
ローラ・ルッジェリ
2026年4月15日
Strategic Culture Foundation
トランプは異常な存在でも、体制からの逸脱でもない。彼は自己破壊的な矛盾を全て露わにした、まさに体制そのものだ。
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昨年6月、ドナルド・トランプ大統領の誕生日と、ワシントンで行われた米軍創設250周年記念軍事パレードに合わせて始まった「ノー・キングス」抗議運動は、アメリカだけでなく、最近ではいくつかの西側諸国でも数百万人の参加者を集めている。
当初移民政策と、その暴力的な執行、権威主義的な恫喝、行政の行き過ぎといった国内の不満がきっかけとなったこの運動は、3月以降、対イラン侵略戦争への反対を中心に益々結束を強めている。
何百万人もの人々を街頭へ駆り立てた憤りや深い不満は私も共有するものの、抗議行動参加者への連帯を示すには、運動の焦点や目的や資金源を精査する重要な義務が伴わなければならないと私は考えている。
保守派の批判者たちは、主にフォックス・ニュースの調査報道を根拠に、運動を支える組織的インフラや資金ネットワークを(選択的にではあるが)強調し、抗議活動を「カラー革命」と即座にレッテルを貼った。
カラー革命について幅広く執筆してきた経験から、認識論的な混乱を避けるためにも、この用語を用いる際には、分析的な明晰さを維持することが重要だと考えている。
確かに、ノー・キングス運動は、ソロスのオープン・ソサエティ財団から資金提供を受けた専門化された抗議活動組織に大きく依存しており、これまで我々が目撃してきたカラー革命のほぼ全てにアメリカのリベラルな寄付者層が関与してきたのは事実だが、少なくとも分析レベルでは、根本的区別をしておく必要がある。フォックス・ニュース、デイリー・メール、パール・プロジェクト、スノープスなどが行った調査で言及された寄付者は全員、偶然にもアメリカ人だ。そして、そのうちの一人、ネビル・ロイ・シンガムは数年前に引退して中国に移住したが、彼の政治活動とアメリカ左翼集団支援は、移住よりずっと前から始まっていた
カラー革命は外部主導の作戦で、通常は外国勢力または、その関連組織に資金提供され、組織的に実行され、標的国の不安定化や政府転覆を明確な目的として地政学的目標の達成を目指す。ノー・キングス運動の場合、外国の関与を示す信頼できる証拠は発見されておらず、批判者からも示されていない。しかし、だからといって、この運動が必ずしも自然発生的、あるいは自発的に組織化されているとは限らない。
同一国内のエリート層内部の対立する派閥は、長年にわたり、内部権力闘争において社会勢力や民衆の動員を武器として利用してきた。こうした抗議活動は、支配体制の打倒を目的とするのではなく、競合するエリート集団間の権力バランスを変化させることを目的としている。ある派閥は、ライバルに圧力をかけ、信用を失墜させ、弱体化させるために、抗議運動を組織し、資金提供し、指揮する。動員された群衆は、体制内の一派が別の派閥に対して用いる、一種の民衆による代理勢力となる。
ノー・キングス運動の組織や、資金や、方向性の多くが同じ寄付者層や「慈善」ネットワークから来ていることを考えると、同運動をカラー革命とひとまとめにしたくなる気持ちは理解できるが、そうすることは知的怠慢で、根本的な違いを覆い隠してしまうため、最終的には誤解を招くものだと考える。カラー革命が政治秩序に対する「外部からの」攻撃だとすれば、国内のエリート層の縄張り争いは「内部からの」攻撃だ。どちらも草の根抵抗運動のように見え、そう感じられるかもしれないが、根底にある論理と最終的受益者は根本的に異なる。
興味深いことに、この力学は逆方向にも作用する。社会勢力は、エリート層の都合に合わせて動員解除される可能性がある。圧力を生み出すために活性化されるのと同じくらい簡単に、そのエネルギーが望ましい目的に役立たなくなった時には、静かに抑制されたり、方向転換されたり、無力化されたりする。
かつて、ロビー活動は主に、正式な民主的過程の中で政党や選出された公職者に影響を与えることに力を注いでいた。しかし国民の大部分が選挙政治や伝統的政党構造に不満を抱くようになるにつれ、大衆動員は従来の民主的過程を補完する新たな手段になっている。専門化された抗議運動は、益々信用を失いつつある代表制民主主義の枠組みの外で目的を達成しようとするエリート層にとって、新たな手段になる。
一部評論家は、ノー・キングス現象を説明するためにグラムシの用語「受動的革命」を借用しているが、このレッテルは、カラー革命というレッテルと同様、アメリカで起きている現象を完全に説明するものではない。
グラムシによれば、危機的状況において、支配階級は、被支配階級の要求の一部を吸収し、その破壊的エネルギーを奪い、保守的な近代化の道具へと変容させることができる。従って、民衆の勝利に見えるものは、実際は権力関係の実質的非対称性を維持する支配の再構築に過ぎない。グラムシはまた、受動革命を「変容」と明確に結びつけた。変容とは、対立する階級の能動的要素を分子レベルで吸収・統合する過程で、それにより支配階級は自らを刷新し、実際には既存秩序の永続化に過ぎないにもかかわらず、変化の印象を与えるのだ。
この力学は決して例外的なものではないと私は主張したい。これは資本主義エリートが異議申し立てや、危機や、頻繁な近代化の必要性を管理する方法だ。受動的革命と変革主義は、資本主義支配を可能にするもので、エリート権力が一度確立されると、その規定値の再生産論理になると言える。
しかし、事後的に異議を無力化し吸収することとして理解される取り込みだけでは全体像を説明するには不十分だ。
エリート層内部の覇権争いにおいて、反対運動は事後的に無力化されるだけでなく、事前に積極的に武器として利用される。人々の真の怒りとエネルギーは、あるエリート派閥に別派閥に対して利用され、既存体制内での覇権争いの道具として用いられる。
ノー・キングス運動(とMAGA運動も同様)に見られる現象+は、古典的な意味での受動的な革命ではない。エリート層が自らの権力に対する既存の脅威に対応し、無力化する事後的な動き(受動的な革命)と、エリート層が内部権力闘争における戦略的手段として民衆動員を積極的に創出し、あるいは支援する事前的な動きには重要な違いがある。
ノー・キングス運動とMAGA運動は一見対立しているように見えるものの、実際はライバル関係にあるエリート層が覇権を争い、民衆の不満を無力化するための補完的な仕組みとして機能している。MAGA運動は、脱工業化が進み、社会的に地位が低下した労働者階級や中産階級のアメリカ人の怒りを、国家主義的、保護主義的な政策へ転換させる。一方、ノー・キングス運動は、権威主義的な傾向、行政権の行き過ぎ、軍国主義に対する正当な憤りを、自由主義的グローバリズム政策へ取り込んでいる。
どちらの運動も一枚岩ではないのを指摘しておくことが重要だ。例えば「ノー・キングス」は、民主党を支持する進歩的団体だけでなく、反戦組織やマルクス主義団体も含む連合体で、それぞれが、異なるイデオロギー的信条や戦術的嗜好を、トランプ政権への反対という共通の目標に持ち込んでいる。
MAGAもまた、決して均質な集団ではない。親ビジネス派のエリートとポピュリスト的ナショナリスト、リバタリアンとキリスト教保守派、孤立主義者と軍事強硬派といった、それぞれ異なる優先事項を持つ、しばしば対立する明確な集団に分かれている。こうしたことは、内部の緊張関係からも明らかだ。
これらの運動を形成する全ての組織や集団がアメリカが世界覇権を回復しようとする野望を明確に支持していると主張するのは誤りだが、主な資金提供者を見ると状況は変わってくる。
No Kingsの主な推進力は、2017年から2023年の間にソロスのオープン・ソサエティ財団から761万ドルの資金提供を受けた組織、インディビジブル・プロジェクトだ。インディビジブルは、活動の調整、ツールキット提供、研修、連携、戦略的メッセージ発信などにおいて繰り返し自らの功績を主張してきた。更に大きな資金源は、不透明なアラベラ・アドバイザーズ(現在はサンフラワー・サービスに改名)とタイズ財団だ。これらは資金源を隠蔽する主要な進歩主義系資金提供機関だが、ゲイツ財団、ピエール・オミダイア、ジョージ・ソロス、フォード財団、ロックフェラー財団と(ウォーレン・バフェット一家と関係のある)ノヴォ財団は、いずれも寄付者として記録されている。
MAGAの主な資金提供者は、主にハイテク、暗号通貨、金融、エネルギー分野の億万長者層で、イーロン・マスク、ジェフリー・ヤス、スティーブン・シュワルツマン(ブラックストーン)、グレッグ・ブロックマン(OpenAI)のほか、アレックス・カープ(パランティア)、マーク・アンドリーセン、ベン・ホロウィッツ(シリコンバレーのスタートアップと軍事産業の合併で利益を得ているベンチャー・キャピタリスト)、ケルシー・ウォーレン(エナジー・トランスファー・パートナーズ)といったシリコンバレーとAI業界の新世代の経営者や、ミリアム・アデルソンやロナルド・ローダーといった親イスラエル派寄付者も含まれる。
どちらの億万長者派閥も、エリート階級の権力とアメリカの覇権を守り維持しようとしている。もっとも、リベラル派はそれを虹色に塗り替え「包括性」「民主主義」「ルールに基づく国際秩序」といった曖昧な言葉や美徳に満ちたスローガンを散りばめた光沢のあるラベルを貼ろうと躍起になっている。主張は変われど、彼らの物質的権益は変わらない。エリート連中は、反対運動を支援することで、憤りが階級覇権に対するイデオロギーを超えた挑戦へと結集するのではなく、制御された爆発的な形で放出されるようにしているのだ。その一方「文化戦争」は国民を分断して、この見せ物に引きつけている。
私は、リベラル・進歩主義運動や国家主義・ポピュリズム運動に参加する一般アメリカ人の誠実さを疑うつもりはないが、国内外における活動を可能にし、調整し、維持する組織的基盤に資金を提供している連中の狙いを彼らが十分理解しているとは考えにくい。
国際的側面を無視してはならない。両エリート派閥は、影響力をアメリカ国外にまで拡大しており、潤沢な資金を持つネットワーク、組織、政党、メディアを通じて、標的国の政治過程や意思決定を積極的に形成しようとしている。自発的世界的連帯に見えるものは、多くの場合、それぞれのエリート支援者の戦略的権益を推進するために、綿密に構築された超国家的構造が並行して機能した結果なのだ。
「ノー・キングス」や「MAGA」のような運動は、本物の政治エネルギーが解放され、方向付けられ、もはや役に立たなくなった時には無力化される統制された環境として機能している。そして、トランプ政権への支持層の幻滅を受けて、MAGAは既にその役割を終え、再始動する必要がある兆候が見られる。静かに引退するか、あるいは再編されるかもしれないが、その間に、新たな不満の波に備えるための新たな出口が準備されるだろう。
これらの運動は、現代の多くの消費財と同様、意図的に陳腐化するように設計されていると言える。それらは誇大宣伝、ブランディング、一時的触媒によって勢いを増すが、本当の持続力、すなわち権力が実際どのように生み出され、再生産されるのかという首尾一貫した理論、エリートの覇権と、二大政党による帝国主義プロジェクトの継続性を支える階級関係や生産関係についての理解といった分析的基盤を欠いている。そのエネルギーはほぼ完全に感情的かつ象徴的なもので、道徳的純粋さを装う演技に過ぎない。その結果、絶え間ない新しさと疲弊が入り混じった政治が生まれる。
MAGAもNo Kingsも、ドナルド・トランプの個人的ブランドとペルソナ(一方はトランプ自身、もう一方は反トランプの怒り)に強く結びついており、まさにこの象徴的人物への執着こそが、両運動を衰退させる原因になるだろう。
政治的言説を幼稚化させ、人格を崇拝するメディアの生態系に後押しされ、国民は彼をアメリカのあらゆる問題の根源と混同している。多くの人々は、バラク・オバマがジョージ・W・ブッシュに対する啓蒙的で多国間主義的で希望と変革をもたらす解毒剤として売り出されたように、彼の完璧な対極として売り出された候補者に彼を交代させるのを喜んで受け入れるだろう。オバマは、イラク戦争、アフガニスタ戦争、一方主義、カウボーイ外交、グアンタナモ、そしてアメリカの国際的イメージの低下といったブッシュの遺産に明確に反対して選挙戦を戦った。彼は、外交と自制に基づいた、より賢明で協調的な外交政策を約束した。ブランディングは功を奏したが、その継続性は見過ごせなかった。オバマは、9.11後の監視国家の中核構造と、アメリカ覇権への誓約を維持した。彼はドローン計画をエスカレートさせ、実際はジョージ・W・ブッシュの約10倍もの攻撃を承認し、カラー革命や政権転覆作戦を強化した(イラン、チュニジア、エジプト、リビア、イエメン、シリア、ウクライナ、ロシア、キルギスタン、香港、台湾、マケドニア…)。その結果、4カ国が混乱、戦争、あるいはその両方に陥ったままになっている。
ワシントンが中国に対して対決的姿勢をとる戦略的基盤を築いたのはバラク・オバマだったことを忘れてはならない。彼の「アジア重視」政策はアメリカの戦略転換を象徴するもので、中国の台頭を、アメリカ覇権に対する長期的な最大の脅威と位置づけた。
トランプ政権2.0へと時代を早送りしてみよう。中国を直接封じ込めることができないため、ワシントンは間接的封じ込め策を選択した。中国の成長を支える世界経済秩序を不安定化させることだ。アジアとヨーロッパを景気後退に陥れる可能性のある紛争や危機は、事実上、中国の製造業の足元をすくう。中国の成長が鈍化し、工場が操業停止に追い込まれ、労働者が苦しむのは、中国自身が攻撃されるからではなく、中国を支える世界経済が混乱に陥るからだ。これが、混乱を通じた封じ込めの論理だ。
トランプをあらゆる悪の根源とみなすことで、アメリカの進歩主義運動は、記号論で「指示的倒置」と呼ばれる、よくある誤りを犯している。指示とは、煙と火、発熱と感染症のように、対象と因果関係にある記号のことだ。しかし、一般の人々は、発熱を病気そのものと勘違いし、より深刻な病気の症状ではなく、原因として捉えてしまう。この誤りは、より人当たりの良い民主党指導者が選出されると、こうした運動が容易に終息してしまう理由の一つだ。
トランプは異常な存在でも、体制からの逸脱でもない。彼は自己破壊的な矛盾を余すところなく露わにした体制そのものだ。トランプは、後期資本主義の分裂症的な過程が具現化した存在だと言える。彼は金融資本主義の矛盾を体現し、それを最大限の音量とスピードで演じている。アメリカ資本主義の深刻な衰退を最も純粋に体現する存在として、彼の中には、あらゆる近視眼的で、寄生的で、腐敗した特徴が誇張され、グロテスクに現れている。だが、彼を排除して、別の人物に交代させるだけでは問題は解決しない。それは、感染症の治療に鎮痛剤を服用するようなものだ。
ワシントンがもはや既存のルール、規範、構造から利益を得られなくなったため、それらの破壊をトランプは加速させている。
多極化時代において、アメリカはかつてのような世界支配的地位を維持できず、覇権に対するまとまった挑戦が生まれるのを阻止するため混乱を招くという手段に訴えている。
一方、寄生的エリートたちは、依然この混乱から利益を得続けている。
混乱は、アメリカの特定権益団体にとって儲かる機会を生み出す。エネルギー市場の混乱は石油とガスの価格を押し上げ、アメリカのエネルギー輸出業者に直接利益をもたらす。絶え間ない紛争は、巨額の国防予算、儲かる武器販売、民間軍事・警備会社への非常に利益の大きい契約を通じて軍産複合体を維持する。混乱が収まった後、「安定化」と復興の取り組みにより、通常、IMFや世界銀行融資、民営化取り引き、大規模インフラ契約への道が開かれる。ただし、この場合、他の貸し手が介入する可能性があるため、そうならないかもしれない。過去には、世界の投資家は危機時に安全資産としてアメリカ債に殺到する傾向があったが、そのメカニズムはもはやかつてほど自動的ではない。彼らは依然として超短期的なアメリカ債の流動性を重視しているが、長期的需要は、アメリカの債務、インフレの転嫁、地政学的反動への懸念によって試されている。
もちろん、この手法は最終的には自滅的だ。アメリカのソフトパワーを蝕み、脱ドル化の取り組みを加速させ、国際ルールの崩壊からアメリカより他の国がより大きな利益を得ない保証はない。もしこの手法の支持者が、これを必要な「創造的破壊」と見なすのであれば、それは秩序を維持するための十分な資源がないからだ。
脅迫、攻撃と混乱は、アメリカの構造的衰退によって引き起こされた根深く解決困難な体制上の問題に対し、依然成果をもたらす唯一の手段だ。
数十年にわたり、アメリカは自国の利益を反映した国際秩序を維持しながら、民主主義、安全保障、法の支配の保証人として自らを位置づけてきた。しかし、もはやそうではない。1945年以降の制度的枠組み――ブレトン・ウッズ体制、国連、NATO、そしてアジアと中東に広がる二国間同盟のネットワーク――は、普遍的規範という見せかけの下で+、アメリカ覇権を確固たるものにするために設計された。アメリカはルールを作り、その執行を監視し、都合の良い時には、いつでも自らを例外とする権利を留保してきた。だが、この体制が安定とある程度の予測可能性をもたらす限り、ほとんどの国はその偽善を容認してきた。
その時代は終わった。アメリカの経済的優位性の衰退、ライバル勢力(特に中国)の台頭、そして数十年にわたる一方的な介入に対する根強い反感により、旧体制はもはや機能しなくなった。ワシントンは、基地、同盟、海外援助や、終わりのない戦争といった世界覇権を維持するための高額インフラを、もはや維持できない。だが真に多極的あるいは多重的な世界への移行を、まだ受け入れていない。衰退と否定の間で板挟みになったワシントンは、破壊戦略を選択した。この戦略は、ドルへの信頼を損ない、ワシントンが阻止しようとしているまさにその多極化を促進するため、長期的には自滅的だが、短中期的に見れば、壊滅的効果を発揮する。
とはいえ、トランプがアメリカの国際的地位を一人で破壊したわけではない。その低下は既に始まっており、注意深く見ていた人なら誰にでも明らかだった。驚くべきは、その崩壊の速度と規模だ。
世界は多極化ではなく「多重構造」秩序へと向かっているとアミタフ・アチャリヤは主張している。これは、大国、地域組織、企業、非国家主体など、複数主体が関与する、より複雑なシステムだ。このような世界では、ワシントンは(軍事行動や制裁を通じて)破壊はできるが、安定した国際秩序を構築したり維持したりすることはもはやできない。現在の対イラン戦争は、いわゆる同盟諸国の間ですらアメリカの指導力に対する信頼をさらに損なっており、多くの国、特にグローバル・サウスの国々がアメリカへの依存度を減らすことで適応しようとしているのは当然のことだと言える。
トランプ政権の混沌とした経営スタイルに見られるのは、唯一残された事業モデルが、タイタニック号のデッキ・チェア・チケット販売であるような体制の典型的特徴だ。末期段階にある金融資本主義は、もはや矛盾を解決するのではなく、矛盾を増幅させ、内面化し、最終的には荒唐無稽なグラン・ギニョール劇のようになる。その結果生じるのは、偶発的な機能不全ではなく、体制の規定値の動作モードとしての混乱出た。
個人的ベルでは、この混乱は、一貫性を保つ余裕のない指導者という形で現れる。金融家の倫理観(利益の最大化、摩擦の無視)が支配の哲学となる。政治家なら麻痺してしまうような矛盾が、取り引き上の即興的対応の機会になるのだ。
トリフィン・ジレンマを例にとってみよう。ある日、トランプは強いドルの美徳、アメリカの優位性の象徴を称賛する。翌日には、同じ強いドルがアメリカの輸出を潰し、アメリカの雇用を奪っていると激しく非難する。矛盾している? 矛盾している? 確かにそうだ。しかし、矛盾しているという批判は的を外している。この矛盾はトランプのメッセージの欠陥ではなく、計画の論理ではなく、ヘッジの論理だ。伝統的な経済政策は、一貫した手段によって追求される一連の一貫した目標を前提としている。対照的に、金融化された論理は、変動性によって繁栄し、動きの両方向から利益を得る。ヘッジファンドは市場が上昇または下落を必要としない。市場が動き、予測不可能に動くことを必要とし、それによって構築されたロング・ポジションとショート・ポジションのポートフォリオが不確実性から価値を引き出すのだ。トランプの統治も同じだ。彼はアメリカ経済の緊張を解消するのではなく、増幅させている。ある日は強いドル、次の日は弱いドル。中国への関税、そして中国との合意。原油価格の混乱。同盟国への脅迫、そして和解。メッセージは媒体ではなく、変動性そのものがメッセージだ。
伝統的国家運営の観点からは一貫性に欠けるように見えることも、金融化された権力の観点からは、選択肢を絞り出す戦略だ。トランプは、いかなる単一の立場にも深く関与するのを拒否して、経済がどちらの方向に動こうと、功績を主張できる立場を維持している。ドルが上昇すれば、アメリカの国力を誇示した功績を主張できる。ドルが下落すれば、アメリカ労働者の勝利を主張できる。このヘッジ戦略は、政治的柔軟性を最大限に高めつつ、責任追及からトランプを守る。だが、そこにはトランプ個人のスタイルを超えた、より深い論理が存在する。アメリカ経済は、生産的投資ではなく、レント搾取、資産価格インフレ、投機的資金の流れに支配され、徹底的に金融化されてしまったため、かつての産業時代の確実性はもはや通用しなくなっている。悲劇的なのは、この手法によって、一貫性のある産業政策、安定した貿易体制、予測可能な国際的姿勢の可能性が閉ざされてしまうことだ。そして、金融化されたエリート層が価値を搾取する一方、実際にモノを作り、人々を雇用する生産的な経済は、ゆっくり衰退していく。
トランプを支持する政治、経済、金融分野の連合は、矛盾した賭けの寄せ集めだ。トランプ個人の支離滅裂さは、この体系的支離滅裂さを反映している。この連合は、世界秩序を再構築する変化の波を食い止めることはできない。できることといえば、取り引き的で一方的かつ厚かましい外交政策を通じて、旧秩序の残滓を搾取し、金儲けすることくらいだ。このような手法は、戦後の制度的枠組みがもはやアメリカにとって同じ利点をもたらさないという認識を反映している。他の大国、とりわけ中国が今やより強い切り札を持っているためだ。
この連立政権は明らかにハイブリッド型の形態だ。ハイブリッド性は選挙において強いことが証明されているものの、安定した長期的覇権構想を生み出すために必要な内部的一貫性を欠いている。むしろ多くのハイブリッド型政権がそうであるように、この政権は解決不可能な深い矛盾と利害の衝突に満ちており、本質的に不毛なものになっている。
主な特徴は日和見主義だ。減税、規制緩和、有利な政府契約、国内産業を保護する関税、監視の緩和(特にAI、暗号通貨、エネルギー分野)、いわゆる「意識高い系」機関への敵意、旧来の自由主義秩序への反対といった共通の短期目標を中心に形成された戦術的同盟だ。しかし、これら派閥のより深い戦略的な構想は根本的に相容れない。しかもこれは「イスラエルを再び偉大にする」派閥の有害な影響を考慮に入れる前の話だ。
トランプは、グローバリゼーション、不平等や、リベラルな制度の失敗によって引き起こされた国内の根深い不満を巧みに利用し、自分の政治生命に繋げた。2010年代までに、アメリカ資本主義は既に深刻な危機に陥っていた。数十年にわたる新自由主義的グローバリゼーションは、大規模な脱工業化、極端な+不平等、高賃金製造業雇用の喪失、オピオイド危機、大多数の人々の実質賃金の停滞と、深刻な信頼の喪失をもたらしていた。
国民の大部分は、これをリベラルエリートによる裏切りと受け止めた。こうした不満は現実のもので、爆発的事態に発展する可能性があった。扇動政治家トランプは「忘れられた人々」の代弁者を自称し、「腐敗したエリート」を攻撃し、グローバリゼーションと自由貿易協定を非難し、アメリカの偉大さを回復すると約束した。彼は国民の不満という破壊的エネルギーを、自身の政治プロジェクトへ転換させ、それが決して主要献金者の利益と権力には挑戦しないようにした。
社会保守派は文化戦争で勝利を収め、白人労働者階級の有権者はスケープゴート(移民、中国)を見つけ、企業とウォール街は減税と規制緩和を受け、AIとハイテク分野は非常に有利な政策パッケージ(積極的規制緩和、財政的誘因、戦略的な政府との協力関係)を受け、シオニスト・ロビーにより、自分たちは処罰されることなく、パレスチナ人を虐殺し、抵抗の枢軸を攻撃する白紙委任状をイスラエルは与えられ、軍産複合体は第二次世界大戦後最大の軍事予算を受け取った。
トランプ再選を確実なものにし、保守層から数百万票を獲得させた補償的な物語は、国家、強権指導者、家族、国境といった強力な記号群を中心に展開している。ドゥルーズとガタリの分裂分析に基づけば、トランプは分裂症者(流れを野放しにする者)であると同時に、偏執狂(「アメリカ」という専制的記号の下に流れを再び押し込めようとする者)でもあると私は主張したい。
トランプに反対する運動も、支持する運動も、互いに鏡のように映し合うだけの構図に囚われている。人々がこの反射的鏡像関係から抜け出し、トランプを生み出した根本的状況を中心に組織化を始めない限り、彼らは同じ偏執的で分裂症的な機械に閉じ込められたまま、永遠に的外れなことに気を取られ、公平な体制を構築する本来の作業は未だに進むまい。
市場の変動から利益を得るエリート層と異なり、一般の人々はリスクヘッジのためのポートフォリオなど持っていない。彼らが帝国の周縁部に住んでいようと、腐敗した中心部に住んでいようと、ワシントンが混乱を通して覇権を追求する過程で、矢面に立たされるのは彼らだ。
記事原文のurl:
https://strategic-culture.su/news/2026/04/15/no-kings-and-maga-turf-wars-on-titanics-deck/-----------
植草一秀の『知られざる真実』
自民党大会責任負うのは党首
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