シェール・ガス・石油

2026年7月15日 (水)

対イラン戦争:石油供給は再び危機に瀕する――今度こそ本当に。

2026年7月14日
Moon of Alabama

 トランプ大統領による対イラン戦争再開は、原油価格を、前回の紛争激化期に世界が経験したよりも遙かに高騰させる可能性が高い。

 世界の石油消費量は1日あたり約1億バレルだ。対イラン戦争以前は、そのうち約20%がペルシャ湾地域からホルムズ海峡を経由して世界市場に供給されていた。

 今年三月に発生した二度目の対イラン戦争中、海峡は封鎖された。これにより原油価格は急騰したが、多くの専門家が予想しアーカイブ)、恐れていたような壊滅的な経済的損害は発生しなかった。

 理由は三つあった。

1. 湾岸地域から来る石油の一部は、別のルートに迂回された。
 
  • サウジアラビアは、ペルシャ湾に面した東海岸からの原油生産量を紅海沿岸の西海岸へ送るため、国境を越えるパイプラインを利用した。数週間後、ヤンブー港の送油口は、日量約400万~500万バレルの最大処理能力に達した。
  •  
  • アラブ首長国連邦は、ペルシャ湾内の油田から南部沿岸のフジャイラ港までパイプラインを敷設して、ホルムズ海峡を経由せずに石油を輸送した。
  •  
  • イラクは一部の石油をトラック輸送でシリアとトルコに送った。
  •  
  • アメリカ・イラン間で締結された停戦覚書に基づき、封鎖されていた石油を積んだタンカーが湾岸地域から脱出できた。
2. 追加の石油が市場に供給された。
 
  • アメリカと同盟国の一部は、原油価格沈静化を図るため、戦略石油備蓄を放出した。
  •  
  • アメリカはイランとロシアの石油輸出に対する制裁を解除した。
  •  
  • アメリカ内の石油生産量が増加した。
3.需要が減少した。
 
  • ここで最も重要な貢献は、中国における輸入量の予想外の減少だった。中国は自国の膨大な資源の活用に成功した。また化学工場の原料として石油代わりに石炭を使用した。
  •  
  • ガソリン価格高騰は、各国で少なくともある程度の需要減少につながった。
 合計で約700万バレル/日の原油が新たな供給ルートを通じて湾岸地域から輸送された。備蓄からの放出と制裁解除により、約300万~500万バレル/日の追加供給がもたらされた。中国の輸入需要の減少は約500万バレル/日に相当する。

 上記全ての措置により、世界の供給量は約1億バレル/日から約9200万~9500万バレル/日に減少したにとどまった。特に中国の措置により、世界の需要はほぼ供給量と均衡する水準まで減少した。この概算で不足していた量は流通・輸送段階の備蓄から補われた。

 全ての対策が講じられた結果、需要と供給は再び均衡し、原油価格は1バレルあたり70ドル強という通常水準まで下落した。

 ドナルド・トランプ大統領が紛争を再燃させると決めた時、恐れていた石油問題は解決したと彼は考えていたのかもしれない。

 しかし、そうはならなかった。そして、現在の状況では、市場のバランスを維持することは遙かに困難になるだろう。

1. 湾岸地域からの石油輸出は事実上終了した。
 
  • 昨日、サウジアラビア航空機がイエメンの首都サナアの空港を攻撃した。これを受け、与党アンサル・アッラー連合は、紅海のバブ・エル・マンデブ海峡をサウジアラビアの船舶に対して閉鎖すると発表した。これにより、サウジアラビア国内のパイプラインとヤンブー港からの原油生産量は、スエズ運河を小型船で通過できるレベルまで減少する。これはおそらく日量100万バレル未満になるだろう。
  •  
  • 昨日、イランはフジャイラ付近でUAEのタンカー2隻を攻撃した。これにより、UAEの代替輸送ルートも閉鎖された。
  •  
  • ホルムズ海峡は再び閉鎖された。ペルシャ湾地域から石油が輸送されることはもうない。
2. 追加の石油供給源はもはや利用できない。
 
  • アメリカの戦略備蓄は現在、ほぼ最低レベルに達している。これ以上の引き出しは、備蓄に使用されている岩塩坑を損傷または破壊する恐れがある。
  •  
  • イランとロシアの原油輸出に対する制裁措置が再導入された。
  •  
  • ウクライナ軍によるロシア製油所や黒海沿岸の積み荷・輸送インフラ攻撃により、ロシアの石油製品輸出は減少した。ロシアは通常日量約80万バレルに上るディーゼル油輸出を完全停止した
  •  
  • 輸送・流通段階における備蓄量は過去最低水準にある。
3.需要が増加している。
 
  • 記録的な輸入減少の後、中国は原油の購入を再開した
  •  
  • 夏が到来した。アメリカとヨーロッパでは休暇旅行が増加し、季節的な需要が高まるだろう。これは特にジェット燃料の在庫に大きな打撃を与えると考えられる。ヨーロッパのジェット燃料の備蓄量は1か月分にも満たない状況だ。
 前回の紛争において世界が供給不足を乗り切ることを可能にした好ましい条件は、現在の紛争ではほぼ全て失われている。

 現金決済型の先物市場は今後も高度に操作され続けるだろうが、実際の製品価格は上昇するだろう。ガソリンスタンドの価格も近いうちに新たな高値を更新する可能性が高い。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2026/07/war-on-iran-oil-supplies-will-again-be-in-trouble-this-time-for-real.html

----------

 東京新聞 朝刊 三面 総合  
 通航料 欠く整合性

 トランプ氏 発言にぶれ

 米イラン共同案→徴集反対→20%主張
 東京新聞 朝刊 四面 国際・総合  
 ICC脱退働き掛け画策

 米政権、加盟国に 外交圧力強める狙い
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
クリストフ(ピューリッツアー受賞記者)著「北欧の幸福から学ぶべきこと。ガソリンスタンド店員、レジ係、建設作業員等通常低賃金の職時給20ドル以上。北欧デル。不平等の是正、機会の拡大、生活の質の向上を目指すもの、特に所得水準の低い層の底上げを図るもの

2026年6月26日 (金)

ワシントンにとうとう苛立った中東諸国



マーティン・ジェイ
2026年6月25日
Strategic Culture Foundation

 トルコはイスラエルの新たな敵国だ。その動きは、しばらく前から始まっている。

❗️Telegram Twitter , と VK でご参加願いたい。

お問い合わせ: info@strategic-culture.su

 トランプのイラン合意の意図せざる結果は数えきれないほどある。中でも最も深刻なのは、トランプ自身の愚行により、これまで夢にも思わなかったほどの資金と権力がイラン政権に注入されたことだ。しかし「無条件降伏」合意は、おそらくオイルダラーを崩壊させ、かつて「超大国」、あるいは時には「唯一の超大国」と呼ばれたアメリカの衰退を加速させることになろう。トランプの「無条件降伏」という愚かな発言は、もちろんこの大失敗全体の最大の皮肉だ。ホルムズ海峡を開放するためと、世界の原油価格を下げるためだけに、トランプ自身がひざまずいて、イランに多くのものを譲り渡したのだから。

 だが今この地域で、イスラエルとGCC諸国の両方に何が起きているのか? イスラエルに関しては、国民はショック状態にあり、前夜のパーティーから目覚めて、事態が少し手に負えなくなっていたのに気づいて、ある種の浄化と修復過程が必要になるまでには、しばらく時間がかかるとアラスター・クルックなどの多くの有力評論家たちは主張している。更に踏み込んで、イスラエルはもはや「大イスラエル」という妄想的概念、つまり国境を越えた地域覇権の野望に浸り続けることはできず、レバノンのヒズボラとの戦争に勝利していないことを認めることから始めて、目標を再調整する必要があるとクルックらは考えている。対イラン戦争に敗北したこと、アメリカが軍事的約束を果たせなかったこと、イスラエル国防軍でさえヒズボラに太刀打ちできないことについて、ほとんどのイスラエル人がショック状態にあるという点で専門家たちは概ね意見が一致している。政治的にも軍事的にもイスラエルが無理をしすぎたことや、実際深い穴に落ち込んでおり、解決策はこれ以上深みにはまるのを止めることかもしれないと彼らが理解するには時間がかかるだろう。

 だがネタニヤフ首相が考えているのは陰鬱で穏やかな時期などからはほど遠く、レバノンでの戦闘を止めさせようとしているトランプ大統領にとって、彼は今や静かな敵になる可能性が高い。ワシントン・イスラエル関係も緊張をはらみ、新たな局面を迎えることになる。イスラエルへの資金援助を停止する決議をアメリカ議会が採択し、(かつてホワイトハウスでネタニヤフ首相が記者会見に出席した際、ビル・クリントン大統領が述べた言葉を借りれば)ネタニヤフ首相と連立政権の同盟者連中に、本当の超大国は一体誰かを思い知らせる事態を新たにもたらす可能性もある。

 おそらく、もっと懸念されるのは、この地域と、今どのようにアメリカが撤退しているかだ。この国々のエリートがウォール街に資金を流し続けることは到底あり得ないので、米軍が湾岸地域の十数カ所の軍事基地に戻るとは到底考えられない。実際、もはや両国の経済への資金の流れがなくなり、ドバイのホテル稼働率が僅か10%程度に低下したため、アメリカのAI部門向けにサウジアラビアとアラブ首長国連邦が確保していた3兆ドルの資金は実現するまい。トランプの戦争が文字通り、これら新興経済諸国にミサイルを撃ち込んだのだから、この資金がアメリカに入らないのをトランプは今さら嘆けない。

 だが驚くべきことに、トランプは依然夢を見ているのだ。彼は自分が何者なのか、現在のアメリカが一体どんな国なのか、未だに妄想を抱いており、2026年ではなく1970年代のような考えに囚われているようだ。中東で我々が目撃しているのは、終焉の始まりだ。オイルダラーと、すぐ手に入れられる現金をGCC諸国が喪失したことは、古い帝国で、最初のドミノが倒れるようなものだ。一方、トランプは、細部にこだわり、深夜にソーシャルメディアに投稿するのに時間を費やしている。ローマ帝国末期、皇帝は「ローマ」について心配していたと言われているが、これは崩壊しつつある文明のことではなく、彼のペットの同名ニワトリのことだった。小柄なジョルジャ・メローニとトランプ間の幼稚で子供じみた論叢を見ると、この「ローマ」の既視感を覚える。メローニが数日間続けているX上の論争は、アメリカとEUが奈落の底に転落しつつある大局的状況と不釣り合いに見えるかもしれない。EUは、もはやめちゃくちゃ状態で、世論調査では大多数のイギリス人がブレグジット失敗を認めているにもかかわらず、破産状態にあるイギリスでさえ、今となってはEU再加盟を望まないほどだ。

 最近のサウジアラビア外相発言は、アメリカを完全に回避する全く別の防衛体制をサウジアラビアとアラブ首長国連邦が模索しているのを示唆している可能性がある。トルコ、パキスタン、エジプトなどの国々は、反イスラエル主義を掲げながら、この課題に独自に取り組んでいる。最近、トルコの強硬な発言について、ネタニヤフ首相がトランプ大統領に不満を漏らした噂があるが、NATO加盟国のトルコ攻撃など考えないでほしい、イスラエルには到底無理だという旨の発言をトランプ大統領がしたと伝えられている。だがトルコはイスラエルの新たな敵だ。その動きは、しばらく前から始まっている。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/06/25/middle-east-wringing-its-hands-of-washington-finally/

----------

 植草一秀の『知られざる真実』
高市ごはん論法の破綻

2026年6月25日 (木)

対イラン戦争で最も大きな損失を被った国は一体どこか?

2026年6月23日
ラリー・C・ジョンソン



 (上記グラフは、Gallup世論調査での、戦争開始時と、戦争終了時のアメリカ国民の支持率)

イランへの一方的攻撃で、アメリカは確実に評判を落とし経済的にも大きな損失を被ったが本当の最大の敗者はアラブ首長国連邦かもしれない。ドバイに注目してみよう。


 ドバイは、非常口のない、世界で最も高価な大人向けテーマパークだとお考え願いたい。何十年もの間、ドバイはラスベガスとディズニーワールドが子どもを産み、国家の富で育て、モナコの高級学校に通わせたらどうなるかというイメージで世界に売り込んできた。その結果生まれたのは、まさに驚くべき大胆さを持つ都市だった。砂漠の中にある屋内スキー場、5つ星では物足りないという理由で7つ星を自称する帆の形をしたホテル、そして莫大な費用をかけて掘り出されたにもかかわらず、ゆっくりと海に沈みつつあるヤシの木の形をした人工島。あらゆる基準から見て、実際のテーマパークが金ぴかで堅苦しすぎると感じていた人々にとって、ドバイは史上最高のテーマパークだったと言えるだろう。

 ドバイ構想の最大の強みは、その地理的論理にあるとされてきた。つまり世界貿易の要衝に位置し、インフラ整備に必要な石油を採掘し、その後、石油収入を徐々に他のあらゆるもの、観光、金融、不動産と非常に裕福な人々が不都合な質問を一切せずに巨額資金を預ける場所としての不可解な商売に置き換えていくものだ。ああ、そういえば、資金洗浄と売春婦のことにも触れておこうか?

 世界一高いビル、ブルジュ・ハリファは、ドバイが建設途中で資金難に陥り救済措置を必要としたため、アブダビの首長にちなんで名付けられた。おそらく人類史上最も正直な建造物と言えるだろう。それは他者の資金援助によって実現した野心の輝かしい広告塔だ。この方式は、ホルムズ海峡航行が確保されている限り見事に機能した。しかし、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃は、この前提を根底から覆した。

 ディズニーワールドが成功しているのは、その環境を完全に支配しているためだ。堤防の内側では現実が停止している。堤防の外側では、フロリダはフロリダのままで、私が証言する通り、それはある種の非現実ではあるが、ディズニーワールドほど演出されたものではない。ドバイにおける堤防は常に海峡だった。21マイルに及ぶこの海峡は、世界経済をこの地域に流れ続け、ドバイが地域の中継貿易拠点、物流ハブ、金融センターと高級リゾート地としての地位を単にあり得るだけでなく幾何学的に必然的なものにしたのだ。

 2026年3月にイランが海峡に機雷を敷設した際、ドバイは堤防に幅約21マイルの隙間があることを発見した。

 クルーズ船が最初に出港した、というより、出港しようとしたと言った方が正確だろう。6隻のクルーズ船は、まるで神権政治により排水口を塞がれた浴槽に閉じ込められた巨大で高価なゴム製アヒルのように湾内に閉じ込められていた。1万5000人の乗客は、購入したオールインクルーシブ・パッケージに、細かい字でイランの機雷除去作業が特典として含まれていないのに気づいた。船は最終的に、イランとアメリカが同時に海峡開通を主張した4月の短い期間に脱出し、安全な場所へ向かえた。乗客は別の場所で下船し、アラビア湾クルーズで一生分の興奮を味わったと判断したようだ。

 ドバイのもう一つの精神的源流であるラスベガスは、地理的条件は関係ないという根本的理念に基づいて築かれた。砂漠の真ん中にある都市でも、ネオンの光と人間の飽くなき欲望の力によって世界の中心になり得るという理念だ。ドバイはこの教訓を国家規模で応用した。ラスベガスが、ネバダ州の何もないところから都市を創り出せたなら、ドバイも歴史的に重要ながら、経済的には辺境の地にある水域の端にある砂漠に、何もないところから世界的金融センターを創り出せたのだ。

 違いは、ラスベガスが大陸の真ん中に位置している点にある。ラスベガスのサプライチェーンは、イランのフリゲート艦ではなく、州間高速道路15号線の交通渋滞に影響を受ける。ネバダ州で何か問題が起きた場合、それは人間規模の問題だ。一方、ホルムズ海峡で何か問題が起きた場合、それは文明規模の問題となり、運用上のリスクとしてはやや異なる範疇に属する。

 ドバイの港、中でも中東最大のジェベル・アリ港は地域随一の物流拠点としての地位が、地域へのアクセスが不可能になるまでは、並外れた競争優位性があることを痛感した。コンテナ船の入港は途絶え、湾岸地域で既に立ち往生していたタンカーはアフリカを迂回する航路を選んだため、航海に二週間余計に時間がかかり、これまで入念に整備されてきた物流拠点を完全に迂回することになった。貨物は流れ続けたものの、ドバイを通過するのではなく、迂回するようになった。まるで壮大なダムに遭遇した川が、その壮大な構造を称賛するどころか、静かに流路を変えるようなものだった。

 ドバイが経験しているのは、最大限の処理能力を念頭に置いて建設された都市が、その処理能力が別の場所へ向かう必要があることに気づいた特有の苦悩だ。レストランは相変わらず素晴らしい。ホテルのプールは、人類と気候の関係についての哲学的声明としか言いようのないほど温度管理されている。ドバイで最も特徴的な行事であるブランチ(金曜日の午後の正午に始まり、意識が朦朧とする頃に終わり、オハイオ州のコミュニティ・カレッジ一学期分の費用と同じくらい費用がかかる)は引き続き開催されているが、エネルギー危機に直面し、無制限の和牛や、他人の財産への近さの欲求を一時的に減らしているヨーロッパ金融部門からの参加者は減少している。

 不動産市場は、世界が静かに移行するためにどれだけ資金を必要としているかを示す信頼できる指標として20年間機能してきたが、不動産業者が「再調整期間」と表現し、他の人々が「暴落」と呼ぶ状況に陥っている。ドバイの不動産価格は、ディルハムだけでなく信頼感によっても左右される。そして信頼感には、ドバイの根本的前提、交差点理論、その立地の必然性が明確に理解できることが不可欠だ。だが交差点の一つが一時的に地雷で破壊されている状況は全く別問題だ。

 だが、ホルムズ危機は、ドバイの地位が人為的に作られたものではなく自然なもので、偶然ではなく必然的なものだったという心地よい虚構を少なくとも一時的に剥ぎ取った。ラスベガスが存在するのは、アメリカ人が法的制裁を受けずにギャンブルできる場所を求めたからだ。ディズニーワールドが存在するのは、ウォルト・ディズニーが駐車場を運営したかったからだ。ドバイが存在するのは、世界経済が特定の地理的場所に拠点を必要としており、そこに拠点を築く大胆さと資本を持った人物がいたからだ。

 三つとも、本質は「十分豪華に建てれば客は来る」という命題を実践したものだ。そのうち二つは、誰かが入り口を掘り起こした場合、どうなるかを心配する必要がない。

 だが、UAE全体、特にドバイには暗い側面もある。資金洗浄や外国諜報活動の中心地になっているのだ。ペルシャ湾岸でビジネス/エネルギー・コンサルタントをしている友人は、状況を次のように要約している。  
現在アラブ首長国連邦(UAE)は、シオニスト/イスラエルと結びついた湾岸地域の安全保障拠点として機能しており、併合国のような、あるいは新興植民地のような特徴を持っている。シオニスト/イスラエルおよびイスラエルと関係ある安全保障、サイバー、監視、防衛、情報関連システムは、国家の中核能力に浸透し、主要な安全保障および技術層に対する効果的な戦略的支配を確立している。

この浸透は、UAEの軍事組織、国内安全保障体制、技術スタック、物流システム、金融チャネル、そして金融信頼基盤全体にわたって戦略的な脆弱性を生み出している。

 資金の流れに関する理論も変化した。ドバイおよびアラブ首長国連邦(UAE)は、オフショア資本、制裁対象資金、犯罪組織の収益、アフリカ、金、不動産、貿易、高級資産、企業組織に関連する不正資金の流れにとって、長年にわたり流動性の高い中継地役を果たしてきた。しかし、戦争リスクと安全保障統合のショックにより、こうした資金の流れは損なわれた。透明性、安定性と、揺るぎない信頼に依存する資本は、受け入れ国が紛争構造に明らかに組み込まれている場合、不安定になる。

 同国は、構造的にアメリカ・イスラエル安全保障体制と整合しており、運用面ではイスラエル関連の安全保障および技術力に依存していると評価されている。影響は外交的なものにとどまらない。UAEの安全保障機構、技術機構、軍事組織、サイバー防衛層、そして金融信頼体制は、シオニスト/イスラエルおよびイスラエル関連のシステム、ベンダー、諜報機関との連携、防衛協力により深く浸透されていると評価されている。UAEを不透明化、流動性確保、資産転換、金、企業階層化、高級消費、貿易ルート、不動産投資に利用してきた資金の流れは、現在、戦争リスクの再評価、制裁措置の監視、諜報機関の監視と、資本逃避の圧力にさらされている。
 さて、毎週のように現金入りバッグを抱えてUAEを訪れているのは一体誰の叔父だと思われるだろう? もしあなたがウォロディミル・ゼレンスキーだと答えたなら正解だ。私の情報源によると、ゼレンスキーの叔父は地元銀行に預金し、そのお金で不動産を購入し、その後売却する。売却益はイスラエルの銀行に送金され、全てきれいに処理される。そこから、ウクライナへの支援に対する感謝の印として、資金の一部がアメリカ議員に渡される。

 アラブ首長国連邦はかつての華やかな栄光を取り戻すのか? おそらくアメリカとイスラエルの対イラン攻撃の直接的結果の一つは、アラブ首長国連邦の銀行に保管されていた巨額の資金の多くがシンガポールの方が安全だと判断したことで、これがドバイからの大規模資本流出を引き起こした。事実上ペルシャ湾からアメリカが追放されたことと、湾岸地域に新たな安全保障体制を構築しようとする中国とロシアの取り組みが相まって、アラブ首長国連邦は、過去の関係を再評価している。今後どのような道を選ぶか不明だが、アラブ首長国連邦の首長は6月9日にテヘランに代表団を派遣した。酒と売春婦を好む裕福な外国人のいない未来をドバイは考えているのだろうか? おそらく。

――――――――――――――――

 原文では、これ以降、ラリー・ジョンソン氏と様々な相手の対談Youtube映像が続くが省略させていただく。

記事原文のurl:https://sonar21.com/which-country-is-the-big-loser-from-the-ramadan-war/

----------

 寺島メソッド翻訳NEWS ブライアン・バーレティック(Brian Berletic)記事翻訳
アメリカがイスラエルに“支配されている”という主張は、歴史的にも構造的にも誤りであり、 むしろアメリカ自身が長い歴史を持つ帝国的暴力の主体である。

2026年5月20日 (水)

ドルの罠:湾岸諸国を統制しようとするワシントンの企み


2026年5月17日
アニス・ライス
Strategic Culture Foundation

❗️Telegram Twitter , と VK でご参加願いたい。

お問い合わせ: info@strategic-culture.su

 ワシントンがあなたに信じ込ませようとしている話は単純だ。対イラン戦争がペルシャ湾岸諸国の経済を崩壊させ、アメリカが同盟諸国国に救いの手を差し伸べているというものだ。提案されているUAEドル・スワップ協定を、ウォール・ストリート・ジャーナルは金融セーフティ・ネットと呼び、フィナンシャル・タイムズは救済策と呼び、CNBCは救済措置と呼んでいる。本当の問題は、一体誰が連邦準備制度理事会の門をくぐる権利を得るのか、そして、どのような政治的条件の下でそれが実現するのかだ。

 枠組みは整っているものの、数字が合わない。UAEは2700億ドルの外貨準備高と約2兆ドルの政府系ファンドを保有している。救済対象とされる国は、救済資金の10倍ものドルを保有しているのだ。救済策は弱者を救うものだが、今回の救済策は、湾岸諸国の反抗に耐えられない体制を守るためのものだ。

 2026年4月中旬、ワシントンでスコット・ベセント財務長官と会談した際、アラブ首長国連邦中央銀行のハレド・モハメド・バラマ総裁はドル・スワップ協定構想を提起した。このニュースはウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。数日後、ベセント長官は上院歳出委員会でこの構想を擁護して、スワップ協定は「米ドルの優位性とアメリカの経済防衛力の強さを証明するものだ」と述べた。

 CNBCの番組「スクワーク・ボックス」で、この動きを支持するかどうか問われたドナルド・トランプ大統領は「もし彼らに問題があるなら…私は彼らを支援する」と答えた。

 スワップ・ラインとは、中央銀行、二行間の予備的取り決めのことだ。例えるなら、2軒の家をつなぐ非常用水道管のようなものだ。バルブが開くまでは何も流れないが、水道管自体が近隣住民の不安を和らげてくれる。

 この発表に関して注目すべき点が3つある。まず何も署名されていない。資金も一切移動していない。UAE自身の大使館でさえ公式に反論している。アブダビが外部からの財政支援を必要としているという指摘は「事実を誤解している」と大使館は述べている。

 では、救済される国が救済を必要としていないと否定した場合、ワシントンは一体何を発表していることになるのか?
 
救命ボートを必要とするヨット

 数兆ドルもの国家資産を持つ国が、なぜワシントンとの緊急連絡回線を必要とするのだろう? 主流メディアは、対イラン戦争の緊張感を漠然と指摘しているが、実際の財務状況は別のところを示している。

 自分のヨットに乗っている人に救命胴衣を投げるわけにはいかない。UAEは、ベセントが議会の承認なしに運用できるアメリカ財務省基金全体の10倍ものドル準備金を保有している。その基金、 為替安定化基金 (ESF)の上限は約2190億ドルだが、アブダビ中央銀行の準備金だけでもそれを上回っている。UAEの政府系ファンドを加えると、救助者が指ぬきを持って洪水に駆けつけるようなもので、被救助者は指ぬきすら持っていないことになる。

 ベセントは上院に「アジア同盟国を含む多くの国々が、独自の通貨スワップ協定を求めている」と述べた。彼は目標を「湾岸地域とアジアにおける新たな米ドル資金調達センターの設立」と位置づけた。

 アラブ首長国連邦の要請は入り口に過ぎないかもしれないが、ワシントンはより広範な構想を練っている。アメリカの保護に対する信頼を湾岸諸国が弱めているまさにその時に、ドルを中心とした地域的流動性マップを構築することだ。

 スワップラインは、事前に設置された圧力インフラで、UAEの不足に対応するためではなく、湾岸諸国の首都が、ドルが要求する服従に見合う価値はもはやないと判断する日のために構築されたものだ。
 
ガタガタと震え始めたリサイクル装置

<  50年以上にわたり、ドルは静かな機械のように機能してきた。湾岸諸国はドル建てで石油を販売し、そのドルは国債、不動産、株式や武器へ還元される。これを帝国が自らの財源を確保する方法だと『エコノミック・ヒットマンの告白』の著者ジョン・パーキンスは表現した。

 その資金の流れこそが、8%の連邦財政赤字を乗り切るのを可能にしているのだ。アメリカ経済は自力で収支を均衡させていない。均衡化を、ドル余剰資金を再投資してくれる誰かに委託しているのだ。湾岸諸国は、資金拠出が石油自体と結びついている唯一の資金提供諸国だ。

 イラン戦争とホルムズ海峡封鎖は湾岸諸国を崩壊させたわけではない。湾岸諸国は依然健全な財政状態を保っている。戦争によって問題になったのは、その循環自体だった。2025年5月、トランプ大統領のリヤドとアブダビ訪問は、現代アメリカ外交史上最大規模の二つの支援策を生み出した。

 サウジアラビアは、兵器、エネルギー、インフラ分野に1兆ドルを投じると約束し、その中にはアメリカ史上最大の1420億ドルの兵器取り引きも含まれる。アラブ首長国連邦は、AI、半導体、バイオテクノロジー分野を中心に、10年間で1兆4000億ドル拠出すると約束した。両国とも覚書が多く、正式契約書は少なかった。

 一年後、対イラン戦争が続き、ホルムズ海峡の領有権争いが激化し、アメリカ安全保障保証が機能し損ねているのを湾岸諸国の首都が目の当たりにする中、これら覚書には疑問が残る。果たしてそれらは実行されるのか? そして、リヤドとアブダビが、ワシントンへのドル送金が安全をもたらすという確信を失っているとしたら、なぜこれまでと同じペースで送金を続けるのか? まさにこの疑問が持ち上がった瞬間、スワップ協定が締結されたのだ。
 
ドル売りへの警告射撃

 この動きの中心人物を見てみよう。スコット・ベセントは1992年、ジョージ・ソロスと共にイギリス・ポンドを空売りし、イングランド銀行をわずか1日で破綻させることで巨額の富を築いた。彼は脆弱な通貨制度の弱点を探し出す略奪者として実績を積んできた。そして今、彼はその弱点を守る立場に立っているのだ。

 彼が資金を引き出している為替安定化基金ESFの上限は約2190億ドルだ。これは彼が議会の承認を得ずに使える資金の総額で、今回の危機規模からすれば、ほんのわずかな金額に過ぎない。

 では、この発表は実際は何を意味するのか? それは、ロンドン、シンガポール、香港の取引所、つまり次にドル売り注文が出されるだろう場所に向けて放たれた警告弾だ。ベセントはかつてその取引所に籍を置いていたため、その場所をよく知っている。また、彼は信憑性のある脅しが実際の火災と同等の効果を発揮することも知っている。要は、皆が参入する前に、取り引きが混雑しているように見せかけることだ。

 その意図は彼自身の言葉に表れている。ベセントは上院に対し、UAEとの通貨スワップ協定を緊急措置とは説明しなかった。彼はそれを、湾岸地域とアジア全域に恒久的ドル資金調達拠点を構築するための「重要な第一歩」と呼んだ。
 
パイプはすでに東に向かって敷設されている

 主流メディア報道では、このスワップ協定は二国間協定として扱われている。しかし、報道で触れられていないのが中国だ。アラブ首長国連邦(UAE)は 2012年から中国人民銀行と人民元スワップ協定を結んでおり、サウジアラビアも2023年11月に同様協定を締結した。両国は、中央銀行が自国デジタル通貨で決済を行い、ドルを介さずに済むようにする中国主導のプラットフォーム「プロジェクトmBridge」に参加している。

 中国の人民元スワップ・ネットワークは現在40カ国以上に及んでいる。一方、FRBの常設ネットワークは5カ国にとどまっている。石油販売を人民元建てに移行する可能性があるとUAE当局が4月に警告した際、大多数はそれを交渉戦術だと解釈した。だが、それは、はったりではなかった。既にインフラは整っていたのだ。

 この傾向は中央銀行に限ったことではない。アラブ首長国連邦が警告を発してから10日後、サウジアラビアは中国の消費者向け決済ネットワーク、Alipay+の直接利用を1200万人の国民に許可した。

 リヤドはあらゆるレベルで選択肢を創出している。中央銀行間決済はmBridge、消費者決済はAlipay+、その両方を支える国内決済ネットワーク「mada」だ。インフラが既に整っているのだから、方向転換を宣言する必要はない。まずは代替手段を構築し、その後、ドル体制への依存が自然に解消されるのを待つべきだ。

 ベセントが提唱する「湾岸地域とアジアにおける恒久的資金調達センター」は、中国がドル圏外の貿易インフラ構築に15年を費やした後に実現した。ワシントンは今、湾岸諸国に対し、もはや理論上の選択肢でなくなった今、アメリカが管理するルートへの再コミットメントを求めている。イラン戦争によりアメリカ安全保障の限界が露呈した後、この要求はかつてほどの重みを持たなくなっている。
 
内側に開く連邦準備制度理事会(FRB)の門

 ケビン・ウォーシュ就任で真の転換期が訪れた。退任する連邦準備制度理事会議長のジェローム・パウエルは、潔白な状態で退任するわけではない。2026年1月、司法省は 連邦準備制度理事会に対し、パウエルに関連する刑事訴追をちらつかせる大陪審召喚状を発行した。パウエル議長は、この調査を連邦準備制度理事会に金利面で圧力をかけるための「口実」だと非難した。トランプ大統領はパウエル議長解任を繰り返し示唆していたが、連邦判事が司法省の召喚状を却下したことで、後に圧力活動は弱まった。

 ウォーシュは中立的テクノクラートではない。彼は1億ドル以上の資産を持つ元モルガン・スタンレーの銀行家で、スタンレー・ドラッケンミラーのファミリーオフィスから1020万ドルの顧問料を昨年受け取った。また彼は国内最大級のトランプ献金者ネットワークの一つで、アブラハム合意の政治構造と深い繋がりを持つローダ一族の一員と結婚している。

 連邦準備制度理事会(FRB)の門をメキシコ湾岸地域に開くために任命される人物は、その門が開かれようとしているシステム外部からやってくるわけではない。

 ウォーシュは、エリザベス・ウォーレン上院議員をはじめとする上院銀行委員会の民主党議員らへの公式回答で、これを可能にする原則を説明した

 「連邦準備制度理事会(FRB)の独立性は、金融政策の運営において最高潮に達している」と彼は記した。「だが、その独立性は、議会によって義務付けられたFRBの全機能に及ぶものではない」。更にウォーシュは「国際金融に影響を与える問題に関しては、FRBは政権および議会と協力していく」と付け加えた。

 それが決定的証拠だ。連邦準備制度理事会(FRB)の世界経済への扉を、それを守るべき人物が行政機関に引き渡そうとしているのだ。

 現在この体制の中心には三人座っている。財務省のベセントは、かつて中央銀行を破綻させたこともある強欲な人物で、今回提案の先頭に立っている。連邦準備制度理事会のウォッシュは背後にある流動性供給の鍵を握っている。そして両者の背後にはローダーがおり、彼のネットワークは湾岸地域へのアブラハム合意推進の政治的原動力になっている。

 正常化によって流動性は増加するのか? 合意に署名したペルシャ湾岸諸国にはFRBの融資窓口が開かれ、それ以外の国々には閉ざされたままなのか?

 今日から、一体誰がアメリカのパイプラインを手に入れるか見守ろう。それが本当の疑問への答えとなる。他の国々は既に自国パイプラインを敷設し始めている。

元記事: thecradle.co

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/05/17/dollar-trap-washingtons-bid-to-keep-the-gulf-in-line/"

---------

 東京新聞 朝刊 一面
有償ボランティアなのに
「労働者」同然
発達障害メイド喫茶「元スタッフ」訴え
シフト勤務、売り上げ目標も課され
 東京新聞 朝刊 特報面  
 赤旗記者脅迫 維新・藤田氏は投稿原因と認めず

 犬笛の責任は

 続く名刺さらし「与党幹部の立場 考えるべき」

 首長時代 橋下氏は激しく罵倒

 維新のメディア攻撃 脈々と

 危うい報道監視 高市政権も

 Xで発信 支持者に「間接的な犬笛」
 植草一秀の『知られざる真実』
高市内閣カミダノミクス

2026年5月17日 (日)

中国の習主席から現実を突きつけられたトランプ



2026年5月15日
論説
Strategic Culture Foundation

 今週行われたドナルド・トランプ大統領の中国公式訪問は様々な意味で画期的な出来事だった。

❗️Telegram Twitter , と VK でご参加願いたい。

お問い合わせ: info@strategic-culture.su

 今週行われたドナルド・トランプ大統領の公式中国訪問は様々な点で画期的な出来事だった。トランプ大統領は、中華人民共和国が用意した盛大な儀式と華やかな歓迎の中で、習近平中国国家主席から温かく迎えられた。

 アメリカ大統領が最後に中国に足を踏み入れたのは、トランプが一期目政権時代に訪問した2017年のことだった。それから9年間で両国関係は大きく変化した。今や、アメリカが著しく影響力を失ったのは明らかだ。

 トランプが以前中国に対して見せていた強気な態度は消え失せた。対中貿易における要求を突きつける強硬発言もなくなった。以前、中国に厳しい貿易関税を課すとトランプが脅迫した際、北京はより重大な対抗措置でワシントンを牽制した。しかし今日、アメリカ大統領は強気な発言をしない。中国は世界的経済大国として台頭しており、アメリカは慎重に対応している。

 今週二日間の訪問中、トランプ大統領には新たな事業機会を求める多くのCEOが同行した。中国は寛大かつ礼儀正しく対応したが、アメリカが新たな世界的大国から経済的恩恵を得ようと躍起になっているのは明らかだった。

 アメリカや西欧メディアでさえ、この明らかな状況の変化を指摘した。「アメリカは中国に対する影響力を失った」と『フォーリン・アフェアーズ』は見出しで報じた。

 トランプは「素晴らしい取り引き」を成立させたと主張したが、中国側は詳細を一切明らかにしなかった。ボーイング社旅客機200機購入に中国が合意したとホワイトハウスが発表したが、そのような購入はなかったと中国外務省は否定した。他の米メディア報道では、トランプが中国を去った際に得た経済的利益は「ほとんどなかった」と指摘されている。

 身振り手振りからもその様子がうかがえた。習主席はいつものように控えめで威厳のある態度だった一方、トランプ大統領はまるで懇願者のように、習主席と何度も握手し「偉大な指導者」と繰り返し称賛した。面白いことに、トランプ大統領が商売上の優遇措置を熱心に売り込む様子は、海外訪問の際に、ウクライナのゼレンスキー大統領がしつこく援助を要求する様子を彷彿とさせた。

 かつてトランプが、中国がアメリカ経済を「強姦」し、アメリカの産業を「搾取」していると非難していたのを想起願いたい。だが今やそのような無作法な威勢の良さは見られない。アメリカ大統領は、中国の経済力が、あらゆる分野でアメリカを凌駕する新たな地政学的現実に見合った礼儀正しく敬意を払う姿勢を見せている。

 客観的動向は、現実を突きつけるものとなっている。アメリカ経済は、他の西側資本主義経済と同様、巨額債務と貧困・格差の拡大に苦しみ、衰退の一途を辿っている。一方、中国の中央計画経済は革新的でダイナミックで、驚異的な社会発展と生産力を生み出している。更に、中国は、破綻寸前の西側諸国を特徴づける覇権主義的ゼロサム・ゲームではなく、多極化する世界での他国との協力と提携関係を提唱している。

 トランプ大統領による無謀で犯罪的な対イラン侵略戦争は、アメリカの力が政治的にも軍事的にも限定されていることを証明した。2月28日、イスラエル政権と共謀してトランプ大統領はこの戦争を開始した。しかし、イラン・イスラム共和国の強固な軍事防衛力は、アメリカとイスラエル侵略者に戦略的敗北をもたらした。イランは、世界的に重要なペルシャ湾からのエネルギー輸送ルートを掌握している。行き詰まりを招いたトランプ大統領の侵略行為は、アメリカ経済と大統領自身の政治的立場に致命的打撃を与えている。

 これがトランプ大統領の北京訪問の主目的だった。つまり、イランとの協力関係を利用して、ペルシャ湾で陥った泥沼からトランプ大統領が脱出できるような支援を中国に説得することだった。

 ホワイトハウスはイランとの戦争終結に向けて北京に協力を求めたことはないとマルコ・ルビオアメリカ国務長官は主張した。だが主張は信憑性に欠ける。今週の訪中を前に、停戦を受け入れるようイランに働きかけるのをトランプ大統領は中国に強く求めていた。

 ロシアと同様、中国はアメリカとイスラエルによる対イラン攻撃を非難している。今週、北京は戦争の終結を求め、そもそも戦争を始めるべきではなかったと述べた。

 イラン産原油の主要輸入国中国の戦略的エネルギー供給を弱体化させるために、アメリカがこの地域を不安定化させているのを中国は十分認識している。ワシントンがベネズエラを攻撃して中南米からの供給を遮断したのと同じだ。

 いずれにせよ、イランは紛れもなく新たな独立した世界的大国として台頭した。ペルシャ湾からの石油・ガス輸送ルートを揺るぎなく支配し、アメリカとイスラエルに対する軍事的抵抗を成功させたことで、イランは中国やロシアから独立して、自国の国益と原則を主張できるようになった。

 核による壊滅をほのめかすような忌まわしい威嚇発言をする以外、イランに対してトランプ大統領が使える切り札は皆無だ。イランはひるむことなく、アメリカの侵略行為や違法制裁の停止を含む独自の和平条件を提示している。

 アメリカ大統領に対して、中国は多くの華やかな儀式と丁重な対応を示したかもしれない。だがそれは敗者に対して優位に立っているのを自覚している大国の行動だった。

 アメリカが衰退する大国の陥る「トゥキディデスの罠」を回避できるのかと習国家主席は鋭く問いかけ「戦略的安定」を求めた。

 だが今週、あらゆる友好的なやり取りの中で、中国首席から発せられた最も強いメッセージは、二枚舌で台湾を不安定化させる行為をアメリカが改めなければ、中国の主権に対する、そのような侵害は戦争につながるという厳しい警告だった。

 それはワシントンに対する警告で、人民大会堂の宴席に座っていたアメリカ大統領に手渡された。

 新たな歴史的時代に我々は突入している。アメリカの横暴と傲慢さは、もはや容認されない。アメリカ大統領が恩恵を求めて頭を下げても、叱責されるだけで何も得られない時、アメリカ帝国の終焉が近いのを悟るだろう。衰退ぶりは全世界が目の当たりにするほど明白だ。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/05/15/trump-gets-reality-check-from-china-xi/

----------

 植草一秀の『知られざる真実』2026年5月17日記事
鳩山元総理による高市発言批評
5月16日(土)午後、東京湯島の全国家電会館で「ガーベラの風」イベント

戦争と壊憲の危機にどう立ち向かうか
-「対米自立」「平和と共生」の政治実現に向けて-
を開催した。
 youtubeリンクが明記してあるので、コピーさせていただく。

https://www.youtube.com/watch?v=_lh3WqIoHDQ 2:31:31

https://www.youtube.com/watch?v=EJVz2CMcdUs1:17:56

2026年5月16日 (土)

ほとんど成果を得られずに中国を去ったトランプ

2026年5月15日
Moon of Alabama

 トランプ大統領の中国訪問が終わった。

 あの訪問から具体的成果は得られないと私は予想していた。  
トランプはいつものように帽子を手に北京にやってくる。彼はいつものようにハッタリをかませて「勝利」をもぎ取ろうとする。まるでアメリカが優位な立場にあるかのように振る舞う。中国は礼儀正しく振る舞うが、決してそれを受け入れない。

 今回訪問に向けた準備はほとんど行われなかった。シェルパたちが事前に集まって、両国間の深刻な問題を解決することもなかった。大きな契約や条約の署名もない。
 当初の希望の一つは、ボーイング社のジェット機約500機を複数の中国航空会社に売ることだった。今回訪問から帰国後、中国が200機購入するとトランプ大統領は主張した。この件について中国外務省は確認を拒否した。ボーイング社の株価は下落した。

 約20人の企業幹部がトランプに同行したが、彼らには特に計画や任務はなかったようだ。取り引きも成立せず、契約も締結されなかった。

 トランプ大統領は、NVIDIAの旧型AIチップの一部について、中国への販売をアメリカが禁止する措置を解除することを提案した。しかし、中国は既に同様性能のチップを自国製造しているため、この提案を拒否した。

 中国は、今回の協議の主な成果として「新たな立ち位置」と「建設的な戦略的安定」を挙げた。

 「新たな位置づけ」とは、アメリカと中国を対等な存在と捉え、客観的に見て中国の方が有利な立場にあると考えることだ。

 「建設的な戦略的安定」とは、中国が思うように動いている間は、アメリカは黙って静かにしていろという助言と解釈できるかもしれない。  
「建設的戦略的安定」とは、協力を主軸とした積極的安定、適切な範囲内での競争を伴う健全な安定、管理可能な相違を伴う恒常的安定と、期待可能な平和を伴う永続的安定を意味すると習近平国家主席は明確に指摘した。これら「4つの安定」は、米中関係の明確かつ実現可能な青写真を示している。これは一時しのぎの措置ではなく、長期的方針だ。ゼロサムゲームではなく、相互利益とウィンウィン協力関係だ。「4つの安定」は、建設的な姿勢で戦略的安定を主導し、戦略的安定を通じて長期的発展を保障するもので、米中関係が互いに成功と繁栄を共に築ける大国間関係であることを十分示している。
 トランプ大統領が中国訪問中、約30隻の中国船舶がイラン当局と連携してホルムズ海峡を通過した。トランプ大統領が中国にいたため、アラビア海のアメリカ海上封鎖部隊は、これら船舶を阻止する試みを敢行できなかった。このことは今後も中国の船舶航行を容認する前例になった。

 中国にとって、ホルムズ海峡は開かれている。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2026/05/trump-leaves-china-with-little-in-hand.html

----------

 東京新聞 朝刊 一面  
 「中国が米農産物購入」

 首脳会談で合意 年間数兆円規模か

2026年5月15日 (金)

対イラン戦争:サウジアラビアはイスラエルを非難し、ネオコンの大御所は敗北を認めている

2026年5月11日
Moon of Alabama

 ここ数日の間に、注目すべき記事が二つ発表された。両記事の著者は、ともに、ジョージ・W・ブッシュ政権とイラク戦争に深く関わっていた経験豊富な右翼戦略家で、互いに関連している。

 最初の記事はトゥルキ・アル・ファイサルによるものだ。  
彼はサウジアラビア建国の父、アブドゥル・アジーズ国王の孫で、ファイサル国王の息子だ。彼はキング・ファイサル財団のイスラム研究センター会長を務めている。

 1979年から2001年まで、トゥルキ王子はサウジアラビアの情報機関アル・ムハバラート・アル・アンマ長官を務め、2001年9月1日に辞任した。15人のサウジアラビア国民がアメリカの民間航空機をハイジャックした9月11日同時多発テロの10日前だった。

 その後、トゥルキ王子はセントジェームズ宮廷およびアメリカ合衆国大使を務めた。
 ファイサルは、土曜日に準国営メディアのアラブ・ニュースに掲載された論説記事で、アメリカによる対イラン戦争の背後にある重大な陰謀を明らかにした

 サウジアラビアはイランに不満を抱いているものの、湾岸地域全体が現在陥っている混乱の真の原因はイランではないと認めている。  
イランなどがサウジアラビア王国を破滅の渦に引きずり込もうとした時、サウジアラビア指導者たちは、国民の生命と財産を守るため、隣国に引き起こされる苦痛に耐えることを選んだ。もしサウジアラビア王国が、イランの施設や権益を破壊することで、イランに対して同様の報復措置を取ることを望み、また実際にそうする能力を持っていたら、アラビア湾沿岸、更には王国奥深くにあるサウジアラビアの石油施設や海水淡水化プラントが破壊されるという結果になっていただろう。

 もしイスラエルが対イラン戦争を引き起こす計画が成功していたら、この地域は荒廃と破壊に陥っていたはずだ。何千人もの息子や娘が、我々と何の利害関係もない戦いで命を落としていたはずだ。イスラエルはこの地域に自らの意思を押し付け、周辺地域における唯一の勢力として君臨していたはずだ。

 ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の英知と先見の明により、サウジアラビア王国は戦争の惨禍とその壊滅的影響を回避できた。実際、現在パキスタンと共に、サウジアラビア王国は、戦闘の火を消し止め、事態の悪化を防ぎ、平和を求める人々が愛する人々の命と国益の安全について安心できるという希望を与えている。
 この論説記事は、サウジアラビアが戦争の拡大を促していると主張していたシオニスト・プロパガンダ担当者に広められた全ての噂を否定している。

 三年前の中国による仲介で、イランとサウジアラビア間で政治的合意が成立して以来、両国間で大きな衝突は起きていない。戦争にもかかわらず、サウジアラビアはハッジ(大巡礼)にイランからの巡礼者を歓迎し ている。イランはサウジアラビア国内の米軍施設を攻撃したが、サウジアラビアの主要石油利権への攻撃は控えている。その結果、国営石油会社サウジアラムコは記録的利益を上げている。

 サウジアラビアの姿勢は、アメリカが湾岸地域における覇権的役割を失ったことを示す多くの兆候の一つだ。

 強硬ネオコンのロバート・ケーガンが、親戦派のアトランティック誌に寄稿した2つ目の論説記事も、この見解を裏付けている。ブッシュ/チェイニー政権を、対イラン戦争へと駆り立てたケーガンは、アメリカがイランとの戦争に敗れたことを認めている。  
イランにおける王手 ― この戦争に敗れた結果をワシントンは覆すことも制御することもできない。アーカイブ) ―アトランティック

 紛争でアメリカが完全敗北を喫し、戦略的損失が修復も無視もできないほどの決定的後退を経験した時代を思い浮かべるのは困難だ。

 現在の対イラン戦争における敗北は全く異なる性質のものだ。修復も無視もできない。以前の状態に戻ることはなく、被った損害を覆したり克服したりするような最終的なアメリカの勝利もない。ホルムズ海峡は、かつてのように「開かれた」状態にはならない。海峡を支配することにより、イランはこの地域における主要当事者、世界における主要当事者の一人として台頭する。イランの同盟国、中国とロシアの役割は強化され、アメリカの役割は大幅に縮小する。戦争支持者が繰り返し主張してきたように、この紛争はアメリカの力量を示すどころか、頼りにならず、始めたことをやり遂げる能力のないアメリカを露呈した。これは、アメリカの失敗に、同盟諸国や敵国が適応していく中、世界中で連鎖反応を引き起こすだろう。
 アメリカにはこのジレンマから抜け出す道がないことをケーガンは認めている。  
たとえトランプがイラン「文明」を破壊するという脅迫を実行に移し、更なる爆撃を行ったとしても、イランは政権崩壊前に(そもそも政権が崩壊すると仮定した場合)、多数のミサイルやドローンを発射できる。わずか数回の攻撃が成功するだけで、この地域の石油・ガスインフラは数年、場合によっては数十年にわたり麻痺し、世界とアメリカを長期にわたる経済危機に陥れる可能性がある。たとえトランプが撤退戦略の一環としてイランを爆撃し、強硬姿勢を見せて、撤退を隠蔽しようとしても、このような大惨事を招くリスクなしには実行できない

 これは王手ではないにせよ、それに近い。
 ケーガンは代替案として対イラン全面戦争も検討しているが、それは更に悪い道で、より大きな失敗につながる可能性が高いとして切り捨てている。  
現在のイラン政権を打倒するため本格的地上戦と海戦を展開し、新政権が樹立されるまでイランを占領する覚悟がアメリカにない限り、また係争中の海峡でタンカーを護衛する軍艦を失うリスクを冒す覚悟がない限り、更に、イランの報復により、地域全体の生産能力に壊滅的な長期的損害が生じることを覚悟しない限り、今撤退するのは最悪の選択肢でないように思えるかもしれない。政治的観点から言えば、トランプ大統領は、より大規模で長期にわたり、費用もかさむにもかかわらず、最終的に失敗に終わる可能性がある戦争を生き延びるより、敗北を乗り切る方が可能性が高いと感じているのかもしれない。

 従って、アメリカにとって、敗北はあり得るだけでなく、むしろ可能性が高い。敗北とはこういうことだ。

 海峡における新たな現状は、地域的にも世界的にも、相対的な力と影響力に大きな変化をもたらす。この地域では、アメリカは張り子の虎だと証明され、湾岸諸国や他のアラブ諸国はイランに迎合せざるを得なくなる。イラン研究者のルーエル・ゲレヒトとレイ・タケイが最近書いたように「湾岸アラブ諸国の経済は、アメリカ覇権という傘の下で築かれてきた。それを奪い、それに伴う航行の自由を奪えば、湾岸諸国は必然的にテヘランに物乞いをすることになる」。

 彼らだけではない。湾岸諸国のエネルギーに依存している全ての国は、イランとの間で独自の取り決めを結ばなければならない。他にどんな選択肢があるだろう?
 対イラン戦争での敗北は、世界におけるアメリカの立場に、より広範な影響を与えるとケーガンは考えている。

 ポスト・アメリカ世界への世界的適応は加速している。かつてアメリカが支配的だった湾岸地域におけるアメリカの地位低下は、数多くの犠牲のほんの始まりに過ぎない。

 今週後半、ドナルド・トランプ大統領は中国訪問予定だ。フィナンシャル・タイムズに掲載された今回訪問に関する政権側の事前記事(アーカイブ)は、アメリカは依然、戦争を利用して世界中に圧力をかけられると主張している。  
「大統領は圧力をかけると予想している」と、ある米当局者は記者会見で述べた。

 トランプ大統領は、中国によるイランとロシアへの支援、具体的には軍民両用部品の提供や潜在的武器輸出について、習近平国家主席との以前の協議を再開すると述べた。

 「この協議は今後も続くと予想している。ここ数日の間にアメリカからいくつかの措置、つまり制裁措置が出されたのを目にしたと思うが、それらは確実に協議の一部になる」と当局者は付け加えた。

 金曜日、イランが中東で米軍に対する軍事攻撃を行うのを支援する画像や他のサービスを提供したとして、中国の衛星企業三社にアメリカ国務省が制裁を科した。また財務省は、イランが中国から携帯式地対空ミサイル(MANPADS)を輸入するのを支援したとして、YUSHITA (Shanghai)International Trade Co., Ltdにも制裁を科した。
 戦争に敗れた以上、制裁ゲームも終わったのだということをトランプは未だに認識していない。中国であれ、他のどの国であれ、湾岸地域で失った覇権的地位をアメリカが取り戻すのを支援することは決して利益にならない。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2026/05/war-on-iran-saudis-blame-israel-neocon-grandee-concedes-defeat.html

----------

 耕助のブログ  
No. 2901 米国のAI産業は破滅の運命にある
 The Chris Hedges Report
Trump's Iranian Nightmare
Trump’s catastrophic miscalculation in Iran and refusal to accept the Inevitability of defeat is pushing us towards a global depression and ensuring the suffering and immiseration of millions.

Chris Hedges
May 14

2026年5月12日 (火)

対イラン戦争:サウジアラビアがイスラエルを非難し、ネオコンの大御所が敗北を認める

2026年5月11日
Moon of Alabama

 ここ数日の間に、注目すべき記事が二つ発表された。両記事の著者は、ともに、ジョージ・W・ブッシュ政権とイラク戦争に深く関わっていた経験豊富な右翼戦略家で、互いに関連している。

 最初の記事はトゥルキ・アル・ファイサルによるものだ。  
彼はサウジアラビア建国の父、アブドゥル・アジーズ国王の孫で、ファイサル国王の息子だ。彼はキング・ファイサル財団のイスラム研究センター会長を務めている。

 1979年から2001年まで、トゥルキ王子はサウジアラビアの情報機関アル・ムハバラート・アル・アンマ長官を務め、2001年9月1日に辞任した。15人のサウジアラビア国民がアメリカの民間航空機をハイジャックした9月11日の同時多発テロの10日前だった。

 その後、トゥルキ王子はセントジェームズ宮廷およびアメリカ合衆国大使を務めた。
 土曜日に準国営メディアのアラブ・ニュースに掲載された論説記事で、アメリカによる対イラン戦争の背後にある重大な陰謀をファイサルは、明らかにした

 サウジアラビアはイランに不満を抱いているものの、湾岸地域全体が現在陥っている混乱の真の原因はイランではないと認めている。  
イランや他の国々がサウジアラビア王国を破滅の渦に引きずり込もうとした際、サウジアラビア指導者たちは、国民の生命と財産を守るため、隣国に引き起こされる苦痛に耐えることを選んだ。もしサウジアラビア王国が、イランの施設や権益を破壊することで、イランに対して同様の報復措置を取ることを望み、また実際にそうする能力を持っていたら、アラビア湾沿岸、更には王国奥深くにあるサウジアラビアの石油施設や海水淡水化プラントが破壊されるという結果になっていただろう。

 もしイスラエルが対イラン戦争を引き起こす計画が成功していたら、この地域は荒廃と破壊に陥っていたはずだ。何千人もの息子や娘が、我々と何の利害関係もない戦いで命を落としていたはずだ。イスラエルはこの地域に自らの意思を押し付け、周辺地域における唯一の勢力として君臨していたはずだ。

 ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の英知と先見の明により、サウジアラビア王国は戦争の惨禍とその壊滅的影響を回避できた。実際、現在パキスタンと共に、サウジアラビア王国は、戦闘の火を消し止め、事態の悪化を防ぎ、平和を求める人々が愛する人々の命と国益の安全について安心できるという希望を与えている。
 この論説記事は、サウジアラビアが戦争の拡大を促していると主張していたシオニスト・プロパガンダ担当者に広められた全ての噂を否定している。

 三年前、中国の仲介により、イランとサウジアラビア間で政治的合意が成立して以来、両国間で大きな衝突は起きていない。戦争にもかかわらず、ハッジ(大巡礼)にイランからの巡礼者をサウジアラビアは歓迎し ている。イランはサウジアラビア国内の米軍施設を攻撃したが、サウジアラビアの主要石油利権への攻撃は控えている。その結果、国営石油会社サウジアラムコは記録的利益を上げている

 サウジアラビアの姿勢は、アメリカが湾岸地域における覇権的役割を失ったことを示す多くの兆候の一つだ。

 強硬ネオコンのロバート・ケーガンが、親戦派のアトランティック誌に寄稿した2つ目の論説記事も、この見解を裏付けている。ブッシュ/チェイニー政権を、対イラン戦争へ駆り立てたケーガンは、アメリカがイランとの戦争に敗れたことを認めている。  
イランにおける王手 ― この戦争に敗れた結果をワシントンは覆すことも制御することもできない。アーカイブ) ―アトランティック

 紛争でアメリカが完全敗北を喫し、戦略的損失が修復も無視もできないほどの決定的後退を経験した時代を思い浮かべるのは困難だ。

 現在の対イラン戦争における敗北は全く異なる性質のものだ。修復も無視もできない。以前の状態に戻ることはなく、被った損害を覆したり克服したりするような最終的なアメリカの勝利もない。ホルムズ海峡は、かつてのように「開かれた」状態にはならない。海峡を支配することにより、イランはこの地域における主要当事者、世界における主要当事者の一人として台頭する。イランの同盟国、中国とロシアの役割は強化され、アメリカの役割は大幅に縮小する。戦争支持者が繰り返し主張してきたように、この紛争はアメリカの力量を示すどころか、頼りにならず、始めたことをやり遂げる能力のないアメリカを露呈した。これは、アメリカの失敗に、同盟諸国や敵国が適応していく中、世界中で連鎖反応を引き起こす。
 アメリカにはこのジレンマから抜け出す道がないことをケーガンは認めている。  
たとえトランプがイラン「文明」を破壊するという脅迫を実行に移し、更なる爆撃を行ったとしても、イランは政権崩壊前に(そもそも政権が崩壊すると仮定した場合)、多数のミサイルやドローンを発射できる。わずか数回の攻撃が成功するだけで、この地域の石油・ガスインフラは数年、場合によっては数十年にわたり麻痺し、世界とアメリカを長期にわたる経済危機に陥れる可能性がある。たとえトランプが撤退戦略の一環としてイランを爆撃し、強硬姿勢を見せて、撤退を隠蔽しようとしても、このような大惨事を招くリスクなしには実行できない。

 これは王手ではないにせよ、それに近い。
 ケーガンは代替案として対イラン全面戦争も検討しているが、それは更に悪い道で、より大きな失敗につながる可能性が高いとして切り捨てている。  
現在のイラン政権を打倒するため本格的地上戦と海戦を展開し、新政権が樹立されるまでイランを占領する覚悟がアメリカにない限り、また係争中の海峡でタンカーを護衛する軍艦を失うリスクを冒す覚悟がない限り、更に、イランの報復により、地域全体の生産能力に壊滅的な長期的損害が生じることを覚悟しない限り、今撤退するのは最悪の選択肢ではないように思えるかもしれない。政治的観点から言えば、トランプ大統領は、より大規模で長期にわたり、費用もかさむにもかかわらず、最終的に失敗に終わる可能性がある戦争を生き延びるより、敗北を乗り切る方が可能性が高いと感じているのかもしれない。

 従って、アメリカにとっては、敗北はあり得るだけでなく、むしろ可能性が高い。敗北とはこういうことなのだ。

 海峡における新たな現状は、地域的にも世界的にも、相対的な力と影響力に大きな変化をもたらす。この地域では、アメリカは張り子の虎だと証明され、湾岸諸国や他のアラブ諸国はイランに迎合せざるを得なくなる。イラン研究者のルーエル・ゲレヒトとレイ・タケイが最近書いたように「湾岸アラブ諸国の経済は、アメリカ覇権という傘の下で築かれてきた。それを奪い、それに伴う航行の自由を奪えば、湾岸諸国は必然的にテヘランに物乞いをすることになる」。

 彼らだけではない。湾岸諸国のエネルギーに依存している全ての国は、イランとの間で独自の取り決めを結ばなければならない。他にどんな選択肢があるだろう?
 対イラン戦争での敗北は、世界におけるアメリカの立場に、より広範な影響を与えるとケーガンは考えている。  
ポスト・アメリカ世界への世界的適応は加速している。かつてアメリカが支配的だった湾岸地域におけるアメリカの地位低下は、数多くの犠牲のほんの始まりに過ぎない。
 今週後半、ドナルド・トランプ大統領は中国訪問予定だ。フィナンシャル・タイムズに掲載された今回訪問に関する政権側の事前予測記事(アーカイブ)は、アメリカは依然、戦争を利用して世界中に圧力をかけられると主張している。  
「大統領は圧力をかけると予想している」と、ある米当局者は記者会見で述べた。

 トランプ大統領は、中国によるイランとロシアへの支援、具体的には軍民両用部品の提供や潜在的武器輸出について、習近平国家主席との以前の協議を再開すると述べた。

 「この協議は今後も続くと予想している。ここ数日の間にアメリカからいくつかの措置、つまり制裁措置が出されたのを目にしたと思うが、それらは確実に協議の一部になる」と当局者は付け加えた。

 金曜日、イランが中東で米軍に対する軍事攻撃を行うのを支援する画像や他のサービスを提供したとして、中国の衛星企業三社にアメリカ国務省が制裁を科した。また財務省は、イランが中国から携帯式地対空ミサイル(MANPADS)を輸入するのを支援したとして、YUSHITA (Shanghai)International Trade Co., Ltdにも制裁を科した。
 戦争に敗れた以上、制裁ゲームも終わったのだということをトランプは未だに認識していない。中国であれ、他のどの国であれ、湾岸地域で失った覇権的地位をアメリカが取り戻すのを支援することは決して利益にならない。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2026/05/war-on-iran-saudis-blame-israel-neocon-grandee-concedes-defeat.html

----------

 東京新聞 夕刊 一面   
 ふるさと納税 手数料1379億円

 総務省 サイトに引き下げ要請へ

 寄付の一割超 自治体の負担重く
 この制度を考えた人物を支持していないため、利用しておらず、今後の利用予定もない。

 Wikipedia記事からごく一部を引用する。
 菅は「ふるさと納税の検討を私が指示したのは、少なからず田中康夫がきっかけだった」と周囲に述べている。
 植草一秀の『知られざる真実』
消費税は社会保障財源という嘘

対イラン戦争への対応は、GCC諸国を永久に分裂させてしまったのか?



マーティン・ジェイ
2026年5月7日
Strategic Culture Foundation

 サウジアラビアとアラブ首長国連邦は、どちらも戦争の大きな犠牲者だが、トランプ政権とイランの合意が維持された場合、両国はそれぞれ全く異なる解決策を見出すための姿勢を取っている。

❗️Telegram Twitter , と VK でご参加願いたい。

お問い合わせ: info@strategic-culture.su

 サウジアラビアとアラブ首長国連邦は、どちらも戦争の大きな犠牲者だが、トランプ政権とイランの合意が維持された場合、両国はそれぞれ全く異なる解決策を見出すための姿勢を取っている。

 トランプの壊滅的なイラン戦略の結果の一つは、GCC諸国とワシントンの関係を、おそらく永久に破壊してしまったことだ。ジョー・バイデンの大統領在任中、サウジアラビアとアメリカの関係は、バイデンが選挙運動中に、サウジアラビアを侮辱したのを謝罪しなかったことで悪化した。その後、バイデンがサウジアラビアを訪問した際に、石油生産国がアメリカのガソリン価格にどれほどの影響力を持つかを皇太子はバイデンにまざまざと見せつけた。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子と拳を突き合わせる瞬間は多くのことを物語っていたが、その瞬間から、サウジアラビアや他のGCC諸国がロシアと中国の両方と新たな武器取り引きについて協議しているという報道が流れた。

 今日、状況は遙かに悪化している。当時は、武器調達を多様化して、ロシアと中国を交渉材料として利用することが構想されていた。対イラン戦争によりGCC諸国の石油輸出が滞り、経済が圧迫される中、アメリカとの合意、つまり大規模軍事駐留と巨額のアメリカ製兵器購入が、ついに決定的局面を迎え、究極の試練に失敗したと一部の指導者たちは考えている。「この地域で、アメリカは自国さえ守れないのに、どうして我々を守ってくれると期待できるだろう」とあるサウジアラビア大臣は述べた。

 だが、これまでイランによる石油インフラへの普遍的脅威と考えられていたものは、GCCとイスラエルの関係を理由に、今やUAEだけを標的にしているように見える。UAEは依然イスラエルとの関係修復を望んでおり、その点がUAEを特別な存在にしていると言える。そのため、トランプ大統領が(石油タンカーをホルムズ海峡で護衛することを目的とする)笑ってはいけない「プロジェクト・フリーダム」という奇妙な名前の計画を進めようとした際、UAEの石油インフラがミサイル攻撃標的リストの筆頭に挙げられるのは必然だった。イランはアメリカとイスラエル両国に対して、テヘランは石油インフラと、この地域でのイスラエル最大の同盟国を攻撃するという非常に明確なメッセージを送ったのだ。

 こうしてフジャイラ石油精製所が攻撃を受けたが、ここは単なる港ではなく、UAEの長い石油パイプラインの終点でもあることを忘れてはならない。ハブシャン・フジャイラ石油パイプラインはUAEの戦略的生命線で、ホルムズ海峡を迂回するよう設計された全長380~406kmのパイプラインだが、UAEがそれを実現できる可能性は今や完全に消え去った。現在の輸送能力は日量150万バレル(180万バレルまで拡張可能)で、アブダビはハブシャン油田から原油や石油製品を、脆弱な海峡の要衝を迂回してオマーン湾のフジャイラ・ターミナルに直接輸出できたはずだった。少なくとも、それが計画だった。

 では、イランはなぜサウジアラビアの石油インフラも攻撃しなかったのか? 答えは、地政学的駆け引きをサウジアラビアが巧みに操り、イランに対して、敵でないだけでなく、イスラエルからこれまで以上に遠ざかっているのを示したためだ。サウジアラビアは外交ルートを駆使して、リヤドがGCC(湾岸協力会議)において、イスラエルに対する見解や地理的近さという点で、GCCを真っ二つに分裂させる上で重要な役割を果たせるとイランを説得してきた。必要とあらば、フーシ派に圧力をかけて紅海を封鎖させることも厭わない。現在、サウジアラビアは80年代、90年代に持っていた地域における影響力をいくらか取り戻しつつあり、UAE(アラブ首長国連邦)の敵国になりつつある。今やサウジアラビアは、イランと同盟関係にはならずとも、平和的な隣国になるための新たな代替モデルを提示している。リヤドによるこの妥協案は、まさに天才的な一手で、原油価格の安定化と、対イラン戦争の沈静化と、トランプ大統領が切実に必要としている出口への道を開く解決策となるかもしれない。トランプ大統領は、サウジアラビアが主導したこの動きを自らの功績として主張し、再び戦争の勝利者となれるからだ。

 本記事執筆時点で、トランプ大統領は彼のソーシャルメディアでイランとの合意が成立したと発表した。もしこれが事実で、この合意が維持されるなら、イスラエルとの軍事協力強化に向けたUAEの動きは、イスラエルを問題の原因と見なし、解決策を求める相手と考えていない他のGCC加盟国にとって容易に忘れ去られるものではあるまい。サウジアラビアはアブラハム合意とイスラエルによるガザ爆撃を最も強く批判している国だ。

 確かに、サウジアラビアのような地域大国はイランとの連携を強化する役割を担えるかもしれないが、アメリカ人ジャーナリストにトランプ大統領が何度も「アメリカは勝った」と語っていることを考えれば、トランプ大統領が実際勝者でないことを否定しているため、これまでそれは常に困難だった。ホルムズ海峡を恒久的に支配することになった今、GCCがイランに対し、より現実的な姿勢を取るべきだという主張はかつてないほど強まっている。合意に署名することと、それを尊重することは別物で、トランプ大統領が5月6日水曜日に署名すると言っている「合意」は、一週間も持たないのではないかと多くの人が疑っている。

 ソーシャルメディアで、ECOSOC国際連合経済社会理事会のモハマド・サファが的確に表現した。「8回も破壊されたイラン海軍が再びホルムズ海峡を封鎖したのは、アメリカが7度目の(戦争ではなかった)戦争に勝利したためだ。だからアメリカは、戦争以前に開いていたホルムズ海峡を再び開けるのだ」と皮肉を込めて彼は述べた。

 だが冗談はさておき、外交が成功する見込みがあるとすれば、GCC内の分裂が深まることで、こうした合意が加速する可能性がある。イランはおそらく、この組織に亀裂を生じさせるつもりはなかっただろうが、UAEが分別をわきまえ、イスラエルから距離を置き、サウジアラビアとより緊密に協力して、将来的に紅海パイプライン利用に関する合意を結ぶとしたら、アブラハム合意は一体どれくらいの期間存続できるのかという疑問を真剣に問わざるを得ない。一般の人々にとって、これは当然のように思えるが、もちろん見た目以上に複雑な事情がある。だが近年、イスラエルと、その地域的野望を性急に受け入れるのにサウジアラビアが抵抗してきたことは、主要石油ターミナルの破壊を受け、アブダビのエリート層が現実を直視するようになるにつれ、アブダビにとっての悩みの種であり続けるだろう。GCC諸国指導者たちは、互いにいがみ合ったり、点数を競い合ったりするのをやめ、団結する必要がある。サウジアラビアとアラブ首長国連邦が対立する現状の地域分裂は、イランの利益を更に助長するだけだからだ。トランプ大統領が自ら招いたこの問題を解決できないことを、これらアラブ諸国エリートたちは認識する必要がある。イランの核兵器製造能力を棚上げするとされる合意があろうとなかろうと、合意を確実に履行させるためにはトランプ大統領はあらゆる支援が必要だろう。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/05/07/has-the-handling-of-the-iran-war-divided-the-gcc-permanently/

----------
 
60% Of Israel Wiped Out: The Entire System Is Collapsing Faster Than Expected. | Jeffrey Sachs 31:52
 東京新聞 朝刊 一面  
 イラン回答 トランプ氏拒否

 交渉平行線、核で隔たりか
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名

引用「「ナフサショック」で今夏にも倒産急増か…ナフサ不足に伴う「調達リスク」に直面する可能性ある4万6741社(製造業の3割)を襲う「調達危機」の深刻度、仕入れコストが上昇、価格転嫁が追いつかず収益性が悪化、今夏頃から企業倒産が急増する懸念」

2026年5月 8日 (金)

エネルギーを巡る激震:ウクライナと対イラン紛争がヨーロッパの未来をどのように変えたのか



ロレンツォ・マリア・パチーニ
2026年5月6日
Strategic Culture Foundation

 根本的な問題は、ヨーロッパが産業基盤と国際経済システムにおける地位を永久に失うことなく、エネルギー危機を乗り越えられるかどうかだ。

Telegram、 Twitter 、VKで私たちをフォローしてください。

お問い合わせ先: info@st​​rategic-culture.su
 
全身性エネルギー・ショックの解剖学的構造

 2021年から2024年にかけて、欧州のエネルギー・システムは、戦後大陸の経済史において未曾有の急速かつ衝撃的な変革を遂げた。2022年2月のロシアによるウクライナへの特別軍事作戦、それに伴う制裁措置、モスクワによるエネルギー面での報復と、中東の海上輸送ルートにおける構造的緊張が重なり、いわば二重の地政学的・エネルギー的ショックが発生した。すなわち、欧州の主要化石燃料供給経路である東側のロシア回廊と、南東側のペルシャ湾回廊が同時に寸断されたのだ。

 この危機の規模を理解するためには、まず危機以前の状況を明確に把握する必要がある。2021年、欧州連合はロシアから約1,550億立方m(Bcm)の天然ガスを輸入し、これは総需要の45%を占めた(ユーロスタット、2022年)。ロシアからの原油輸入量は1日あたり約270万バレルで、総輸入量の27%を占めた。ロシア産石炭は欧州の輸入量の46%を占めた。合計すると、ロシアはEUの一次エネルギー消費量の約24%を供給していたと推定され、これは現代世界において、他のどの同盟体制にも見られない依存度だ。

 同時に、欧州の液化天然ガス(LNG)輸入量のかなりの部分、そして増加傾向にある部分は、ペルシャ湾岸地域、特にカタールから来ており、現在もその傾向は続いている。これらの供給は、欧州の再ガス化港に到達する前に、ホルムズ海峡と紅海を経由しなければならない。2023年末に始まったイエメン危機と紅海におけるフーシ派の作戦は、数十年間、理論上の問題にとどまっていた脆弱性を具体的現実に変えてしまった。

 ロシアやイランからのエネルギー供給ルートに代わる、ヨーロッパのエネルギー供給ルートの現状はどのようなものか。こうした代替経路への強制的移行がもたらす本当の代償は、価格面だけでなく、産業競争力、インフレ、社会安定性といった面で、どのようなものか。そして、今後10年から15年間に、ヨーロッパのエネルギー・システムの構造的回復力に関して、具体的見通しはどうなっているのか。
 
主要な事実

 2021年、ロシアは欧州連合が輸入するガスの45%、石油の27%、石炭の46%を供給していた。これらの供給がほぼ同時に途絶えたことは、1973年以来、欧州大陸史上最大のエネルギー供給ショックとなった。
 
2. ヨーロッパのエネルギー輸送経路の地理と内訳

2.1 2022年以前のシステムの構造

 1990年から2020年までの30年間に構築された欧州のエネルギー供給システムは、戦略的多様化より経済的安定と費用削減を優先するロシアとのインフラ統合という論理に基づいていた。ロシア・ガスは、主に3つの回廊を中心としたパイプライン網を通じて欧州に供給されていた。

 北ヨーロッパ回廊(ノルドストリーム1号線と2号線、総容量110Gmc/年)、ウクライナ送電システムを経由するウクライナ回廊(近年は約40~45Gmc/年)、およびトルクストリームとバルカンシステムを経由する南部回廊(約30Gmc/年)。

 このシステムには明確な経済的利点があった。危機以前のロシア・パイプラインガスの価格は1メガワット時(MWh)あたり5~10ユーロだったのに対し、中東やアメリカからのスポットLNGは10~15ユーロだった。統合は深く、長期契約(通常15~25年)によって欧州の買い手には予測可能性が保証され、ロシアの予算には安定収入が確保された。このシステムの論理は、国際関係論者が「複雑な相互依存」と呼ぶものだった。相互依存の関係にあるため、紛争は双方にとって、経済的に非合理的なものになるはずだった。
 
ロシア回廊の崩壊:その力学とタイミング

 崩壊は瞬時に起きたのではなく、徐々にエスカレートする過程をたどり、欧州の対応を更に困難にした。ロシア特別軍事作戦数ヶ月前の2021年夏には、ガスプロムは自社の貯蔵備蓄を低く抑えつつ、欧州への供給量を削減していた。多くの専門家(Pirani、2022年、Oxford Institute for Energy Studies、2022年)は、これを冬に備えて価格をつり上げ、欧州の備蓄を弱体化させるための意図的な戦略だと解釈していた。2022年2月~3月に制裁が始まると、供給量は徐々に減少した。ノルド・ストリーム1は2022年6月に容量の40%に、7月には20%に削減され、2022年8月には完全に停止した。公式にはタービンに関する技術的紛争が原因とされているが、事実上、制裁への対応だった。

 決定的な出来事は、2022年8月にノルドストリーム1号線と2号線のパイプラインが破壊されたことで、これは破壊行為で、責任は国際調査の対象になっているが、これにより、これら回廊の喪失は短期から中期的に物理的に不可逆となった。ウクライナ回廊は別の輸送協定の下で運用が続けられたが、この協定は2024年12月31日に期限切れとなり、ウクライナは更新しないことを選択した。トルコ・ストリームは引き続き稼働しているが、主にバルカン半島とトルコの市場に供給している。全体的影響として、ロシアからEUへのガス供給量は2021年の155 Gmcから2023年には約25 Gmcに減少し、僅か2年間で130 Gmcの純損失となった(IEA、2024年)。  
ペルシャ湾ルートの脆弱性

 ホルムズ海峡は、航行可能な最小水路幅が約33キロで、世界のエネルギー・システムにおいて最も重要な輸送拠点だ。

 ホルムズ海峡は、1日あたり約2,000万~2,100万バレルの石油および精製製品が通過し、世界の石油消費量の約21%を占めるとともに、世界LNG貿易の相当部分を占めている(EIA、2023年)。ヨーロッパにとって、ホルムズ海峡の重要性は2022年以降劇的に高まっている。ロシア産ガスを、カタール産LNG(カタールは世界第2位のLNG輸出国)に置き換えることで、ヨーロッパはエネルギー依存の一部を、地政学的にリスクの高い東側回廊から、地政学的に脆弱な南東側の別回廊へ移した。

 2023年11月にガザ紛争への対応としてフーシ派が海上交通を攻撃したことから始まった紅海危機は、この理論上の脆弱性を具体的運用上の問題へと変えた。危機のピーク時にはスエズ運河の交通量が40~50%減少した(Kpler、2024年)。そのため、多くの船舶が喜望峰を迂回する航路を取らざるを得なくなった。この代替航路は航海に10~14日余計にかかるため、輸送費、保険料、設備投資費用が増加する。

 2022年以前、ロシア産ガスの欧州における価格は5~10ユーロ/MWhだった。代替品として用いられるアメリカ産またはカタール産LNGは、通常の市場状況下では10~20ユーロ/MWhで安定しており、2022年8月には投機的高騰で340ユーロ/MWhに達した。この構造的価格差こそが、欧州の競争力問題の根源だ。
 
代替エネルギー経路:現実、可能性と限界

 2022年から2023年にかけて、アメリカは欧州へのLNGの主要供給国となり、欧州大陸への輸出量は危機以前の期間と比べて2倍以上に増加した。2021年の約22Gmcから2023年には56Gmc以上になった(アメリカ・エネルギー情報局、2024年)。この増加には、ルイジアナ州とテキサス州で承認された新施設によるアメリカの液化能力拡大と、欧州での再ガス化ターミナルの建設またはチャーターを急ぐことが必要だった。2021年にはLNGターミナルがなかったドイツは、2022年12月から2023年半ばにかけて4基の浮体式ターミナル(FSRU)を稼働させ、総容量は約20Gmc/年となった。

 だがアメリカ産LNGには構造的制約があり、ロシア産ガスを完全に代替するのは困難だ。まず価格の問題だ。アメリカ産LNGには液化、大西洋横断輸送、保険、再ガス化の費用が含まれるため、パイプラインガスより構造的に高価になる。

 第二に、契約の柔軟性の欠如:アメリカ産LNGの長期契約のほとんどは「仕向け地指定なし」条項を課しているものの、価格決定メカニズムはアメリカのヘンリーハブ市場に連動しており、欧州のニーズとのずれを生じさせている。第三に、輸送能力:世界のLNGタンカー船隊は、これまでパイプラインで輸送されていた量を完全に代替できるほど十分な規模ではなく、船隊を急速に拡大するには、1隻あたり3~5年の建造期間が必要になる。

 カタールは2022年から2023年にかけて、ドイツ、フランス、ベルギー、イタリアを含む複数欧州諸国と長期契約を締結した。これらの契約は通常15年から27年間続き、ある程度の予測可能性をもたらす一方、2つの根本的問題を抱えている。1つ目は地理的な集中だ。カタールのLNG輸出は全てホルムズ海峡を経由しなければならず、本来軽減されるはずだった地政学的脆弱性がそのまま残ってしまう。海峡での軍事危機や(テヘランが頻繁に発動する抑止措置)イランによる封鎖は、カタールのLNGと湾岸諸国の石油の欧州供給を同時に混乱させるだろう。

 2つ目の問題は、カタールLNGを巡るアジア市場との競争だ。中国、日本、韓国は伝統的にペルシャ湾からの輸出の大部分を吸収しており、カタールの拡張能力(2027年までに輸出能力を年間7700万トンから1億2600万トンに増加させるノースフィールド拡張プロジェクト)は、ウクライナ危機以前に締結された契約を通じて、既に一部がアジア市場に先行販売されている(カタール・エネルギー、2023年)。

 ノルウェーは2022年以降、ヨーロッパへのパイプライン・ガスの主要供給国となり、輸出量は2021年の約113億立方mから2023年には122億立方m以上に増加した(NPD、2024年)。しかし、ノルウェーのガス田は既に最大生産能力に近づいており、新たなパイプライン建設には時間と投資が必要で、短期的には不足分を補えない。アルジェリアは、メドガス(スペイン)とトランスメド(イタリア)のパイプラインを経由してヨーロッパにガスを供給しており、量は年間約30~35億立方メートルで安定している。ここでも拡張能力は地質的制約と、新たなガス田の開発に多額の投資が必要なことから制限されている。

 南部ガス回廊は、アゼルバイジャンのカスピ海ガス田と、TAP(トランスアドリア海パイプライン)を経由してジョージア、トルコ、ギリシャ・イタリアを結び、ヨーロッパと繋がっている。

— 2021年に年間約100億立方mのフル稼働能力に達した。2022年7月、アゼルバイジャンはEUと、2027年までに輸出量を年間200億立方mに倍増し、更に300億~350億立方mまで拡大する協定を締結した。この回廊は、ロシアやホルムズ海峡に依存しない利点があるが、その能力は欧州の需要やロシアの供給不足に比べると依然限定的だ。  
欧州産業にとってのエネルギー・ショックの本当の費用

 天然ガスの欧州における主要指標TTF(Title Transfer Facility)指数は、2022年に未曾有の変動を経験した。1月には約75ユーロ/MWh(過去の平均の4倍)で始まり、2022年8月には340ユーロ/MWhのピークに達したが、貯蔵施設の満杯、暖冬、産業需要の減少といった要因が重なり、徐々に下落した。2023年には、TTFは35~60ユーロ/MWhの範囲で安定したが、それでも危機前の水準の2~3倍で、欧州の生産コストに恒久的影響を与えている。

 電力に関しては、欧州市場の構造が影響を増幅させた。欧州市場では「限界価格設定」メカニズムが採用されており、電力価格はピーク需要時に稼働する限界発電所(通常はガス火力発電所)により決定される。その結果、産業用電力価格は2022~2023年に欧州のいくつかの国で300~400ユーロ/MWhまで上昇した(ユーロスタット、2023年)。これは危機前の平均60~100ユーロ/MWhと比較して大幅な上昇だ。

 エネルギー危機の影響を最も受けているのは、エネルギー集約型産業で、エネルギー費用が総生産費用のかなりの割合(通常15~40%)を占めている。欧州鉄鋼業界は、鉄鋼生産量を2021年の1億5200万トンから2023年には1億2900万トンに削減し、生産能力の約15%を失った(WorldSteel、2024年)。一次アルミニウム生産量は、ドイツ、フランス、スペインの多数の電解工場が一時的または恒久的に閉鎖されたことにより、約25%減少した(European Aluminium、2023年)。

 化学産業は、ドイツを中心地とし、同国のGDPの3%以上を占めているが、2022年には生産量が12%減少し、2023年には更に8%減少した(VCI、2023年)。特に深刻なのは、窒素肥料の原料となるアンモニアの生産だ。ヨーロッパのほとんどの工場は原料として天然ガスを使用しており、コスト上昇により、ヨーロッパの生産は中東やアメリカに比べて競争力を失っている。多くの肥料メーカーが生産量を削減したり、海外からアンモニアを輸入したりしており、農業サプライチェーンに波及効果をもたらしている。

 イタリア、ドイツ、スペインが世界をリードするセラミックス・ガラス産業は、生産工程のエネルギー集約度(窯の温度が1200~1700℃)の高さから壊滅的影響を受けている。イタリアの業界団体(Confindustria Ceramica)は、2022~2023年の期間に、トルコ、中国、インドの生産者に対する競争力が30~40%低下すると予測している(Confindustria Ceramica、2023年)。

 エネルギー危機の影響は製造業にとどまらず、インフレを通じて経済全体に波及した。ユーロ圏の総合消費者物価指数は2022年10月に10.6%のピークに達し(ECB、2022年)、単一通貨導入以来の最高水準となった。このインフレのほぼ半分はエネルギー関連要因によるものだったが、食料、輸送、サービスなどの価格上昇といった二次的影響は経済全体に広がった。

 家計の購買力低下は、経済的影響だけでなく、政治的、社会的な影響も及ぼし、ロシアへのエネルギー依存モデルを構築・擁護してきた欧州機関や各国の政治エリートに対する不満を煽った。エネルギー分析において、しばしば見落とされがちな社会的結束という側面は、あらゆるレジリエンス戦略の長期的な政治的持続可能性を理解する上で極めて重要だ。脆弱な家計や、最も影響を受けやすい産業部門に対する適切な補償制度がなければ、エネルギー転換の資金調達に必要な合意形成が損なわれる恐れがある。

 2023年における欧州と中国の産業用電力費用の差は約5対1だった。欧州と(IRAとシェールガスの恩恵を受けている)アメリカの差は約3.5対1だった。この構造的格差により、欧州製造業の多くの分野が国際比較において競争力が欠如している。
 
レジリエンスの可能性:新たな欧州エネルギー・システムに向けて

 ロシアとイランの二重ショックに対する長期的構造的対応策は、再生可能エネルギーへの移行を加速させて、化石燃料輸入への依存度を低減すること以外にあり得ない。これは理想論的な目標ではなく、国家安全保障のあらゆる面において必要不可欠なことだ。2035年までに欧州が電力の70~80%を再生可能エネルギー源から発電するようになれば、化石燃料の輸入への依存度は2021年と比較して60~70%減少し、エネルギー供給ルートの危機に対する構造的な脆弱性が効果的に解消されると国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は推定している(IRENA、2024年)。

 この方向での進展は既に著しい。2023年には、史上初めて再生可能エネルギー源(風力、太陽光、水力)が欧州の電力生産量の44%以上を占め、ドイツ、スペイン、デンマークではピーク時に50%を超えた(Ember、2024年)。EUにおける太陽光発電設備の設置容量は、2023年だけで約56GW増加し、これは過去最大の年間増加量となった。洋上風力発電は、コストが急速に低下しており、2030年までに北欧諸国や沿岸諸国で主要な発電源となる見込みだ。

 しかし、再生可能エネルギーへの移行には、依然として部分的にしか解決されていない2つの根本的な問題、すなわち断続性(太陽光発電は日中のみ、風力発電は風がある時のみ発電する)と季節規模のエネルギー貯蔵に対する解決策が必要だ。リチウム・イオン電池は日々の変動を管理するには十分だが、エネルギー需要が最も高く太陽光発電量が最も低い冬季の再生可能エネルギー生産不足を補うには不十分だ。グリーン水素(再生可能電力を用いた水の電気分解により生成される)は、季節的エネルギー貯蔵と高温を必要とする産業プロセスの脱炭素化にとって最も有望な解決策のように見えるが、産業規模での導入には依然多額の投資と技術革新が必要だ。

 2022年以降の欧州のエネルギー情勢における最も重要な展開の一つは、低排出で信頼性の高いエネルギー源としての原子力発電の再評価だ。2011年の福島原発事故以降、ベルギー、ドイツ、スイスなど欧州諸国のエネルギー政策を支配していた反原発パラダイムは、エネルギー危機により根本的に覆された。ドイツは、原子力発電所、最後の3基の運転期間を2023年4月まで延長した(その後、物議を醸す決定で、更なる延長の選択肢を放棄した)。ベルギーは2023年に、原子炉の閉鎖を10年間延期すると決定した。通常、国内電力生産の70~75%を賄う56基の原子炉を保有するフランスは、新たに6基のEPR2型原子炉を建設する計画を開始した。

 欧州レベルでは、いわゆる小型モジュール式原子炉(SMR)への関心が高まっている。SMRは、従来の大型原子炉に比べて建設コストが低く、建設期間も短い小型のモジュール式原子炉だ。ポーランド、チェコ共和国、ルーマニア、スウェーデンなど、いくつかの欧州諸国は、2030年から2035年までにSMRを建設するための評価プロセスや商業契約を開始している。原子力発電が、安定した信頼性の高い低排出電力供給基盤を提供できるのであれば、欧州のエネルギー・レジリエンス戦略において不可欠な柱になるだろう。

 エネルギー効率化による需要削減は、再生可能エネルギーの拡大と並んで、2022年の危機に対する最も迅速に実施された対応策だった。EUにおける天然ガス需要は、2022年に13%、2023年にさらに7%減少し、合計で2021年より約55GMc減少した。この減少は、ロシアからの供給なしで冬を乗り切るために必要な量を上回るものだった(IEA、2024年)。この減少は、個人の行動(建物の暖房を減らす、サーモスタットの設定温度を下げる)、産業対策(ガスを他のエネルギー源に置き換える、生産量を減らす)、および公共政策(啓発活動、建物の改修に対する税制優遇措置)の組み合わせによって達成された。

 更なる効率向上の可能性は非常に大きい。欧州の建物の約75%がエネルギー効率が悪いとされているが、これらの建物のエネルギー改修により、暖房用エネルギー消費量を40~60%削減できると推定されている(欧州委員会、2023年)。2022年5月に採択されたREPowerEU計画では、エネルギー転換を加速するために3,000億ユーロが割り当てられ、そのかなりの部分が建物と産業の効率化に充てられている。

 今回の危機は、欧州エネルギー体制のインフラ面における脆弱性だけではなく、エネルギー安全保障ガバナンスにおける制度的弱点も浮き彫りにした。エネルギー政策は、これまで各国の専権事項で、欧州レベルでの調整は域内市場の一般原則に限られていた。その結果、各国はそれぞれ異なるエネルギー依存度を抱え、脆弱性のレベルも大きく異なっている。例えば、ドイツはガス輸入の55%をロシアに依存している一方、スペインはLNGターミナルのおかげで、ほぼ完全にエネルギー源を多様化している。

 今回の危機への対応は、緊急事態下における協調能力(2022年夏にガス消費量を15%自主的に削減するという欧州の合意は維持された)と、分断されたガバナンス限界の両方を示した。自動的な連帯メカニズム、共有の戦略的貯蔵、LNGの一元的契約といった、本当の共通欧州エネルギー政策は、将来の危機発生時の集団的脆弱性を大幅に軽減できるだろう。国際エネルギー機関(IEA)と同様の権限を持ち、加盟国に対して拘束力を持つ欧州エネルギー機関(EEA)設立案は、欧州大陸の政治議論に再び力強く浮上しており、真剣に検討されるべきだ。

 欧州が現在のペースで再生可能エネルギーの拡大を維持し、REPowerEUで概説されているエネルギー効率化計画を実施すれば、2035年までにガス輸入への依存度は年間300GMc(2021年)から年間100GMc未満に低下し、エネルギー供給経路の危機に対する脆弱性の大部分を構造的に解消できる可能性がある。
 
2035年までの欧州のエネルギー安全保障に関する3つのシナリオ
 
シナリオA ― 回復力の加速

 最初のシナリオでは、欧州は2023年に記録した再生可能エネルギー拡大のペースを維持し、建物の改修プログラムを加速させ、蓄電(バッテリー、水素、揚水発電)に多額の投資を行い、原子力発電容量を維持または拡大する。このシナリオでは、2035年までに、化石燃料は欧州の一次エネルギー構成の30%未満を占めることになる。ガス輸入への依存度は年間80~100 GMcに低下し、その全てがロシア以外の供給源(ノルウェー、アルジェリア、アメリカLNG、アゼルバイジャン)で賄われる。中東の供給経路における危機に対する脆弱性は大幅に軽減され、再生可能エネルギーのコスト低下により、産業用エネルギー費用は、アメリカと同等の競争力を持つようになる。
 
シナリオB ― 段階的移行と残存する脆弱性

 2番目のシナリオ(現在の傾向に基づくと最も可能性が高いシナリオ)では、欧州は化石燃料への依存度を低減するものの、そのペースは当初の目標より遅くなる。官僚的障害、加盟国間の規制上の対立、新規風力発電所に対する地域住民の反対、送電網投資の遅れなどが移行を遅らせる。ガス輸入への依存度は2035年までに年間150~180 GMcの範囲にとどまり、そのかなりの部分が脆弱な航路(ホルムズ海峡、紅海)を経由して輸送される。欧州は、2022年より対応手段は発達しているものの、依然エネルギー危機に繰り返し直面することになる。  
シナリオC ― 断片化と後退

 3つ目のシナリオでは、移行コスト、インフレ圧力、共通エネルギー政策に反対する民族主義勢力の台頭によって引き起こされる国内政治危機が、欧州のエネルギー政策の分断を招く。各国は代替供給国と二国間協定を締結し(ウクライナでの停戦時にはロシアからの供給を部分的に再開する可能性もある)、欧州の協調体制を放棄する。このシナリオでは、集団的脆弱性は依然高く、供給国に対する欧州の交渉力は大幅に低下する。  
ヨーロッパのエネルギー存続は可能だが保証されているわけではない

 2022年から2024年にかけて、欧州は1973年の石油危機以来最も深刻なエネルギーショックに見舞われた。これは、30年以上にわたるロシア・エネルギー供給依存により生じた構造的脆弱性の下で起きた。だが供給源の多様化、LNGインフラの建設加速、需要削減、再生可能エネルギーの拡大といった迅速な対応により、多くの人が懸念していた大規模な配給制や産業停電を回避できた。これは決して小さな成果ではなく、欧州経済と諸機関が圧下で迅速に適応できる能力を示したものだ。

 だが、急激な衝撃を乗り越えたからといって、構造的問題が解決するわけではない。欧州は、一つの依存(パイプライン経由のロシア産ガス依存)を、部分的に異なる複数の依存(アメリカ産LNG、カタール産LNG、総需要を満たすには不十分な再生可能エネルギー)に置き換えたが、その中にはホルムズ海峡や紅海といった地政学的に脆弱な航路を通るものもある。

 アジアやアメリカの企業とのエネルギー費用差は依然大きく、戦略的分野における静かな脱工業化につながるリスクがある。

 長期的回復力の可能性は存在し、具体的に達成可能だが、そのためには当然とは考えられないいくつかの要素が揃う必要がある。すなわち現在のペースより高い割合で再生可能エネルギーへの投資を継続すること、季節的蓄電問題を解決すること、原子力発電能力を維持すること、本物の共通政策に向けた欧州のエネルギーガバナンス改革と、移行を政治的に持続させるために必要な社会的結束を維持する家計や脆弱な部門への支援体制だ。

 根本的な問題は、ヨーロッパがエネルギー危機を乗り越えられるかどうかではない。乗り越えられるのは確実だ。問題は、産業基盤と国際経済体制における地位を永久に失うことなく乗り越えられるかどうかだ。答えは、今後3年から5年の間に欧州機関と各国政府が下さなければならない政策選択にかかっている。歴史は、この好機をいつまでも維持してくれるとは限らない。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/05/06/the-energy-smash-how-ukrainian-and-iranian-conflicts-have-reshaped-the-european-future/

----------

 東京新聞 夕刊 一面  
 米イラン 海峡で攻撃応酬

 トランプ氏「停戦継続」

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

エチオピア 911事件関連 AI Andre Vltchek BRICS Caitlin Johnstone CODEPINK Eric Zuesse Finian Cunningham GMO・遺伝子組み換え生物 ICE ISISなるもの James Petras John Pilger Mahdi Darius Nazemroaya Mike Whitney Moon of Alabama NATO NGO Pepe Escobar Peter Koenig Prof Michel Chossudovsky Saker SCO Scott Ritter Stephen Lendman Thierry Meyssan Tony Cartalucci/Brian Berletic TPP・TTIP・TiSA・FTA・ACTA Unz Review Wayne Madsen WikiLeaks William Engdahl wsws アフガニスタン・パキスタン アメリカ アメリカ軍・軍事産業 アルメニア・アゼルバイジャン イエメン イギリス イスラエル・パレスチナ イラク イラン インターネット インド イーロン・マスク ウォール街占拠運動 ウクライナ エプスタイン オセアニア・クアッド オデーサ オバマ大統領 オマーン オーウェル カジノ カナダ カラー革命・アラブの春 キューバ ギリシャ クリス・ヘッジズ グリーンランド グレート・リセット サウジアラビア・湾岸諸国 シェール・ガス・石油 シリア ジーン・シャープ ソマリア ソロス タイ チベット チュニジア・エジプト・リビア・アルジェリア テロと報道されているものごと トゥルシー・ギャバード トヨタ問題 トランプ大統領 トルコ ドイツ ナゴルノ・カラバフ ノルドストリーム ノーベル平和賞 バイデン政権 バングラデシュ パソコン関係 ヒラリー・クリントン ビル・ゲイツ フィル・バトラー フランス ブラジル ベネズエラ ベラルーシ ホンジュラス・クーデター ボリビア ポーランド ポール・クレイグ・ロバーツ マスコミ ミャンマー ユダヤ・イスラム・キリスト教 レバノン ロシア 中南米 中国 中央アジア 二大政党という虚構・選挙制度 伝染病という便利な話題 共産主義 北朝鮮・韓国 地球温暖化詐欺 地震・津波・原発・核 宗教 憲法・安保・地位協定 授権法・国防権限法・緊急事態条項 文化・芸術 新冷戦 新自由主義 日本版NSC・秘密保護法・集団的自衛権・戦争法案・共謀罪 旧ユーゴスラビア 映画 東ヨーロッパ・バルト諸国 東南アジア 民営化 無人殺戮機 田中正造 経済・政治・国際 英語教育 読書 赤狩り 通貨 選挙投票用装置 関税 難民問題 麻薬 麻薬とされるマリファナについて

お勧め

  • IWJ
    岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

カテゴリー

ブックマーク

最近のトラックバック

無料ブログはココログ