ドナルド・トランプ、我らがカリグラ大統領

2025年12月15日
The Unz Review
もう何年も前の話だが、大学時代、専攻の一つに古典史があり、その分野でかなり独自の研究をした。卒業後、理論物理学の博士課程に進み始めた後、少し時間を取って研究の一部をまとめ、一流学術誌にいくつか論文を発表した。
私の研究分野はギリシャとヘレニズムの歴史だったが、ローマについても自然とそれなり知識が身につけき、何十年も経った今も一部が記憶に残っている。
ほとんどの古代国家同様、ローマも元来、複数の王に支配されていたが、伝説によれば、最後の王たちはルキウス・ユニウス・ブルトゥスに倒され、彼が共和国を建国し、王として支配するのを誰にも二度と許さないという強い誓いをローマの人々に立てさせた。
ブルトゥスの共和主義は非常に厳格で、彼がローマの執政官を務めていた間、王政復古を企てた罪で自分の息子や近親者を進んで処刑した。ローマの子どもは何世紀にもわたり、このような厳しい愛国物語で育てられ、君主制と国王に対する深い憎悪がローマの政治文化の中心的要素になった。
ローマ共和国は紀元前3世紀の長きにわたるポエニ戦争でカルタゴを破り、地中海世界の大部分を征服した。これによりローマは新たに獲得した帝国から莫大な富と奴隷の流入を得て、多くの一般ローマ農民を貧困に陥れ、ローマ社会は深刻な社会的・経済的ストレスに陥った。その結果、多くの政的混乱が起き、改革派指導者の暗殺や内戦勃発さえ起きた。こうした壊滅的混乱はローマ共和制制度の深刻な衰退を象徴していた。共和政末期には、勝利した軍司令官による独裁政権が幾度となく見られたが、これら指導者は常に自らの支配はあくまで一時的なものだと主張し、君主制を主張する者は決していなかった。
最後の、そして最も重要な人物はローマ史上最も偉大な征服将軍ユリウス・カエサルだ。激しい内戦に勝利した後、彼は全能の支配者となり、最終的に「永久独裁官」を宣言した。
後世の記録によると、同盟者たちはすぐに何度もカエサルに王冠を差し出すようになり、カエサルはそれを毎回拒否したものの、自ら王位に就こうとしているのではないかという懸念から元老院で暗殺された。暗殺者には、かつての親しい友人や同盟者も多数いた。これら暗殺者のうち二人はブルトゥス名門一族の出身で、彼らがカエサルを暗殺しようと決意したのは、自らの英雄的先祖の有名な逸話を聞き、その思いが強く影響していたに違いない。
新たな血みどろの内戦が直ぐさま勃発し、その後12年間続いた。最終的勝利者はカエサルの甥オクタヴィアヌスで、彼はアウグストゥスを名乗り、初代ローマ皇帝になった。これにより、5世紀の歴史を持つローマ共和国は全く異なる政治体制へと永久に変貌を遂げた。だがローマ人が君主制を激しく嫌悪していることをアウグストゥスは認識していたため、伝統的共和制の役職や他の装飾を全て慎重に維持し、自らを「第一市民」を意味するプリンケプス(第一人者)と称した。そのため初期のローマ帝国はプリンキパトゥス(元首政)とも呼ばれている。
アウグストゥスは40年間にわたる輝かしい治世において無限の政治権力を握っていたにもかかわらず、常に元老院とローマ政府の選出された役人たちを深い敬意と配慮で扱い、共和国が君主制に変貌したことを誇り高きローマ国民が自ら認めざるを得ない重要な隠れ蓑としての地位を維持しようと努めた。この姿勢は、彼の継子で後継者となったティベリアスの23年間の治世にも引き継がれた。
だが、カリグラが権力を握ると、共和主義的気取りはたちまち消え去った。彼の振る舞いは、ローマ人が常に軽蔑していた退廃的アジア君主制の中でも最悪のものに見られる非道で専制的なものに変貌した。
カリグラは自らを生き神と宣言し、名ばかりのローマ共和制制度への完全な軽蔑の証しとして、愛馬をローマ政府の最高位である執政官に任命すると宣言した。後世の著述家たちは、カリグラが姉妹たちと近親相姦関係にあったと記しており、絶対君主制によく見られる数々の極端な性的不品行も示していたとされている。彼の傲慢で突飛な振る舞いは、しばしば完全な狂気に陥っていたとさえこれら歴史家は記している。
これらの伝説が真実かどうかはさておき、カリグラの治世は確かに短命だった。彼は24歳で権力を握り、四年も経たないうちに失脚し、暗殺された。妻と幼い娘も虐殺され、陰謀家たちは皇帝一族の根絶を企てた。
だか、カリグラの最も非道な個人的行動のいくつかを脇に置いても、彼の短い治世の決定的側面は、共和制政治が、もはや存在しないことをローマ市民の誰にとっても紛れもなく明らかにしたことだ。ローマの政治文化が常に忌み嫌ってきた絶対君主制へと、ローマは根本的変貌を遂げていた。アウグストゥスとティベリアスは、この現実を隠蔽しようと、あらゆる努力を払っていたのだ。
少なくとも、それが40年以上も昔に、ローマ史について私が覚えたことだ。
今年初め、私はマーク・コレットというイギリスの右翼ポッドキャスターからインタビューを受けたが、彼はドナルド・トランプがカリグラに非常によく似ていると示唆し、その歴史的類似性に私も強く賛同した。
トランプは自らを生き神だと露骨に宣言したり、愛馬を閣僚に任命したりしてはいないし、彼がとんでもない性的違法行為に関与していたことがエプスタインの脅迫文書にあるかどうか個人的にかなり懐疑的だ。だが現大統領は公式の場での発言や、人事や行動において、確かに極めて奔放で不安定だ。コレットが言いたかったのは、まさにそれで、私が彼に同意した理由もまさにそれだった。
だが、多くの重要な点において、トランプの第二期目は、別の、より深い理由から、カリグラ大皇帝支配と化していると私は考える。ローマ人に、彼らの伝統的共和制政治体制がもはや存在しないことをカリグラが証明したように、トランプの大胆かつ一方的な行動は、我々の伝統的立憲政治体制が全く別物へ変貌を遂げたことをアメリカ国民全員に明らかにしたと私は考えている。この変革の重要段階は、既に歴代大統領の下で進行していたが、彼らは主流メディアの積極的共謀に助けられて、この現実を巧みに隠蔽してきた。だが、今やトランプは、それらの薄い目隠しを無造作に剥ぎ取り、全ての人の目に見える形で真実を明らかにしたのだ。
第二次世界大戦後、脱植民地化の大きな波が世界中を席巻し、アフリカ、アジア、中東で多くの新興独立国が誕生した。アメリカと西欧同盟諸国の絶大な威信により、これらの国々の多くは、選挙で選ばれた議会や独立した司法制度を含む立憲政治体制を確立し、あらゆるものが法の支配に服するようになった。
これらの国々の多くは、まもなく完全な独裁国家に転落した。だが名目上の憲法構造を維持した国々でさえ、その複雑な政治的・法的支配体制の大部分は急速に形骸化した。その代わり、国家指導者は往々にして公式布告を発して、自らが制定を望む政策や法律を公布するだけだった。指導者に異議を唱える者はほとんどおらず、たとえ異議を唱えたとしても何の成果も得られなかった。指導者が交代するたびに、それが半民主的手段によるものであれ、より頻繁には軍事クーデターによるものであれ、後継者は、ほぼ同様手法を踏襲した。
従って、政府政策は時に劇的に変わるかもしれないが、政策が制定され実行される枠組みは変わらない。
何世代にもわたり中南米諸国の多くは独立を保っていたが、そのほとんどが1920年代から1930年代にかけての中央・東ヨーロッパの多くの独裁政権同様、同じ支配パターンを踏襲した。ドイツの民主的ワイマール共和国最後の数年間、選出された指導者たちは同様に大統領緊急令に大きく依存していた。これはヒトラーが権力を握った直後に導入した制度で、最終的に、この政策を「総統指令」として新たな第三帝国の法律に盛り込んだ。
数十年前、複雑な憲法統治制度を指導者たちが全く無視し、何かしてほしい時はいつでも大統領緊急命令を出すだけという動乱の第三世界の国々を描写する多くのニュース記事を見て、私や友人たちが、いつもくすくす笑っていたのを思い出す。
軍事クーデターや違法な権力掌握を何とか回避できた国々でさえ、法の支配を謳いながら、露骨で滑稽な嘘を並べ立てるのが常だった。新たな指導者が権力を握ると、大半疑わしい選挙や全く不正な選挙の後、あらゆる政敵を訴追し始めるのが常だった。あらゆる手段を尽くしてそうする一方、自身や家族のため巨額賄賂を受け取るのも珍しくなかった。
指導者の権威に挑戦する野党や自党の選出公職者や他の著名人は、指導者と忠実な支持者から、非常に粗野で侮辱的な口調で裏切り者と罵倒され、殺害脅迫を受けることさえあった。こうした批判者たちの謎の殺害は頻繁に発生し、殺害脅迫は通常非常に真剣に受け止められた。
このような状況下では、いかなる指導者も、自分や同盟者が政治的反対派の手にかかって何が起きるのかを恐れ、反対派が権力を取り戻すのを決して許さないのは当然で、そのため、政治的支配権の変更を防ぐため、あらゆる非道な操作が行われた。
自己中心的指導者の中には、自分は偉大な天才だと宣言したり、国や歴史的建造物の名前を自分の名前に変えたりし始める者もいた。
否定的な進展を正直に報告した政府関係者や公務員はすぐさま解雇され、指導者が聞きたいことを正確に伝える追従的後任に取って代わられた。
より独裁的または冷酷な指導者の中には、潤沢な資金を持つ秘密警察部隊を設立し、頻繁に、実際または想定される政敵を路上で捕まえて秘密刑務所に連行する者もいた。
国会議員の大多数は、自身と家族のため不正な富を得るためだけに政界入りするので、自党党首に異議を唱える理由はほとんどなく、むしろ党首の政策が毎日あるいは毎週のように突然覆されても、彼のあらゆる行動を熱狂的に支持し称賛した。従属的主要メディアのほとんども全く同じことをした。
これら気まぐれで傲慢な第三世界指導者たちは、しばしば:ばかげた経済政策を採用し、それがもたらす多くの問題は当然国民の不満を広く招き、政権の権力基盤を脅かすことさえあった。そのため指導者は騙されやすい国民の注意をそらすために、積極的に外国との紛争を煽り立て、時には大規模併合や外国との戦争を提案し、小国を脅迫して屈服させようとした。
こうした政治的表明は、我々全員が広く嘲笑する専制的で腐敗した第三世界の国々の象徴だと考えてきた。だが長年にわたり、これらの国々の多くは徐々に、より安定した責任ある政府へ移行していった。残念ながら、ここ数十年、我が国は明らかに正反対の方向に進んでおり、現在のトランプ政権は、この真実を誰の目にも明らかに示しているのだ。
今年初め、ホワイトハウスに復帰して以来、トランプ大統領が施行した政策の多くは、第三世界の国々の基準から見ても、奇怪さには全く驚かされるものだった。
大統領執務室に再び入るとすぐ、彼はグリーンランドとカナダ併合について語り始めた。当然彼はただの冗談を言っていると全員が思っていたが、彼は本気で言っていることが明らかになった。
数ヶ月前、トランプが突然ブルドーザーを出してホワイトハウスを破壊したという馬鹿げた冗談をどこかで見かけ、一体誰がこんな滑稽な馬鹿げたことをでっち上げたのか不思議に思った。ところが翌朝、その話は全くの事実で、何の予告もなくトランプがホワイトハウス東棟をブルドーザーで破壊したのは、1902年に建てられた歴史ある建物を大きな舞踏室に建て替えると決めたためだった。歴代アメリカ大統領が、公式の場での何の予告も議論もなく、このような一方的行動を取ったことなど想像できない。
今年初め、ラシュモア山に自分の顔を追加することをトランプは思いつき、追従的支持者連中はその考えを熱烈に支持し、一世紀以上前に建立されたこの国定記念物に偉大な大統領の顔を加えるため改修すべきだと宣言した。一見、顔をもう一つ追加する余地はなさそうに見えるが、ワシントン、ジェファーソン、リンカーンはおそらく残るだろうが、セオドア・ルーズベルトは砂を吹き付けて削り取り、トランプのために道を空けるかもしれない。これは明らかに冗談のように聞こえるが、実は私もトランプがホワイトハウスを部分的に破壊したことについて、最初は同じことを考えていた。
ワシントン・ダレス国際空港を現大統領にちなんで改名する法案を議会のトランプ支持者連中が提出した。
こうした自己陶酔は個人的復讐心にまで及んでいるのは明らかだ。トランプは就任早々、議会で誤解を招く証言をしたという、かなり疑わしい容疑でジェームズ・コミー前FBI長官を起訴するよう部下に命じた。事件の根拠が薄弱すぎるとして捜査を続行できないとトランプが任命した経験豊富な検察官は躊躇し、即座に解雇された。後任には、トランプの個人弁護士が就任した。その弁護士は、元ミス・コン女王で、検察官経験は皆無だった。彼女は訴訟を進めたものの、裁判所に即却下された。
ニューヨーク州司法長官レティシア・ジェームズは以前トランプを起訴したため、トランプは彼女が虚偽の住宅ローン書類を提出したかどで、報復として彼女を起訴するよう要求した。この件でも彼女の再起訴を大陪審は拒否し最終的に却下された。
先月、軍歴を持つ議員六人が、「違法な命令」には従わないよう米軍兵士に促すビデオを制作した。これは一見物議を醸すようなことには見えない。だがトランプ大統領はソーシャル・メディアで激しく反撃した。
自身のソーシャル・メディア「Truth Social」にトランプは朝から数回投稿し「これは実にひどい。我が国にとって危険だ。彼らの発言は容認できない。裏切り者による扇動行為だ!!! 彼らを投獄すべきか??? ドナルド・トランプ大統領」と訴えた。「違法な命令」には公然と反対すると宣言した議員を殺害すると脅すのは、第三世界の独裁者なら当然だろうが、トランプ政権は、すぐにその立場を撤回したようだ。
「反逆行為は死刑に値する!」と彼は数時間後に付け加えた。
大統領は自身のメッセージを書いて公開する前に、Truth Socialユーザーのメッセージをいくつか再投稿した。その中には、「ジョージ・ワシントンなら絞首刑にするはずだ!!」と書いたハンドルネームが@P78というユーザーの書き込みも含まれていた。
長年、トランプにはジョージア州選出のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員ほど熱烈な支持者はいなかったが、今年に入って、トランプの政策、特に彼が常に約束していたエプスタイン・ファイル公開を突然拒否したことで彼女は益々批判的になった。この批判を受け、トランプは彼女を「マージョリー・裏切り者・グリーン」と公然と非難した。そして間もなく、トランプ発言により、自身と息子に向けられた殺害予告の波が一因となり、彼女は突然議員引退を発表した。
大統領としてのトランプ大統領の途方もない傲慢さのかなり奇妙な一面は、国民の信任を全く受けずに2025年にホワイトハウスを奪還したことだ。
予想に反してトランプは2024年の大統領選で勝利したものの、極めて不人気で全く資格のない民主党対立候補、カマラ・ハリス副大統領に対する勝利は実はかなり僅差だった。得票数はわずか49.8%で、ハリスを1.5ポイント上回った。一方、選挙人投票では312票対226票と、ハリスを上回ったものの、圧倒的な差とは言い難い。
トランプは一度も国民投票で過半数獲得したことがないが、フランクリン・ルーズベルト、リンドン・ジョンソン、リチャード・ニクソンなど、ほぼ全州で圧倒的得票率による地滑り的勝利を収めた近代の先人を遙かに超える権力を独占している。
トランプ大統領のとてつもなく奇妙な傲慢さは、就任から数週間後に私が注目した、税金と国際貿易に関わる最初の主要政策で簡単に実証された。
「解放記念日」にトランプが課した法外な関税は4月2日に発表されたが、エイプリル・フールに発表した方がずっと適切だっただろう。明らかに個人的気まぐれで課された巨額国際関税は、数日後速やかに撤回されたが、その後数ヶ月にわたり、頻繁に復活し、引き上げられ、引き下げられた。これは世界がかつて経験した数兆ドル規模の商品に対する大規模国際税制変更の最も奇抜な一連の出来事だっただけでなく、全てアメリカ憲法の完全な違反だった。
当時私はこう指摘した。
関税は輸入品に課される税金の一種に過ぎない。アメリカは年間3兆ドルを遙かに超える外国製品を輸入しているため、関税が経済に甚大な影響を与えるのは明らかだ。だがトランプ大統領は突如関税を10倍以上に引き上げ、約2.5%から29%へと引き上げた。これは悪名高い1930年のスムート・ホーリー関税法を遙かに上回る、100年以上前の水準だ。これは確実に人類史上最大級の増税の一つと言えるだろう。実際、狂気の独裁者や東洋の暴君がこれほどまでに奇妙で極端なことをしたことはないと私は強調した。
我が国の憲法によれば、関税や他の税制変更は議会立法により制定されなければならない。だがトランプはこれら要件を無視し、1977年の法律の緊急事態条項に基づいて関税率を一方的に設定できる権限があると主張した。この条項がそのような目的に使えるとは誰も考えていなかった。
235年にわたる我が国の歴史において、関税、貿易、税制政策における過去の変更は全て、スムート・ホーリー協定、NAFTA、WTOと、トランプ自身のUSMCAを含む、数ヶ月、あるいは数年にわたる政治交渉の末に最終的に議会に承認または否決されてきた。だが今これらの数兆ドル規模の決定は、権力を握ったアメリカ独裁者を自称する人物の個人的気まぐれによって行われている。
数千年にわたり、世界は多くの主要国を絶対君主や全能の独裁者に支配されてきた。中には精神異常者とさえみなされる指導者もいた。だが主要国の税、関税、貢納政策がこれほど急激かつ突然に変更され、明らかに個人的気まぐれに基づいて大幅に増減した例は過去に例がない。カリグラはもちろん、ルイ14世やチンギス・ハン、その他思い浮かぶ人物でも同じだ。無作為に数人の政府高官の首をはねること自体は別として、国家財政政策の抜本的変更は、一般的に遙かに深刻に受け止められていた。ティムールが、恐怖に陥った臣民に要求した貢納金を突然10倍に引き上げ、数日後に2分の1にまで引き下げたなどということは、おそらくなかったろう。当然ながら、トランプ大統領による突然の大幅輸入品増税を受けて株式市場は当初暴落したが、その後、トランプ大統領がすぐ方針転換したことでほぼ回復した。しかし、この突然の方針転換には、非常に疑わしい点がいくつかあった。
トランプの全く予想外の方針転換は当然ながら株価の大幅な回復をもたらし、それまで失っていた株価の多くを取り戻した。この未曾有の市場回復で友人たちが儲けたとトランプは自慢した。この出来事は、人類史上最も悪質で露骨なインサイダー取引例の一つを我が国が目撃したという暗い疑念を生んだ。Ron Unz • The Unz Review • April 14, 2025 • 3,800 Words
最近、全くの政治的理由でブラジルとインドの製品に莫大な関税を課した。
右派の元大統領ジャイル・ボルソナーロを大統領の座にとどまるためクーデターを企てた容疑でブラジルの裁判所が起訴した。これら容疑が真実かどうかは定かではないが、これは明らかにブラジル国内問題で、その是非はブラジル国民自身が判断すべき問題だ。Ron Unz • The Unz Review • September 8, 2025 • 4,200 Words
だがトランプはボルソナーロを気に入り、その訴追を不快に思ったため、直ちにブラジル製品に50%という巨額関税を課した。これは当然、ブラジル現大統領と大半の一般ブラジル国民を激怒させた。彼らは、ブラジル内政に関するこのような高圧的なアメリカの威圧的行為を快く思わなかった。トランプはまるで自分を世界の王者と見なし、命令に従わない外国を関税の棍棒で叩きのめすかのようだった。
更に注目すべきは、ウクライナ戦争における対ロシア政策の失敗を補うため、トランプが関税を利用したことだ。大統領選選挙運動中、トランプは就任後24時間以内にロシアとウクライナの和平を実現すると豪語していたが、8ヶ月以上が経過した現在も戦争は続いており、ロシアの狙いは揺るがず、トランプの要求に屈する姿勢を見せていない。
そのため、ロシア経済に重要な原油販売を停止して圧力をかけるとトランプは発表した。特にインドに焦点を絞り、ロシア産原油の購入を停止しなければインド製品に巨額関税を課すと脅迫した。これは世界最高権力者、独裁者によるものとは到底思えない全く異様な要求だった。世界最大の人口を抱える国の経済に露骨な侮辱を浴びせながら、トランプは50%という巨額関税を課し、インドの誇り高い超国家主義政府を著しく疎外した。
数兆ドル規模の輸入品に対するトランプ大統領による巨額増税は、すぐ撤回されたものの、我が国の経済に大きな負担をかけ、数ヶ月以内に国の雇用創出統計に反映された。だが当時私が説明した通り、大統領は典型的なスターリン主義的反応を示した。
そして8月1日、ついに事態は悪化した。7月の新規雇用者数の推計値は予想を大きく下回り、5月と6月の修正データは、トランプ大統領の関税発表直後に雇用創出が頭打ちとなり、ほぼゼロにまで減少したことを浮き彫りにした。ニューヨーク・タイムズに掲載されたグラフは非常に示唆的で、見出しの正当性を裏付けるものだった。
こうした暗い経済結果に対する大統領の衝撃的反応は、まさにスターリン的だった。彼は即座に公式雇用統計は「不正操作」されていると断言し、そのような歓迎されないニュースを提供したかどで労働統計局長官を務めていた統計専門家エリカ・マッケンターファーを解雇した。彼女をNKVDに逮捕させ、トロツキスト破壊工作員として収容所列島に送ることこそなかったものの、それ以外の彼の反応は悪名高いソビエト独裁者のそれと酷似していた。コロンビア大学のジェフリー・サックス教授は数十年にわたり世界を代表する経済学者の一人として活躍し、金融界における高い地位と影響力を活かして、世界のトップリーダーやグローバルエリートと定期的に会合を重ねてきた。そのため、サックス教授は他の多くの人々より率直に意見を述べるのに積極的だ。今年に入ってからの数々のインタビューで、サックス教授はトランプ政権政策の多くが全くの無法・違法だと痛烈に批判してきた。例えば不利な経済統計を報告したとして政府高官を即時解雇した事件もその一つだ。
この衝撃的事件が起こるまで、私はマッケンターファーという名前を聞いたことがなく、おそらくほとんどのアメリカ人もそうだったろう。彼女は労働経済学者で、統計学者でもある専門職として、何十年間も政府機関で静かに汗水流し、一度も物議を醸すことはなかった。昨年、彼女が労働統計局長官に任命された際、上院では86対8の賛成多数で承認され、共和党議員のほぼ全員が彼女を支持した。
だが、トランプ大統領が彼女をトロツキスト・スパイと断定したことで、怯えた共和党議員の大半はすぐ従い、気まぐれな大統領の非難に賛同した。一方、リベラル派と保守派両方の経済専門家は、マッケンターファーを超党派の専門家として擁護し、彼女の部署が収集した実際の経済データを熱心に報告したと称賛した。
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Ron Unz • The Unz Review • August 11, 2025 • 3,200 Words
マッケンターファーの突然の解任は、トランプ大統領のより広範な行動パターンの一部に過ぎなかった。
90年間、アメリカでは大統領が重大な理由なく独立政府機関の職員を解雇したり、他の方法で解任したりすることはできないという法律が確立されてきた。これは全て、1935年の最高裁判所全会一致の画期的判決に基づいており、民主党のフランクリン・ルーズベルト大統領がそのような措置を取ることを禁じたのだ。そして、それ以降の数十年間、どの大統領もこの制限に異議を唱えたことはなかった。
だがトランプはこれまで何度もまさにその通りのことをしてきた。個人的思いつきで、あるいは様々な委員会や委員会で共和党が多数派を占めるようにするため、そうした役人を解任してきた。そして最も驚くべきことに、確立された憲法を著しく侵害するトランプの行為を現最高裁判所が承認する可能性が高いのだ。この判決は、ほぼ一世紀にわたる判例を覆し、大統領の既存権限を大幅拡大することになるだろう。
連邦準備制度の政治的独立性がアメリカ経済の安定と世界金融市場における米ドルの一般的評価の根幹を成すと私の生涯を通じて、事実上全ての民主党員、共和党員と評論家たちは常に自画自賛してきた。だが、連邦準備制度が金利を迅速に引き下げようとしないことにトランプは不満を抱き、議長解任をちらつかせ、他の理事の一人を解任したと宣言することで、連邦準備制度に金利引き下げを迫ってきた。
これによって、トランプは、第二次世界大戦後に連邦準備制度理事会(FRB)と財務省の間で締結された1951年の協定を覆そうとしているのだ。この協定は、連邦準備制度理事会(FRB)の完全な独立性を回復したものだ。協定発効以来3世代にわたり、歴代大統領はこの政策に異議を唱えたことはなかった。この全く前例のない大統領権限の拡大について、最高裁判所は、まもなく判決を下すことになるが、今回の場合、最高裁がトランプを支持する可能性は遙かに低いと思われる。
先月の口頭弁論では、アメリカ憲法に明確に規定されているにもかかわらず、大統領の緊急命令により関税率を一方的に設定できる権利があるとするトランプ大統領の主張に対し、保守派判事を含む最高裁判所も、かなり懐疑的な見方を示していた。
例えば、トランプ大統領自身が最高裁に任命したニール・ゴーサッチ判事は、トランプ政権の論理によれば、進行中の「気候緊急事態」を理由に、大統領は全てのガソリン車と自動車部品に50%関税を一方的に課し、そのような権限は事実上議会や他の機関により抑制されないと非常に示唆に富む指摘をした。
課税する力権は破壊する力で、トランプは大統領として、あらゆる製品、サービス、産業を一方的に破壊することを可能にする緊急大統領令を発令する権限を有していると主張しており、将来の大統領も全て永久に同様の強大な権限を有することになる。これは我が国の歴史において、大統領権限の最も異例な拡大の一つになるだろう。
トランプ政権による税と行政の権力の目覚ましい拡大は憲法上許しがたいものだが、国内における最も憂慮すべき活動は、これらではないと私は主張してきた。
トランプ大統領の二期目就任からわずか数週間後、私は新政権がとった最も衝撃的な行動の一つを取り上げた。
トルコ出身で30歳のタフツ大学博士課程学生でフルブライト奨学生の女性が、友人宅でのホリデーディナーに向かうためボストン近郊を歩いていたところ、夕方早く覆面をした国土安全保障省の連邦捜査官6人に彼女は突然捕まり拉致された。恐怖に怯える若い女性は手錠をかけられ、待機していた車に連行され、友人、家族、弁護士との面会も許されないまま24時間秘密裏に拘留された後、ルイジアナ州の留置所に移送され、即時国外追放が予定されていたが、連邦裁判所は手続きを一時的に停止した。
この事件の短い動画を映したツイート一つだけでも450万回以上再生されており、ずっと長いYouTube動画も数十万回再生されている。
ICE arrested Tufts graduate Rumeysa Ozturk a year after she co-authored a pro-Palestinian op-ed and was flagged for anti-Israel activism.
— AF Post (@AFpost) March 26, 2025
Follow: @AFpost pic.twitter.com/ih1luFo3zG
非常に不穏なその光景は、まるでディストピア的アメリカ警察国家の行動を描いたハリウッド映画から抜け出してきたかのようだった。そしてルメイサ・オズトゥルクが故郷の路上で拉致された理由がメディア報道で明らかにされて初めて、その第一印象が強まった。彼女唯一の違反行為は、一年前、イスラエルとガザの民間人への継続的攻撃を痛烈に批判する論説記事をタフツ大学学生新聞に共同執筆したことだった。アメリカ永住権を持つ他の多くの合法住民もイスラエル政府の政策を批判したため同様運命をたどった。
どうやら、シオニスト億万長者から資金提供を受けている多くの強力な親イスラエル検閲組織の一つが彼女の記事に激怒し、公に彼女を見せしめにすると決めたため、トランプ政権内の従属的な手下連中が即座に彼女の逮捕を命じたのだ。
これは今月初めにコロンビア大学大学院生マフムード・カリルが逮捕され、大きな物議を醸した事件に続くものだ。カリルは昨年、イスラエルによるガザ攻撃に抗議するキャンパスでの抗議活動に深く関わっていた。妊娠8ヶ月のアメリカ人である妻と暮らす学生寮の早朝捜索で逮捕され、まずニュージャージー州で拘留され、その後ルイジアナ州の留置所に移送された。この時も、家族、友人、弁護士との面会を許されなかった。また、多数のアメリカ人から市民権を剥奪するともトランプ大統領は発言しており、大統領の他の公式発言を考慮すれば、これにはイスラエル国家への忠誠心が不十分とみなされる個人も含まれる可能性がある。
グリーンカード保持者(アメリカ永住権保持者)として、彼はアメリカ市民として当然の権利と特権を全て享受できると考えられていた。だがマルコ・ルビオ国務長官は、これまでそのような目的で用いられたことのない曖昧な法理に基づき、彼のグリーンカードを取り消し、国外追放すると宣言し、連邦裁判所で強力な法的異議申し立てを引き起こした。更に、ニュージャージー州の管轄区域からディープサウスの別管轄区域への移送も、通常の法的手続きに違反しているように思われた…。
前日、イスラエルを批判したかどで全国で300人以上の学生を逮捕し、即時国外追放を既に承認したとルビオ長官は説明しており、これら特定事件は明らかに非常に大きな氷山の一角に過ぎない。
Ron Unz • The Unz Review • March 31, 2025 • 7,300 Words
令状なしで行動する移民税関捜査官による、このような公然たる拉致は、すぐ不法移民容疑者に広く行われるようになり、共和党とトランプ支持基盤の大部分を占める反移民活動家たちから大喝采を浴びた。だが右翼インターネット扇動家アンドリュー・アングリンは、鋭く、非常に憂慮すべき問題を提起した。
アメリカには1000万から2000万人もの不法移民が暮らしており連邦捜査官を大動員し彼らを一人ずつ逮捕するのは途方もなく非効率的で、論理的に全く意味をなさないと彼は指摘した。従ってトランプのこの劇的政策は全く別の動機で推進されているに違いない。
私たちが実際目にしているのは、覆面をした政府職員の部隊が、脅えている人々を法的令状もなく路上で連れ去り、無名車両に押し込み「秘密施設」へ送り込み、外部との連絡を一切遮断して拘留する慣行を常態化させる試みだと彼は説得力ある主張をした。
アメリカ社会で、このような出来事はかつてなかった。だが、狙いは、アメリカ国民が日常生活やソーシャルメディアでこのような恐ろしい光景を見ることに慣れ、そのような残忍な戦術をICE職員に熟知させることだとアングリンは主張した。それが実現すれば、アメリカ国民に対しても全く同じ手法が用いられ、テロリストや裏切り者や敵対勢力工作員と疑われる容疑で正当化される可能性があると主張した。
驚くべきICE予算の増加を彼は指摘した。
「ビッグ・ビューティフル・ビル」は、ICEをアメリカ史上最大の連邦警察組織へと変貌させる。ICE予算は100億ドルから1,000億ドルに増加し、FBI、DEA、ATF、連邦刑務所局、連邦保安官局の予算を合わせた額を上回る。MAGA様:覆面をしたICE凶悪犯があなたに同じことをしないと思っているなら、あなたは見た目以上に愚かだ。
アンドリュー・アングリン • The Daily Stormer• 2025年7月11日
当時私はこう主張した。
社会や政治体制が完全に崩壊に向かっていることを示す典型的兆候の一つは、イデオロギーの一方の極端が支持する政策から、もう一方の極端に支持される政策への一連の急速かつ劇的転換だと私は考えている。Ron Unz •The Unz Review • 2025年7月21日
ここ数年、立法府に基づかない手段により確立された、いわば亡命制度に基づく「国境開放」制度の導入を我々は目の当たりにしてきた。その結果、数百万人もの不法移民が制御不能な状態で流入している。そして今この極めて不人気な政策への反発として、トランプ政権はICE(移民税関捜査局)を巨大で軍事化された連邦警察に変貌させ始めている。ICEは、正当な理由や適正手続きを一切経ずに人々を街頭から頻繁に拉致し、国内外の残忍な収容所に送り込んでいる。これは悪名高いソ連のNKVD(内務人民委員部)を彷彿とさせる。
支持層の多くの支持を維持する手段としてトランプ政権が不法移民問題を重視してきたのは確実だ。
就任からわずか数日後、不法移民のアメリカ生まれの子ども出生による市民権を廃止する緊急大統領令をトランプ大統領が発令し右派支持者を喜ばせた。当然、この大統領令は下級裁判所の差し止め命令により直ちに阻止されたが、今月初め、最高裁判所がこの件の再審理を承認した。9人の判事のうち6人は保守派の共和党員で、その半数はトランプ大統領自身に任命されているため、トランプ大統領の大統領令が承認されるのではないかとの憶測も飛び交っている。
近年、多くの、あるいはほとんどの保守的組織や活動家がこの立場を取っているが、最高裁判所が1898年に下したアメリカ対ウォン・キム判決に対し127年間にわたり定着した解釈を覆すものであるため、これはいわゆる保守的司法原則の完全な違反に思われる。
この保守派の法的論拠が全くもって馬鹿げているのは、それが1990年代の移民問題闘争のさなかに初めて登場したという事実だ。これは現在覆そうとしている最高裁判決から約100年後のことだ。20世紀を通じて、不法移民のアメリカ生まれのおそらく何百万人もの子どもが、このような出生権規定に基づいて市民権を取得してきた。そして私が知る限り、この法的前提に異議を唱えた者は誰もいなかった。
私は、この法解釈が司法判断により肯定されたと主張しているわけではない。むしろ、この解釈が100年近くもの間、アメリカで誰一人、弁護士、公選職者、ジャーナリスト、評論家、政治活動家など誰にも公に疑問視されなかったという遙かに強い主張をしているのだ。従って最高裁がトランプに有利な判決を下した場合、それはほぼ1世紀にわたり、アメリカ弁護士全員と弁護士でない全員が憲法修正第14条の意味を誤解していたと宣言することになる。これは司法の抑制という保守主義の原則を想像できる限り大きく侵害する行為と言えるだろう。
実際最高裁がそのような判決を下すのは、合衆国憲法起草者も、200年以上もの間、アメリカ人の誰一人その事実を知らなかったにもかかわらず、判事が突然、合衆国憲法は同性婚の権利を保障していると主張するのと同じくらい全く滑稽なことだ。だが、2015年のオーバーグフェル対ホッジス事件で5対4の判決が出たことを考えれば、出生地主義を廃止するトランプ大統領の大統領令が支持される可能性は決してゼロではないと思う。
少なくともこれまでのところ、完全に従属的な議会は、最高裁判所の判事のほとんどと同様、トランプ大統領の国内政策の全てを支持してきた。
トランプ大統領の二期目任期中、ジェフリー・サックス教授はトランプ大統領の無法行為の甚だしい性質を繰り返し強調する数少ない主流派著名人の一人で、二世紀半近く経過した今我が国の憲法制度は危機に瀕していると断言した。共和党が圧倒的に優勢な最高裁判所が、その危機を招こうとしている可能性が非常に高いのではないかと私は個人的に懸念している。
トランプの大統領就任からまだ一年も経っていないが、今後の判決がどうなるかはさておき、彼は既に大統領権限を前例がないほど拡大するのに成功しており、緊急大統領令を万能の立法手段として活用している。トランプ大統領は、あらゆる税率を一方的に設定・変更し、独立委員会・委員会の委員全員を解任する権限を掌握している。同時に、19世紀後半に猟官制度に終止符を打った公務員規定を事実上廃止している。もしこの大統領令が承認されれば、これら強力な行政手段は将来の大統領も行使できるものになるだろう。
更に彼はいかなる政治的信任も受けていないにもかかわらず大統領権限の大幅拡大を成し遂げた。三度の大統領選挙では、いずれも過半数票を獲得できていない。これは慎重な手段が失敗するような場合でも、大胆な行動がしばしば成功することを物語っている。
外交政策面では、トランプ大統領の行動は少なくとも同様に極端かつ不安定で、特にベネズエラや他の中南米諸国に関しては、ここ数カ月、完全に犯罪的になっている。
2025年、我が国はベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領とその政権を「麻薬テロリスト」と繰り返し非難し始めた。これは全く意味不明な新語で、トランプと政府関係者が広めたものだ。トランプは、フェンタニル過剰摂取による年間数万人のアメリカ人の死を強調して、こうした非難を裏付けた。これは確かに腐敗しつつある我が国社会の恐ろしい一面だ。だがトランプは、フェンタニルがベネズエラ産でないことに全く気づいていないようで、マドゥロ大統領と政府が他の麻薬密売に深く関与していたという証しを一切示していない。情報通の専門家も、こうした非難を、ほとんど否定している。
マドゥロ大統領に対するいかなる告発も立証していないにもかかわらず、トランプ大統領はベネズエラ指導者を繰り返し脅迫し、大統領職を辞任するよう要求し、アメリカ最大の航空母艦ジェラルド・R・フォードを含む強力な米海軍機動部隊をベネズエラ沖に駐留させ、こうした脅迫を強調している。
だがマドゥロ大統領は動ぜず、トランプ大統領が実際攻撃するのに消極的だったため、大統領は本気を示すため、ベネズエラ周辺の国際水域に停泊中の多数の小型船舶に、一連の致死的ミサイル攻撃を開始するよう軍に命じた。またしてもトランプ大統領は、何の証拠もなく、乗船者は我が国への致死性麻薬密売を企む麻薬テロリストだと断言した。そして、これらのアメリカ攻撃で、既に数十人が犠牲になっている。
だが識者はトランプの主張に鋭く反論し、どの船もアメリカ本土まで1600キロもの距離を航行できる燃料を持っていなかったと指摘した。国際水域で無防備な船舶を攻撃し、乗員を殺害するのは明らかに戦争犯罪で、おそらく将来の訴追リスクを懸念して、この地域でアメリカ軍を指揮していた四つ星提督は即座に辞任を発表した。
これら船舶の一部が麻薬を積んでいた可能性は確かにあるが、証拠は提示されておらず、麻薬密輸を行うには明らかに乗客数が多すぎる船舶もあったと専門家は指摘している。更に、我が国の軍は、このようなミサイル攻撃の生存者数名を捕らえた後、訴追を求めるのではなく、すぐ釈放していた。この恥ずべき事件を受けて、我が国政府は生存者を出さないため追加攻撃を行う新たな政策を採用したようだ。
だが奇妙なことに、トランプ大統領は、無作為の民間人、場合によっては麻薬密輸業者数名への致命的ミサイル攻撃を命じ、マドゥロ大統領に対しても同様のことをすると脅迫していたにもかかわらず、これら厳しい措置とバランスを取るため、元ホンジュラス大統領フアン・オルランド・エルナンデスに完全恩赦を与えると決定した。昨年、エルナンデスは数百トンのコカインをアメリカに密輸したかどでアメリカ陪審により有罪判決を受け、連邦刑務所で45年の刑を宣告されていた。トランプ大統領に釈放されたとはいえ、元大統領は世界有数の麻薬密売組織の一つへの深い関与のかどで依然逮捕に直面しているため、母国には帰れない。
狂気のカリグラでさえ、これら二つの矛盾した政策を並置しようとはしなかっただろうと思うし、私は『空飛ぶモンティ・パイソン』の奇抜なイギリス風ユーモアを長年楽しんできたが脚本家がこのような馬鹿げた寸劇を制作するほど大胆だとは想像できない。
ほんの数日前、ベネズエラへの圧力を強めるため、ベネズエラからキューバへ原油を輸送していた大型タンカーを拿捕するようトランプ大統領は米軍に命じ、その後、原油はアメリカが没収すると高らかに宣言した。この拿捕は明らかに国際海賊行為に等しいが、唯一の正当化は、トランプ大統領がベネズエラとキューバ両国政府を強く嫌っていることにあるようだ。
国際海賊は今なお世界に存在し、中でも凶暴なソマリア部族のギャングが最も悪名高い例と言えるだろう。だが政府がこのような海賊行為に関与した最後の例は、トリポリを拠点とする北アフリカの海賊、悪名高きバーバリ海岸海賊の事件ではなかろうか。1800年代初頭、これら海賊は貢ぎ物支払いを拒否する国の帆船を頻繁に拿捕し、こうした船舶攻撃をきっかけにトーマス・ジェファーソン大統領は第一次バーバリ戦争を始め、勝利を収めた。「トリポリ海岸における我が国の軍事的勝利」は海兵隊の歌になっている。
だがジェファーソン大統領が国際的海賊行為を抑制しようとしたのに対し、二世紀以上経った今、後継者トランプ大統領は海賊行為を積極的に推進し主導しようとしているようだ。海賊襲撃で押収したベネズエラ産原油約200万バレルを接収する計画を公言しており、収益でその場所で活動する海軍部隊の高額な日常経費の一部を補填できると期待しているのかもしれない。
トランプ政権が、20世紀初頭にセオドア・ルーズベルト大統領が用いた悪名高い「棍棒」外交政策(中南米の軍事力弱国への対応やモンロー主義の拡大解釈など)に戻ったと一部識者は指摘している。だが私はこれに強く異議を唱える。過去数百年、いや、おそらくは数百年にもわたり、トランプ大統領率いるアメリカほど一貫して完全に無法な行動をとってきた大国は私の知る限り他にない。
同様に、国家安全保障政策を実行するために大統領が任命した高官の何人かは、とんでもない経歴と資格不足の点で全く未曾有の人物のようで、特に国防長官ピート・ヘグゼスが挙げられるが、トランプ大統領は驚くほど率直な大統領令で、ヘグゼス国防長官の省を突然、戦争省に改名した。
ヘグゼスはイラク戦争の退役軍人であったものの、ライフル小隊以上の部隊を指揮したことはなかった。だがFoxNewsの熱血コメンテーターとしてトランプ大統領の目に留まったようだ。だがトランプ大統領が彼を指名した際、彼が長年深刻な飲酒問題を抱えていたことと、彼が率いていた非営利退役軍人団体が財政破綻していたことがすぐに発覚した。
更に悪いことに、共和党の会議で酔っ払ったヘグセスは、そこにいた女性の一人をレイプしたという、もっともらしい容疑をかけられていた。女性は当時、同僚にこの残忍な襲撃について話し、警察にも通報していた。ヘグセスは告訴しないよう必死に懇願し、後に彼女の口止め料として5万ドル支払った。このことが共和党が多数派を占める上院での指名獲得を危うく阻止するところだったが、トランプの強烈な圧力により、J・D・ヴァンス副大統領の決着で辛うじて指名を勝ち取った。これはアメリカ史上二度目だ。
ヘグゼス長官は、就任後、ミサイル攻撃の詳細を友人や親族に伝えて、全ての安全保障慣習に違反し、この事件により長官は即座に解任されるだろうと広く予想されたが、それは誤りだった。

ピート・ヘグゼス戦争長官
どこかの大国が、全く資格も能力もなく、入れ墨だらけの酔っぱらい強姦犯の指揮下に軍隊を置いたのは一体いつが最後だったか私はよく分からない。そして第三世界の国々の圧倒的多数ですら、そのような疑わしい人事決定には尻込みするのではないかと私は思う。
トランプ大統領がFBI長官に選んだのは、法執行機関での経験皆無のカシュ・パテルだった。また彼の恋人アレクシス・ウィルキンスは先月保守系インフルエンサーからイスラエル工作員だと軽々しく非難されたことに対し数百万ドル規模の訴訟を起こし、大きな注目を集めた。一方トランプ大統領がFBI副長官に任命したのは、元シークレットサービスの下っ端職員で、人気があり非常に陰謀論的な右翼ポッドキャスターとして知られるダン・ボンジーノだ。
トランプ大統領の任期における奇妙な点の一つは、一期目と二期目の間に極端な違いがあることだ。
2017年1月、全く予期外にトランプがホワイトハウス入りした際、誰もが彼が劇的行動を取ると予想し、反対派は大きな恐怖を抱き、支持者は希望と期待を抱いた。
だが就任後4年間、彼は怒りのツイートを連発した以外ほとんど目立った行動をとらなかった。彼が任命した主要人物はほぼ全員共和党主流派か筋金入りネオコンだったため、彼の政権はジェブ・ブッシュ政権下で樹立された政権と多くの点で見た目も行動もそっくりだった。
だが彼の二期目は全く異なり、アメリカ史上最も異例かつ注目すべき大統領の一人なのは確実だ。なぜこれほどまで際立った違いが生まれたのだろう?
答えは遠い昔の歴史上の人物、ビザンチン帝国(東ローマ帝国)のユスティニアヌス2世の物語に部分的に見出せるのではないかと思う。彼は685年に即位し、歴史家によると、最初の10年間、合理的で概ね成功した統治を行った。だが彼の税制は不評で、695年にレオンティウスという将軍に廃位され、レオンティウスが皇帝に即位した。
レオンティウスは前任者を殺す代わりに、四肢を切断して追放した。これは、四肢切断された元皇帝が将来政治的脅威となることはないと考えたためだ。
レオンティウスはその後数年間統治したが、彼もまたティベリウスという別の将軍に打倒され、同様理由で鼻を切り落とされた。
だが事態は驚くべき展開を見せた。亡命生活を送る中、ユスティニアヌスは蛮族の大軍の支援を得ることに成功し、その首長に多額の報酬と娘との結婚を約束した。彼らの助力を得て、ユスティニアヌスはビザンツ帝国の首都を占領し、黄金の鼻を装着して帝位を奪還した。
後世の歴史家によると、ユスティニアヌス帝は身体の損傷と長年の苦難に満ちた亡命生活によって精神的に深刻な混乱に陥り、第二治世ではより苛酷で不安定な支配をした。前任者二人を公開の場で拷問・処刑した後、ユスティニアヌスは正しかろうと間違っていようと、自分に反対していると疑った他のビザンツ帝国の有力者たちにも同様行為をし始めた。次にユスティニアヌス帝は彼を復位させた蛮族に反旗を翻したが戦いで完敗した。
彼の不人気な振る舞いと軍事的敗北は、やがて彼の支配に対する反乱を引き起こし、別の将軍に倒された。後者は今回は危険を冒さず、ユスティニアヌス帝の金の鼻もろとも斬首し、さらにその息子と後継者も殺害した。こうして、一世紀に渡るヘラクレイオス王朝は永久に終焉を迎えた。
トランプが2017年初頭に大統領に就任した際、活動家的支持者たちは「彼女を投獄しろ!」と繰り返し叫び、ヒラリー・ロダム・クリントンを起訴・投獄するトランプの公約を熱烈に支持した。だがトランプはそのようなことはせず、オバマ政権の他の元政府高官に対しても同様の法的措置を取らず、復讐心に燃える支持者たちを大いに失望させた。
だが政界における多くの激しいトランプの敵たちは、感謝の意を表すどころか、自分たちの法的免責特権をトランプの弱さの表れと受け止め、直ちにトランプがロシア工作員だというばかげた非難でトランプを追い詰め始め、大規模法的調査を開始し、最終的にトランプに対する二度の弾劾を画策した。
更に、2020年の大統領選挙期間中、選挙で彼らが汚いやり方で彼に勝ち、支持者によるワシントンD.C.での大規模抗議デモ後、彼を反乱分子だと非難して議事堂を襲撃した数百人のトランプ支持者を追跡・起訴した。トランプのソーシャルメディア投稿を禁止した後、彼らは彼に対し数々の法外な訴訟と訴追を起こし、彼を破産に追い込み、刑務所送りにしようとした。時には彼が2024年、大統領選挙運動を牢獄で展開する可能性さえ感じられた。
従って、トランプが再び予想を覆し、極めて不人気なカマラ・ハリス副大統領を相手に2024年の大統領選に勝利した時、彼が遙かに気まぐれで不安定な指導者となり、あらゆる政敵やメディア敵に対し極めて執念深い攻撃の波を起こし、そのため、あらゆる種類の法的手段を講じたのは全く驚くべきことではなかった。
比喩的に言えば、2020年の大統領選でトランプを追放した後、彼の敵は彼の鼻を切り落とし、今やその政治的結果を刈り取っているのだ。だが残念なことに、我々の国全体と政治体制も同じ運命を辿っている。
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