アメリカのフーシ派爆撃はブンブン飛ぶ虫を叩くようなもの ‒ イスラエル攻勢 大イスラエルとイラン戦争計画
2025年4月5日
New Eastern Outlook
フーシ派に対するアメリカの爆撃作戦は、航路の確保が目的というよりは、イスラエルとイランとアメリカ国内政治に結びついた、より広範な地政学的戦略の推進が目的だ。
アメリカのフーシ派爆撃は、ブンブン飛ぶ虫を叩くようなもの
この見出しは、今起きていることに対する批判的分析を盛り込んでいるため、挑発的というだけでなく、紅海やスエズ運河での船舶の防衛やパレスチナでの継続的な大量虐殺にフーシ派がどう対抗しようとしているのかということとほとんど無関係だ。これは大イスラエル計画や、ネタニヤフ首相を刑務所に入れないことや、トランプと手下連中のアメリカ選挙当選を確実にした選挙資金代をトランプと共和党が支払うことに関係している。
フーシ派攻撃は、大イスラエルを含む、より大規模で相互に関連した地政学的戦略の前段階で、ウクライナの惨事から焦点を移し、新鮮な糞に転がる豚のように兵器製造企業を喜ばせておくためのものだ。
これは良い兆ではない。エスカレーションが迫っており、アメリカによる対イラン共同攻撃の可能性が高い。
3月15日、トランプ大統領が「圧倒的な殺傷力」を使うと誓い、大げさに宣伝したため、アメリカはフーシ派支配下のイエメン爆撃を再開した。2014年にイエメン内戦が勃発して以来、アメリカやサウジアラビアや湾岸諸国などの地域同盟国による爆撃を受けてきたが、これまでのところ実質的効果はほとんど得られていないフーシ派運動を打倒しようとしているのだ。
攻撃の表向きの原因は、イスラエルが停戦の約束を破り、封鎖したことへの対応として、イスラエルに向かう紅海の航行封鎖を再開するフーシ派の決定だったようで、3月18日火曜日現在、ガザ地区への爆撃と侵攻が行われており、その過程で数百人の民間人が殺害されている。
米海軍第5艦隊の航空機によるイエメン攻撃は確かに壮観だが、その有効性は深刻な疑問だ。米海軍は軍事目標の攻撃だと主張しているが、犠牲者の大半は民間人だとみられている。マイク・ウォルツアメリカ国家安全保障担当大統領補佐官は、イスラエルに対するフーシ派の封鎖により、アメリカ船籍の船舶の75%がアフリカを迂回する遠回り航路を取っていると述べ、アメリカによる攻撃について以下のように述べた。
「我々は彼らの本部を攻撃した」とウォルツは語った。「通信拠点、兵器工場、更にさ海上ドローン生産施設の一部も攻撃した。」フーシ派指導部は、これら主張を強く否定しており、報道官は次のように述べている。
「標的となった場所の写真、現場、証拠、犠牲者の種類、生存者の証言は、住宅街や罪のない民間人を標的にしていることを裏付けており、アメリカが故意に無防備な民間人の命を奪い、我が国民の能力を破壊しているという決定的な証拠になっている。」トランプが自身のサイト「Truthsocial」へ投稿で使用した恐ろしい言説を考えると、彼はフーシ派を「野蛮人」と非難し、次のように続けている。
「事態がどんどん悪化していく様子を見なさい。これは公正な戦いではないし、これからも決して公正な戦いにはならない」とトランプは補足した。「彼らは完全に壊滅される!」フーシ派が正しいのは明らかで、アメリカは正当な軍事目標を特定できないのに苛立ち、民間人を攻撃しているようだ。トランプ大統領は更に次のように述べてイランを脅迫した。<
「今後、フーシ派が発射する全ての砲弾は、イラン兵器で、指導部から発射された砲弾とみなされ、イランが責任を負い、その結果に苦しむことになる。結果は悲惨なものになるぞ!」選挙運動中、トランプは、戦争をやめる、特にウクライナに平和をもたらすと公約していたが、この発言はむしろ一転している。ウクライナの惨事から逃れるため、トランプは今イエメンや恐らくイランに対する新たな戦争で国民の注意をそらそうとしているという結論しか出ない。この戦争は本当のアメリカ支配者、ベンヤミン・ネタニヤフにとっても利益となるだろう。
しかし、これはどの程度効果があるのだろう? アメリカの福音派キリスト教徒で熱狂的シオニスト、ピート・ヘグセス新国防長官に煽られたトランプは、傲慢さから、介入と必然的失敗というアメリカの良く知られた道の悲惨な過ちを繰り返していると私は考えている。
イスラエル行き貨物船にドローンやミサイルを発射するのは、たとえ船を沈めなくても、フーシ派の勝利だ。それにより、船は喜望峰を迂回する遠回りを強いられ、アメリカの航空優勢だけでは十分でないのを世界に示すことになるためだ。こうした攻撃を阻止するには地上部隊を派遣する必要があるが、19世紀と20世紀に、イギリスがイエメンを占領したことを考えれば、アメリカ政府が、そんなことをするのは狂気の沙汰だ。
アメリカ空襲の激しさに関して言えば、アルジェリア、ベトナム、アンゴラや、20世紀の他の多くの民族解放勢力と同様、生き残ること自体がフーシ派にとっては既に一種の勝利だ。彼らは毎日、自らの立場を守り、少しずつ筋書きを変えている。彼らは、ハイテク兵器の点でアメリカやサウジアラビアに匹敵しなくとも、世界の貿易航路を何千キロも迂回させるなど、依然として大きな戦略的影響力を持てることを示している。これは非対称戦争の完全展開だ。
アメリカと同盟諸国が余りにも良く知っている通り、アメリカの航空戦力は、正規軍の編隊を破るには素晴らしいが、限界がある。攻撃はできるが、現地を支配したり、3万フィートから人心を掌握したりすることはできない。地上部隊? それは全く別の話だ。政治的にも軍事的にも、中東での泥沼が、また長引くのを望む人は少ない。アメリカはそれがどうなるか知っているし、イスラエルも知っている!
この大騒ぎは、火力だけでなく、世界の物流や意志の力の試練になりつつある。フーシ派は比較的少量の資源を活用して、石油市場や保険料や船舶の遅延に波及効果をもたらし、更に「安全な」航路に関する世界の考え方を変えた。彼らの敵、イスラエル、そして支援者アメリカとEUの経済に対する彼らによる損害は、彼ら自身が費やした資金と全く釣り合いが取れない。
これは使用される兵器にも反映されており、比較的安価なドローンや弾道ミサイルに、遙かに高価なアメリカ防空ミサイルや極めて高価な誘導爆弾で対抗する必要がある。ガザでの大量虐殺作戦への報復としてイスラエルを封鎖したフーシ派を屈服させるため行われた前回の作戦「繁栄の守護者作戦」では、ドローンを撃墜するために使用された1発あたり約2万ドルの恐ろしく高価なアメリカ・ミサイルに多額の費用が費やされたが、これは見事失敗に終わった。
ミサイル防衛推進同盟(2022年現在)によると、SM-2は1基あたり210万ドル、SM-6は430万ドル、ESSMシー・スパローは170万ドルだ。駆逐艦にはRolling Airframe Missileも装備されており、2022年時点で90万5000ドルとなっている。それ以来、コスト削減で目立った成果は何も得られず、フーシ派は繰り返し反撃し、少なくとも、空母ハリー・S・トルーマンと護衛艦を四回攻撃し、高価な兵器の急速な消耗を余儀なくさせ、アメリカの攻撃を妨害している。彼らの抵抗がアメリカに軽視されているのは驚くことではないが、現実には、第5艦隊の攻撃支援のために、アメリカは空母カール・ビンソン率いる二つ目の空母群を派遣せざるを得なくなっている。
これは良い兆候ではない。緊張が高まり、アメリカによるイランへの共同攻撃が予想されるからだ。シリアのアサド政権打倒の成功に酔いしれ、ガザのハマスやレバノンのヒズボラを制圧できなかった明らかな失敗を忘れたアメリカとイスラエルは、イエメンをきっかけに、イランに対しても同じゲームをしようとしているとしか思えないが、これはほぼ確実に大きな誤算だ。
まるでカジノでの負けを認める代わりに、連続して負けた後に、小さく勝ち、その結果に賭けた酔っぱらいのようだ。イランは、イラクとシリアを合わせたより遙かに大きな人口に支えられた、よく組織され、装備され、訓練された軍隊と、十分発達した優秀な独自の防衛産業を持った地域大国だ。
フーシ派に関しては、他のゲリラや民族解放勢力と同様「負けていないなら勝っている」ことになるが、彼らは長期的に見て賢明なゲームを展開しているのか、それとも、これが長引けば手を出し過ぎてしまうリスクを冒しているのか。彼らが間違った船を攻撃し、中立の船を攻撃して死傷者を出すという事件が一度でも起きれば、彼らがパレスチナ人を支援するという原則的立場や、イスラエルやアメリカとのダビデ対ゴリアテの戦いにおける勇敢さにより獲得してきた世界的支持が消えてしまうかもしれない。
セス・フェリスは調査ジャーナリスト、政治学者、中東問題専門家
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/04/05/us-bombing-the-houthis-is-like-swatting-at-buzzing-insects-%e2%80%92-israeli-offensive-greater-israel-and-iranian-war-plan/
----------
Judging Freedom
COL. Douglas Macgregor : Will Zelenskyy and Neocons Reject Peace? 28:42デモクラシータイムス
アメリカを壊す トランプ関税【浜矩子の荒れ野で叫ぶ】 41:52今朝の孫崎享氏メルマガ題名
WP「 ハーバード大学はトランプの要求を拒否→22億ドルの政府資金凍結を受けた」政府要請▽採用や入学での、人種や肌の色、宗教、性別、または出身国に基づく優遇措置の廃止、▽米国価値観や制度に敵対的な外国人学生の拒否、▽政権の要求の進捗状況を四半期ごとに政府に報告する文書の提出
最近のコメント