NATO

2025年2月 3日 (月)

またしてもイスラエルに関し間違った考えのジャーナリストが欧米で逮捕された



 エレクトロニック・インティファーダ事務局長アリ・アブニマがチューリッヒでスイス警察に拘束されたと報じられている。

ケイトリン・ジョンストン
2025年1月26日

 この英語記事の朗読を聞く(朗読:ティム・フォーリー)。

 今度はスイスで、またもやパレスチナ支持派のジャーナリストが逮捕された。

 エレクトロニック・インティファーダ事務局長アリ・アブニマは、チューリッヒでスイス警察に拘束されたと報じられている。彼は一時間尋問され、入国前日に釈放された。パレスチナ系アメリカ人アブニマは、長年にわたりイスラエルのアパルトヘイト虐待を暴露し、批判する主導的な役割を演じてきた。

 昨年10月、エレクトロニック・インティファーダ副編集長アサ・ウィンスタンリーは、欧米諸国の支援を受けたイスラエルによる中東での虐待に関するソーシャル・メディア投稿に対し、イギリス「対テロ」警察に家宅捜査された。複数の電子機器が押収されたが告訴はされなかった。

 昨年8月、ジャーナリストのリチャード・メドハーストは、イギリスのテロ対策警察に逮捕され、2000年英国テロリズム法第12条に基づき、24時間近く拘留された。同月後半には、サラ・ウィルキンソンという人権活動家が、ネット上の言論犯罪で警察に拘留され、自宅を捜索された。どちらの事件も、イギリス政府により「テロ」組織に指定されているハマスやヒズボラなどの抵抗組織に過度に同情的だとみなされた意見表明の結果だと思われる。活動家のミック・ネイピアトニー・グリーンスタインリチャード・バーナードも同様にイギリスで迫害されている。

 2023年10月以降、イスラエルのガザでの大量虐殺行為に反対する大学キャンパスでのデモに対する警察の暴力的取り締まりから、親パレスチナ言論を抑圧するためのTikTok禁止に至るまで、アメリカでは様々な形で言論の自由が抑圧されている。アメリカ政府と密接に絡んでいるシリコンバレー巨大ハイテク・プラットフォームは益々攻撃的にイスラエルに批判的な言論を検閲しており、親パレスチナ活動に参加するアメリカ訪問者を国外追放するのを狙っていると思われる大統領令にトランプ大統領が署名したばかりだ

 ここオーストラリアでは、両党指導者が10月7日の抗議活動禁止を強く求め、指定「テロリスト」集団の象徴の公共展示を禁止する新法に基づき、メルボルンでのデモでヒズボラの旗を振った抗議活動者を警察が捜査した。シオニストはオーストラリア裁判所を利用して、著名ジャーナリストのメアリー・コスタキディスを、今は亡きヒズボラ指導者ハッサン・ナスララの映像を共有したとして違法ヘイトスピーチ容疑で脅迫している。

 国内で革命的感情を帝国が抑圧し、海外で多極化した世界が出現する中、欧米諸国では反体制的言論の抑圧が益々露骨になってきている。自由民主主義を充実させるため、考え方や情報が自由に交換される啓蒙社会という見せかけは、強硬な権威主義に急速に取って代わられつつある。史上、未曾有の情報民主化により、一般の人々がこれまでできなかった方法で支配者を批判できるようになったためだ。

 世界初のライブストリーミングによるソーシャル・メディアで拡散した大量虐殺生映像が、どんなプロパガンダ操作屋連中も再構成できない形で人々の目を覚まさせ、欧米帝国はパニック状態に陥った。だからこそ帝国とその行動に関する間違った考えを表明しただけの罪を犯したジャーナリストや活動家に対し益々警察が配備されているのだ。

 だが我々が自由な社会に暮らしていないことを、どれだけ早く国民に明らかにするかについて帝国経営者連中は慎重にならねばならない。我々全員に、この資本主義ディストピアのリズムに合わせ無意識に行進し続けさせる最良方法は、我々は自由だと思わせるよう騙すことだ。彼らが手の内を明かせば明かすほど我々の社会が実際どれほど封鎖されているかを皆に示すことで、彼らの暴政に対する真の革命的反応を呼び起こすリスクが高まる。

 この綱渡りが、どう展開するか見るのは興味深い。本質的に、一方では、現実に対する人間の意識の目覚め、他方では、AIと自動化された治安体制を介して、文明の完全支配を強化しようとする支配者の取り組みとの間の競争を我々は見ているようだ。我々は、プロパガンダで引き起こされた昏睡状態から十分な人数で目覚め、立ち上がり、健全な世界の創造を強制するか、ドローンの群れや軍事化されたロボットや、情報や金融制度の完全支配で武装した帝国管理者によって、現状に閉じ込められて、環境破壊的資本主義や壊滅的核の瀬戸際政策で絶滅させられるかのいずれかだ。

 いずれにせよ、世界は真実を語る人々にとって益々危険になってきている。手遅れになる前に、おそらく何か対策を我々は講じるべきだろう。

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記事原文のurl:https://caitlinjohnstone.com.au/2025/01/26/another-journalist-arrested-in-another-western-nation-for-wrongthink-about-israel/

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 ウクライナにザポリージャ原発攻撃を許すアメリカ。狂気の両政権。
 戦争を止める気がらトランプは資金と武器の供給を止めよとLarry Wilkerson氏。
Trump’s Weakness Spells Disaster | Col. Larry Wilkerson & Scott Ritter 49:07
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
トランプ、加とメキシコに25%の関税、中国には現状に加え新たに10%関税を乗せる。 貿易戦争における最初の公式行動。加、メキシコ、中国は対抗措置を取る。。関税の消費者価格への転嫁は避けられず、米国国民にとっては新たな負担。多くのエコノミストは懐疑的。

2025年1月27日 (月)

トランプとウクライナは敗北を認めるべき

2025年1月20日
Moon of Alabama

 ウクライナ軍最高司令官シルスキー将軍は諦めたように見える。最近の彼の発言は、もはや戦争に勝つ方法はないと示唆している。今や政治家が敗北を認めるのを彼はひたすら待っているだけだ。

 最近、ウクライナ軍は数千人の防空軍兵士と兵站要員を歩兵隊に編入し始めた。空中目標の探知、分析、戦闘を訓練された人々が、訓練も受けておらず資格もない任務に押し込まれているのだ。

 これが最前線の塹壕で十分な数の兵士を維持する唯一の方法だとシルスキーはこれを正当化している。  
今回の命令は訓練を受け航空機整備を専門とする高度な資格を持つ人員の異動を禁止するものだと陸軍司令官は強調した。

 「明らかに、これらは投資された資金で、一方では経験があり、実質的に代替不可能な専門家たちだ」とシルスキーは語った。

 「一方で、我々は基本的に前線で人員を必要としており、機械化旅団に十分な数の兵力を維持する必要がある。残念ながら、動員能力はこのニーズを満たしていない。

 彼によれば、軍内の兵站部門や支援の一部や保守に関わる人員をウクライナ軍は「合理的に」削減しているという。

 「従って本部は、これら任務を知っており、計算もしている」とシルスキーは述べた。
 新たに動員された兵士の人数は、失われた兵士の人数より少ない。そのため軍隊は「自滅」を始めるしかない。これにより生じる問題は、すぐには目に見えないが、時間の経過とともに軍隊の中核機能を破壊することになる。

 人々は前線任務を避けるために、あらゆる手を尽くしている。兵士が前線の後方で服務できるように指揮官は賄賂を受け取っている。脱走する者もいる。そのため、より本格的抵抗を行うために動かせる兵站および司令部要員が大量に余っている。

 しかし、数週間以内にそれら備蓄も空になるだろう。兵站は遅れ始め、防空軍は最も原始的なドローン攻撃さえ防御できなくなるだろう。

 シルスキーは、この事態を予見していた。防衛だけでは戦争に勝てないことを彼は知っている(機械翻訳)。  
守勢に立ったままではウクライナは戦争に勝てない。

 これはウクライナ軍のアレクサンドル・シルスキー司令官が24時間テレビで述べたものだ。

 「ご存じの通り、いくら防御しても撤退は避けられない。そのため我々は防衛を維持し、戦力を集中させ、前線を維持するよう強いられている」とシルスキーは語った。
 わずか二か月前、シルスキーはもっと楽観的な発言をしていた。依然彼は更なる反撃を夢見ており、そう宣言していた(機械翻訳)。  
APUは防衛だけでなく反撃もする。

 この声明は、最近、ウクライナ軍のアレクサンドル・シルスキー司令官が軍事ブロガーとの会合で行ったものだ。声明の詳細は、会合参加者の軍人キリル・サゾノフが自身のテレグラム・チャンネルで発表した。

 「ポクロフスコエとクラホフスコエ方面。状況は厳しい。だが、一週間前よりましだ。当時は本当に危機的だった。一部部隊は撤退し、陣地を離れたが、そこに詰める者はいなかった。まさに危機的状況だ。だが問題は解決し、予備部隊が配備され、敵の計画は阻止された。アレクサンドル・シルスキーの立場は、我々は敵を阻止しなければならない。だが、APUが防衛だけに動いていては勝利はあり得ない。我々は主導権を握り、反撃しなければならない。我々はそうしなければならないし、そうする。どこで誰がやるかは、これからわかる」とサゾノフは書いている。
 その後クラホヴェは陥落し、ポクロフスクは包囲されようとしている。ウクライナの更なる取り組みは見られない。

 前線を埋める兵力が不足していると反撃できない。

 ウクライナに対してバイデン政権がずっと演じてきた「勝利」茶番劇を、シルスキーは、やっと理解するのかもしれない。  
約三年前にロシアがウクライナに侵攻した際、アメリカの対応として、ジョー・バイデン大統領は三つの目標を設定した。ウクライナの勝利はその中に決して含まれていなかった。当時ホワイトハウスが自らの使命を説明するために使った「必要なだけ」ウクライナを支援するという表現は、意図的に曖昧だった。また「必要なだけというのは、何をするためにか?」という疑問も生じさせた。
...
 ゼレンスキー大統領と多くの国民が思い描いている未来は、ロシアが敗北するというものだ。だが世界を戦いに結集させる中、バイデン大統領が目標に込めた含意は、ロシアからウクライナを守ることと、ロシアを倒すことは同義でないことだった。そのため、目標がゼレンスキー大統領の手の届かないところにあっても不思議ではない。
 バイデン政権がロシアに仕掛けた代理戦争でウクライナの勝利は目標でも優先事項でもなかった。主要「外交官」さえ平和に関心を示したことは一度もないアーカイブ)。  
ブリンケンは平和推進者というよりも戦争戦略家だった。軍事装備や戦場状況の詳細に精通していた彼は、リスク回避志向の国防総省当局者らに反対し、強力なアメリカ製兵器をウクライナに送ることを支持する主張を繰り返すことが多かった。

 また、2022年後半、戦場での成果を生かして、ウクライナはモスクワとの和平交渉を求めるべきだとマーク・A・ミリー統合参謀本部議長が示唆した際、戦いを続けるべきだとブリンケンは主張した。
 現在、わずかながら、ウクライナ戦争をトランプ政権が否定し、遅延やエスカレーションなしに戦争を終わらせる希望がある。さもなくば、ニクソンがベトナム戦争でそうなったように、トランプが戦争に夢中になりかねない危険性がある。
 [トランプの元首席戦略官スティーブ・バノン]は、アメリカのキーウに対する極めて重要な軍事援助終了を主張し、アメリカの防衛産業や欧州諸国や更にバノン自身の友人の一部のあり得ない同盟が仕掛けた罠に、かつての上司が陥るのを懸念している。自身の友人の一部まで今や誤った方向に導かれているとバノンは主張している。友人には、トランプがウクライナとロシアの特使に指名した退役米軍将軍キース・ケロッグも含まれる。
 「我々が注意しなければ、これはトランプのベトナム戦争になってしまう。リチャード・ニクソンにそれが起きた。結局彼が戦争の責任を負い、リンドン・ジョンソンの戦争ではなく彼の戦争として記憶された」とバノンは語った。

 アメリカが全面的に関与すれば、ウクライナ戦争終戦を遅らせるのは可能かもしれない。だがベトナム戦争の時と同様、避けられない結末を変えることはできないだろう。

 ロシアが戦争に勝利したことをトランプは認め、ウクライナ支援を全て停止し、欧州諸国を撤退させ、戦争結果に関して手を洗うべきだ。

 これにより、ウクライナは再び運命を東方と結びつける可能性が得られるはずだ。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2025/01/trump-and-ukraine-should-concede.html

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 Rachel Blevins トランプのプーチン非難はゼレンスキーそっくりだと。
Trump Claims Putin 'Destroying Russia' While Ukrainian Troops are the Ones Crumbling w/ Mark Sleboda 30:39
Rachel Blevins and Mark Sleboda
Jan 22, 2025

 耕助のブログ 何とRichard Wolffの翻訳!
No. 2404 「気をつけろ!これは重大問題だ」
 昨日の孫崎享氏メルマガ題名
トランプ、初日に広範な関税の発動見送り。メキシコとカナダに25%関税を計画-一律関税は検討。米加墨協定1兆8000億米ドルカバー。大規模かつ持続的な貿易赤字の原因を調査(対中)、トランプ氏、関税が米国の工場を支援し減税の支払いに役立つ収入を増やすことを意図。4月1日までに報告

2025年1月24日 (金)

続くマイクロチップ戦争



ロレンツォ・マリア・パチーニ
2025年1月19日
Strategic Culture Foundation
 マイクロチップ戦争は続いており、すぐさま新たな方向に向かいかねない。2022年以降に起こる地政学的に重要な出来事の多くは、これにかかっている。
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 マイクロチップ戦争は続いており、すぐさま新たな方向に向かうかも知れない。2022年以降に起こる地政学的に重要な出来事の多くは、これにかかっている。
 
TSMCチップ、アメリカの計画通りに増加中

 TSMC(台湾積体電路製造股有限公司)の四半期売上高は予想を上回り、人工知能(AI)ハードウェアへの支出ペースが2025年まで持続するという投資家の期待を強めた。10月から12月にかけて売上高が39%増加するという噂もある。

 マイクロチップ市場の成長競争は、ほとんどあらゆる分野における人工知能の開発と大規模利用に主に関係している。先進チップの世界最大の契約製造業者は、人工知能を開発する世界競争の最大受益者の一つで、年間30%の成長率という記録を打ち立てた。

 不可能? TSMCの時価総額は2024年にほぼ2倍になり、現在アメリカでは1兆1000億ドル近くの評価額で取り引きされている。問題は、AIブームがいつ終わるかだ。過剰生産や材料(まず第一に希土類)の調達難などの問題に加えて、AIの生産と維持はエネルギーを大量に消費するプロセスである事実に直面している。AIは大量エネルギーを消費するため、まったく「グリーン」ではない。だが、これは主流メディアではあまり報じられない。更に、別の問題が発生している。AIキラーアプリとソフトウェア、つまりAIを「殺す」ことができる新しいタイプのプログラムが、デバイス、ネットワーク、サーバーなど様々なレベルでAIを台無しにし、これら新しいデジタル・テクノロジー使用に重大な損害を与えることに成功している。

 またアメリカは、Nvidiaの最も強力なチップの中国流入を制限する一連の規制を設けており、TSMCの主要顧客に対する長期的影響は不透明だ。同社はドル換算で年間売上高が20%弱の成長をするとモルガン・スタンレーは予想している。なぜなら、特にAppleが主力製品販売に苦戦し、Nvidiaが抑制されている状況で、現在、同社は売り上げのトレンドを維持するのに苦戦しているからだ。
 
ジェンスン・フアン(仁勳黄)がとどめを刺す

 Qbitコンピューターは素晴らしいものだが、大きな可能性を我々がまだ生かせていないのは残念だ。

 ちょうどその頃、市場を先導する企業NVIDIAのCEO、ジェンスン・フアン(仁勳黄)がこの技術の実用化はおそらく20年以内に可能になるだろうと宣言し、ウォール街で量子分野の株価を急落させた。これは、急成長しそうな様子ながら、どうやら我々が考える以上に市場の法則や研究の法則に左右される業界に、冷や水を浴びせた。

 リゲッティ・コンピューティングとクオンタム・コンピューティングの株価はそれぞれ取り引き開始前取り引きで17%以上下落し、一方、イオンQとD-Wave Quantumはそれぞれ9.4%と14%下落した。市場価値は30億ドル減少した。

 アルファベット傘下グーグルの注目度の高い業績回復と、人工知能(AI)生成アプリケーションによるコンピューティング需要の高まりを受け、これら企業の株価は昨年少なくとも3倍に上昇した。

 12月、グーグルが従来コンピューターでは宇宙の歴史全体より長い時間を要した計算問題を5分で解くと謳う次世代チップを発表し、株価上昇のきっかけを作った。

 2024年4月、マイクロソフトとクォンティニウムは量子コンピューター商用化に向けて大きな一歩を踏み出したと発表したが、この技術を使って従来のスーパーコンピューターを上回るまでにあと何年かかるかはコメントしなかった。

 そこで、黄は事態を現実に引き戻す必要があった。世界最大規模企業のCEOが、自身の経済的利益を犠牲にして、このような自己目標を自らに課すことを決めたのは興味深い。偽旗作戦なのだろうか? 市場を混乱させる戦略なのか? まだはっきりしない。しかし、確かなのは、突然の停止が株式市場の変化を招き、これら量子技術が利用可能になる実際の日程について大いに考えさせられることだ。
 
植民地化されるべき土地としてのヨーロッパ

 アメリカ国内で物事がうまく行かず、台湾でもひどく不便になったら、ヨーロッパに目を向けたほうが良い。これがアメリカが問題を「解決」しようとしている方法だ。

 TSMCはヨーロッパで新工場を開設する計画だ。インテルも同様にドイツのマクデブルクに新工場を開設する計画で、ポーランドでこれまで行った投資を中断することになる。300億ユーロ相当のこれらプロジェクトがなければ、既に半導体不足で工場閉鎖に追い込まれている欧州連合に十分な量の半導体を供給するのは不可能だ。インテルは以前、フランスとイタリアでの小規模プロジェクトを密かに閉鎖していた。

 問題は、今や欧州連合が世界の半導体競争で競争できる可能性が更に悪化していることだ。アメリカや中国や韓国、そして一般的に、できる国は全て、積極的に半導体産業を発展させ、技術と製造業者を誘致するため補助金を出しているが、欧州はこの種産業を輸入し、強化するための真に肥沃な土壌をまだ整えていない。特にアメリカが必要とする生産量と時期の点で。

 欧州チップ法によれば、EUは2022年の9%から2030年までに世界のマイクロチップ市場の20%を占める計画だった。だが、インテルが撤退したことでシェアは9%から7~8%に低下するだろう。欧州に残るのは自動車産業の高度に専門化された分野に注力するTSMCの小規模子会社だけになるためだ。

 ヨーロッパにはもう一つ問題がある。エネルギー価格が高すぎるのだ。既に述べた通り、マイクロチップ製造には大量エネルギーが必要だ。だから、ヨーロッパに生産拠点を置くことは、ヨーロッパに販売するアメリカの視点から見てのみ意味がある。いわば、輸送距離ゼロの生産-販売-消費サイクルだ。

 覚えておいていただきたいのは、世界ではIntel、Samsung、Hynix、Micronの四社だけがマイクロチップを独自に設計、製造できることだ。他の企業は、Nvidia、AMD、Qualcomm、Marvellなどの専門企業を少なくとも一度は経由する必要がある。
 
リスクはあるものの、ロシアは安全

 自立面でロシア連邦は多少後れをとっている。中国やインドからの購入など、依然、外部供給者を必要としている。

 マイクロチップ、回路基板、工作機械など、インドの対ロシア輸出は、2024年4月と5月に過去最高の6000万ドルに達し、前月比約2倍となり、7月には9500万ドルに急増した。この分野でインドを上回っているのは中国だけだ。

 制裁を回避して、2024年、アメリカと欧州からロシアは10億ドル以上の先進的チップを輸入した。

 2023年の最初の9か月間に輸入された半導体と集積回路の半分以上は、アメリカと欧州の企業に製造されたものだ。これには、インテル社、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ社、アナログ・デバイセズ社、および欧州ブランドのインフィニオン・テクノロジーズ社、STマイクロエレクトロニクス社、NXPセミコンダクターズ社が含まれる。だが、これら企業は制裁に完全に準拠しており、戦争開始時にロシアでの事業を停止し、コンプライアンスを監視するためのプロセスとポリシーを整備していたと述べた。これらが、ロシアによる戦車やその他の兵器生産を継続可能にしていたのだ。

 Keptが最近発表した報告書によると、ロシアのマイクロエレクトロニクス市場は 2030年までに15.2%成長すると見込まれている。成長の主な原動力は、補助金やローンや他のインセンティブという形の政府支援だとみられている。現在のロシア・マイクロエレクトロニクス産業は、2010年初頭に事実上ゼロから構築された。ソビエト時代のマイクロエレクトロニクス産業は、国が世界からの輸入に門戸を開いた際、国際メーカーと競争できず、1990年代初頭に崩壊した。ほぼ20年間、輸入がロシア・マイクロチップ需要のほぼ全てを占めていた。

 現在、ロシアには、モスクワ近郊のゼレノグラードに、大規模にマイクロチップを生産できる、ミクロン、アングストレム、ミランドルの三工場があるが、生産能力は低く、生産できるマイクロチップの種類は限られている。

 これら数字は前向きだが、自国システムをアメリカや台湾の企業が製造・所有するマイクロチップに依存しながら、ロシアがあとどれだけ続けられるか疑問に思う必要がある。これは非常に高いリスクであり、ソ連時代を含む過去数十年間に締結された協定にも影と疑念を投げかけることになる。

 最後に「イタリア風」好奇心について。2024年、有名なパルミジャーノ・レッジャーノチーズに、塩粒ほどの大きさのシリコン製マイクロチップが、パルミジャーノチーズの輪切り12万個の皮に埋め込まれた。このチップは、マイクロ・トランスポンダーを専門とするシカゴのp-Chip社に製造されている。このニュースは、事実上隠されていたイタリアよりも海外多く取り上げられた。さて2024年8月下旬、オハイオ州の化学者ビル・エイボンがマイクロチップを食べたが「副作用は記録されなかった」。たとえそれがパスタに載せるパルメザン・チーズのほんの一部にせよ、マイクロチップ戦争を消化するのは容易ではない。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/01/19/the-microchip-war-continues/

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 偶然興味深い番組を二つ見た。いずれも、トランプ・マスクも語っている。

 スランス人の質問に答える形式。スティグリッツの新刊が読みたくなった。残念ながら、どれも翻訳はない。
TRUMP : THE END OF DEMOCRACY ? JOSEPH STIGLITZ, NOBEL PRIZE 53:23
 Richard D. Wolffというマルクス経済学者の講義にもに驚いた。笑わせながら巧み。  彼の著書も、当然?!翻訳はない。  Democracy At Work
Global Capitalism: What Trump 2.0 Means 1:02:55
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
世界はトランプになびく。「ダボス会議の世界指導者が次々とトランプ時代に列に並ぶ」「印、サウジ、中、露、ブラジル、トルコ、インドネシア等は“トランプ氏は自国にとって悪よりも善になる”と考えている」。「世界は自国第一のトランプ的になっている」。
 日刊IWJガイド
「中居正広氏が引退発表! フジテレビからのスポンサー撤退は75社に! SNSでは104社情報も!フジの会見に批判殺到で取締役会開催!」2025.1.24号

【本日のニュースの一撃!】

■【第1弾! ガザで停戦したイスラエルは、ヨルダン川西岸地区で「対テロ作戦」を開始! ジェニン難民キャンプを空爆するなど、21日には10人を殺害し、40人が負傷!】西岸地区ではイスラエル軍だけでなく、入植者もパレスチナ人を襲撃!(『タイムズ・オブ・イスラエル』、1月21日)

2025年1月21日 (火)

依然、経済的ストックホルム症候群に陥っているウクライナ



イアン・プラウド
2025年1月16日
Strategic Culture Foundation

 ウクライナの統治に対するいかなる批判も許さない日々のプロパガンダ攻撃の中で、汚職に言及されることはめったにない。

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 ロシアを倒すにはウクライナが持っておらず獲得することもできない経済資源が必要だ。

 「戦争に勝つのは軍隊ではなく経済だ」と2024年のRUSI論文でアレックス・ヴェルシニンが述べた。言い換えれば、軍事費でライバル国を上回れる国が最終的に勝利することになる。

 ウクライナの経済規模がロシアの10分の1以下になっただけではない。問題はもっと根深い。2014年にウクライナ危機が始まって以来、根深い汚職に取り組み、経済を多様化・強化するために必要な構造改革を実施する機会をウクライナは逃してきた。

 汚職を例に挙げてみよう。2023年10月のタイム誌記事では、ゼレンスキー大統領の顧問が「明日がないかのように盗みを働いている」とウクライナ当局者が自信たっぷりに語った。2024年には、ウクライナのエネルギー網をミサイル攻撃から守るための投資に充てられるはずだった資金の大部分が横領されていたとの報道があった。これほどの規模の汚職に関する欧米メディア報道は、まれであると同時に歓迎すべきものだ。ウクライナの統治に対するいかなる批判も許さない毎日のプロパガンダ攻撃で、汚職が取り上げられることはめったにない。実際は、汚職は常にEU加盟へのウクライナの野望に対する最大かつ最も強固な障壁の一つだった。

 より広い意味では、マクロレベルでは、ウクライナは、輸出し、海外を含む投資のための余剰資本を有する経済モデルに向かう道筋を設定するか、輸入が容易で、差額を補うために外国投資を誘致できる経済モデルに向かう道筋を設定する必要があった。

 ウクライナ国立銀行のデータによると、ウクライナは長年、輸入が輸出を上回っている。2022年以降ではない。オレンジ革命翌年の2006年以降だ。戦争勃発前の10年間、ウクライナの年間貿易赤字は平均110億ドルだったが、戦争勃発後の3年間では、その数字は平均年間300億ドルを超えている。

 戦争勃発以来、物品輸出は平均と比較して2022年と2023年にそれぞれ17%と30%減少している。農産物輸出はやや安定しているが、金属、特に鉄鋼輸出は最終的な減少傾向にある。ウクライナ総輸出の23%、年間約150億ドルを占めていた鉄鋼生産は、2022年に70%減少した。鉄鋼生産はそれ以来僅かに増加しているが、戦前レベルには遠く及ばない。最近ロシアは、ウクライナ鉄鋼業の巨人メトインヴェストによる石炭供給の約半分を占めていたポクロフスク近郊のピシュチャネ・コークス炭鉱を占領したが、これは2025年のウクライナの鉄鋼生産、ひいては輸出に更なる打撃を与えるだろう。

 これにより、ウクライナは輸入と輸出の間の埋めるべきギャップが更に大きくなるが、2021年以降に倍増したサービス輸入もその一因になっている。ウクライナのサービス貿易黒字は2012年から2021年の間に年間30億ドルに達したが、2022年以降は98億ドルの赤字に落ち込んでいる。

 サービス輸入は、ウクライナ人の他国への大規模移住によって大きく促進されてきた。ウクライナ人が他国でウクライナ通貨を使うと輸入とみなされるが、これはロンドンでの外国人観光客の支出がイギリスにとってサービス輸出とみなされるのと同じだ。ウクライナにとって、この不均衡は戦争が終わり国民が大量帰国するまで解消されないだろう。

 全体的に、ウクライナ専門家は、経常収支赤字が2024年にはGDPの10.3%、2025年にはGDPの12.9%になると予想している。

 なぜこれが重要なのか? 国が輸出より輸入を多くすると、外貨が枯渇する。外貨が尽きると、輸入と対外債務の支払いができなくなる。2022年にスリランカで起きたことを考えてみよう。スリランカは準備金が尽き、史上初めて債務不履行に陥った。機能的経済は外国投資を誘致して、この罠を回避している。たとえばアメリカとイギリスは一貫して赤字を計上しているが、外貨準備高は健全に維持している。

 しかし、ウクライナは機能的な経済ではない。ウクライナで生産的投資を行っている外国企業はほとんどなく、この課題は2014年のウクライナ危機の始まりにまで遡る。以来、ウクライナの民間部門への外国投資は、2010年から2013年の年間156億ドルに比べて平均で僅か22億ドルにとどまっている。これは主に投資家が、一般的に紛争や戦争の地域を避けるためだ。だが、ウクライナでは少数オリガルヒが国中の事業権益を強固に掌握している権力構造も一因になっている。

 戦争は、根本的に悪い経済状況を変えておらず、今後も変えることはないだろう。ウクライナは戦争中は多額の外国資本を誘致できない。また輸出拡大の取り組みは、特に欧州で逆風に曝されており、EU農家はウクライナからの安価な輸入品の氾濫に反発している。

 そのため、ウクライナは最後の手段として友好的な貸し手に頼る必要がある。旧ソ連ではロシアがそうだった。現在では欧米援助国がそうだ。ウクライナの国際収支を見ると、2010年から2021年の間にウクライナは平均年間50億ドルの二次所得を受け取っていることがわかる。その大部分は他国政府からの援助だ。2022年と2023年にはそれぞれ280億ドルと240億ドルという巨額資金流入があり、経常収支の安定と外貨準備高の崩壊防止に役立っている。

 さらに懸念されるのは、膨れ上がる予算の半分をキーウが防衛費に費やしていることで、債権者への借り入れも余儀なくされ、戦争が始まってからの三年で平均年間400億ドルという途方もない額を借り入れていることだ。2022年以降の二年間では、総額でGDPのほぼ4分の3に上る。これは戦前10年間の平均と比較すると、中央政府の借り入れが2000%増加していることになる。そして2024年10月にEUが合意した500億ユーロの支援パッケージの3分の2は無償援助でなく更なる融資に相当し、ウクライナの現在のGDPの更に19.9%に相当する。

 現在、ウクライナの対外債務総額は既にGDPの約100%に達している。下振れシナリオでは、EUはウクライナ債務が早ければ2026年にはGDPの140%に達する可能性があると予測している。心配していない人も心配すべきだ。戦争でウクライナの経常収支赤字が拡大する中、欧米諸国は同国の準備金を支えるためだけに、これまで以上に多額のマクロ金融支援を提供する必要がある。ウクライナの準備金が底をつき、グリブナを切り下げなければならなくなった場合、債務返済が不可能となり、経済破綻に陥り、欧米諸国から更なる支援が必要になるためだ。

 ロシアの経済危機に関する定型的分析が、紛争の相手側で毎日大量に発表されているが、ロシア中央銀行のデータは何を物語っているのだろう? 構造的課題に直面しているにもかかわらず、また法的に疑問がある外貨準備高3000億ドル(約半分)凍結にもかかわらず、ロシアは流動性に欠如しているわけではない。

 戦争勃発後のルーブル暴落に欧米諸国のジャーナリストが一斉に怒りを爆発させるなか、ロシアは2022年に2,380億ポンドという驚くほど巨額の経常収支黒字を計上した。これはウクライナの戦前の年間経済生産高を上回り、2022年の欧米諸国によるウクライナへの財政・軍事援助額の二倍以上だ。これは過去10年間のロシアの平均経常収支黒字のほぼ4倍にあたる。ロシアの経常収支黒字は2023年に500億ドルに安定し、これは長期的傾向と一致しており、数字が発表される2024年もほぼ同水準になるはずだ。

 ロシア経済は輸出と収益の再投資に絞られる。同国は債務不履行に陥った1998年以降、経常収支赤字を毎年計上していない。このためロシアの対外債務は軍事費の大幅増加にもかかわらず、GDPの約14%と非常に低い。多額の借り入れは必要なく、大規模な社会保障計画に資金供給するのに十分な流動性が残っており、これは経済における消費者支出が依然堅調なことを意味する。

 これにはリスクが伴う。ロシアでは戦時支出の巨額投入により金利が急騰し、インフレ率が非常に高い。また付加価値の高い新産業分野への多角化ができない点で長期的リスクもある。どちらも短期的に対ウクライナ外交政策や軍事選択に影響を与えるほどのものではない。今のところ、消耗戦を遂行する上でロシアは経済的にかなり有利な立場にある。

 ウクライナのいわゆる反攻が失敗した2023年末以来、ウクライナが戦場でロシアに勝てると欧米軍事評論家は予測していない。NATOの直接的関与は相変わらず遠い見通しだが、遙かに大きな隣国に勝つための人口、経済、産業力がウクライナにはない。ロシアの比較的安定した経済とウクライナの根本的な経済的弱点を合わせると状況は更に暗くなる。

 勝利は戦場よりバランスシートにかかっている。疑問は残る。ウクライナが勝ち目のない戦争を続ける中、欧米諸国はいつまでウクライナに返済不可能な負債を押し付け続けるつもりなのか?

 国内政治のせいで、EU諸国やアメリカは2025年以降、現在の資金が尽きた後、ウクライナの戦いに資金援助し続けるのが益々困難になっているのが真実だ。だが今もキーア・スターマーやカヤ・カラスなどの連中はウクライナは戦い続けるべきだと主張し続けている。

 今のところウクライナは経済的ストックホルム症候群に陥ったままだ。ウクライナは、欧米諸国の捕虜たちの偽りの寛大さと偽りの約束に魅了され戦うよう促されているが、心の底では、脱出の最良の機会は和平を結ぶことではなかろうかと考え続けている。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/01/16/ukraine-remains-locked-in-an-economic-form-of-stockholm-syndrome/

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The Chris Hedges Report
Trump, Musk, Gaza, the Rise of Totalitarianism and the End of the US Empire 29:33
Chris Hedges
Jan 21, 2025

 Danny Haiphong
BOMBSHELL! Ukraine's Army Ready to SURRENDER, One MILLION K*lled w/ Scott Ritter & Larry Johnson 20:39
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
トランプ就任に際しての英国ガーディアン紙報道「米国が「復讐の二期目」、更には大量の大統領令と世界秩序の根本的な変革を約束する二期目、新たな混乱と分断の時代に備えている。4年間、トランプ大統領は新たな指導に乗り出し、それらが何をもたらすかはこれまで以上に不透明だ」。

2025年1月18日 (土)

ブカレストで最大規模の抗議行動:背後に一体何があるのか?



エルキン・オンカン
2025年1月16日
Strategic Culture Foundation

 真の中道左派がない中、不満を抱く大衆は極右人物や政党に解決を頼っている。

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 先週ブカレストで、これまでで最大規模のデモが行われた。だが一体なぜだろう?

 ルーマニアでは、候補者13人が参加した大統領選挙の第1回投票で最有力候補になったのは、リベラル保守派で欧米・NATO支持派のエレナ・ラスコニと、極右でNATO・EU反対派の候補者で自称「TikTokスター」のカリン・ジョルゲスクだった。

 第1回投票でのジョルゲスク勝利は欧米諸国に衝撃を与えた。しかし、第2回投票のわずか2日前に、ルーマニア憲法裁判所は第1回投票の結果を無効とした。

 諜報機関報告は、TikTokに焦点を当てたジョルゲスクの選挙運動には「ロシアの干渉」の痕跡があると主張した。だがルーマニアの国家財政管理庁(ANAF)は後に、ジョルゲスクのTikTok選挙運動はロシアではなく、親欧州の国民自由党(PNL)から資金提供を受けていたことを明らかにした。それでも無効の決定は覆されなかった。

 ジョルゲスクは、欧州政界で最も興味深い人物の一人だ。極右政治家の彼は、2022年にアンテナ3とのインタビューで、ルーマニアの親ナチス派元独裁者イオン・アントネスクと、人種差別主義で反ユダヤ主義の鉄衛団創設者コルネリウ・ゼレア・コドレアヌを「英雄」と呼び、物議を醸した。

 だがアメリカとNATO投資の最大受益国の一つであるルーマニアのような国では、ジョルゲスクの指導力に対する本当の障害は彼の極右姿勢ではなく、反NATO的見解だ。

 NATOのデベセル島弾道ミサイル防衛システムを「外交上の恥辱」と評し、ルーマニアはウクライナ戦争で中立を保つべきだとジョルゲスクは主張した。「ウクライナ情勢が操作されているのは明らかだ。アメリカ軍産複合体と軍需産業の利益のために紛争が引き起こされている」と彼は述べた。

 また欧州連合(EU)はルーマニアを奴隷化するのを狙った失敗プロジェクトだと彼は批判した。

 ジョルゲスク当選取り消しに続く社会不安は、この極右指導者が国民の間で大きな支持を得ていることを示している。報道によると、今日の集会には約5万人が参加した。

 この抗議行動は、2019年に設立され、ジョージ・シミオンが率いるルーマニア民族統一党(AUR、Alianța pentru Unirea Romanilor)が主催した。民族主義的保守政党のAURは、ルーマニアとモルドバ(Unirea)の統一を主張し、カトリックと正教会の価値観に根ざした伝統的道徳を推進している。

 LGBTQ+の権利や移民やワクチン接種の義務化や規制にも同党は反対している。2020年の議会選挙では9%近くの票を獲得し、大きな驚きをもたらした。

 要約すると、これはヨーロッパ全体のより広範な傾向を反映しており、経済の安定と安全の要求、現在の政治情勢への幻滅、EUのような欧米同盟に対する懐疑心により動かされた人々は、益々主流政治から外れた代替案を求めている。真の中道左派が存在しない中、不満を持つこれら大衆は、解決策として極右の人物や政党に目を向けている。

 これはルーマニアだけでなく、ヨーロッパ全体で増加傾向にあり、注目に値する。ヨーロッパの未来は、おそらくこれらの動きによって形成されるだろう。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/01/16/one-of-largest-protests-in-bucharest-whats-behind-it/

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 The Duranの二人がこの問題を解説している。
Romania's silent coup. EU/NATO tries to stop Georgescu 18:12;
 日刊IWJガイド
「フジテレビの港浩一社長が記者会見!『局として性接待や性上納の報道が出ているが?』の質問に『ない』ではなく『ないと信じたい』と回答!」2025.1.18号

■本日午後7時より、「激戦の地ドンバスまで足を運び、自分の目と耳で調査した『学者魂』の研究者に聞く! 第2次トランプ政権でウクライナ政策が見直される今だからこそ、日本も、2014年のユーロマイダン革命にまで立ち返って現在に至る経緯を検証する必要がある! 岩上安身によるインタビュー第1181回ゲスト 東京大学法学部・松里公孝教授 第1部・第2回」を撮りおろし初配信します! 配信終了後、会員向けIWJサイトのアーカイブにアップします!

2025年1月17日 (金)

制裁と物理的手段でロシアとの和平を阻止する

2025年1月15日
Moon of Alabama

 ウクライナの戦場でアメリカとNATO代理軍は敗北しつつある。バイデン政権は「トランプ阻止」、つまり紛争の長期化を企み、ロシアの経済手段を標的に(再び)ロシアを打倒しようとしている。

 これは主にロシアの資源販売を削減することによって行われる。これら商品を必要としている第三者、つまり買い手もこれにより損害を受けることは懸念ではなく、追加的な特徴として見ることができる。

 新たな一連の措置は、1月1日にロシアからウクライナを経由してヨーロッパに至る最後のパイプライン遮断から始まった。  
今回の措置により、もはやロシアは「我々の血で何十億ドルも稼げなくなる」とウォロディミル・ゼレンスキー大統領は述べた。

 水曜日朝、「国家安全保障上の利益のため」キーウがガス送付を停止したことをキーウのヘルマン・ハルシチェンコ・エネルギー大臣が認めた。

 「これは歴史的な出来事だ」と彼はソーシャルメディア、テレグラムに書いた。「ロシアは市場を失い、経済的損失を被ることになる。」

 協定により、ウクライナのパイプライン網を通じて、ロシア産天然ガスは主にハンガリー、スロバキア、オーストリアなどの欧州諸国に送られることになっていた。
 このパイプラインがなくなると、ウクライナは年間6億4000万ドルの賃料を失うことになる。これをヨーロッパ諸国が埋め合わせるようウクライナは期待するだろう。同時に、ハンガリー、スロバキア、オーストリアはガス代として大幅に高い値段を支払わねばならない。

 だがロシアにとっては、トルコストリーム・パイプラインのような経路を通じたガス販売喪失による損失はわずかだ。


 次の措置は先週の追加制裁措置発表だった。  
この制裁はロシアの二大石油生産・輸出業者であるガスプロム・ネフチとスルグト・ネフテガスが対象で、両社とも液化天然ガス輸出とロシアのエネルギー部門を北極圏に拡大する取り組みに携わっている。制裁によりモスクワの収入は毎月数十億ドル削減されると予想されており、ロシアのウラジミール・プーチン大統領の対ウクライナ戦争の取り組みに新たな負荷をかけることになる。

 これとは別に「現在進行中の液化天然ガスプロジェクト2件、ロシアの大規模石油プロジェクト1件、ロシアのエネルギー輸出を支援する第三国の事業体」のアメリカ金融制度の利用を阻止し「ロシアを拠点とする多数の油田サービス提供者と国営原子力企業ロスアトム幹部」を国務省は、アメリカ入国禁止対象「指定事業体」リストに追加する。

 アメリカは「ウクライナに対する残忍で違法な戦争の資金源となっているロシアの主要収入源に対し徹底的措置を講じている」とジャネット・イエレン財務長官が声明で述べた。

 新たな制裁はモスクワの「影の艦隊」の一部とみられる183隻の海上船舶と、ロシアに拠点を置く「数十社」の石油取り引き業者および油田サービス提供業者を対象とすると匿名を条件に記者団に説明したもう一人の政権当局者が述べた。
 これら制裁により、全ての人にとって石油とガスの価格が上昇することになる。  
ジョー・バイデン大統領退任の僅か数日前にホワイトハウスが新たな制裁を課すと選んだのは、石油市場とアメリカ経済が戦争中のどの時点より「根本的に良い状態にある」ためだとこの措置について記者団に説明したバイデン政権高官が述べた。
 従って、これら制裁で引き起こされる今後の価格上昇は、トランプ大統領の失敗だと説明されることになるだろう。

 翌日、ウクライナ軍は、トルコストリーム・パイプライン・システムにガスを供給しているロシア領内の圧縮施設を攻撃した。  
2025年1月11日、ヨーロッパ諸国へのガス供給を妨害する目的で、トルクストリーム・パイプラインによるガス供給を確保するガイ・コドゾル(クラスノダール地方)近くのルースカヤ圧縮施設に対し、固定翼無人機9機による攻撃をキーウ政権が開始した。

 撃退攻撃で、防空部隊は全ての無人機を撃墜した。
 この責任が誰にあるかは疑う余地がないとロシア当局は述べた。  
火曜日の記者会見で、ロシアのエネルギーインフラに対する「テロ」攻撃をワシントンが奨励しており、トルコ・ストリームを標的にする計画があるとロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は主張した。

 「エネルギーを含むいかなる分野でもアメリカは競争を認めない。欧州連合のエネルギー安定性を弱体化させることを狙うテロ活動を彼らは無謀にも支持している」とラブロフ外相はトルコのアナドル通信社に語った。

…  2024年末に期限切れとなる輸送契約の更新をウクライナが拒否したため、このパイプラインはロシア産ガスをEUに輸送する最後のパイプラインだ。この経路の停止は戦争に関するEUの結束を更に崩し、これは危機を引き起こすとスロバキアは主張し、EUのキーウ支援を阻止すると脅している。
 トルコ・ストリームへの攻撃の二日後、ロシア石油インフラに対する別の大規模攻撃が続いた。

 火曜日、ウクライナはロシア深部にある複数標的を攻撃した。これはこれまでの戦争で「最大規模」の攻撃だとウクライナは主張している。アメリカが供給したATACMSミサイルとイギリス製ストームシャドウ巡航ミサイルを撃墜したとロシアは述べ、反撃すると誓った。ウクライナ治安筋がBBCに語ったところによると、国境地帯のブリャンスク攻撃により、製油所、弾薬庫、火薬や爆発物を生産しているとされる化学工場で爆発が発生した。しかし、ロシア国内の更に深部もキーウは攻撃しており、国境から最大1,100キロ(700マイル)離れた標的を攻撃したと参謀本部は主張している。

 サラトフ西部で「大規模」ドローン攻撃があったと当局が報じた。

 エンゲルス市とサラトフ市の二つの工業プラントが被害を受けたと同地域の知事ロマン・ブサルギンがテレグラムに書き込んだ。

 ロシアは直ちに報復を誓った。  
昨夜、ウクライナ軍は、アメリカ製ATACMS作戦戦術ミサイル6発、イギリス製のストームシャドウ空中配備型巡航ミサイル6発、およびウクライナ領土からの固定翼無人航空機31機を使用して、ブリャンスク地域の対象に対しミサイル攻撃を開始した。

 防空戦中、全ての航空攻撃手段は防空部隊により撃墜された。攻撃による死傷者はなかった。

 更にイギリス製巡航ミサイル「ストームシャドウ」2発が黒海上空で撃墜された。

 キーウ政権の欧米諸国の後見人連中が支援するこうした行動が報復されないはずがない
 答えは昨夜、無人機とミサイルの集中砲火がウクライナの電力・ガスインフラを襲った時に明らかになった。主な標的はウクライナ西部のリヴィウ近郊にあるヨーロッパ最大のガス貯蔵施設だった。



 ウクライナはロシアとのインフラ戦争で得られるものはほとんどない。だがゼレンスキーとアメリカの「主戦派」は依然そこから利益を得ることを望んでいる。

 Stranaの分析(機械翻訳)によれば
 [純粋に軍事的な側面に加えて、これらの攻撃には情報的、政治的な側面もある。そしてそれは、ロシア連邦に対する西側の長距離兵器攻撃の許可、ロシアの将軍や軍産複合体の人物の殺害や、ウラジーミル・プーチンに対するウォロディミル・ゼレンスキー政策で、敵対行為終了後もロシアに「復讐する」と誓ったのとほぼ同じ水準にある。

 これら全てがロシアの「主戦派」の立場を強化すべく機能していると我々は既に書いている。「ウクライナと交渉すべきものは皆無だ。ウクライナは常にロシアに脅威を与えるテロ国家で、それゆえ破壊されねばならない。欧米諸国とも交渉すべきものは皆無だ」と彼らは宣言している。

 このような発言や行動の目的は、近い将来、前線での戦争を終わらせるために、プーチンがドナルド・トランプと妥協して共通語を見いだす可能性を最小限にすることだ。

 この選択肢で戦争を終わらせることをウクライナ当局は望んでいない。
 ウクライナへの反感をロシア国民に抱かせる攻撃を続けることは、和平合意の可能性を一層低くする更なる手段だ。

 ゼレンスキー政権とバイデン政権最大の狙いは、アメリカ・ロシア間の和平協定を阻止することだ。

 戦争はゼレンスキーのウクライナに資金を流入させ続ける。ヨーロッパ市場からロシア・ガス供給を遠ざけられる限り、アメリカは利益が得られる。ヨーロッパの産業は衰退するだろうが、アメリカ軍産複合体は奮闘可能だ。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2025/01/preventing-peace-with-russia-russia-by-sanctions-and-kinetic-means.html#more

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 douglasmacgregorTV
Col Douglas Macgregor: Ukraine War Reality Tightens the Screws on Trump 42:28
 日刊IWJガイド
■<IWJ号外>タッカー・カールソン氏によるプーチン大統領インタビュー第7回「ユーロマイダン・クーデターがすべての始まり!」を出しました!

■国家安全保障政策の専門家で、第2次トランプ政権の政策担当国防次官に指名されたエルブリッジ・コルビー氏が、東京は防衛費を3%程度まで大幅に引き上げる必要があると発言! コルビー氏の主張は、石破総理の安全保障政策の主張と一致! 今後の日米関係は、米国の国力低下に伴い、日本を東アジアの戦争の「主役」に押し立てていこうとするのではないか!? 2月前半の日米首脳会談に注目!

■<お知らせ>塩原俊彦氏講演会「ウクライナ戦争は何故起ったのか? マスコミが報道しない角度から考察し、トランプ政権下での和平の可能性を探る」が、2月2日(日)に開催されます! どうぞ奮ってご参加ください!

2025年1月16日 (木)

「同盟諸国」から略奪する

2025年1月10日
Moon of Alabama

 カナダやグリーンランドやパナマ運河の領土をトランプが奪おうとしていることに関して、アギト・パパダキス興味深い見解を示している。  
ボゾ[トランプ]・ドクトリンや、ビビ[ネタニヤフ]・ドクトリンや、タイイップ[エルドアン]・ドクトリンは、いずれもウェストファリア後の狂った帝国主義による新たな世界混乱へと収束しつつある。

 旧秩序に屈服した属国諸国にとっては、勇気を出して抵抗するか、残っている主権や尊厳や物質的安楽を全て失うかの、どちらかしかない。EUやオーストラリアや日本や韓国などの愚者連中や、シリア、レバノン、イラクなどの傷ついた弱小国家は、いずれも強大な、ならず者国家に強姦され破壊される苦痛に苦しんでいる。

 一分たりとも無駄にせずに、ボゾが乱闘に加わった。自分が引き継いだ経済的大惨事を目にして、巨大ながら古くて錆びついた軍事力と、かつて強大だったドル覇権の残骸に、今こそ海賊旗を掲げる時だと彼は決意したのだ。

 彼の最初の犠牲者は、ウクライナというブラックホールに惨めな軍と財源を注ぎ込んだ弱くて卑劣な家臣連中だ。自分が黒旗さえ掲げれば、弱い臣下連中との愚劣な「同盟」が自動的に解消されるのをボゾは知っている。この同盟は、ボゾのグリーンランド奪取に抗議し、抵抗すると脅すフランス・ポチの寂しげな鳴き声で明らかになった通り、アメリカのむき出しの帝国主義を覆い隠すフリル付きネグリジェに過ぎなかった。

 ルールに基づく秩序で強姦されたポチ連中は、突然、審判の日に立ち向かわねばならない。アメリカとロシアという猛り狂う二巨獣の間に裸で無防備状態で立っている。一方、更に大きく恐ろしい中国が両国以外全員の頭上に迫っている。

 核兵器や極超音速兵器、宇宙ジェット機が登場するのは19世紀で、その後、20世紀の世界大戦が続くのが普通だ。だが21世紀の速度を考えれば、長くとも10年以上かかることあるまい。
 アギトの怒声は、Russians With Attitudeによる「根拠ある」スレッド「On American expansionism'(アメリカの拡張主義について)」に言及している。  
アメリカ覇権衰退の状態に関し、新政権は、より現実的なイメージを持っているようで、それに対抗し、逆転させるための積極的措置を講じて、アメリカ世界帝国に新たな息吹を吹き込みたいと考えている。...

 1991年から2022年まで存在した世界はもはや存在していない。戻ってこない。隣国を侵略すれば良い。国際航路にミサイルを発射すれば良い。軍事同盟諸国を併合すると脅せば良い。IT系連中が良く言う通りに「とにかくやれば良い」のだ。時折監視するだけで済む決して本気で挑戦されることがない歴史終焉の秩序という幻影は消えた。歴史の終わりを否定するのが一体何を意味すると考えていたのだろう? 感情? 論文? エッセイ?

...  アメリカの家臣連中は、この状況に立ち向かい、将来について困難な決断を下さなければなるまい。これは自国の地政学的無力さを認めて従属を受け入れるか、目を覚まし必然的にリスクや犠牲や自国の優先順位再調整を伴う自立の道を模索するのかを意味する。

 借り物の安全やイデオロギー言説に頼る時代は終わった。これから先は、歴史的主体性を取り戻すか、永久に放棄するかの時代で、多くの人にとって、問題は飛躍の準備ができているかどうかではなく、その方法を覚えているかどうかかもしれない。今やアメリカはこれを理解し、実際の歴史に伴う冷静な論理に戻る心構えを整えている。時代は変わりつつある。
 一極時代は終わっている。ロシアやインドや中国は略奪するには余りに豊かで強大になった。アメリカ属国諸国は、今や遙かにたやすいカモになっている。

 「同盟諸国」から奪うというトランプの考えは新しいものではない。アメリカによる属国略奪はしばらく前から続いている。

 ウクライナ戦争扇動は、ヨーロッパ「同盟諸国」に対するアメリカによる大規模収奪作戦だと解釈できる。

 ノルドストリームを彼が爆破した際にも、バイデンは大成功した。(ちなみに、これはアメリカがロシアからドイツへのパイプラインを破壊した二度目の事件だ。1982年の最初の事件に関する解説本は何とアンソニー・ブリンケンが書いていた!

 ドイツ政府とEU政府の弱虫連中は、あえて抗議する勇気さえなかった。その代わりに、アメリカの水圧破砕ガスに対して自国民に法外な値段を払わせたのだ。おまけに、ウクライナ戦争の燃料として、アメリカ製兵器を購入するよう圧力をかけられたのだ。

 ウクライナ戦争は計画通りに行かなったものの、アメリカは依然それから利益を得ている。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2025/01/looting-the-allies.html#more

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クリス・ヘッジズ 大学というアメリカ収容所 MITは典型 イスラエル戦争を幇助する研究をRichard Solomonが語る。

 The Chris Hedges Report
America's Academic Gulag (w/ MIT Student Activists) | The Chris Hedges Report  58:31 Chris Hedges
Jan 16, 2025
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
韓国の尹大統領、内乱容疑で拘束 戒厳令巡り現職初、大統領には不訴追特権があるが、内乱罪は例外に当たる。

2025年1月14日 (火)

グリーンランド併合の恫喝でデンマークの玄関マットを踏みにじるトランプ大統領



2025年1月10日
Strategic Culture Foundation
論説

 デンマーク主権、ひいては欧州連合主権のトランプによる蹂躙は残忍な威嚇行動だ。

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 こういう友人がいれば敵など不要だ。かくして自国「最強の同盟国」とされるアメリカの地政学的野望に関し、自国が、いかにどうでもよい存在かデンマークは思い知った。

 ドナルド・トランプ次期大統領は、まるでハト小屋の中の猫のようだ。彼らの領土をアメリカが強制的に併合するという最近の彼の発言で近隣諸国や同盟諸国やNATO加盟諸国全員動揺している。

 1月20日に二度目の大統領職に就く元不動産王は不動産買収ラッシュのように大統領としての政策を打ち出している。カナダを51番目の州として併合し、パナマ運河の管理権を取り戻し、メキシコ湾をアメリカ湾に改名し、デンマーク領グリーンランドを併合したいと彼は考えている。

 共和党次期大統領の発言を虚勢と大げさな自尊心だと片付けるのは簡単だ。自分の能力を宣伝する際、彼は特に大げさに言う傾向がある。「24時間以内」でウクライナに平和をもたらすとトランプは語ってきた。また以前、自ら「事業の天才」と彼は称していた。第一期政権時代には、アラブ諸国とイスラエル間で「世紀の取り引き」を仲介すると語っていたが、結局その構想は、ガザでの大量虐殺とレバノン侵略という惨事に終わった。

 従ってアメリカの新たな領土獲得に関するトランプ発言は余り文字通りに受け止めない方が良いだろう。気まぐれで、実に投機的に過ぎない。真意は目をそらすことだとロシア元大統領ドミトリー・メドベージェフは述べ、これを「宇宙的愚かさ」と呼んだ。

 一体何から目をそらすのか? ウクライナの惨事から国際社会の目をそらすために、併合に関する荒唐無稽な話をトランプ大統領と顧問らは故意に煽っているのだと地政学専門家ギルバート・ドクトロウは見ている。アメリカ主導のNATOによるウクライナでの対ロシア代理戦争はワシントンと同盟諸国にとって紛れもない災難だ。この三年間の戦争を終わらせるためロシア軍が急速な進撃を続ける中、キーウ政権は軍事的崩壊に直面している。

 ロシアの条件に同意して、この大惨事からアメリカが抜け出す必要があるのをトランプは知っている。そのために、カナダを占領し、デンマークからグリーンランドを奪取するという一見突飛な話をトランプはしているのだ。実現しないかもしれないが、新たな土地を求める願望は確実に世界の注目を集めている。

 それでも、グリーンランド収用をトランプが真剣に考えているのではないかという疑念はひそかにある。今週フロリダ州マール・ア・ラゴでモンロー2.0政策を発表した記者会見で、数年にわたりアメリカはグリーンランドに注目してきたとトランプは述べた。つまり、これは単なるトランプ個人の取り組みではないのだ。

 この北極の島(大陸以外の島としては世界最大)を、アメリカ国家安全保障上の重要権益と彼は呼んだ。特に、北極圏でロシアと中国の権益が高まっており、アメリカは介入すべきだとトランプは述べた。気候変動により北極圏に新たな航路が生まれ、豊富な天然資源採掘の可能性が生まれている。この地域で最大の存在感を持つロシアは当然正当かつ有利な主張をしている。

 領土に関する希望リストをトランプ大統領が発表した同じ日、息子ドナルド・ジュニアが宣伝活動のため個人的にグリーンランドに飛んだ。トランプ大統領の息子は首都ヌークで役人から歓迎されなかったが、グリーンランド人の「歓迎パーティー」がでっち上げなのは明らかだった。

 一方、フロリダでの自由奔放な記者会見で「グリーンランドに対する法的権利をデンマークが持っているかどうかさえ国民は知らないが、もし持っているなら、国家安全保障上必要なので、放棄すべきだ」とトランプは述べた。

 間もなく第47代大統領になる彼は領土奪取のため軍事力を行使する可能性を排除しなかった。

 鳩小屋に猫が忍び寄るのを見た鳩のようにデンマークとヨーロッパの政治家たちは臆病に反応した。「グリーンランドは売り物ではない」とデンマークのメッテ・フレデリクセン首相は反抗的態度を取った。ヨーロッパ主権は不可侵で、トランプが一方的に国境を変えることはできないとドイツとフランスは弱々しく警告した。デンマーク領土を守るためEUが共通防衛協定を発動する話さえあった。ではNATOの相互防衛協定はどうだろう。事実上のNATO指導者アメリカから、NATO加盟諸国はデンマークを守るのだろうか。

 トランプは気が狂っていて傲慢なのかもしれない。だが彼の流儀で価値ある点は、少なくとも無意識に、アメリカとNATO同盟諸国の酷い偽善と道徳的破綻を暴露していることだ。

 アメリカとNATOはウクライナで三年間にわたり流血沙汰を引き起こし、第三次世界大戦に発展する危険をはらんでいる。その全てが、ロシアの侵略とされるものからウクライナの主権と国境を守るという神聖な祭壇の上で行われている。

 その後トランプが登場し、同盟国とされる国々の領土を併合すると脅迫している。

 その不条理さは、国際法の遵守と国境の尊重に関する欧米諸国の主張の虚偽さを露呈している。更に不条理なのは、保護国だとアメリカが主張する「同盟諸国」に対する自らの攻撃性と軽蔑をアメリカ新大統領が露骨に宣伝していることだ。

 最近の一連の記事で、デンマークのアメリカに対する卑屈な追従をロン・リデノーは軽蔑している。昨年デンマークのフレデリクセン首相がアメリカとの「防衛協力協定」に署名しアメリカをデンマークの最強同盟国と宣言したばかりだとリデノーは指摘している。

 NATO加盟諸国の中でデンマークは最も親米的かつ強硬派な国の一つになった。ウクライナにF-16戦闘機を最初に供給した国の一つでもある。

 これまでロシアに対して主張してきた以上に、アメリカからの脅威をNATO加盟国が感じているのは、なんと馬鹿げたことだろう。

 デンマークの主権、ひいては欧州連合主権のトランプによる蹂躙は残忍な威嚇行動だ。玄関マットのように振る舞えば、玄関マットのように扱われる。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/01/10/trump-tramples-danish-doormat-with-threat-annex-greenland/

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 Rachel Blevins 徴兵年齢を18歳に下げろとウクライナに命じるトランプ政権。
Trump Admin Plans to Force Ukraine to Lower Conscription Age for Talks with Russia –Official 14:29
Rachel Blevins
Jan 14, 2025

 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
気候変動がロス火災の火つけ役ではない。だが気候の変化が火災をより激しく、長期化し、破壊的なものにした。ロスの5月6日以降の雨量は、わずか0.16インチ。大気は温度が1℃上昇→7%多くの水蒸気を蒸発、吸収、放出=「膨張する大気のスポンジ」、強風は時速99マイルに達した強風
 日刊IWJガイド
■はじめに~日本政府をはじめ、西側諸国は「力による現状変更は許されない!」と米国に抗議しないのか!? トランプ氏はグリーンランド強奪に軍事力も排除しないと発言! これに対し、イラン軍がグリーンランド、カナダ、メキシコ、パナマを軍事支援すると反応! 第2次トランプ政権では、北極圏利権が国際的に争われる時代に!

2025年1月13日 (月)

マイクロチップ、海、戦争



ロレンツォ・マリア・パチーニ
2025年1月8日
Strategic Culture Foundation

 台湾は島なので、海こそ台湾の領域であり、アメリカのように強大な海軍力を保有する国家は海上交戦を無視できない。

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 もうすぐだ。十分な数のマイクロチップ工場が中国からヨーロッパに移転されれば、アメリカはこれ以上待つ理由がなくなる。台湾で戦争が始まるのだ。

 放棄できない品

 マイクロチップは今日欠かせないものであることを前提にしよう。身の周りで我々が毎日目にするもののほとんどが同じように機能できないはずだ。文字通り。通信、医療、産業オートメーション、自動車、エンターテインメント。マイクロチップは、人々の仕事や通信や情報の利用方法を変えたインターネットの核心なのだ。マイクロチップは、人工知能、モノのインターネット (IoT)、ブロックチェーンなど新興技術開発の基礎だ。我々が好むと好まざるとにかかわらず、これら技術が未来を形づくりつつあり我々全員100%、その中で暮らしている。

 マイクロチップが発明される前には、コンピューターや電子機器は真空管や個別トランジスタを使っていた。これらの部品は多くの場所をとり、大量の電力を消費し、熱を発生するため、コンピューターは大型で高価で信頼性の低いものだった。1947年にジョン・バーディーン、ウォルター・ブラッテン、ウィリアム・ショックレーがトランジスタを発明したのは、小型化とエネルギー効率化に向かう重要な一歩だった。

 次の画期的な進歩は集積回路の発明によりもたらされた。1958年、テキサス・インスツルメンツの技術者ジャック・キルビーが、トランジスタと、いくつかの抵抗と、コンデンサーで構成され、全てが一つの半導体材料シリコン上で接続された最初の実用的集積回路構築に成功した。その後すぐ、フェアチャイルド・セミコンダクターの共同創設者ロバート・ノイスが大量生産を容易にする改良を加えて同様方法を開発した。これらの発明により、複数の電子機能を一つのチップに統合できるようになり、電子機器の大きさと価格が大幅に削減された。

 マイクロチップが不可欠なものになったのには、いくつか理由がある。
     
  • 小型化と携帯性:マイクロチップにより電子機器の小型化が可能になり、スマートフォンやラップトップやスマートウォッチなど携帯機器の開発が可能になった。
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  • エネルギー効率:個別部品と比較して、マイクロチップは消費電力が遙かに少ないため、携帯機器のバッテリー寿命を延ばし、全体的電力消費を削減するのに役立つ。
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  • 速度と性能:一秒あたり数十億の操作を実行できるため、高性能が要求されるコンピューターやサーバーや複雑な機器を動かせる。
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  • 規模の経済:マイクロチップ大量生産により価格が下がり、産業から消費者まで幅広い用途でこの技術を利用できるようになった。
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  • 汎用性:非常に汎用性が高く、プロセッサ、メモリ、センサー、通信デバイスなど、幅広いアプリケーション向けに設計できる。
 さて問題は、世界でマイクロチップを生産しているのは一体誰なのかだ。最大製造国は中国だ。

 マイクロチップを最も多く消費しているのは一体誰なのか? 答えはアメリカ合衆国だ。

 これは一体何を意味するだろう。それは地政学的、戦略的に非常に大きな価値を持つ依存関係があることを意味する。そして、それは以前より遙かに深刻な問題になっている。
 
マイクロチップの盾

 これは「マイクロチップの盾」と呼ばれている。マイクロプロセッサに対する台北の優位性は、そうなれば中国製チップに依存するアメリカが介入せざるを得なくなるはずの、中国による攻撃の可能性を低くすることを保証するのだ。

 言い換えれば、これは低強度戦争に対する合意だが、永遠に続く保証はない。

 実際、中国とアメリカ両国により企業が売買される対立があった。

 台湾のキング・ユアン・エレクトロニクス社(KYEC)は2024年4月、蘇州の子会社をキング・レガシー・インベストメンツ、レ・パワー、アンカー・ライト・ホールディングス、蘇州工業園区投資基金、トンフー・マイクロエレクトロニクス、上海国有企業総合改良実験プライベート・エクイティ・ファンド・パートナーシップからなるコンソーシアムに49億元(約6億7600万ドル)で売却し、全株式を中国に売却した。同社が述べた理由は、中国がAI用チップ生産に更に対応する必要があったためだ。この取引は、バイデン大統領が出した制裁措置の一つが公布されて僅か数日後に行われた。

 もう一つの象徴的な事例は、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング社(TSMC)のアリゾナ工場が台湾の「双子」工場より大量生産を実現し、アメリカに有利な状況をもたらしていることだ。この企業の場合、非常に重要な詳細が加わる。紛争が発生した場合、アメリカ諜報機関は台湾にマイクロチップ生産停止を許可するが、これは世界的に大きな経済的衝撃をもたらすことになる。TSMCチップは世界中のほぼ全ての電子機器に使用されているため、これが一体どんな影響を及ぼすか想像願いたい。

 重要なのは、マイクロチップはあきらめるわけに行かないことだ。この状態には逃げ場がない。盾は何ものかから保護するが、その何ものかが盾を支配したら一体どうなるだろう?
 
地政学的、戦略的方針変更の緊急性

 マイクロチップに関して言えば、2024年はアメリカにとってひどい年だった。

 主要企業であるインテルの株価は、1月以降60%近く下落し、8月初旬にはウォーレン・バフェット率いる投資家が大規模売りを誘発し、景気後退懸念、人工知能関連設備投資増加への懸念、インフレが重なり、主要ハイテク株の価値が3兆ドル近く下落するなど厳しい歴史を歩んできた。

 株価下落によりインテルの苦境が明らかになり、先週末から情報筋を引用した一連の報道では、同社は「56年の歴史の中で最も困難な時期」にあり、大手銀行に戦略的助言を求めており、半導体製造事業の売却を検討していると報じられている。

 このニュースはアメリカ政府にとって重要な意味を持つ。インテルはアメリカで最も古い半導体製造企業の一つであるだけでなく「重要な国家安全保障資産」で、台湾や韓国や中国や他の半導体製造大手と競争できるかどうかの指標でもある。

 現在インテルは20以上のファブおよびポストファブ施設を所有しており、ほとんどがオレゴン、アリゾナ、カリフォルニア、ニューメキシコ、コロラド、オハイオにあるが、アイルランドとイスラエルにもある。投資削減は同社の野心的拡張計画を危うくする恐れがあるが、2025年までに設備投資は100億ドル減少すると予想されている。

 同社の問題はバイデン政権にとって悪いニュースになっている。同政権は3月、アメリカでの半導体製造に390億ドルの補助金、半導体研究と労働力の訓練に130億ドルと有利な税制優遇措置を提供する「CHIPS&サイエンス法」を通じて同社に85億ドル注ぎ込んだ。

 もしインテルが改革・再編され、半導体製造力を失うようなことがあれば、退任するバイデンだけでなくトランプの経済政策の重要要素も消え去る可能性がある。

 だが問題なのはインテルだけではない。

 もはやアメリカは自国に必要な生産を諸外国に委託できない。何十年にもわたる製造業分散化は、短期的には素晴らしいが、長期的には悲惨な結果をもたらすことが証明されている。実際、アメリカは何年も前からこの問題に目を向けている。

 2022年に、2022年台湾政策法案を議会は審議した。これは中国に対する大規模制裁措置を含め、台湾にアメリカ政府が提供することが認められている軍事援助の性格と量両方の拡大に焦点を当てル法案だ。この問題は、この地域へのナンシー・ペロシ外交訪問中に議論された北京に対する露骨な挑発で、日本とオーストラリアでも懸念を引き起こした。

 マイクロン、インテル、ロッキード・マーティン、HP、アドバンスト・マイクロ・デバイセズといったIT企業幹部もこの法案署名式に出席した。興味深いことに、ちょうど同じ時期に、アメリカ・ハイテク業界も投資増加を発表した。マイクロンはアメリカでの雇用創出に400億ドルを費やし、クアルコムとグローバル・ファウンドリーズは提携契約を締結し、マイクロチップ生産と既存事業の拡大に42億ドル投資する。

 チップ問題はトランプ政権の手に引き継がれたが、決して容易な仕事ではない。大統領側近は敵と対決する覚悟が固い反中国派で満ちている。

 まもなく締結される新貿易協定を利用して、半導体生産をアメリカだけでなくヨーロッパにも移転するのがトランプの狙いだ。ヨーロッパにとって、戦時経済体制はこうした小型電子機器生産の促進に最適だ。

 例えばTSMCは、2027年末までにチップ生産工場をドレスデンに建設するため、2023年末にドイツに100億ユーロも投資した。これはアメリカのチップ法のコピーとも言える欧州チップ法により促進され数年以内にマイクロチップ生産量を二倍にすることを目指すものだ。

 ヨーロッパでは、インテルのアメリカ人は(フランスとアイルランドに加えて)マクデブルクに期待を寄せている。イタリアは、ベネト州とピエモンテ州の地域で5,000人雇用する計画だ。全体的にサプライチェーンは短くなりつつあり、電子部品生産が小売り市場に近づけば、イタリアが旧大陸の基準点になるだろう。

 締結できる投資や提携以外でも、この問題は戦略的観点からも検討する必要がある。

 次のような動きが起こる可能性を我々は予想しなければならない。中国の勢力圏外で、十分な量のマイクロチップが生産され確保された瞬間に、アメリカが台湾を奪取しようと攻撃する可能性があるのだ。

 中国近海での「商業」探査に、イタリアなど様々な属国をアメリカが利用し、インドネシアやフィリピンなどの近隣諸国にまで手を伸ばしているのは、このためだ。

 これら全てと海と、一体どういう関係があるのか。答えは単純だ。台湾は島で、海は台湾領海で、アメリカのような海軍大国は海上戦闘を放棄できないのだ。台湾周辺での長年にわたるアメリカの大規模展開は、今や中国にとって本物の脅威になっている。

 重要なのは、実際必要なマイクロチップの数量も、いつそれが実現されるかもわかっていないことだ。つまり、これは、いつ攻撃が起きても不思議ではないことを意味する。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/01/08/microchip-sea-war/

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 Sabby Sabs Podcast
Scott Ritter: NATO Is Done! (Interview) 58:32
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
炎症と戦う食べ物:慢性炎症はサイレントキラーになる可能性、食事が炎症を抑える役割を果たす可能性。高度に加工された食品や砂糖を多く含む食品を多く含む食事は慢性炎症に関連、新鮮な果物、野菜、繊維、特定の脂肪などの特定の健康食品の摂取は慢性炎症を抑えるのに役立つ(NYT)。

2025年1月12日 (日)

シリア分割と新サイクス・ピコ協定:地政学的混乱と地域再編

セス・フェリス
2025年1月10日
New Eastern Outlook

 外部勢力とテロ集団の名称変更により煽られた民族的、宗教的境界線に沿ったシリアの意図的分割は、この国の混沌とした未来を形作する地政学的策略を浮き彫りにしている。

 シリア分裂と新サイクス・ピコ協定:地政学的混乱と地域再編

 テロ組織が一夜にして自らを変え、行いを改められると本当に思っている人などいるだろうか、特に国際社会に?

 だが、この「騒乱」がどれだけ、トルコやイスラエルのような国々や彼らの国際支援ネットワーク権益のため、シリア全体を古代の民族的、宗教的境界線に沿って憎悪で分割された地域に完全分裂させるため意図的に仕組まれたものであるかは注目されていない。

 アメリカにとって、アサド政権崩壊は、部分的勝利を主張するのを可能にし、焦点をウクライナからイランへと移すことになる。

 HTS*と指導者ジョラニを「多様性に友好的」と欧米諸国は位置付け、名称変更したアルカイダ*集団をテロ組織リストから急遽削除しようとしている。このテロリスト、おっと、民主化代理人指導者にかけられた1000万ドルの懸賞金を取り消すとアメリカも発表した。全て、この指導者(でゼレンスキーのクローン)との取り引きを試みるためだとされている。少数派と女性の権利について「前向きなメッセージ」が受け取れており、これは「HTS*との協議を開始している事実と一致する」「政策決定」だったとバーバラ・リーフ国務次官補(近東担当)は説明し、この地域の利益に関する協議に着手している時に「この人物の首に懸賞金をかけるのは少々矛盾する」と付け加えた。

 まるで取り引きが既に成立していないかのように。もしあなたがこれを信じるなら、あなたに、良い橋を売りましょう...。他の人々は彼をCIA工作員と呼んでいるが、それはまだ結論が出ていない。様々な課題を彼がどれだけうまく遂行するか見よう。

 シリアが新たな未来を迎える中、アル・ジョラニ、別名アフマド・フセイン・アル・シャラーに注目が集まっている。CNNやBBCのインタビューに後押しされて、彼の怪しい過去と、突然の変貌により、アル・ジョラニは変わった指導者として自らイメージチェンジした。だが、このPR活動の背後にあるものは、シリアで実際に起きている動向と、この国の未来がどうなるのか明らかにするかもしれない。

 彼がしたとされる約束の中には、キリスト教共同体や彼らの礼拝の権利を尊重することに関するものがある。彼はスーツとネクタイが似合っているが、彼の性格や暗い魂はおそらく何も変わっていない。

 一方、驚くべきことではないが、シリアのキリスト教聖職者は、イドリブ県などHTS*の厳重な管理下にある地域では伝統衣装を着て公の場に姿を現すことを禁じられており、キリスト教の象徴、特に十字架は教会から撤去されている。

 多様性、寛容…。

 そして予想通り、むしろ意外なことだったが、彼が指揮するテロリスト・ネットワークは、真の姿を現し続けている。

 ハマ市近郊のキリスト教徒が多数派を占める町スケイラビヤでクリスマスツリーが燃やされたことで、少数派の間で激しい怒りが巻き起こり、シリアのキリスト教徒は首都ダマスカスの一部を含む、キリスト教徒が多数派を占める多くの地域でシリア人キリスト教徒が抗議行動をした。言うまでもなく、この攻撃は「外国人戦闘員」に実行されたとジョラニとHTS*は主張しているが、これは単なる意図的隠蔽だ。なぜなら外国人戦闘員がHTS*作戦で重要な役割を演じ、ウクライナの外国人「志願兵」同様、彼らの部隊にうまく統合されていたのは周知の事実だから。

 ある抗議行動参加者はこう言った。「我々は、以前のようにキリスト教を尊重する国に暮らすか、国外出国できるよう扉を開けてもらうかのどちらかだ」

 おそらくこれが計画の全てで、イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区とガザ地区も同様だ。パレスチナ人キリスト教徒に対するイスラエル国防軍の極めて否定的な態度により、過去40年間でキリスト教徒人口は激減した。

 だがシリアの他の少数民族、特にアラウィー派、ドゥルーズ派、クルド人はどうだろう?

 アサドがアラウィ派だったことを考えれば、宗教や民族共同体が反政府勢力による報復攻撃の標的になったのも不思議ではない。攻撃は犠牲者が政府に関与しているかどうかに関わらず行われることが多い。確かに、標的にされた人々の中には政府関係者や治安・諜報機関関係者もいたが、このテロ活動は、包括的な国家を創りたいというジョラニの主張と明らかに矛盾している。

 一方、ドゥルーズ派は実際的理由からイスラエルと連携しているようだ。既にイスラエルはゴラン高原全体(以前は戦略的要衝の一部しか占領していなかった)と1974年の緩衝地帯を含むシリア西部の大部分を占領しているが、ダマスカスから数キロのところまで急速に移動している。これは彼らの過激な入植者指導者が既に「ユダヤ人の街」と定義しているもう一つの標的なのかもしれない。これは非難されるべきイスラエル財務大臣スモトリッチが支持する見解で、彼は次のように発言している。

 「将来エルサレムはダマスカスまで拡張すると書かれている」「ダマスカスまではエルサレムだけだ」と不気味な口調で付け加えた。

 クルド人問題

 そして、この地域の庶子で、かつてシリア内戦の主な勝者で、国の25%以上を支配する「自治」地域(当然かなりアメリカの支援を受けて)を切り開いた、トルコ人から最も嫌われているクルド人がいる。

 今やHTS*の突然の変身や、世俗主義バース党勢力の劇的崩壊や、トルコと連携する「多様な聖戦主義者」によるダマスカス占領により、クルド人と彼らの国家樹立や自決の夢の終わりが近づいているのかもしれない。

 シリアのクルド人に対して、エルドアン大統領が本能的憎悪を抱いているのは周知の事実で、彼らがトルコのPKKやYPGなどのクルド民族主義者(テロリスト)を直接支援していると主張している。PKK、YPG、SDFのシリア・クルド人部隊に対し、トルコは長年にわたり国境を越えた作戦を数多く行ってきた。

 今や、この問題を「きっぱり」解決するとトルコは脅し、PKKやYPGなどの集団に、武器を捨ててシリアから撤退するよう要求しているようだ。彼らを救出する者が現れるかどうか疑わしいが、NATO加盟諸国の潔白な手により、彼らはパレスチナ人と同じ運命をたどることになるのかもしれない。

 トルコの支援を受けたSNAの攻撃により、シリア北部の戦略都市マンビジの大部分が制圧され、アメリカは停戦交渉を余儀なくされたが、その結果、SDF同盟者はマンビジからの撤退を余儀なくされた。最近クルド人の反撃はいくらか優勢に立ったようだが、この戦略都市は今のところトルコ代理勢力の支配下にある。

 SDFに関し、トルコのハカン・フィダン外相は

 「トルコ、イラク、イラン、欧州から来たPKKメンバーや極左集団により、この地域はテロの温床と化している」と会談後の記者会見でフィダンは述べた。「ISが(ISに対して)監視を行っているため、この無法状態に国際社会は目をつぶっている」

 イスラム過激派テロリストをアンカラが支援していることを考えると、これは少々偽善的に思えるが、何を期待すれば良いのだろう?

 全体像の中で、これはどのように展開するのだろう?

 われわれが目にしているのは新たなサイクス・ピコ協定の展開ではないかと思う。アメリカ、イスラエル、トルコはいずれもシリアの広大な地域に対する領有権を主張している。トルコのエルドアンはシリアの多くの地域、特にアレッポ、イドリブ、ダマスカス、ラッカ併合を提案している。言うまでもなく、これはダマスカスを含む広大な地域に対するイスラエルの主張と衝突することになるが、パレスチナ人を支持すると公言しているにもかかわらず、エルドアンは多くのアラブ指導者同様、国民の希望や期待に反して、ネタニヤフの腰巾着であることが益々明らかになっている。

 混乱が広がるにつれ、私は映画「アラビアのロレンス」の場面を思い出す。映画の終わり、ダマスカス陥落の際、彼は二人の外交官と話し、秘密のサイクス・ピコ条約は何も知らなかったと主張する。背後にある現実の物語では、勝者は栄光に浸っているが、いつも通り、その輝きはすぐ薄れ、舞台裏の協定の当事者たちは、いつも通り、権力や資源や、その双方から流れる金を求めて互いに敵対し始める。

 アサド軍崩壊の中、イランとロシアが比較的無策なのは戦略的撤退かもしれない。撤退することで、アサド軍は再編成し、内紛で敵が弱体化すれば戻ってくる可能性がある。一方、ロシアはHTS*から主要基地を確保しており、シリアでの最近の試練に直接関与しないことで、ウクライナでの主要目標に集中し、いざという時のため資源を温存できる。

 名ばかりの勝利!

 イランにとっては、レバノンやヒズボラとの直接の繋がりを失うのは後退だが、シリアでの作戦が長期化すれば危険を伴う。防空軍援護がないため、本国から遠く離れた場所では、イラン軍はイスラエル空爆に対して無防備になるだろう。

 アメリカにとって、アサド政権崩壊は、ウクライナからイランへと焦点を移し、部分的な勝利を主張できる機会となる。これをガザ紛争と進行中の大量虐殺から注意をそらす機会で、シリア防空軍に邪魔されることなくイラン核施設を攻撃する好機とイスラエルは見ている。だがイランがイスラエル空軍基地を以前攻撃した際、イランが十分に設計され完全に機能する防空網を持っているのをアメリカとイスラエルどちらも学んでいない。

 混乱は拡大し、ヨルダンとエジプトの不安定化を招く可能性が高く、それに比べればアラブの春は穏やかなものに見えてくるだろう。

*-ロシア連邦では禁止されている

 セス・フェリスは調査ジャーナリスト、政治学者、中東問題専門家

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/01/10/syrias-fragmentation-and-the-new-sykes-picot-geopolitical-chaos-and-regional-realignments/

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