欧州が和平に本気なら、会議にゼレンスキーを招く回数を減らすべき

イアン・プラウド
2025年3月30日
Strategic Culture Foundation
アメリカは単にウクライナ側に立つのではなく、交渉の仲介役を務めようとしているとプーチン大統領は見ている。
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ゼレンスキー大統領は現在、欧州各国首脳の主要会議には全て出席している。おそらく理解できることではあるが、議題がウクライナの要求に乗っ取られ、和平交渉で欧州が公平な役割を果たす能力が制限されることを意味する。
3月27日に欧州首脳はパリで再び会合を開き、将来の和平過程の一環としてウクライナに安全保障の保証を提供することをいとわない欧州諸国集団、具体的には有志連合構想について議論した。
この会議では新たな進展は生まれず、共同主催者であるフランスのマクロン大統領とイギリスのスターマー首相は最後にそれぞれ記者会見を行った。凍結されたロシア資産をウクライナ復興に使うという物議を醸す問題は、法的リスクと財政的リスクが大きいことから、今回も合意に達することはできなかった。
将来ウクライナに西側諸国の「再保証」部隊を派遣するという議論を呼ぶ構想は新たな決定には至らなかった。ギリシャやイタリアを含む一部ヨーロッパ諸国は、これは実行不可能で危険な措置と見ていることを明らかにしている。実行不可能なのは、基本的にNATO軍のウクライナ派兵は、ほぼ確実にロシアの抵抗に直面するためだ。危険なのは、最も楽観的な西側諸国の評論家さえ、派遣されるヨーロッパ軍は三万人と語っており、現在ウクライナにいるとされるロシア軍60万人に比べて、人員数がごく僅かなせいだ。
だが、もっと根深い問題もある。いかに実行不可能で危険であろうと、ウクライナに軍を派兵する提案は、間違った問題への取り組みだ。アメリカや、間接的にはNATO事務総長は、軍事同盟へのウクライナの加盟希望は、もはや議論の対象外だと認めている。パリ首脳会談では、和平協定の一環としてウクライナの安全保障がどのようなものになるかという詳細に焦点を当てた方がよかっただろう。これはイタリアのジョルジャ・メローニ首相が推奨した欧州有志国による第5条のような誓約に沿ったものになるかもしれない。
マクロンやスターマーなどの指導者らも提案されている軍事力の規模が限られていることや、現在の進捗状況では、軍隊がウクライナに到着するとしても数ヶ月かかる現実を考えれば、軍事力による恫喝は、和平のためロシアを攻撃するよう圧力をかけるための単なる戦術だと主張することはできない。
これもまた委員会方式で戦争を戦うヨーロッパの無能さを物語っている。パリで開催される大規模会議は、正論を言い、連帯を表明し、援助以外のあらゆる支援を提供する機会をヨーロッパ指導者連中に与える。だが根本的に、パリ・サミットのような催しは、ウクライナに平和をもたらす取り組みに新たな発想や新しいエネルギーや勢いを注入するものではない。
実際、実質的な面から見ると、これらの出来事は真の和平を阻止し遅らせる戦術になっている。
ウクライナのゼレンスキー大統領を招待せずには欧州首脳が会議を開けないことが、その一因であるように私には思える。カーゴパンツと黒いスウェットシャツを着た彼は、王族のように扱われているように見える。そしてもちろん、戦時に人々がウクライナに連帯感を抱き、ゼレンスキーに個人的親近感を抱くのは理解可能かもしれない。
だがこれら会談でゼレンスキーは一体どんな役割を果たすのかという疑問が残る。
明らかに彼はヨーロッパでの多くの記者会見で展開する独自の「要望」と一連の言説を携えてやって来る。その中には、ロシアに対する更なる制裁の必要性や、ヨーロッパはプーチン大統領に和平を迫るべきこと、ウクライナをより多くの兵器で強化することだけが役に立つなどが含まれる。これらの主張は、あらゆるウクライナ政府関係者やメディアに積極的に展開されているため、皆様おそらくこれまで数え切れないほど聞いたことがおありだろう。
戦場でロシアと戦っているため、ウクライナが国内の士気を高めることを含め、より広範な戦争努力の一環として、積極的対外広報姿勢を追求する必要があるのは理解できる。ゼレンスキーの立場なら、私も同様の戦術を追求するかもしれない。だが彼が進める制裁やロシアへの圧力といった方針は、戦争を終わらせるのではなく、戦争を長引かせるものになりそうだ。
そして現在、戦争に関する欧州の主要会議全てにゼレンスキーが出席しているため、主催者が同意するかどうかに関わらず、彼の発言がその日の議題の大部分を占める。
パリでの記者会見で、ゼレンスキーの原稿に従い、プーチン大統領に和平を迫る取り組みの一環として、西側諸国はロシアに対し更なる制裁を課すべきだとスターマーは述べた。これは、最初の制裁が導入されてから11年が経過した現在も、ロシア経済が依然として欧州諸国を上回っている事実にもかかわらずだ。(実際、今週、イギリス予算責任局は2025年のイギリス経済成長率の予測を2%から1%に半減させた。)あるいは、ロシアがウクライナの戦場で依然優位に立っている中、更なる制裁を課すのは、プーチン大統領が和平協定に同意するのを阻むだけなのは自明だ。
今週、アメリカがサウジでのウクライナとロシア代表団と黒海協定解除に同意したにもかかわらず、ロシア農業銀行に対する極めて小規模な制裁緩和の可能性は未だ不透明だ。完全な平和が訪れるまで制裁緩和はあり得ないとマクロン大統領は述べた。ロシア軍がウクライナから完全に撤退するまで制裁は解除できないと欧州委員会報道官は述べたが、この立場は、明らかに他のEU加盟国との議論も合意もされていない。
イギリスやフランスやヨーロッパ諸国のこうした発言は善意から出たものかもしれないが、ほとんど役に立たない。ヨーロッパが和平交渉に建設的意見を述べるのを既に困難にしている官僚機構の拘束に加えて、ゼレンスキーが全ての会議に出席することで、必然的にヨーロッパは彼の議題に同意し、推進する方向に引きずり込まれることになる。
そしてもちろん、いかなる和平交渉でもロシアがヨーロッパを独立した主体とみなしていないことも意味している。ヨーロッパはウクライナの延長線上に位置し、公平な立場を取れないからだ。特に、ヨーロッパ指導者連中がプーチン大統領と直接交渉することはほとんどない。
トランプとの和平交渉にプーチン大統領が前向きなのは、アメリカが単にウクライナ側につくのではなく、交渉の仲介役になろうとしていると見ているためだ。現在、ウクライナの今後の和平交渉にはイギリスとフランスが参加すべきだとゼレンスキーは「主張」している。実際、和平交渉で、スターマーとマクロンがより重要な役割を担いたいなら、ゼレンスキーを招く会議の数を減らすべきだ。
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/03/30/if-europeans-serious-about-peace-they-should-invite-zelensky-fewer-meetings/
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