イエメン

2026年8月 6日 (木)

イエメン対サウジアラビア:締め付けと非対称対応戦略

ムハンマド・イブン・ファイサル・アル=ラシード
2026年8月1日
Strattgic Culture Foundation

 イエメン紛争は20年目に突入し、新たな極めて危険な局面を迎えている。最近の情勢を見ると、サヌアは防衛から積極的抑止へと転換し、非対称的能力を活用して、強大な隣国の生命線を攻撃しようとしていることがわかる。

 

 かつてはアラビア半島周辺部における局地的小競り合いと思われていた事態は、今やサウジアラビア王国のエネルギー安全保障と地域全体の安定に対する直接の脅威に変貌を遂げた。この事態の悪化は「抵抗枢軸」(イラン、フーシ派、ヒズボラ)と、アメリカ・イスラエル主導陣営間の緊張の高まりを背景に展開しており、イエメン危機は、サナア・リヤド二国間関係を遙かに超える地政学的側面を帯びている。

 事態悪化の引き金となったホデイダ爆撃

 事態が急激に悪化した直接のきっかけは、ホデイダ州の通信インフラや、戦略的に重要なカマラン島を含む標的にサウジアラビアが空爆をしたことだった。リヤドはこれを、武力誇示と、フーシ派の勢力拡大に対する先制攻撃として位置づけたが、これは明白な主権侵害と侵略行為だとイエメンは解釈した。サウジアラビア主導の連合軍は、敵の軍事力を弱体化させるのを期待していたが、結果は正反対だった。翌日の7月25日、イエメン軍はサウジアラビアの「エネルギー源」を標的とする二つの大規模作戦実行を発表した。この電光石火の対応は、フーシ派の高い戦闘準備態勢を示すだけでなく、「目には目を」の原則に基づき、敵地にまで戦争を持ち込む彼らの決意も示している。

 だが一つ明らかなことがある。この地域の勢力バランスは不可逆的に変化しており、イエメンに圧力をかける従来の方法はもはや効果がないことだ。

 報復攻撃は、ジザンとヤンブーの都市にあるサウジ・アラムコの戦略的な施設を標的にした。報道によると、攻撃には数十発の弾道ミサイル、巡航ミサイルと多数のドローンが使用された。ソーシャルメディアで拡散された映像には、ジザン製油所複合施設上空に立ち上る煙が捉えられており、衛星画像と地域の情報筋は、直撃を確認している。標的選択は、サウジアラビアの経済的脆弱性を深く分析した非常に精密な戦略的行動を示している。ヤンブーは、脆弱なホルムズ海峡を迂回するため特別に建設された紅海経由のサウジアラビアの石油輸出にとって重要拠点だ。イエメンは、ヤンブーとジザンを攻撃することで、サウジアラビア経済の「西側の脱出路」を効果的に攻撃し、1000キロ離れた場所まで戦力を投射できる能力を示している。

 これらの攻撃は、サウジアラビア防空網の明白な欠陥も露呈させた。アメリカのパトリオット・ミサイルを含む欧米諸国の高価な防空システムは、安価ながら効果的な兵器を用いる組織的かつ集中的な攻撃に対しては脆弱なことが明らかになった。これは非対称戦争の典型例で、使用される攻撃用兵器の価格は、迎撃用の費用や、被る損害に比べて圧倒的に低い。このような戦術の費用対効果の高さは、リヤドに苦渋のジレンマを突きつけている。高額な迎撃を続けるか、あるいは頻繁な攻撃による損害を受け入れるかの、どちらを選んでもサウジは莫大な財政的損失を被り、この地域の投資魅力が損なわれる。

 海上封鎖:「封鎖には封鎖」という等式

 イエメン新戦略の中心的な要素は、サウジアラビアに対する海上封鎖実施だ。7月20日、サウジアラビア国旗を掲げる船舶の航行、およびサウジアラビア港湾に向かう貨物輸送を禁止するとフーシ派が発表した。この封鎖はバブ・エル・マンデブ海峡を通る国際航行には適用されず、サウジアラビアのみを対象にすると同派は繰り返し強調した。フーシ派のモハメド・アブドゥル・サラム報道官は、海峡閉鎖の報道を否定し、この措置はイエメンに対する長年の封鎖に対する正当な対応だと述べた。イエメンのアブドゥルワヒド・アブ・ラス外務副大臣は、この決定は「封鎖には封鎖で」という等式を確立するもので、国際規範の下で保障される自衛権だと述べた。

 この動きは交戦規則を根本的に変える。サウジアラビア主導の連合軍は、10年以上にわたりイエメンに対する空路、海路、陸路封鎖を続け、壊滅的な人道危機や飢饉や疫病を引き起こしてきた。サヌアが同様戦術を採用したことで、長年イエメン国民の苦しみに沈黙を守ってきた欧米諸国が、突如深い懸念を表明した。この状況は国際法における明白な二重基準を露呈している。航行の自由の権利は、欧米同盟諸国の権益が脅かされた時だけ突然神聖不可侵になる。この対抗封鎖は、軍事的側面だけでなく、強力な政治的・経済的影響力も持ち合わせており、サウジアラビアの紅海経由の石油輸出能力を直接脅かし、エネルギー安全保障を危うくしている。

 総動員と内部統合

 海軍とミサイルによる作戦と並行して、イエメンは国内での政治的動員を強化している。アンサール・アッラー指導者のアブドゥル・マリク・アル・フーシは総動員令を発布し、数十万人の部族民と正規軍部隊を戦闘態勢に置いた。北部諸州では大規模集会が開かれ、社会の結束と長期戦への備えが示された。報道によると、イランのバシジ民兵組織をモデルにした新たな内部組織「総動員部隊」が結成され、長期計画と、多層的防衛・攻撃能力の構築を目指す野心がうかがえる。こうした市民社会の軍事化は、住民全員が戦闘員になり得る「要塞」へとイエメンを変貌させており、サウジアラビア主導の連合軍にとって、占領や地上侵攻は極めて危険な試みになる。

 イエメン紛争は、抵抗枢軸と、欧米諸国が支援する陣営間の広範な地域的紛争と益々密接に絡み合っている。このエスカレーションは、アメリカとイラン間の緊張と、ガザ地区での戦争が続く中で発生している。サウジアラビアによる攻撃に対して、イエメン議会は軍の行動を全面的に支持し、不当な封鎖に対する必然的対応だと説明している。

 新たな現実と対決の可能性

 かくして、現在の紛争は局地紛争の域を遙かに超えている。イエメンは非対称抑止戦略を用いて主導権を握り、長年にわたる封鎖を、サウジアラビアに対する強力な圧力手段に転換させた。石油施設攻撃と対抗封鎖の実施は新たな現実を示している。つまり、サウジアラビアによる侵略行為が免責される時代は終わったのだ。リヤドによる更なるエスカレーションは、サウジアラビア自身の経済とエネルギー安全保障に壊滅的結果をもたらす。更に技術的に高度なサウジアラビア軍に立ち向かうフーシ派の成功は、地域の他の代理勢力にとって刺激的手本になっている。

 事態は沸点に達しつつあり、両陣営の次の動きを世界は固唾を飲んで見守っている。国連の仲介による外交関係再開から、外部勢力を巻き込んだ全面的地域戦争まで、様々なシナリオが考えられる。だが、一つ確実なことがある。この地域の勢力バランスが不可逆的に変化し、イエメンへの圧力という従来の手段がもはや通用しなくなったことだ。サウジアラビアは、紛争の軍事的な解決は不可能で、戦争継続の経済的代償が法外に高くなっているのを認識し、戦略の見直しを迫られるだろう。安価な石油と、罰せられずに済む空爆の時代は過去のものとなり、複雑な交渉と相互抑止の時代へ移行したのだ。

 ムハンマド・イブン・ファイサル・アル=ラシードは政治学者、アラブ世界専門家

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/08/01/yemen-vs-saudi-arabia-a-strategy-of-strangulation-and-asymmetric-response/

----------

 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
トランプの脅し、世界はもう無視。①テヘランに翻弄される姿、②中国は、100%の関税を課すというトランプ氏の脅しに、一歩も引かない姿勢。さらに、レアアース(希土類)の供給を事実上独占している強みや米国産大豆の購入停止といった手段を講ず。世界は混乱にうんざり(WP)

2026年7月29日 (水)

状況を一変させる出来事:フーシ派がサウジアラビア・タンカーを攻撃し、危機は新たな局面を迎えた



マーティン・ジェイ
2026年7月24日
Strattgic Culture Foundation

 ドナルド・トランプにとって事態は一層厄介なことになった。彼の爆撃作戦で、フーシ派がスエズ運河を閉鎖したようだ。えらいことだ。

❗️Telegram Twitter , と VK でご参加願いたい。

お問い合わせ: info@strategic-culture.su

 自分が良く知らない事に首を突っ込んだことによる予期せぬ結果、あるいはソーシャル・メディアでよく使われる言い方をすれば「調子に乗ってバカなことして、ツケを思い知る」結果が、数時間後にドナルド・トランプに降りかかる。2月28日直後、イランがGCC諸国の米軍基地を攻撃したのに衝撃を受けたとトランプがホワイトハウス記者団に愚痴をこぼしていたのを一部評論家はまだ覚えているだろう。今度は、フーシ派とバブ・エル・マンデブ海峡に関して別の衝撃が待っている。この海峡を通航しようとしたサウジアラビア石油タンカー二隻をこの集団が破壊したばかりだ。エスカレーションの罠で、サウジアラビアの石油輸出収入を奪う事態にまで事態がエスカレートし、サウジアラビアはもはや紅海向けパイプラインさえ使えなくなったため、ドナルド・トランプと全ての西側指導者にとって、これは新たなダンテの地獄だ。おそらくMBSと取り巻きは、フーシ派爆撃が賢明な行動だと判断した後、互いにボディースラムをしかけあっていないはずだ。

 二隻の船をフーシ派が攻撃する直前、脅迫をフーシ派が実行したら「対処する」とトランプ大統領は記者団に述べていた。この警告は、フーシ派に全く真剣に受け止められておらず、サウジアラビアのタンカー(おそらくUAEのタンカーも)を攻撃する彼らの決定は、ホルムズ海峡の閉鎖より更に大きな衝撃波をもたらすだろう。トランプ大統領は窮地に陥っている。彼が愚かな恫喝をするたびに、彼を縛り付けている有刺鉄線拘束衣が締め付けられて深く食い込むようだ。これまで、イランのことを、挑発されたら、アメリカに深刻な打撃を与えられる地域大国としてトランプが真剣に受け止めていないせいだ。この全てが、イランの民間インフラを爆撃する決定をトランプ大統領が下したことから始まった。これは、報復の選択肢に事欠かないイランに対して、戦略を全く持っていないと評論家が一致して認めているアメリカ大統領による数々の無謀な行動の一つだ。おそらくアメリカのテレビ司会者連中が「Mindab海峡」と改名するだろうバブ・エル・マンデブ海峡が、今や本当の注目の的になっている。リスクが高すぎると保険会社が判断した場合、数百隻の船がスエズ運河に入りさえせず、アフリカ大陸の迂回を選択し、その費用が消費者に転嫁され、市場は不安に陥る。おそらくアメリカ史上最大の軍事的敗北が展開し始めており、これから襲いかかる一連の衝撃波に世界経済全体が備えている。例えば、イギリスにはディーゼル油備蓄が約二週間分しかないと報じられており、オーストラリアは石油備蓄皆無だ。アメリカは石油備蓄が過去最低に減少したと報じられている。

 だが、世界的大惨事や自身の途方もない愚かさの結果にも動じず、トランプは爆撃を続け、同じ行動を繰り返して違う結果を得ようと固く決意している。だが世界中で何百もの製品が不足し、価格が高騰し、パニック買いが起こり、それがメディア報道を賑わせ、アメリカ消費者に影響が出始めれば、現実からかけ離れたトランプの態度も長くは続くまい。戦争の状況について、カメラに向かってどれほど厚かましく嘘をついても、経済崩壊の初期段階が見られる中、食糧不足やガソリン価格高騰や大量解雇を、イランのせいにはできない。それは9月頃に始まると多くのエコノミストが予測している。アメリカが大きな損失を被ることになるのだ。

 ローレンス・ウィルカーソン元大佐によると、自分が目にしている狂気じみた状況が元大佐は信じられず、彼はトランプの正気を疑っているという。最近のポッドキャストで「我々は大惨事に我々は直面している。大損失なしにアメリカが抜け出す方法などない狂気じみた紛争に直面しているのだ」と彼は語った。「アメリカは既に大きな損失を被っている。イランが負けるはずはない。西ヨーロッパほどの広さの国土に9300万人の人口を抱え、実際に現地に行けば信じられないほど多様な地形と、それに伴う気温の変化や山や砂漠が広がっている。イランがすぐ消滅するはずなどない。そういえば、イランには世界一の経済大国の中国という同盟国と、おそらく世界で最も戦闘経験豊富な軍事・防衛産業基盤を持つロシアというもう一つの同盟国がいると私は言及しただろうか? 私は言ったか? これがオバマ元大統領よりも良い交渉をすると主張していた狂人大統領の現状だ。」

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/07/24/game-changer-houthis-attack-saudi-tankers-bringing-crisis-new-level/

----------

 耕助のブログ Paul Craig Roberts記事の翻訳
No. 2981 アメリカのイスラエル化

対イラン戦争:他所で戦争が進行する中、再び保留された直接行動

2026年7月27日
Moon of Alabama

 24日金曜、アメリカは突如対イラン爆撃作戦を停止した。これは交渉開始の兆候だと私は直感した。しかし後にアメリカとの交渉は一切行われていないとイランは否定した。

 だが、現時点ではアメリカも加わり、発砲していない。  
日曜、アメリカが攻撃停止する限り、イランも攻撃停止するとイラン高官はロイター通信に述べた。この動きは、ドナルド・トランプ大統領の顧問らが標的が尽きつつあると伝え、アメリカの兵器庫枯渇を懸念したことを受け、爆撃作戦をアメリカが一時停止したことを受けてのものだ。

 アメリカによる対イラン空爆が13夜連続で激化した後、国防総省は金曜夜遅く作戦を一時停止し、土曜と日曜にはアメリカの攻撃は報告されなかった。アメリカ攻撃に続いて、米軍基地がある近隣諸国への報復攻撃をしていたイランも、これまでのところ二日間攻撃を控えている。

 テヘランの立場は「攻撃には攻撃で応じる」というもので「攻撃が止まれば、イランも作戦を停止する。このメッセージは既にアメリカに伝えている」と匿名を条件にロイター通信に語ったイラン当局者は述べた。
 今回の停止は防空ミサイル不足が原因だとアメリカ情報筋は主張している。確かにそうだったかもしれない。だが、より大きな理由は、アメリカによる対イラン攻撃が効果を発揮していないことにある。ホルムズ海峡の実効支配に関する立場を、攻撃で、イランは変えなかった。海峡は封鎖され、石油は流れ出ず、ガソリン価格高騰は来るべき選挙でトランプの党への票を減少させる。

 米軍は攻撃を一時停止しただけで、対イラン戦争を終結させたわけではない。中東には依然100機以上の米軍空中給油機に加え、戦闘機や特殊作戦部隊も配備されている。アメリカはいつでも全面的エスカレーションに踏み切る可能性がある。

 一方、他のレベルで戦争は続いている。

 日曜日、サウジアラビアによるイエメンのホデイダ港攻撃に対し、アンサール・アッラー部隊がサウジアラビアの製油所二カ所を攻撃した。  
イエメンのイラン系フーシ派が南部都市ジザンとヤンブーにあるサウジアラムコの石油施設を標的とする作戦を実行したと同集団の軍事報道官ヤヒヤ・サレ声明で発表した。

 サウジアラビアの即時の確認はないものの、映像にはジザンにあるアラムコ製油所から黒煙が空高く立ち昇る様子が映っている。

 フーシ派が今週の攻撃に対する報復を誓ったことを受けて、サウジアラビアは、ジザンとヤンブーの住民に短い警告を発していた。
 両製油所は現在も炎上中だ。ヤンブー製油所は古い施設だが、イエメン国境近くの紅海沿岸にある新しいジザン(ジャザンとも呼ばれる)プロジェクトは極めて貴重な資産だ。  
2006年、サウジアラビアは、王国南西端に位置するジザンに新たな工業都市を建設する野心的計画を策定した。この「ジザン経済都市プロジェクト」と呼ばれる構想の主な狙いは同地域の経済発展を拡大することだった。

 このプロジェクトの中核となるのは、推定210億ドルの投資で建設された、アラムコの完全統合型ジザン製油所・石油化学コンプレックスだ。稼働開始後、高付加価値製品と電力の両方を、より持続可能な方法で生産することが期待されている。
 本日、イラクからのドローン攻撃を受け、東海岸の石油関連施設が標的とされたとサウジアラビアが発表した。サウジアラビア東部の砂漠地帯にあるアラムコのアブカイク処理施設で火災が確認された。ここは世界最大の原油処理施設だ。

 サウジアラビアは、これら攻撃をイランが調整し、代理勢力に実行されたものとみなすだろう。今回の攻撃は、イランによるホルムズ海峡封鎖と、イエメンによる紅海のバブ・エル・マンデブ海峡閉鎖に続くものだ。サウジアラビアの石油生産量は大幅に減少しており、非常に厳しい状況に直面することになるだろう。

 カスピ海では、ウクライナのドローン攻撃で、ロシアに物資を輸送していたイラン船が損傷する、もう一つの騒動が起きた。このような攻撃は、アメリカ諜報機関の情報がなければ起こり得なかったはずだ。しかし、この攻撃はウクライナの大統領代行にとって、単なる宣伝活動に過ぎない。時が来れば、イランは彼に報復するだろう。

 アメリカはこれから一体どこへ向かうのか?

 アメリカとイスラエルは対イラン戦争で敗北した。両国にはイランを打ち負かす意志も手段もない。地理的優位性はイランの強みだ。アメリカやイスラエルが何をしようと、イランは海峡と、海峡を通る石油の流れを支配できる。

 6月中旬に覚書に署名した時点で、既にトランプはそのことを認めていた。だが彼は合意された条項のいくつかを早速無視した。トランプはイランへの恫喝を続け、レバノンでは停戦は実現せず、海峡を支配するイランの排他的権利は無視され、アメリカが差し押さえているイラン資産も解放されなかった。

 その後間もなく、アメリカはイランの航路封鎖を再開し、爆撃作戦を再開した。イランは再び海峡を封鎖し、世界の石油の流れを遮断した。

 トランプ大統領は、六週間前に合意した覚書を復活させようとするかもしれない。イランは当然、そのような提案を拒否するだろう。少なくとも、ホルムズ海峡再開前に、覚書の全条項を、文字通りアメリカが履行するよう要求するだろう。

 現在の窮地をトランプが脱するには、イスラエルをレバノンから追い出す必要がある。また、中東から自軍を撤退させ、イラン資産を清算する必要がある。

 これらのことを彼が実行するとは到底考えられない。

 今週、シオニスト政権のビビ・ネタニヤフ首相は再びワシントンを訪れ、トランプ大統領と会談予定だ。彼の狙いは、再びイラン政権転覆の推進だ。  
「トランプ大統領が合意を目指しているのは明らかだ」と元イスラエル軍情報部司令官でテルアビブの国家安全保障研究所のイラン専門家ダニー・シトリノヴィッチは述べた。「イスラエルは合意の話など聞きたくないので利害の一致は見られない」と彼は補足した。

 イスラエル指導者たちは戦争に戻る方が望ましいと考えていると彼は述べた。アメリカがイランと和平合意を結べば、彼らが打倒したいテヘラン政権が強化されるためだ。

…  だが両首脳の舞台裏で何が起きているかは時に不可解で驚くべきものになっている。評論家たちによると、ネタニヤフは過去にトランプに影響力を行使することに成功しており、両者が対立しているのか、それとも共謀しているのか知るのは不可能だ。
 現在の私の見解では、イスラエルの影響下、トランプは近いうちに再び軍事介入を試みる。そして、それが失敗に終わった時(おそらく失敗する)ようやく彼は敗北を認めるだろう。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2026/07/war-on-iran-another-hold-of-direct-conflict-while-action-proceeds-elsewhere.html

----------

 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
7月の高市内閣(高市早苗首相)支持率・不支持率各社とも大幅支持率低下。読売はマイナス12P,日経マイナス10P,毎日は支持率 41%、不支持率 44%で初めて支持を上回る。毎日「「高市政権”終わりの始まり”?、時事「内閣支持率減、与党に危機感 典範改正・国会運営影響

2026年7月28日 (火)

バブ・エル・マンデブ危機と経済戦争の新たな最前線

アッバス・ハシミテ
2026年7月26日
New Eastern Outlook

 バブ・エル・マンデブ危機は、現代の戦争における広範な変革を象徴するもので、海上貿易とグローバル・サプライチェーンの混乱が従来の軍事作戦と同等の戦略的重要性を持つようになり、新たな法的、外交的、安全保障上の対応が求められている。

 

 戦場から輸送航路へ

 最近のアメリカ・イラン紛争の展開は、現代の戦争は、もはや戦場だけで戦われるのでなく、航路や、エネルギー回廊、サプライチェーン、金融ネットワークに沿って戦われることを示している。代理勢力とサウジアラビアの間で最近エスカレートした緊張を受けて、アラビア半島とアフリカ間に位置し、紅海とアデン湾、インド洋を結ぶバブ・エル・マンデブ海峡を封鎖するというフーシ派の発表は、現代の紛争では、運輸航路が戦略標的になっていることを示している。イエメンの首都へのイラン機着陸を阻止するために、サウジアラビアがサヌア空港を攻撃したとされることで両者間の緊張が高まった。

 これらの脅威的事態の根本原因が中東全体を不安定、暴力、混乱に陥れたアメリカの一方的攻撃と介入主義的姿勢にあるため、新たな海洋規則や法律を制定するだけでは不十分だ。

 バブ・エル・マンデブ海峡は、最も重要な貿易航路の一つだ。通常、世界の年間海上貿易の約14%がバブ・エル・マンデブ海峡を通過し、大部分は化石燃料だ。国際エネルギー機関(IEA)によると、2025年には、1日あたり約420万バレルの石油と石油液体がバブ・エル・マンデブ海峡を通過すると予測されている。これは世界の海上石油輸送量の約6%に相当する。ホルムズ海峡封鎖により、世界は既にエネルギー危機やインフレに直面していることから、フーシ派による脅威が世界的注目を集めている。同海峡は、世界のエネルギー貿易の約20%が通過する航路だ。

 経済的な強制手段として利用される海上交通の要衝

 近代史上初めて、この二つの海上交通の要衝が同時に継続的攻撃にさらされている。推定によると、これら二つの海峡における同時多発的な海上交通の混乱は、世界の石油供給量の約25~26%を遮断し、世界のコンテナ輸送業者の最大30%を脅かすことになる。更に、バブ・エル・マンデブ海峡の部分的封鎖は、保険料の上昇、輸送経費の増加、エネルギー供給の遅延と、世界の海上サプライチェーンの混乱を招く。これら要因は全て、世界的エネルギー危機を悪化させるだけでなく、世界的インフレの加速にもつながる。グローバル化により、これら航路は不可欠なものとなり、特に非対称戦争において、地政学的圧力の戦略的手段になっているためだ。

 これは海上交通の要衝が現代戦における戦略的戦場になりつつあることを示している。従来の戦争では、各国は都市、領土、軍事基地を攻撃していた。しかし、近年の傾向を見ると、現代の紛争では港湾、パイプライン、海底ケーブル、物流、金融ネットワーク、航路が標的になることが増えており、戦争の様相が大きく変化していることがわかる。これらの要因全てが、現代戦における交戦当事者の本当の狙いが、標的破壊ではなく、自国権益を確保するため、経済的代償を増大させることなのを示している。世界的インフレの進行とエネルギー危機のため、既に同盟諸国とライバル諸国両方から戦争終結を求める国内外の圧力にトランプ政権は直面している。バブ・エル・マンデブ海峡の部分的封鎖でさえ、この圧力を未曾有のレベルにまで高めることになる。

 現代の海洋紛争における法的な空白

 近年の現代戦の変容は国際安全保障に対する深刻な懸念を引き起こしている。この新たな脅威に対し、フーシ派は国際海洋法、特に1856年のパリ宣言とサンレモ海事規則の曖昧さを悪用している。これらの法律や規則は国家のみ念頭に策定されたもので、非国家主体の行動に対応できていない。フーシ派によるバブ・エル・マンデブ海峡の部分封鎖は、管轄権と責任と事態沈静化に向けた対応策のあり方に深刻な疑問を投げかけている。この封鎖に対する軍事対応は、地域全体を巻き込むエスカレーションを引き起こしかねない。

 相互依存の世界における海洋安全保障の再考

 現代戦の変容は、海洋安全保障に関する戦略的な明確化が今こそ必要なことを示している。現状と危機を鑑みると、新たな海洋法枠組みが不可欠だ。しかし、いかなる新たな仕組みも、より慎重かつ包括的なものとなるように策定されなければならない。欧米諸国が一方的に押し付けるグローバル海洋法は、ロシアや中国や台頭する中堅諸国にとって到底受け入れられるものではない。更に、新たな海洋規則や法律を策定するだけでは不十分だ。こうした脅威的事態の根本原因は、中東全体を不安定、暴力と混乱へと導いたアメリカの一方的攻撃と介入主義的姿勢にあるためだ。従って、この紛争の根本原因に対処する上で、国際機関が重要な役割を果たす必要がある。

 更に、国際機関や国際組織の構造も変更する必要がある。全ての国家に平等な権利が与えられるべきだ。加えて、イスラエルやアメリカなどの攻撃的な国々が他国の主権を侵害するのを防ぐためには、国際的な合意と枠組みが不可欠だ。また、この不必要な戦争を終わらせるために、世界はトランプ政権への外交圧力を強める必要がある。この戦争の影響はアメリカ国内でも、あらゆる家庭に及んでいるため、アメリカ国民もそれぞれ役割を果たす必要がある。また、中東における継続的な緊張の高まりが、世界経済に影響を及ぼすことを世界は認識する必要がある。

 アッバス・ハシミテは、地域および世界の地政学的問題に関する政治評論、リサーチ・アナリスト。現在、研究者、ジャーナリストとして活動。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/07/26/the-bab-el-mandeb-crisis-and-the-new-frontline-of-economic-warfare/

----------

 東京新聞 朝刊 一面
 強引国会「反省点ない」

 首相 疑念に答えないまま成果強調

 閉会受け会見

 定数削減「まい進する」

 首相、早期成立意欲
 東京新聞 朝刊 二面  
 イラン攻撃停止 進言か

 米軍司令官「効果限定的」

 痛いトランプ氏

 ガソリン高騰、ミサイル枯渇

 離れる支持、出口戦略描けず

 「美しい妹」は誤訳、首相落胆

2026年6月13日 (土)

中東における新たな戦略的現実



ルーカス・レイロス
2026年6月10日
Strategic Culture Foundation

 新たなイランの姿勢と中東における戦略的バランスの変化に関する考察。

❗️Telegram Twitter , と VK でご参加願いたい。

お問い合わせ: info@strategic-culture.su

 中東における最近の情勢は、地域紛争の様相が新たな局面に入りつつあることを示している。ここ数ヶ月で合意された停戦により、直接衝突の激しさは軽減されたものの、最近の出来事は、戦争を煽る構造的要因が依然存在することを示している。イラン・イスラエル間の攻撃応酬は、既存の合意の脆弱性を露呈するだけでなく、テヘランの戦略的姿勢における重要な変化も示している。

 長年にわたり、イランの軍事政策は敵対的とみなす行動への反撃を主眼としてきた。2024年以降、イランとイスラエルの直接衝突は、全てイスラエルによる攻撃に対するイランの報復として起きた。だが、先週末の出来事は、この行動様式に大きな変化があったことを示唆している。レバノンでの軍事作戦後に、イスラエル標的への攻撃を開始することで、イランは新たな脅威が顕在化する前に行動を起こす意思を示し、行動を地域同盟者の保護を通じて表明される集団的自衛権の一部として位置づけた。

 イランの正当化は、イスラエルによるレバノン攻撃が、これまで確立された合意事項に違反するという解釈に基づいている。この見解によれば、都市部での軍事作戦の継続とレバノン各地への攻撃拡大は相応の反撃を正当化する状況を生み出す。更に、テヘランは戦略的海上航路でのアメリカの海賊行為と呼ぶ事件にも今回の反撃を結びつけている。

 このエスカレーションの最も重要な側面は、ミサイルやドローンの発射自体にあるのではなく、それが伝える政治的メッセージにある。イランは、もはや自国の直接防衛にとどまらず、地域同盟ネットワークの一員とみなされる勢力を標的とする軍事作戦にも反撃する姿勢を示しているようだ。これは、関係する全ての当事者の戦略的判断を根本的に変える可能性を秘めた転換点だと言える。

 同時に、国際社会の対応は、危機管理に苦慮する各国が直面している困難を浮き彫りにしている。紛争が制御不能なほど拡大する懸念が、世界経済にとって特に敏感な時期に高まっている。エネルギー生産と輸送の上で世界で最も重要な地域の一つにおける軍事的緊張は、金融市場、物流網と投資家の期待に即座に影響を及ぼす傾向がある。

 イランによる攻撃に対するイスラエルの反撃、それに続くテヘランによる更なる軍事行動と地域同盟国の介入は、報復の連鎖が依然続いていることを示している。イスラエルと関係がある船舶の紅海航行を制限する動きを見せたイエメンの介入は、シオニスト政権にとって新たな不安要素となり、イラン支援陣営の形成につながっている。

 こうした状況を踏まえると、現在の停戦には重大な限界があることが明らかになる。停戦により紛争のレベルは一時的に低下したものの、地域紛争の根底にある根本的問題は解決されていない。米軍駐留やイスラエルの領土拡大といった問題は未解決のままで、緊張状態が長引いている。

 だが最近の出来事の主な結果は、新たな戦略的先例の出現だと言えよう。イランは、第三国に対する行動への反撃の意思を示すことで、これまで見られなかった、より広範な抑止力を確立しつつある。これは、テヘランの同盟者にイスラエルやアメリカが将来軍事作戦を実施した場合、イラン領土自体が直接標的にならなくとも、イランは直接的な報復措置を取る可能性があることを意味する。

 現在イランが、イスラエルによるレバノン攻撃に報復しているのと同様、将来的に、ガザ、イラク、イエメンや地域内の他の国々におけるイスラエルの行動に対し、同様報復措置が講じられる可能性がある。実際、これは地域における勢力バランスが大きく変化したことを意味する。今イランは、イスラエルに、その行動は報復なしには済まされないことを、はっきり示している。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/06/10/a-new-strategic-reality-in-middle-east/

----------

 東京新聞 朝刊 三面  
 米、イラン攻撃中止

 トランプ氏「覚書を最終調整」

2026年5月 8日 (金)

エネルギーを巡る激震:ウクライナと対イラン紛争がヨーロッパの未来をどのように変えたのか



ロレンツォ・マリア・パチーニ
2026年5月6日
Strategic Culture Foundation

 根本的な問題は、ヨーロッパが産業基盤と国際経済システムにおける地位を永久に失うことなく、エネルギー危機を乗り越えられるかどうかだ。

Telegram、 Twitter 、VKで私たちをフォローしてください。

お問い合わせ先: info@st​​rategic-culture.su
 
全身性エネルギー・ショックの解剖学的構造

 2021年から2024年にかけて、欧州のエネルギー・システムは、戦後大陸の経済史において未曾有の急速かつ衝撃的な変革を遂げた。2022年2月のロシアによるウクライナへの特別軍事作戦、それに伴う制裁措置、モスクワによるエネルギー面での報復と、中東の海上輸送ルートにおける構造的緊張が重なり、いわば二重の地政学的・エネルギー的ショックが発生した。すなわち、欧州の主要化石燃料供給経路である東側のロシア回廊と、南東側のペルシャ湾回廊が同時に寸断されたのだ。

 この危機の規模を理解するためには、まず危機以前の状況を明確に把握する必要がある。2021年、欧州連合はロシアから約1,550億立方m(Bcm)の天然ガスを輸入し、これは総需要の45%を占めた(ユーロスタット、2022年)。ロシアからの原油輸入量は1日あたり約270万バレルで、総輸入量の27%を占めた。ロシア産石炭は欧州の輸入量の46%を占めた。合計すると、ロシアはEUの一次エネルギー消費量の約24%を供給していたと推定され、これは現代世界において、他のどの同盟体制にも見られない依存度だ。

 同時に、欧州の液化天然ガス(LNG)輸入量のかなりの部分、そして増加傾向にある部分は、ペルシャ湾岸地域、特にカタールから来ており、現在もその傾向は続いている。これらの供給は、欧州の再ガス化港に到達する前に、ホルムズ海峡と紅海を経由しなければならない。2023年末に始まったイエメン危機と紅海におけるフーシ派の作戦は、数十年間、理論上の問題にとどまっていた脆弱性を具体的現実に変えてしまった。

 ロシアやイランからのエネルギー供給ルートに代わる、ヨーロッパのエネルギー供給ルートの現状はどのようなものか。こうした代替経路への強制的移行がもたらす本当の代償は、価格面だけでなく、産業競争力、インフレ、社会安定性といった面で、どのようなものか。そして、今後10年から15年間に、ヨーロッパのエネルギー・システムの構造的回復力に関して、具体的見通しはどうなっているのか。
 
主要な事実

 2021年、ロシアは欧州連合が輸入するガスの45%、石油の27%、石炭の46%を供給していた。これらの供給がほぼ同時に途絶えたことは、1973年以来、欧州大陸史上最大のエネルギー供給ショックとなった。
 
2. ヨーロッパのエネルギー輸送経路の地理と内訳

2.1 2022年以前のシステムの構造

 1990年から2020年までの30年間に構築された欧州のエネルギー供給システムは、戦略的多様化より経済的安定と費用削減を優先するロシアとのインフラ統合という論理に基づいていた。ロシア・ガスは、主に3つの回廊を中心としたパイプライン網を通じて欧州に供給されていた。

 北ヨーロッパ回廊(ノルドストリーム1号線と2号線、総容量110Gmc/年)、ウクライナ送電システムを経由するウクライナ回廊(近年は約40~45Gmc/年)、およびトルクストリームとバルカンシステムを経由する南部回廊(約30Gmc/年)。

 このシステムには明確な経済的利点があった。危機以前のロシア・パイプラインガスの価格は1メガワット時(MWh)あたり5~10ユーロだったのに対し、中東やアメリカからのスポットLNGは10~15ユーロだった。統合は深く、長期契約(通常15~25年)によって欧州の買い手には予測可能性が保証され、ロシアの予算には安定収入が確保された。このシステムの論理は、国際関係論者が「複雑な相互依存」と呼ぶものだった。相互依存の関係にあるため、紛争は双方にとって、経済的に非合理的なものになるはずだった。
 
ロシア回廊の崩壊:その力学とタイミング

 崩壊は瞬時に起きたのではなく、徐々にエスカレートする過程をたどり、欧州の対応を更に困難にした。ロシア特別軍事作戦数ヶ月前の2021年夏には、ガスプロムは自社の貯蔵備蓄を低く抑えつつ、欧州への供給量を削減していた。多くの専門家(Pirani、2022年、Oxford Institute for Energy Studies、2022年)は、これを冬に備えて価格をつり上げ、欧州の備蓄を弱体化させるための意図的な戦略だと解釈していた。2022年2月~3月に制裁が始まると、供給量は徐々に減少した。ノルド・ストリーム1は2022年6月に容量の40%に、7月には20%に削減され、2022年8月には完全に停止した。公式にはタービンに関する技術的紛争が原因とされているが、事実上、制裁への対応だった。

 決定的な出来事は、2022年8月にノルドストリーム1号線と2号線のパイプラインが破壊されたことで、これは破壊行為で、責任は国際調査の対象になっているが、これにより、これら回廊の喪失は短期から中期的に物理的に不可逆となった。ウクライナ回廊は別の輸送協定の下で運用が続けられたが、この協定は2024年12月31日に期限切れとなり、ウクライナは更新しないことを選択した。トルコ・ストリームは引き続き稼働しているが、主にバルカン半島とトルコの市場に供給している。全体的影響として、ロシアからEUへのガス供給量は2021年の155 Gmcから2023年には約25 Gmcに減少し、僅か2年間で130 Gmcの純損失となった(IEA、2024年)。  
ペルシャ湾ルートの脆弱性

 ホルムズ海峡は、航行可能な最小水路幅が約33キロで、世界のエネルギー・システムにおいて最も重要な輸送拠点だ。

 ホルムズ海峡は、1日あたり約2,000万~2,100万バレルの石油および精製製品が通過し、世界の石油消費量の約21%を占めるとともに、世界LNG貿易の相当部分を占めている(EIA、2023年)。ヨーロッパにとって、ホルムズ海峡の重要性は2022年以降劇的に高まっている。ロシア産ガスを、カタール産LNG(カタールは世界第2位のLNG輸出国)に置き換えることで、ヨーロッパはエネルギー依存の一部を、地政学的にリスクの高い東側回廊から、地政学的に脆弱な南東側の別回廊へ移した。

 2023年11月にガザ紛争への対応としてフーシ派が海上交通を攻撃したことから始まった紅海危機は、この理論上の脆弱性を具体的運用上の問題へと変えた。危機のピーク時にはスエズ運河の交通量が40~50%減少した(Kpler、2024年)。そのため、多くの船舶が喜望峰を迂回する航路を取らざるを得なくなった。この代替航路は航海に10~14日余計にかかるため、輸送費、保険料、設備投資費用が増加する。

 2022年以前、ロシア産ガスの欧州における価格は5~10ユーロ/MWhだった。代替品として用いられるアメリカ産またはカタール産LNGは、通常の市場状況下では10~20ユーロ/MWhで安定しており、2022年8月には投機的高騰で340ユーロ/MWhに達した。この構造的価格差こそが、欧州の競争力問題の根源だ。
 
代替エネルギー経路:現実、可能性と限界

 2022年から2023年にかけて、アメリカは欧州へのLNGの主要供給国となり、欧州大陸への輸出量は危機以前の期間と比べて2倍以上に増加した。2021年の約22Gmcから2023年には56Gmc以上になった(アメリカ・エネルギー情報局、2024年)。この増加には、ルイジアナ州とテキサス州で承認された新施設によるアメリカの液化能力拡大と、欧州での再ガス化ターミナルの建設またはチャーターを急ぐことが必要だった。2021年にはLNGターミナルがなかったドイツは、2022年12月から2023年半ばにかけて4基の浮体式ターミナル(FSRU)を稼働させ、総容量は約20Gmc/年となった。

 だがアメリカ産LNGには構造的制約があり、ロシア産ガスを完全に代替するのは困難だ。まず価格の問題だ。アメリカ産LNGには液化、大西洋横断輸送、保険、再ガス化の費用が含まれるため、パイプラインガスより構造的に高価になる。

 第二に、契約の柔軟性の欠如:アメリカ産LNGの長期契約のほとんどは「仕向け地指定なし」条項を課しているものの、価格決定メカニズムはアメリカのヘンリーハブ市場に連動しており、欧州のニーズとのずれを生じさせている。第三に、輸送能力:世界のLNGタンカー船隊は、これまでパイプラインで輸送されていた量を完全に代替できるほど十分な規模ではなく、船隊を急速に拡大するには、1隻あたり3~5年の建造期間が必要になる。

 カタールは2022年から2023年にかけて、ドイツ、フランス、ベルギー、イタリアを含む複数欧州諸国と長期契約を締結した。これらの契約は通常15年から27年間続き、ある程度の予測可能性をもたらす一方、2つの根本的問題を抱えている。1つ目は地理的な集中だ。カタールのLNG輸出は全てホルムズ海峡を経由しなければならず、本来軽減されるはずだった地政学的脆弱性がそのまま残ってしまう。海峡での軍事危機や(テヘランが頻繁に発動する抑止措置)イランによる封鎖は、カタールのLNGと湾岸諸国の石油の欧州供給を同時に混乱させるだろう。

 2つ目の問題は、カタールLNGを巡るアジア市場との競争だ。中国、日本、韓国は伝統的にペルシャ湾からの輸出の大部分を吸収しており、カタールの拡張能力(2027年までに輸出能力を年間7700万トンから1億2600万トンに増加させるノースフィールド拡張プロジェクト)は、ウクライナ危機以前に締結された契約を通じて、既に一部がアジア市場に先行販売されている(カタール・エネルギー、2023年)。

 ノルウェーは2022年以降、ヨーロッパへのパイプライン・ガスの主要供給国となり、輸出量は2021年の約113億立方mから2023年には122億立方m以上に増加した(NPD、2024年)。しかし、ノルウェーのガス田は既に最大生産能力に近づいており、新たなパイプライン建設には時間と投資が必要で、短期的には不足分を補えない。アルジェリアは、メドガス(スペイン)とトランスメド(イタリア)のパイプラインを経由してヨーロッパにガスを供給しており、量は年間約30~35億立方メートルで安定している。ここでも拡張能力は地質的制約と、新たなガス田の開発に多額の投資が必要なことから制限されている。

 南部ガス回廊は、アゼルバイジャンのカスピ海ガス田と、TAP(トランスアドリア海パイプライン)を経由してジョージア、トルコ、ギリシャ・イタリアを結び、ヨーロッパと繋がっている。

— 2021年に年間約100億立方mのフル稼働能力に達した。2022年7月、アゼルバイジャンはEUと、2027年までに輸出量を年間200億立方mに倍増し、更に300億~350億立方mまで拡大する協定を締結した。この回廊は、ロシアやホルムズ海峡に依存しない利点があるが、その能力は欧州の需要やロシアの供給不足に比べると依然限定的だ。  
欧州産業にとってのエネルギー・ショックの本当の費用

 天然ガスの欧州における主要指標TTF(Title Transfer Facility)指数は、2022年に未曾有の変動を経験した。1月には約75ユーロ/MWh(過去の平均の4倍)で始まり、2022年8月には340ユーロ/MWhのピークに達したが、貯蔵施設の満杯、暖冬、産業需要の減少といった要因が重なり、徐々に下落した。2023年には、TTFは35~60ユーロ/MWhの範囲で安定したが、それでも危機前の水準の2~3倍で、欧州の生産コストに恒久的影響を与えている。

 電力に関しては、欧州市場の構造が影響を増幅させた。欧州市場では「限界価格設定」メカニズムが採用されており、電力価格はピーク需要時に稼働する限界発電所(通常はガス火力発電所)により決定される。その結果、産業用電力価格は2022~2023年に欧州のいくつかの国で300~400ユーロ/MWhまで上昇した(ユーロスタット、2023年)。これは危機前の平均60~100ユーロ/MWhと比較して大幅な上昇だ。

 エネルギー危機の影響を最も受けているのは、エネルギー集約型産業で、エネルギー費用が総生産費用のかなりの割合(通常15~40%)を占めている。欧州鉄鋼業界は、鉄鋼生産量を2021年の1億5200万トンから2023年には1億2900万トンに削減し、生産能力の約15%を失った(WorldSteel、2024年)。一次アルミニウム生産量は、ドイツ、フランス、スペインの多数の電解工場が一時的または恒久的に閉鎖されたことにより、約25%減少した(European Aluminium、2023年)。

 化学産業は、ドイツを中心地とし、同国のGDPの3%以上を占めているが、2022年には生産量が12%減少し、2023年には更に8%減少した(VCI、2023年)。特に深刻なのは、窒素肥料の原料となるアンモニアの生産だ。ヨーロッパのほとんどの工場は原料として天然ガスを使用しており、コスト上昇により、ヨーロッパの生産は中東やアメリカに比べて競争力を失っている。多くの肥料メーカーが生産量を削減したり、海外からアンモニアを輸入したりしており、農業サプライチェーンに波及効果をもたらしている。

 イタリア、ドイツ、スペインが世界をリードするセラミックス・ガラス産業は、生産工程のエネルギー集約度(窯の温度が1200~1700℃)の高さから壊滅的影響を受けている。イタリアの業界団体(Confindustria Ceramica)は、2022~2023年の期間に、トルコ、中国、インドの生産者に対する競争力が30~40%低下すると予測している(Confindustria Ceramica、2023年)。

 エネルギー危機の影響は製造業にとどまらず、インフレを通じて経済全体に波及した。ユーロ圏の総合消費者物価指数は2022年10月に10.6%のピークに達し(ECB、2022年)、単一通貨導入以来の最高水準となった。このインフレのほぼ半分はエネルギー関連要因によるものだったが、食料、輸送、サービスなどの価格上昇といった二次的影響は経済全体に広がった。

 家計の購買力低下は、経済的影響だけでなく、政治的、社会的な影響も及ぼし、ロシアへのエネルギー依存モデルを構築・擁護してきた欧州機関や各国の政治エリートに対する不満を煽った。エネルギー分析において、しばしば見落とされがちな社会的結束という側面は、あらゆるレジリエンス戦略の長期的な政治的持続可能性を理解する上で極めて重要だ。脆弱な家計や、最も影響を受けやすい産業部門に対する適切な補償制度がなければ、エネルギー転換の資金調達に必要な合意形成が損なわれる恐れがある。

 2023年における欧州と中国の産業用電力費用の差は約5対1だった。欧州と(IRAとシェールガスの恩恵を受けている)アメリカの差は約3.5対1だった。この構造的格差により、欧州製造業の多くの分野が国際比較において競争力が欠如している。
 
レジリエンスの可能性:新たな欧州エネルギー・システムに向けて

 ロシアとイランの二重ショックに対する長期的構造的対応策は、再生可能エネルギーへの移行を加速させて、化石燃料輸入への依存度を低減すること以外にあり得ない。これは理想論的な目標ではなく、国家安全保障のあらゆる面において必要不可欠なことだ。2035年までに欧州が電力の70~80%を再生可能エネルギー源から発電するようになれば、化石燃料の輸入への依存度は2021年と比較して60~70%減少し、エネルギー供給ルートの危機に対する構造的な脆弱性が効果的に解消されると国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は推定している(IRENA、2024年)。

 この方向での進展は既に著しい。2023年には、史上初めて再生可能エネルギー源(風力、太陽光、水力)が欧州の電力生産量の44%以上を占め、ドイツ、スペイン、デンマークではピーク時に50%を超えた(Ember、2024年)。EUにおける太陽光発電設備の設置容量は、2023年だけで約56GW増加し、これは過去最大の年間増加量となった。洋上風力発電は、コストが急速に低下しており、2030年までに北欧諸国や沿岸諸国で主要な発電源となる見込みだ。

 しかし、再生可能エネルギーへの移行には、依然として部分的にしか解決されていない2つの根本的な問題、すなわち断続性(太陽光発電は日中のみ、風力発電は風がある時のみ発電する)と季節規模のエネルギー貯蔵に対する解決策が必要だ。リチウム・イオン電池は日々の変動を管理するには十分だが、エネルギー需要が最も高く太陽光発電量が最も低い冬季の再生可能エネルギー生産不足を補うには不十分だ。グリーン水素(再生可能電力を用いた水の電気分解により生成される)は、季節的エネルギー貯蔵と高温を必要とする産業プロセスの脱炭素化にとって最も有望な解決策のように見えるが、産業規模での導入には依然多額の投資と技術革新が必要だ。

 2022年以降の欧州のエネルギー情勢における最も重要な展開の一つは、低排出で信頼性の高いエネルギー源としての原子力発電の再評価だ。2011年の福島原発事故以降、ベルギー、ドイツ、スイスなど欧州諸国のエネルギー政策を支配していた反原発パラダイムは、エネルギー危機により根本的に覆された。ドイツは、原子力発電所、最後の3基の運転期間を2023年4月まで延長した(その後、物議を醸す決定で、更なる延長の選択肢を放棄した)。ベルギーは2023年に、原子炉の閉鎖を10年間延期すると決定した。通常、国内電力生産の70~75%を賄う56基の原子炉を保有するフランスは、新たに6基のEPR2型原子炉を建設する計画を開始した。

 欧州レベルでは、いわゆる小型モジュール式原子炉(SMR)への関心が高まっている。SMRは、従来の大型原子炉に比べて建設コストが低く、建設期間も短い小型のモジュール式原子炉だ。ポーランド、チェコ共和国、ルーマニア、スウェーデンなど、いくつかの欧州諸国は、2030年から2035年までにSMRを建設するための評価プロセスや商業契約を開始している。原子力発電が、安定した信頼性の高い低排出電力供給基盤を提供できるのであれば、欧州のエネルギー・レジリエンス戦略において不可欠な柱になるだろう。

 エネルギー効率化による需要削減は、再生可能エネルギーの拡大と並んで、2022年の危機に対する最も迅速に実施された対応策だった。EUにおける天然ガス需要は、2022年に13%、2023年にさらに7%減少し、合計で2021年より約55GMc減少した。この減少は、ロシアからの供給なしで冬を乗り切るために必要な量を上回るものだった(IEA、2024年)。この減少は、個人の行動(建物の暖房を減らす、サーモスタットの設定温度を下げる)、産業対策(ガスを他のエネルギー源に置き換える、生産量を減らす)、および公共政策(啓発活動、建物の改修に対する税制優遇措置)の組み合わせによって達成された。

 更なる効率向上の可能性は非常に大きい。欧州の建物の約75%がエネルギー効率が悪いとされているが、これらの建物のエネルギー改修により、暖房用エネルギー消費量を40~60%削減できると推定されている(欧州委員会、2023年)。2022年5月に採択されたREPowerEU計画では、エネルギー転換を加速するために3,000億ユーロが割り当てられ、そのかなりの部分が建物と産業の効率化に充てられている。

 今回の危機は、欧州エネルギー体制のインフラ面における脆弱性だけではなく、エネルギー安全保障ガバナンスにおける制度的弱点も浮き彫りにした。エネルギー政策は、これまで各国の専権事項で、欧州レベルでの調整は域内市場の一般原則に限られていた。その結果、各国はそれぞれ異なるエネルギー依存度を抱え、脆弱性のレベルも大きく異なっている。例えば、ドイツはガス輸入の55%をロシアに依存している一方、スペインはLNGターミナルのおかげで、ほぼ完全にエネルギー源を多様化している。

 今回の危機への対応は、緊急事態下における協調能力(2022年夏にガス消費量を15%自主的に削減するという欧州の合意は維持された)と、分断されたガバナンス限界の両方を示した。自動的な連帯メカニズム、共有の戦略的貯蔵、LNGの一元的契約といった、本当の共通欧州エネルギー政策は、将来の危機発生時の集団的脆弱性を大幅に軽減できるだろう。国際エネルギー機関(IEA)と同様の権限を持ち、加盟国に対して拘束力を持つ欧州エネルギー機関(EEA)設立案は、欧州大陸の政治議論に再び力強く浮上しており、真剣に検討されるべきだ。

 欧州が現在のペースで再生可能エネルギーの拡大を維持し、REPowerEUで概説されているエネルギー効率化計画を実施すれば、2035年までにガス輸入への依存度は年間300GMc(2021年)から年間100GMc未満に低下し、エネルギー供給経路の危機に対する脆弱性の大部分を構造的に解消できる可能性がある。
 
2035年までの欧州のエネルギー安全保障に関する3つのシナリオ
 
シナリオA ― 回復力の加速

 最初のシナリオでは、欧州は2023年に記録した再生可能エネルギー拡大のペースを維持し、建物の改修プログラムを加速させ、蓄電(バッテリー、水素、揚水発電)に多額の投資を行い、原子力発電容量を維持または拡大する。このシナリオでは、2035年までに、化石燃料は欧州の一次エネルギー構成の30%未満を占めることになる。ガス輸入への依存度は年間80~100 GMcに低下し、その全てがロシア以外の供給源(ノルウェー、アルジェリア、アメリカLNG、アゼルバイジャン)で賄われる。中東の供給経路における危機に対する脆弱性は大幅に軽減され、再生可能エネルギーのコスト低下により、産業用エネルギー費用は、アメリカと同等の競争力を持つようになる。
 
シナリオB ― 段階的移行と残存する脆弱性

 2番目のシナリオ(現在の傾向に基づくと最も可能性が高いシナリオ)では、欧州は化石燃料への依存度を低減するものの、そのペースは当初の目標より遅くなる。官僚的障害、加盟国間の規制上の対立、新規風力発電所に対する地域住民の反対、送電網投資の遅れなどが移行を遅らせる。ガス輸入への依存度は2035年までに年間150~180 GMcの範囲にとどまり、そのかなりの部分が脆弱な航路(ホルムズ海峡、紅海)を経由して輸送される。欧州は、2022年より対応手段は発達しているものの、依然エネルギー危機に繰り返し直面することになる。  
シナリオC ― 断片化と後退

 3つ目のシナリオでは、移行コスト、インフレ圧力、共通エネルギー政策に反対する民族主義勢力の台頭によって引き起こされる国内政治危機が、欧州のエネルギー政策の分断を招く。各国は代替供給国と二国間協定を締結し(ウクライナでの停戦時にはロシアからの供給を部分的に再開する可能性もある)、欧州の協調体制を放棄する。このシナリオでは、集団的脆弱性は依然高く、供給国に対する欧州の交渉力は大幅に低下する。  
ヨーロッパのエネルギー存続は可能だが保証されているわけではない

 2022年から2024年にかけて、欧州は1973年の石油危機以来最も深刻なエネルギーショックに見舞われた。これは、30年以上にわたるロシア・エネルギー供給依存により生じた構造的脆弱性の下で起きた。だが供給源の多様化、LNGインフラの建設加速、需要削減、再生可能エネルギーの拡大といった迅速な対応により、多くの人が懸念していた大規模な配給制や産業停電を回避できた。これは決して小さな成果ではなく、欧州経済と諸機関が圧下で迅速に適応できる能力を示したものだ。

 だが、急激な衝撃を乗り越えたからといって、構造的問題が解決するわけではない。欧州は、一つの依存(パイプライン経由のロシア産ガス依存)を、部分的に異なる複数の依存(アメリカ産LNG、カタール産LNG、総需要を満たすには不十分な再生可能エネルギー)に置き換えたが、その中にはホルムズ海峡や紅海といった地政学的に脆弱な航路を通るものもある。

 アジアやアメリカの企業とのエネルギー費用差は依然大きく、戦略的分野における静かな脱工業化につながるリスクがある。

 長期的回復力の可能性は存在し、具体的に達成可能だが、そのためには当然とは考えられないいくつかの要素が揃う必要がある。すなわち現在のペースより高い割合で再生可能エネルギーへの投資を継続すること、季節的蓄電問題を解決すること、原子力発電能力を維持すること、本物の共通政策に向けた欧州のエネルギーガバナンス改革と、移行を政治的に持続させるために必要な社会的結束を維持する家計や脆弱な部門への支援体制だ。

 根本的な問題は、ヨーロッパがエネルギー危機を乗り越えられるかどうかではない。乗り越えられるのは確実だ。問題は、産業基盤と国際経済体制における地位を永久に失うことなく乗り越えられるかどうかだ。答えは、今後3年から5年の間に欧州機関と各国政府が下さなければならない政策選択にかかっている。歴史は、この好機をいつまでも維持してくれるとは限らない。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/05/06/the-energy-smash-how-ukrainian-and-iranian-conflicts-have-reshaped-the-european-future/

----------

 東京新聞 夕刊 一面  
 米イラン 海峡で攻撃応酬

 トランプ氏「停戦継続」

2026年4月28日 (火)

中東でのトランプ最後の希望を断ち切ると誓ったイエメン・フーシ派

モハメド・ラミン・カバ
2026年4月27日
New Eastern Outlook

 中東和平をアメリカが妨害し続けるなら、エネルギー貿易にとって極めて重要なバブ・エル・マンデブ海峡を封鎖するとフーシ派は誓っている。

 

 現実に、もはや戦術的な問題ではない。これは文明的な問題だ。海峡の支配権は、この地域の民衆にとって主権を取り戻すための最後の砦だ。あらゆる条約を無視する連合国を前に、ワシントンを正気に戻せるのは経済停滞だけだ。ホルムズ海峡は閉鎖され、バブ・エル・マンデブ海峡は厳重に封鎖されている。ゲームは終わった。帝国の駒は王手詰めされた。今や歴史は彼ら抜きで記述されようとしている。

 本稿は、ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡の同時封鎖によって引き起こされる致命的衝撃波を分析する。これは帝国のエネルギー貿易を断ち切り、世界の他地域に影響を与える前に、帝国の覇権を即座に窒息死させる外科手術のような作戦だ。

 今世界中から憎悪しか招かない同盟のためにアメリカ国民は大きな代償を払っている。

 バブ・エル・マンデブ、あるいは帝国の苦悩

 地政学的時計は止まった。テヘランとワシントンの停戦は4月21日に期限切れとなる。ホルムズ海峡は、ホワイトハウスの組織的失敗により封鎖され、欧米諸国の野望の墓場と化している。今や世界の視線は南に「涙の門」に向けられている。アメリカによる和平妨害が続くなら、バブ・エル・マンデブ海峡を閉鎖するとフーシ派は宣言した。これはもはや脅しではない。覇権主義に対する死刑宣告だ。

 致命的な錠

 バブ・エル・マンデブ海峡は単なる海峡ではない。化石燃料資本主義の急所だ。この海峡を封鎖すると脅すことで、サナアは単なる軍事戦略を実施しているのではない。既に弱体化した帝国体制に精密な外科手術を施しているのだ。アメリカと地域における拡大組織イスラエルにとって、ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡の同時封鎖は物流の終焉を意味する。石油はもはやなく、貿易も途絶える。ただ人影のない港の静寂だけが残る。サナアの警告は、決定的な神託のように響き渡る。「我々がバブ・エル・マンデブ海峡を封鎖すると決定すれば、イランがホルムズ海峡で行ったように、人もイスラム神話の精霊も、核爆弾を使おうとも、再開することはできない。」

 混沌の枢軸

 アメリカ・イスラエル連合軍が対イラン戦争を開始して以来、ジュネーブでミンスク合意第1次・第2次交渉が継続されている間に、正体は露わになった。ワシントンが「世界秩序」と呼ぶものは、自らの寄生的生存のための暗号名に過ぎない。犯罪は積み重なり、ガザの瓦礫から、失敗に終わったイエメンでの精密攻撃に至るまで、ワシントン・テルアビブ・コンビは、人類の中枢に転移した癌、略奪と他者の血によってのみ繁栄する権力の病理を露わにしている。

 皮肉にも、このイラン戦争は北大西洋条約機構(NATO)の分裂を決定づけるものでもある。ワシントンが味方というより、むしろ敵であることを、余りにも遅ればせながら、ようやく欧州諸国は悟りつつある。アメリカを含む西側諸国とのウクライナでの代理戦争で、以前ロシアを同様に揶揄したように、欧州諸国は「張り子の虎」だとトランプ大統領は嘲笑しているが、イランの現実は連合を屈辱的な立場に追い込んでいる。アメリカとイスラエルが真の強国なら、中堅国とされる一国を攻撃するため手を組む必要などあるだろうか? 実際、本物の張り子の虎は自らの集団的無力さを隠すために最も大声で叫ぶ連中だ。

 共犯者、ワシントン

 アメリカとイスラエルの関係は外交的なものではない。それは共生関係で、ほとんど秘密裏に行われている。ワシントンはもはや仲介者ではなく、時代錯誤的な植民地主義計画の武装部門になっている。国連でのあらゆる拒否権行使は、国際法の根幹に撃ち込まれる一発の銃弾に等しい。テルアビブの免責を守るために和平を妨害し続けることにより、アメリカは自ら中東の火薬庫に火をつけたのだ。ロシア・ガス依存から脱却して、ロシア恐怖症に陥り、自滅へ向かった好戦的ヨーロッパは、今や苦悩を目の当たりにしている。東と北を奪われ、属国化したヨーロッパは、寒さと傲慢さに震えている。封鎖された海峡は、この独善的クラブを野外産業博物館に変貌させることに成功した。

 シオニズムの崩壊

 イスラエルにとって、バブ・エル・マンデブ海峡は生命線だ。この海峡がなければ、エイラートは死の港と化す。既に勝ち目のない消耗戦で弱体化しているイスラエル経済は、消耗戦の重圧に耐えきれず崩壊する。孤立は、もはや外交的なものではなく、物理的なものになる。国は包囲された島と化し、技術と軍事インフラを維持できなくなる。無敵神話の終焉だ。足元が脆い巨人は、自らのイデオロギー基盤の上でよろめいている。テルアビブは、愚かにも時期尚早にソマリランドを承認し、この外交的傀儡が沈みゆく船を守るのに十分だと空しく期待している。だが、「涙の門」で帝国が窒息する時、ソマリランドにおける最後の外交努力でさえ哀れな白鳥の歌に過ぎない。

 エネルギーを武器として

 エネルギー貿易は帝国の生命線だ。フーシ派はこの流れを断つことで最も痛手となる部分、つまり財布を攻撃している。原油価格は急騰し、欧米の株式市場は暴落する。FRBが必死に抑え込もうとしているインフレという怪物は、アメリカ中産階級の最後の名残を食い尽くす。アメリカは力によって平和を築けると考えていたが、これからは資源不足を通して、平和を見出すことになるだろう。

 犯罪の代償

 この連合軍が犯した凶悪犯罪は決して罰せられずには済まない。歴史は厳しい審判者だ。イラクからリビア、シリアからイエメンまで、あらゆる場所に混乱を輸出して、アメリカは自らの破滅の種を蒔いてきた。バブ・エル・マンデブは、その反動だ。焦土作戦に対する被抑圧者の反応だ。抵抗はもはや選択肢ではなく、容赦ない侵略に直面した際の生物学的必然性だ。

 グレーゾーン

 テルアビブがアメリカの権力中枢に及ぼす影響は、今世紀最大の公然の秘密だ。この有害な共生関係は、非合理的外交政策を招き、ワシントンを自国の国益に反する行動へ駆り立ててきた。今日、世界中から憎悪を招いただけの同盟関係のために、アメリカ国民は重い代償を払っている。イランとイエメンのミサイルの炎により、ついにその闇が白日の下に晒されようとしている。

 最終的崩壊

 2026年4月21日は終焉の始まりを告げる日だ。ワシントンが譲歩せずに、公正な平和への道を阻み続ければ、自らの地政学的な死刑宣告書に署名することになる。バブ・エル・マンデブ海峡の閉鎖は、傲慢さによって書かれた悲劇の最終幕になる。もはや人類は破壊しか知らない自称守護者など必要としていない。この癌は根絶される。世界はついに息を吹きかえす。

 要するに、自らの傲慢さから帝国は我々の目の前で滅びつつある。かつて世界支配者だったワシントンとテルアビブは今や海洋支配の衰退をただ見守るしかない。ホルムズ海峡は閉鎖され、バブ・エル・マンデブ海峡も封鎖された。宴は終わりを告げた。植民地主義という癌が衰退し、ついに寄生虫から解放された世界の夜明けが訪れようとしている。

 モハメド・ラミン・カバはガバナンスと地域統合の地政学専門家、パンアフリカ大学ガバナンス・人文社会科学研究所

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/04/27/the-houthis-of-yemen-promise-to-cut-off-trumps-last-hope-in-the-middle-east/

----------

 最近の官邸前デモ報道を見て、昔(2012年)官邸前デモ経験を書いたことを思い出した。  2012年7月8日に書いた下記記事の末尾に、官邸前デモにいった際の警察の狡猾な警備を書いた。いやがらせ、諦めさせ、帰らせようとする露骨な誘導。今はどうなのだろう。
福島事故は"人災"で"回避可能"と日本の事故調は言うが、核施設への恐怖は世界的に増大
 検索してみると同じ時期の様子を指摘している週刊金曜日記事があった。

 週刊金曜日オンライン

 想定外に膨れ上がる官邸前デモ  2012年7月24日

 そして、今、日刊ゲンダイDIGITAL記事
国会前デモ「ごっこ遊び」揶揄で炎上の高市チルドレン門寛子議員 被害者ヅラで取材依頼書さらし“火に油”
 東大卒、官僚から議員になった人物が、デモを「ごっこ遊び」扱い。
 「政治ごっこ」をしている議員に言われたくない。
Prof. Jeffrey Sachs : Is Trump Trapped? 34:53
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
問「米国で信念の為に行動し、命を危険にさらすのも厭わない成人は何人?、AI回答「1000万~1500万人の若者と中年層(18~64歳)が信念の為にリスクの高い行動を取る意思を示す。約400万~500万人が政治的目的に脅迫、傷害、殺害に抵抗がない。実際行動するかは別。
 植草一秀の『知られざる真実』
立民崩壊後の野党再建急務

2025年11月18日 (火)

地球上で最も貧しい国を爆撃するトランプ大統領。いつも通りのアメリカの対応



フィニアン・カニンガム
2025年11月14日
Strategic Culture Foundation

 好戦的トランプはアメリカ資本主義の常態を更に犯罪的で制御不能なものに仕立て上げている。

❗️Telegram Twitter , と VK でご参加願いたい。

お問い合わせ:info@strategic-culture.su

 アフリカ大陸最東端にあり、世界で最も貧しい国の一つ、ソマリアに対してトランプ政権が行っている電撃戦は、欧米メディアではほとんど報道されない。

 ドナルド・トランプは2025年1月に大統領に就任し、自らを平和推進者と宣言し、アメリカの海外におけるあらゆる戦争を終わらせると宣言した。今年初めにイランへの大規模空爆を命じ、中南米沿岸での民間船数十隻の爆破を含むベネズエラへの継続的侵略を開始したにもかかわらず、ノーベル平和賞に値するとさえ彼は考えている。

 しかし、トランプ大統領の平和的姿勢における最大の異例は、ソマリアへの米軍空爆だろう。antiwar.com報道によると、先週でソマリア空爆は今年90回目となる。ソマリアにおけるトランプ大統領の秘密戦争は、主流メディアでは報じられない。長年にわたり、アメリカの違法な侵略を欧米メディアが隠蔽してきた恥ずべき役割を考えれば、これは驚くべきことではない。国防総省も死傷者に関するデータを一切提供していない。

 この軍事介入の規模を概観すると、トランプ政権第二期目の10ヶ月にソマリアで行われた90回の爆撃は、バイデン政権下では四年で51回、オバマ政権下で八年で48回という、まさに現実のものとなった。(もちろん、別の疑問として、そもそも、アメリカ大統領に、この貧しいアフリカの国を爆撃する権利が一体どこにあるのだ?)

 これほど集中的に爆撃された国は他にはイエメンしかない。アラビア半島の国で、ソマリアの北、アデン湾を挟んで位置するイエメンだ。airwars.org調査によると、トランプ大統領の二期目大統領在任中の二ヶ月間で、米軍空爆により殺害されたイエメン人は200人を超え、過去20年の米軍空爆の記録にほぼ匹敵する数となった。トランプ大統領によるイエメン爆撃は、2025年6月に停戦宣言された後、停止された。(これとは別に、2015年にアメリカが支援したサウジアラビアによるイエメン戦争で数万人死亡した。)

 ソマリアとイエメンは、それぞれ人口1,900万人と4,200万人で、地球上最も貧しい10カ国にランクされている。

 両国の戦略的な立地こそ、軍事力展開にアメリカがこれほど熱心な理由を物語っている。両国とも開発途上国の一つだが、未開発の石油・ガス埋蔵量も豊富だ。

 ソマリアとイエメンは、世界で最も交通量が多い貨物輸送の難所の一つ、アデン湾と紅海の航路にまたがっている。この地の戦略的重要性は、イエメンがガザ地区支援のためにイスラエル行きコンテナ船航行を阻止するのに成功したことからも明らかだ。6月に、イエメンへのアメリカ空爆停止をトランプ大統領が要求したのも、まさにこのためだ。

 ソマリアの北東端は、アフリカの角の最高地点だ。プントランドとして知られるこの地域は、ソマリア国内の半自治区で、連邦政府はモガディシュの更に南に位置している。ソマリアはアフリカ大陸で最も長い海岸線を有しており、プントランドはアデン湾と紅海を見下ろす絶好の位置にある。

 モガディシュ政府とプントランドの行政機関に対し、イスラム過激派との戦いを名目にアメリカは軍事航空支援を行っている。トランプ大統領が命じた爆撃は、アルカイダ系過激派を標的とするものだとされている。

 ソマリアとイエメンは、大陸の裂け目によりアフリカの角とアラビア半島が分断される1800万年前までは同じ地質学的構造の一部と考えられており、両国は陸続きだった。両国は陸上と海上両方で豊富な石油とガスの同じ鉱床を共有していると考えられている

 2012年以来、プントランド地方当局はアメリカ石油会社レンジ・リソーシズに掘削権を認めている。ソマリアに権益を持つ他のアメリカ石油会社にはコノコとシェブロンがある。特にヌガール渓谷とダルール渓谷の二地域は商業的に有望な可能性を秘めている。しかし、プントランド西に位置する旧イギリス植民地で、未承認の分離独立国ソマリランドは、ヌガール渓谷の歴史的所有権を主張し、占領すべく派兵した。この領土紛争は、アメリカの石油・ガス探査を危うくし、少なくとも複雑な状況を生み出している。

 エネルギー採掘権益は、ソマリアへの米軍派遣理由の一つだ。イスラム過激派との戦闘という公式理由が、その口実だ。ワシントンとジハード主義者の関係は、気まぐれで身勝手なことで悪名高い。いわゆる「対テロ戦争」は、天然資源の支配や軍事力の投射といった隠れた目的のためにアメリカが諸外国に介入する便利な策略として使われてきた。今週、シリア・アルカイダ元指導者アハメド・アル・シャラーがトランプ大統領の接待で、ホワイトハウスに招かれた。2001年に9.11テロで3,000人のアメリカ人殺害を実行したとされるこの組織が、今やホワイトハウスで顕彰されているのだ。

 ソマリアのアルカイダ系過激派は好都合な敵で、ワシントンにとって同国爆撃の公然たる根拠になっている。本当の狙いは、アフリカの角におけるアメリカ拠点を強化し、天然資源を搾取することだ。また、この拠点は、将来、有望な石油・ガス資源を狙ってイエメンを征服する目標に向けて、アメリカが攻撃力を増強する選択肢となる。

 最終的に紅海とアデン湾の両岸を制圧すれば、アメリカは重要航路を掌握し、地政学的なライバル、中国とロシアに対し大いに優位に立てるし、両国のサプライチェーンを断つことも可能になる。

 就任時にトランプ大統領が行った平和宣言と「アメリカ第一主義」確立に注力し、海外での戦争を終わらせるという公約は、身勝手なまやかし、あるいは彼自身の言葉を借りれば「取引の芸術」に見える。第47代アメリカ大統領は爆撃と戦争という帝国主義的政策を意欲的に続けている。だが、トランプ大統領の好戦的手口は、単なるアメリカ資本主義の常套手段ではない。それは一層犯罪的で制御不能になりつつある。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/11/14/us-business-as-usual-as-trump-bombs-poorest-country-on-earth/

----------

Crisis Alert! China Escalates, Japan Might Activate Collective Defence - Jeffrey Sachs 29:40
 植草一秀の『知られざる真実』
日中友好を破壊する高市首相
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
えっ。城内経済財政担当相はGDP発表後談話で、景気が緩やかに回復しているとの認識に変化はないと説明。日経「7〜9月実質GDP、年率1.8%減 輸出低迷で6四半期ぶりマイナス。」ブルームバーグ:実質GDP6期ぶりマイナス、住宅投資と輸出下押し

2025年9月 2日 (火)

新たなグローバル・ガバナンス - だがそれは一体何をもたらすのか、あるいは一体何ができるのか?

2025年9月1日
Moon of Alabama

 オバマ、バイデン、そしてトランプは中国の台頭を阻止しようと試みてきた。しかし、オバマとバイデンはロシアを中国の懐に押しやり、トランプはインドをロシアと中国の懐に押しやることに成功した。

 「欧米」における戦略的思考の欠如は明白だ。

 現在開催中の上海協力機構(SOC)会合は、BRICS諸国の類似の会合と同様、新たな世界秩序の礎石の一つに過ぎない。今後更に多くの礎石が必要となるだろう。新たな秩序の明確な輪郭はまだ形成されていない
 
月曜日、天津で快哉された「上海協力機構プラス」会議でグローバル・ガバナンス・イニシアチブ(GGI 世界統治構想)を中国の習近平国家主席が提案した。

 会合で習主席は「より公正で公平な世界統治体制構築に向けて全ての国々と協力し、人類共通の未来に向けた共同体構築に向けて前進するのを楽しみにしている」と述べた。

 彼はグローバル・ガバナンスGGIの5つの原則を強調した。

  • 第一に、主権平等を堅持すべきだ。
  • 第二に、我々は国際法の支配を遵守すべきだ。
  • 第三に、多国間主義を実践すべきだ。
  • 第四に、人間中心の姿勢を主張すべきだ。
  • 第五に、実際の行動をとることに重点を置く必要がある。
 素晴らしい概念と言葉だ。私も賛成だ。だが、その力は一体どこにあるのだろう? いずれ、それを裏付ける力が必要になるだろう。

 二日前に、イスラエルがイエメンの文民政府幹部を殺害した。  
木曜、イスラエルはサヌア空爆でイエメンのフーシ派政権の首相と閣僚数名を殺害し、イランと連携する同組織指導部高官に対する初の成功攻撃になったとロイター通信が報じた。

 土曜日、フーシ派最高政治評議会議長のマフディ・アル・マシャットが、エネルギー相、外務相、情報相とともにアフマド・ガレブ・アル・ラフウィ首相が攻撃で死亡したと関係者から確認したとロイター通信が報じた。モハメド・アル・アティフィ国防相が攻撃を生き延びたかどうかについて、アル・マシャットは明らかにしなかった。
 アフマド・ガレブ・アル=ラフウィ首相は文民行政府の長だった。彼はフーシ派やアンサール・イスラムのメンバーでもなく、軍事面の影響力もなかった。

 極貧国文民政府幹部の徹底的抹殺は警鐘のはずだ。だから、これも警鐘のはずだ。  
イスラエルの「ガザにおける政策と行動」が1948年の国連ジェノサイド条約第2条に定められた法的定義を満たしていると宣言する決議を国際ジェノサイド学者協会の会員500人中、投票した86%が支持した。
 このような病的行動が転移する危険性が実際にある。
 
今週、「土地征服」に取り組む中、ユダヤ人は「救済の過程と、神の存在のシオンへの帰還を『物理的に』経験している」とスモトリッチが宣言した。

 トランプ政権に様々な形態で浸透しているのは、まさにこの終末論的思想の流れだ。この政権の倫理観は「戦争は戦争で、絶対的なものだ」という姿勢へと変容しつつある。それ以下のものは道徳的な見せかけとしか見なされない。(アマレク人殲滅の物語から生まれたタルムード的理解だ(『タイムズ・オブ・イスラエル』ジョナサン・マスカット著を参照)。)

 こうして、強硬な指導者たちの斬首(イエメン、シリア、イラン)や、レバノンのヒズボラやシーア派の政治的無力化支援や、反抗的な国家元首暗殺の常態化(イマーム・ハーメネイ師暗殺が検討されたように)や、国家転覆(つまり6月13日、イランに対して計画されたように)にワシントンが新たに執着しているのがわかる。

 イスラエルがこの修正主義シオニズムに変貌し、それがアメリカの主要思想派閥を支配していることこそが、イランとイスラエルの戦争が不可避だと考えられるようになった理由だ。
 すると、新しいグローバル・ガバナンスはこれに対して一体何をするのだろう、あるいは一体何ができるのだろう?

 少なくとも今のところは、何もなさそうだ。

 それでも、古いものと新しいものの違いは既に目に見えている。



記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2025/09/a-new-global-governance-but-what-will-or-can-it-do.html#more

----------

 Alex Christoforou Youtube
冒頭は上海協力機構でのプーチン大統領講演。

Modi rides with Putin. Macron, emergency coalition meeting. Bulgaria heckles Ursula. Gerasimov map 41:13
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
上海協力機構(SOC)首脳会議の場に習近平、プーチン、モディ・インド首相が顔を合わす。習近平は、米国主導の世界秩序とトランプの政策に対する共通の不満を共有する地域大国の結束を目指す。モディの出席(7年ぶりの中国訪問)は画期的。トランプの関税が引き金(WP)

2025年5月13日 (火)

ベン・グリオンでさえ、パレスチナ人は古代ヘブライ人の子孫だと主張していた。



ブルーナ・フラスコラ
2025年3月28日
Strategic Culture Foundation

 改宗は全てを混乱させる。人口よりも宗教が移住したのだとブルーナ・フラスコラは書いている。

❗️Telegram Twitter , と VK でご参加願いたい。

お問い合わせ:info@strategic-culture.su

 ガザでの子殺し再開は、旧イギリス領パレスチナにおけるイスラム教徒とキリスト教徒の存在を残滓にするというシオニズムの歴史的目標の実現にネタニヤフが成功するのではと我々に思わせる。従って、その土地から一掃されつつある人々の歴史を公表するのは時宜を得ている。そのために、歴史家シュロモー・サンドの著書『The Invention of the Jewish People(ユダヤ人の起源 ― 歴史はどのように創作されたのか)』に掲載されている情報を利用する。サンドはイスラエル人で、従軍し、現在フランスに住んでいる。この本は、緊張がそれほど高くなかった2008年に出版された。
 
レバント人はアラビア語を話すが、アラビア出身ではない

 まず、アラブ人とレバント人は異なる歴史を持つ民族だ。アラブ人はアラビア半島に起源を持ち、太古の昔からアラビア語を話してきた。レバント人は先史時代からレバント地方に住んでおり、歴史を通じて言語を変えてきた。レバント地方に住んでいたイエスはヘブライ語やアラビア語ではなく、この地域の死語の一つであるアラム語を話していた。

 母国の考古学を追って、聖書の中に歴史的真実の一端を発見したとサンドは報告している。集落に豚の死骸を残さないことで地元住民と区別されていた遊牧民の羊飼いを、ある時点でカナンの住民は受け入れた。しかし、考古学は、征服とそれに続く虐殺ではなく、以前のカナン人の住民と新しい羊飼いの住民の混交を示しており、その混交が紀元前12世紀から10世紀の間にイスラエル王国とユダ王国を形成した。

 だが、シオニズムの公式歴史学を信じるなら、カナン(現在のイスラエル)に定住したこれら遊牧民は今日のユダヤ人の祖先で、今日のパレスチナ人はアラブ人で、アラビア半島に起源を持つ人々の子孫だ。実際、改宗は全てを混乱させる。人口より宗教の方が移住したのだ。

 ローマ帝国でもレバントの歴史でも、農民人口の入れ替わりは非常に稀だった。ある王国が崩壊し、別の王国が支配権を握ると、反抗的エリート層が追放された。ユダヤ人口全体が脱出したわけではなく、ユダヤの教育を受けた層が脱出したのだ。従って、ユダヤ農民は移住せず、キリスト教に改宗した。後にアラブ人がこの地域を占領し、イスラム教を押し付けたとき、古代ユダヤ(当時パレスチナと呼ばれていた)の人口の大半がイスラム教に改宗した。イスラム教徒は宗教的少数派(この場合はユダヤ人とキリスト教徒)に税金を課した。リベラルな言い方をすれば、イスラム教は改宗の「経済的誘因」を提供したと言える。従って、これはアラブ人の移住ではなく、この地域における別の言語的および宗教的変化だった。彼らの政治と言語はがイタリア半島の部族であるラテン人から始まったイベリア人がラテン人だと言われるのと同じ意味で、レバント人はアラブ人だと言える。
 
ユダヤ教の布教

 一方、実際に追放されたユダヤ人は、集団や部族を改宗させた。3世紀(紀元前2世紀、紀元前1世紀、紀元後1世紀、ハスモン朝からフラウィウス・ヨセフスまで)の間、ユダヤ教は改宗を良いことと見なしていた。この期間中、ユダヤ教の一部はギリシャ化され、特に北アフリカの人々を改宗させようと、熱心に布教し始めた。これは北アフリカ人に対する特別な偏愛のためではなく、エジプトのアレクサンドリアがヘレニズム文化の中心地だったためだ。七十人訳聖書が改宗のために書かれた可能性はある。しかし、七十人訳聖書は、ギリシャ語が母国語であったためにヘブライ語をもはや知らないユダヤ人のために書かれたとシオニストは主張している。一つの説明が他の説明を排除するものではなく、二つ理由がある可能性もある。

 一方、バビロンに移住したユダヤ教の一派、パリサイ派はラビ派ユダヤ教を創始し、紀元4世紀以降、改宗はイスラエルという体の乾癬とみなされるようになった。アレクサンドリアの普遍主義的伝統を持つユダヤ人はローマ帝国を利用して布教活動を拡大し、3世紀に頂点に達した。しかし、普遍主義的ユダヤ教の一派はキリスト教に敗れ、今日のユダヤ教はバビロンの後継者となった。

 少なくとも現在のユダヤ人の民族集団であるセファルディムと北アフリカ人、イエメン人、アシュケナージとロシア人の起源をサンドは扱っている。最初の集団は、おそらく古代にユダヤ教改宗者によって改宗したフェニキア人とベルベル人の子孫だ。紀元前2年のカルタゴの破壊後、フェニキア人がユダヤ教に大きく改宗した証拠がある。従って、改宗した人々は、他のベルベル人とともに北アフリカからイベリア半島に移住したと考えられる。再び、同じ民族集団が異なる宗教と言語に分裂したのだ。その地に残った人々の大多数は、最初はキリスト教徒に、次にアラブ人に服従しイスラム教徒になった。一部のユダヤ人は、ウマイヤ朝とともに北アフリカからイベリア半島に移住し、レコンキスタの間そこに留まった。ここでセファルディム、つまりイベリアのユダヤ人が出現した。
 
諸王国の改宗

 イエメン系ユダヤ人の歴史は紀元前2世紀の独立王国にまで遡る。アラビア半島南部の「ヒムヤル族」と呼ばれるアラブ部族が築いた王国だ。この王国は六世紀まで存続し、イスラム教徒に征服されてイスラム教化された。ヒムヤル族のライバル王国はエチオピアのキリスト教王国で、これもキリスト教国、ビザンチン帝国の影響下にあった。キリスト教の支配者たちは協力して紅海から既知の世界の他地域への出入りを支配しようとした。ヒムヤル族は(今日のフーシ派のように)自分たちで支配しようとした。

 ヒムヤル人はキリスト教の教えに反対したためか、異教を捨てて、当時存在していた唯一の対抗一神教、ユダヤ教を採用した。四世紀末に採用した。住民の大半はイスラム教に改宗したが、一部はユダヤ教に留まり、これがイエメン系ユダヤ人の祖先だ。従って、これが本物のアラブ系ユダヤ人だ。(レバントのユダヤ人は古代ヘブライ人か、ハスモン朝による他のレバント部族の強制改宗の子孫に違いない。)

 似たような話はアシュケナジムにも当てはまる。彼らもまた、対立する一神教の信条を選んだ王国の出身だが、彼らがやって来たのは非常に遅く、イスラム教が既に存在した頃だった。二世紀に統合され始めた東ヨーロッパ、トルコ、フン族の無数の部族から構成されるハザールは、ビザンチン帝国とアッバース朝のライバルだった。ハザールは両者の間に挟まれており、中心地は現在のウクライナ、ヴォルガ川のほとりにあった。8世紀から9世紀にかけて、ハザール人は、ユダヤ教、おそらくはラビの教えに改宗した。

 ハザールに関する歴史的記録は数多くある。最も豊富な資料はアラビア語だが、奴隷を売り、税金を徴収したこの商業帝国の記録が中国にもある。ハザール帝国の衰退の主な原因は、最初のロシア人であるキエフ・ルーシとの戦争だった。

 キエフ・ルーシとビザンチン帝国を拠点とするビザンチン軍は、キリスト教への改宗後、ハザール人を滅ぼすために協力し、11世紀に最も強力な打撃を与えた。ハザール人は散り散りになり、13世紀までには消息が途絶えた。祝祭日(ペサハなど)を個人名として使用する慣習が最初に現れたのはハザール人だったことは、おそらく言及する価値があるだょう。この慣習は、ドイツやポーランドなどからのユダヤ人に維持された。ハザール人から受け継がれたもう一つの習慣は、イディッシュ語など他言語で表記するためにヘブライ文字を使用することだ。ロシアのユダヤ人は、中央ヨーロッパのユダヤ人と同様、信仰を維持したハザール人の子孫なのだ。  
シオニストと真実

 結局、シオニズムは、そこにずっと留まっていた人々の追放を伴う、決して去ってはいなかった人々の帰還なのだ。セファルディム、イエメン、アシュケナジムの祖先は、レバント地方に住んだことはない。約束の地を受け継いだ古代の選ばれた民の子孫は、まさにそこにいるのだ。レバント地方にある約束の地に。

 シオニズムにとって最も重要な二つの歴史的事実、すなわちパレスチナ人のユダヤ的起源と白人ユダヤ人の異教的起源は、20世紀前半のシオニストには十分知られていた。ロシアでは、ユダヤ人学者はハザールの歴史を研究するのを楽しんでおり、自分たちの起源がそこにあるのを理解していた。この趣味は、スターリン政権下でタブーとなるまで、ソ連でも続いた。スターリンはソ連全体に単一のロシア的アインティティを構築しようとしており、かつてのライバル王国の歴史を国家の中に組み込むのは適切ではなかった。

 一方、欧米の物語はより複雑だ。イスラエル国家創設に直接関与したシオニスト過激派は、一般的にアシュケナジム(イディッシュ語話者)またはロシア人だったため、一部の人々は自分たちのハザール起源、つまり非セム系であることを十分認識していた。しかし、アーサー・ルッピン(ドイツ人)などのシオニストは進化論に大きな信頼を寄せており、アシュケナジムはキリスト教徒の迫害を生き延びたため、人種的に高度に進化しており、古代ヘブライ人の現在のどの子孫より進化していると確信していた。従って、彼らはイスラエルにいたアラビア語を話すユダヤ人に喜んで手を差し伸べ、自分たちが世俗化することでアシュケナジムの進化した文化に触れ、向上できると期待していた。だがルッピンは、アシュケナジムと非アシュケナジム(ユダヤ人であろうとなかろうと)の結婚には反対し、人種の純粋さが保たれるようにした。このため彼は他のユダヤ人がイスラエルに移住することに反対していた。

 シオニスト運動創始者のテオドール・ヘルツルが常にアシュケナージ人を白紙の状態に置いておくことを目指していたのは事実だ。だが、19世紀にイスラエル・ベルキンドという人物が率いたパレスチナへのユダヤ人移住運動は以前にもあった。彼はロシア系ユダヤ人で、パレスチナ農民を研究し、彼らは古代ヘブライ人の子孫であるため、アラブ人ではないという結論に達した。したがって、彼らはヨーロッパからのユダヤ人移民と融合すべきなのだ。この考えを採用したのは他ならぬベン・グリオンだった。1918年、ニューヨークでベン・グリオンはベン・ズヴィ(後にイスラエル第二代大統領となる民族学者)と協力し、『過去と現在のエルサレム』という著作を執筆し、3分の2を執筆した。ベルキンドらの先導に従い、ベン・グリオンはパレスチナ農民はヘブライ人の最も純粋な子孫で、従ってイスラエルと一体化すべきであることを証明しようとした。彼らの土地に対する昔からの愛着は称賛に値するとベン・グリオンは考えた。更に、ベン・グリオンとベン・ズヴィは、キリスト教とは違い、イスラム教は民主主義と両立する宗教だと考えていた。だが、ヘブロンの虐殺と1938年のアラブ反乱により彼らは考えを変えた。そして彼らはパレスチナ人はアラブ人で、先住民ではないと言い始めた。そしてベン・グリオンは、数千年ぶりにパレスチナの人々を土地から追放するパレスチナ民族浄化の主要立案者で実行者だった。

 このようにして、ユダヤ人の歴史から集団改宗は抹消された。アシュケナージ系ユダヤ人とロシア系ユダヤ人は古代ヘブライ人ではなく、ハザール人の子孫だという主張は反ユダヤ主義とみなされるようになった。シオニズムは永久に人種を基盤とすると決定したため、立場を維持するには歴史を偽造する必要があるのだ。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/03/28/even-ben-gurion-has-demonstrated-that-the-palestinians-are-descendants-of-the-ancient-hebrews/

----------

 Judging Freedom
Prof. Jeffrey Sachs : Will Trump Dump Netanyahu? 25:04
 耕助のブログ 帝国の一級プロパガンダ紙、ニューヨーク・タイムズの十八番よいしょ記事
No. 2530 ニューヨーク・タイムズ、トランプを幸運の寵児に変身させる(プロパガンダの傑作)
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
米中関税交渉、大幅な関税引き下げで合意。米は対中関税を90日猶予付きながら145%→30%に、中国は125%から10%に。NYT[トランプの攻撃性の限界。痛みに耐える意志のある経済大国と対峙した際、トランプ氏は譲歩を選択、中国が交渉に同意したことを勝利と宣言]
 植草一秀の『知られざる真実』
ルール順守もできない関西万博

その他のカテゴリー

エチオピア 911事件関連 AI Andre Vltchek BRICS Caitlin Johnstone CODEPINK Eric Zuesse Finian Cunningham GMO・遺伝子組み換え生物 ICE ISISなるもの James Petras John Pilger Mahdi Darius Nazemroaya Mike Whitney Moon of Alabama NATO NGO Pepe Escobar Peter Koenig Prof Michel Chossudovsky Saker SCO Scott Ritter Stephen Lendman Thierry Meyssan Tony Cartalucci/Brian Berletic TPP・TTIP・TiSA・FTA・ACTA Unz Review Wayne Madsen WikiLeaks William Engdahl wsws アフガニスタン・パキスタン アメリカ アメリカ軍・軍事産業 アルメニア・アゼルバイジャン イエメン イギリス イスラエル・パレスチナ イラク イラン インターネット インド イーロン・マスク ウォール街占拠運動 ウクライナ エプスタイン オセアニア・クアッド オデーサ オバマ大統領 オマーン オーウェル カジノ カナダ カラー革命・アラブの春 キューバ ギリシャ クリス・ヘッジズ グリーンランド グレート・リセット サウジアラビア・湾岸諸国 シェール・ガス・石油 シリア ジーン・シャープ ソマリア ソロス タイ チベット チュニジア・エジプト・リビア・アルジェリア テロと報道されているものごと トゥルシー・ギャバード トヨタ問題 トランプ大統領 トルコ ドイツ ナゴルノ・カラバフ ノルドストリーム ノーベル平和賞 バイデン政権 バングラデシュ パソコン関係 ヒラリー・クリントン ビル・ゲイツ フィル・バトラー フランス ブラジル ベネズエラ ベラルーシ ホンジュラス・クーデター ボリビア ポーランド ポール・クレイグ・ロバーツ マスコミ ミャンマー ユダヤ・イスラム・キリスト教 レバノン ロシア 中南米 中国 中央アジア 二大政党という虚構・選挙制度 伝染病という便利な話題 共産主義 北朝鮮・韓国 地球温暖化詐欺 地震・津波・原発・核 宗教 憲法・安保・地位協定 授権法・国防権限法・緊急事態条項 文化・芸術 新冷戦 新自由主義 日本版NSC・秘密保護法・集団的自衛権・戦争法案・共謀罪 旧ユーゴスラビア 映画 東ヨーロッパ・バルト諸国 東南アジア 民営化 無人殺戮機 田中正造 経済・政治・国際 英語教育 読書 赤狩り 通貨 選挙投票用装置 関税 難民問題 麻薬 麻薬とされるマリファナについて

お勧め

  • IWJ
    岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

カテゴリー

ブックマーク

最近のトラックバック

無料ブログはココログ