明が伴った。政敵、妨害する官僚、敵対的裁判官、不忠な役人、外国勢力、活動家ネットワークや影の敵は、責任は常に外部にあり、説明責任が永遠に手の届かない物語の世界で繰り返し登場する登場人物になった。

 国家は多くのことで自らを納得させられる。批判は反逆行為だ、反対者は破壊工作員だ、あるいはあらゆる挫折は自らの手の及ばないところから生じているのだと自らに納得させられる。だが、化学に、その法則を停止させるよう説得することはできない。

 このような世界観の危険性は、単に政治的なものではなく、存亡に関わるものだ。国家は過ちを乗り越えられる。無能な指導者、失敗したプロジェクト、誤った政策にも耐えられる。だが現実そのものを徐々に放棄していくことには耐えられない。組織が無能と妨害行為、誤りと迫害を区別する能力を失うと、学習し、適応し、軌道修正するための仕組み自体を放棄してしまうのだ。

 だからこそ、リンカーン記念堂の反射池を巡る論争は、奇妙なほど多くのことを物語っているのだ。一見すると、藻の大量発生、ペンキの剥がれ、ワシントンの高額な改修工事といった些細な出来事に見える。だが実際には、現代アメリカの政治支配を特徴づける、より広範な政治的習慣をほぼ完璧に縮図化した事例と言える。化学、工学と維持管理によって解決されるごく普通の問題に直面した政治指導者たちは、本能的に悪役が登場する物語に飛びついたのだ。だが証拠は、遙かに劇的でなく、遙かに教訓的なものを示している。公共事業が物理世界の頑固な現実と衝突した、まさにその出来事だ。

 池とペンキと藻

 論争は、改修されたばかりの反射池が一般公開されて間もなく始まった。記念堂の視覚的美しさを高めるため鮮やかな青色塗料を塗布したこのプロジェクトは、早速、藻の異常繁殖という予期せぬ問題に直面した。水面に緑色の変色が現れ、保守チームが派遣され、当局は池の外観を回復させる方法を模索し始めた。

 第一級浄水処理作業者の資格を持つ者として、その後の議論の多くが、水管理の基本原則からかけ離れているように感じた。藻の発生は政治的現象ではなく、生物学的現象だ。日光、栄養分、高温と、不十分な循環が重なると、藻は自然が意図したとおりに増殖する。この論争で最も驚くべき点は、藻が発生したことではなく、当局者が藻の発生に驚いたように見えたことだ。

 改修工事に関する報告によると、以前の操業で使用されていたろ過装置が、設計変更の際、撤去または大幅に変更されたとのことだ。この決定だけが今回の感染症発生の原因だったかどうかは技術者が判断すべき問題だが、根本的原則は明白だ。十分な循環やろ過が行われていない浅く日当たりの良い水域は、自然に対して優位な立場から立ち向かっているのではなく、自然に支配されるようにしているに過ぎない。

 水処理の上で、藻類が藻類らしく振る舞うのを藻類のせいにするのは、落石を重力のせいにするのと同じようなものだ。破壊活動家や施設破壊者や隠れた敵を探す前に、システム設計の基本を検証するのが賢明だ。水は弱い部分を露呈させる性質があり、生物学は更に容赦がない。藻類の生育条件が整えば藻類は生育する。政治的言説や広報活動や、施設管理責任者の評判など藻類は気にしない。

 国立公園局は、過酸化水素処理や生物の増殖を抑制するオゾン装置など、一連の藻類抑制対策で対応した。こうした処理は水管理で珍しいものではない。過酸化水素は強力な酸化剤で、有機物を分解して最終的に水と酸素に分解するため、藻類の大量発生対策によく使われる。理論的には、益々目立つようになってきた問題に対する単純な解決策になるはずだった。だが実際には、事態は遙かに複雑なものになった。

 処理開始後まもなく、新たに塗布されたコーティングの一部が壁面から剥がれ始めた。表面仕上げの著しい劣化を指摘する報告が相次ぎ、コーティングの塗布方法が不適切だったのか、環境条件が十分に考慮されていなかったのか、あるいは化学処理によってシステム内部に既に存在していた弱点が悪化したのかといった疑問が生じた。技術者や保守専門家は、考えられる原因をいくつも挙げたが、その多くはごくありふれたもので、世界中の建設プロジェクトでよく見られる問題と一致するものだった。

 だが、ありふれた説明がニュースになることはめったにない。間もなく、議論は保守作業の実態から、破壊行為や妨害行為の疑惑に移った。正体不明の人物がプールを損傷させたり、有害な化学物質を投入したり、改修作業を意図的に妨害したりしたと公式声明で示唆された。物語は、技術的失敗から、悪意ある妨害へと進展し、技術問題が政治ドラマに変貌した。

 この件最大の皮肉は、池の劣化を引き起こした力が政治的発言に全く無関係なことだ。過酸化水素は党派を区別しない。藻の大量発生は世論調査データを参考にしない。水質化学は選挙スローガンや、記者会見、ソーシャルメディア言説に感銘しない。物理世界は、交渉も妥協もしない原理に基づいて機能する。コーティングは、しっかり付着するか、剥がれるかだ。水は微細な隙間に浸透するか浸透しないかだ。誰が大統領執務室にいようと化学反応は起きる。

 何世代にもわたり、アメリカ人は工学、科学と実践的な問題解決に根ざす文化の恩恵を受けてきた。橋は立つているか崩れるか、飛行機は飛ぶか墜落するかのどちらかだ。こうした結果を左右する法則は、説得したり、脅迫したり、政治で改名したりできない。同じ原則が反射池にも当てはまる。そこで何が起きたにせよ、イデオロギーではなく、政治家が説明しようとするずっと以前から存在していた一連の物理的原因と結果により最終的に決定されたのだ。

 技術的失敗から政治的神話へ

 この事件が特に重要なのは、それがアメリカ政治文化における、より広範な傾向を如実に反映している点にある。責任を外部に転嫁する衝動は、現代の政治支配を特徴づける要素になっている。政治的立場を問わず、政策、計画、あるいは実行上の欠陥ではなく、敵の行動で失敗を説明する傾向が強まっている。政権の政策は深刻な批判を免れるものだと想定されているため、根底に、アメリカのライバルに責任があるはずだという暗黙の了解が存在するのだ。このような考え方は、政治議論を道徳劇へ変貌させ、責任の所在を問うことより、決定を問うことの方が困難になってしまう。

 この習慣をドナルド・トランプが発明したわけではない。彼はそれを支配の手段に昇華させたに過ぎない。経済的失望は陰謀の結果とされ、行政上の失敗は妨害工作の証拠とされ、政策の挫折は隠れた勢力が国家に敵対している証拠とされる。責任転嫁の対象を探すことに比べて、決定自体に欠陥があった可能性は、しばしば軽視される。この構図は、宗教的狂信者さえ引き込んで、政権に反対するのは全能の神への冒涜だと宣言させる。欧米世界の指導者は、聖人であるだけでなく、アインシュタイン級の天才、ナポレオンに匹敵する征服者、そしてG7メンバーに宣言した通り、単に「ボス」として描かれる。

 イラクを見れば明らかだ。大量破壊兵器に関する誤った前提に基づき、組織的自己検証ではなく、長年にわたる物語の再構築が行われた。アフガニスタンでも同様パターンが見られ、20年にわたる戦略の迷走は、作戦設計の根本的欠陥ではなく、現地関係者や地域の複雑な事情のせいにされることが多かった。更に最近では、ウクライナと中国を巡る議論でも同様傾向が見られる。複雑な地政学的現実が道徳劇に矮小化され、失敗の原因は、誤算や過信や非現実的な期待ではなく、敵にあるとされてしまう。敵の存在は疑いようもないが、自らの過ちを認識する能力を失った国家は次第にそれを正す能力も失っていく。

 軍事介入が目的を達成できなかった場合、説明は戦略的前提よりも、敵に焦点が当てられることが多い。外交努力が失敗に終わると、議論は、非現実的な期待ではなく、外部干渉へ向かう。ライバル国が影響力を増すと、アメリカの政策自体が競争相手に機会を与えた可能性よりも、策略による操作が好まれる説明になる。そして事態が収束すると、政権に忠誠な連中は直截な力を戦略と勘違いして「我々は爆弾で交渉する」と叫ぶ。

 確かに、ロシアや中国のような国々は国益を積極的に追求している。大国は常にそうしてきた。だが競争を認識することと、あらゆる挫折を競争のせいにすることの間には大きな違いがある。健全な社会は、外部からの本物の脅威と、自ら招いた傷を区別できる。不健全な社会は、次第に区別ができなくなり、あらゆる批判、あらゆる失敗、あらゆる失望を迫害の証拠として扱うようになる。この影響は政治の枠を遙かに超えて及ぶ。

 藻類の帝国

 文明が自己修正能力を発揮できるかどうかは、不都合な現実と向き合う意思にかかっている。エンジニアは失敗を研究して設計を改良し、科学者は矛盾を検証して理論を洗練させ、企業は過ちが大惨事になる前に、過ちを特定して適応する。政府も例外ではない。組織が自らが問題の一因となっている可能性を問う能力を失った瞬間、有意義な改革はほぼ不可能になる。

 だからこそ、反射池をめぐる論争は、単なる建設プロジェクトの枠を超えて大きな反響を呼んでいるのだ。藻の大量発生は地政学的危機ではなかった。塗膜の剥がれも国家安全保障を脅かすものではなかった。費用は、連邦政府の莫大な支出に比べれば微々たるものだ。しかし、この一件は、公共生活を益々支配しつつある、ある種の思考様式を驚くほど鮮明に映し出している。ごくありふれた問題に直面した指導者連中は、非凡な説明を探し求めた。化学的問題に直面した彼らは、物語を好んだ。維持管理上の問題に圧倒された彼らは神話を好んだ。そして、過失の可能性について、敵に責任を押し付けた。

 反射池を巡る論争の本当の意義は、費やされた金額や除去された藻、夏の太陽の下で剥がれ落ちた塗料にあるのではない。その重要性は、ありきたりな説明に益々不快感を覚える社会の姿を明らかにしている点にある。健全な文明は、困難ではあっても、不可欠な能力を備えている。現実が自らの前提と矛盾しているのを認められる能力だ。あらゆる批判を攻撃と捉え、あらゆる挫折を妨害工作の証拠と見なすことなく、過ちを認められるのだ。そのような社会は、学ぶために必要な謙虚さを持ち続けているからこそ、自己修正能力を維持できるのだ。

 不健全な社会は違う道を辿る。彼らは物語中毒になる。あらゆる失敗は敵のせいにされ、あらゆる失望は陰謀に変えられ、土台のあらゆる亀裂は構造自体の弱点ではなく、敵のせいにされる。時が経つにつれ本当の脅威と自ら招いた傷の区別は曖昧になっていく。

 リンカーン記念堂の反射池は、そうした習慣がいかに危険なものになり得るかを、一見単純な形で思い起こさせてくれる。国家は多くのことを自分に言い聞かせることができる。批判は反逆行為だ、反対する者は破壊工作員だ、あるいは、あらゆる挫折は自らの力ではどうにもならないところから生じているのだと自らに言い聞かせることができる。だが、国家は、化学の法則を一時停止させることはできない。

 現実は忍耐強い。現実は、票を要求せず、注目を集めようとせず、どんな選挙にも参加しない。静かに、容赦なく、支払期限が来るのを待つだけだ。

 フィル・バトラーは政策研究者、評論家、政治学者、東ヨーロッパ専門家で、最近のベストセラー、Putin’s Praetorians(プーチンの近衛兵)」などの著書がある。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/07/06/the-reflecting-pool-and-the-politics-of-algae/

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 読む方が恥ずかしくなる厚顔無恥

 インド訪問時発言。

 さきほどワタクシのことを美しい妹と呼んでくださいました。

 いけ図々しい発言にもかかわらず、モディは乱視ではなかった。

 東京新聞 朝刊 二面 総合 下部の小さな記事
 
「美しい妹」と呼んでいなかった。

 高市首相へのモディ発言

 実際は「私の妹である高市総理」と発言していたという。

2026年5月 3日 (日)

ヨーロッパとアジアでの覇権を目指すアメリカのエネルギー覇権戦争

Brian Berletic
2026年5月3日

 明らかな軍事的後退にもかかわらず、アメリカによる対イラン戦争は、世界のエネルギーの流れを再構築し、ワシントンの地政学的影響力強化を目的とする広範な戦略の可能性がある。

 

 表面上、アメリカの対イラン戦争は、アメリカ軍事力の限界を示し、軍事産業能力の限界を更に露呈させた、壊滅的な戦術的・戦略的失敗のように見える。

 だが、ウクライナで、ロシアとの代理戦争が依然続いているのと同様に、標的国を圧倒的軍事力で制圧できない事実は、他の手段によって、地政学的な狙いをアメリカが依然推進している多くの方法から人々の注意をそらしてしまう。

 ウクライナでは、ウクライナ代理勢力への支援を通じてロシア軍を打ち負かすことにアメリカは完全に失敗した。だが、アメリカはこの戦争を利用して、費用のかかる長期にわたる高強度紛争にロシアを巻き込み、ヨーロッパ以外の地域、特に2024年のシリア崩壊に関して、ロシアの国益を明らかに損なわせた。

 確かにアメリカは軍事力と軍事産業基盤の面で増大する課題に直面しているが、軍事力だけでなく経済力や金融力も含む多領域戦争を用いて、あらゆる領域における覇権を追求している。

 またこの戦争は、ヨーロッパを安価で信頼性が高く豊富なロシア・エネルギー供給から切り離すのに成功し、ヨーロッパをアメリカ・エネルギーへの依存度を高めさせ、おそらく不可逆的なものにしようとしている。

 アメリカ・エネルギーへの依存は、明らかにアメリカ・エネルギー企業に経済的利益をもたらすだけでなく、欧州に対するワシントンの戦略的影響力、ひいては支配力を強化することにもつながる。そして、この支配力は、ロシアに対抗する欧州統一戦線の構築に効果的に利用されている。

 同様に、アメリカは対イラン戦争を利用して、中東全域からアジアへのエネルギー輸出を締め付け、アジアを安価で安定した豊富なガスと石油から切り離し、アメリカ・エネルギーへの依存状態に陥らせようとしている。こうしてアメリカは、アジアに対する戦略的影響力を獲得し、中国に対する統一戦線を構築しようとしているのだ。

 戦争によって、ヨーロッパをロシア・エネルギーから切り離す計画があった

 2019年にランド研究所が発表した「Extending Russia: Competing from Advantageous Ground(ロシアの手を広げさせる:有利な立場からの競争)」と題する論文で、ロシアの「手を広げさせ」させて、冷戦終結時のようなソ連崩壊を引き起こす可能性がある数々の「経済的」「地政学的」措置が提示されていた。

 「経済措置」として「石油輸出の妨害」「天然ガス輸出の削減とパイプライン拡張の妨害」「制裁措置の実施」「ロシアからの頭脳流出の促進」などを同文書は挙げている。

 本稿ではまず、これらの措置を実施する主要方法の一つは、アメリカの石油・ガス生産を拡大し、欧州への輸出を増やすことだと主張する。

 だが「成功の可能性」と題する節で、論文は下記の通り明確に認めている。  
「欧州におけるロシア産ガスの平時消費量削減成功の可能性は中程度から低程度だ。ロシア依存から脱却するには費用がかかり、プロジェクトの実現は困難かもしれない。」
 当時、アメリカは既にLNG輸出施設に投資し、欧州市場を標的にLNGを輸出していたことを忘れてはならない。しかも、アメリカの政策立案者たちは、そうすることに財政的にも経済的にも何の利点もないと認めていたにもかかわらずだ。

 だが、この文書はまだ完成には程遠かった。「地政学的措置」の項目で、文書は第一に「ウクライナへの殺傷兵器提供」を挙げている。

 同論文は、以下の点を認めている。  
「ウクライナへのアメリカの支援拡大、特に殺傷能力のある軍事支援は、ドンバス地域を維持するためのロシアの人的・経済的費用を増大させる可能性が高い。分離主義者へのロシアの支援強化とロシア軍の増派が必要になり、結果として支出の増加、装備の損失と、ロシア側死傷者の増加につながる。後者については、ソ連がアフガニスタンに侵攻した時と同様、ロシア国内で大きな論争を巻き起こす可能性がある。」
 言い換えれば、アメリカによるウクライナへの殺傷兵器供与(これはトランプ政権の一期目にアメリカが始めたことだ)は、アメリカがウクライナで、ロシアとの戦争を意図的に引き起こそうとしていることを意味する。

 その結果として起きる戦争は、ロシアにとって軍事的に大きな負担をもたらすだけでなく、ロシアの石油・ガス輸出の削減・阻害、およびアメリカLNG輸出の拡大に対する最大の障害である「平時」を、終わりのない戦争へと明らかに変えてしまう。

 実際、2014年以降、ロシア経済を標的とした制裁が始まった一方、アメリカがロシア国境沿いのウクライナを軍事的に強化する政策によって引き起こされたウクライナ戦争は、ノルド・ストリーム・パイプライン破壊と、ロシアのエネルギー輸出に対して益々厳しくなる制裁をもたらし、それまで非合理的だったアメリカからのLNG輸入をヨーロッパにとって不可欠なものにした。

 エネルギー支配のバランスを更にアメリカに有利に傾けるために、2025年後半に、ロシアの石油施設やタンカーに対するウクライナ・ドローン攻撃作戦を強化していたのは、アメリカ中央情報局(CIA)と米軍だったとニューヨーク・タイムズが報じた。

 アメリカが引き起こした戦争は、平時には安価で信頼性が高く、豊富なロシアのエネルギー輸出からヨーロッパを切り離す絶好の機会になった。この切り離し過程は何年もかかり、いまだに完全実施はされていないものの成功を収めている。そのため、アメリカが中東やアジアに関し同様の成功を再現しようと考えていないとは、ほとんど考えられないほどだ。

 中国を締め付ける

 数十年にわたるアメリカ外交政策文書は、選択肢を議論し、政策を提案し、封鎖を通じて中国を経済的に締め付ける実際の兵器や軍事の組織的計画を導いてきた。封鎖は多くの場合、特にアジア太平洋地域を対象としていたが、世界中の海上交通の要衝や港湾も対象にしていた。

 2018年に海軍大学校が発表した「A Maritime Oil Blockade Against China – Tactically Tempting but Strategically Flawed(中国に対する海上石油封鎖 ― 戦術的には魅力的だが戦略的には欠陥がある)」と題された論文では、そのような政策が直面する障害と、それを克服するための様々な手段が列挙されている。

 同報告書は、マラッカ海峡などの要衝で中国への海上輸送を遮断する「遠隔封鎖」(中国の軍事力の大部分が及ばない範囲で実施される封鎖)に焦点を当てるだけでなく、中国がこれら要衝を迂回できるようにするために特別に構築された中国の「一帯一路」構想(BRI)プロジェクトを断ち切ることも論じていた。

 論文のある箇所では、ミャンマー・中国石油パイプラインについて論じている。このパイプラインにより、中国は中東のエネルギーをミャンマー沿岸の港湾施設で荷揚げし、ミャンマー国内を横断して中国南部の雲南省に直接輸送できる。

 論文は次のように示唆している。  
「遠隔地からの封鎖は、ミャンマーと中国を結ぶ石油パイプラインの遮断も必要とするだろう。このパイプラインは、ミャンマー沿岸部のチャウピューから中国南西部の雲南省まで、最終的には日量最大44万バレルの原油を輸送する可能性がある。チャウピューのターミナルでタンカーの荷揚げを阻止するには、海軍のプラットフォームを現地に留めておく必要はほとんど、あるいは全くない。紛争期間中は当該地域を立ち入り禁止区域に指定することができ、ミャンマー当局がこれに従わない場合、空爆、空中機雷、その他の武力行使により施設を無力化できる。要するに、米軍は、マラッカ海峡や、更に東にある他の要衝を回避し、他の海上侵入ルートを封鎖するために必要な戦力を中国が転用するのを阻止するため、中国が海上石油輸入のために利用する陸路を迅速に無力化できる可能性が高い。」
 単なる理論上の提案にとどまらず、アメリカは長年にわたり、ミャンマー中央政府と戦う武装勢力を支援してきた。これら武装勢力は、ミャンマー・中国間の石油パイプラインを繰り返し攻撃し、最近は、パイプラインが通過する地域を占拠しようと試みている。

 言い換えれば、アメリカは米中紛争が勃発するのを待ってから米軍の戦力でパイプラインを攻撃するのではなく、米中直接紛争が始まる前に、代理勢力を使って攻撃を仕掛けているのだ。こうした攻撃は、アメリカが中国に対する「遠隔封鎖」という概念を検討しただけでなく、既に段階的に実施すると決定している証拠だと言える。

 アメリカはパキスタンで同様のパイプラインや経済回廊を妨害する武装勢力を支援しており、同時にアメリカ自身もアジア太平洋地域での軍事的存在を拡大し続け、台湾近海と南シナ海での海上輸送を脅かしている。

 だが「遠隔封鎖」という概念は、アジア太平洋地域に限ったものではない。アメリカによるイラン攻撃は、中国から更に遠く離れた中東地域で事実上の封鎖を生み出している。

 この戦争は、イランとアメリカ双方による制限により、ホルムズ海峡を通る海上交通を阻害しただけでなく、アメリカによるイラン・エネルギー生産施設攻撃は、米軍を受け入れているペルシャ湾岸アラブ諸国のエネルギー生産施設への報復攻撃を招いた。

 地域全体のエネルギー生産量の減少に加え、ホルムズ海峡を通る海上交通の混乱が重なり、中東からのエネルギー輸入に依存している国々、特に中国を含むアジア諸国にとってエネルギー危機を引き起こしている。

 アジアと中東を切り離す

 Politicoなどの欧米メディアによると、パキスタン、ミャンマー、ベトナム、フィリピン、タイ、日本、韓国といったアジア諸国は、輸入エネルギーの50%から90%を中東から得ている。

 中国は輸入エネルギーの最大50%を中東から得ている。台湾では輸入エネルギーの60%以上を中東から得ている。

 アメリカが引き起こした新たな戦争により生産と輸出が混乱したため、アジア諸国は欧州ではなく、エネルギー需要を満たすため他地域に目を向けざるを得なくなった。

 アメリカは、欧州をロシアからのエネルギー輸入から意図的に切り離したのと同様に、アジア市場を特に標的としたLNG輸出施設の提案、投資、建設と稼働開始に何年も費やしてきた。この能力は既に一部稼働しており、アメリカ自身が中東で引き起こしたエネルギー危機や、今やアジア諸国を脅かしているこの危機を最大限に活用できる絶好のタイミングになっている。

 例えばベトナムのような国は選択肢は二つしか残されていない。数千万人の国民に調理用ガスなどの生活必需品を含むエネルギーを供給しないままにするか、中東からの輸入が途絶えた分を補うために、他に選択肢のない代替品を購入するかのどちらかだ。

 ベトナムの国営ガス大手は、アメリカから最大6万6000トンのLPG(液化石油ガス)を購入したと報じられている。これは中東からの4万4000トンを上回る量だ。なお同社がアメリカ産エネルギーを購入したのは今年が初めてだ。

 ベトナムは当然モスクワと緊密な関係にあり、エネルギー構成の一部をロシアから購入しているほか、中国からも石炭を輸入しているが、いずれもベトナムが依存していた中東からのエネルギー輸入の80%以上が現在途絶えている状況を直ちに補うだけの十分な能力はない。

 タイ、日本、韓国や台湾といった他の国々も同様に代替策を模索せざるを得なくなっている。ロシアに協力を要請し、不足分を補うことができた例もあるが、アメリカは意図的に自らを唯一の代替候補として位置づけている。

 近年、アメリカがアジア市場を標的に投資してきたLNG輸出プロジェクトは、提案および承認の初期段階で実行可能なビジネス・モデルを提示するのに苦労したことを指摘しておくべきだろう。これは、アメリカがロシアに対する代理戦争を開始するまで、欧州市場を標的にしたLNG輸出プロジェクトが抱えていた問題と同じだ。

 グレンファーン社によるアラスカLNGプロジェクトは、 2025年時点では「エネルギー安全保障」と「争いのない安全な航路」を主要セールスポイントとしていた。だが当時、アジアへのエネルギー輸出の流れを妨げるような競争が激化したり危険な航路は存在せず、このセールスポイントを正当化できる状況ではなかった。

 将来的に争いの対象となったり、安全が脅かされたりする可能性がある唯一の航路は、アメリカが数十年にわたり争い、安全を脅かす準備を進めてきた様々な海峡で、それはアジア太平洋地域だけでなく、中東のホルムズ海峡やそれ以外の地域にも及ぶ。

 もちろん、現在、アメリカによる対イラン戦争により、中東からのエネルギー輸出が阻害されているため、アラスカLNGのようなプロジェクトは、当初は採算の取れない事業計画だったものが、切実に必要とされ、かつ最適位置にあるエネルギー源へと変化した。これは、アメリカからヨーロッパへのLNG輸出と同様に、全て計画通りだ。

 ウォール・ストリート・ジャーナルの最近の記事「U.S. Energy Exports Hit Records as World Adjusts to a Closed Persian Gulf(ペルシャ湾閉鎖への世界の適応に伴い、アメリカのエネルギー輸出が記録を更新)」は「oil, and gas shipments have soared, but the U.S. will face obstacles turning wartime demand into a permanent boost(石油とガスの出荷量は急増したが、アメリカは戦時中の需要を恒久的増加につなげる上で障害に直面するだろう)」と指摘している。

 誤った前提は、アメリカによる対イラン戦争は、アメリカの石油・ガス出荷量の急増や「戦時需要」とは無関係で、これは単なる好都合な偶然に過ぎない。

 しかし、ランド研究所が2019年に明らかにしたように、ヨーロッパをロシアのエネルギーから切り離す政策提案は、「平時」には機能しないとしても 「平時」を「戦時」に変えることで機能させることが可能だ。

 それはアメリカがヨーロッパに対して行ったことと同じで、今アメリカは明らかにこの過程を繰り返し、アジアを標的にしている。

 ロシア、中国、イラン、そしてアジア諸国、特に南アジアと東南アジア諸国を含む他の独立諸国は、アメリカが仕掛けたこの危険な罠を慎重に回避し、ヨーロッパに強いられたようなアメリカへの完全なエネルギー依存を避ける必要があるだろう。

 アメリカによる政治的支配と、アメリカへのエネルギー依存の高まりによって、既にヨーロッパは恐らく回復不可能な政治的・経済的損害を被っている。

 同様に、アジアも、アメリカへのエネルギー依存の高まりによって弱体化し、アメリカによる政治的支配の可能性が遙かに高まり、今度はロシアではなく中国に対する統一戦線へと変貌させられ、アジアの人々や平和や繁栄を犠牲にして、アメリカのために戦争を遂行するために利用される危険性がある。

 確かにアメリカは軍事力と軍事産業基盤の面で増大する課題に直面してはいるが、軍事力だけでなく経済力や金融力も含む多領域戦争を用いて、あらゆる領域における支配を追求している。これは、多くの人が戦争と結びつける戦場という物理的空間だけでなく、政治空間と、最も重要な情報空間においても展開される。

 アメリカは、他の国々と比較して軍事力が弱体化しているにもかかわらず、それを回避し、世界各国の政治的支配、グローバル情報空間の独占と、今やエネルギーの兵器化拡大といった手段を活用する能力を繰り返し示してきた。

 アメリカは、アメリカ国内でのエネルギー生産と輸出と、ベネズエラ、ロシア、イランなどにおける代替エネルギー源への組織的攻撃や押収や破壊を通じて、エネルギーを兵器化している。

 多極化世界が、軍事力の領域だけでなく、アメリカが戦争を仕掛けている他の全ての領域においても、適切に組織化できるかどうかは、時が経ってみなければ分からない。

 Brian Berleticは、バンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/05/03/the-us-war-for-energy-dominance-seeks-dominance-over-europe-and-asia/

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 植草一秀の『知られざる真実』
高市内閣横暴を許さない

2026年5月 1日 (金)

アメリカがイランと戦争状態にある理由と、戦争が一時中断する可能性はあるものの終結しない理由

Brian Berletic
2026年4月28日
New Eastern Outlook

 イランに対するアメリカ侵略戦争に関する議論の多くは、アメリカが「イスラエルのために」イランと戦っているという神話など地域特有の要因に焦点を当てているが、この戦争を引き起こし、またこの戦争により進展してゆく遙かに現実的で重要な世界的要因が存在している。

 

 対イラン戦争は、中東地域と地域で生産・輸出される石油・ガスを完全支配しようとする数十年にわたるアメリカの計画の一環だ。これはエネルギーをアメリカ自身のために利用するためではなく、アメリカ自身や、アメリカが支配権を握ろうとしている国々や地域からのエネルギー生産と輸出に対するアメリカの独占を確立し強化するためだ。

 これには、最近では中南米のベネズエラも含まれる。2026年初頭にアメリカがベネズエラに対して行った侵略戦争や、ベネズエラ大統領誘拐や、残ったベネズエラ政府関係者の人質化により、ベネズエラから中国への石油輸出はほぼ即座に停止し、ベネズエラの石油資源による富はアメリカ企業に分配された。

 アメリカが「同盟国」に対し、しばしば「安全保障の保証」と呼ぶものは、実際は同盟国ではなく代理勢力である国々に対するアメリカの軍事占領や政治支配や統制を婉曲的に表現するものに過ぎない。

 アメリカがウクライナを通じてロシアに対して行っている侵略戦争は、ドローン使用を通じてロシアのエネルギー生産、貯蔵、輸出インフラに対する直接的戦争へと急速に拡大している。これらドローンはウクライナのものとされているが、ニューヨーク・タイムズは、実際には米中央情報局(CIA)と米軍が管理していることを明らかにした。

 同様に、アメリカは「分業」の下で、欧州の代理勢力に対し、ロシア・エネルギーを運ぶタンカーの海上追跡、阻止、拿捕を拡大するよう促しており、更にアメリカは、海上ドローンを使ってタンカーを攻撃する作戦も展開している。中央情報局(CIA)と米軍が、名目上「ウクライナ」作戦 とされるものを「強化」しているとニューヨーク・タイムズが指摘している。

 イランに対する戦争と相まって、アメリカがアジア全般、特に中国へのエネルギー輸出を意図的に妨害、破壊、更には停止させている明確な世界的パターンが浮かび上がる。

 アメリカはおそらく、イラン政府を迅速に打倒して、地域に対する支配力を強化し、ロシアと中国を更に孤立させようとしていたのだろうが、より広範でグローバルな狙いは、イランからアジア、特に中国へのエネルギー供給だけでなく、中東全体からアジアと中国へのエネルギー供給を遮断することだった。

 対イラン・アメリカ攻撃の最新段階は、2月下旬に始まり、トランプ政権下の2025年、とバイデン政権末期の2024年にイランに対して行われた暴力の継続として、イラン・エネルギー生産施設を標的とするとともに、イランの主要エネルギー輸出施設、カーグ島攻撃を含んでいた。

 アメリカによるイラン・エネルギー生産施設攻撃は、イランによる報復攻撃につながり、クウェート、カタール、アラブ首長国連邦、サウジアラビアなど、アメリカのペルシャ湾岸アラブ諸国の代理勢力に対して攻撃が行われた。

 こうした暴力行為が複合的に作用した結果、地域全体の生産量が減少し、戦前と比較して中東全域から中国へのガスと石油のエネルギー輸出量が減少した。

 ロイター通信によると、2月下旬の戦闘開始から最近の停戦合意までの間に、この地域全体から中国へのエネルギー輸出は、中国の輸入需要全体の約52%から約30%に減少した 。

 2026年3月のPolitico記事は、中国がエネルギー面で中東地域に依存しているだけでなく、アジア全体がエネルギー輸入需要の70%から90%以上を中東からの輸入に依存していることを明らかにしている。特に、日本、韓国、フィリピンや台湾といったアメリカ代理勢力は、その傾向が顕著だ。

 中国を孤立させ、アジアを支配する

 以前アメリカはウクライナでの対ロシア戦争を扇動し、ノルド・ストリーム・パイプラインを破壊し、ロシアからのあらゆるエネルギー輸入に制裁を課し、更にロシアのエネルギー生産、貯蔵、輸出施設や、ロシア・エネルギーを運ぶタンカー自体を攻撃するなどして、ヨーロッパをアメリカのエネルギー輸出に依存させる政策をとったが、今度は中東からのエネルギーの入手を意図的に妨害して、中国とアジアの国々を標的に同様政策を推進している。

 イランに対する戦争は、ホルムズ海峡を通る海上交通のイランによる厳格な規制につながり、その後、アメリカは主にイランから中国へエネルギーを輸出する船舶を標的とする封鎖を実施した。アメリカがイランとの間の海上交通を完全に支配しているという主張は誤りだが、アメリカの封鎖により、イランから中国へ向かおうとする海上交通の少なくとも半分が引き返させられたり拿捕されたりしたとフィナンシャル・タイムズが報じた。

 これは、この地域から中国へのエネルギー輸出総量が再び減少したことを意味し、アメリカはアジア、特に中国への地域からの輸出を更に削減するための多くの選択肢を温存している。

 一つの選択肢は、アメリカによる対イラン軍事侵略再開の脅威で、これにより、イランのエネルギー生産および輸出インフラに対する意図的な標的攻撃と広範な破壊と、アメリカがペルシャ湾岸の代理勢力として利用しているアラブ諸国のエネルギー生産施設に対するイランの報復攻撃が更に発生する可能性がある。

 アメリカによる対イラン戦争と地域への影響が明らかになりつつあることは、アメリカによるノルド・ストリーム・パイプライン破壊や、ロシアからヨーロッパへのエネルギーの流れに対する段階的な標的化、制裁、制限と似ており、アメリカ・エネルギー輸出だけが唯一の選択肢として残された。そして、アメリカが既存の、より安価で信頼性の高い代替手段を排除するまで、この選択肢は経済的に実行可能ではなかったのだ。

 アメリカの戦争は2024年末から今日まで続いており、終結の見通しは立っていない。アメリカ軍事侵略作戦の間には、わずか数ヶ月の比較的平穏な時期しかなく、中国やアジア諸国が中東から安価で安定したエネルギーを入手できる見込みは着実に薄れつつある。

 「偶然にも」アメリカは既に巨大なエネルギー生産・輸出産業の拡大に着手しており、特にアジア市場を標的にしている。

 2025年、アメリカに拠点を置くエネルギー企業グレンファーンとそのCEOブレンダン・デュバルは、アラスカで建設中の同社の新たなLNGプロジェクトが「競争のない安全な航路を通じて」アジアにエネルギーを輸出できる事実を繰り返し言及した。

 当時、アメリカ自身が航路を争奪し、航路を危険なものにすることで、グレンファーンのアラスカLNGプロジェクトの実現可能性を高め、ひいてはアメリカ・エネルギー輸出能力全般の拡大を促進することになるという点は一切言及されなかった。

 グレンファーン社がLNG輸出入に関する専門知識を磨いてきたのは隣国ベネズエラに対するアメリカの制裁と、本来ならコロンビアにガスを供給するはずだったパイプラインの閉鎖によってのみ可能になったコロンビア・プロジェクトを通じてのことだった点に留意すべきだ。アメリカによるベネズエラでのパイプライン閉鎖があったからこそ、グレンファーン社によるテキサス産LNGのコロンビア輸入が経済的に意味を持つようになったのだ。

 同様に、アメリカが紛争をちらつかせ、実際紛争を起こして世界中の重要な海上交通の要衝を危険にさらす場合にのみ、LNGをアジアや、それ以外の地域に輸出することが経済的に意味を持つようになる。ちょうど、ノルド・ストリームが破壊され、遙かに安価で入手しやすいロシア・エネルギーに制裁が課された後、初めて、アメリカ産LNGをヨーロッパに輸出することが意味を持つようになったのと同じだ。

 本末転倒だが、それには理由がある

 2030年代初頭までに、アメリカはLNG輸出能力を倍増させ、韓国や日本といった主要アジア諸国や台湾の需要を満たせるようになると予想されている。だが、これもまた、より安価で信頼性の高い代替エネルギー源が市場に出回らない場合に限られる。

 これはつまり、アメリカは本質的に本末転倒なことをしているものの、最終的に本題に入った時に、アメリカだけが利益を得られるような理想的状況を整えていることだ。

 ヨーロッパが安価なロシア・エネルギー輸入ができなくなったのと同様、アジアにおけるアメリカ代理勢力が、エネルギー面でアメリカに完全依存するようになれば、それらの国々は、地域および世界におけるアメリカの地政学的野望の延長として、更に完全に変貌を遂げるだろう。

 ヨーロッパの場合と同様、アメリカの国益追求は、アジアにおけるアメリカの代理勢力の犠牲、地域全体の平和と安定の犠牲と、特に継続的な中国台頭の犠牲を伴うことになるだろう。これは、ロシアを標的にするためにヨーロッパが利用され、ロシアとヨーロッパの国々両方を犠牲にしてきたのと同じだ。

 アメリカがこれらのアジアの代理勢力を政治的に掌握し、その領土に米軍を駐留させ、更にエネルギー依存を強要していることに加え、最近のアメリカ上院公聴会では、日本、韓国、フィリピンといった国々が、この地域における、アメリカ軍事産業拠点へと変貌を遂げ、地球の裏側に位置する中国との戦争をアメリカが挑発する際に直面する「遠距離の厳しさ」を最小限に抑えるのに役立つことが明らかになっている。

 アジアにおけるアメリカ製兵器の製造工場や、アメリカ艦船修理を行うための港湾施設建設は既に始まっており、日本がパトリオット迎撃ミサイルを製造し、場合によって アメリカに送っているほか、韓国は米海軍貨物船の保守に関する契約を締結している。

 こうした準備は、全てアメリカが避けられないと考えている中国との紛争に先立って行われている。そもそも、アメリカがロシア、イラン、ベネズエラや他の多くの国々と対立する根本的理由は、中国と直接対決する前に、まず中国を孤立させ、封じ込めることにあるのだ。

 欧州諸国やペルシャ湾岸アラブ諸国が、アメリカへの従属と、それぞれの地域におけるアメリカ侵略戦争受け入れと推進上の役割に支払っている代償を考慮すれば、日本、韓国、フィリピンも、中国とのいかなる対立に先立ち、自らを標的にしていると言える。

 アメリカが「同盟諸国」 に対して、しばしば「安全保障」と呼んでいるものは、実際は同盟国ではなく、代理勢力である国々に対するアメリカの軍事占領や政治的支配や統制を婉曲的に表現しているに過ぎない。ヨーロッパから中東、アジア太平洋地域に至るまで、代理勢力のグローバル・ネットワークを維持する狙いは、アメリカ外交政策にかかる全ての費用を他国に負担させ、全ての利益をアメリカが独占することにある。

 近未来から中期的に、アメリカが世界中で戦争をエスカレートさせ続ける可能性は避けられない。現在行われている戦争は、将来の中国との紛争に備えるために意図的に行われているからだ。このため、アメリカがロシアやイランと何らかの「和平」合意に達する可能性はほぼゼロに近い。

 アメリカの外交政策を推進する利害関係者(兵器産業、石油・ガス大手、ハイテク大手、自動車産業など)が、多極化で提供される代替案によって世界中で取って代わられるまで、また多極世界がアメリカの軍事侵略だけでなく、侵略につながる経済的強制や政治的干渉や支配に対しても十分な抑止力を生み出せるようになるまで、世界一極覇権継続という要求のために、アメリカは世界の平和、繁栄、安定を人質に取り続けるだろう。

 Brian Berleticは、バンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/04/28/why-the-us-is-at-war-with-iran-and-why-the-war-might-pause-but-wont-end/

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 東京新聞 朝刊 三面  
 米、イラン再攻撃検討か

 核合意まで港湾封鎖継続
 テヘラン大学、マランディ英文学教授 最新Youtube イラン・ミサイル攻撃でイスラエル軍戦闘機100機破壊の大打撃と主張。
Iran ACTIVATES 800 Fateh-110 — IDF Bases PARALYZED, 100 Jets MISSION-KILLED 46:01

2026年4月 5日 (日)

アメリカの対イラン戦争はアメリカの対多極主義戦争だ。

Brian Berletic
2026年4月3日
New Eastern Outlook

 2026年2月28日にアメリカがイランに対して開始した侵略戦争は多極世界を弱体化させ、解体するためにアメリカが起こした侵略行為の最新のものに過ぎない。

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 アメリカはイランという国家の存続と中東全体の安全保障を脅かしただけでなく、エネルギー輸出の混乱や破壊や、経済の安定性の急速な崩壊という形で、死と破壊は既に世界中に波及し始めている。

 アメリカはエネルギー自給自足を実現することで、ロシアのエネルギー輸出に制裁を課し、他の潜在的競争相手を全て掌握、妨害、あるいは破壊し、世界の多くの地域をアメリカのエネルギー独占体制に追い込んできた。

 これには、今年初め、アメリカがベネズエラに侵攻し、ベネズエラ大統領を拉致し、残った政府を人質に取り、石油を含むベネズエラ天然資源を公然と奪取し、アメリカ自身のために利用していることも含まれる。

 現在アメリカがイランに対して行っている侵略戦争は、イランのエネルギー生産を標的にしているだけでなく、地域紛争を引き起こし、ペルシャ湾全域のエネルギー生産に損害を与えたり、完全に破壊したりしている。

 残された課題は、世界規模でアメリカが死と破壊をもたらす能力が、中国や多極化世界の回復力や経済的、技術的、文明的な拡大能力を上回れるかどうかだ。

 中東におけるエネルギー生産と輸出の混乱または破壊を補うのに必要な量の石油とLNGをアメリカは全く生産していないため、これは世界的エネルギー不足を引き起こし、ひいては産業と消費者需要の崩壊につながる。

 これまでアメリカ覇権の及ばないところで共に発展を遂げてきた世界は、今やアメリカにより意図的に不安定化され、引きずり下ろされる事態に直面している。

 第一次世界大戦、第二次世界大戦後に自らが築き上げた世界秩序の中で競争する能力を失ったアメリカは、残された軍事力、経済力、財政力、政治力を用いて秩序を崩壊させ、崩壊後の瓦礫の中から再び「最強」の地位を築こうと決意したのだ。

 これは決して知られていない理論ではなく、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相も指摘している点だ。最近のインタビューで「中南米と中東で起きている出来事は、西側諸国が自らの支配の残滓を維持しようとする試みに直接起因する」とし「欧米諸国のエリート連中は、残された政治的・経済的資源を我が国との対立に注ぎ込み続けている」とラブロフ外相は述べている。

 これは土壇場での計画などではなく、21世紀の大部分を、現在進行中のイランとの戦争だけでなく、ウクライナにおけるロシアとの代理戦争やアジア太平洋地域における中国包囲網の拡大にも備えることにアメリカは費やし、多極化の主要な柱全て、そしてその間の多くの要素を標的にしてきた。

 ペルシャへの道

 イランを包囲弱体化させるため、アメリカはブッシュJr.政権下の2001年に東のアフガニスタン、2003年に西のイラクにそれぞれ侵攻した。同政権下で、アメリカはイランとその地域同盟国(レバノン南部のヒズボラ、シリア、イエメンのアンサール・アッラーなど)に対する代理戦争を仕掛けるため、過激派軍の準備を開始した。

 オバマ政権時代、少なくとも2008年には、アメリカはアラブ世界各地の反体制派集団に、最終的に2011年のいわゆる「アラブの春」につながる訓練と装備提供の準備を開始した。

 ブッシュJr.前政権下で準備された過激派軍隊と、アメリカが仕組んだ抗議活動や準備された暴力行為は、地域的混乱を引き起こすための隠れ蓑として機能し、結果としてアメリカによるリビア、イエメン、シリアに対する戦争や代理戦争を引き起こし、これら三カ国全てが統一国家としての地位を失うことに繋がった。

 同じオバマ政権が2012年にいわゆる「イラン核合意」に署名した一方、2009年まで遡るアメリカ政策文書は、こうした外交を、戦争を回避するためではなく、戦争の口実として利用しようとしていた。

 ブルッキングス研究所が発表した「Which Path to Persia?(ペルシャへの道はどれか?)」と題する論文は「この場合の理想的シナリオは、アメリカと国際社会がイラン国民が支持するほど魅力的な一連の積極的誘因を提示するものの、イラン政権がそれを拒否するものだ」と指摘した上で、「そのような状況下で、アメリカ(またはイスラエル)は、自らの作戦を、怒りではなく悲しみから行ったものとして描くことが可能で、国際社会の少なくとも一部は、イランが非常に有利な取り引きを拒否したことで『自業自得』だと結論づけるだろう」と述べている。

 そしてまさにその通りになった。2018年、トランプ政権下で、アメリカはイランが合意条件に違反したと根拠なく非難した後、一方的に合意から離脱し、その後、現在アメリカがイランに対して行っている戦争に至るまでの過程で、イランに「最大限の圧力」をかけてきた。

 2024年、バイデン政権下でシリア政府が崩壊すると、シリアの高度な統合防空網が破壊され、イランへの空域回廊が出現し、ほぼ即座に2024年から2025年にかけて、そしてもちろん今年も、アメリカとイスラエルによる直接攻撃につながった。

 現在進行中の対イラン戦争は、アメリカの一極支配が必然的に取って代わられる前に、多極世界を不安定化させ、破壊するための、より広範な世界戦略の一環に過ぎない。

 拡張するロシア

 台頭する多極化のもう一つの中心的柱であるロシアは、冷戦終結以来、アメリカ主導のNATO拡大により包囲されてきた。

 21世紀を通じて、アメリカはロシア周辺諸国を組織的に不安定化させ、政治的に掌握しようと試みてきた。2000年のセルビア、2003年のジョージア、そして2001年と2004年のベラルーシとウクライナの掌握未遂などがその例だ。

 2003年にジョージアが占領されると、アメリカは直ちに同国を軍事化し、隣国ロシアに対する攻撃拠点へと変貌させた。そして2008年の戦争へと発展したが、欧州連合自身の調査で、この戦争はアメリカが支援するジョージアに引き起こされたと結論づけられている。

 2014年までに、アメリカはウクライナも掌握することに成功し、2003年から2008年にかけてのジョージアよりも遙かに大規模な軍事化を直ちに開始した。これには、ウクライナ軍の再編成と訓練だけでなく、アメリカ中央情報局(CIA)によるウクライナ治安機関と情報機関の掌握と支配も含まれていた。

 2017年、トランプ政権下で、アメリカはウクライナへの武器供与を公然と開始した。これはおそらく最後の超えてはならない一線を越えたもので、ロシアは2008年のジョージア戦争のような戦争が再び勃発する前に先制攻撃を余儀なくされたが、その規模ははるかに大きく、より危険なものとなった。

 その結果起きた戦争は、ロシアの膨大な資源と注意力を費やし、シリアの安定を維持する能力を損ない、2024年のシリア政府崩壊の一因となり、今日のアメリカによるイランへの直接攻撃の舞台を整える一因となった可能性が高い。

 アメリカが引き起こしたウクライナでの代理戦争とシリアへの追加圧力は、いずれも2019年のランド研究所の論文「ロシアの手を広げさせる」で概説されていた。これらシナリオは、その後ロシアに対して実行された他の多くの選択肢とともに、ロシアの勢力拡大を図り、最終的にはソ連型の崩壊を招こうとするものだった。

 ウクライナで、アメリカによる対ロシア代理戦争が続く中、米中央情報局(CIA)は、ロシア領奥深くにあるロシアのエネルギー生産施設に対する長距離ドローン攻撃を調整・指揮するとともに、ロシアのエネルギー輸出を輸送するタンカーに対する海上ドローン攻撃も実施してきた。

 アメリカのベネズエラ侵攻、対イランの継続的戦争とロシアのエネルギー生産と輸出に対する攻撃と併せて考えると、憂慮すべきパターンを示している。世界各地における中国の主要なエネルギー供給国の奪取、破壊、または劣化だ。

 中国封じこめ

 アメリカは、中国の最大かつ最も重要なエネルギー同盟国を標的にするだけでなく、長年にわたり、中国の近隣地域、更には中国内でも、同様に不安定化、破壊、あるいは意図的に紛争を誘発しようと試みてきた。

 これには、中国の新疆ウイグル自治区を標的とした長年にわたるテロ行為、2019年に発生したアメリカが支援した香港での暴動や、中国の島嶼省、台湾における分離主義政権への支援と武器供与などが含まれる。

 中国領を超えて、第二次世界大戦終結以来、アメリカは何十年にもわたり、日本・韓国、インド・パキスタン、東南アジアという三つの戦線で、各国を政治的に掌握し、中国に対する攻撃拠点として利用しようと試みてきた。これにはフィリピンも含まれる。フィリピンは中国との近代的インフラ整備協定を破棄し、国家資源を旧米植民地における米軍の駐留拡大と南シナ海における中国との対立拡大に振り向けた。

 ミャンマーとパキスタンの中国国境に近い地域では、アメリカはテロリストを支援し、ミャンマーと中国のパイプラインを含む中国の一帯一路構想(BRI)の主要構成要素を攻撃してきた。2018年のアメリカ海軍大学校レビューを含むアメリカ政策文書は、中国に対するより広範な「海上石油封鎖」の一環として、中国とのいかなる公然たる紛争の際にも爆撃を行うことを以前から提案していた。

 アメリカが支援するテロリスト連中は、中国との全面的衝突を待つのではなく、昨年を含め、長年にわたりパイプラインを繰り返し攻撃してきた。

 今年初め、中国寄り中央政府を打倒しようとするアメリカ支援を受けた反政府勢力を支援する狙いで、ドローンをミャンマーに密輸しようとして、アメリカ人一人とウクライナ人数人が逮捕された。

 総合的に見ると、アメリカは中国の主要同盟諸国に対して戦争や代理戦争を仕掛けてきただけでなく、中国の国境沿い、更には中国国内でも汚い戦争を仕掛けてきた。

 最近の対イラン戦争は、中国のエネルギー輸入の大部分を標的としており、中国がエネルギー自給を達成するまでの5~10年の好機が失われる前に、中国の経済発展にできる限り打撃を与えることを目的としている。

 中国は準備を整えている

 何十年にもわたり、アメリカによる封鎖の試みを中国は十分認識しており、それに備えるため、また封鎖から身を守るため、国内外で投資を行ってきた。

 2018年に米海軍大学校論文で提案されたマラッカ海峡の遠隔封鎖は、それ以降中国の軍事力が飛躍的に拡大したため、もはや実現不可能な可能性が高い。中国は、遙かに大規模で高性能なミサイル戦力を保有しているだけでなく、物理的にもアメリカより規模の大きい海軍を擁し、その海軍力をアジア太平洋地域に集中させている。

 これが、アメリカが中国の軍事力から遥かに遠いホルムズ海峡で封鎖措置を取った理由だろう。だが中国もこれに備えていたようだ。

 中国は膨大な戦略的原油備蓄を構築し、石炭液化燃料の生産を急速に拡大しており、人類史上未曾有の規模で再生可能エネルギー資源への投資と導入を進めている。

 中国の道路を走る車両の大部分は依然精製石油燃料に依存しているものの新車の乗用車、トラック、オートバイの50%以上が電気自動車だ。中国は世界最大かつ最速の旅客鉄道網を有し、また、これまで製造された中で最も強力な電気貨物機関車も保有している。

 アメリカは中国と同盟諸国や同盟国ネットワークに対し、世界規模で大胆な攻勢をかけているように見えるが、中国は何十年にもわたりまさにこのような事態に備えてきた。

 残る課題は、世界規模殺戮と破壊のアメリカ能力が、中国や多極化世界の回復力や経済的、技術的、文明的な拡大能力を凌駕できるかどうかだ。時が経てば明らかになる。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/04/03/the-us-war-on-iran-is-a-us-war-on-multipolarism/

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 ネットで強制的に見せられる「ニュース」なるもの全てゴミ。無意味なものだけ。
 題して、阿呆ニュース。

 正気の論理でブラウザ設計すればゴミ記事でなく重要話題だけ出すのは容易なはず。
 もちろん、これは、裏返せば、誰が反体制派なのを把握する手法と同意義。

 阿呆ページを見ると全く興味が無い芸能・政治洗脳ニュースを見せられる。
 感心する阿呆ニュースに出会った経験や記憶は皆無だ。
 人々を白痴にするため意図的にゴミを流していると考えるのが妥当だろう。
 どなたか阿呆ニュースを見ずに済むブラウザーを開発してくれないだろうか?  

2026年3月 4日 (水)

アメリカの対ロシア代理戦争:今後何が起きるのか?

Brian Berletic
2026年2月25日
New Eastern Outlook

 平和への願いを声高に宣言する裏で、遙かに広範かつ過酷な戦略が展開されており、その影響はウクライナを遙かに超えるものだ。

 

 トランプ政権が発足すると、ウクライナで進行中の戦争を早期に終結させたいと主張していたにもかかわらず、2024年後半から2025年初頭にかけて、アメリカはむしろ戦争を着実にエスカレートさせてきた。

 今日、西側メディアは、ロシア領奥深くへの継続的な長距離ドローン攻撃と、ロシアのエネルギー輸出に対する海上ドローン攻撃がアメリカ中央情報局(CIA)が実行しているのを公然と認めている。その間、アメリカは紛争の公平な「調停者」を装い続けている。

 これに加えて、現在、アメリカは欧州代理勢力がウクライナ国内の戦闘でより直接的かつ危険な役割を果たすよう準備しており、国家資金を欧州国民向けから、ロシアに特化した軍事費向けに移行させている。

 アメリカは、ロシアと中国が主導する多極世界の主要な同盟諸国をロシアと中国しか残らなくなるまで削減しようとしている。

 アメリカはロシア国内でロシアのエネルギー生産施設を攻撃し、国境を越えてロシアのエネルギーを輸送するタンカーに対し海上ドローン攻撃を行っていることを認めているが、いわゆる「ロシアの影の艦隊」を迎撃し、乗り込み、最終的に封鎖するという、より積極的な役割を欧州に担わせようとしている。

 ワシントンのヨーロッパ代理勢力も、徐々に崩壊しつつあるウクライナが作り出す大きな空白を埋めるために、ウクライナ国内への直接介入を迫られている。

 他の地政学的目的を追求するためウクライナでのロシアに対する代理戦争から距離を置きたいとアメリカは主張しているが、この狙いは中南米のベネズエラやキューバ、中東のイラン、アジア太平洋地域の中国など世界中の最も重要なロシア同盟諸国と関係する。

 本質的には、主張に関係なく、アメリカは、台頭する多極主義自体に対して行っている遙かに大規模な戦争の一環として、ロシアに対する代理戦争に依然全力を注いでおり、その全てはアメリカの世界的優位性を維持するための一部なのだ。

 ウクライナにおけるアメリカの狙いは変わらない

 2022年に、ロシアがウクライナで特別軍事作戦(SMO)を開始するずっと前から、アメリカの政策文書は、ウクライナを支配するだけでなく、冷戦終結前に崩壊したソ連と同様に、ウクライナをロシアに対する好戦的代理として利用して過度に拡大させる論理を展開していた。

 ランド研究所が2019年に発表した論文「ロシアの手を広げさせる:有利な立場からの競争」は、二つの重要かつ示唆に富む事実を明らかにしている。第一に、ウクライナ軍への殺傷力ある兵器供与(第一次トランプ政権下で開始)を含む、アメリカによるウクライナへの継続的支援は、ウクライナを守るためではなく、ロシアを挑発するために行われたのだ。

 第二に、報告書は、結果として生じる紛争は「ウクライナ側の不均衡に甚大な犠牲や領土喪失や難民流出をもたらす可能性が高い。ウクライナにとって不利な和平にさえつながる可能性がある」と認めている。

 そして、まさにこれが起きている。

 当時も今も、アメリカの目的は、ウクライナ(あるいはヨーロッパでさえ)がロシアを打倒することではなく「ロシアが軍事的または経済的に過剰拡張し、政権に国内および/または国際的威信と影響力を失わせる」ことを狙った遙かに大きな戦略の一環として、ロシアの負担を可能な限り高くすることだ。

 論文の他部分、特にウクライナに関しては、1980年代にソ連を巻き込んだアメリカ主導のアフガニスタン紛争がアメリカが現在再現しようとしているものと比較されている。

 その目的のため、ウクライナだけでなくヨーロッパの他の国々にも犠牲を強いているにもかかわらず、アメリカはこの代理戦争を継続し、ロシアに膨大な軍事力と装備を前線に投入することを強いている。その結果、シリアを含む他地域に対するロシアの関与がまず損なわれ、ついには2024年にシリアが完全崩壊するに至った。

 そして、アメリカCIAのドローン攻撃がロシア国内のエネルギー生産とロシア国境を遙かに超えた海上エネルギー輸出を標的としていることは認められているが、その全てがロシアの経済力、ひいては軍事力を弱体化させることを目的としている。ロシアのエネルギー生産と輸出を標的とすることは、アジア太平洋地域で中国を包囲し封じ込めることを狙った、遙かに大規模な戦略の一部でもある。

 2018年にアメリカ海軍戦争大学が発表した論文「中国に対する海上石油封鎖」は、(その後実施された措置)アジア太平洋地域での米軍の能力を強化し「遠隔封鎖」を実施することを推奨しただけでなく、中国の一帯一路構想と、中国へのロシア・エネルギー輸出の両方が、中国自体を完全に遮断し、締め付ける上での障害だと指摘した。

 この文書は、一帯一路を物理的に攻撃し断絶するため、アメリカによる「空爆や空中機雷敷設」を含む「軍事行動」を推奨したが 、中国へのロシア・エネルギー輸出を削減するための具体的軍事行動は規定していなかった。

 だが、それ以降、CIAが組織したロシアのエネルギー生産施設へのドローン攻撃は、まさにこの報告書がBRIに対して推奨した「運動行動」を反映している。BRI自体に関しては、アメリカによるBRIインフラ攻撃には至らず、ワシントンは、その代わりに、特にミャンマーとパキスタンにおいて、過激派に武器と支援を提供し、プロジェクトや技術者や現地治安部隊をアメリカに代わって攻撃させている。

 形成されつつあるのは、ロシアと、その同盟諸国、そしてもちろん中国を第一に相手にしてアメリカが戦っている多正面戦争だ。

 ロシアを弱体化させるのは目的ではなく、むしろ手段だ。

 ウクライナ現地の現実

 2014年にアメリカが初めてウクライナを政治的に支配し、その後2022年にSMOを挑発する以前も、それ以降も、ロシアは急速に軍事力を近代化し、拡大してきた。

 以来、ロシアは装甲車、砲弾、巡航ミサイル、弾道ミサイル、ドローン、防空システム、電子戦能力の面で、ヨーロッパのどの国やアメリカ単独より生産量が多いだけでなく、西側諸国全体を凌駕することに成功している。これは、2022年、SMOを開始するずっと前に何年もの計画と準備を必要とした偉業だ。

 ロシアの軍事計画立案者たちは、ウクライナ(および他地域)での紛争が本質的に消耗戦になると知っていて、西側諸国の軍事産業生産とは正反対のやり方で、利益より生産を優先するように国営企業を組織したのはほぼ確実だ。

 これは、西側諸国による着実なエスカレーションや挑発行為にもかかわらず、一貫してロシアに有利な消耗戦の戦場で現れている。

 西側諸国の専門家連中は、領土獲得を唯一の尺度として、ウクライナにおけるロシアの前進を度々否定してきた。だが実際は、前線は何年も停滞したまま、その後、どちらかの勢力が突如急に崩壊することもある。

 消耗戦における本当の成功を測るには、その代わりに、人材徴募と訓練や、軍需産業生産、死傷率といった指標を考慮する必要がある。これら指標はアメリカの説明に合わないため、嘘が報じられるか、全く言及されない。

 2025年後半から2026年にかけて、ウクライナが占領するドンバス領土の残存地域南部のポクロフスクとミルノグラードが陥落し、ロシア軍が北部のリマン付近に向けて着実に進軍した後、ウクライナが占領するスロビャンスクとクラマトルスクは、ロシア軍がこれまでドンバス全域の多くの都市を孤立させ占領するため利用したのと同じ種類の軍隊の交代と補給線の混乱に直面することになる。

 ロシア軍は、ウクライナがドンバスの強固に要塞化された二つの都市を制圧するために利用している通信線に、ドローンや砲火や他の兵器を益々接近させながら、前線全域で圧力をかけ続けるだろう。これら兵器が接近し数が増えるほど、部隊の交代や都市への補給は複雑化し、ウクライナがこれら都市を維持し続けるのは益々困難になる。

 同時に、ウクライナ軍は現在さらに南で攻勢を行っている。

 しかし、これまでのウクライナの攻勢と同様、表面上どれほど成功しているように見えても、人員、武器、弾薬の不足が是正されない限り(そして是正はされていない)、そのような作戦はより多くの犠牲者と、既に不足している資源のより急速な枯渇をもたらすだけで、犠牲者と資源の枯渇はロシアの消耗戦勝利を加速させるだけだ。

 今後何が起きるのか

 既に、ウクライナにおけるロシアとの代理戦争をすぐに終わらせるつもりがないことをアメリカは明確に示している。むしろ急速に勢力を弱めつつあるウクライナ軍が残した空白にヨーロッパが入り込み、前線でロシアに継続的圧力をかけ続ける態勢を整えている。一方、アメリカ自身はロシア国内のエネルギー生産施設攻撃を継続し、ヨーロッパ代理勢力はロシア・エネルギーを海外に輸送する船舶を標的とし、拿捕さえするなど、より積極的な戦略を準備している。

 ベネズエラを政治的に支配し、キューバに圧力をかけ、イランとの戦争準備が急速に進む中、アメリカは、ロシアと中国が主導する多極世界で、ロシアと中国しか残らないようになるまで主要同盟国を減らそうとしている。

 ウクライナ紛争の将来を理解するには、アメリカ主導の一極世界と多極世界がどのように組織され運営されているか、そして多極化に対してアメリカが世界中で仕掛けているより広範な戦争で、ウクライナにおける対ロシア・アメリカ代理戦争がどのような役割を果たしているかを理解する必要がある。

 ヨーロッパはアメリカに反対するのではなく、従属しており、欧州指導者が公式に何を主張しようと、ウクライナ紛争におけるヨーロッパのより大規模で、より危険で、より直接的役割に関わるアメリカの命令を実行する準備が既に進行中だと理解すべきこと。

 更に、ワシントンの主要な地政学的狙いを明確に理解する必要がある。狙いは世界の全ての国々に対する優位性の追求だ。交渉を求める相手を従属させ、更には排除することを究極の目的とする相手と交渉の余地はない。

 アメリカの世界的侵略を防御し、抑止し、最終的に武装解除するために必要な軍事力、経済力、政治力、社会力を構築することによってのみ、ウクライナの紛争や他のあらゆる場所での紛争を公正かつ永久に終わらせることが可能だ。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/02/25/us-proxy-war-on-russia-what-comes-next/

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 植草一秀の『知られざる真実』
米国暴挙諫められない高市首相

2025年12月15日 (月)

アメリカの新たな「和平」提案は(またしても)「ミンスク3.0」焼き直し版

Brian Berletic
2025年11月28日
New Eastern Outlook

 ウクライナにおけるロシアとの代理戦争が続く中、アメリカは再び「和平計画」と呼ばれるものを提案した。

 

 提案内容は的外れだ。アメリカは一般的な和平を求めているわけではなく、ましてロシアとの具体的な和平を求めているわけではない。むしろ以前の提案と同様に、進行中の紛争を凍結し、ウクライナ軍を再建し、可能であれば西側諸国部隊をウクライナ国内に展開させて緩衝地帯を設け、ロシア軍の進撃を阻止しようとする試みだ。

 これは単なる憶測の域を出ず、今年2月にブリュッセルで欧州に向けて出された公開指令の中で、アメリカ国防長官(現在は「戦争長官」)ピート・ヘグセス自ら明らかにしたことだ。

 ヘグセス長官が「これはミンスク3.0であってはならない」とわざわざ主張したにもかかわらず、この指令は、進行中の紛争を凍結し(終わらせるのではなく)、ウクライナの「安全保障上のニーズ」に「倍増して」「再関与」し 、それによりウクライナ軍を再建することを含む「ミンスク 3.0」の枠組みを明示的に提示しただけでなく、実際は「欧州および非欧州の部隊」により課されるシリア式緩衝地帯を追加することでそれを上回っている。

 ミンスク1と2がウクライナ軍制圧を阻止し、実際の和平が実現されるのを阻止したのと同様、この新たな「ミンスク3.0」 提案は、紛争を再び凍結させ、具体的には真の解決策が生まれるのを阻止することを目指している。

 ウクライナに「欧州および非欧州の部隊」が配備され、アメリカが再びロシアとの合意に違反したことが明らかになった場合、ロシアが特別軍事作戦(SMO)を再開する能力は、ウクライナ国内に深く根付いたNATOの存在により複雑になるだろう。これはちょうど、アメリカとトルコ軍がダマスカスと同盟国のロシア、イランによるシリア完全奪還を困難にし、最終的に2024年後半、ロシアとイランが支援する政府の完全崩壊に至ったのと同じだ。

 ロシア主権を回復し、政策、制度を再構築し、産業を利益よりも目的に近づける優先順位に戻したのは、プーチン大統領とその政治的同盟者を含む、現在ロシアを運営している現在の政治的利益だった。

 たとえアメリカがこれらの可能性を明示的に排除した合意を提案しても、最初のミンスク合意とミンスク合意2も同様で、アメリカとウクライナおよびヨーロッパの代理勢力により単純に、露骨に、そして非常に意図的に違反されたのを忘れてはならない。

 また、ウクライナ紛争にとどまらず、アメリカはロシア、そしてそれ以前のソ連に対しても、これまで提案してきたあらゆる合意、条約、了解事項に違反してきたのを忘れてはならない。ドナルド・トランプ大統領自身を含む歴代アメリカ政権により、現在破棄されている中距離核戦力(INF)全廃条約やオープンスカイ条約など、一方的に破棄されてきた軍事条約、覚書、協定が数多く存在する。

 現在のトランプ政権は、政権発足から僅か一年足らずの間に、イランおよびレバノンに拠点を置くヒズボラとの「和平協定」や「停戦」提案を、アメリカの代理組織(イスラエル)による首切り攻撃の試みと、その成功や、アメリカ自身によるイラン攻撃の隠れ蓑として利用してきた。

 ロシアの対応

 これら提案をクレムリンがどのように解釈しているか確実に知ることは不可能だ。ロシア指導部がアメリカ提案を何でも信じるほど素朴だとは考えにくく、そもそもアメリカが平和を模索する可能性があると信じるなど到底考えられない。

 だが、ミンスク1と2を振り返ると、ロシアの国営メディアTASSによれ、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領自身も後に「全くの欺瞞」だったと認めたにもかかわらず、両方の提案に同意したことから、そもそもなぜこれら合意が受け入れられたのか、そしてロシアが西側諸国の将来提案を受け入れるのかどうかという疑問が生じる。

 2014年から2015年にかけて、ロシアは最終的に2022年のSMOとなるものを開始する準備がまだできておらず、ミンスク1と2で双方に生じた時間をロシアがより有効に活用し、SMO開始時に、ウクライナとそのスポンサー、アメリカより強い立場に立てると感じていたのかもしれない。

 アメリカのこの最新提案は、またしても明らかな欺瞞だとロシアは理解しなければならない。アメリカがロシアと同盟国の中国を包囲し封じ込めることに関し、これまでも、そして今も明らかに取り組んでいる真の狙いをヘグセス長官が認めているのだ。

 これに同意するのは、ロシアが自ら休戦を必要としており、休戦によって得られる時間をアメリカとその代理勢力より有効に活用できると確信した場合のみだろう。また、ロシアは、ウクライナへの「欧州および非欧州軍」派遣に対し、現在崩壊し壊滅状態にあるシリア・アラブ共和国でしたよりも効果的な方法で対処する用意があることを確信しなければならない。

 あるいは、ウクライナの戦闘力が崩壊する中、ウクライナの戦場でロシア軍が飛躍的に前進を続ける一方、次々と出される提案にロシアは単に応じるだけかもしれない。

 今や、現在の大統領政権やアメリカ議会の構成にかかわらず、アメリカには合意する能力がないこと、そして数十年にわたる世界覇権追求に直面している国々は、それに対する防衛戦略と、エスカレーションへの危険なスパイラルを回避する手段とのバランスを取らなければならないことは十分に明らかなはずだ。

 アメリカの外交政策の真の意味を理解する

 次々に提案されるアメリカの政策の意味を理解しようとする観察者にとって、アメリカ政策の様々な層を考慮するのは有益だろう。

 これらの層には、(1) 最も浅薄でほとんど意味のない言説、プロパガンダ、政治劇、(2) 進行中のアメリカの軍事作戦、態勢、準備、(3) 定評あるシンクタンク内部で行われている金融企業の政策決定 (そこで書類が弁護士チームにより法案に変えられ、その後ロビイストによりワシントンに送られ、承認されるだけ)、(4) 世界に対するアメリカの優位性を維持するという主な動機と「集団的国際主義」または「多極主義」に立ち向かい解体したいという切実な願望が他の全ての政策を推進している最も深い層が含まれる。

 言説、プロパガンダ、政治劇という上層部に焦点を当てて分析すると、常に混乱が生じ、予測は悲惨に外れ、アメリカの政策、動機、利益を全体的に理解できなくなる。

 これら以外の、より重要性の高い層を更に深く掘り下げることで、表面に作り出された意図的な混乱を切り抜けられる、アメリカの力、その本当の意図や方法や動機について、より深く根本的な理解ができる。

 またアメリカ政策の標的となった人々には、それに伴う欺瞞や、欺瞞によ目をそらすことを意図した裏切りの危険の両方から自らを守るための現実的戦略を策定する最良の機会が与えられる。

 第一階層:言説、プロパガンダ、政治劇

 そもそもアメリカが 「平和」について語っているのは、ロシアが戦場で客観的に成功しているからにすぎない。それはちょうど、2014年から2015年にかけての状況が、ミンスク合意1と2に先立ち、アメリカとそのヨーロッパ代理勢力に 「平和」について語らせたのと同じだ。

 そうでなければ、2024年にシリア政府を転覆させ、シリア・アラブ共和国を完全に政治的に掌握する機会が訪れたときと同様、アメリカとその代理勢力は、指定された敵対国に最大限の損害を与えることを目指して妥協のない政策を追求するだろう。

 この最初の表面的な層では、アメリカは、ウクライナや他の欧州諸国を含むその代理人とともに、ウクライナに関してロシアと不誠実な合意を形成する手段と、アメリカとその代理人がロシアが受け入れる合意を必然的に破る手段の両方を区分することを意図した一種の政治劇を演じている。

 ワシントンが意図する違反行為の中で、まず第一に挙げられるのは、 ウクライナへの侵攻を企図する「欧州および非欧州」部隊の創設と展開だ。アメリカとウクライナおよび欧州代理勢力との間の「意見の不一致」状況は、アメリカが「和平協定」を提案し、可能であれば実施することを可能にする。一方、ウクライナと欧州は協定違反の責任を負い、アメリカは凍結された紛争と、アメリカが計画する「欧州および非欧州」部隊の恩恵を享受しつつ、 ロシアとSMO再開の可能性との間に立ちはだかることになる。

 アメリカは、自国の政治体制でもこの芝居を演じている。「トランプ政権」が提案した内容は、民主党内のいわゆる反対派から自動的に攻撃され、トランプ支持者も同様に、その内容や、ドナルド・トランプ大統領が2024年の選挙運動で掲げた公約との矛盾に関わらず、自動的にその提案を支持するようになる。

 トランプ政権内でも、この芝居は行われている。トランプ大統領の閣僚の中でも「攻撃的」メンバーは、2024年の選挙公約に反する提案の責任を負い、一方、J・D・ヴァンス副大統領のような「理性的」メンバーは、政権が公約を露骨に破っているにもかかわらず、公約を守ろうとしているふりをし、トランプ政権が明らかに正反対の方向へ進んでいるにもかかわらず、少なくとも国民の支持と希望をある程度保とうとしている。

 第二階層: 運用実態

 運用上の現実にはウクライナで進行中の紛争に関するアメリカの実際の行動が含まれる。

 アメリカは2014年にウクライナを政治的に掌握し、現在では政治的、軍事的、経済的に完全支配している。

 アメリカは、ドイツのヴィースバーデンにある作戦基地を通じて、進行中の戦争のあらゆる側面を支配しており、ウクライナ軍指揮系統の最高位を形成し、高レベル戦略の立案から戦場、更にはロシア領奥深くの個々のロシア標的選択まで全てを監督している。

 2014年以来、アメリカはウクライナ諜報能力のあらゆる側面を掌握し、再建し、現在はその指揮を執っている。これは2024年の記事「スパイ戦争:CIAがいかにしてウクライナのプーチンとの戦いを秘密裏に支援しているか」でニューヨーク・タイムズが明らかにしている。

 アメリカは依然欧州全土に数万人の軍隊を駐留させており、2014年以降ウクライナに対して行ったのと同じやり方で、ロシア国境沿いのNATO加盟諸国や非NATO加盟諸国を軍事化するアメリカ政策を監督しており、そもそもこの紛争を引き起こしているのだ。

 これら全ては、上の層で行われている言説、プロパガンダ、政治的演劇と関係なく客観的に継続しており、いかなる政治的保証、約束、または提案された合意よりもアメリカの意図をはるかに正確に示している。

 第三階層:金融企業による政策立案

 更に深いのは、ワシントンの世界作戦の現実を導く戦略を提示する政策文書で、その言説、プロパガンダ、政治劇、約束に関係なく、ロシアに対する継続的な敵意や攻撃や再包囲が含まれる。

 ロシアに関するアメリカの作戦上の現実は、2019年のランド研究所論文「Extending Russia Competing from Advantageous Ground(ロシアの手を広げさせる:有利な立場からの競争)」の中で明確に示されており、同論文は、現在進行中のウクライナにおけるロシアとの代理戦争として「Measure 1: Provide Lethal Aid to Ukraine (対策1:ウクライナへの致死的援助の提供)」を提案し、その内容について次のように述べている。  
ウクライナへのアメリカの支援拡大(致死的な軍事支援を含む)は、ロシアにとってドンバス地域を掌握するための犠牲(血と財政の両面)を増大させる可能性が高い。分離主義者へのロシアの支援拡大とロシア軍の増派が必要になる可能性が高く、支出増大、装備損失と、ロシア軍死傷者の増加につながる。後者は、ソ連のアフガニスタン侵攻時と同様に、ロシア国内で大きな物議を醸す可能性がある。
 この文書はまた「ベラルーシの政権転覆を促進する」「南コーカサスの緊張を利用する」、「 中央アジアにおけるロシアの影響力を減らす」「シリア反政府勢力への支援を強化する」などの措置により、ロシア周辺地域全体、更には旧ソ連邦諸国でロシアに圧力をかけることを提案している。

 この文書では、更に「石油輸出の妨害」「天然ガス輸出の削減とパイプライン拡張の妨害」「制裁を課す」「 ロシア頭脳流出の促進」といった経済対策も提案されているが、これらは全て、オバマ政権、トランプ政権、バイデン政権、そして現在第二次トランプ政権にかけて、アメリカがこれまでに実施し現在も実施し続けている対策だ。

 繰り返しになるが、様々なアメリカ政権が公式に何を言ったか、あるいはロシアに非公式に何を約束したかにかかわらず、ランド研究所の「Extending Russia Competing from Advantageous Ground ロシアの手を広げさせる」のような政策文書は、ロシアに対するアメリカ政策を推進する実際の青写真となっており、過去と現在の運用上の現実に現れている。

 更に悪いのは、ロシアを標的としたこのような政策が当てはまる全体像だ。

 2018年にアメリカ海軍大学が発表した「A Maritime Blockade Against China 中国に対する海上封鎖」と題する論文では、ロシアは、その大きなエネルギー生産能力、中国と接する長い国境や、中国にエネルギーを供給するパイプライン建設が進行中であることなどから、中国包囲や封鎖の成功上、大きな障害になると指摘されている。

 たとえ中国の海上封鎖と、中国の一帯一路構想における陸上経路の標的化・破壊に成功したとしても、中国へのロシア・エネルギー輸出は、アメリカ封鎖を成功させる上で依然困難をもたらす。従って、これは長年にわたるロシア自身を封じ込める政策を遙かに超え、遙かに緊急かつ切実に望まれている中国封じ込め政策に合致するものだ。

 今年2月に欧州に送った指示の中で、中国封じ込めに向けて、アメリカは緊急に方向転換しなければならないとさえヘグセス長官は言及していた。

 仮にウクライナに関する全ての面で、ロシアがアメリカに全面的に譲歩したとしても、同様に中国との断絶、あるいは敵対的姿勢を取ることで譲歩しない限り、アメリカはウクライナにとどまらずロシア周辺への攻撃を続けるだろう。

 ランド研究所をはじめとする政策シンクタンクは、独立機関とは言い難い存在で、武器メーカー、大手石油企業、製薬業界、巨大IT企業、銀行、投資会社など西側諸国全体の最も強力で影響力ある利害関係者を代表する企業や金融機関から資金提供を受け、運営されている。これが、更に深い層へと繋がる。

 第四階層: 大企業・金融企業の主目的

 これら政策シンクタンクが大手企業や金融企業の利益によって動かされているとすれば、一体何がその利益を動かしているのだろう?

 答えは、権力と利益の永続的追求で、それは「株主至上主義」といった原則により制度化され、株主の富の最大化を要求する。有限、あるいは時に減少する人口と、同様に有限な市場における利益と権力への果てしない欲望は、あらゆる競争の排除を意味する。それは統合と独占の過程を通じて、アメリカ国内のみならず、世界全体での競争で、ロシアを含む世界全ての国の人口と市場への参入と独占を要求する。

 これら原則が究極的に具体化し、ロシアに与えた影響は、ソ連崩壊と新生ロシア連邦に対する欧米諸国による略奪が続く1990年代に顕著となった。目的志向の国営企業を解体し 「民営化」し、その後、利益のために資産を剥奪・売却しようとする動きは、何百万人もの人々を貧困に陥れ、将来の見通しを暗くした。

 「自由市場資本主義」の約束はロシア国民には全く受け入れられなかったが、それは その後何十年も西側資本主義の熱気に「温められてきた」旧ソ連諸国の人々にも受け入れられなかったのと同じだ。

 ロシア主権を回復し、政策、制度、産業を再構築し、利益より目標に優先順位を戻したのは、プーチン大統領と政治的同盟者を含む現在ロシアを運営している現在の政治的利害関係者で、それがロシア連邦の今日の世界大国復活につながったのだ。

 ウォール街とワシントンの観点からすると、これは権力と利益の追求という彼らの主目的に対する障害で、そのためロシア(と多極世界を構成する他の多くの国々、特に中国)は「敵」に指定され、ソ連がかつてそうだったように、そしてシリア、リビア、イラク、そして最近ではネパールなどの国々がずっと最近そうであったように、数十年にわたる政策により、侵略や包囲や最終的には転覆を狙われてきたのだ。

 これら主目的が変わらない限り(そして変わっていないが)、それらが生み出す政策は変化せず、実施されるこれら政策の運用上の現実も変化しない。

 唯一変わるのは、世界中の大衆と意思決定者の両方を、この現実からそらし、武装解除させ、更なる前進のための余地や時間や機会を得るために使われる言説とプロパガンダと政治劇だけだ。

 アメリカ外交政策の完全な分析は、これら全ての層を網羅し、アメリカ外交政策が実際どのように、そして、なぜ策定されるのかという基本原則を一貫して理解していく必要がある。言説、プロパガンダ、政治劇といった最も表面的な層に焦点を当てても、地政学的現実は理解できない。海の波を、いくら研究しても、その遙か下に潜む何百万もの生物や海流や地形が全て明らかにならないのと同じだ。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/11/28/new-us-peace-proposal-is-minsk-3-0-repackaged-yet-again/

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 本記事の筆者が同じ話題を語っているYoutbeは下記。
New US “Peace” Proposal is “Minsk 3.0” Repackaged (Yet Again) 1:06:37
 Alex Christoforou Youtube  
Italy warns Ursula. Odessa port hit. Iran strikes back. Zelensky Kupyansk iPhone. Article 5 Security 22:53
 Arc Times
高市首相の逆ギレ答弁、経済も/高市氏の経済音痴を全解説/伊東市長選どうなる/家計の大苦境と維新の「税金食い物」(金子勝❎尾形聡彦) 1:40:19
 

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