ウクライナ

2026年9月 8日 (火)

ライプツィヒの偽旗騒動はドイツによる対ロシア・ドローン戦争拡大の隠れ蓑



フィニアン・カニンガム
2026年9月5日
Strategic Culture Foundation

 ライプツィヒでの偽旗作戦は、事実を隠蔽し、大衆をだまし、ロシアが脅威だと認識させる必死の企みだ。

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 ヨーロッパのニュース見出しは、ライプツィヒ空港にロシアがドローン攻撃をしたというドイツの非難が主流だった。

 この非難は前例のないもので挑発的だ。その主張をモスクワは激しく退け、ベルリンが証拠を示していないことを指摘した。

 欧州指導者たちは警戒態勢にあり、自国が攻撃を受けていると主張している。ライプツィヒ事件は、ロシアによる同様攻撃の疑いが山積しする事例の中、最新のものだ。

 8月4日の攻撃は起爆装置の不具合が原因で失敗したとドイツ政府は主張した。それにもかかわらず、先週のアレクサンドル・ドブリント内務大臣とヨハン・ワデフル外相による共同記者会見は、ヨーロッパ各地で「ハイブリッド戦争」や「国家テロリズム」を非難する糾弾の嵐を巻き起こした。v  外交的召喚は迅速で、ロシアに対し更なる制裁が課されており、欧州の防空防衛を一層強化するよう求める声は更に強まっている。

 最優先の対応策は、既にキーウに投入された数千億の納税者の資金に加え、ウクライナに対する欧州からの財政・軍事支援を拡大することだ。

 ここ数か月間、ポーランド、バルト諸国、ルーマニアにおけるライプツィヒのドローン事件や、その他多数の関与が疑われていることを、ロシアは完全否定している。

 ライプツィヒ空港のウクライナ軍貨物機近くの重要保安区域に爆発物を含むドローン装備をドイツまたはウクライナの工作員が設置できた可能性があるとプーチン大統領は示唆した。その後、ロシアを非難するメディアの反応は、まさに予想通り、望み通りの大騒ぎになった。

 また、今週末アンハルト=サクソン州での重要な選挙で、野党のオルタナティブ・ドイツAfDがフリードリヒ・メルツ首相の連立与党を打倒する意向を示したことで、メディアの反発や、ロシアに対する中傷が注目されるとプーチンは指摘した。メルツの人気が底を打つ一方、AfDは、ウクライナ戦争終結と、ロシアとの関係正常化という綱領に対し大きな支持を得ている。

 だが、もう一つの喫緊の要因は、ドイツが対ロシア戦争に関与していることだ。関与の拡大はここ数カ月で加速しており、一般の人々にはほとんど知られていない。

 ライプツィヒでのロシア・ハイブリッド戦争の主張を巡るヒステリーは、ウクライナへの軍事参加をドイツがエスカレートさせるための好都合な隠れ蓑になっている。

 ヨーロッパの見出しがロシアの脅威について叫ぶ一方、欧州指導者連中が「団結の必要性」や「自由を守る」というスローガンを合唱し、ウクライナへの攻撃用ドローン供給をドイツが拡大しロシア領に侵攻したという控えめな報道は、ほとんど注目されなかった。

 9月3日、ウクライナ向け長距離ドローン製造をドイツが開始したとドイツの経済新聞『ハンデルスブラット』が報じた。これは、ロシアがライプツィヒ事件を非難するベルリンで広く報道された記者会見の二日後のことだった。

 製造はドイツのAuteiron社とウクライナのドローン製造会社Airlogixとの合弁事業だ。標的範囲は1,500キロだ。キーウからモスクワまでの航空距離は750キロだ。

 「現在ドイツは手頃な価格の精密兵器を大量生産する生産ラインを持っている。」と、Auteironの最高経営責任者ローレンツ・マイヤーがハンデルスブラットに語った。今年は、費用と生産速度で試行錯誤し、検証された兵器を提供する。そのため、抑止力のための大規模備蓄が実際可能になる。

 エアロジクスの最高経営責任者、ビタリイ・コレスニチェンコは「この提携により、どちらの企業も単独で達成できなかったこと、すなわち戦闘実績あるミサイル、Auteironの自律型ソフトウェアとドイツの産業能力が融合した」と述べた。

 今年早々に900億ユーロの融資を受けた欧州連合(EU)の資金調達は、既にウクライナによるロシア地域の攻撃作戦に資金提供している。ロシアでは数百人の民間人が犠牲となり、石油・ガスインフラを破壊している。ここ数週間で、ドローンの集中飛行は一晩あたり800回にまで加速され、そのほとんどがロシアの防空システムに迎撃された。

 欧州企業は、ロシアへの空襲に備えて、既にウクライナへのドローンや部品供給に関与している。イギリスとデンマークは主要供給国であることが知られている。これらの国々は報復の正当な標的だとロシアは警告した。

 だが、ドイツの参加により、工業生産が拡大され、ウクライナの火力と一体化される全く新しい段階へと進んでいる。

 先週、疑わしいライプツィヒ事件について欧州の指導者連中がロシアを非難する一方、ドイツのメルツとウクライナの違法な大統領ウォロディミル・ゼレンスキーは、9月2日に電話会談を行い、新たなドローン生産契約を最終決定した。

 ロイター報道によると、この契約では、ドイツのテクノロジー企業Quantum Systemsが、ウクライナのメーカー、WIY Dronesと合弁事業を行っている。

 「既に我々のチームはドローン契約内容を最終決定しており、これによりドイツとウクライナの両方に更なる防衛能力が確実に提供される」とゼレンスキーは述べた。

 先週発表された別の取り組みとして、ウクライナ企業Skyfallが製造するShrike攻撃ドローン5万台の生産を資金面でベルリンが支援している。ロイターによると、これは欧米政府によるキーウ向けドローン購入が知られている中で最大規模のものの一つだ。

 これら生産と供給に関する合意は、メルツ首相がミュンヘン安全保障会議でドイツとウクライナのビジネス会議を指揮して以来、2026年2月に開始されている。

 だが、武器を運搬するために物流が動き始めているのは今だ。この重大な展開のタイミングは、ライプツィヒの偽旗騒動が実際に進行した際、なぜ仕組まれたのかを示している。そうでなければ、一般の人々にとって憂慮すべきニュースから逸れた。

 結果的に、ドイツはNATO加盟諸国の主導権を握り、ウクライナが単なる発射場になる広範な対ロシア戦争に直接参加しているのだ。

 世論調査によると、ドイツ国民や他のヨーロッパ諸国国民は、この無謀な戦争挑発行為に強く反対している。ロシアを「戦略的に撃破する」という思想的主導型の政策のための経済資源の転用により、ヨーロッパ社会は壊滅的打撃を受けている。

 絶望的に腐敗したネオナチ政権の「民主主義と自由を守る」という彼らの無駄な戦争計画に対して一般市民が警戒しているのをドイツやヨーロッパのエリート連中は知っている。当然これらのエリート連中は、真実が広く知られ、一般市民が猛烈に反応するのを恐れている。

 従って、ライプツィヒでの偽旗作戦は、真実を隠蔽し、大衆を騙して、ロシアは脅威だと認識させる必死の試みだ。実際には、戦争を仕掛けるヨーロッパのエリート連中による真の脅威が現実にあるのだ。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/09/05/leipzig-false-flag-drama-cover-for-germany-expansion-drone-war-russia/

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 東京新聞 朝刊 四面 国際・総合  
 AI暴走 人間さながら連携

 「指示役」現れ仕事割り振り

 「仲間」優先し課題達成放棄
 同じ面に、また自己中の記事  
今度はニューメキシコ⇒ニュー「アメリカ」に改称?

2026年9月 5日 (土)

対ロシア戦争に関するヨーロッパの危険な幻想



ルーカス・レイロス
2026年9月4日
Strategic Culture Foundation

 ウクライナでの現在のやり方とは全く違う形で、ヨーロッパに対してモスクワは行動を起こすだろう。

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 ライプツィヒ事件は、事件自体よりも更に厄介な問題を露呈させた。ドイツと欧州当局が、ロシアとの直接対決の可能性に対して、いかに自信満々なのかだ。

 まるで滑稽なほど入念に稽古した芝居のように、ロシアを「ハイブリッド攻撃」でドイツや欧州当局は非難しているが、欧州の人々が現実から完全に乖離しているのは明らかだと注意深く観察する人なら誰でも考えるだろう。

 核心的な問題は別のところにある。もしロシアが実際ドイツ攻撃を決断したら一体何が起きるのか?

 答えは、ヨーロッパ人が想像しているものとは、おそらく大きく異なる。

 まず明白な事実を改めて述べておく必要がある。ヨーロッパはウクライナではない。

 ウクライナでの特殊軍事作戦は、特定地域、独自の軍事力学と、一定の戦略的制約下で実施されている。紛争の初期段階から、モスクワは民間人を尊重し、不必要なエスカレーションを避けつつ通常兵器による戦争手段で達成すべき明確な戦略目標を定めてきた。

 ウクライナでの、この姿勢には明確な理由がある。バンデラ主義者による歴史の書き換えという妄想的試みにもかかわらず、ロシア人とウクライナ人は常に一つの民族で、共通の民族的、文化的、宗教的ルーツを共有してきたというのが真実だ。何百万人ものロシア人にウクライナ人の親戚がいて、その逆もまた然りだ。ウクライナに対する無制限の戦争は、必然的に何百万人ものロシア人に影響を与えることになる。従って、ロシアの軍事的に抑制的な戦略は何ら驚くべきことではない。

 このようなことは、ヨーロッパでは一切起きないだろう。

 ロシアとNATO加盟諸国との直接対決は全く違う状況を生み出すだろう。ドイツやフランスやイギリスや他のヨーロッパ諸国は、クーデターを起こした軍事政権に占領された兄弟国とは見なされない。それどころか、彼らは完全な敵とみなされ、武力行使に対する制約は、あったにせよ、遙かに少ないだろう。

 ロシアによるヨーロッパ攻撃は、単なるドローン攻撃の増加、破壊工作、インフラへの限定的攻撃にとどまるという考えは非常に安心感を与える。だが、まさにその理由こそが危険なのだ。ウクライナでの経験を、直接的な戦争が勃発した場合、自分たちに起き得る事態の例として捉えながら、ヨーロッパ諸国はロシアを挑発しているのだ。

 だが、この計算は間違っている。ヨーロッパに対するロシアの行動は全く違うものになるc。ウクライナでは、ロシアの最優先事項は民間人の犠牲を避けることだ。インフラ攻撃は避けられ、攻勢は抑制され、ロシア領内でのウクライナの挑発行為に対する報復さえ、あり得るエスカレーションによる暴力でウクライナ民間人が更に犠牲になることをロシアが望んでいないため、しばしば無視される。

 ヨーロッパでは、人道的犠牲を顧みず、あらゆる敵目標の即時かつ完全破壊が最優先事項になるだろう。ヨーロッパ人はウクライナ人ではなく、ロシアと西欧の関係は、ロシアとウクライナの関係とは違うのだ。ロシア世論には、武力行使の抑制を求める同等圧力は存在しないだろう。

 更に、ヨーロッパとの戦争で武力行使を控えることは、ロシアにとって実際は危険なことになりかねないのを忘れてはならない。ロシアは核兵器保有国からなる集団防衛圏に属する国々を相手にすることになるためだ。従って、ロシアは、いかなる犠牲を払ってでも、敵の攻撃能力を無力化するのに十分な強力な攻撃を仕掛けざるを得なくなるだろう。それは安全保障上の問題になるのだ。

 これは、ロシアがドイツに対して戦争を起こそうとしているという意味ではない。また、ドイツ領内で発生したあらゆる事件が自動的にロシア軍事作戦の一部であるという意味でもない。これは、欧州各国政府が、欧州領内で発生したあらゆる事件をエスカレーションへの新たな一歩と捉えることの重大な結果を、より真剣に受け止めるべきだという意味だ。そしてもちろん、これはロシアが最近欧州で発生した不審な事件とは何の関係もないという意味でもある。これら事件は、現地過激派による破壊工作か、綿密に準備された偽旗作戦のいずれかの可能性がある。

 既にベルリンはモスクワに対する外交措置を発表しており、ボンにあるロシア領事館閉鎖や、ドイツ領内にあるロシア関連機関への措置などが含まれる。欧州連合は新たな制裁措置について協議している。欧州がこうした事件を直接的政治的対立へと発展させればさせるほど、エスカレーションの限界を見極める必要性が高まる。ロシアは外交的措置など気にも留めていないだろうが、ウクライナのテロ活動に対する欧州の関与には確実にうんざりしている。

 ヨーロッパ諸国は、全面戦争が起きた場合、ロシアがどのような対応を示すか、自らの経験を通して知る覚悟が本当にできているのかどうか自問自答すべきだ。

 このような結果を目の当たりにするようなことを彼らは絶対にしてはならない。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/09/04/dangerous-european-illusion-about-war-with-russia/

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 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
NYT「ロシアとウクライナ、終わりの見えないエスカレーションの連鎖、双方がミサイルやドローンを駆使し屈服させようと激しい攻撃を加え合い、絶え間ない人道的苦難を招いている。しかしどちらの国もその決意が揺らぐ気配はない。本格的な和平交渉は来春か来夏まで行われない」

2026年9月 1日 (火)

彼らは何が起きるか知りながら、ロシアを追い詰めた。

フィル・バトラー
2026年8月29日
New Eastern Outlook

 ヨーロッパはウクライナ戦争をロシアの突発的侵略として描き続けているが、それはNATOの30年にわたる東方拡大の結果であり、ウクライナが戦場となるまでそれを無視することを欧米諸国は選んだのだ。

 

 ウクライナ戦争に関するヨーロッパの議論には、特異な不誠実さが潜んでいる。4年以上にわたる破壊、数百万人の避難民、数十万人の死傷者、そして認識できないほど変貌したヨーロッパの安全保障秩序を経てなお、主流の政治的言説は、ロシアの軍事介入を、まるで歴史的空白から突然現れたかのように扱っている。その言説はこうだ。モスクワが侵攻し、ウクライナが攻撃され、ヨーロッパが対応した。これが、一般的に語られる物語の始まりであり終わりだ。

 歴史はそういう風には進まない。戦争は2022年2月にロシアの戦車がウクライナ国境を越えた時に始まったのではない。その時始まったのは、数十年にわたり積み重なってきた対立が、壊滅的な軍事的展開を迎えたことで、その結果は、最も直接的に関わってきた人々によって公に、繰り返し語られてきたのだ。

 いわゆる侵略は、侵略行為への対応なのだ。確かに、この作戦はウクライナの主権を侵害し、いかなる戦略的不満も帳消しにできない人的犠牲をもたらした。これら事実は変わらない。しかし、だからといって、NATOと欧州連合が、ロシアの突然の西進を傍観していたという虚構を正当化するものではない。

 誰かが移動した。問題は、誰が誰の場所に移動するのかだ。

 同盟軍は東へ進軍した

 欧州は、根本的な疑問に答えを出せていない。一方の側が、主権国家としての立場を自由に選択することが、他方の側に、存亡に関わる軍事的脅威とみなされる場合、いかにして永続的安全保障秩序を構築するか、という疑問だ。

 ヨーロッパの半分を占領していたソ連軍に対抗する防衛同盟として、1949年にNATOが設立された。ソ連崩壊後も、同盟は解散も凍結もせず、拡大を続けた。1999年にはポーランド、ハンガリー、チェコ共和国が加盟。2004年にはバルト三国、ルーマニア、ブルガリア、スロバキア、スロベニアが続いた。2009年にはアルバニアとクロアチア、2017年にはモンテネグロ、2020年には北マケドニア、そして2022年以降にはフィンランドとスウェーデンが加盟した。これら加盟はいずれも、加盟国による主権的選択だった。また、いずれも欧米諸国の軍事体制で、インフラ、基準、訓練、計画を残されたロシアの戦略的深度に近づけるものだった。

 ロシアはポーランドを併合しなかった。戦闘旅団をエストニアに駐留させなかった。冷戦後の秩序の前提条件として、リトアニア沖で海軍演習を実施しなかった。欧米軍事体制の物理的移動は東方へと向かった。これはロシアの主張ではなく、地図上の事実だ。

 地図上の最先端にウクライナは位置していた。セヴァストポリは抽象的な象徴ではなかった。そこはロシア黒海艦隊の主要基地で、トルコ海峡を経由してロシアと地中海を結ぶ南の海上玄関口だった。クリミア半島の軍事地理を支配する者は、黒海北部で圧倒的優位性を得る。モスクワにとって、ウクライナは単なる隣国ではなかった。南西国境に設けられた戦略的緩衝地帯と、その国境に面して位置する敵対的同盟の軍事インフラとの決定的な違いだった。

 プーチンの歴史観、国家としてのウクライナの地位に関する主張、あるいは彼の政治体制を欧米諸国は受け入れる必要はなかった。ただ一つ信じるべきことは、ウクライナを欧米の軍事拠点に変えることを、ロシア指導者たちが存亡に関わる問題だと訴えた時、彼らが本気でそう思っていたことだけだった。そうした警告を単なる主張として扱うのは、賢明な判断とは言えず、むしろ賭けだった。

 ヨーロッパは賭けに出た。

 警告は方針だった

 NATO拡大は続いた。ウクライナと欧米諸国の軍事協力は深まった。ウクライナ軍はNATO体制との相互運用性が益々高まった。加盟はちらつかされ、約束され、延期され、再び約束された。2008年のブカレストは、ウクライナが「加盟国になる」と宣言した。2023年のヴィリニュスは加盟行動計画の要件を撤回し、その道は「不可逆的」だと述べた。2024年のワシントンは同じ定式を繰り返した。2026年のアンカラは、2026年までに700億ユーロの軍事装備、支援、訓練を約束し、共同産業プログラムを創設したが、それでもウクライナを第5条の対象外とした。

 最後の点は、しばしば弁護として用いられる。ウクライナはNATOに加盟していない。従って、NATOはウクライナに拡大していない。この弁護は見た目ほど強力ではない。正式加盟はその手段の一つだ。相互運用性、兵器供給経路、情報融合、訓練、長距離攻撃兵器の共同生産、キーウでのNATO・ウクライナ理事会会合などがその手段だ。2026年6月3日、ウクライナの地で初のNATO・ウクライナ理事会会合が開催された。7月、フィンランドのアレクサンダー・スタブ大統領は、現在の形式を「32プラス1」と表現した。現在ロンドン駐在大使のヴァレリー・ザルジニーは、実際の加盟の現実的な見込みはないと述べた。結果として、抑止理論にとって最悪の事態が生じている。ウクライナは、その地位を明確にする条約上の保証がないまま、事実上、欧米体制の軍事構成要素として扱われている。モスクワからすれば、「同盟国」と「メンバー」の区別はそもそも問題ではなかった。要点は、欧米の軍事力が、かつてソ連の西側軍事拠点だった地域に到達したことだった。

 時間を稼いだだけで、平和を買ったわけではないミンスク合意。

 ミンスク合意は、ドンバスでの戦闘を終結させようとした失敗に終わった試みとして記憶されている。それは技術的には正しいが、戦略的には不完全だ。またミンスク合意は、より大規模な戦争を防ぐ可能性があった政治的解決を目指したヨーロッパ最後の主要な試みでもあった。後に、アンゲラ・メルケル首相はこの合意により、ウクライナが軍隊を強化する時間を得られたと述べた。主要立案者の一人が、ミンスク合意を、一方の側を武装させる一時的な休戦と理解していたのであれば、当時の外交史は誠意ある解決の物語ではなく、引き延ばしの物語だ。休戦期間中、訓練は拡大し、武器が到着し、情報協力は深まった。ウクライナ軍はより有能になり、NATO軍との連携もより緊密になった。ロシアの視点から見れば、戦略時計は逆方向に動いていた。モスクワが待てば待つほど、欧米諸国と連携するウクライナ軍は強くなった。これはロシアが侵攻を余儀なくされたという意味ではない。国家は常に選択肢を保持している。これはロシアが利用できる選択肢が時間とともに狭まっていったことを意味する。

 外交は、相容れない二つの安全保障構想を調和させるためではなく、どちらか一方が自らの望む現実を押し付けるほど強力になるまでの期間を乗り切るために益々利用されるようになっていった。2022年2月は不可解な断絶ではなかった。それは、欧州安全保障体制に蓄積された矛盾がもはや抑えきれなくなった瞬間だったのだ。

 かつて否定していたものを、今になって構築しているヨーロッパ。

 2026年8月24日、ウクライナは独立回復35周年を迎えた。欧州理事会議長のアントニオ・コスタはキーウに立った。イギリスのアンディ・バーナム首相は首相就任後初の外遊先としてウクライナを訪れた。北欧諸国とバルト諸国の首脳は前日ウクライナに到着し、ウクライナはEUとNATOに属するべきだと宣言した。欧州委員会は防空、ミサイル、弾薬、レーダーのために更に61億ユーロを承認した。イギリスは、ウクライナが長距離ミサイルを国内で組み立てられるよう、ストームシャドウ/SCALPファミリーのイギリス製部品に関する機密情報を公開することに同意した。有志連合も同日会合を開いた。

 EU自身の数字によれば、ロシア侵攻以来の支援総額は2200億ユーロを超えている。2026年から2027年にかけての900億ユーロのウクライナ支援融資のうち、約600億ユーロが軍事目的、300億ユーロが財政支援に充てられる。アンカラで2026年の軍事援助として700億ユーロをNATO加盟国は約束した。これはもはや緊急応急処置ではない。恒久的軍事関係の構築だ。ここに痛烈な皮肉があり、それを容赦なく述べなければならない。ヨーロッパは今、公然と、産業規模で、モスクワが長年受け入れないと言い続けてきたウクライナと欧米諸国との戦略的関係を構築している。これはウクライナの国家性について、ロシアが正しいということを意味するものではない。戦争の道義的責任がクレムリンにあることを意味するものでもない。予測は正当化ではない。だが、警告は想像上のものではなかったことを意味する。

 欧米諸国は自陣に留まらなかった。条約の拡大、協力関係の構築、そしてウクライナを欧州防衛システムの生産拠点として東方に進出した。ロシアは武力で応じた。これらの動きのうち、一つは主権選択の原則に基づく合法的なものだった。もう一つは侵略戦争だった。どちらも確かに動きだった。片方だけが出発点から動いたと装おって、欧州は同じ試練に何度も失敗し続けているのだ。

 決して答えられなかった問い

 ロシアの警告を無視する当初の論拠は、モスクワには近隣諸国の同盟関係に正当な拒否権はないというものだった。現在、ウクライナ関係の軍事化を正当化するために用いられている論拠は、ロシアが二度とこのような形でヨーロッパを脅かすのを許してはならないというものだ。どちらの論拠にも、現実的な懸念が含まれている。だが両者を合わせると、ヨーロッパの失敗が明らかになる。ヨーロッパは、一方の主権に基づく同盟関係の自由が、他方からは存亡に関わる軍事的脅威とみなされる状況で、いかにして永続的安全保障秩序を構築するかという根本的問いに決して答えを出さなかった。その代わり、ロシアの認識は願望だけで、消し去れると想定していた。だが現実はそう簡単にはいかなかった。

 主権は地理的制約をなくすものではない。道徳的確信は軍事的現実を消し去るものではない。国家は同盟に参加する権利を持ちながら、別の核保有国が最後の緩衝地帯とみなす地域に依然存在し得る。この二つの事実を同時に受け入れようとしない政策は、原則に基づかない不完全な政策だ。ウクライナの独立は現実のものだ。ウクライナ国民はそれを維持するために並外れた犠牲を払ってきた。それは無条件に認められるべきだ。いずれにせよ、その独立を取り巻く戦略的環境は変化した。1991年のウクライナは、権力中枢の間に位置していた。2026年のウクライナは、ヨーロッパの戦争産業、防空、長距離攻撃兵器の生産と、政治的アイデンティティに組み込まれつつある。独立記念日にキーウに集まったヨーロッパ指導者たちは、単に国家の記念日を祝っていただけではない。ウクライナの安全保障がヨーロッパ自身の安全保障に吸収されたことを彼らは確認していたのだ。それがモスクワが描いた目的地だ。ヨーロッパはその描写を拒否し、その後、より長く血なまぐさい道のりを経てそこにたどり着いた。

 問題は、それら警告が道徳的に魅力的だったかどうかではない。戦略的に現実的なものだったかどうかだ。もしそうだったとすれば、この戦争はロシアによる侵攻とウクライナの抵抗の物語にとどまらない。それはまた、30年間東へと進軍し、東へ進軍することに何ら悪影響はないと自らに言い聞かせ、今や自らが占める地位を守るため血と財産を費やしている欧米安全保障体制の物語でもある。

 どちらがどちらに陣取ったのか?

 同盟は東へと移動した。ロシアは侵攻で応じた。ウクライナは、両者の決断の代償を払う地域になっている。欧米諸国はロシアに屈服する必要はなかった。地図を理解する必要があったのだ。そこには違いがある。そして、その違いこそが、ヨーロッパが書き留めることを拒んできた最も高くついた教訓なのだ。

 フィル・バトラーは政策研究者、評論家、政治学者、東ヨーロッパ専門家で、最近のベストセラー、Putin’s Praetorians(プーチンの近衛兵)」などの著書がある。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/08/29/they-backed-russia-into-the-corner-knowing-what-would-happen/

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 東京新聞 朝刊 特報面 こちら特報部  
 迎撃ドローン納入支援で「楽天離れ」

 戦争の流れに飲み込まれない

 平和の価値観守る◆小さな選択肢の積み重ね

 軍事技術と民間「表裏一体」

 過ち犯そうとする企業
 止められる消費者

 米中にAI・宇宙分野で後れ、焦り
 UIチャンネル 東アジア共同体研究所
時事放談(2026年8月) 孫崎享 × 鳩山友紀夫 1:09:25
 後半で孫崎氏が北方領土に関する国際法上の事実を解説されている。

2026年8月31日 (月)

35年間の従属を経て、欧米諸国の代理勢力として破壊されたウクライナ



2026年8月28日
Strategic Culture Foundation

 ウクライナは炎ではない。ウクライナは欧米諸国が焼き尽くした焼け殻で、連中の卑劣な駆け引きが終わりを告げれば、やがて捨て去られることになる。

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 今週キーウで行われた「独立記念日」行事は、まさに不条理劇だった。記念式典は、おぞましい嘘とプロパガンダに基づいていた。キーウの国民は、独立や主権や民主主義と何の関係もない欧米帝国主義の野望に操られた腐敗したエリート連中に残忍な人権侵害を受けてきたのが真実だ。

 8月24日(月)、ウクライナの首都に欧州各国当局者が集まり、1991年のソビエト連邦崩壊の中、ウクライナが国家として独立を宣言して以来お35年を祝った。

 この出来事を何か肯定的で意義深いものに見せかけようとするありきたりな努力にもかかわらず、悲しい現実として、祝うべきことなど皆無だ。ロシアという兄弟国と対立させることにより、ある国とその国民が意図的に破壊されたのが恐ろしい真実だ。

 注目すべきことに、象徴的なことに、今週キーウに集まった外国要人の出席状況は今ひとつで、この日に華やかさと厳粛さを与えようとする下手な試みを裏切るものだった。

 催しの進行は空虚で形式的なものに感じられ、実質も信憑性も欠けていた。報道では、トランプ政権を代表するアメリカ当局者は出席しておらず、欧州の出席者も二流だった。EUの最高位代表は欧州理事会議長のアントニオ・コスタ(アントニオって誰?)だった。欧州委員会委員長のウルズラ・フォン・デア・ライエンとEU外務・安全保障政策上級代表のカヤ・カッラスは欠席。フランスのエマニュエル・マクロン大統領とドイツのフリードリヒ・メルツ外相も姿を見せなかった。これらの政治家は、通常、連帯を示すためキーウ訪問に熱心だ。このような重大な機会に彼らが欠席したことは、対ロシア代理戦争としてのウクライナへの敗北主義の匂いが漂っている。

 今週キーウで最も注目を集めたのは、イギリスのアンディ・バーナム首相だった。彼は聖ソフィア大聖堂の外で群衆を前に演説し、選挙で選ばれていないウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の隣に立った。ゼレンスキー大統領は2024年5月に任期が満了して以来、選挙実施を拒否し続けているが、腐敗した彼の政権は、ヨーロッパの民主主義として称賛されている。

 バーナム首相にとって初の海外訪問で、演説は国際的印象を与える絶好の機会になるはずだった。だが首相は、まるで小学生のように、ウクライナの誇大妄想的成果を称賛する原稿を丸暗記して読み上げるだけだった。演説は陳腐な誇張表現の寄せ集めで、約束していた国内経済問題への優先的取り組みを怠ったかどで多くのイギリス国民から嘲笑を浴びた。

 結果的に、キーウに集まった無名の面々は、過去35年、ウクライナの本当の薄っぺらな意義を反映するのに、むしろふさわしいものだったと言える。

 ウクライナの超国家主義者や欧米諸国の寛容さといった言説とは裏腹に、「国家」としてのウクライナの地位は、比較的最近になって人為的に作られたものだ。ソ連から分離した後、1991年に作られた国境は、主張されているように何世紀も前のものではなく、むしろソ連指導部が過去数十年にわたって行ったゲリマンダーリングや駆け引きの結果だ。例えば、クリミアは、ロシア嫌いの超国家主義者に対抗する手段として、1954年にクレムリンの命令でウクライナ・ソビエト共和国の一部になった。クリミア半島やウクライナの他の地域は、何世紀にもわたりロシア帝国の一部だった。ウクライナ自体(ロシア語の「ウクライナ」に由来)「国境地帯」あるいは単にロシアの一地域として知られていた。

 従って、1991年の独立宣言は、そもそもある種捏造だったと言える。クリミア半島やドンバス、ヘルソン、ザポリージャといった地域がロシア連邦に復帰している現状は、歴史的に自然な構成への回帰なのだ。議論の余地はあるかもしれないが、ロシア主権領土には、オデーサ、ミコライウ、ハルキウ、スムイの統合も含まれるとされている。

 「ウクライナ」と呼ばれるものは、戦争の重圧と、1991年に宣言され、欧米諸国に冷酷に操作された虚偽の領土主張で崩壊しつつある破綻国家に過ぎない。

 けばけばしい華やかさや演説で隠しきれないのは、ウクライナが悲惨な破綻国家に成り下がってしまった事実だ。人口は1991年の5200万人から、現在では推定2000万~2500万人へと半減し、多くの人々が国外へ、主にロシアとヨーロッパ各地へ逃れている。

 2022年以降のNATOの対ロシア代理戦争がその傾向を確実に加速させたが、この崩壊は1991年から始まっていた。

 意志薄弱なイギリスのバーナム首相は、台本通りの空想的演説を忠実に口にし、ウクライナ人は35年前に「自らの運命を掌握した」と主張した。歴史を歪曲して、第二次世界大戦でのナチス・ドイツに対するイギリスの「勝利」と、「ロシア侵略」に対するウクライナの抵抗を彼は同列扱いした。

 世間知らずのバーナムは歴史の代わりに漫画を読んでいる。彼が民主主義国家として称賛するキーウ政権が、ナチス協力者を称えて、通りや軍の連隊に連中の名前をつけていることに彼は気づいていないのか?

 1991年以来、ロシアに対抗するための欧米代理勢力として、アメリカ、イギリスや他のNATO加盟諸国が、ウクライナを手駒にしてきたのは紛れもない事実だ。2004年のいわゆるオレンジ革命は、欧米諸国による浸透工作と巨額資金提供により反ロシア政治が育成された結果で、ロシア語とロシア文化の抑圧と、ナチス・ドイツと協力関係にあったウクライナ・ファシズムの復活を招いた。

 2014年のマイダン「民衆蜂起」は、ロシアとの対立という秘密計画を推進するべく、ウクライナ民主主義に対して欧米諸国が支援するクーデターを隠蔽するための、またもや虚構の口実だった。政権はNATOによって武装化され、訓練を受け、最終的に代理戦争へと発展し、2022年に全面的紛争にエスカレートした。

 ウクライナは、イギリスのバーナムが馬鹿げた主張をするような「明るい未来を持つ活気に満ちた民主主義国家」ではない。こうした欧米諸国の嘘こそ、ウクライナの苦境の原因で、ウクライナを袋小路へ導いているのだ。

 ウクライナは、欧米諸国の帝国主義的野望によって犠牲にされた国で、ナチス協力者を称賛し、正当な政治的反対者を投獄する腐敗した政権に支配される国だ。毎日、ゼレンスキーの暴力団にウクライナ市民が街頭から引きずり出され、最前線の戦場に送られている。NATOによるロシアとの代理戦争が始まって5年近くで、少なくとも150万人のウクライナ兵が命を落とした。

 1991年当時ウクライナ国の一部だった領土の4分の1を制圧するためロシア軍は進軍している。

 ウクライナ側が持ちこたえている唯一の理由は、キーウ政権に欧州連合とイギリスが注ぎ込み続けている数十億ドルもの税金だけだ。

 1991年にウクライナ政治家たちが宣言した独立は、欧米諸国が容赦なく完全依存状態を搾取する不条理劇の悪夢へと変貌した。この依存状態は35年以上にわたって培われ、ウクライナは主権を失い、国民は虐殺され、資源は欧米企業に略奪され、領土は破壊された。全てウクライナの裏切り者政治家連中が、ロシアに対する地政学的策略の代理となる運命を選んだためだ。ウクライナに降りかかった事態は、欧米帝国主義勢力が引き起こした巨大犯罪だ。

 更に追い打ちをかけるように、アンディ・バーナム(アンディって誰?)のような政治屋がキーウに現れ、ウクライナは自由の炎で、ロシアの侵略からヨーロッパを守る存在だなどという全くの戯言をまき散らしている。

 ウクライナは炎ではない。欧米諸国が火を放ち、卑劣なゲームが終わればいずれ捨て去る焼け焦げた殻に過ぎない。

 ヘンリー・キッシンジャーの言葉を借りれば、欧米帝国主義の敵であることは危険だが、同盟者であることは致命的だ。

  ウクライナは、このことを身をもって痛感させられたのだ。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/08/28/after-35-years-of-dependency-ukraine-has-been-destroyed-as-a-western-proxy/

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 ウクライナ情勢を知るためテレビ番組を見たことはない。Douglas McGregor、John Mersheimer、Scott Ritter諸氏のYoutubeを見る。例えば下記のスコット・リッター氏Youtube。
Russia WIPES OUT Ukraine’s Army as Trump’s Patriot Missile Gamble Backfires | Scott Ritter

2026年8月30日 (日)

トランプ大統領の屈辱を前に「あらゆる面で!」外交政策上の勝利を模索するCIA長官

ジェフリー・シルバーマン
2026年8月29日
New Eastern Outlook

 イランを巡る挫折、停滞する中東外交と空虚な和平主張を受け、ドナルド・トランプは、真実であれ捏造であれ、自ら主張できる外交上の成果を必死に探し求めている。

 

 彼最新の策略?

 アメリカ主導の対イラン制裁にロシアを引きずり込もうとする悲惨な最後の試み。

 トランプには勝ち目のある切り札はない。モスクワにアメリカの貿易制限を強制的に履行させようとする試みは、他の分野での大幅な譲歩、つまり欧州の安全保障に関する大きな方針転換や、ロシアに対する既存のアメリカの制裁措置緩和を要求するだろう。モスクワは、重要な戦略的同盟国イランに関して妥協する動機はほとんどない。

 だが他にも要因があるかもしれない。トランプ政権のいわゆる「揺るぎないウクライナ支援」は大きな影を落としている。ウクライナ問題はモスクワがワシントンに何かを要求している問題で、イラン問題はワシントンがモスクワから更に緊急に何かを要求している問題だ。そう考えると、ジョン・ラトクリフCIA長官は、特に理にかなった特使と言えるだろう。

 最後の外交

 それは外交政策上の画期的出来事とは言えないかもしれない。だが現在のワシントン情勢では、そう言えるのかもしれない。

 結局、政権内でより知名度の高い外交担当者、すなわちトランプ大統領の特使スティーブ・ウィトコフマルコ・ルビオ国務長官の成果は明らかにまちまちで、トランプ大統領の側近連中も、モスクワやテヘランとの交渉で、統一的かつ一貫性ある姿勢をほとんど示せていない。

 もし目的が、従来の外交では対応できないほど機密性が高過ぎたり、否認しやす過ぎたり、あるいは単に政治的に扱いにくい取り決めを探ることであるなら、CIAの裏ルートは明らかに有利な点がある。

 ラトクリフは、政権のより目立つ特使たちと違い、ロシア情報機関と、あらゆる会話を正式な外交的取り組みであるかのように装うことなく対話できる。ロシアのSVR長官セルゲイ・ナリシュキンと確固たる関係があることから、人選は一層不思議でなくなる。

 そして、それがまさに核心なのかもしれない。ワシントンがモスクワにイラン問題で何らかの行動を求めているなら、モスクワもワシントンにウクライナ問題で何らかの行動を求めているはずだ。問題は、両者間に何らかの取り引きが隠されているのか、それとも単に進展を装った外交上の行き詰まりに過ぎないのかだ。

 更に、CIA長官がモスクワに僅か数時間出入りした事実は、彼の訪問が従来の外交訪問というより、伝書鳩、つまりメッセージ伝達や交渉のための任務に見えてしまう。

 タイミングが全て!

 ワシントンはロシアにイランへの圧力をかけるよう求めている。モスクワはワシントンにウクライナをめぐるロシアの国益を取り上げるよう求めている。

 CIA長官は単に最後通牒を突きつけただけではなかった。彼は要望リストを携えていた。タイミングは極めて重要で、多くの憶測を呼ぶ余地を残している。ロシアは既に、ウクライナへの情報提供と直接支援に関しワシントンに圧力をかけていた。誰も真剣な対応を期待していなかった。

 圧力や脅迫や、いじめ、あるいはマフィア式の強引な手段にロシアは屈しない。

 一方、スコット・ベセント財務長官は、イランとの貿易を断つべく尽力している。ラトクリフ長官は、この件に関して何らかの合意を取り付ける任務を負っていた可能性もある。しかし、それが実現するとは考えにくい。CIA長官がベセント長官のイラン制裁へのロシア遵守を要求するために派遣されたとは断言できない。

 分かっていることは以下の通りだ。ベッセントは8月24日に選挙運動を開始し、ラトクリフは8月25日に異例のモスクワ訪問をした。このタイミング自体が興味深い偶然、あるいは何らかの取り引きの可能性を示唆している。

 ロシアに、イランに圧力をかけてほしいとワシントンは望んでいる。モスクワはワシントンにウクライナ問題におけるロシアの国益を取り上げてほしいと望んでいる。もしこれがラトクリフがモスクワに持ち込んだ会話の内容だったら、CIA長官は単に最後通牒を突きつけただけではなかった。彼は買い物リストを携えていたのだ。

 タッチアンドゴー着陸

 今回訪問は短時間で、典型的なタッチアンドゴーだった。フライト追跡データによると、米空軍のC-17AグローブマスターIII輸送機がアメリカを出発し、ラトビアを経由して、現地時間午前10時頃にモスクワのヴヌーコヴォ空港に着陸した。僅か数時間後に同機は再び離陸した。

 ラトクリフが誰と会ったのかは公式には明らかにされていない。有力な候補は、ロシア対外情報庁(SVR)長官のセルゲイ・ナルイシキンだ。両者は2025年3月に電話で直接連絡を取り合うルートを確立し、定期的に連絡を取り合うことで合意した。

 これは通常の外交電話ではなかった。CIA長官がモスクワへ直行したことは、従来型の交渉ではなく、情報・安全保障上のルートを示唆している。

 ラトクリフがロシア情報機関関係者と会談したことをクレムリンは確認し、この接触を「前向きな進展だ」と表現した。プーチン大統領は報告は受けたものの、ラトクリフとは会談しなかった。

 CIAは依然口を閉ざしている

 トランプ大統領に「任務完了」と書かれた写真をもう一枚渡すためだけに、モスクワがテヘランとの関係を放棄する理由はほとんどない。

 皮肉にも、ラトクリフのモスクワ訪問は、ワシントンが切実に必要としているもの、つまり成功物語を既に生み出してしまったのかもしれない。CIAは何も語らない。ホワイトハウスも何も語らない。

 モスクワは当初、アメリカの航空機について何も知らないように見えたが、今ではラトクリフがロシアの情報機関関係者と会談したことを認めている。

 クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、今回会談を単に「治安機関間の接触」と表現し、こうした接触は「前向きな進展」だと述べている。プーチン大統領はラトクリフとは会談しなかったが、ペスコフ報道官によれば、結果報告を受けたという。

 それは厳密には外交上の画期的な出来事とは言えないかもしれない。だが現在のワシントン情勢では、そう言えるのかもしれない。

 経済的のけ者なのか、見捨てられた人々たのか

 この訪問は、そのタイミングが、公式説明よりも遙かに興味深いものとなっている。ラトクリフがモスクワに到着したのは、イラン孤立化を目的とするワシントンの最新作戦「オペレーション・エコノミック・アウトキャスト」をスコット・ベッセント財務長官が発表した翌日で、ロシアは依然、テヘランにとって最も重要な戦略的同盟国の一つだ。同時に、ロシアとウクライナの外交交渉は停滞しており、ワシントンはウクライナに対し、ロシアへの長距離攻撃を控えるよう圧力をかけている。

 つまり、本当の問題は、イランとの貿易を停止するようラトクリフがモスクワに伝えに行ったかどうかではない。それでは余りに弱気だ。より重要な問題は、ワシントンがその見返りとして何を提示する用意があるかだ。

 イラン問題がアメリカの問題で、ウクライナ問題がロシアの問題だとすれば、ラトクリフは異例なほど論理的な伝達役だったと言える。外交とも交渉とも言い難い、どちら側も翌朝新聞の一面を飾りたくないような内容の会話をCIA長官は巧みにまとめられる。

 トランプ大統領に「任務完了」と書かれた写真をもう一枚渡すためだけに、テヘランとの関係をモスクワが放棄する理由はほとんどない。ロシアはイランに関し、独自の利害関係を持ち、ウクライナに関し、独自の思惑があり、何よりも重要なのは、ワシントンが望むもの全てに対して独自の代償を持っていることだ。

 それは、ラトクリフ訪問という極めて小さな出来事の裏に、遙かに大きな取り引きの可能性を残している。

 ウクライナのためのイラン? 抑制のための情報機関? 譲歩のための制裁?

 まだ我々には分からない。

 そしてまさにそれが、8時間に及ぶモスクワへの小旅行をこれほど魅力的なものにしているのだ。C-17輸送機が到着し、ラトクリフは携えたメッセージを届け、ロシア情報機関はそれを聞き、プーチン大統領はブリーフィングを受け、そして輸送機は飛び立った。

 国旗も掲げず、首脳会談も行わず、握手もせず、勝利を祝う記者会見もなかった。ただ情報機関が発言するばかりで、政治家たちは大したことは何もなかったと主張するばかりだった。

 おそらく何の成果もなかったのだ。

 だが、もしワシントンがイラン、ウクライナ、ロシアと、制裁措置をまとめて外交上の勝利を得ようと本気で企んでいるなら、トランプ大統領がまだ多くの切り札を握っているため、ラトクリフは派遣されなかったかもしれない。

 彼が派遣されたのは交渉材料がかなり少なくなってきていたからかもしれない。そして、外交手段が尽きた時、最後に残された手段はC-17便で送るカードだったりするのだ。

 ジェフリー・K・シルバーマンは、フリーランス・ジャーナリストで、国際開発の専門家(理学士、理学修士)で、30年間ジョージアと旧ソ連に拠点を置いて活動している。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/08/29/cia-director-seeking-a-foreign-policy-win-in-face-of-trumps-humiliation-on-all-fronts/

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 The Chris Hedges Report
The Iran War Is the Biggest Strategic Blunder in US History (w/ John Mearsheimer) | TCHR 54:59
John Mearsheimer breaks down the current state of the Iran War, and how the conflict increasingly appears to look like the most dire strategic mistake in US history.

Chris Hedges and John J. Mearsheimer
Aug 29

2026年8月29日 (土)

ラトクリフCIA長官のロシア訪問に関するメディアの滑稽な憶測

2026年8月28日
Moon of Alabama

 水曜日、ジョン・ラトクリフCIA長官がモスクワを訪問し、ロシア治安当局者と数時間会談した。ラトクリフ長官と一行を乗せた飛行機はすぐに特定されたため、この訪問は秘密裏に行われたわけではなかった。

 会談内容について、双方から公式発表はなかった。だが、アメリカ・メディアは、多かれ少なかれ笑ってしまうような詳細情報を「漏洩」して報じた。

 まずニューヨーク・タイムズから始めよう。  
CIA長官、モスクワ秘密訪問でロシアの戦争について悲観的評価を下すアーカイブ) –ニューヨーク・タイムズ、2026年8月27日

 現職および元当局者によると、今週、ジョン・ラトクリフCIA長官は極秘裏にモスクワを訪問し、ウクライナに対するロシアの戦争の現状に関する彼の悲観的見解を非公式に伝え、ロシアの軍事的・経済的状況が悪化する前に合意するよう促したという。

 ラトクリフはロシア連邦保安庁(FSB)のアレクサンドル・V・ボルティコフ長官にメッセージを伝えた。

 プーチンの顧問たちが戦争の行方や犠牲について正直な評価を彼に伝えてきたのかどうか、CIAの専門家たちは長らく疑問視してきた。

 元情報将校のプーチンが、通常外交ルートを通じる通信よりも、CIA長官からのメッセージをより緊急かつ信頼できるものと捉えるよう期待していると一部当局者は述べた。

 ラトクリフのメッセージが、ロシアやウクライナに対するアメリカの政策変更の前兆となるかどうかは明らかではない。
 上記報告書に記載されている主張が明らかに虚偽な理由はいくつかある。

– ウクライナ戦争では、ロシア側が優勢だ。ロシア国内では、軍事的あるいは経済的状況が悪化するという本物の懸念は存在しない。

– プーチンが、噂されているように、側近たちから率直な評価を聞いていないなら、ラトクリフが話をしたプーチンの部下が、内容をそのままプーチンに「真実」として伝えるなどと一体誰が考えるだろう。プーチン大統領が本当に側近から孤立しているなら、彼に真に働きかける唯一の方法は、直接会って話すことだ。必要なら、トランプ大統領が電話をかけるだけで済むはずだ。

 – ボルトニコフは確かにロシア連邦保安庁(FSB)長官だ。だがFSBの任務は国内治安維持と防諜活動で、ウクライナ戦争とほとんど関係ない。CIAが話をする相手として適切ではない。
 – 更に、ラトクリフとの会談を確認したのは、セルゲイ・ナルイシキン・ロシア対外情報庁(SVR)長官だった。  
ナルイシキンによれば、こうした諜報機関トップとの交渉は業務の一環で、ほぼ毎週行われているという。

    「会談は開催された。これは何ら異常なことではない」とナルイシキンは断言した。「諜報機関業務
    において、管理者同士の会議、対面での会議、オンラインでの会議は日常業務の一部だ。
    だから、ジョン・ラトクリフ氏との会談も業務形式の一環だ。」

 同時に、ナルイシキンは話し合われた内容について明かすことを拒否し、それは情報機関の管轄事項だと説明した。
 ニューヨーク・タイムズ報道は明らかにデタラメで、疑念と混乱を煽るためだけに書かれたものだ。

 ワシントン・ポストが報じた今回訪問の動機とされるものに関する記事も同様に混乱している。

 対イラン戦争でアメリカは弱体化したとプーチン大統領は見ていると諜報機関報告書は述べているアーカイブ) –ワシントン・ポスト、2026年8月27日  
事情に詳しい二人の関係者によると、今週のジョン・ラトクリフCIA長官の謎めいたモスクワ訪問に先立ち、対イラン戦争で、アメリカは弱体化したとクレムリンは見ており、ヨーロッパで、アメリカ権益や同盟諸国に対する行動をエスカレートさせる好機をロシアが得ていることを示す新たなアメリカ情報があったという。

 ラトクリフとロシアの相手役の会談詳細は秘密のままだが、関係者の一人がワシントン・ポストに語ったところによると、ウクライナに対する戦争を激化させれば逆効果になるとCIA長官は、モスクワに警告したという。

 イランでの6カ月に及ぶ戦争でアメリカが弱体化したとプーチン大統領が見ていることを示唆する機密情報が出回っているが、これはテヘランに対する長期にわたる作戦の結果、部隊の即応態勢が低下し、弾薬が不足しているという報道に続くものだ。

 また機密指定されていない情報によれば、ホワイトハウスの少数当局者とワシントン・ポスト論説委員を除き、世界中の全員が対イラン戦争によってアメリカ合衆国が弱体化したと考えている。
 だが、その事実はウクライナ戦争には、ほとんど、あるいは全く直接影響を与えない。

 今回訪問の理由についてPoliticoは様々な見解を示している。  
モスクワ訪問で、イランを支援で、NATO同盟諸国を攻撃しないようCIA長官はロシアに警告した― Politico、2026年8月26日

 事情に詳しい二人の関係者によると、今週、ウクライナ侵攻の行き詰まりを受けて、特にエストニア、ラトビア、リトアニアなどのアメリカのNATO同盟諸国との対立をエスカレートさせないようジョン・ラトクリフCIA長官はモスクワのロシア当局者に警告した。

 関係者二人のうちの一人と、今回訪問について知るイギリス当局者によると、火曜日、ロシアの首都を予告なしに訪問した際、アメリカ諜報機関のトップはロシアがイランへの軍事的・経済的支援を削減するよう圧力をかけたという。
 この報道は、前述のニューヨーク・タイムズ記事同様、ロシアがウクライナで敗北しているか、膠着状態にあると想定している。だが、キーウ報道同様、全くのたわ言だ。

 更に、バルト三国や他のNATO加盟国との紛争をエスカレートさせることにロシアは全く関心がない。客観的に見れば、事態をエスカレートさせようと最善を尽くしているのはNATO側なのがわかる。

 イランに関して、アメリカがこの紛争に勝利するのをモスクワは望んでいない。中国同様、モスクワはイラン側に立っている。とはいえ、アメリカの圧力をかわすためだけでも、湾岸での紛争を長引かせることに、ある程度ロシアの利害関係があるかもしれない。

 ラトクリフ訪問に関する興味深い陰謀論が、Conservative Treehouseウェブサイトのブログ記事に掲載されている。  
物語のもう半分 ― ジョン・ラトクリフCIA長官のモスクワ訪問―Conservative Treehouse /サンダンス、2026年8月26日

 ジョン・ラトクリフCIA長官がロシアのモスクワを訪れ、セルゲイ・ナルイシキン・ロシア対外情報庁(SVR)長官に、バルト三国への報復攻撃について警告したと欧米メディアは報じている。だが、これは話の半分に過ぎない。

 ラトクリフ長官は、ナルィシキンに反撃しないようにとだけ言ったのではなく、ポーランドとリトアニア間にあるロシアの飛び地カリーニングラードに対する欧州NATOの挑発行為は、アメリカが「完全」承認したものではないとナルィシキンに伝えたのだ。

 どうやら、欧州NATOはロシアとの紛争拡大を益々煽ろうとしている一方、トランプ大統領とジョン・ラトクリフCIA長官は、生じている問題を抑え込もうとしているようだ。
 根拠のない突飛な説だが、少なくとも興味深い。

 だが、もしそれが事実だとすれば、ロシアが欧州のNATO加盟諸国を攻撃しても、アメリカは反撃しないことになる。そのような立場が持続可能だとは到底思えない。

 私の個人的推測では、今回のラトクリフ訪問は、ほぼイラン情勢に関するものだけだったのではないかと思う。

 アメリカはロシアに、イラン支援を停止するよう要請した可能性が高い。見返りとして、ウクライナ問題に関し空虚な譲歩を提示したとみられる。現米政権は合意能力に欠けることが明らかなため、そのような合意はロシアに拒否される可能性が高い。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2026/08/funny-media-speculations-about-cia-ratcliffes-russia-visit.html

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 植草一秀の『知られざる真実』
脇に置かれる被災者支援
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
NYT「ビル・ゲイツ氏、AIの危険性は巨大テック企業が認める以上に深刻だと警告. 人工知能(AI)が雇用や人命に対して重大な脅威をもたらすと強く警告。「技術的マイルストーン」(AIが開発者の制御を離れることや、生物兵器の製造法を生成することなど)を、業界が無視。

モスクワのアメリカ:顔の見えない任務に関する三つの視点



ロレンツォ・マリア・パチーニ
2026年8月27日
Strategic Culture Foundation

 CIA長官が極秘裏にモスクワへ飛んだ際、紛争の表面下で重大な動きが起きつつあった。

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クレムリンで

 2026年8月25日、アメリカ政府航空機がアンドリュース統合基地を出発し、リガを経由してモスクワへ向かった。機内にはCIA長官ジョン・ラトクリフが搭乗していた。公式発表も報道発表もなかった。この任務は、飛行追跡データと匿名を条件に話した情報源によって明らかになった。翌日、クレムリンは、ラトクリフが会談したのはロシア情報機関の高官で、プーチン大統領ではないことを確認した。プーチン大統領には会談内容についてブリーフィングが行われただけだったという。ワシントンはコメントを控えた。

 これは、2021年11月のウィリアム・バーンズの任務以来、CIA長官によるモスクワ訪問として知られる初めての事例だ。バーンズの任務は、特別軍事作戦開始の数週間前に行われた。この前例は安心できるものではなく、まさにそれがラトクリフの任務を、単なる報道ではなく解釈すべきものにしている。両首都が残した情報空白は憶測によって埋められており、地政学における憶測は既に分析の一形態だ。複数情報筋によると、議題はウクライナ、イラン、NATOのバルト海沿岸の三つだった。これらと絡み合っているのがイスラエルで、背景にはアジアの勢力バランスがある。

 それでは、互いに排他的ではなく、むしろ互いにうまく補完し合うことができる三つの作業仮説に基づいて議論を進めよう。  
協力説

 最初の解釈は最も劇的ではなく、おそらく最も確実なものだ。ラトクリフがモスクワを訪問したのは、両国の情報機関の間に直接的連絡ルートが存在し、ウクライナ紛争の最も厳しい時期でさえそれが維持されていたからだとされている。アメリカ側情報筋は、CIA長官が在任期間中ずっとロシア側関係者と連絡を取り続けていたと示唆している。この観点から見ると、今回の任務は、水面下で継続的に行われていた対話の目に見える表れと言える。

 最も重要な点は手続き上のことだ。ラトクリフ出発に先立ち、ウクライナに、月曜日から水曜日までモスクワおよびロシア北部の都市へのドローンとミサイル攻撃を停止するようアメリカは要請した。キーウには、アメリカ高官代表団がロシア領内を通過すると伝えられていた。戦術的停戦を組織する側は、たとえ短期間で限定的なものであっても、最後通牒を突きつけるためではなく、交渉担当者の安全確保と交渉の実現可能性を確保するためにそうするのだ。演出は、対立ではなく協力に基づいている。

 この仮説は、その直後に起きた出来事によって更に裏付けられる。ラトクリフがモスクワを去ってから数時間後、シリアのテロ支援国家指定を正式に撤回するとマルコ・ルビオ国務長官が発表した。これほど短期間に二つの動きがあったことは無関係とは考えにくい。中東、すなわちシリア、イランと湾岸地域と地中海を結ぶ回廊地帯は、ウクライナ問題で対立する立場にあるにもかかわらず、ワシントンとモスクワが緊張緩和に共通の関心を持つまさにその舞台なのだ。

 結局、協力に友情は必要なく、特定の課題では、対立の代償が協調の代償を上回るだけで十分なのだ。

 この解釈が正しければ、ラトクリフ訪問は単なる出来事ではなく、一つの兆候だ。つまり、和解不可能という公的言説の裏には、危機管理のための共通の枠組みが存在する証拠だ。この観点からすれば、イラン、ウクライナ、バルト三国は、複数戦線における緊張を同時に緩和することを目的とする単一過程における三つの交渉の場ということになる。  
「弱さ」説

 第二の解釈は視点を逆転させる。二つの大国が対等な立場で協力するのではなく、一方の国が窮地に陥り、もう一方の国に助けを求めているのだ。アメリカの主導権は、相対的な弱さを露呈している。

 これを裏付ける証拠はいくらでもある。ウクライナ戦争終結に向けた交渉は行き詰まり、トランプ政権は迅速な和平を約束して政治的資本を投じたが、2026年半ばの時点で約束を果たせていない。ウクライナの攻撃に関する戦術的停戦を取り決めたのはロシア特使ではなくアメリカ特使だった。キーウに既成事実を突きつけたのはワシントンだった。地政学においては、たとえわずか三日間でも、敵対行為の停止を求める側は、暗黙のうちに相手側より急いでいることを認めていることになる。

 戦術的緊急性の背後には、より深い構造的緊張が垣間見える。覇権国は、自らの中心性の衰退を認識すると、戦線を再編成するために開かれた戦線を凍結させることに関心を持つようになる。

 戦略的な過剰拡張は、成熟した帝国によく見られる典型的な病弊だ。作戦地域が多すぎ、約束が多すぎ、全ての約束を同時に履行するには資源が不足している。従って、複数戦線での休戦は、力の誇示というより、時間を稼ぎ、進行中の危機を減らし、優先順位を再調整するための再配置策となる。

 この解釈には、認識しておくべき限界がある。それは、慎重さを弱さと誤解する危険性があることだ。緊張緩和を求める声は全て必然性から生じるわけではなく、中には打算から生じるものもある。だが変革期にある帝国において、打算と必然性はしばしば一致する傾向がある。

 決定的問題は、アメリカが末期状態にあるかどうかではなく、むしろアメリカがもはや全ての戦線を同時に維持できないと認識しているかどうかだ。そして、ラトクリフの任務の遂行方法を見る限り、この認識はワシントンで確固たるものになっているようだ。
 
「欺瞞」説(とキッシンジャーの長い影)

 ロシアの歴史的記憶に根ざした第三の解釈も存在する。差し伸べられた手は罠だという仮説だ。つまり、アメリカが停戦を提案しているのは、紛争を凍結させるためではなく、態勢を立て直し、より効果的に攻撃するための時間稼ぎで、1980年代に交渉開始と同時に、ソ連内部から経済的・戦略的消耗戦を展開したのと同じパターンを繰り返すためだというのだ。

 そこにはキッシンジャー・ドクトリンの響きが感じられる。すなわち、中国に対抗するためにロシアと友好関係を築き、敵国を計算された依存状態に保ち、二大ライバル国(この場合はロシアと中国)がワシントンに対抗するために団結するのを阻止し、交渉を、和解ではなく分断の手段として利用するというものだ。モスクワとの対話は、何よりもまずロシアと中国の間に楔を打ち込む役割を果たし、アメリカが本当の体制的脅威とみなす同盟関係を緩めるための戦術的動機をロシアに与えることになる。

 アメリカ側の譲歩はすべて可逆的で低コストである一方、ワシントンが見返りに要求するだろうもの、ロシア・イラン関係の冷却化、ユーラシア枢軸の弱体化は、モスクワの構造的かつ長期的利益に影響を与える。提示されたものと要求されたものの間の不均衡こそが欺瞞の典型例だ。

 ロシアの選挙に言及することで状況はより明確になる。なぜなら敵国が国内選挙に気を取られている間に行動を起こすのは、指導部が最も脆弱で、最も行動の自由度が低い、政治的に最も脆弱な時期を選ぶことを意味するからだ。欧米諸国の働きかけに対するロシアの不信感は、歴史的に確立された事実で、モスクワの交渉担当者は欺瞞の可能性を考慮せずに交渉の席に着くことはない。1991年の記憶自体が交渉における一つの要因になっている。  
話題になっている四つの問題

 これら三つの視点は、具体的に何が議題に上がっていたのかを考察する際、互いに光を当て合う。それは四つの別々の問題ではなく、相互に関連し合う一連の器官体系だ。

 ウクライナ。これは誰にとっても最大の懸案事項で、あらゆる事柄の行方を左右する最前線だ。今回作戦の開始前にキーウに要請された戦術的停戦は、軍事的緊張の緩和がなければ、他のいかなる問題も交渉の余地がないことを示している。ウクライナこそ、他の全ての問題を左右する決定的要素だ。

 そしてイランという、利害が複雑に絡み合い、矛盾する地点がある。モスクワとテヘランの関係は、まさにワシントンが弱体化させたいと考えているものだ。ロシアにイランへの支援を縮小するよう要求するのは究極の要求で、これが協力なのか、交換なのか、それとも欺瞞なのかを明らかにするものとなる。

 もう一つの重要な問題、国際的調整の問題はイスラエルで、イラン問題と密接に関係している。イスラエルの安全保障は、中東におけるアメリカの戦略再調整の暗黙の前提条件で、ルビオのシリアに関する動きもこの観点から捉える必要がある。その理由については、これまで何度も説明してきた。

 残る問題はバルト海方面と、より広範には、ヨーロッパ全体の構造的枠組みだ。アメリカ情報機関による評価の中には、プーチン大統領のリスク計算に変化が生じている可能性を示唆するものもあり、NATO加盟諸国の結束力を試すために、ハイブリッド型軍事行動に傾倒する可能性が指摘されている。

 もしそうなら、この任務は抑止力としての役割も果たし、モスクワに決して越えてはならない一線を警告しただろう。抑止と交渉は、同一の訪問で矛盾するものではなく、諜報外交の両面を成すものだ。あるいは、EUが前進を固く決意していることを前提とすれば、戦争勃発時のヨーロッパ分割ゲームとも言えるだろう。
 
沈黙を読む

 ラトクリフの使命の強みは、逆説的ではあるが、その沈黙にある。

 公式声明のない出来事は、あらゆる観察者がそれぞれの勢力バランス観を投影するスクリーンになる。多極化世界が安定化したと信じる人々は協力関係を見て、欧米諸国の衰退を憂慮する人々は休戦の嘆願を見て、歴史を忘れていない人々は罠を見る。

 確実に言えるのはただ一つ。CIA長官が秘密裏にモスクワへ飛び、そのためキーウにミサイル攻撃停止を要請したことは紛争の表面下で何か重大な動きが起きているのだ。

 ちなみに、内部情報筋によると、もう一人著名人が同機に搭乗し、モスクワにも滞在していたとのことだ。アメリカ副大統領ジョン・D・ヴァンスだ。だが、それはまた別の話だ…。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/08/27/the-us-in-moscow-three-perspectives-on-faceless-mission/

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 東京新聞 8月29日 朝刊 国際・総合 四面  
 「アメリカ湖」大統領令に署名

 カナダ名「オンタリオ湖」

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2026年8月28日 (金)

フェドロフ事件:ウクライナ権力の亀裂の構造



ロレンツォ・マリア・パチーニ
2026年8月22日
Strategic Culture Foundation

 ゼレンスキーとの衝突は、現在の政権移行期における最初の目に見える小競り合いだ。そして、これが最後でもないはずだ。

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 何か問題が起きているのだろうか?

 2026年7月15日、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は国防大臣を解任した。表面的には、この動きは驚くべきことではないはずだ。戦争中の政府は大臣を交代させるもので、内閣改造は行政権の自然な一部で、ウクライナ国防省は2024年2月にヴァレリー・ザルジニーが解任されて以来、複数回の指導部交代を経験している。しかし、今回の解任は、これまでのどの解任とも異なる事態を引き起こした。人々が街頭に繰り出したことだ。戒厳令下の国で、大規模デモが稀で、政治的に危険な現象であるにもかかわらず、キーウでは何週間にもわたり何千人もの人々が街頭に繰り出した。

 群衆が結集している中心人物はミハイロ・フェドロフという名前だ。

 一か月後の8月18日、フェドロフ自身がYouTubeに9分間の動画を投稿し、戦時選挙の実施を呼びかけ、汚職と「あまりにも頻繁に独自のルールで運営され、自己保身に走り、変化を恐れる体制」を名指しこそしなかったものの非難した。翌日、議会はゼレンスキーが選んだ後継者を承認し、同時にウクライナの反汚職機関は、大統領府高官に対する捜査を発表した。僅か30日余りで内閣改造は低強度の政権危機に酷似した事態へと発展した。

 本稿は、既に詳細に記録されているゼレンスキー大統領とフェドロフ大統領の対立の詳細を改めて述べることを意図するものではない。本稿の目的は、より厄介な問いを投げかけることだ。この亀裂は、調達と軍事指揮を巡る些細な政府内対立に過ぎないのか、それとも、戦後ウクライナ国家のモデルと、欧州および大西洋体制への統合を巡る競合する政治、経済、制度的ネットワーク間のより深い闘争の最初の顕現なのか。検証すべき仮説は、フェドロフが、デジタル変革、防衛技術生態系、西側諸国政府および機関との関係と、欧州の資金援助メカニズムを通じて、大統領府とは独立して機能する権力ネットワークを構築したというものだ。私はこの仮説を事実として提示するものではない。検証すべき命題として扱い、記録された事実と推論、憶測、あるいは単なる非難を厳密に区別する。
 
亀裂

 一連の出来事は正確に再現できる。フェドロフは2026年1月14日、副首相兼デジタル変革大臣の職位から国防大臣に就任した。彼は6ヶ月間その職を務めた。7月15日、彼は「コレツキー政権」の誕生につながる内閣改造の一環として解任された。公式には、最高司令官オレクサンドル・シルスキーとの連携がうまくいかなかったためとされている。だが、この公式正当化は、その後の出来事に照らし合わせると説得力に欠ける。抗議の圧力により、7月21日、ゼレンスキーは自らシルスキーを解任し、ミハイロ・ドラパティを後任に据えたが、フェドロフを復職させなかった。もし問題が両者間の摩擦だったら、どちらか一方を解任すれば十分だったはずだ。だが、それでは不十分だった。

 7月20日、更に衝撃的な出来事が起きた。シルスキーはMilitarnyi紙に声明を発表し、フェドロフに謝罪するとともに、両者間に対立とされるものがあったという報道に驚いたと述べた。「大臣と私が対立していたと知って驚いた」。この否定は、もし真に受ければ、解任の公式見解を覆すものとなる。この瞬間から、ウクライナ報道機関における主流論調は一変した。本当の理由は、防衛調達契約にフェドロフが介入したこと、つまり既得権益に影響を与える調達制度の改革を試みたことだとされたのだ。フェドロフ自身も、その後の数週間で、数十億ドル規模の調達制度の改革こそが解任の要因の一つだと指摘した。

 こうして、まず確かな事実関係が一つ明らかになる。公式発表では、この出来事は説明されていない。シルスキー解任とフェドロフ復職、フェドロフの公然たる否定、そして物語が調達へと方向転換したことは、問題となっていたのが、二人の官僚間の個人的相性ではなかったことを示している。しかし「個人的問題ではなかった」からといって「国境を越えたネットワーク間の争いだった」とは限らない。この二つの命題の間に、分析の全範囲が広がっているのだ。
 
しかし、このフェドロフとは一体何者なのか?

 この対立の規模を理解するには、この人物の異例な性質を評価する必要がある。フェドロフは1991年生まれ。2019年、28歳でウクライナ史上最年少の大臣となり、デジタル変革を担当した。彼は2019年にゼレンスキーを大統領に押し上げたデジタル・キャンペーンの立役者で、2026年までゼレンスキー政権最初の内閣の最後の生き残り閣僚だった。7年間、政府中枢にいた。地域的基盤もなく、伝統的政党の支援もなく、ノーメンクラトゥーラや軍部での経歴もない。彼の政治資本は、これまでのウクライナの支配階級全体と全く異なる性質のものだ。

 中心仮説が本格的にその足場を築くのは、まさにここだ。エリート理論は、伝統的資源(票、支持基盤、官僚機構、オリガルヒの富)の支配に基づく権力と、技術的専門知識、国際ネットワーク、機能的正当性に基づく権力形態を区別することに慣れさせてきた。フェドロフは明らかに後者の範疇に属する。彼の権力的台頭は、特定地域における深い地盤からではなく、インフラの発展、すなわち国家のデジタル・サービスと技術防衛の発展から生まれた。このモデルでは、権力は世襲でも金銭で買われるものでもなく、設計され、管理される。そして、それはほぼ定義上、独自の支持基盤(利用者、開発者、起業家、投資家、官僚)を生み出す権力形態で、それは大統領選挙の有権者とは一致しない。

 しかし、方法論上の注意点をすぐに指摘しておかなければならない。チャタムハウスは、フェドロフが「大統領選への野望を公に表明したことは一度もない」と指摘しつつも、彼の政治的影響力が高まっていることは認めている。世論調査では、彼はゼレンスキーに次ぐ支持率だが、他の多くの候補者より上回っている。キーウ国際社会学研究所の調査によると、フェドロフへの信頼度は6ヶ月間で38%から50%に上昇したのに対し、ゼレンスキーは61~62%前後で安定している。別の世論調査では、仮に決選投票が行われた場合、フェドロフがかつての上司ゼレンスキーを破る可能性を示唆している。これらの数字は、潜在能力を反映したもので、完全に確立された政治組織を反映したものではない。この違いは極めて重要で、最後まで念頭に置いておく必要がある。

 フェドロフの二つの経歴、デジタル政府と国防を結びつける架け橋こそが彼を根本的に新人物たらしめているのだ。2020年に立ち上げられたアプリ兼ポータル「Diya」は現在約2100万人のユーザーに利用され、デジタルID、企業登録、社会保障給付や物的損害の記録といった戦時サービスなど、100以上の公共サービスを提供している。Diyaは単なるガジェットではなく、市民と国家の関係を再定義するIDおよびデータ・インフラで、技術ガバナンスの言葉で言えば、軍事機能を含む他の国家機能を構築できるプラットフォームを構成するものだ。

 フェドロフにとって、デジタル・ガバナンスから軍事技術への移行はキャリアの飛躍ではなく、同じ論理を異なる領域に適用したに過ぎない。彼が国防省にもたらす約束は、公共サービスに適用してきたのと同じデータ駆動型手法を軍事にも適用することだ。しかし、ここで彼は既成勢力、すなわち軍の官僚機構、伝統的な調達と、参謀本部からの抵抗に直面する。彼が職を失う原因となったと彼が考える調達改革とは、ウクライナ国家の中で最も不透明で裕福な部門に、透明性とデジタルによる仲介排除の理念を適用したことだ。戦時経済では、データと調達の流れを支配する者が本当の権力を握る。まさにそこで対立が勃発したのも当然のことと言える。  
ウクライナの新たな防衛経済

 フェドロフのネットワークの中核を成すのは、Brave1という名の組織だ。2023年4月に設立され、フェドロフ自身が推進するこの組織は、国営クラスターで、軍事調達と連携した助成金、試験、認証、マッチングを通じて、防衛関連新興企業への資金提供と成長促進を行っている。Brave1は企業ではなく、デジタル変革省、軍、参謀本部、民間企業間の連携プラットフォームだ。設立から最初の2年間で、総額20億フリヴニャを超える540件以上の助成金を交付し、プラットフォームに登録された1,500社以上の革新的企業からなる生態系を構築した。2025年度の国家予算では、防衛技術関連助成金に約30億フリヴニャが割り当てられた。

 分析的に決定的な要因は、公人ではなく、資金調達のハイブリッド構造だ。Brave1内のウクライナ企業は、「投資デモデー」を通じて民間資本や国際ベンチャー・ファンドを誘致している。このデモデーでは、企業と投資家のマッチングにより、数百万ドル規模の取引が成立する。AI搭載ドローン群ソリューションを開発するSwarmerは、アメリカ投資家主導で1,500 万ドルのシリーズAラウンドを完了した。2026年3月、Brave1は16社のウクライナの新興企業をアメリカの六都市に派遣し、ベンチャー・キャピタリスト、防衛大手、政府関係者にプレゼンテーションを行った。同じ月、NCIAを通じてNATOと協力し、対ドローン・システムに関する1,000万ユーロの提案募集を開始した。この構造にネットワーク理論を適用すると、橋渡し役が浮かび上がる。フェドロフは、ウクライナ国家、欧米民間資本、NATO防衛産業、国際投資家コミュニティの交差点に位置している。それはまさに、大統領府とは独立した正当性と資源を生み出す種類の地位だ。

 情報源が語っていないことを正直に認めなければならない。フェドロフがBrave1の企業を「支配」している、あるいはこのクラスターが彼の個人的顧客として財政的に機能しているという文書による証拠はない。Brave1は公的助成金制度に基づく国家プログラムで、新興企業は非公開の評価額を持つ民間企業だ。証拠が裏付けているのは、より微妙で興味深い仮説だ。Brave1を中心に、起業家、エンジニア、投資家からなる支持基盤が形成されており、その経済的存続は、フェドロフが政治的に体現する仲介者を排除した技術防衛というモデルの継続に依存している。これは個人的権力のための組織ではない。フェドロフを自然な拠り所とする組織化された利益団体だ。この二つの違いこそが、真剣な分析と陰謀論を分けるのだ。
 
手がかりを追う

 ここで議論はより微妙な領域へ踏み込む。厳密な分析と陰謀論は表面上似ているものの、厳密に区別されなければならない領域だ。問題は「フェドロフはEU資金によるNGOを支配しているのか?」ではない。そのような主張を裏付ける情報源は存在しない。正しい疑問は構造的なものだ。歴史的に未曾有の規模の外部資金が、資金受領国内の特定の機関、プログラム、ネットワークを通じて流れ始めると、国内の権力バランスはどうなるのか、という疑問だ。

 これら数字は、この現象の規模を示している。ウクライナ支援基金は、2024年から2027年までの期間に総額約500億ユーロのEUプログラムだ。2026年6月時点で、ウクライナは既に295億ユーロを超える予算支援を動員しており、これは計画の下で利用可能な総資金の約77%に相当する。この500億ユーロのうち、約385億ユーロは「資金と引き換えの改革」原則に基づく改革の実施と結び付けられており、ウクライナ支援基金が実施されない場合、支出が停止される可能性がある。2026年7月30日、理事会は、2026年分として更に83億ユーロを追加し、法の支配と腐敗防止に関する新たな改革措置を導入するため、支援基金を修正した

 政治的な要点トは、ウクロインフォルムが指摘する通り、財政条件が「ウクライナをEU加盟へと導く手段の一つ」になりつつあることだ。言い換えれば、ブリュッセルが要求する改革、デジタル化、公共調達の透明性、汚職対策、電子政府を実行できるウクライナの人々は、資金提供者の目に構造的に価値が高く映るようになる。そして、この点において、フェドロフの経歴は、欧州の条件付け政策の趣旨と驚くほど正確に合致している。ディヤは、まさに欧州委員会が模範として称賛するインフラで、防衛調達改革は、まさにウクライナ計画が報いる汚職対策だ。欧州機関が彼のような人物を好意的に見る理由を説明するのに陰謀論は必要ない。条件付けの論理だけで十分だ。

 しかし、まさにここで、この分析全体における最も重要な注意点を述べなければならない。制度的優遇は政治的な同盟ではない。改革派の姿勢と条件付き政策の一致は、依存関係ではなく、ましてや操作でもない。入手可能な資料は、利害と政策課題の構造的な一致を示しているが、ブリュッセルとフェドロフ間の縁故主義的関係を示しているわけではない。後者を前者に読み取ろうとする誘惑こそ、まさに本コラムが避けようとしている誤りだ。我々が言えるのは、改革という経路を通じてウクライナに流入する欧州資金は、客観的に見て、ある種のテクノクラート的かつ改革派エリート層に報いていることだ。フェドロフは、その最も典型的な例だ。これにより、彼は大統領府が制御できない、(選挙によるものではない)機能的な正当性の源泉を得ている。

 私が「資金の流れを追え、人の流れを追え、組織の流れを追え」と呼ぶ手法では、各ノードについて、誰が資金を提供しているのか、誰が受け取っているのか、どの組織やプログラムを通じて資金を提供しているのか、そして国家、企業、市民社会の間で人員にどのような重複があるのかを問う必要がある。フェドロフの事例に、この手法を適用すると、正直ではあるが、部分的な結果が得られる。組織的重複は明らかで、文書化されているが、現在の公開情報に基づくと、具体的な人員の重複はそれほど明確ではない。

 組織的つながりは明らかだ。フェドロフはデジタル変革省から国防省へ、同じチームと手法を持ち込んだ。Brave1は、公務員と民間資本を同じテーブルに集めるハイブリッド組織だ。政府職員が民間部門に移り、民間部門幹部が政府に戻り、EUプログラムがウクライナの組織に資金を提供し、その組織が政府にコンサルタントを提供する「回転ドア」現象は、ウクライナの防衛技術生態系においては、非難ではなく構造的な可能性だ。しかし、この可能性を具体的な個人の名前を挙げたリストに変えるには、ここで引用したジャーナリズムや機関の情報源が提供する以上の文書、企業記録、取締役会の開示、検証済みの経歴が必要になる。私は推測で埋めるのではなく、そのギャップを指摘する。これがネットワーク分析とパンフレットの違いだ。

 とはいえ、フェドロフの政治的影響力の国境を越えた性質を明らかにする上で、特筆すべき関係が一つある。それは、イーロン・マスクとの直接的な関係だ。2022年2月、フェドロフは公式要請を通じてスターリンク稼働を実現させた。そして2026年2月、スペースXにロシアのシステムによる利用を拒否するよう説得したのも、またしてもフェドロフだった。外交政策研究所の研究員は、この動きをロシア指揮統制への影響という点で「真に決定的なもの」と評している。フェドロフは、自身の解任について発言した投稿で、スターリンク利用阻止を自身の在任期間最初の功績として挙げている

 戦争における衛星インフラを掌握する人物と直接交渉できる大臣は、定義上、その関係ネットワークが国境を越える人物だ。これは単なる些細なことではなく、フェドロフの人脈が、大統領府が仲介することも所有することもできない国際的側面を持っている証拠だ。
 
ゼレンスキー問題

 仮にゼレンスキーがフェドロフを政治的脅威とみなしているとすれば、なぜそうみなすのか? 競合仮説分析の論理に従えば、5つの競合する説明を検証する価値がある。つまり、どれが最も説得力があるかではなく、入手可能な証拠に最も耐えうるかが問われるのだ。

 まず最初に提示できる仮説は、官僚間の対立というものだ。この衝突は、調達、軍事政策、指揮系統と、人格に関わるものだった。これが公式見解だ。しかし、シルスキーの否定と、最高司令官解任後にフェドロフが復職できなかったことは、この見解を著しく損なう。もしそれが全てだったら問題は既に解決していたはずだ。この見解は、部分的要素としてしか残っていない。

 第二の可能性として、制度的な対立も否定できない。フェドロフは既得権益に固執する軍官僚主義に対し、技術近代化を提唱した。この仮説は十分裏付けられている。調達改革、参謀本部との摩擦と、データ主導型の手法に対する体制側の抵抗は、いずれも十分立証されている。これは多くのことを説明できるが、なぜこの対立が政権危機にまで発展したのかは説明できない。

 しかし、これは政治的な後継者問題の可能性もある。フェドロフは戦後のウクライナで影響力を持つ人物としての地位を築きつつあったからだ。世論調査と、何よりも8月18日の選挙実施の呼びかけは、この仮説に、7月時点にはなかった根拠を与えている。8月に公開された動画は、7月の解任を遡及的に再解釈するもので、一見経営上の争いに見えたものが、彼の「政界進出」という観点から見ると、ライバルを先制的に排除するための策略だったように見える。

 競合する国際ネットワークの関与も同様に考えられる。フェドロフは、大統領職とは無関係に、正当性と資源を提供する欧州および欧米諸国の制度的ネットワークに益々深く組み込まれていった。ここでの証拠は構造的かつ状況的なもので、EUの条件付き政策との連携、Brave1における彼の中心的役割と、マスクとの関係などが挙げられる。だが、私が主張してきたように、好意や連携は依存や委任を意味するものではない。この仮説は更なる証拠なしに支配的説明として位置づけるのではなく、一要因として念頭に置くべきだ。

 あるいは、これら四つの要因が複合的に作用した可能性もある。制度的対立が引き金となり、公式な隠れ蓑となった。後継者問題が事態を深刻化させた。国際ネットワークがフェドロフに自信と資金を与え、他の候補者の任命を拒否するに至った。そして官僚機構が世論を操作した。これら四つの要因のどれか一つだけでは内閣改造が憲法上の対立に発展した理由を説明できない。これら要因が相互に作用し合った結果、初めて説明がつくのだ。  
軍事問題、ブリュッセルと、仮説上の戦後時代

 2026年7月21日のシルスキー解任と、ドラパティの後任就任は、こうした背景を踏まえて理解されるべきだ。シルスキーは旧来の軍部を象徴する人物で、批判者からは前線での甚大な損害を非難されていた。彼とフェドロフの対立は、本質的には二つの戦争観の衝突だった。一つは、大衆動員と階層的指揮系統に基づく伝統的軍事体制の戦争観、もう一つは、ドローン、自律システム、電子戦、データに基づく技術的手法の戦争観だ。ゼレンスキー大統領が抗議に直面して、シルスキーを犠牲にせざるを得なかったにもかかわらず、長距離ドローン攻撃作戦を指揮したSBU(ウクライナ保安庁)のベテラン、イェウヘン・フマラを新たな国防大臣に選んだ事実は多くのことを物語っている。

 ゼレンスキーはフェドロフの技術的思惑を拒否したのではなく、その主導権を握っていると主張し、フマラが技術的な攻撃作戦で「未曾有の」経験を積んだこと、そしてウクライナ防衛は長距離能力に重点を置くべきだと強調した。これはまさにフェドロフが主導してきた分野だ。大統領はプログラムを吸収して、立案者を排除した。技術は保持し、それを自律的権力の基盤に変えた人物を切り捨てたのだ。これは、いかなる世論調査よりも、問題となっていたのは、防衛政策自体ではなく、誰が政治的にそれを体現するかという点だったことを示す最も強力な状況証拠だ。

 ここで有用な分析範疇は、アウトソーシングされた国家建設という概念だ。交戦国の財政ニーズの3分の2が、改革パッケージと連動した資金提供を行う外部金融機関によって賄われる場合、その金融機関は必ずしも国内政治に「干渉」するわけではないが、客観的に見てその誘因を再構築する。欧州委員会によれば、ウクライナに対する欧州および全ての加盟国の資金総額は1930億ユーロを超えており、2026年から2027年のパッケージだけでも、IMFが推定する二年間の需要の3分の2をカバーしているが、これも法の支配と腐敗防止策に関する厳格な条件が付されている。

 この資金の流れがもたらす構造的な影響は、資金提供と干渉を同一視することなく、客観的に評価されなければならない。欧州の資金はウクライナ国家全体を強化するが、その構成要素全てを同じ程度に強化するわけではない。それは、測定可能な改革を実行できる省庁を強化し、ブリュッセルの言語を話すテクノクラシーを強化し、条件として求められる市民社会組織や反腐敗プログラムを強化し、間接的に、欧州の保証、投資、協力を得る防衛技術企業や起業家を強化する。本質的に、それは選挙や大統領制とは異なる正当性の中心を作り出す。それは投票ではなく、外部の資金提供者による承認から得られる正当性だ。フェドロフのような人物が活躍できるのは、まさにこの空間においてだ。ブリュッセルの誰かが彼を選んだからではなく、資金提供の構造そのものが、彼が代表するタイプの人物に有利に働くためだ。

 従って、他の全てに意味を与える問いは、どのウクライナのエリートが復興期に国家を支配するのに最も適した立場にあるのかという点だ。ウクライナの戦後期間は、選挙、憲法上の正当性、数千億ドルと見積もられる復興契約、EU加盟、防衛産業政策、民営化、外国投資、反腐敗改革、地方分権化など、重大な意思決定の場になるだろう。これらの流れを管理する機関を掌握する者が2030年のウクライナでの真の権力を握ることになる。

 少なくとも五つの勢力が存在する。ゼレンスキー大統領のネットワークは、現在行政権を掌握しているが、その基盤である戦争指導者の正当性は、和平が近づくにつれて衰退しつつある。2026年5月の世論調査では、ウクライナ国民の67%が戦争終結後にゼレンスキー大統領が交代すると予想していることが示されている。軍指導部では、現在駐ロンドン大使を務め、信頼度ランキングで常にトップに立つザルジニーが最も手強いライバルだ。フェドロフの技術ネットワークは、デジタル化、革新的な防衛、欧州からの資金援助と、国境を越えたネットワークを基盤としている。市民社会と改革ネットワークは、寄付者に支えられている。そして、新旧産業界と地域における利害関係者も存在する。こうした観点から見ると、2026年7月から8月にかけての衝突は、まだ本格的に始まっていない戦後体制を巡る陣地戦における先鋒的小競り合いに過ぎない。

 8月18日の選挙実施の呼びかけは、これまで暗黙のうちに示されていたことを明るみに出した動きだ。「ウクライナ国民が自分たちの政府を選ぶ時期をプーチンに決めさせてはならない」とフェドロフは述べ、選挙実施の呼びかけを説明責任の問題と結びつけた。「権限を与えられたなら、結果に責任を負う。予算を与えられたなら、何が達成されたかを示すべきだ」。キーウのある評論家はこう要約した。フェドロフは、かつての上司との関係において「ルビコン川を渡った」。戒厳令下での選挙実施の呼びかけは、モスクワがゼレンスキー大統領の正当性そのものに異議を唱えている(任期は2024年に満了)中では、両刃の剣となる動きだ。大統領を客観的に弱体化させる国内戦線を開くことになるだけでなく、汚職対策機関が大統領府を標的にしているまさにその時に行われる。このタイミングは連携を証明するものではないが、戦場を明確に示している。
 
ポップ心理学のちょっとした豆知識

 自己反駁を試みない論文は分析ではなく主張だ。少なくとも六つの代替解釈を真剣に検討する必要があり、それぞれについて、それを裏付ける、あるいは反証する証拠を示すべきだ。

 第一に、フェドロフのネットワークは国際協力の自然な結果で、政治組織ではない。彼の組織と外部資金提供者との間の運営上の連携が明らかになれば、この主張は否定されるだろう。一方、彼を取り巻く正式な政治組織が存在しない事実が、この主張を裏付ける。現在までのところ、後者の主張の方が前者より広く支持されている。

 第二に、EU資金は透明性が高く、制度的に監視されており、縁故主義を生み出すことはない。これは、当該基金の監査メカニズムにより裏付けられている。特定プログラムが個人的なネットワークに資金を提供している証拠があれば、この透明性は損なわれる。入手可能な証拠は、形式的な透明性を示している。

 第三に、ゼレンスキーとの対立は、本質的に個人的かつ心理的なもので、後援者と長年仕えてきた弟子との間の亀裂だ。これは人間的レベルではもっともらしいが、大規模な抗議活動や選挙実施の要求を説明するには不十分だ。

 第四に、軍事紛争がほぼ全てを説明し、残りは解釈上の余地に過ぎない。この見解は7月21日までは通用するが、彼の復職が実現しなかったことで綻び始める。

 第五に、フェドロフには本物の独立した政治基盤はなく、不安定なメディア人気と、選挙における影響力を持たないテクノロジー志向の支持層からの支持しか存在しない。これは最も有力な反論で、最大限に検討されるべきだ。新興支持層は政党ではなく、世論調査への信頼が投票に結びつくわけではないからだ。

 第六に、欧州の諸機関は、もし選択する機会があれば、単一の個人より組織の継続性を優先するだろう。そして、認識されている「ネットワーク」は、実際には重複する専門家集団の産物だ。つまり、同じ会議に出席し、同じ理事会に席を置く人々は、計画を実行しているからではなく、同じ狭い世界の中で活動しているためだ。これは、私の見解では、方法論的に最も深刻な反仮説で、分析全体を仮説として扱うべき理由でもある。

 こうした状況の中、一体何が本当に起きているのか?

 証拠が示唆する内容を総合すると、無実でも陰謀でもない構図が浮かび上がってくる。解任の公式理由が成り立たないこと、真の争点は調達改革と軍部との対立だったこと、フェドロフが、これまでのウクライナ支配層とは構造的に異なる、テクノクラート的、デジタル的で、国境を越えた権力モデルを体現していること、Brave1を中心に企業や投資家の本物の支持基盤が形成されていること、欧州の資金援助の仕組みが客観的に見て彼が代表するエリート層に報いること、そして8月の選挙実施の呼びかけによって、フェドロフが解任された大臣から、明確な政治的挑戦者へと転じたことは十分立証されている。

 7月の解任は、後継者争いにおける潜在的ライバルを排除するための先制措置だったという強い推測があるが、これは確定した事実ではない。欧州および国際ネットワークがフェドロフに、自らの立場を貫くために必要な自主性を与えたという推測は、もっともらしいが証明されていない。そして、フェドロフが、NGO、欧州の基金、あるいはプログラムを「支配」している、あるいはブリュッセルが彼を自らの息のかかった人物として選んだという主張は、現在の公的情報源の状況を考えると、単なる憶測に過ぎない。この三つのレベル、強い推測と、もっともらしい憶測と、憶測の区別こそが、本コラムを陰謀論本から区別する唯一の要素で、私はそれを最後まで擁護する。  
何が残るのか?

 フェドロフは、ゼレンスキー大統領と対立してきたウクライナの閣僚の一人に過ぎないのか? それとも、デジタル政府、防衛技術、欧州からの資金援助、国境を越えたネットワークと、戦後復興を基盤とした新たなウクライナの政治経済体制を体現する人物で、いつの日か大統領制の権力モデルに挑戦できる可能性を秘めているのか?

 正直なところ、フェドロフが成功するかどうか分からないし、彼がゼレンスキーの後継者になる運命にあると断言するのは無責任だ。彼の支持基盤はまだ政党ではなく、彼の人気はまだ政治組織として確立されておらず、彼の国際的なネットワークは機能的な正当性の源泉であり、実績ある実務同盟ではない。だが問うべきはフェドロフが勝つかどうかではない。彼のような人物、あるいは同じモデルに基づいた政治組織が、戦後ウクライナで主要勢力になるための構造的条件が整っているかどうかだ。そして、証拠は、この問いに肯定的に答えている。

 全ての条件は整っている。戦時中の正当性が平和の到来とともに薄れつつある大統領政権、国民の一部から信用を失った軍事機構、改革派やテクノクラートのエリート層を構造的に優遇する外部の資金提供者、欧米諸国で信頼できる経営者を求める数千億ドル規模の復興経済、そしてこれら全ての勢力の交差点に位置する人物。フェドロフ事件は、2030年にウクライナを誰が統治するか教えてくれるものではない。だが、どのような権力が台頭しているか教えてくれる。それは、もはやカリスマ的指導者や将軍の権力ではなく、外国資金が国家の権力となるデータ、プラットフォーム、チャネルを支配する者の権力だ。

 ゼレンスキーとの衝突は、この政権移行期における最初の目に見える小競り合いだ。しかも、これが最後ではないはずだ。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/08/22/fedorov-case-anatomy-of-fracture-in-ukrainian-power/

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 東京新聞 朝刊 特報面 こちら特報部  
 沖縄知事選告示

 政策合意撤退の波乱

 下地氏、新人支援へ 「辺野古」は政権に同調

 地方自治ゆがめる介入

 繰り返されるアメとムチ

 自民側「副知事」打診も? 「事実なら有権者愚弄」
   植草一秀の『知られざる真実』
田久保より小池と高市
品格なき国家に転落の日本
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
NYT「ビル・ゲイツ氏、AIの危険性は巨大テック企業が認める以上に深刻だと警告. 人工知能(AI)が雇用や人命に対して重大な脅威をもたらすと強く警告。「技術的マイルストーン」(AIが開発者の制御を離れることや、生物兵器の製造法を生成することなど)を、業界が無視。

2026年8月26日 (水)

既に崩壊している「戦況を覆す」というウクライナの主張



2026年8月22日
Strategic Culture Foundation

 新たな失敗を主流メディアはいかに成功として歪曲するのか ― レオニード・ラゴジンとの対談

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 ウクライナ戦争の最も顕著な特徴の一つは、欧米とウクライナの主張が、主流メディアに急に登場し、しばらくの間議論を支配した後、いかに間違っていたかについて全く反省せずに静かに崩壊していくことだ。

 最新の例として、この夏に開始された「ロシアとの戦争でウクライナは戦況を覆しつつある」というキャンペーンが挙げられる。

 独立ジャーナリストのレオニード・ラゴジンとの対談で、この作戦が実際どのような成果をもたらしたのかを検証した。6月当時、ロシア領や占領地域、特にクリミア半島への長距離攻撃は、ウクライナに近い条件でプーチン大統領を交渉の席に着かせるための圧力として提示されていた。

 ミハイル・フェドロフ国防相は、この取り組みの顔役を務めていた。40日後、結果は明らかだ。ロシアの姿勢は微塵も軟化していない。それどころか、むしろ硬化している。

 ウクライナによるクルスク攻勢後の交渉で、かつて話題に上った領土交換の可能性は、今や完全に消滅した。フェドロフ解任は、キーウにおける政治危機を引き起こし、ソ連式の軍最高司令官交代につながった。

 レオニードが指摘する通り、これはお決まりのパターンだ。2023年の夏の攻勢は、ウクライナがロシア軍を押し返す瞬間として喧伝された。クルスク作戦は、領土的優位性という概念を一時的に復活させた。だが、そのたびに目標は変わり、そのたびにロシアに有利な方向に変わってきた。

 2022年4月下旬(リズ・トラスのおかげで)に始まったクリミア解放議論は、今やドネツクの残りの地域を維持する試みへと縮小してしまった。この言説の漸進的縮小に伴う人的・物的損失は甚大だ。

 今の状況が特に示唆に富んでいるのは、エリート層の言説と国民感情の間の乖離だ。過去三年のギャラップ社世論調査によると、ウクライナ国民の間で明確な変化が見られる。かつては、ロシアの完全敗北こそ唯一受け入れられる結末だと3分の2が主張していたが、現在では同じ割合の人々が交渉による解決を支持している。

 だが戦争は続いている。

 レオニードの説明は率直だが、同時に耳障りなものだ。これは主に国家間の戦争ではない。これは参加国全ての安全保障機構と欧米諸国の防衛産業や官僚機構の利害関係者相互に結びついたエリート層の戦争で、彼らの動機は一般市民の動機とは大きくかけ離れている。

 同様の力学は欧米メディアの報道が閉鎖的性質なのを説明するのに役立つ。

 イギリス(と、より広範な欧米諸国)のジャーナリズムが、イラクに関する政府の主張を精査する姿勢から、ウクライナにおける外交政策の愚行に白紙委任を与えるまでに至ったことをBBCで12年間勤務したレオニードは指摘している。

 微妙なニュアンスは、オーバートンの窓からの逸脱を全て疑わしいとみなす単一の視点に取って代わられた。

 その結果、ウクライナ人、ロシア人と、ヨーロッパ人にとっての代償が増大し続けているにもかかわらず、ロシアとの相互共存の可能性はほとんど考えられないものとして扱われる情報環境が生まれている。

 また私たちは、この敵意のより深い文化的・政治的根源についても議論した。すなわち、リベラル・エリート層がポピュリスト右派と競合する中で、独自の敵を作り出す手法を採用したこと、そして、この地域を正当な権益を持つ独立国家の場としてではなく、代理戦争の舞台として扱う新植民地主義的な考え方などだ。

 主流メディアのジャーナリスト連中も終わりが見えないウクライナでの無益な流血に加担している。次に起きる取るに足らない情勢の変化を彼らは一体何と呼ぶのだろう。

 レオニードとの対談全文はこちらからご覧いただける。



元の記事:thepeacemonger.substack.com

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/08/22/ukraines-turning-the-tide-narrative-has-already-sunk/

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2026年8月19日 (水)

「アメリカ軍産複合体の最悪部分を『ハイパースケール化』する」アンドゥリル社

Brian Berletic
2026年8月13日
Newe Eastern Outlook

 億万長者のパーマー・ラッキー率いる兵器製造の「新興企業」アンドゥリルは、レイセオン、ロッキード、ボーイングといった従来のアメリカ兵器企業の、より小規模で効率的なバージョンに急速に変貌を遂げた。これは、捏造された脅威と巧妙な約束に基づき、数十億ドルもの税金を民間企業に効率的に移転させる新たなモデルだが、最終的には、誤った国民の期待を大きく裏切る結果となった。

 

 ラッキーとアンドゥリルは「ソフトウェア定義生産」といった概念を用いて、ロシアや中国の軍事産業生産と同等かそれ以上の規模で生産を「ハイパースケール化」すると誓っているが、中国の工場が既に長年にわたり、中国の圧倒的に大規模な産業基盤の中で取り入れている過程であるにもかかわらず、実際「ハイパースケール化」されているのは戦争プロパガンダと、それに伴う戦争利得だけだ。

 アメリカの既存大企業より「優れている」ものの、ロシアや中国には及ばない

 確かにアンドゥリル社は、従来のアメリカ兵器メーカーが製造する兵器に比べて遙かに低価格の兵器を開発しているかもしれないが、その品質、量、コスト削減の面ではロシアの同等品に及ばず、中国の軍事産業能力には遠く及ばない。

 アメリカはイランを実際に爆撃し、ウクライナを介してロシア国内で代理戦争を繰り広げているにもかかわらず、ロシアもイランも(中国も)アメリカ国内を攻撃したことは一度もない。

 アンドゥリル巡航ミサイルはレイセオン社製のものより安価だと言えるかもしれないが、射程距離や破壊力において、レイセオン社のミサイルに遠く及ばない。

 破られた数々のアンドゥリルの約束は、アメリカが海外で起こした数々の侵略戦争の戦場で白日の下に晒されてきた。

 戦場に革命をもたらすと謳われたアンドゥリル社のドローンは、既にウクライナに送られたものの、ロシア製ドローンの量と質に圧倒され、更に急速に進化するロシアの電子戦能力により、アンドゥリル社のドローンはまたしても高価で性能の低い兵器に変貌してしまった。

 ウォール・ストリート・ジャーナルは2025年後半の記事で下記のように認めている。  
アンドゥリル唯一の実戦経験であるウクライナでの運用も、敵の妨害電波に対する脆弱性など、様々な問題に悩まされてきたと元従業員やウクライナ・システムに詳しい関係者は述べている。例えば、ウクライナ保安庁(SBU)の最前線兵士の中には、アルティウス徘徊型ドローンが墜落し、目標に命中させられなかった者もいた。関係者によると、ドローンは問題が多発したため、2024年に使用中止し、それ以降配備されていないという。
 アンドゥリル社が開発中のその他の製品には「手頃な価格で大量生産可能な」巡航ミサイル「バラクーダ」シリーズが含まれる。既に「量産体制に入っている」とされているものの、2027年から年間約1,000発納入される見込みだ。

 バラクーダ500型は、同シリーズ中、最も射程が長く、射程930km、速度930km/時を誇るミサイルだが、弾頭重量は僅か45kgだ。

 このミサイルはまだ納入されていないが、ロシアが戦場で使用している様々な「手頃な価格の大量生産型」ミサイルや徘徊型弾薬、例えばゲラン系列の徘徊型弾薬などと比べても性能は遙かに劣っている。

 そのプロペラ駆動型は、バラクーダ500より射程が長く、より重い弾頭を搭載できる。

 ゲラン・ファミリーには、ジェット・エンジンを搭載した派生型もいくつかあり、その中にはゲラン5が含まれる。ゲラン5は、最大航続距離1,000km、速度450~600km/hで、90kgの弾頭(バラクーダ500の2倍)を搭載できる。

 これら派生型は全てアンドゥリル社の同等バラクーダ・ミサイルより遙かに安価だ。

 ロシアは他にも、バンデロール、Kh-69、イズデリエ-30巡航ミサイルなど、様々な「手頃な価格で大量生産可能な」兵器を開発してきた。これらは全て、アンドゥリル・バラクーダの様々な派生型の性能と同等かそれ以上で、しかも全てアンドゥリルの同等機種より安価だ。

 言い換えれば、ロシアだけが、戦場内外でアンドゥリルが宣伝で約束した性能に匹敵するか、それを上回る「手頃な価格の量産型」兵器を生産したのだ。

 アメリカの欠点は構造的なもの。

 アンドゥリルは、より根深い問題の単なる症状に過ぎない。

 アメリカの経済・政治体制の根本的特徴と、それが助長する営利主義と、莫大な軍事費増額を正当化するために用いられる脅威の空虚さが相まって、アメリカが目指す「手頃な価格の大量生産」は、ロッキード、レイセオン、ボーイングなどのアメリカ企業と比較した場合にのみ「手頃な価格」で、ロシアや中国で、より多く、より良く、より安価な兵器を大量生産している国営企業と比較した場合、そうではないことが明らかになった。

 アンドゥリアルをはじめとする西側諸国の「新興」企業は、欧米諸国の兵器製造にそもそもなぜ欠陥が存在するのかという一般の人々の無知につけこむマーケティング戦略を通じて、ロシアや中国の軍事産業生産に匹敵、あるいはそれを上回ると約束している。

 アメリカ覇権の基盤となっている経済・政治体制は、永続的利益と権力の追求に基づいている。軍事産業の生産拡大は権力増強の重要な前提条件ではあるが、永続的利益を犠牲にしてまでそれを行うことは、アメリカとその代理勢力が、ロシアや中国が武器や弾薬の開発・大量生産に用いる目的志向型の国営企業ネットワークに匹敵する規模に達するのを阻止する。たとえ利益を犠牲にしてでも、こうしたネットワークを構築することは不可能なのだ。

 ロシアと中国の軍事産業生産を監督する国営企業は、設計局と産業企業の間で「知的財産」を交換することが義務付けられており、あらゆる問題に対する最良の解決策がそれぞれの軍事産業基盤全体に普及するようにしている。これは個々の企業が財務帳簿上の利益を最大化するために「知的財産」を独占するのではなく、これら解決策を現実世界の目的に最大限活用するためだ。

 ロッキード、ボーイング、レイセオンといった既存の大手兵器製造企業と、アンドゥリルなどの「シリコンバレー新興企業」両方を含むアメリカ軍事産業基盤全体で兵器と弾薬生産を加速させるよう求める最近の政治的圧力は更なる資金提供の要求と結びついている。

 こうした更なる資金援助要求は、ロシア、中国、イランといった国々がアメリカに及ぼすとされる「脅威」によって正当化されているが、これはアンドゥリルを含む兵器製造企業自身が繰り返している嘘だ。

 これら実際の脅威は、漠然としたものから完全に捏造されたものまで多岐にわたるが、動機は、より具体的で、より大きな「安全」という幻想のために、より大きな利益を得ることなのだ。

 アメリカは既にロシア、中国、イランを合わせたより多くの軍事費を費やしているにもかかわらず、ロシアや中国の軍事産業生産にすら及ばず、場合によっては、イランの生産率や能力にも及ばない。

 ロシア、中国、イランの場合、追加軍事資金は、既存工場の拡張、新規工場の建設、研究開発への投資、サプライチェーンの強化、労働力増強や、実際の生産拡大に必要なその他の要素に直ちに充てられる。目的別システムにおける追加生産能力は、たとえ短期的に収益性を損なうとしても、たとえ使用されなくとも、長期的戦略的資産とみなされる。

 営利企業では、兵器製造、ひいては利益創出に継続的に活用されない余剰製造能力は負債とみなされる。アメリカ兵器企業は、生産拡大のために公的資金を要求するだけでなく、その能力を最大限に活用するための厳格な契約も要求する。

 アンドゥリルなどの「新興企業」は、兵器の研究開発と製造の両方で革命を起こしたと主張しているが、実際はどちらも実現しておらず、既存の経費削減策(例えば、既製部品を使用するなど)を利用して、高度にカスタマイズされた(そして高価な)部品で供給される従来型組み立てラインに依然依存している既存企業よりも比較的安価な兵器を製造しているに過ぎない。

 このことがいかに非現実的かは、一兆ドルを超えるアメリカ軍事予算と軍事産業生産量との間に既に存在する大きな格差と、その僅か10%に過ぎないロシア軍事予算だけで、アメリカの3~10倍もの武器弾薬を生産している事実を見れば明らかだ。中国の軍事産業生産量は言うまでもない。

 昨年同様、「新興」企業アンドゥリルと、その指導者パー​​マー・ラッキーなどの人物の本質は、アンドゥリルをはじめとする欧米諸国の営利目的の軍事産業基盤が、ロシアや中国の軍事産業生産量に匹敵するどころか、それを超えることさえ阻んでいる。ウクライナでの紛争が続く中、明らかになったこの事実は、アンドゥリルとラッキーがそれを理解しているか否か、あるいは認めたがっているか否かにかかわらず、彼らの利益追求の本当の動機を反映している。

 ラッキーの主張に説得されて、ロシアか中国どちらかが自分や自分の生活様式にとって本当に差し迫った脅威だと信じ込んでいるアメリカ人にとって、実際は、パルマー・ラッキー社やアンドゥリル社や、彼らのような企業や個人こそ、アメリカが国内の繁栄に必要な資源を、不必要に他国を敵視し、威圧する活動に転用し続けるよう要求しているのだ。

 その結果、アメリカ国民の富は、平均的アメリカ人の男性、女性、子どものためのより良い教育や医療やインフラ整備ではなく、パーマー・ラッキーの高価な兵器や、最終的には彼の次の新たな商売に流れていくことになる。

 アメリカはイランを爆撃し、ウクライナを通じてロシア国内で代理戦争を繰り広げているにもかかわらず、ロシアもイランも(中国も)アメリカ本土を攻撃したことは一度もない。だが、同じアメリカ国内での、教育や医療やインフラ整備の怠慢は、一般アメリカ人の生活の質を明らかに具体的に低下させている。

 アンドゥリル社のような企業が、ありもしない海外の脅威のために税金を流用し、アメリカ国内に存在しているアメリカ国民への脅威に対処するための資金を奪っていることが、この事態の問題なのだ。

 結局、パルマー・ラッキー社やアンドゥリル社や、その他の兵器製造業者やアメリカ外交政策を推進する営利企業は、虚構の中で、ロシアや中国がもたらすとされる脅威より、平均的アメリカ人とその生活様式にとって現実に遥かに大きな脅威になっている。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/08/13/anduril-hyperscaling-the-worst-of-americas-military-industrial-complex/

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 Brian Berletic氏、彼のYoutube番組The New Atlasでも本記事と同じ話題を語っている。33:17

US Shell Factory Exposed: Why US For-Profit Industry Can't Compete with Russian/Chinese Production
 東京新聞 朝刊 三面 総合  
 トランプ氏、オマーン威嚇

 イラン交渉「邪魔したら爆撃」

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