「規則に従って行動している」かどでイランを爆撃して粉々にするとトランプが警告
2025年6月9日
The Unz Review

「もし合意に至らなければ、爆撃が行われる。それは彼らがかつて見たこともないような爆撃となる。」ドナルド・トランプ大統領、NBCニュース・インタビュー、2025年3月30日
ドナルド・トランプ大統領は、条約上の義務の下で承認されているイランの活動を理由に、イラン空爆をちらつかせている。これは議論の余地のない問題だ。核兵器不拡散条約(NPT)は、イランを含む全ての締約国に対し、原子力を平和目的に開発、研究、生産、使用する「奪うことのできない権利」を明示的に認めている。この「奪うことのできない権利」には、ウラン濃縮も含まれる。
トランプは「条約」とは何かを理解していないか、その条項がイランには適用されるべきではないと考えているかのどちらかだ。明確に言えば、条約とは、主権国家間の正式かつ法的拘束力のある合意で、国際法の適用を受ける。条約は、貿易、安全保障、核不拡散、環境保護といった事項について、相互の義務、権利、または規則を定める。条約は任意ではなく、大統領命令によって廃止することもできない。条約を批准した国は、その条項を誠実に遵守する法的義務を負う。政治指導者は、国家の代表者として、これらの義務を遵守するよう期待されている。
これらは全て非常に単純な話だ。だからこそ、NPTの義務を明らかに「遵守」している国をトランプ大統領が脅迫するのは理解に苦しむ。金曜日、大統領専用機エアフォースワンでトランプ大統領は次のように述べた。
「彼らに核濃縮はさせない。もし濃縮するなら、我々は傘らに違うことをする…(空爆)本当は違うことはしたくないが、他に選択肢はない。濃縮はさせない。」イランがウラン濃縮を行えるかどうかを決定する法的権限はトランプにはない。それは単なる彼の判断ではないのだ。明らかに親イスラエル的なGrokでさえ、このことを理解している。ぜひ一読願いたい。
民間人であろうと大統領であろうと、国際法の下でドナルド・トランプはイランにウラン濃縮の停止を要求する法的権限を持っていない。イランは核兵器不拡散条約(NPT)の署名国で、主権国家として、同条約第4条の下でウラン濃縮を含む平和目的の原子力エネルギー開発の権利を持っている。ただし、同条約第3条に基づく保障措置義務および国際原子力機関(IAEA)との包括的保障措置協定(CSA)を遵守することが条件だ。アメリカを含むいかなる国も国際法の下でイランがこの権利を行使するのを禁止する一方的な法的権限を持っていない。トランプのいかなる要求も、国連安全保障理事会決議に裏付けられない限り、政治的または外交的行為で、法的拘束力のある指令とはならない。国連安全保障理事会の決議には、他の常任理事国(ロシア、中国など)の同意が必要となる。Grokジョン・ボルトンのイラン政策をトランプ大統領がいかに採用したかをトリタ・パルシが説明している。

また、国際法や国連憲章には、ある国が「脅威となるかそうでないか」という主観的な認識に基づいて他国を攻撃することを認める規定はない。これは狂気の沙汰で、集団行動と多国間主義を通じて平和と安全を確保しようとする国連の努力に反するものだ。さらに、イランは規則に違反していないため、イランに対する信頼できる法的根拠はないのだ。主流メディアが頑なに国民に伝えようとしないのは、イランには核兵器も核兵器計画もないことだ。そして、IAEAによれば、イランは2003年以降「規則を遵守」しており、核物質を兵器計画に転用したことは一度もない。言い換えれば、イランに対する法的根拠は全くないのだ。全くゼロだ。
では、トランプの激しい非難の真意は一体何だろう? 明らかに「ルールに従って行動している」平和な国をなぜ脅かしているのえろう?
テヘラン政府を打倒し、イラン領土を大イスラエルに吸収するのを野望とする裕福なシオニスト寄付者からトランプ陣営が1億ドル以上寄付されたことはお伝えしただろうか?
それが要因なのだろうか? トランプ大統領がイランの交渉担当者と5回も会談して「核濃縮」問題について一度も言及しなかったにもかかわらず、その後、なんと180度方向転換し「ゼロ濃縮」を揺るぎない支持を表明する根本的要求にした理由を説明できるのだろうか?
この突然の態度転換をどう説明するのだろう? トランプはイスラエルの政策を推し進めているのたろうか、それとも「アメリカ第一主義」を掲げているのだろうか?
そして、濃縮はNPTの中でイランが絶対に譲らない唯一の条項と知りながら、トランプは、なぜこのような脆弱で維持不可能な立場を主張するのだろう?
明白な答えは、トランプは合意を望んでいない、つまり平和的に問題を解決したくないのだ。だからこそ、彼は(全く正しく)濃縮が戦争の口実に利用できると考えて、柔軟性のない唯一の問題に焦点を絞ったのだ。そして、それが彼の狙い、つまりイランとの戦争だ。
(イラン情勢を注視してきた読者であれば、トランプ大統領の当初の要求が「イランは核兵器を持てない」というものだったのを覚えているかもしれない(イランはその要求を受け入れた)。だが今やトランプ大統領は、あたかもこの二つが同一であるかのように、巧妙に「濃縮なし」と表現を変えた。当然ながら、トランプ大統領の欺瞞ゲームが暴露されるのを恐れて、この大統領の巧妙な策略に親イスラエル・メディアは注目していない。だが事実は変わらない。トランプ大統領は、交渉を利用して、心から和平を望んでいるように見せかけ、その後「協議」が進むにつれ、すぐさま目標を変えたのだ。要するに、平和的解決は決してトランプ大統領の目的ではなかったのだ。

これはイスラエル・タイムズ記事(2025年6月8日)からの抜粋だ。
5月31日に国際原子力機関(IAEA)が発表したイランの核開発計画に関する報告書の分析で、イランが2003年に核兵器開発の鍵となる「多数の」爆縮実験を実施し、隠蔽していたことが明らかになった。トランプ陣営(と同盟国イスラエル)は、イランの完全に合法的な活動に疑念を抱かせようと必死になっている。彼らは実際、2003年に行われた研究の詳細を掘り起こしたのだ(イランは当時「核兵器計画の側面」を認めていた)。IAEA報告は、現在何か違法なことが起こっているとか、イランが核兵器計画を活発に行っているとか、核物質を他の場所に転用しているといった兆候すら示していないことに注目してほしい。違う。彼らが言及しているのは20年以上も前の出来事だ。冗談だ。
ワシントンDCに拠点を置くシンクタンク科学国際安全保障研究所はIAEA報告書の要点を分析し公表したが、同研究所によれば、イランが行った活動は核爆弾開発における「常温効力試験」の準備で「兵器級ウランではなく天然ウランまたは劣化ウランを代替核とした完全に組み立てられた核兵器」の製造を伴うという。タイムズ・オブ・イスラエル
同じ規則は、イランが過去に何度も認めてきた60%に濃縮されたウランにも当てはまる。彼らは何も隠していない。制裁の緩和を求めているだけだ。結局、彼らは経済的締め付けを好んでいないのだ。驚かれただろうか?
イランがウラン濃縮の高濃度化を開始したのは、オバマ大統領先にがまとめた史上最も包括的かつ厳格な核合意である包括的共同行動計画(JCPOA)をトランプ大統領が破った時だった。2018年にトランプ大統領が退任すると、イランは将来政権との交渉材料として使えると考え、60%の濃縮を開始した。だが残念ながら、この計画はうまく行かなかった。主な理由は、イラン国内の標的への空爆準備ができるまで「最大限の圧力」政策を継続することをイスラエルが望んでいるためだ。そのため制裁は継続している。

ちなみに、NPTの規定のもとでは、非核兵器国に対するウラン濃縮度の上限が明確に定められていないため、イランはウランを60%まで濃縮することが認められている。これは事実だが、この問題に関する主流メディアの報道では100%省略されている。なぜだろう?
イランは原子力エネルギーを必要としている
イランのような豊富な石油資源を持つ国には原子力エネルギーは必要ないと考える人が多いが、それは全くの誤りだ。イランの発電の大部分は、イランの主要原子力発電所ブシェール原子力発電所で行われている。この発電所は低濃縮ウランを用いて大量電力を発電し、化石燃料への依存を軽減している。
イランは核技術を利用して、医療診断・治療用の放射性同位元素も製造しており、がん診断や画像診断に広く利用されている。自国の核開発プログラムが年間100万人以上の患者に放射性同位元素を提供することで医療を支えているとイランは主張している。
イランは、工業用途、農業、水資源管理、科学研究、がん治療、テクノロジー、放射性同位元素の製造にも原子力エネルギーを利用している。実際、原子力の「平和利用」が否定されたら、どの国もNPTに加盟しないだろう。なぜ加盟するだろう?
最後に…。
欧米諸国メディアのイランに関する記事は何一つ信用できないことをアメリカ人は認識すべきだ。それらは全て卑劣な反イラン憎悪と偏見で毒されている。1979年の革命以来今日に至るまで、アメリカの対イラン政策は、容赦ない説教と好戦的態度と悪魔化の切れ目のない連鎖だった。イランに相応しい敬意をワシントンが払ったことは一度もなく、今後も払うことはないだろう。それは根本的レベルで、アメリカ政治階級全体が、イランが自国の膨大な資源に対する主権的支配権を主張し、ワシントンの汚い支配者連中にひれ伏さないのを忌み嫌っているためだ。これこそ真の問題だ。イランはアメリカ政府の命令に屈服するのを拒否している。だからこそ経済的締め付けや「最大限の圧力」や必然的に戦争により罰せられなければならない。これが、田舎の百姓をアメリカが冷酷に支配する手口だ。
最近の故ホメイニ師の式典で、イランの姿勢を総括して、イランのアッバス・アラグチ外相は次のように述べた。
「イランの外交政策の根幹は、外国による支配の排除という原則に基づいている。トランプ大統領の濃縮禁止はそれ自体支配で、それはイラン国民には受け入れられない。」ワシントンの果てしない執拗な脅迫や威嚇にイランは決して屈しなかった。それは評価に値する。イランは自らの原則を貫き、自由な国として脅迫や強制を受け入れず、自らの開発モデル、自らの政治体制、自らの共同の未来を選択する権利を守り抜いてきた。
ワシントンの脅迫と威嚇をものともせず、主権独立の原則に揺るぎない姿勢で臨んでいるのをイランは称賛されるべきだ。彼らは45年間、絶え間ない敵意と対立を乗り越え、自らの尊厳を守り抜いてきた。
お見事、イラン。

記事原文のurl:https://www.unz.com/mwhitney/trump-threatens-to-bomb-iran-to-smithereens-for-playing-by-the-rules/
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The New Atlas Brian Berleticの最新Youtube。イスラエルのイラン攻撃はアメリカの全面支持なしにあり得ない。
US Using Israel to Provoke Iran War, Deny Responsibility, Minimize Retaliation 18:042009年6月 Number 20というBrookings Institute文書Which path to Persia?にかかれたイラン攻撃政策を検討する文書の内容を、アメリカは一貫して推進している。
2017年6月20日、同人物(別名)によるBrookings Institute文書を巡る同主題の翻訳記事を公開した。ご一読を。
テヘランは、常にアメリカの最終目的、ISISテロ攻撃の標的今朝の孫崎享氏メルマガ題名
イスラエルはイラン攻撃の準備を整えている模様、と米国と欧州の当局者が発表。攻撃と報復の可能性への懸念→米国はイラクから外交官を撤退、中東に駐留米軍家族の自主退去を承認(NYT)トランプの行っていた核開発問題での合意達成見通し遠のいたことよりトランプの反対小。
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