NATO

2025年5月14日 (水)

複数欧米メディアが突然イスラエルを強く非難



一年半に及ぶ大量虐殺残虐行為の後、多くのイギリス報道機関の編集委員会が、突如、イスラエルによるガザへの大量虐殺猛攻撃を強く非難する姿勢を見せた。

ケイトリン・ジョンストン
2025年5月12日

 この英語記事の朗読を聞く(朗読:ティム・フォーリー)。

 1年半に及ぶ大量虐殺残虐行為の後、多数のイギリス報道機関の編集委員会が、突如、イスラエルによるガザへの大量虐殺猛攻撃を強く非難する姿勢を見せた。

 最初の雨粒は、先週、フィナンシャル・タイムズ論説委員会による「The west’s shameful silence on Gaza(ガザに対する欧米の恥ずべき沈黙)」と題する記事から始まった。この記事は、アメリカとヨーロッパが同盟国の犯罪行為について「ほとんど一言も非難していない」と非難し「沈黙していることを恥じ、罰を受けずにネタニヤフが行動するのを許すのを止めるべきだ」と述べている。

 その後、エコノミスト誌は「The War in Gaza must end(ガザでの戦争は終結しなければならない)」と題する記事を掲載し、トランプ大統領はネタニヤフ政権に停戦を迫るべきだと主張し「戦争継続で利益を得るのは、連立政権を維持するネタニヤフと、ガザを空にしてユダヤ人入植地を再建することを夢見る極右同盟者だけだ」と述べている。


 土曜日「End the deafening silence on Gaza — it is time to speak up(ガザに対する耳をつんざくような沈黙を終わらせ、声を上げるべき時だ)」と題する社説をインディペンデント紙が掲載し「既に壊滅的なガザ爆撃を拡大する新たな計画をネタニヤフ首相が発表した今、特に何も言わなかったことを恥じるべきだ」と主張し「今こそ起きていることに世界が目を覚まし、ガザ地区に閉じ込められたパレスチナ人の苦しみに終止符を打つよう要求すべき時だ」とイギリスのキール・スターマー首相が訴えた。

 日曜日、ガーディアン紙編集委員会は「The Guardian view on Israel and Gaza: Trump can stop this horror. The alternative is unthinkable(イスラエルとガザに関するガーディアン紙見解:トランプはこの惨劇を止められる。それ以外の選択肢は考えられない)」と題する記事を掲載し「アメリカ大統領には停戦を強制する力がある。そうしなければ、完全破壊計画とも言えるものを暗黙のうちに承認することになる」と述べた。

 「これがジェノサイドでなければ一体何だ?」とガーディアンは問いかける。「今でなければ一体いつ、このテロを止めるためアメリカと同盟諸国は行動を起こすのか?」

 念のため申し上げるが、これらは論説記事で意見記事ではない。つまり、これらは一人個人の意見表明ではなくメディア全体の立場を表明する記事だ。ガザ虐殺におけるイスラエルの行動を批判する論説記事が欧米主要メディアで散見されることはあるが、一斉に各メディアがイスラエルと欧米支援諸国を激しく非難する記事を掲載するのは非常に新しい展開だ。


 意外にも長年のイスラエル支持者の中にも個人として意見を変え始めた者もいる。

 先週下院で、何十年にもわたり「いかなる犠牲を払っても」イスラエルを支持してきたが、イスラエルのガザ地区での行動をめぐっては「間違っていた」と保守党議員マーク・プリチャードは述べ、支持を公式に撤回すると述べた。

 「長年にわたり―私は20年間この議会にいる―率直に言って、どんな犠牲を払ってでもイスラエルを支持してきた」とプリチャードは述べた。「だが今日、私はその考えが間違っていたと申し上げたいと思う。ガザ地区やヨルダン川西岸地区のパレスチナの人々に対するイスラエルの行為を私は非難する。そして、今ガザ地区でイスラエルが行っている行為に対する支持を、今すぐ撤回したいと思う。」

 「これが人々が振り返る歴史の瞬間で、我々が国として間違っていたのを想起する瞬間なのではないかと私は本当に懸念している」とプリチャードは付け加えた。


 ガザでの虐殺の間、激しく大学キャンパスの抗議活動参加者を非難し、イスラエル批判者を「血の誹謗中傷だ」と非難してきた親イスラエル派評論家シャイエル・ベン・エフライムは、今やイスラエルが反対しなければならない大量虐殺を犯していると公に認めた。

 「ここまで来るのに長い時間がかかったが、そろそろ現実を直視すべき時だ。イスラエルはガザでジェノサイドを犯している」とエフライムは最近ツイートした。「病院の無差別爆撃、住民の飢餓、民族浄化計画、援助活動家虐殺や隠蔽工作。もはや逃れようがない。イスラエルはパレスチナ人を根絶しようとしている。これを認めない限り、止めることはできない。」

 ここまで来るのにこれだけの人が1年半もかかったとは奇妙な話だ。ジェノサイドや子どもの大量殺戮に対し、私自身決して寛容ではない。19ヶ月もジェノサイドの波に揺られてきた人が、突然その恐ろしさを叫び、ブレーキをかけるよう要求するのは、いささか奇妙に思える。

 これらの人々は突然良心が芽生えたわけではなく、風の匂いを嗅ぎつけているだけだ。合意が一定の水準を超えると、当然ながら、それに抵抗する最後の一人になるのを避けようとして狂乱した行動に出るのだ。自分の行いを歴史がはっきり証明した後、生涯その汚点を公式の場で背負うことになると分かっているからだ。


 これはトランプ政権がネタニヤフ首相の逆鱗に触れ始めている中での出来事だ。最近、アメリカがテルアビブの意向を無視してハマスと直接交渉して、アメリカ人人質解放を実現させたことに対し「アメリカからの安全保障支援を断つ必要があると思う」とネタニヤフ首相は発言した。イエメン、サウジアラビア、イランといった地域における国際情勢に関する交渉で、アメリカは、イスラエルを益々排除していると報じられている。何かが変わりつつある。

 だから、もしあなたが、いまだイスラエルを支持し続けているなら、変われる今のうちに変わるようお勧めする。激しい競争の中、常にガザ・ホロコーストに反対してきたかのよう振る舞い始める最後の一人にならない悪党一番乗りになれる可能性はまだある。

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 記事原文のurl:https://caitlinjohnstone.com.au/2025/05/12/multiple-western-press-outlets-have-suddenly-pivoted-hard-against-israel/

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 Judging Freedom アメリカ、イエメン、どちらが勝利したのか?
AMB. Charles Freeman : Who Won the US/Yemen War? 24:47
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
トランプ、「カタールから4億ドルの豪華航空機を受け取らないのは愚か」、米国憲法「公職に就いている者は、議会の同意なく贈り物、報酬を受け取ってはならない」、NYT「カタール機、トランプ大統領第2期における汚職懸念を浮き彫りにする」、民間機の使用は安全機能上問題、現行規則では困難。
 日刊IWJガイド

田代秀敏氏が語るイラン人監督によるトランプのなりたちを描く映画『アプレンティス』、必見に思える。
「米中が115%の関税引き下げに合意! ベッセント米財務長官は『米中どちら側もデカップリングを望んでいないという点で一致した』と表明!」2025.5.13号

<岩上安身によるインタビュー配信!!>ドナルド・トランプ」という人物の「正体」がわかる!! 本日13日午後7時より、「『トランプ関税』の衝撃波が世界を襲う! 貿易政策と安全保障政策の融合!? 逆に米国と同盟国に、経済破綻と社会崩壊の危機が迫る!? 岩上安身によるインタビュー第1188回ゲスト エコノミスト・田代秀敏氏 第1弾」(後編)を配信します! 配信終了後、会員向けIWJサイトのアーカイブにアップします!

2025年5月 9日 (金)

全速力で進むヨーロッパの戦争準備:フランス人軍事地図製作者はルーマニアで一体何をしているのか?



エルキン・オンカン
2025年4月17日
Strategic Culture Foundation

 トルコが果たす役割は、NATO加盟国としても地域大国としても特に重要だ。

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 ロシアとの紛争の可能性に備えて、フランス軍地図製作者がルーマニアに駐留しているという衝撃的記事をフランス新聞「ル・フィガロ」が掲載した。「ロシアとの緊張が高まる中、NATOの東側陣地にフランス軍の地図製作者が展開」と題されたニコラ・バロテ記者による記事は、ロシア攻撃を想定した新たな軍事準備について詳述している。

 報道によれば、ルーマニアとモルドバ、ウクライナの国境沿い地域地図をフランス軍地図製作者が作成中だという。

 5kmごとに給水塔や鐘楼などの高所を兵士が特定していることが注目される。

 フランス軍兵士によれば、これら建造物は必要に応じて砲撃標的地点として利用される予定だという。

 部隊移動経路と軍の前進軸を含む非常に詳細な地図もフランス軍は作成した。この地図作成の主目的は、衛星信号が途絶えた場合でも地上で方向感覚を確保することだ。
 
地図作製を実施したのは一体誰か?

 地図作成作業は第28地理集団(28e Groupe Geographique)により実施された。

 「28e GG」の略称で知られるこの部隊は、ストラスブール近郊のアグノーに駐屯しており、規模は小さいながらも、フランス陸軍において最も戦略的な部隊の一つだ。28e GGは、陸軍に対し地理情報、地図作成、地形解析支援を提供している。長年にわたり情報司令部の管轄下に置かれていたが、2023年秋、工兵旅団(brigade du genie)に再編された。

 軍事作戦において極めて重要な役割を担うこの部隊は、作戦地域における地図作成、LIDAR(レーザー測位技術)、ドローン、モバイル・データ収集装置などを用いた3D地形地図作成を担当している。軍事標的やインフラへの経路特定、衛星信号が途絶えた場合に備えた基準点決定、標的識別や火力支援計画策定における砲兵支援も行っている。350名の隊員で構成されるこの部隊は、作戦だけでなく計画策定過程にも積極的に参加している。
 
ルーマニアにおけるフランス軍駐留

 一方、フランス軍のルーマニア駐留は目新しいものではない。ロシア・ウクライナ戦争勃発時、NATOによるルーマニア東部防衛強化の一環として、フランスはルーマニア中部のトランシルヴァニア地方にあるチンクに1000人の部隊を派兵した。

 フランス軍兵士は、NATOが設立したルーマニア駐留多国籍戦闘集団も指揮している。
 
なぜルーマニアなのか?

 フィガロ紙によれば、部隊は既にルーマニアで作成した地図をアグノー本部の壁に掲示しているという。

 ルーマニアの地図では、国の地形が3次元で表示されている。第28師団は5kmごとに基準点を設定し、軍の移動経路の地図を作成した。

 この地図は、Googleストリートビューに類似した技術を用いて作成された。28eGGが使用した高解像度カメラとレーザー・センサーを搭載した車両が、この地域を3Dスキャンしたのだ。

 この軍事準備の最も重要な側面はフォクシャニ門だ。
 
フォクシャニ門

 フォクシャニ門(またはフォクシャニ峠)はルーマニア東部に位置し、歴史的、軍事戦略的に非常に重要な地域だ。

 東カルパティア山脈とドナウ川平野の間の狭く平坦な地峡で、モルドバ、トランシルヴァニア、ドナウ川地域を結ぶ回廊として機能している。

 周囲の山岳地帯と異なり、この平坦な地域は防御が難しく、攻撃が容易だ。

 この経路を通ってロシアが攻撃を仕掛ける可能性があるとNATOが想定していることから、フォクシャニを経由するロシア侵攻が成功すれば、その侵攻はルーマニア中心部にまで広がり、コンスタンツァを経由して黒海にまで達する可能性があると予想されている。

 更に、オスマン帝国、ロシア、ドイツ、ソビエト連邦が、フォクシャニを軍事目的で歴史的に利用してきたことは、この地域の戦略的関心に貢献している。
 
フォクシャニ経由でロシアが攻撃したらどうなるか?

 フォクシャニへの重点的取り組みは「ロシア侵攻」という物語の下、ヨーロッパを軍事化しようとする広範な取り組みの一環なのは確実だ。だがNATOの想定が現実のものとなったらどうなるだろう?

 予想通りフォクシャニを経由してロシアが攻撃した場合、最初に遭遇する部隊はルーマニアの第8師団と第2歩兵師団になるだろう。最初の航空攻撃は、フェテシュティ空軍基地とボルチャ空軍基地に駐留するルーマニア軍航空機により行われることになるだろう。

 仮にNATOが第5条を発動し、ロシアと全面対決すると決断すれば、ルーマニアの黒海沿岸にあるミハイル・コガルニセアヌの米空軍基地も関与することになるだろう。

 フォクシャニを経由してロシアが攻撃した場合、バルト地域におけるNATOの強力な存在は主要な影響を与えないだろう。例えば、カルパティア山脈の存在により、ポーランドをはじめとするバルト諸国がモルドバ・ルーマニア軸に直接介入するのは兵站的に困難だろう。これらの国々はせいぜいロシアに対する新たな戦線を北部に展開する陽動作戦を展開する程度だろう。

 このようなシナリオで、NATOのもう一つの主要部隊として思い浮かぶのは、2001年にNATOの即時対応部隊として設立されたNATOイタリア緊急展開軍団だ。
 
トルコの立場

 バランス外交を脇に置き、NATOで二番目に大きな陸軍を有する国としてトルコが同盟義務を履行すると仮定すれば、可能性があるトルコの行動には、72時間以内に部隊をルーマニアに派遣することが含まれるだろう。

 2023年現在、トルコは第66機械化歩兵旅団(イスタンブール)やコマンド旅団など即応性の高い部隊と共に非常に高い即応性を備えた統合任務部隊(VJTF)に加盟している。

 この文脈で、イスタンブールの第66機械化旅団と、シリアでの作戦で経験を積んだコマンド旅団が、ルーマニアに地上支援を提供できる最速部隊だと思われる。

 トルコ海軍は黒海最大のNATO海軍力でもあり、フリゲート艦、高速攻撃艇、掃海艇を駆使して第2常設NATO海洋グループ(SNMG2)と第2常設NATO対機雷グループ(SNMCMG2)に交代で参加している。

 同様に、トルコの空軍力は、ルーマニアのNATO基地に戦闘部隊と弾薬の増援を空輸できる。また無人機や海上哨戒機を活用すれば、偵察・抑止任務を遂行できる。NATOの作戦計画に基づき、上陸能力を備えた水陸両用部隊やSAT/SASコマンド部隊をルーマニア領内に展開させることも可能だ。

 もちろん、このようなシナリオにおいて、トルコが直接軍事介入する可能性は、トルコの伝統的なバランス志向の外交政策の範囲外だと考えられている。

 現在の政治状況下では、このようなシミュレーションが実現する可能性は明らかに低いが、そのためには、ロシアがまずオデーサを占領してモルドバ国境に到達し、次にモルドバ(トランスニストリア)経由でルーマニア侵攻を試みることが必要になる。

 だが今のところトルコが直接戦争に関与する可能性は低いものの、現在の「抑止力」の概念の範囲内でトルコが新たな責任を担う可能性に関し声高に議論されることが増えている。

 特に、欧州をドナルド・トランプ大統領が「見捨てた」と見られ、トルコに注目が集まっている政治情勢において、最近レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領がアンタルヤ外交フォーラムで述べた「トルコは欧州の安全保障に責任を負う用意がある」という発言は、トルコが近い将来、欧州の安全保障体制において、より積極的な役割を果たすことをこれまでで最も明確に示している。

 最近、トルコ軍がウクライナに派遣されるという話が多く出ているが、NATOの重要地域であるルーマニアにトルコ軍が派遣されても驚くには当たらない。
 
結論

 東欧に加え、南東欧もロシアの潜在的攻撃ルートとNATOは見なし、それに応じて戦争準備を調整している。トランプ政権下で米欧関係は依然不安定な状況にあるが、現在進行中の準備は、どちら側もアメリカが短期間で欧州から軍を撤退させると本当に信じてはいないことを示唆している。実際、NATOとアメリカの当局者は、既にこの件について「安心感を与える」ための取り組みを開始している。

 一方、NATOはルーマニアをロシア攻撃時の戦略的なルートと見なし、この地域を軍事的に極めて重要な地域と位置付けている。しかし、ルーマニアのような国における反NATOまたは反EUへの傾倒は、現在の戦略に深刻な打撃を与えるのは明らかだ。この事実は、ルーマニア大統領選挙第一回投票からも既に明らかだ…

 現在ルーマニアは、NATOの南東側で重要な役割を果たしているものの、政治的志向の変化の兆候が現れ始めている。2024年ルーマニア大統領選挙第一回投票では、親欧米派および親EU派政党が大きく後退し、一方民族主義とEU懐疑派勢力が勢いを増した。この変化が続けば、この地域におけるNATOの将来計画に深刻な課題をもたらす可能性がある。

 ロシアとの長期的対立を見据え、NATOは東部および南東部の戦線を強化する一方、加盟諸国の政治的変容を注意深く監視する必要がある。国民の不満や国家主義的な言説や極右政治運動の台頭が、同盟の結束力と作戦能力を損なう可能性がある。

 更に、現在の米欧同盟は軍事協定のみに基づいて構築されているわけではないことが明らかになりつつある。この同盟の持続可能性は、加盟諸国における国内の政治的安定と国民の支持にも左右される。こうした文脈で、NATO加盟国として、そして南東欧と黒海流域の発展に影響を与える地域大国として、トルコが果たす役割は特に重要だ。

 ルーマニアにおけるフランス軍による地図作成活動は、一見すると日常的な技術作戦のように見えるかもしれないが、実際は、より広範な戦争準備の一環だ。地図作成場所の選択や詳細度や、フォクシャニ門のような脆弱な回廊への重点的取り組みは、綿密に練られた軍事的緊急事態対応計画を物語っている。

 要するに、ヨーロッパは再び戦争準備を進めているのだ。今回は遠く離れた敵ではなく、強大で核兵器を保有する隣国との戦争だ。そして、こうした断層線の交差点に位置するルーマニアのような国々は、急速に軍事化が進んでいる。これが本物の準備なのか、それとも計算された抑止力なのかはさておき、確かなことが一つある。戦争の地図を描いた連中は既に動き出している。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/04/17/full-speed-ahead-for-war-preparations-in-europe-what-are-french-military-cartographers-doing-in-romania/

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 Daniel Davis/Deep Dive  
John Mearsheimer: Why the EU Can't End Russia Ukraine War 52:15
 植草一秀の『知られざる真実』
対米交渉の戦略上の誤り
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
①コルビー米国防次官(政策担当)が英軍に、インド太平洋地域への関与を減らせと発言、②台湾の国防副部長訪問時、台湾の要請する武器供与を拒否は断片的出来事か意味があるか、一つの解釈「バイデン政権の「アジア回帰」から、トランプ政権下「選択と集中」型の戦略へのシフトの可能性

2025年5月 8日 (木)

シリアでは、まずアラウィー派とキリスト教徒を殺し、今ドルーズ派を殺している。次は誰の番?



ソニア・ファン・デン・エンデ
2025年5月4日
Strategic Culture Foundation

 オスマン帝国がしたと同様、かつてのヨーロッパ植民地勢力は混乱や宗派間分裂や不安を引き起こした。

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 今旧シリアと私が呼ぶ地域で起きている出来事に関し世界も政治家もメディアも沈黙を守っている。完全に沈黙している。シリアはバルカン化されつつある。更に悪いことに、パレスチナと同様、民族浄化が進んでいる。少なくとも、それが狙いだ。

 2024年12月、アサド大統領政権崩壊以降、暴力や民族浄化や殺人や報復の連鎖が続いている。欧米メディアや、アルジャジーラやアルアラビーヤなどのスンニ派の視点が支配的なアラブ系メディアは沈黙を守り、あるいは民族浄化をアサド前大統領政権の抵抗勢力残党との単なる戦いとして片付けている。

 もちろん彼らは真実を明らかにしていない。ハヤト・タハリール・アル・シャム(旧アルカイダ)と称され、現在シリアを支配しているいわゆる反政府勢力は実はISISだ。確かにISISは戻ってきた。彼らはイドリブから完全撤退したわけではない。そしてイスラエルでシオニスト入植者(多くはアメリカからの移民)がしているのと同様に彼らはスンニ派信仰をテロの武器として振り回している。

 宗教を武器として、また口実として利用して、彼らは異教徒や反対する者や反体制派など、あらゆる人々を抹殺しようとしている。彼らは過激化し洗脳された集団で、対話は不可能だ。残された選択肢は、根絶するか、自分たちが根絶されるか、どちらかだ。シリアでも、そして以前アフガニスタンやリビアでも、この状況は既に目の当たりにしてきた。アッラーや神やヤハウェの名の下で、しばしば一般市民を標的とした攻撃が、世界中で残忍で中世的残虐行為で行われるのを我々は目撃してきた。

 アラウィー派の民族浄化キリスト教徒追放は、今年3月8日にマアルーラやセドナヤなどの地域で始まり、現在もいわゆる「キリスト教徒の谷」で続いている。アラウィー派は大量解雇や非人道的生活環境(失業、無一文、飢餓、そして最終的には死の危機)に抗議した。これに対し、ダマスカスのテロリスト、アル=ジュラーニ(その後、彼はギャング団と共に大統領官邸を占拠した)率いるテロリスト連中は「治安機関」を装ってアラウィー派を組織的に殺害し始めた。

 念のために、キルギス安全保障会議のマラト・イマンクロフ書記長の調査結果を引用しよう。2月に「一部推計によると、最大2万人の外国人武装勢力がシリア治安部隊に加わっている」と同書記長は述べている。この数字は控えめなものだ。現在、世界中からテロリストが旧シリアに流入し、現地住民の民族浄化を助長している。全て、トルコの支援を得て、中世イデオロギーに根ざす新たなカリフ制国家を樹立するためだ。

 中東は数世紀も前の時代へ逆戻りしようとしている。もしヨーロッパをはじめとする世界がこの癌の蔓延を許せば、間もなく新たなカリフ制国家に対抗する武装を迫られることになるだろう。コルドバ首長国(929年にコルドバ・カリフ国となった)のように、このアラブ・イスラム国家は756年から1031年までウマイヤ朝に支配され、かつて南スペインを支配していた。彼らはポワティエの門で阻止されたが、今日新たなカリフ制国家の支持者たちは、既にヨーロッパ全土に潜伏している。その門は2015年に突破された

 今ドゥルーズ派は民族浄化に直面している。アル=ジュラーニ率いるISIS政権はアラウィー派を虐殺し、多くをレバノンに逃亡させた後(そこで彼らはキリスト教徒の同胞と共にヨーロッパ・ビザを待っている)今週、ダマスカス郊外のドゥルーズ派の都市ジャラマナに攻撃を仕掛けた。著名なドゥルーズ派のシャイフたちは政権の治安部隊に(主に外国人)処刑された。ドゥルーズ派の村サウラ・カビラやシリアのドゥルーズ派共同体の中心地スワイダ県全域で、攻撃により数千人の若者やシャイフや女性や子どもが死亡した。

 HTS-ISISによる砲撃で、アス・スワイダ県全域のドゥルーズ派の村々の家屋が壊滅的被害を受けた。現地筋によると、住宅地への迫撃砲や砲撃により、住民が避難を余儀なくされ、甚大な被害が出ている。公式死傷者数は未確認だが、多くの民間人が死亡し、広範囲にパニックが広がっていることが示唆されている。サフナヤ市長のフサム・ワルワルと息子ハイダルなどの重要人物は、アル・ジュラーニ率いるISIS治安部隊に戦地銃殺刑に処された。

 ソーシャル・メディアで拡散されている映像には、スカイブルーのシャツを着たワルワル市長が公の場で治安総軍を歓迎し、交渉を試みる様子が映っている。市長はシリアのテレビにも出演し、住民に対し、安定と新勢力との協力を約束した。しかし、それから24時間も経たないうちに、彼と息子はISIS-HTS政権に処刑され、死亡した。

 一方、アル=ジュラーニ部隊は、ホムスから40キロ離れたファヒル村のようなアラウィー派、ドゥルーズ派、キリスト教徒が住む村々を襲撃した。彼らのやり方は一貫している。インターネットと電気を遮断し、住民全員虐殺するのだ。これは毎日行われているが、主流メディアは報じない。恥ずべき怠慢だ。

 一方ISISが支配する国営メディアSANAは「治安と安定を強化するため」「治安部隊」がアル・スーラ・アル・クブラに配備されたと主張している。だが彼ら自身の映像が虚偽を暴露している。ISISの紋章をつけたテロリストが、いわゆる治安部隊として活動している。

 だが世界の政治家やエリート連中は、シリアの金と権力の匂いを嗅ぎつけている。今欧米諸国(や他の国々)は、ダマスカスの宮殿でテロリストのアル・ジュラーニと接触し、彼の足元にひざまずき(男性のみ)握手し、自撮り写真を撮り、彼の「包括的」指導力を称賛している。植民地事業に常に熱心なフランスは既に合意に達している。シリア陸海港湾総局(旧政府組織を維持)は、ラタキアのコンテナ・ターミナル管理に関しフランス企業CMA CGMと契約を締結した。ラタキアは再びフランスの手に渡った。

 あるいは間もなく新カリフ制国家で休暇を過ごすことになるイタリア人を考えてみよう。彼らは虐殺が繰り広げられているアラウィー派やキリスト教徒やドゥルーズ派の村々を訪問するのだろうか? 女性は義務としてベールを被るだろうか? それとも1936年にヒトラーがしたように迫り来る大量虐殺の証拠を全て消し去り、同調するのだろうか?

 言うまでもなく、トルコはシリアにおける代理ISISに無条件支援をしている。無人機や欧米やトルコやイスラエル兵器を用いて旧シリア軍を24時間で壊滅させた「電撃戦」を可能にしたのはイスラエルと連携したトルコだった。なぜシリア人は抵抗できなかったのか? 1933年から1945年にかけて、処刑される前にユダヤ人が全てを奪われたのと同じだ。

 トルコにとって、これはクルド人「問題」解決にもつながる。アンカラの指示により、クルド人はアル・ジュラーニの次の標的になっている。クルド人の自決はトルコにとって選択肢ではなかった。歴史がそれを証明している。では西側諸国の援助はどうだろう? アメリカはクルド人を繰り返し裏切ってきた。故キッシンジャーが言った通り「アメリカの敵であることは危険かもしれないが、アメリカの友であることは致命的だ」。

 近い将来、我々はクルド人根絶の試みを目撃する可能性が高い。トルコ国内でも、彼らは長らく標的とされてきた。トルコ国内では不穏な空気がくすぶっており、トルコ・メディアはそれを抑えている。だが抗議活動は依然続いており、クルド人、世俗主義者を問わず、数百人が刑務所へと消えつつある。

 これが中東と西アジアの悲劇的現実だ。かつてのヨーロッパ植民地勢力は、混乱や宗派間分裂や不安を撒き散らした。オスマン帝国も同様だ。オスマン帝国は第一次世界大戦でドイツと同盟を結び、その後第二次世界大戦では、中立を装いながらナチスと秘密裏に交渉した。今日トルコの二面性は露呈している。ヨーロッパと1945年以降のアメリカの植民地主義的イデオロギーは今も生き残り、中東で数え切れないほどの命を奪っている。全て優位と資源略奪のためだ。今やかつてシリアだった地域を支配する欧米諸国と狂信的宗教勢力に粉砕された世俗主義は束の間の夢だった。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/05/04/first-they-kill-alawites-and-christians-now-druze-who-next-syria/

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 The Chris Hedges Report
The Dark Money Game (w/ Alex Gibney) | The Chris Hedges Report 48:34
Chris Hedges speaks with filmmaker Alex Gibney about his new documentary series, which tracks just two examples within the “labyrinth of mirrors” of untraceable corruption that fuels American politics

Chris Hedges
May 08, 2025

 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
日本は自動車、鉄鋼関税を米国との間に抱える。EUも同じ。EUと米国の交渉は日本に影響与える。対EU上乗せは10%。米政権は別に鉄鋼とアルミニウム、自動車・自動車部品に25%追加関税。EUはトランプ関税に屈服せず 1000億ユーロ相当の米国製品を関税標的に-交渉決裂なら

2025年5月 7日 (水)

習近平、ルラ、マドゥロが5月9日モスクワ祝賀に出席すれば安全に責任を持てないと恫喝するウクライナ



エドゥアルド・バスコ
2025年5月4日
Strategic Culture Foundation

 ソ連崩壊後の暦で最も重要な日に停戦を遵守するのを拒否して、ゼレンスキー大統領は、5月9日に何の価値も感じていないことを示している。

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 ウクライナ「大統領」ウラジーミル・ゼレンスキーは、5月9日に赤の広場で行われる戦勝記念日の軍事パレードに出席するためモスクワを訪問する予定の、いわゆる「グローバル・サウス」諸国の指導者を再び脅迫した。中国の習近平国家主席、ブラジルのルラ大統領、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領、キューバのディアス=カネル大統領、ベラルーシのルカシェンコ大統領、セルビアのアレクサンダル・ブチッチ大統領、ベトナムのト・ラム大統領、ブルキナファソのトラオレ大統領、スロバキアのフィツォ大統領らが、祝賀行事に出席するとみられる国家元首だ。

 3日(土)ゼレンスキー大統領は、ウクライナ報道陣への声明で、習近平国家主席をはじめとする各国首脳の今週のロシア訪問について問われて「第二次世界大戦におけるナチズム打倒を記念する祝賀行事の最中にロシア領内で彼らに何が起きるか責任を負いかねる」と答えた。「彼ら(ロシア人)が皆様の安全を保証しているのだから、我々は何の保証もしない」と付け加えた。

 2024年半ばに任期満了を迎え、選挙の無期限延期の恩恵を受けているゼレンスキー大統領は、今週のモスクワ訪問に関する安全保障上の問題について、外国首脳(名前は伏せた)から質問を受けたと述べた。大統領は、これら首脳に対し、今後起こりうる事態についてキーウは責任を負わないと伝えたと述べた。また、軍事パレード当日にモスクワで放火や爆発が発生した場合も、ウクライナは責任を負わないとも表明した。

 俳優から政治家に転身した彼が対ナチス・ドイツ戦勝80周年記念式典におけるモスクワの安全保障について脅迫的発言をしたのは、これで二度目だ。先週火曜日には、ロシアは「自国パレードが危険にさらされているのを懸念しており、それは当然だ」と発言した。

 ゼレンスキー大統領が婉曲的脅迫をする一方、側近は公然と脅迫をしている。水曜日、ウクライナ・メディア・インタビューで「我々が赤の広場を攻撃する時が来る。5月9日であろうと、それ以降であろうと、その時は来る」と(ルーマニア議会)最高会議のユーリ・パヴレンコ副議長が述べた。ロシアの首都には「ウクライナの地に多大な悲しみをもたらした正当な軍事標的が満ち溢れている」と彼は述べ、攻撃の可能性を正当化した。

 4月末、ロシア連邦のウラジーミル・プーチン大統領は、5月8日、9日、10日、11日の完全な一方的停戦を発表した。これらの日は、1945年5月9日にドイツ国会議事堂にソ連国旗が掲揚されたことを記念する、赤軍とソ連人民によるヒトラー・ナチスに対する勝利を記念するロシアの祝日だ。これは2ヶ月足らずで3度目の停戦で、本格的停戦としては2度目となる。まず、ロシアは3月18日から4月18日まで、ウクライナ管理下のエネルギー・インフラ攻撃を一時停止した(キーウはこの停止措置に同調しなかった)。次に、モスクワは復活祭停戦を宣言した(ロシアの報道によると、ウクライナはこれまで何度も合意に違反していたにもかかわらず、今回は公式に遵守した)。

 現在、ウクライナ政権は、戦勝記念日にロシアが発表した停戦に従うことを拒否している。土曜日「5月9日にプーチン大統領が孤立から逃れるため、穏やかな雰囲気を醸成し、クレムリン広場に集まるプーチン大統領の指導部や友人や協力者など、誰もが安心し、安全に過ごせるようにするために、このような行動を取るのを支持する者は誰もいないだろう。(中略)我々は、戦争状態にあるか、プーチン大統領が停戦の用意ができているのを示すかのいずれかだ」とゼレンスキー大統領は述べた。

 ゼレンスキー大統領は、ソ連崩壊後の暦で最重要な日に停戦を遵守するのを拒否し、5月9日に何の価値も感じていないことを示している。実際、2013年末のユーロマイダンでのクーデター以来、ウクライナ国民とロシアが常に「大祖国戦争」と呼ぶ戦争記憶のあらゆる痕跡を、キーウ独裁政権は消し去ろうとしてきた。

 ウクライナ政権によれば、ナチズムを打ち破ったのはウクライナ国民とロシア国民ではなく、イギリスの支援を受けたアメリカだった。実際、新政府プロパガンダによれば、ナチズムは大悪とさえみなされていなかった。真の悪はウクライナ人を抑圧したソ連だった。それどころか、ドイツ・ナチズムはウクライナを占領し、共産主義支配から解放したのだ。

 これが現ウクライナ政権が支持する言い分なのは驚くべきことではない。結局、この政権は第二次世界大戦中にナチスに協力した傀儡政権の末裔なのだ。ユーロマイダン・クーデターの先頭に立ったのはステパン・バンデラとアンドレイ・メリニク率いるウクライナ民族主義者組織に触発されたネオナチ政党や民兵や集団(アゾフ大隊、プラヴィ・セクター、スヴォボダ)だった。新ウクライナ・ナチスは新政権で重要な地位に上り詰め、大臣、副大臣、知事、市長に就任した。彼らは警察と軍隊も掌握し、準軍事組織を吸収した。だが民兵は依然政治弾圧活動を続け、街頭で自由に象徴を掲げており、左派政党や組織は禁止されている。

 1940年代のナチス・ドイツによるウクライナ占領に協力したメルニクやバンデラや他の人々の誕生日をウクライナ当局は毎年祝っている。彼らの名を冠した像や記念碑や広場や通りや大通りが建設されている。当然ながら、彼らはキーウ現政権がほぼ12年間試みてきたことと全く同じことをしたのだ。つまり、ロシア系住民、ユダヤ人、ポーランド人や彼らの政敵だった共産主義者や反ファシストを迫害し、投獄し、大量虐殺し、恐怖に陥れたのだ。

 プーチン大統領が戦勝80周年記念式典で発表した停戦を受け入れることは、事実上、ウクライナをナチス占領から解放したのは、ロシアと反ファシスト・ゲリラに率いられたソ連だったことを認めることになる。そして、この占領はキーウ現政権を鼓舞する偶像崇拝者連中に支持されていたのだ。それは赤軍の役割を想起させ、現在多くのウクライナ人が開催を禁じられている祝賀行事を正当化することになる。ロシア国民と共に5月9日を祝うことは、既に極めて不人気で信用を失っているゼレンスキー政権に疑問を投げかけることになるかもしれない。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/05/04/ukraine-threatens-xi-lula-maduro-with-attacks-for-attending-moscow-may-9/

 Judging Freedom
COL. Douglas Macgregor : Is Iran a Threat to the US? 33:40
 植草一秀の『知られざる真実』
メディア情報誘導に最大警戒
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
台湾の国防副部長訪米。その際、台湾側要請のシーホークヘリコプターおよびE-2D全天候型戦術空中早期警戒機の提供を拒否された。トランプ氏の「アメリカファースト」政策は、同盟国へのコミットメントを条件付きにする傾向があり、台湾への無条件の支援が後退する可能性がある。

2025年5月 6日 (火)

ヨーロッパは第二次世界大戦の真実を消し去ろうとしているがナチスの犯罪は決して忘れてはならない



ソニア・ファン・デン・エンデ
2025年5月5日
Strategic Culture Foundation

 欧州ではファシズムが再燃し、ネオナチは民族主義者を装っている。特に極右政権が統制を強めているウクライナで顕著だ。

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 5月9日が近づくにつれ、1933年から1945年までドイツと(1938年のオーストリア併合後)オーストリアを支配したナチスの打倒と彼らからの解放を記念する準備をロシアは進めている。この間に、ナチスは多くのヨーロッパ諸国に侵攻し、ソ連を征服しようと恐ろしいバルバロッサ作戦を開始した。

 Lebensraum生存圏の追求を超えて、ナチスは占領地からユダヤ人、ロマ人、非アーリア人、共産主義者や政敵を「浄化」しようとした。これは民族浄化だったが、ナチスは残虐行為を行うために工業化手法を開発した。当初大量銃殺に頼っていたが、後にチクロンBを使用したガス室を導入した。これはより「効率的」に、兵士の精神的トラウマも軽減できると主張したのだ。だが依然大量射殺は、ウクライナ、ポーランド、ベラルーシ、バルト諸国で数十万人もの命を奪ったが、その多くはユダヤ人だった。

 最も悪名高い場所の一つがキーウ近郊のバビ・ヤールだ。1941年9月29日から30日にかけて、ウクライナ人協力者が約34,000人のユダヤ人を殺害した場所だ。最近のドキュメンタリーが明らかにしている通り、ナチスだけでこのような虐殺を実行するには人員が足りなかったのだ

写真 © ヤド・ヴァシェム・バビ・ヤール

 終戦までに、SSガリツィン師団の8,500人(凶悪犯罪に関与したとされるウクライナ兵)がイギリスで難民認定を受け、その多くが後にカナダに移住した。最近カナダ議会で、ナチス退役軍人ヤロスラフ・フンカが表彰されたことは欧米諸国におけるナチズムの根強さを如実に示している。

 リトアニアはユダヤ人死者数が世界的に最も多かった国の一つで、ナチス政権下でユダヤ人人口の最大90%が現地の協力を得て虐殺された。ポナリ虐殺は、Sicherheitsdienst(SD親衛隊保安部)と親衛隊(Schutzstaffel SS)の監督下、リトアニア暗殺部隊(Ypatingasis būrys )が実行し、1941年7月から1944年8月の間に約10万人(主にユダヤ人、ポーランド人、ロシア人)の命を奪った。
 

ポナールの森の渓谷で処刑するため、リトアニア民兵に集められたユダヤ人たち。ドイツ占領下のリトアニア、1941年。© YIVOユダヤ研究所提供。

 ベラルーシにおいて、ハティン村の虐殺は特に残虐な例として記憶されている。1943年3月22日、主にウクライナ人協力者で構成され、SS特別大隊将官ディルレヴァンガーの支援を受けた親衛隊第118大隊は、パルチザン攻撃への報復として、村のほぼ全員を虐殺した。ベラルーシのユダヤ人の90%以上(60万人以上)が大量射殺により殺害された。少なくとも5,000の村が焼き払われ、多くの場合、住民全員殺害された。パルチザンへの支援に対する罰として、1,500人にも及ぶ犠牲者が出た村もあった。ウクライナやバルト諸国と異なり、ベラルーシ人の多くはナチスに抵抗し、より広範なソビエト連邦に類似した共産主義と多民族社会を維持した。

写真: © www.sb.by/en/memory-is-sacred.html

 ポーランドはナチス・ドイツと枢軸協力者により計り知れない苦しみを味わった。占領下で組織的大量虐殺が行われ、特にユダヤ系ポーランド人が標的となった。ナチスはスラブ人とユダヤ人を人種的に劣った「劣等人間」とみなし、根絶やしにしようとした。ドイツ国外の強制収容所のほとんどはポーランドにあり、中でもアウシュビッツは最も悪名が高かった。ナチスによるポーランド征服後の1940年に設立されたアウシュビッツでは、5年足らずで推定110万人が死亡した。内訳はユダヤ人100万人、ポーランド人7万人、ロマ人とシンティ人2万1000人、ソ連軍捕虜1万5000人、その他(チェコ人、ベラルーシ人、ユーゴスラビア人、フランス人、ドイツ人、オーストリア人)1万2000人だった。1945年1月27日にソ連赤軍がアウシュビッツを解放した。

 今日、ナチズムはヨーロッパで依然根強く残っている。ウクライナで復活したナチズムと戦っているロシアはホロコースト記念行事への参加を禁じられている。これは、ヨーロッパに根強く残るファシズム傾向を象徴する拒否だ。

 バルバロッサ作戦で最大の被害を受けたのは東欧とロシアだったが、これほどの規模の残虐行為は、特にウクライナとバルト諸国における地域協力なしには不可能だった。今日に至るまで、リトアニアはユダヤ人や共産主義者や他の反対派の殺害を含むホロコーストへの加担に関し議論することを禁止している

アウシュビッツを解放するソ連赤軍 – © Sovfoto/Universal Images Group/Getty Images

 西ヨーロッパでもナチスの残虐行為が目撃された。フランスでは、1944年6月10日にオラドゥール=シュル=グラヌで起きた虐殺で、SS(親衛隊)が村を破壊し、教会で643人の民間人を生きたまま焼き殺した。オランダでは、1944年10月1日に起きたプッテン虐殺で、村の男性人口全員にあたる602人がドイツの強制収容所に移送され、生き残ったのはわずか48人だった。

 労働者階級の都市で、社会主義と共産主義への強い共感を抱くロッテルダムは、甚大な被害を受けた。1940年5月14日、ドイツ軍の爆撃により歴史的中心部は壊滅した。その後、 1944年から1945年にかけての飢餓の冬には、レニングラード(サンクトペテルブルグ)同様、ロッテルダムも包囲され、食糧は占領下のドイツ人のために確保された。2万人以上が飢餓と寒さで亡くなった。ロッテルダムは処刑や国外追放にも耐え、オランダ最後の解放都市となった。


1944年の飢えた少年 – © M. Meijboom、コレクター オランダ写真美術館、ロッテルダム

 セルビアとギリシャでは、対パルチザン作戦中に村全体が破壊された。ギリシャでは、カンダノス虐殺とヴィアノス虐殺が顕著だ。セルビアでは、ドイツ国防軍がクラグイェヴァツ虐殺(1941年10月)で2,700人以上、クラリェヴォ虐殺で2,000人以上の民間人を殺害した。1941年12月までに、ドイツ軍の報復により2万人から3万人のセルビア人が命を落とした。ユダヤ人ではなく、ナチス占領に抵抗した地元住民だ。


セルビア、クラリエボの虐殺 - ©クラリエボのナチス (ドイツ) の虐殺 - セルビア 1941 - www.zlocininadsrbima.com

 80年を経て、西欧諸国はこの歴史の多くを消し去り、ドイツとロシアを等しく戦争の責任を負わせる物語に書き換えた。記念行事は強制収容所(ロシアは排除されている)とノルマンディー上陸作戦(D-Day)に焦点を絞り、ソ連の決定的役割を軽視している。ヨーロッパではファシズムが再燃し、ネオナチが民族主義者を装っている。特に極右政権が権力を強めるウクライナで顕著だ。ヨーロッパは再び目を背けて、自らの共謀に向き合う代わりに、ロシアをスケープゴートにしている。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/05/05/europe-erasing-wwiis-truth-but-nazi-crimes-must-never-be-forgotten/

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2025年5月 5日 (月)

和平も敬意もなし:ゼレンスキー大統領、5月9日のパレードを攻撃すると恫喝



ロレンツォ・マリア・パチーニ
2025年5月3日
Strategic Culture Foundation

 5月9日、未来への道筋を示す合図がモスクワで発せられる。まもなく我々は知るだろう。

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意図は明らかだ

ウォロディミル・ゼレンスキーは、自称ウクライナ永遠大統領として妄想に陥り、この祝祭期間中でさえ、たわ言を吐き出し続け、5月9日の祝賀行事に言及し、復活祭の時と同様、ウラジーミル・プーチンの休戦提案を拒否した。

 残念ながら、拒否は広く予想されていたことで、祝賀ムードの真っ只中に彼がロシアを挑発するのも予想通りだった。ゼレンスキー大統領は30日間停戦を呼びかけているが、戦場の状況は完全にロシアに有利で、ロシアがこれを受け入れる理由はない。一方、SMO開始以来、外交慣例に則り、真摯かつ包括的和平交渉を通じてのみ戦争の恒久的停止に同意するとプーチン大統領は一貫して主張してきた。

 ワシントン傀儡の傲慢さは際限がなく、外交儀礼の枠を完全に逸脱している。最低の軍事学校さえ、ここまでのことは考えつくまい。ウクライナ大統領がどんな犠牲を払おうとも、直接対決を求めているのは、ほとんど恥ずべきことだ。これはもはや単なる挑発の反復ではなく、それを超える。敵の忍耐を削ぐ戦略だ。これほど自殺行為に近い行動は他にない。

 5月9日に赤の広場で行われるパレードに参加する指導者たちの安全をウクライナは保証できないともゼレンスキー大統領は述べた。これは理論上ウクライナに対して制限措置や制裁を発動できる国家元首に対する明白な脅しだ。なぜこのような事態に至ったのだろう? これは実に悪質な発言だ。「世界で最も孤独な男」、誰からも無視され、不可能な戦争の名の下で欧州諸国やNATO加盟国から寄生虫のように資金を吸い上げ自らの利益だけ守ろうとする指導者の恫喝など明らかに誰も恐れていない。

 全て台無しにしてしまうかもしれない恐怖から、重要な仕事には一切手を出せない頭のおかしな友人がいると想像願いたい。それがゼレンスキーだ。しかし今こそ駆け引きをやめるべき時だ。  
モスクワは歴史を刻む準備ができている

 もしウクライナが本当にモスクワを攻撃すれば、報復は壊滅的なものになるだろう。そして、国際社会の反応も同様に壊滅的なものになるだろう。

 5月9日には世界中から多数の政治家がモスクワを訪問予定だ。周知のとおり、この招待は1月から続く和平交渉の継続として、アメリカのドナルド・トランプ大統領にも、また米中間の緊張が特に高まっている時期、中国の習近平国家主席にも送られた。

 再び、これは人生と外交における教訓だ。ロシアは誰の許可も必要としない国際的立場にあるため、仲介を求め、権威をもって実践している。それどころか模範を示している。キーウが心に留めておくべき模範だ。この機会は計り知れない価値がある。象徴的に、これは歴史に刻まれた原則、すなわち反ファシズムの原則、そしてソビエト・ロシアのおかげでヨーロッパでナチズムが敗北したという歴史的事実の繰り返しだ。また、ソビエト・モデルの社会主義が、1世紀前の他のイデオロギーに対し客観的な歴史的勝利を収めたという繰り返しでもある(この勝利は途切れることなく続いたが、残念ながら1989年以降、自由主義の深刻な打撃を受けた)。そして今日、これは明確な願望の表れだ。それは、いかなる名目や旗印の下でも、西側の覇権に服従することを望まない全ての人々にとっての指針となるブロックとして、ユーラシアの人々を再び団結させることだ。共通の繁栄、実りある協力や、平和、平和や、再び平和を促進したい願いだ。西洋諸国はこれら全てを否定し、戦争や抑圧や暴力や残虐行為で対抗している。

 キーウ、ブリュッセル、ロンドンのいずれも、この和平の意図を受け入れられないのは明らかだ。ウクライナ戦争は西側諸国に煽られてきた。なぜなら、一部西側諸国にとって、既存秩序を覆し、ある種のバランスを変え、軍需市場を活性化させることが都合が良かったためだ。彼らは既に多大な投資をしてきたため、戦争を諦められないのだ。連中の破壊計画は、失敗に終わる以外の選択肢はない。

 ゼレンスキーは、まさにこの狂気の代弁者でしかない。ヨーロッパが戦争を望むなら、残念ながらそうなるだろう。この三年の紛争の間、ロシアは挑発に屈することなく、模範的バランスを保ち続けてきた。だが、もしウクライナの暴力に関わらず、モスクワが先に行動を起こしたらどうなるだろう? 80年前、今日のウクライナ戦士を突き動かしている政治イデオロギーと闘い、ヨーロッパを解放した殉教者たちの血に敬意を表すとしたらどうなるだろう? 三年以上もの間、ウクライナが継続的に犯してきた戦争法と国際法違反は「もうたくさんだ」と告げるとロシアが決意したらどうだろう?

 実のところ、これらは、おそらく英語を話す上司連中から、あらゆることを試みるよう迫られたゼレンスキー最後のあがきだ。

 5月9日に、未来への道筋を示す合図がモスクワで発せられる。まもなく我々は知るだろう。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/05/03/no-peace-and-no-respect-zelensky-threatens-the-may-9-parade/

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 テロ国家元首というより宗主国、MI6/CIA鉄砲玉。

 イギリスのスタマー首相、5/8日のイギリス戦勝祝賀パレードではウクライナ軍も行進させるという。

 日刊IWJガイド
「今期のご寄付の目標額の不足分は、9ヶ月間で約1583万円に! どうか、5月こそは、緊急のご支援を! ご寄付、カンパをお願いします!」2025.5.5号

■はじめに~5月です! 今期第15期の期末である7月末まであと3ヶ月です! 4月は1日から30日までの30日間で、68件、148万4300円のご寄付・カンパをいただきました! しかし、これは月間目標額の350万円の約42%にとどまりました! 今期のご寄付の目標額の不足分は、8月から4月までの9ヶ月間で1582万9556円にのぼっています! どうか、5月こそは、緊急のご支援を! 緊急のご寄付、カンパをお願いします!

【中継番組表】

<本日午後7時より、岩上安身によるインタビュー初配信!!>「『トランプ関税』の衝撃波が世界を襲う! 貿易政策と安全保障政策の融合!? 逆に米国と同盟国に、経済破綻と社会崩壊の危機が迫る!? 岩上安身によるインタビュー第1188回ゲスト エコノミスト・田代秀敏氏 第1弾(前編)」を撮りおろし初配信します! 配信終了後、会員向けIWJサイトのアーカイブにアップします!

■自動車部品への「トランプ関税」がついに発動! しかし、米国製自動車は50%が外国製の輸入部品!? 米国で販売される自動車価格は、1車あたり30万円から170万円上昇するとの見通しも! トランプ大統領は、米国内関連団体の圧力を受け、トランプ関税の影響を軽減する大統領令に署名! 日本の部品メーカーは「受注が減るのでは」と懸念! 関税交渉にあたる赤沢亮正経済再生担当相は、改めて自動車や同部品への追加関税の見直しを要請するも、発動回避には至らず! 石破茂首相は「極めて残念」として、あくまで関税の「撤廃」を求め、粘り強く働きかけると表明!

■政府備蓄米放出の効果はあったのか!? 米価は「高止まり」どころか「うなぎのぼり」! 5kg5000円時代が目前に! 衰退途上国の日本は、とうとう米も食べられなくなる!?

■<IWJ取材報告>「公務中の米兵を、逮捕起訴できない。その根拠は、『日米地位協定』があるから! しかし、公務外の米兵の性暴力犯罪も、取り締まることはできない! 日米合同委員会で『裁判権放棄密約』が結ばれているから!」と、甲斐正康氏!~4.26 日本社会の問題の核心を突く! 日米合同委員会廃止! ニューサンノー米軍センター前抗議街宣

■「戦争をやめさせる」はずのトランプ内閣が、ウクライナ紛争を剛腕で停戦させようとしているのに対し、イスラエルのジェノサイドはなぜ野放し!? その謎に迫る!!【ガザ戦争とハマス】15ヶ月に及ぶ戦争は中東地域に何をもたらしたか? トランプ政権によってパレスチナはどうなるのか? 4月発行の『岩上安身のIWJ特報!』は、「岩上安身による現代イスラム研究センター理事長・宮田律氏インタビュー」をテキスト化し、詳細な注釈をつけて発行しました! ぜひ「まぐまぐ」からご登録ください!! IWJのサポート会員になれば、IWJサイトでバックナンバーをすべて読めます! ぜひ、サポート会員にご登録を!!

2025年5月 4日 (日)

「ロシアを制裁しなければクラブに入れてやらない」と戦勝記念日を前にセルビアを脅迫するユーロ官僚


イアン・プラウド
2025年4月20日
Strategic Culture Foundation

 ウクライナ戦争で「我々につくのか、ロシアにつくのか」の二者択一をブリュッセルの欧州官僚がセルビアに迫っている。

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 スロバキアをはじめとする中央ヨーロッパ諸国が、ブリュッセルにおける反民主主義的な動きに不満を募らせる中、欧州委員会はEU加盟を目指すセルビアなどの国々に対し、ロシアとの関与を断ち切り、代わりに制裁を課すよう圧力を強めている。これは欧州構想にとって暗い兆しだと言える。

 スロバキアのロベルト・フィツォ首相とセルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領は、第二次世界大戦終結80周年を記念し、5月9日にモクワで行われる戦勝記念日パレードに出席する予定だ。両者の大きな違いは、スロバキアはEU加盟国である一方、セルビアは将来の加盟を希望している点だ。

 4月14日のEU外相会議後、「ロシアが実際に欧州で本格的戦争を仕掛けていることを考えれば、5月9日にモスクワで行われるパレードや祝賀行事へのいかなる参加も欧州では軽視されない」とEU外務安全保障上級代表カヤ・カラスは述べた。

 ラトビアのバイバ・ブラジェ外務大臣も発言し、「EU加盟国は候補者に対し、EUの価値観にそぐわないとして、5月9日のモスクワでの軍事パレードに参加せず、そのような旅行もしないよう明確に指示しており、制裁措置も含め、CFSPの価値観と整合性に関する議論」を指摘した。

 エストニア外務省のヨナタン・フセリオフ事務総長は、より率直にこう述べた。「セルビアには、特定の決定には代償が伴うことを理解してもらう必要がある。その結果、彼らは欧州連合(EU)に加盟できない。」

 欧州連合(EU)の内部手続きは、脅迫や恐喝が常態化するほど武器化されている。2020年以降、EU加盟プロセスの変更により、加盟国は加盟プロセスのあらゆる段階で加盟候補国を阻止できるようになった。

 セルビアは、加盟プロセスの第3クラスター(競争力と包括的成長)の進展に向けた取り組みを、交渉開始に制度上有利な立場にあるように見えるにもかかわらず、ここ数年行き詰まっている。

 ハンガリーは、クラスター3交渉を2024年12月に開始することで合意を得ようとしたが、いつもの札付き、エストニアとラトビアとセルビアの隣国クロアチアを含むEU7カ国に阻止された。理由として挙げられたのは、セルビアがロシアへの経済制裁を拒否したこと、その「不明確な地政学的方向性」と、コソボとの関係だ。

 セルビアが欧州との関係とロシアとの関係で取ってきたバランスのとれた路線は、ヴチッチ大統領が権力を握っている限り、ブリュッセルにおける大きな争点となるだろう。

 ヴチッチはしばしば対話とウクライナ戦争の平和的解決を訴えてきた。しかし、それは彼がモスクワのあらゆる点に同意しているという意味ではない。彼はクリミアをロシア領として承認していない。これはセルビアがコソボの独立を認めていないのと同じ理由だ。だが、彼が指摘する通り、バルカン半島諸国と旧ソ連圏諸国間の関係は複雑で、特定の分野では大きな相違があるにもかかわらず、対話は極めて重要だ。

 セルビア外交政策のあらゆる側面が親ロシア的だと断言するのは全くの誤りだ。だが、ジョージアの場合と同様、ウクライナ戦争と欧州の継続的な民主主義の行き過ぎが相まって、ブリュッセルの欧州官僚連中はセルビアに二者択一を迫っている。「我々かロシアか」。

 セルビアはロシアとの健全な関係維持に尽力する一方、2009年に初めてEU加盟を申請し、2012年に候補国としての地位を獲得して以来、長年にわたりEU加盟への真摯な姿勢を示してきた。かつては、セルビアが2025年、つまり今年までのEU加盟を目指して奔走しているように見えた時期もあった。政府には欧州統合省が設置されている。2020年のパンデミックによる落ち込みを除けば、セルビアの年間経済成長は力強く、経済開放に向けて大きな前進を遂げている。

 しかし、ヴチッチ大統領は最近、セルビアが2030年より前にEUに加盟する可能性は低いと示唆した。それでもなお、あまりに野心的だと思う。たとえウクライナで和平が実現したとしても、ウルズラ・フォン・デア・ライエンとカヤ・カラスが2029年半ばまでEUの事務総長を務める状況で、ロシアに対するEU制裁が完全に解除されると賭けるのは、楽観的な見方でなければ不可能だ。そして、制裁に関するセルビアの立場は、この期間中、加盟交渉を凍結させるだろう。

 こうした状況にもかかわらず、ヴチッチ大統領は5月9日にモスクワ訪問予定だ。第二次世界大戦で戦死したユーゴスラビアの100万人を追悼するため、セルビア軍部隊は赤の広場で行われる戦勝記念パレードに参加予定だ。

 最近のインタビューで、セルビアのミリツァ・ジュルジェヴィッチ=スタメンコフスキ家族・人口大臣は次のように述べた。「EUがロシアに対する制裁と対決を常に主張し、ウクライナ紛争に関して合理的解決策を避け、自らの機関における民主的正当性の深刻な欠如を認めようとしないこと、これら全てが欧州プロジェクトの権威と魅力を深刻に損なっている。」

 そのため、セルビアのEU加盟への意欲は冷めつつあるのかもしれない。EU加盟国であるクロアチアやエストニアなどのEU加盟国と足並みを揃えない限り、セルビアが欧州に加盟することは決してないだろうという認識が広まりつつあるからだ。

 EUの政治家たちは、3月のセルビア政府の崩壊につながった広範な反政府抗議行動を支持してきた。これは、2024年11月にノヴィ・サド駅で16人が死亡した悲劇を受けて、汚職と過失の疑惑が浮上したことを受けてのことだった。セルビア国内の状況は、新政権樹立により安定しつつあるように見える。

 だがEUとアメリカがトビリシの政権交代を積極的に求め、前大統領の任期終了が近づくにつれジョージアにかけられた大きな圧力が、ここにも反映されているのは憂慮すべきだ。

 スロバキアは既にEU加盟国であるため、益々不満を募らせるロベルト・フィツォ首相は、5月9日のモスクワ訪問に関するブリュッセルからの脅迫への対応上、ヴチッチ首相ほど制約を感じていないようだ。Xへの投稿で彼は次のように述べている。

 カラスの警告は一種の脅迫なのか、それともモスクワから帰国したら処罰されるというシグナルなのか。私には分からない。しかし、1939年ではなく2025年であるのは確かだ。カラスの警告は、EU内で民主主義の本質について議論する必要があることを改めて示している。ルーマニアとフランスで大統領選挙に関連して何が起きたか、ジョージアとセルビアで欧米諸国が組織した「マイダン」について…そして私はEU内でウクライナの平和の必要性を一貫して訴え、この無意味な戦争の継続を支持しない数少ない人物の一人であることを改めてお伝えしたいと思う。カラス氏発言は失礼で、強く抗議する。

 私も全く同感だ。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/04/20/sanction-russia-or-you-cant-join-our-club-eurocrats-blackmail-serbia-ahead-victory-day/

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 Sabby Sabs Larry C. Johnson、経歴を語る。
Larry C. Johnson: CIA, Ukraine, Trump and More! 1:01:45
 今朝の孫崎享氏のメルマガ題名
日本社会は基本的に米国に隷属していれば①経済は繫栄、②軍事上の安全は保たれると思ってきた。今変化、①石破首相発言(国益冒してまで早期妥結は求めない)、②安全保障に関する世論調査-米国は本気で日本を守らないー。背景に自動車関税。日米主張継続。早期関税合意は不可能。

2025年5月 3日 (土)

致命的な誤り:1997年にNATO首脳はジョージ・ケナンの言い分に耳を傾けるべきだった



イアン・プラウド
2025年4月18日
Strategic Culture Foundation

 1997年「NATO拡大は冷戦後の全時代におけるアメリカ外交政策で最も致命的な誤りとなるだろう」と練達のアメリカ外交官ジョージ・ケナンが述べた。

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 1997年「NATO拡大は冷戦後全時代におけるアメリカ外交政策の最も致命的な間違いになるだろう」と練達のアメリカ外交官ジョージ・ケナンは述べた。28年後、一体誰が彼の発言が間違っていたと言えるだろう?

 1947年のニューヨーク・タイムズ記事で、ソ連封じ込め政策を提唱したことでジョージ・ケナンは有名だ。匿名性を保つため、記事にはXと署名していた。封じ込め政策はソ連の力の最終的崩壊、あるいは弱体化につながると彼は考えており、実際、前者の予測は現実のものとなった。

 だがソ連崩壊後のNATO拡大に彼は反対し、欧州諸国にNATOとロシアのどちらかを選ぶよう求めることは最終的に紛争につながると主張した。

 1997年2月5日のニューヨーク・タイムズ記事で、彼は次のように問いかけた。「冷戦終結によってあらゆる希望に満ちた可能性が生まれたにもかかわらず、東西関係は、空想的で全く予測不可能で、あり得ない将来の軍事紛争において、誰が誰と同盟を結び、暗黙のうちに誰と敵対するかという問題に集中しなければならないのは一体なぜだろう。」

 彼の記事は、1997年7月にマドリードで開催されるNATO首脳会議に先立ち、チェコ共和国、ハンガリー、ポーランド、スロバキアを含むNATO拡大計画を検討する議論に影響を与えることを意図していた。これらの国々は第二次世界大戦後、ソ連の弾圧に苦しんだが、ワルシャワ条約機構解体後、自由で民主的な国家となった。

 ケナンの警告は無視され、国民投票で必要票数を獲得できなかったスロバキアを除き、旧ワルシャワ条約機構加盟国四カ国中三カ国をNATOに加盟させることにNATO首脳会議は合意した。

 1998年5月1日、アメリカ上院はNATO加盟国すべてに義務付けられている通り、拡大を承認する決議を可決した。上院決議後、当時のクリントン大統領はホワイトハウスで次のように述べた。「ポーランド、ハンガリー、チェコ共和国の加盟を認めることで、世代の夢であるヨーロッパ大陸における国民国家の台頭以来初めて統一され、民主的で安全なヨーロッパの実現に、我々はこれまで以上に近づくことになる。」

 当時から現在まで受け継がれている考え方は、NATOは同じ民主主義の原則を持つ国々の軍事同盟で、暗黙のうちにロシアの軍事侵略に対する防壁として機能するというものだ。だが、ロシアが軍事力により西ヨーロッパを征服しようとしているという考え(これは今日でも政治やメディアの議論に散見される)を不合理だとケナンは考えていたようだ。

 1998年5月2日、アメリカ上院決議の翌日のニューヨーク・タイムズに掲載された別記事で、ケナンは次のように述べた。「西ヨーロッパへの攻撃をロシアが待ちわびているという記述には特に不快感を覚えた。人々は理解していないのだろうか? 冷戦期における我々の違いは、ソビエト共産主義政権との相違点だった。そして今、我々は、あのソビエト政権を打倒するため、史上最大の無血革命を起こした、まさにその人々に背を向けようとしているのだ。」

 1997年の論文で、更に、ロシアは「NATO拡大を軍事的な既成事実として受け入れるしか選択肢はない。だがそれを欧米諸国の拒絶とロシアは捉え続け、安全で希望に満ちた未来の保証を他の場所に求める可能性が高い」とケナンは述べている。

 ロシアはNATO拡大を既成事実として受け入れたが、それは抵抗するには弱すぎたからでもある。1998年、ロシア連邦はソ連崩壊後、おそらく最低状態にあった。1998年8月17日、ロシアは国家債務不履行に陥り、ルーブルを切り下げた。目に見えて衰えていく健康状態の中、エリツィン大統領は国際舞台で益々弱体で不安定な印象を与えた。億万長者のオリガルヒ階級は、ローン・フォー・シェア・スキーム下で国有資産を買収し、私腹を肥やすためエリツィンの1996年の選挙勝利に資金提供し、ロシア政治で巨大な役割を築いていた。ロシアは政治的、経済的、軍事的に弱く、国内ではチェチェンでの多大な費用のかかる戦争に気をとられていた。ロシアの恐るべき力はソ連に全く匹敵せず、NATOへの脅威にもなり得なかった。実際、ロシアとNATOは、1999年のコソボ紛争を含め、試行錯誤的に、そして時には緊張しながらも、最終的に協力関係を結ぶことになった。

 次の重大局面は2001年9月11日のニューヨークとワシントンDCでのテロ攻撃後だった。

 プーチン大統領はブッシュ大統領に電話をかけ、大統領とアメリカ国民への哀悼の意を表し、ブッシュ大統領がどのような対応を取ろうと、断固たる支持を表明した最初の世界指導者の一人だった。これはアフガニスタンにおけるアメリカ軍事作戦へのロシアの具体的支援や、中央アジアにおける米軍基地設置の黙認など米ロ協力の時代へと急速に発展した。

 カーネギー財団に寄稿した論文で「ロシアとアメリカの関係に新たな基盤を築く可能性は大きい」と現在最も声高な反ロシア強硬派の一人であるマイケル・マクフォールは述べた。「アメリカはもはやロシアをソ連の後継国として認めない」という宣言から始まる急進的政策を彼は推進した。実質的には、これはロシアがソ連のようにNATOにとって脅威となるという考えを否定することを意味した。

 ロシアとNATOの協力強化と将来のロシア加盟の可能性をマクフォールは提案し、プーチン大統領はこれを検討する意向を示していた。またソ連時代の貿易制限の撤廃や、NATO諸国によるロシア製兵器の購入禁止解除やロシアとEUの関係緊密化の促進など他の措置も推奨していた。

 だが、マクフォール記事から1週間後、新たな「対テロ戦争」への譲歩として、アメリカが世界各地での関与から離脱することに対し警鐘を鳴らす記事をブルッキングス研究所が掲載した。とりわけ「ロシアとの協力に対する新たな優遇措置は、ワシントンが弾道ミサイル迎撃条約(ABM)からの離脱、NATO拡大、チェチェンにおける人権擁護の訴えといった現在の政策計画を進めるのを困難にし、あるいはコスト増につながる可能性がある」と同研究所は指摘した。

 米露協力の深化は、1998年以降加速を続けてきたNATO拡大という巨大な勢力と直ちに衝突した。他の旧ソ連またはワルシャワ条約機構加盟国9カ国は既にNATO加盟を控えており、ロシアとの関係を全面的に再構築すれば、拡大はより困難になっていたはずだ。2003年のアメリカのイラク侵攻に対するロシアの懸念や、プーチン大統領によるオリガルヒ弾圧に対する西側諸国の懸念を背景に、米露協力は勢いを失っていったが、NATOは関係を崩さず前進を続けた。2004年にはバルト諸国、ブルガリア、ルーマニア、スロバキア、スロベニアを含む7カ国が新たに軍事同盟に加盟し、NATOはロシア国境に大きく接近した。

 1997年2月5日の記事で、NATO拡大は「ロシア世論の国家主義的、反西側的、軍国主義的傾向を刺激し、ロシアの民主主義の発展に悪影響を及ぼし、東西関係に冷戦の雰囲気を復活させ、ロシアの外交政策を明らかに我々の好みに合わない方向に導くことが予想される」とケナンは述べた。

 10年後の2007年2月10日、ミュンヘン安全保障会議において、今や有名な演説をプーチン大統領が行った。その中で彼は「NATO拡大は、同盟自体の近代化やヨーロッパの安全保障と全く関係がないのは明らかだ。それどころか相互信頼を低下させる深刻な挑発行為だ。そして、我々には問う権利がある。この拡大は一体誰を狙っているのか?」

 翌年2008年、NATOブカレスト首脳会議で、ジョージアとウクライナが将来NATOに加盟する構想が依然として提示された。首脳会議の一部に参加したプーチン大統領は、演説でNATO加盟を拒否することはできないと認めた。だが続けて「もしウクライナをNATOに加盟させれば、ウクライナを存亡の危機に陥れる可能性がある。ウクライナでは複雑な国内政治問題が起きている。我々は極めて慎重に行動しなければならない」と彼は述べた。

 彼の意見は再び無視され、ジョージアとウクライナのNATO加盟構想が、今日我々が目にしている結果を伴って動き始めた。

 だが、2013年に初めてロシアに注目し始めた時に私が認識した、ウクライナへのNATO拡大の核心的真実は、西側諸国がウクライナの加盟のために戦うと一度も約束していないことだ。これはまさに、ジョージ・ケナンが1998年の発言で認めた点だ。彼はこう述べている。「真剣に行動する資源も意志もないにもかかわらず、我々は多くの国々を守るため加盟したのだ。」

 事実上NATO加盟から排除され、戦争遂行のための米軍展開も拒否され、欧米諸国からの財政支援が徐々に減少し、事実上破産状態にある今日のウクライナを見て、28年前のケナンは間違っていたと言えるだろうか?

 ケナン発言が広く引用された1998年のニューヨーク・タイムズ記事では「1990年代後半のアメリカ外交政策を特徴づけていた想像力の完全な欠如について未来の歴史家たちは必ず言及するだろう」とも述べられている。2013年以降の西側諸国の外交政策を、歴史はより厳しく評価するだろう。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/04/18/fateful-errors-why-nato-leaders-should-have-listened-to-george-kennan-in-1997/

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 Judging Freedom 冒頭、ナチス打倒の功績は米軍にあるというトランプ妄言批判。
INTEL Roundtable w/ Johnson & McGovern : Weekly Wrap 2-May 31:15

2025年5月 2日 (金)

欧米諸国の支援によるイスラエル犯罪に対する反発が極右勢力を後押し



 イスラエルに高価な兵器を送り、批判者を黙らせるのに二大政党が躍起になっているため、アメリカ世論はイスラエルに厳しく反対してつつある。しかもアメリカ世論は、微妙な区別をするのが得意でないことが多い。

ケイトリン・ジョンストン
2025年4月10日

 この英語記事の朗読を聞く(朗読:ティム・フォーリー)。

 現在アメリカ人の大多数がイスラエルに対し、否定的見方をしており、回答者の53%が、このシオニスト国家に対し否定的な見解を抱いており、これは僅か三年前の42%から増加していることがピュー研究所の最新調査で判明した

 これは、最近のドナルド・トランプ大統領との会談後、アメリカが公然戦争準備を進めているイランとの交渉には、同国の民生用核インフラの「リビア式」解体が不可欠だとベンヤミン・ネタニヤフ首相が表明したのと時を同じくする。これは当然ながら、イランにとって全く受け入れがたい条件だ。

 また、移民のソーシャルメディア投稿を「反ユダヤ主義的」発言の有無について審査するとトランプ政権の市民権・移民局(CISA)が発表した。これは、もちろん実際はイスラエルとその残虐行為への批判を意味する。これは、イスラエルに対するワシントンの公式見解に反する政治的発言を、アメリカ国民が見聞きするのを阻止するためのトランプ政権の執拗な取り組みの最新の動きに過ぎない。

 このような展開は、欧米諸国における極右の台頭を後押しすると予想される。イスラエルに高価な兵器を送り、批判者を黙らせるのに二大政党が躍起になっているため、イスラエルに対し、アメリカ世論は厳しい批判姿勢を強めている。そして、アメリカ世論は微妙な区別をするのが得意ではない。

 「反ユダヤ主義」は急速に自己成就的予言になりつつある。ダビデの星を掲げジェノサイドを遂行する国家の利益を守るため、政府によって言論の自由を奪われるのに欧米人がうんざりするにつれ、彼らの多くはユダヤ人を責めることになるだろう。欧米諸国が中東におけるイスラエルの敵の殺害に手を貸すようになるにつれ、多くの欧米人がユダヤ人を責めるだろう。イランとの戦争の陣太鼓が轟き、我が子がイスラエルのために死に送られるのではないかと親たちが恐れるにつれ、多くの人々がユダヤ人を責めるだろう。

 これが良いことだと言っているのではない。非常に悪いことだ。だが、それが現実だ。

 イスラエルと、その堕落に対する政府支援に嫌悪感を抱く西洋人が増えるにつれ、極左はシオニズムとユダヤ教の違いや、西洋帝国と、中東における、その権益について国民に語り、一方、極右はそれを全てユダヤ人のせいにするだろう。

 どちらの方が、より主張しやすいだろう? どちらがより単純だろう? どちらがより理解しやすいだろう? 自国は本質的に高潔だとプロパガンダで洗脳されてきた国民の認知バイアスに対し、どちらの方が挑発の度合いが低いだろう? 我々が支援する中東での残虐行為に対する西側諸国の責任を強調する視点と、全てを邪悪な宗教的少数派による反体制的操作のせいにする漫画的視点と。


 イスラエルと欧米同盟諸国の犯罪行為に左派から反対する我々は、極右の主張が広まるのを阻止すため全力を尽くすが、我々が失敗したとしても、我々のせいではない。それは、これまでずっと「反ユダヤ主義」との闘いの名の下、自国民の市民的自由を踏みにじり、中東に爆弾を降らせ、ダビデの星の旗の下、何万人もの子どもの虐殺を支持してきた欧米諸国政府のせいだ。

 今後ユダヤ人に対する卑劣なヘイトクライムがいくつか起こるのは確実だ。そうした事件を指して「だからこそイスラエルが必要なのだ!だからこそ我々を守ってくれるユダヤ人国家が必要なのだ!」と言えるので、シオニスト連中は大喜びするだろう。

 だがもちろん、これはユダヤ人だけに影響を与えるわけではない。移民や、人種的少数派や、LGBTQの人々や、社会の隅に追いやられている他の共同体は全て、白人至上主義派閥の台頭で被害を受けるだろう。社会における反ユダヤ感情の高まりに乗じて、彼らの人気は高まっている。主流派「MAGA」運動は、これまでどれほど醜悪なものであったにせよ、露骨にヒトラー主義的な派閥が将来大きな権力を握った場合に比べれば、これら集団にとって遙かに危険度は低いだろう。

 確かに事態は、この方向に向かいかねないように思われる。特に経済状況がこれほど悪化し、もしイランとの戦争に発展すればなおさらだ。イスラエルを守るために言論の自由を抑圧するのをやめ、イランやイエメンなどの地域に対する欧米諸国の好戦的言論をやめ、イスラエルによるパレスチナ人大量虐殺的行為支援をやめるだけで、こうした事態は容易に回避できるはずだ。

 だが我々を非常に暗い方向へ引きずり込むことに支配者連中は固執しているようだ。

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 画像はWikimedia Commons/IDFより。

記事原文のurl:https://caitlinjohnstone.com.au/2025/04/10/the-backlash-against-israels-western-backed-crimes-will-fuel-the-far-right/

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  Judging Freedom
Prof. John Mearsheimer : Are Russia and China a Threat to the US? 35:24
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
トランプ人気下降へ。当然次期民主党候補に注目。ニューサム・加州知事・ウィトマー・ミシガン州知事、・シャピロ・ペンシルバニア州知事・ブティジェッジ元運輸長官 ・プリツカー・イリノイ州知事等既存勢力候補。左派系コルテス下院議員(Xフォロアー1,275.2万人。サンダースと協調)伸びるか。

2025年5月 1日 (木)

ウクライナ・ナチスの隠蔽は決して目新しいことではない。カナダ人はほぼ80年間そうしている。



イアン・プラウド
2025年4月29日
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 自国だったら決して容認しないはずの行為を欧米諸国政府は再び見て見ぬふりをしている。

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 ウクライナ戦争を議論する上で依然タブー視されている話題が数多くある。「Busification(街頭での強制徴募)」や、ゼレンスキー大統領の民主的信任や、ウクライナ人死傷者数や、ウクライナが勝てないという主張は全てタブー視されている。ウクライナにおけるネオナチ疑惑問題も同様だ。

 2022年にウクライナ戦争が始まって以来、最も恥ずかしい出来事の一つは、2023年にゼレンスキー大統領がカナダ下院を訪問した際、カナダ下院傍聴席でヤロスラフ・フンカが国会議員から二度、総立ちの拍手喝采を受けたことだ。フンカは、1944年2月28日に現在のウクライナ西部にある村で500人以上のポーランド系住民が殺害されたフタ・ピエニャツカ虐殺に関与したとされ、ジェノサイドの罪でロシアから告発されている。フンカは武装親衛隊のウクライナ人部隊、SSガリツィア師団隊員で、後にドイツとポーランドの委員会により戦争犯罪のかどで有罪判決を受けた。

 これは衝撃的だった。なぜなら、開戦以来、西側主要メディアが、ほとんど沈黙してきた話題、つまりウクライナが現在直面している極右超国家主義の脅威という話題の蓋を開けたからだ。だが、フンカ事件は、第二次世界大戦後も、ウクライナにおけるナチスに関する議論を欧米当局が、いかに覆い隠してきたかをも示している。

 1948年7月13日、外務・英連邦省(現在、外務・英連邦・開発省の一部)は、英連邦諸国政府に電報を送り、ドイツ内のイギリス占領地におけるナチス戦争犯罪裁判の終結を提案した。「戦争犯罪処罰は、全有罪人に報復を与えることより、むしろ将来世代の士気をくじくことの方が重要だ…今こそ過去を、できるだけ早急に清算する必要がある。」

 1946年ニュルンベルク戦争裁判の終結後、欧米諸国はソ連という新たな敵に直面した。資金難に陥ったイギリスと、その植民地における限られた治安資源は、下級ナチス戦争犯罪者の特定や追跡ではなく、ソ連工作員や共産主義者容疑者の摘発に投入された。

 この頃、多くのウクライナ人がソ連から逃れ、カナダに移住した。バルバロッサ作戦開始後の30年間で、カナダのウクライナ人人口は30万人から60万人近くへとほぼ倍増した。彼らのほとんどはナチス協力者ではなかっただろうが、中には確実にそうだった人々もいた。ラトビア人、ハンガリー人、スロバキア人なども、少数ながらカナダに入国した。

 この移住者の中には、いわゆる「下級」戦争犯罪者も含まれていたはずだ。ユダヤ人やスラブ人やジプシーや同性愛者を死の収容所へ移送する計画を練り、密告者となり、殺人を犯し、あるいは死の部隊の他の階級や下士官として戦争犯罪に関与した連中だ。彼らは下級協力者で、ナチスが開始した大量虐殺の手先として行動した。

 だが、イギリスの指示に従い、1950年から1962年の間に、カナダは移民政策を徐々に緩和し、ドイツのナチスやSSガリツィア師団などドイツ軍部隊の非ドイツ人隊員入国に対する制限を着実に撤廃していった。

 だが、1984年にカナダ政府に宛てた書簡で、「死の天使」ヨーゼフ・メンゲレが1962年にカナダへの永住移民ビザを申請していた証拠を入手したとサイモン・ヴィーゼンタール・センターが主張した。これは誤りだと判明したが、カナダのユダヤ人社会の間で激しい怒りを引き起こし、1985年にカナダの戦争犯罪人に関する調査委員会が設立された。

 デシェーヌ委員会として知られるこの委員会は、カナダに入国したとされ、更なる調査が必要な774人のリストを明らかにした。このリストのうち、本格的な調査と裁判を受けたのはわずか28人だった。

 1942年にベラルーシでユダヤ人410人と非ユダヤ人のポーランド人80人を殺害したとして告発されたミハイル・パウロフスキは、ソ連での検察側の証拠収集を裁判官が阻止したため無罪となった。

 ナチス寄りの極右聖職者ファシスト運動組織「フリンカ党」に所属していた当時、スロバキア出身のステファン・ライステッターは、3000人のユダヤ人を拉致し、ナチスの絶滅収容所に送致した容疑で起訴されたが裁判にはかけられなかった。彼の事件は、証人が死亡したため頓挫した。

 エーリッヒ・トビアスはラトビアのユダヤ人の処刑に関与したとして告発されたが、裁判が始まる前に亡くなった。

 1995年までに、戦争犯罪で有罪判決が下されなかったため、カナダ司法省は戦争犯罪課の人員を24人から11人に削減した。刑事訴追が行われなかったため、カナダ政府は戦争犯罪容疑者の市民権剥奪を求める民事訴訟を起こした。

 ワシリー・ボグチンは、ドネツク州セリドヴォ市でナチス占領軍に協力し、ドイツにおける強制労働のための若者の強制連行に直接関与した。1998年2月、連邦裁判所第一審部のマケオン判事は、ボグチンが戦争犯罪への関与を隠蔽していたと判断したが、彼は身柄引き渡し前に死亡した。

 民間人をアウシュビッツに送ったスロバキア部隊を指揮していたジョセフ・ネムシラは、市民権を剥奪しないという決定が覆された後、1997年に死亡したが、死により移送は阻止された。

 容疑者の身柄引き渡し、または国外退去命令が出されたのはわずか7件だった。その中には、数千人のハンガリー系ユダヤ人の監禁とその後の絶滅収容所への移送に関与したとして告発されたラディスラウス・チシク=チャタリも含まれていた。1997年7月、裁判開始直前、彼は国籍喪失に反対せず、国から自発的に去った。

 ウラジミール・カトリウクはベラルーシのハティン虐殺に関与したとして告発され、ワシル・オドニンスキーはトラヴニキとポニアカのSS労働収容所看守だった。彼らの国籍剥奪の動きもあったが、2007年に全ての裁判手続きが終了するまで、彼らはカナダに滞在することを許可された。

 カナダにおける戦争犯罪容疑者訴追の進展は常に遅く、消極的な裁判官の足踏みや、ソ連での証拠収集の拒否により遅延することが多かった。

 現在でもメディアやユダヤ人団体は、1985年のデシェーヌ委員会が検討した774人全員の名前を明らかにするようカナダ政府に圧力をかけているが、これまでのところほとんど成果は上がっていない。

 最近、アメリカの学者が、700人にも及ぶ容疑者を記載したと思われる類似リストを発見した。その中には、SSガリツィア支部の組織化に尽力し、アルバータ大学で編纂されたウクライナ百科事典の編集長を務めたウクライナ人ナチス協力者ヴォロディミル・クビオヴィチが含まれていた。1943年7月、ウクライナのリヴィウで行われたパレードの写真には、SS幹部でガリツィアとクラクフの知事も務めたオットー・ヴェヒターと並んでクビオヴィチがナチス式敬礼をしている様子が写っている。

 ヤロスラフ・フンカはそのリストに載っておらず、カナダで発見されなかったナチス協力者が一体何人いたのかという疑問が浮上している。

 今日のウクライナがナチス社会だとは思わないし、スヴォボダ党は最盛期でさえ全国投票のわずか10%しか獲得していなかった。だが超国家主義は深刻な問題で、特にウクライナ西部、第二次世界大戦中、ガリツィアと呼ばれた地域で顕著だ。ウクライナにおける超国家主義の問題を西側諸国政府が認めず、声を上げようとしないのは、自国だったら決して我々が容認しないはずの行為に再び目をつぶっていることを意味している。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/04/29/covering-up-ukrainian-nazis-nothing-new-canadians-have-been-doing-it-for-almost-eighty-years/

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 植草一秀の『知られざる真実』
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