ロシアとの戦争でアメリカが負ける理由
マイク・ホイットニー
2024年11月27日
The Unz Review
地球上のどの軍隊より米軍が優れていると広く信じられていることに私はいつも驚かされる。この信仰は一体どんな根拠に基づいているのだろう? 朝鮮戦争以来、アメリカは本物の戦争に参戦していない。高強度紛争を経験した人は米軍には一人もいない。軍事評論家、ウィル・シュライバー
ロシアに対する核による「斬首」攻撃をアメリカが仕掛けて、プーチン大統領と将軍たちが死亡した場合、ロシアには自動的に報復するバックアップ システムがある。死の手システムは、ロシア全土に散在するセンサーから、核攻撃を裏付ける放射線や熱や地震活動に関する情報を収集するよう設計されている。一定時間内に、このシステムがモスクワ司令部から指示を受けない場合、システムは自動的に4,000発の戦術、戦略大陸間弾道ミサイルをアメリカに向けて発射し、アメリカを完全に破壊し、数億人のアメリカ人が焼き尽くされることになる。モスクワの言い分は単純だ。「先制攻撃で指導者が死亡したとしても、我々の『死の手』があなた方全員を殺す」。 Dead Head 死の手、プラネット・レポートロシアとの通常戦争で、アメリカが勝利するとアメリカ人の多くが信じ続けている。だが、それは全く事実ではない。第一に、ロシアの最先端ミサイル技術とミサイル防衛システムは欧米諸国兵器メーカーが製造するものより遙かに優れている。第二に、ロシアは、激しい戦闘を経験し、将来直面するどんな敵とも交戦する覚悟ができている、百戦錬磨の戦闘部隊を100万人以上配置できるのだ。第三に、もはやアメリカは、優れたロシアの殺傷兵器や砲弾や弾薬や最先端の弾道ミサイル生産に匹敵する工業力を持っていない。要するに、ロシアの軍事力は、本当に重要な分野、つまりハイテク兵器や軍事工業力や熟練した人的資源において、アメリカを遙かに上回っているのだ。この全体的論点をはっきりさせるため私は三人の軍事評論家の著作から抜粋した。これら問題を彼らはより詳細に説明し、現代アメリカ軍の重大な欠点と、技術的により進歩した手強い敵に直面した時に遭遇する可能性がある問題を強調している。最初の抜粋は、アレックス・ヴァーシニンの「産業戦争の復活」と題する記事からの抜粋だ。
ウクライナ戦争は、依然、現在は産業戦争時代だと証明した。装備や車両や弾薬の大量消費には、補給のための大規模産業基盤が必要なのだ。量には依然質が伴う…。ウクライナにおける弾薬と装備の消費速度は、大規模産業基盤によってのみ維持できる。 この現実は、軍事産業の能力を縮小し、効率性のため規模と有効性を犠牲にしてきた欧米諸国に対する具体的な警告になるはずだ。この戦略は戦争の未来に関する誤った想定に依存しており、欧米諸国政府の官僚主義文化と低強度紛争の遺産両方に影響されてきた。現在欧米諸国は、大規模戦争を戦うための産業能力を持っていないのかもしれない。結論
欧米諸国の産業基盤能力
ほぼ同等の二勢力間の長期にわたる戦争で勝敗を決するのは、依然どちら側の産業基盤が強いかによる。国は、大量弾薬を製造する製造能力を保有するか、弾薬生産に迅速に転換できる他の製造業を保有する必要があるのだ。残念ながら、欧米諸国は、どちらも持っていないようだ…。 最近行われたアメリカ、イギリス、フランス軍による軍事演習で、イギリス軍は8日後に国家備蓄の重要弾薬を使い果たした…。
誤った仮定
戦闘の未来に関する一番重要な前提は、精密誘導兵器は標的を破壊するのに弾丸一発しか必要としないので、全体的な弾薬消費量を減らすというものだ。ウクライナ戦争はこの前提に疑問を投げかけている……。二番目に重要な前提は、産業は意のままに稼働したり停止したりできるということだ……。残念ながら、これは軍需用品購入には当てはまらない。砲弾の顧客はアメリカには一つしかない。軍だ。注文が落ち込めば、事業継続のため、メーカーはコストを削減すべく、生産ライン閉鎖しなければならない。中小企業なら完全閉鎖するかもしれない。新たな生産能力を生み出すのは非常に困難で、特に熟練労働者を引き寄せる製造能力がほとんど残っていないために……。部品が下請け業者に生産される可能性もあるため、その下請け業者は、廃業して注文を失うか、他顧客のために設備を一新するか、海外、おそらく敵国の部品に頼ることになるので、サプライ・チェーンの問題になる。
同等またはほぼ同等の敵対国間の戦争には、技術的に進歩した、大規模な、産業時代の生産能力の存在が必要なことを、ウクライナ戦争は示している。ウクライナ防衛において民主主義の兵器庫としてアメリカが機能するには、産業基盤を組織する方法と規模についてアメリカは本格的な見直しをする必要がある。独裁国家と民主主義国家間の競争が本当に軍事段階に入ったのであれば、民主主義の兵器庫はまず戦時における物資生産体制を根本的に改善する必要がある。Return of Industria Warfare (産業戦争の復活)、アレックス・ヴェルシニン、Rusi
結論:ほぼ同等な二勢力間の長期にわたる戦争に勝つための産業基盤や必要な備蓄を、もはやアメリカは保有していない。簡単に言えば、アメリカはロシアとの長期にわたる通常戦争には勝てないだろう。
最近のツイッター投稿で専門家アナリー・スラッシャーは次のようにまとめている。
……精密誘導兵器、暗視装置、世界的攻撃など、多くの決定的な能力を、アメリカは事実上独占していた。アメリカと他国の間に、高強度紛争がなかったことが、こうした非対称性に大きく関係していたと私は考えている。アメリカの高度な能力、あるいはその脅威さえ、政治目的を実現するのに十分なら、アメリカが大規模攻撃を行う必要はなかったのだ……。高度な戦闘能力を持つ国々のリストは増え続けている。同時に、欧米諸国の軍隊と防衛産業基盤は衰退し続けている。欧米諸国は、かつて決定的だったが今では益々一般的になっている小規模なアメリカの能力への依存と大規模な常備軍を交換。これにより、欧米諸国は技術的優位性を失い、かつての軍事力も失ったのだ。アメリカの軍事的優位性を依然信じている人々は、こうした変化に気付いていないのだ。更に悪いことに、彼らのほとんどは、ロシア軍事力に関して、漫画のように過小評価された考えを抱いている。彼らは、ロシアが技術的優位性と軍事力の両方を有していることに気付いていない。米軍が持っていた評判は、一時は当然のものだったが全てが変わる。Lee Slusher @LeeBTConsulting結論: アメリカの敵国、ロシア、中国、イランは、高度なミサイル技術や無人航空機 (UAV)や電子戦や最先端ミサイル防衛システムなどで、アメリカに追いつくか追い越しており、これにより、アメリカ軍事優位の時代は終わりを迎えつつあり、国家間の均衡は徐々に高まっている。アメリカの世紀は急速に終わりに近づいているのだ。
次に軍事評論家の二人目、ウィル・シャイバーの話に移ろう。彼はヴェルシニンと似た結論を導き出しているが、少し異なる角度から導き出している。下記をご覧願いたい。
これまで以上に、アメリカはロシアに対して制空権を確立できないと私は確信している。一週間では無理だ。一年では無理だ。永遠に無理だ。それは単に不可能なのだ。アメリカ軍の現在の能力を遙かに超える兵站上の戦力投射の課題となるはずだ。簡単に言えば、アメリカ航空戦力は、一つ以上の同等の敵国と地域的、世界的な非寛容な戦場状況下では、戦域全体にわたる取り組みとして持続できない。
ロシアが配備した極めて強力で豊富な資源を備えた防空軍に比べて、アメリカの航空戦力は大幅に劣っていると判明するはずだ。
HIMARS発射のGMLRSロケット、HARMSミサイル、ATACMSミサイル、イギリスのストームシャドウ・ミサイルの大部分が現在ウクライナで撃墜されている通り、アメリカの長距離精密誘導ミサイルの大部分も撃墜され、ロシアの反撃能力を圧倒しようとする無駄な試みで、これら弾薬の限られた在庫をアメリカは急速に使い果たすことになるはずだ。
敵防空網に対するアメリカの抑止能力は極めて不足で、多層構造で機動性の高い防空レーダーやミサイルを打ち破るには不十分だと判明するはずだ。
ウクライナ戦争は、欧米諸国のあらゆる防空システムが、ウクライナが当初配備した数十年前のソ連のS-300やBukシステムより劣っていることを完全に明らかにした。そして、欧米諸国のシステムがたとえ強力だったにせよ、広範囲かつ徹底した防衛を提供するのに必要な数に近づけるほどの数はない。
事態をさらに複雑にしているのは、アメリカ軍需品の在庫が乏しく、生産上の制約も克服できないため、ロシアや中国に対してアメリカが空中戦を遂行できるのが、せいぜい数週間という点だ。
更に、東ヨーロッパ、中国海、ペルシャ湾のいずれかで激しい戦闘が繰り広げられれば、米軍機の整備需要が近隣の供給を圧倒することになる。任務遂行可能率は、平時の悪名高い最低水準よりも更に低下するはずだ。
アメリカは、文字通りわずか数日後に、F-22とF-35の任務遂行可能率が10%を下回り、保有する他のほぼ全てのプラットフォームの任務遂行可能率が25%を下回ることになる。国防総省にとって大きな恥辱となるだろうが、それほど驚くことではないだろう。
東ヨーロッパでは、NATO基地と補給路をロシアが破壊し、バルト海と黒海は事実上、NATO船舶が航行できないロシアの湖になるだろう。
多くの人々は、これらは根拠のない感情的主張だと確信している。私の見解では、状況の単純な軍事的、数学的、地理的な現実がこれら結論を決定づけており、それに抵抗する人々は、典型的に、アメリカ例外主義の神話と、それに伴う弊害で目が見えなくなっており、物事の本当の姿が見えない。
もしロシアか中国かイランのいずれかに対して直接戦争をするとアメリカが決めた場合、同時にこの三か国に対する戦争になると私は益々確信しつつある。
そして驚くべきことに、これは、#EmpireAtAllCostsカルトと、その妄想的計画に同調する人々が、決して勝てない戦争の深淵に向かってよろめきながら進み続ける中、もっと真剣に考えるべき多くの厳しい真実の一つにすぎない。Staggering Towards the Abyss, (深淵に向かってよろめく)ウィル・シュライバー、Substack
ここで考えるべきことは多々あるが、要するにロシアの優れた防空能力と、アメリカの「乏しい弾薬在庫と克服できない生産限界」をシュライバーは比較検討しており、その組み合わせは、アメリカ軍の攻撃が敵に深刻な損害を与える前に弱まる可能性が高いことを示唆している。またしても、ロシアとの直接対決でアメリカが勝つことはないだろうとアメリカの軍事専門家は推測しているのだ。
最後に、軍事評論家というより調査ジャーナリストの、キット・クラレンバーグの長文から抜粋する。Collapsing Empire: China and Russia Checkmate US Military(「崩壊する帝国:中国とロシアが米軍に王手」)と題する記事で「帝国の肥大化し腐敗しつつある世界的戦争機構のあらゆる側面に対する容赦なく暗い分析」と彼が呼ぶものをクラレンバーグは詳しく述べている。著者の言うことの半分でも真実なら、ロシアに対するアメリカのエスカレーションは、1945年5月のベルリン陥落以来、世界が経験したことのない軍事的大惨事への近道だと合理的に確信できる。お読み願いたい。
7月29日、国防総省の2022年国家防衛戦略(NDS)の現状と現在の米軍の準備状況に関する画期的な評価をランド研究所が発表した。調査結果は、厳しく、帝国の肥大化し腐敗した世界戦争機構のあらゆる側面に対する容赦なく暗い分析だった。簡単に言えば、アメリカは主要敵国との真剣な「競争」に意味のある形で「備え」ておらず、あらゆる戦争領域で、脆弱か、大幅に劣勢ですらある。この帝国の世界的支配は、良く言っても、ひどく不十分、最悪の場合は、完全に妄想的だと評価されている。またもや、同じ批判が何度も繰り返されるのを目にしている。不十分な工業能力、減少する備蓄、「克服できない生産限界」、そして低下する技術的優位性。これらに加えて、戦闘を経験したことのない経験の浅い志願兵による臨時軍隊で、東ヨーロッパで戦争遂行するという無数の兵站上の問題を考えれば、ロシアとの長期紛争でアメリカは勝利できないし、勝利しないだろうとしか結論できない。それでもワシントンはロシアに向け、ATACMSミサイルを発射し続けている(過去二日間で更に13発発射した)。どうやら、この挑発に対する反撃はないと考えているようだ。それでもNATO司令部は、NATOとロシアの直接衝突の可能性を歓迎し、ロシア領土への先制的「精密攻撃」を追求し、勝利の幻想を抱き続けている。そして、フランスとイギリス両国は、戦争の避けられない軌道を何とか逆転できると考えて、ウクライナに戦闘部隊を派遣すると脅している。狂気だ。
ランド報告書から:
「アメリカが直面している脅威の大きさは過小評価されており、遙かに深刻だと我々は考えている…多くの点で中国はアメリカを上回っている…防衛生産、軍事力の拡大、そして益々の軍事力拡大において、今後もその傾向が続くのはほぼ確実だ…[北京は]20年間の集中的軍事投資を通じて、西太平洋におけるアメリカの軍事的優位性を大幅に打ち消した。アメリカが大変化を起こさない限り、勢力の均衡は中国に有利に傾き続けるだろう。」
「少なくとも、ロシアや中国やイランや北朝鮮が関与する直接紛争にアメリカが参戦した場合、その国が他の国々から経済的、軍事的援助の恩恵を受けると想定すべきだ…アメリカの権益に反対する国々のこの新たな連携は、どこであれ紛争が多戦域戦争または世界戦争になる可能性はないにせよ、現実的リスクを生み出す。アメリカの敵国諸国が以前より緊密に協力しているため、アメリカと同盟諸国は複数敵対国枢軸に対峙する準備を整えなければならない。」Commission on the National Defense, Rand
委員会の報告書が詳細に述べている通り、そのようなシナリオで、ワシントンはほぼ完全に無防備となり、ほぼ即座に敗北する可能性が高い。帝国軍隊が「戦闘で抑止力を発揮し勝利できると確信するために必要な能力と能力の両方を欠いている」というのは、グランド・チェス盤全体に薄く広がっているだけではないのだ。
ワシントンの「防衛産業基盤」は、同盟諸国は言うまでもなく、アメリカの「装備や技術や軍需品のニーズを完全に満たせない」とランド委員会は結論付けた。「特に複数戦域での長期にわたる紛争には、武器と軍需品の生産、維持、補充に、現在より遙かに大きな能力が必要となるだろう」。
数十年にわたり、米軍は「最先端技術を駆使して決定的優位を築いてきた」。この帝国側の「無敵の技術的優位性という想定」は、ワシントンが「長い取得サイクルや、失敗やリスクに対する低い許容度で、精巧な能力を構築する余裕」があったことを意味した。だが中国とロシアが「加速度的に新技術を取り入れている」ため、そんな時代はとうに過ぎ去った。今アメリカの「防衛産業基盤」は無数の有害な問題に悩まされて崩壊しつつある。
これらの問題に対処するために、何年にもわたる外注やオフショアリングや無視の後、アメリカを再工業化することを委員会は求めている。期限は示されていないが、おそらく数十年かかるだろう。
我々は、ソ連のグラスノスチに匹敵する奇妙な後期帝国時代に入ったのだ。アメリカ帝国のブレーントラストの一部は、ワシントンの覇権的世界プロジェクト全体が急速に、不可逆的に絶滅に向かっているのを目もくらむような明瞭さで見ている。Collapsing Empire: China and Russia Checkmate US Military(崩壊する帝国:中国とロシアが米軍に王手)、キット・クラレンバーグ、サブスタック
五世紀にわたる覇権は、傲慢さに酔いしれた欧米エリートの一団を生み出し、他の誰にとっても痛いほど明らかな事実、つまり欧米による搾取という帝国モデル (「ルールに基づく秩序」) は崩壊しつつあり、新たな権力の中心が急速に出現している事実が見えないほどだ。現在、これらエリート連中は権力掌握を維持し、他国が獲得した独立や繁栄を実現するのを阻止するため、世界を破滅的な第三次世界大戦に引きずり込む準備ができているようだ。幸いなことに、ワシントンは、1945年まで遡る他の全ての介入で失敗してきたように、今回の試みでも失敗するだろう。なぜなら、アメリカは、もはやロシアとの戦争に勝つために必要な技術や人材や産業能力を持っていないためだ。
それは全く新しいゲームなのだ。
記事原文のurl:https://www.unz.com/mwhitney/why-the-united-states-will-lose-a-war-with-russia/
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アメリカ人専門家によるオレシニク・ミサイル評価の一つ。
How Dangerous is Russia's Oreshnik Missile? Pentagon Expert Explains 34:33耕助のブログ 2024年12月1日記事はPepe Escobarによるオレシニク記事翻訳。
No. 2348 オレシュニク – 秒速3キロの転換点偶然昨日深夜、デモクラシータイムスの中継番組を見ていた。今回の件で彼の命脈は尽きたはずだ。
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トランプ。「BRICSの国々には、新しいBRICS通貨を創設せず、また強力な米ドルに代わる他の通貨を支持しないという約束を求める。そうでなければ100%の関税に直面する」 現時点、まだBRICS通貨創設の時期ではない。脅して、あたかもBRICS屈したような印象を与える。トランプの手口
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