中国

2026年8月19日 (水)

「アメリカ軍産複合体の最悪部分を『ハイパースケール化』する」アンドゥリル社

Brian Berletic
2026年8月13日
Newe Eastern Outlook

 億万長者のパーマー・ラッキー率いる兵器製造の「新興企業」アンドゥリルは、レイセオン、ロッキード、ボーイングといった従来のアメリカ兵器企業の、より小規模で効率的なバージョンに急速に変貌を遂げた。これは、捏造された脅威と巧妙な約束に基づき、数十億ドルもの税金を民間企業に効率的に移転させる新たなモデルだが、最終的には、誤った国民の期待を大きく裏切る結果となった。

 

 ラッキーとアンドゥリルは「ソフトウェア定義生産」といった概念を用いて、ロシアや中国の軍事産業生産と同等かそれ以上の規模で生産を「ハイパースケール化」すると誓っているが、中国の工場が既に長年にわたり、中国の圧倒的に大規模な産業基盤の中で取り入れている過程であるにもかかわらず、実際「ハイパースケール化」されているのは戦争プロパガンダと、それに伴う戦争利得だけだ。

 アメリカの既存大企業より「優れている」ものの、ロシアや中国には及ばない

 確かにアンドゥリル社は、従来のアメリカ兵器メーカーが製造する兵器に比べて遙かに低価格の兵器を開発しているかもしれないが、その品質、量、コスト削減の面ではロシアの同等品に及ばず、中国の軍事産業能力には遠く及ばない。

 アメリカはイランを実際に爆撃し、ウクライナを介してロシア国内で代理戦争を繰り広げているにもかかわらず、ロシアもイランも(中国も)アメリカ国内を攻撃したことは一度もない。

 アンドゥリル巡航ミサイルはレイセオン社製のものより安価だと言えるかもしれないが、射程距離や破壊力において、レイセオン社のミサイルに遠く及ばない。

 破られた数々のアンドゥリルの約束は、アメリカが海外で起こした数々の侵略戦争の戦場で白日の下に晒されてきた。

 戦場に革命をもたらすと謳われたアンドゥリル社のドローンは、既にウクライナに送られたものの、ロシア製ドローンの量と質に圧倒され、更に急速に進化するロシアの電子戦能力により、アンドゥリル社のドローンはまたしても高価で性能の低い兵器に変貌してしまった。

 ウォール・ストリート・ジャーナルは2025年後半の記事で下記のように認めている。  
アンドゥリル唯一の実戦経験であるウクライナでの運用も、敵の妨害電波に対する脆弱性など、様々な問題に悩まされてきたと元従業員やウクライナ・システムに詳しい関係者は述べている。例えば、ウクライナ保安庁(SBU)の最前線兵士の中には、アルティウス徘徊型ドローンが墜落し、目標に命中させられなかった者もいた。関係者によると、ドローンは問題が多発したため、2024年に使用中止し、それ以降配備されていないという。
 アンドゥリル社が開発中のその他の製品には「手頃な価格で大量生産可能な」巡航ミサイル「バラクーダ」シリーズが含まれる。既に「量産体制に入っている」とされているものの、2027年から年間約1,000発納入される見込みだ。

 バラクーダ500型は、同シリーズ中、最も射程が長く、射程930km、速度930km/時を誇るミサイルだが、弾頭重量は僅か45kgだ。

 このミサイルはまだ納入されていないが、ロシアが戦場で使用している様々な「手頃な価格の大量生産型」ミサイルや徘徊型弾薬、例えばゲラン系列の徘徊型弾薬などと比べても性能は遙かに劣っている。

 そのプロペラ駆動型は、バラクーダ500より射程が長く、より重い弾頭を搭載できる。

 ゲラン・ファミリーには、ジェット・エンジンを搭載した派生型もいくつかあり、その中にはゲラン5が含まれる。ゲラン5は、最大航続距離1,000km、速度450~600km/hで、90kgの弾頭(バラクーダ500の2倍)を搭載できる。

 これら派生型は全てアンドゥリル社の同等バラクーダ・ミサイルより遙かに安価だ。

 ロシアは他にも、バンデロール、Kh-69、イズデリエ-30巡航ミサイルなど、様々な「手頃な価格で大量生産可能な」兵器を開発してきた。これらは全て、アンドゥリル・バラクーダの様々な派生型の性能と同等かそれ以上で、しかも全てアンドゥリルの同等機種より安価だ。

 言い換えれば、ロシアだけが、戦場内外でアンドゥリルが宣伝で約束した性能に匹敵するか、それを上回る「手頃な価格の量産型」兵器を生産したのだ。

 アメリカの欠点は構造的なもの。

 アンドゥリルは、より根深い問題の単なる症状に過ぎない。

 アメリカの経済・政治体制の根本的特徴と、それが助長する営利主義と、莫大な軍事費増額を正当化するために用いられる脅威の空虚さが相まって、アメリカが目指す「手頃な価格の大量生産」は、ロッキード、レイセオン、ボーイングなどのアメリカ企業と比較した場合にのみ「手頃な価格」で、ロシアや中国で、より多く、より良く、より安価な兵器を大量生産している国営企業と比較した場合、そうではないことが明らかになった。

 アンドゥリアルをはじめとする西側諸国の「新興」企業は、欧米諸国の兵器製造にそもそもなぜ欠陥が存在するのかという一般の人々の無知につけこむマーケティング戦略を通じて、ロシアや中国の軍事産業生産に匹敵、あるいはそれを上回ると約束している。

 アメリカ覇権の基盤となっている経済・政治体制は、永続的利益と権力の追求に基づいている。軍事産業の生産拡大は権力増強の重要な前提条件ではあるが、永続的利益を犠牲にしてまでそれを行うことは、アメリカとその代理勢力が、ロシアや中国が武器や弾薬の開発・大量生産に用いる目的志向型の国営企業ネットワークに匹敵する規模に達するのを阻止する。たとえ利益を犠牲にしてでも、こうしたネットワークを構築することは不可能なのだ。

 ロシアと中国の軍事産業生産を監督する国営企業は、設計局と産業企業の間で「知的財産」を交換することが義務付けられており、あらゆる問題に対する最良の解決策がそれぞれの軍事産業基盤全体に普及するようにしている。これは個々の企業が財務帳簿上の利益を最大化するために「知的財産」を独占するのではなく、これら解決策を現実世界の目的に最大限活用するためだ。

 ロッキード、ボーイング、レイセオンといった既存の大手兵器製造企業と、アンドゥリルなどの「シリコンバレー新興企業」両方を含むアメリカ軍事産業基盤全体で兵器と弾薬生産を加速させるよう求める最近の政治的圧力は更なる資金提供の要求と結びついている。

 こうした更なる資金援助要求は、ロシア、中国、イランといった国々がアメリカに及ぼすとされる「脅威」によって正当化されているが、これはアンドゥリルを含む兵器製造企業自身が繰り返している嘘だ。

 これら実際の脅威は、漠然としたものから完全に捏造されたものまで多岐にわたるが、動機は、より具体的で、より大きな「安全」という幻想のために、より大きな利益を得ることなのだ。

 アメリカは既にロシア、中国、イランを合わせたより多くの軍事費を費やしているにもかかわらず、ロシアや中国の軍事産業生産にすら及ばず、場合によっては、イランの生産率や能力にも及ばない。

 ロシア、中国、イランの場合、追加軍事資金は、既存工場の拡張、新規工場の建設、研究開発への投資、サプライチェーンの強化、労働力増強や、実際の生産拡大に必要なその他の要素に直ちに充てられる。目的別システムにおける追加生産能力は、たとえ短期的に収益性を損なうとしても、たとえ使用されなくとも、長期的戦略的資産とみなされる。

 営利企業では、兵器製造、ひいては利益創出に継続的に活用されない余剰製造能力は負債とみなされる。アメリカ兵器企業は、生産拡大のために公的資金を要求するだけでなく、その能力を最大限に活用するための厳格な契約も要求する。

 アンドゥリルなどの「新興企業」は、兵器の研究開発と製造の両方で革命を起こしたと主張しているが、実際はどちらも実現しておらず、既存の経費削減策(例えば、既製部品を使用するなど)を利用して、高度にカスタマイズされた(そして高価な)部品で供給される従来型組み立てラインに依然依存している既存企業よりも比較的安価な兵器を製造しているに過ぎない。

 このことがいかに非現実的かは、一兆ドルを超えるアメリカ軍事予算と軍事産業生産量との間に既に存在する大きな格差と、その僅か10%に過ぎないロシア軍事予算だけで、アメリカの3~10倍もの武器弾薬を生産している事実を見れば明らかだ。中国の軍事産業生産量は言うまでもない。

 昨年同様、「新興」企業アンドゥリルと、その指導者パー​​マー・ラッキーなどの人物の本質は、アンドゥリルをはじめとする欧米諸国の営利目的の軍事産業基盤が、ロシアや中国の軍事産業生産量に匹敵するどころか、それを超えることさえ阻んでいる。ウクライナでの紛争が続く中、明らかになったこの事実は、アンドゥリルとラッキーがそれを理解しているか否か、あるいは認めたがっているか否かにかかわらず、彼らの利益追求の本当の動機を反映している。

 ラッキーの主張に説得されて、ロシアか中国どちらかが自分や自分の生活様式にとって本当に差し迫った脅威だと信じ込んでいるアメリカ人にとって、実際は、パルマー・ラッキー社やアンドゥリル社や、彼らのような企業や個人こそ、アメリカが国内の繁栄に必要な資源を、不必要に他国を敵視し、威圧する活動に転用し続けるよう要求しているのだ。

 その結果、アメリカ国民の富は、平均的アメリカ人の男性、女性、子どものためのより良い教育や医療やインフラ整備ではなく、パーマー・ラッキーの高価な兵器や、最終的には彼の次の新たな商売に流れていくことになる。

 アメリカはイランを爆撃し、ウクライナを通じてロシア国内で代理戦争を繰り広げているにもかかわらず、ロシアもイランも(中国も)アメリカ本土を攻撃したことは一度もない。だが、同じアメリカ国内での、教育や医療やインフラ整備の怠慢は、一般アメリカ人の生活の質を明らかに具体的に低下させている。

 アンドゥリル社のような企業が、ありもしない海外の脅威のために税金を流用し、アメリカ国内に存在しているアメリカ国民への脅威に対処するための資金を奪っていることが、この事態の問題なのだ。

 結局、パルマー・ラッキー社やアンドゥリル社や、その他の兵器製造業者やアメリカ外交政策を推進する営利企業は、虚構の中で、ロシアや中国がもたらすとされる脅威より、平均的アメリカ人とその生活様式にとって現実に遥かに大きな脅威になっている。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/08/13/anduril-hyperscaling-the-worst-of-americas-military-industrial-complex/

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 Brian Berletic氏、彼のYoutube番組The New Atlasでも本記事と同じ話題を語っている。33:17

US Shell Factory Exposed: Why US For-Profit Industry Can't Compete with Russian/Chinese Production
 東京新聞 朝刊 三面 総合  
 トランプ氏、オマーン威嚇

 イラン交渉「邪魔したら爆撃」

2026年8月 5日 (水)

対イラン戦争:もう一つのTACO(直前におじけづくトランプの方針転換) イランはエスカレーションする必要

2026年8月3日
Moon of Alabama

 またしても、イランを徹底的に爆撃するとアメリカ大統領が脅迫した。またしても、脅迫を彼は撤回し、同時にイランが交渉を懇願していると主張したが、それをイランは、またしても否定した。

 月曜日に、ようこそ。

 イラン爆撃に関して、トランプがTACO(おじけづいて方針転換)したのはこれで5度目だ

 先週土曜日、米軍が(再び)イラン爆撃準備を進めている最中、イランのアッバス・アラグチ外相は電話を取り、アラブ湾岸諸国の同僚たちに電話をかけた。そしてトランプ大統領が一度でも約束を実行したら、イランが破壊する各国標的のリストを読み上げた。

 湾岸諸国は互いに協議した。外交的言い回しで、トランプに「 黙れ」と伝える役目にサウジアラビアのムハンマド・ビン・スルタン国王が選ばれた。  
事態の悪化を防ぐため、対話を優先する必要性と、外交的解決への道を開き、地域の安全と安定を維持し、地域および国際的安全と安定に影響を与えるようなより広範な紛争を防ぐべく、平穏を実現するため、あらゆる努力を尽くす重要性を皇太子は強調した。
 石油を輸出しなければ、サウジアラビアはアメリカ兵器を輸入できない。生活費を賄うためサウジアラビアは国債を売却せざるを得なくなる。

 こうした二次的影響を説明したことが、トランプを動かした 可能性があるのかもしれない。  
事情に詳しい関係者によると、イランに対するアメリカ戦略と計画されている攻撃に関してもサルマン皇太子が明確な説明を求めたという。

 事情に詳しい関係者によると、戦争が長期化する中、自国がイランによる頻繁な攻撃にさらされている状況に対して、アメリカには明確な戦略が欠けていると見なして、湾岸諸国は水面下で不満を募らせているという。
 まだ全員が正気に戻ったわけではない。  
全ての湾岸諸国が緊張緩和を求めているわけではない。協議に詳しい湾岸諸国高官によると、ここ数日、イランに対し、より断固とした措置を取るよう、アラブ首長国連邦など一部の国がトランプ大統領に働きかけているという。事態をアメリカがエスカレートさせて、海峡の支配権を掌握し、場合によっては、地上作戦を検討するまで、イランの強力なイスラム革命防衛隊は妥協しないと、これら高官たちは示唆している。
 アラブ首長国連邦自身、イスラエル製兵器を山ほど大量購入したにもかかわらず、自国を守れていない。首長国連邦指導者連中は相当な懲罰を受ける必要がありそうだ。

 海峡をアメリカは制圧できない。現地作戦に必要な人員が不足している。もはや米軍には打つ手がない。  
水曜日「我々はイランに圧力をかけ、罰するための新しい創造的で型破りな方法を探している」と幅広い軍事専門家の集団に送ったメッセージで米中央軍情報部将校が書いたと、メッセージを知る情報筋が明らかにした。別の情報筋によると、先週、米軍高官が、イランへの対処方法に関する新しい発想を募るメッセージを送ったという。

 CNN報道によると、アメリカが行っている爆撃では、イランの交渉姿勢が変わる可能性は低いと最近中央情報局と国防情報局は評価している。

 爆撃だけではトランプ大統領がこれまで述べてきた戦争の目的を全て実現するのは困難だと大統領最上級軍事顧問の統合参謀本部議長ダン・ケイン大将は公式に認めている。

 先月「航空戦力には限界がある」とケイン大将は議員たちに語った。
 エスカレーションの主導権を握っているのはイランだ。アメリカはイラクのクルド人地域から撤退し、クウェートとバーレーンからも撤退した。イランは一部の米軍部隊が移動したヨルダンを既に攻撃している。次は、イスラエルに移動した米軍部隊が攻撃の標的になる。

 和平合意を、もはやイランは信じていない。敵対的戦略をアメリカが根本的に変えるまで、現状維持の継続でイランは満足なのだ

 だがイランがアメリカの次の攻撃を待つ可能性は低い。むしろ間もなく自らエスカレーションを開始するだろう。アメリカ艦船や施設を、更なる「驚き」が待ち受けている。

 ホルムズ海峡は閉鎖されたままになるだろう。更に紅海からのサウジアラビア輸出はバブ・エル・マンデブ海峡でも禁止される。ドナルド・トランプ自身の国で経済的影響がより切実に感じられるようになるまで、この状態をイランは維持するだろう。

 「タンクの最低残量」にはまだ達していないので、まだ暫く時間がかかりそうだ。  
タンクの最低残量論は、二つの重要要素を見誤っている。第一に、中国が過去10年間で蓄積した膨大な石油備蓄を軽視している。備蓄は現在、かなりの緩衝材になっている。戦争が始まる前、北京は14億バレル以上の戦略的備蓄を保有していた。以来、おそらく一億バレル程度しか引き出していない。中国は輸入量を戦前の水準以下に抑えるのに十分な備蓄を依然保有している。

 タンクの最低量論の二つ目の問題点は、富裕な国が保有する戦略的備蓄の枯渇を誇張していることだ。…混乱が続く場合に備えて、連中は、依然10億バレル程度の備蓄を保有している。特に日本と韓国は豊富な在庫を保有している。
 とはいえ備蓄をゼロにしてしまうのは避けたい。

 しかも、備蓄のない、さほど裕福でない国々が、このことで一番打撃を受ける。

 これが一体いつ、どう終わるのか予測は不可能だ。一週間か二週間後、同じことが繰り返されるかもしれない。トランプによる新たな脅迫、新たな対抗策、またしてもTACO騒動だ。

 ホワイトハウスにいるあの子供じみた男は、もはや打つ手がないにもかかわらず、頑固すぎて折れる気もないのだ。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2026/08/war-on-iran-another-taco-irans-need-to-escalate.html

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 東京新聞 朝刊 19面 特報 本音のコラム 斎藤美奈子氏 末尾部分を引用させて頂く。  
首相の被災地訪問
 劣悪な避難所にこそ行きなさいよ。かくて浮上したヤラセ視察疑惑。接待視察といったほうが正確かな。

2026年6月15日 (月)

シャングリラ以後:もはやワシントンの許可を求めないアジア

サルマン・ラフィ・シェイフ
2026年6月13日
New Eastern Outlook

 シンガポールで開催され、44カ国が参加した第23回シャングリラ対話2026での真の焦点は、アメリカ主導のインド太平洋秩序の再確認ではなく、その秩序がゆっくり公然と崩壊していく様相だった。

 

 会場の空気を読み違えた演説

 シャングリラの伝統に従い開会全体会議はワシントンが主催する。今年は、アメリカ戦争省長官ピート・ヘグセスが「アメリカが富裕国の防衛を補助する時代は終わった」と宣言し、同盟国に対しGDPの少なくとも3.5%を防衛費に充てるよう要求し、旧来の多国間秩序の「ユートピア的理想主義」を非難した。彼はベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領の超法規的拘束を自慢し、トランプ大統領の下で改善した米中関係を喧伝したが、台湾には一切触れず、最後に「この地域にはシャングリラより戦闘力が必要だ」と断言して締めくくった。

 ワシントンは、もはや自らが設計することのない地域構造の中で、その影響力を維持するために国家運営を適応させることができるのか。

 それは、まさに自分が導こうとする聴衆を遠ざけてしまう演説だった。実際、その後の出来事が示す通り、対話における最も深刻な対立は、ワシントンと北京の間ではなく、ワシントンとパートナー諸国間にあった。ASEANは、欧州連合と並んで、多国間外交とルールに基づく秩序を世界で最も熱心に支持する国々の一つだ。そのような聴衆を前に、会議は不要だと述べるのは、その場の雰囲気を著しく読み違えていたと言えるだろう。

 不協和音は単なる口調の問題にとどまらなかった。ヘグセスによるマドゥロ拘束は、国際法違反として東南アジア全域で広く非難された。イランに対するアメリカ攻撃やホルムズ海峡に由来する経済的影響は、既に地域全体の石油化学サプライチェーンを混乱させ、国民の不安を煽っていた。対話に出席した欧州のNATO加盟諸国は、この二つの出来事について明らかに曖昧な態度をとった。一方、トランプ大統領の北京サミット後「建設的な戦略的安定」を推進するというヘグセスの対中国軟化路線は、中国の勢力に対抗するために地域の同盟諸国に軍事力を増強するよう求める彼の要求と不快な緊張関係にあった。事実上、公式には軽視している脅威に対し、武装するようワシントンは同盟諸国に求めたのだ。矛盾は、これ以上明白なものはなく「同盟諸国」にとって受け入れがたいものだった。

 根本的問題は修辞的なものではなく構造的なものだった。アメリカは、ベネズエラや中東における行動を通して、国際法規範を恣意的に適用することを示しながら、依然国際社会の協調を要求し続けている。インド太平洋地域の小中規模国家は、その安全保障ドクトリンが、これら規範の平等かつ一貫した適用に基づいているため、まさにこの姿勢こそが、アメリカの安全保障上の保証を信頼できないものにしているのだ。

 ハノイの対抗的視点

 会場の人々の心を真に捉えた演説は、ヘグセスが演壇に立つ前夜に行われた。ベトナム共産党書記長のトー・ラム(同職に就いて初めてシャングリラ対話で演説を行った人物)は「無秩序な競争」に警鐘を鳴らし、地域の組織原則として「平和、信頼、発展」を訴えた。国際法の恣意的解釈が「弱肉強食」の世界を生み出し、小国にどちらかの陣営につくよう圧力をかけると彼は警告した。そして最終的に、いかなる大国の従属国でもなく、ルールに基づく秩序の擁護者として、ベトナムを明確に位置づけた。

 これは単なる外交儀礼ではなかった。ワシントンが推進していることで知られるブロック中心の論理に対する、綿密に計算されたイデオロギー的対抗提案だった。地域の反応は雄弁だった。トー・ラムが提示した枠組みは、インド太平洋諸国の大多数が実際望んでいるもの、すなわち中小国が真の主体性を維持し、最強国の好みではなく、ルールから秩序が生まれる世界だった。

 ベトナムが基調講演を行ったこと自体が戦略的意味を持っていた。中国との経済関係を維持しつつ、アメリカ、日本、インド、EUとの安全保障関係を強化するハノイのいわゆる「竹外交」は長年にわたりヘッジ戦略のモデルとして研究されてきた。だが、党最高指導者を派遣してそれを世界に向けて表明させたことは、ベトナムがこれを一時的な場当たり的対応ではなく、永続的な教義と見なしていることを示す合図だった。演説から数時間後、「ベトナムは安全保障という視点で主要諸国との関係に対処しているわけではない」とトー・ラムは記者団に述べ、この点を改めて強調した。これは、ヘグセスが先ほど述べた安全保障優先の枠組みに対する直接的な反論だった。

 ベトナムだけではなかった。インドネシア代表団は、国防大臣ではなく国防副大臣が率い、同様に慎重かつ非同盟的な関与姿勢を示した。ジャカルタはワシントンと防衛協力協定を締結したが、完全な同盟関係にあるという印象を与えないよう細心の注意を払ってきた。中国が二回連続で閣僚級会合を欠席したことに日本の小泉進次郎防衛大臣は「残念」を表明し、北京との対話の強化を促した。これはワシントンの姿勢より明らかに融和的な調子だった。オランダ副首相は欧州の戦略的自立の必要性を認めた。フォーラム全体を通して、各国は自国の能力に投資しつつ、政治的選択肢を意図的に残すパターンが一貫していた。

 ワシントンの設計図なしで構築されつつある建築

 シンガポールでの議論から浮かび上がる全体像は、この地域が新たな安全保障体制を構築しつつあるというものだ。それは、アメリカの存在感に取って代わるものではなく、もはやアメリカを組織原理として扱うものでもない。対話の傍ら行われた、いくつかの動きが、このことを具体的に示している。中堅諸国が共有資産を保護するための多国間構想である重要水中インフラに関するGUIDE枠組みがサミットで正式採択され、共通の戦略的利益を守るため地域の中堅諸国が独自に協力する意欲を高めていることが実証された。各国は、米国以外の供給元への武器調達を多様化させている。東南アジア諸国は、ブラモスミサイル、韓国の戦闘機、欧州製の海軍艦艇の購入を加速させており、かつて防衛面での独占的依存関係がもたらしていたアメリカの戦略的影響力を弱めている。

 この文脈で、中国が閣僚級会合に出席していないのは弱さを示すものではなく、この新たな秩序の特徴を裏付けるものだ。すなわち、この秩序は二つの超大国によってではなく、両国間の空間で構築されているのだ。明らかになったのは、アジアの安定の未来は、単一の同盟や支配的大国にかかっているのではなく、国の自律性を維持しようと決意した、益々有能な中堅国諸国に維持されるダイナミックなバランスにかかっている。こうした中堅諸国の取り組みを補完しているのは、自国の重要な戦略的利益を非常に重視してはいるが、アメリカと違い覇権的野心を持たない中国だ。

 次に起きるのは古典的な意味での多極化以上のものだ。むしろ、未来はより流動的で、おそらく、より安定しているように見える。ベトナム、インドネシア、日本、インドや、中堅欧州諸国といった国々が、包括的連携ではなく、特定の利益に合わせて調整された重複する非排他的協力関係を維持するネットワーク型地域秩序だ。このモデルは、管理がより複雑で、ワシントンの同盟論理には馴染みにくいが、既に形を成しつつある。

 2026年のシャングリラ対話が提起するより深刻な問題は、アメリカ主導の安全保障秩序が衰退しているかどうか(その証拠は既に十分にある)ではなく、もはや自ら設計していない地域構造の中で、自らの存在意義を維持するために、ワシントンが外交手腕を適応させられるかどうかだ。ヘグセス演説は、それが依然不可能なことを示唆していた。シンガポールのホテルから出てきた各国は、既に次段階に進んでいたのだ。

 サルマン・ラフィ・シェイフは国際関係およびパキスタンの外交・国内問題担当リサーチ・アナリスト)

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/06/13/after-shangri-la-asia-is-no-longer-asking-washingtons-permission/

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 植草一秀の『知られざる真実』
万世一系の男系男子は虚構

2026年5月21日 (木)

失敗に終わったトランプの中国訪問



2026年5月18日
ラリー・C・ジョンソン
Strategic Culture Foundation

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 北京での茶番劇は終わり、ドナルド・トランプ・習近平会談は、いくつか見栄えの良い写真撮影の機会と実質的成果のないパフォーマンス外交をもたらしたに過ぎなかった。

 二日間にわたるトランプ大統領・習近平国家主席会談の最後に最終共同声明は発表されなかった。代わりに、両国政府声明に頼るしかない。両声明を分析すると、内容は大きく異なり、共通点と同じくらい相違点も多くの情報を提供している。両国が議論したと主張する内容を比較することで、サミットで実際に何が起きたのかが明らかになる。

 両者見解の相違は明白で戦略的に意図的なものだ。ホワイトハウスが強調した点のうち、中国外務省が完全に省略したか極めて曖昧な表現でしか触れなかった点を以下に正確に列挙する。

1. イラン戦争と核兵器 ― 中国は言及せず

 これは最も重要な差違だ。ホワイトハウス発表は明確に下記のように述べている。  
エネルギーの自由な流れを支えるため、ホルムズ海峡は開放されたままでなければならない点で両国は合意した。また習近平国家主席は、海峡の軍事化と通行料徴収の試みに対する中国の反対姿勢を明確にし、将来的に海峡への中国の依存度を下げるため、アメリカ産原油の購入を増やすことに関心を示した。イランが核兵器を保有することは決して許されないという点でも両国は合意した。PBS
 一方、中国側発表では「両国は中東紛争について協議した」とだけ述べられており、それ以上の詳細は一切示されなかった。海峡問題、通行料問題、イラン核開発計画と、これら問題に関する合意事項についても一切触れられなかった。

 この隔たりは極めて大きい。中国がイランの核兵器保有を絶対認めず、イランの通行料徴収制度に反対したとホワイトハウスは主張している。これを、中国が公式に認めたくない重大な譲歩であるかのようにホワイトハウスは仕立て上げている。だが情報筋によると、中国がイランに圧力をかけ、ホルムズ海峡開放に協力すべきだというトランプ大統領の要請を習近平国家主席は断固拒否したという。

2. フェンタニル ― 中国は除外

 「フェンタニル前駆物質のアメリカ流入への対処」について両国が協議したとホワイトハウス発表では明記されている。これは、フェンタニル製造に使用される化学前駆物質の流入を中国が削減するよう求めるアメリカ長年の要求だ。中国側発表ではフェンタニルには一切触れられておらず、これは中国がこの問題に関して既に十分な対応をとっており、二国間問題として捉えることを拒否する長年の立場と一致している。Komo News

3.農産物購入 ― 中国は省略

 両首脳が「中国によるアメリカ農産物の購入拡大」について話し合ったとホワイトハウスは発表した。中国側発表では、貿易は「相互に有益」であるという一般的表現にとどまり、農産物購入に関する具体的約束は示されなかった 。

4. アメリカ企業にとっての市場参入 ― まったく異なる視点

 この会談は「アメリカ企業の中国市場への参入拡大と、中国によるアメリカ産業への投資増加」を中心としたものだったとホワイトハウスは説明した。一方、中国側発表は全く異なるもので、市場参入を求めるアメリカ要求への対応としてではなく、独自条件で中国が「門戸を更に広げた」という形をとった。

5.企業代表団 ― 非対称的な扱い

 「アメリカ大手企業幹部たちが会合の一部に参加した」とホワイトハウスは述べ、実質的な実務的会合として位置づけた。一方、中国側発表では、トランプ大統領が「同行していた企業幹部一人ひとりに習近平国家主席に自己紹介するよう求めた」と述べ、実質的な実務協議というより儀礼的紹介として位置づけた 。Youtube

6.台湾 ― 鏡像問題

 最も顕著な非対称性は台湾に関する正反対の方向に現れている。ホワイトハウス声明は台湾について全く触れていない一方、中国は声明全体を台湾に関する習近平主席の警告に集中している。トランプ大統領は、彼と習近平主席が台湾について話し合ったかどうかという記者の質問への回答を拒否した。アメリカは「イラン問題で中国の協力を求めていない」とルビオ上院議員はNBCニュースに述べた。この発言はホワイトハウス声明が示唆した中国の協力姿勢を暗に否定するものだ。The National Desk Breitbart

 結論

 両国はトランプ大統領と習近平国家主席の会談内容を詳述する声明を発表したが、内容が一致する部分は限られている。声明の相違が最も顕著なのはイラン問題で、アメリカは中国が具体的約束をしたと主張しているが、中国はそれを認めていない。また台湾問題では、中国は明確な警告を発したが、アメリカは言及すらしていない 。NPR

 このパターンは外交上典型的なものだ。双方とも自国の国内政治的ニーズを満たし、交渉上の立場を有利にする声明を発表した。台湾問題に関して習近平主席が厳しい警告を発したことを中国は世界に示そうとした。一方、ワシントンは中国がイランの核兵器保有を絶対認めず、イランの通行料徴収制度に反対しているという姿勢を示してほしいと望んだ。どちらの譲歩が真実なのか、あるいは単なる主張に過ぎないのか、まさにその点が、声明の食い違いを非常に示唆的なものにしている。

 戦略的枠組み

 習近平国家主席は冒頭、壮大な哲学的枠組みを提示した。「100年に一度の変革が世界中で加速しており、国際情勢は流動的で激動している」。トランプ大統領に、三つの質問を直接投げかけた。中国とアメリカはトゥキディデスの罠を克服し、大国関係の新たなパラダイムを構築できるか? 世界的課題に共に取り組み、世界に更なる安定をもたらせるのか? 両国関係の明るい未来を共に築けるのか ? Wikipedia

 習近平国家主席は、両首脳が「戦略的安定に基づく建設的な米中関係構築という新たな構想に合意した」と発表し、その構想を次のように明確に定義した。「建設的な戦略的安定とは、協力を主軸とした積極的安定、適切な範囲内での競争を伴う健全な安定、管理可能な相違を伴う恒常的安定と、期待可能な平和を伴う永続的安定を意味する」。習主席はこの枠組みが「今後3年間、そしてそれ以降の米中関係に戦略的指針を与える」と述べ、「戦略的安定に基づく建設的な米中関係の構築は標語ではなく、同じ方向への行動を意味する」と強調した 。Wikipedia

 貿易と経済

 習近平国家主席は「米中経済貿易関係は相互利益で、ウィンウィン関係だ。意見の相違や摩擦が存在する場合は、対等な立場での協議こそ唯一正しい選択だ」と述べた。また前日の準備協議で、経済貿易チームが「概ねバランスの取れた前向きな成果」を上げたとし「中国は今後更に門戸を開放していく。アメリカ企業は中国の改革開放に深く関わっている」と述べた 。Wikipedia

 軍事・外交ルート

 習近平国家主席は、「政治・外交分野および軍事分野における意思疎通のチャネルをより有効活用する」とともに「経済貿易、保健、農業、観光、人的交流、法執行などの分野における交流と協力を拡大する」よう両国に呼びかけた。Wikipedia

 台湾 ― 報告書中、最も鋭い言葉

 習近平は明確にこう述べた。「台湾問題は米中関係において最も重要な問題だ。適切に処理されれば、二国間関係は全体的に安定する。そうでなければ、両国は衝突し、紛争に発展し、関係全体が大きな危機に瀕する。『台湾独立』と台湾海峡の平和は水と火のように相容れない。台湾海峡の平和と安定を守ることは、中国とアメリカの最大の共通点だ。台湾問題の処理において、アメリカは特に慎重にならなければいけない。」

 国際問題

 両首脳が「中東情勢、ウクライナ危機、朝鮮半島情勢など、主要国際問題および地域問題について意見交換を行った」と発表文には記されているが、中国語公式文書には、これらの話題に関する詳細な記述は一切ない 。Wikipedia

 APECとG20

 今年のAPEC経済首脳会議とG20サミットの成功裡の開催に向けて互いに協力することで両大統領は合意した 。Wikipedia

 王毅外相の最終評価 ― 5月15日

 「今回会談は両首脳が深い意見交換を行い、実質的成果を上げた重要な会談で、歴史的会談だった」と王毅外相は国営メディアに述べた。特に貿易・経済問題における進展を強調した。また、ドナルド・トランプ大統領の要請により、習近平国家主席が今秋アメリカを訪問することも中国外務省は確認した。Wikipedia

 イランに関して言えば、中国とロシアはパキスタンを隠れ蓑に、ペルシャ湾の新たな安全保障体制を構築しようと水面下で動いている。現在の取り組みは、サウジアラビアとカタールに対し、アメリカとの軍事関係を事実上断ち切り、ロシアと中国が保証する戦略的合意を締結するよう説得することだ。もしサウジアラビアとカタールが、アメリカによる新たな対イラン攻撃のために自国基地と領空の使用を引き続き禁止すれば、アメリカは計画中の攻撃を中止せざるを得なくなるかもしれない。

 レイ・マクガヴァンと私は、いつものようにナポリターノ判事と金曜日対談をした。

 トランプ中国訪問の失望をローレンス・ウィルカーソン大佐と私はニマと話した。



 対イラン戦争とトランプ大統領の中国における外交の失敗について、私は、Jimmy Doreと話し合った。

元記事:sonar21.com

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/05/18/trump-failed-mission-to-china/

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 植草一秀の『知られざる真実』
日本経済新聞のでたらめ
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
米露両大統領による相次ぐ北京訪問は、習近平席が無視できないリーダーであることを浮き彫りに。ロシアと中国の間には、ますます不均衡に。プーチン大統領はウクライナへの全面侵攻を命じて以来、最も弱い立場に置かれている。両国間にパイプライン建設計画。これまで妥結せず。

2026年5月17日 (日)

中国の習主席から現実を突きつけられたトランプ



2026年5月15日
論説
Strategic Culture Foundation

 今週行われたドナルド・トランプ大統領の中国公式訪問は様々な意味で画期的な出来事だった。

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 今週行われたドナルド・トランプ大統領の公式中国訪問は様々な点で画期的な出来事だった。トランプ大統領は、中華人民共和国が用意した盛大な儀式と華やかな歓迎の中で、習近平中国国家主席から温かく迎えられた。

 アメリカ大統領が最後に中国に足を踏み入れたのは、トランプが一期目政権時代に訪問した2017年のことだった。それから9年間で両国関係は大きく変化した。今や、アメリカが著しく影響力を失ったのは明らかだ。

 トランプが以前中国に対して見せていた強気な態度は消え失せた。対中貿易における要求を突きつける強硬発言もなくなった。以前、中国に厳しい貿易関税を課すとトランプが脅迫した際、北京はより重大な対抗措置でワシントンを牽制した。しかし今日、アメリカ大統領は強気な発言をしない。中国は世界的経済大国として台頭しており、アメリカは慎重に対応している。

 今週二日間の訪問中、トランプ大統領には新たな事業機会を求める多くのCEOが同行した。中国は寛大かつ礼儀正しく対応したが、アメリカが新たな世界的大国から経済的恩恵を得ようと躍起になっているのは明らかだった。

 アメリカや西欧メディアでさえ、この明らかな状況の変化を指摘した。「アメリカは中国に対する影響力を失った」と『フォーリン・アフェアーズ』は見出しで報じた。

 トランプは「素晴らしい取り引き」を成立させたと主張したが、中国側は詳細を一切明らかにしなかった。ボーイング社旅客機200機購入に中国が合意したとホワイトハウスが発表したが、そのような購入はなかったと中国外務省は否定した。他の米メディア報道では、トランプが中国を去った際に得た経済的利益は「ほとんどなかった」と指摘されている。

 身振り手振りからもその様子がうかがえた。習主席はいつものように控えめで威厳のある態度だった一方、トランプ大統領はまるで懇願者のように、習主席と何度も握手し「偉大な指導者」と繰り返し称賛した。面白いことに、トランプ大統領が商売上の優遇措置を熱心に売り込む様子は、海外訪問の際に、ウクライナのゼレンスキー大統領がしつこく援助を要求する様子を彷彿とさせた。

 かつてトランプが、中国がアメリカ経済を「強姦」し、アメリカの産業を「搾取」していると非難していたのを想起願いたい。だが今やそのような無作法な威勢の良さは見られない。アメリカ大統領は、中国の経済力が、あらゆる分野でアメリカを凌駕する新たな地政学的現実に見合った礼儀正しく敬意を払う姿勢を見せている。

 客観的動向は、現実を突きつけるものとなっている。アメリカ経済は、他の西側資本主義経済と同様、巨額債務と貧困・格差の拡大に苦しみ、衰退の一途を辿っている。一方、中国の中央計画経済は革新的でダイナミックで、驚異的な社会発展と生産力を生み出している。更に、中国は、破綻寸前の西側諸国を特徴づける覇権主義的ゼロサム・ゲームではなく、多極化する世界での他国との協力と提携関係を提唱している。

 トランプ大統領による無謀で犯罪的な対イラン侵略戦争は、アメリカの力が政治的にも軍事的にも限定されていることを証明した。2月28日、イスラエル政権と共謀してトランプ大統領はこの戦争を開始した。しかし、イラン・イスラム共和国の強固な軍事防衛力は、アメリカとイスラエル侵略者に戦略的敗北をもたらした。イランは、世界的に重要なペルシャ湾からのエネルギー輸送ルートを掌握している。行き詰まりを招いたトランプ大統領の侵略行為は、アメリカ経済と大統領自身の政治的立場に致命的打撃を与えている。

 これがトランプ大統領の北京訪問の主目的だった。つまり、イランとの協力関係を利用して、ペルシャ湾で陥った泥沼からトランプ大統領が脱出できるような支援を中国に説得することだった。

 ホワイトハウスはイランとの戦争終結に向けて北京に協力を求めたことはないとマルコ・ルビオアメリカ国務長官は主張した。だが主張は信憑性に欠ける。今週の訪中を前に、停戦を受け入れるようイランに働きかけるのをトランプ大統領は中国に強く求めていた。

 ロシアと同様、中国はアメリカとイスラエルによる対イラン攻撃を非難している。今週、北京は戦争の終結を求め、そもそも戦争を始めるべきではなかったと述べた。

 イラン産原油の主要輸入国中国の戦略的エネルギー供給を弱体化させるために、アメリカがこの地域を不安定化させているのを中国は十分認識している。ワシントンがベネズエラを攻撃して中南米からの供給を遮断したのと同じだ。

 いずれにせよ、イランは紛れもなく新たな独立した世界的大国として台頭した。ペルシャ湾からの石油・ガス輸送ルートを揺るぎなく支配し、アメリカとイスラエルに対する軍事的抵抗を成功させたことで、イランは中国やロシアから独立して、自国の国益と原則を主張できるようになった。

 核による壊滅をほのめかすような忌まわしい威嚇発言をする以外、イランに対してトランプ大統領が使える切り札は皆無だ。イランはひるむことなく、アメリカの侵略行為や違法制裁の停止を含む独自の和平条件を提示している。

 アメリカ大統領に対して、中国は多くの華やかな儀式と丁重な対応を示したかもしれない。だがそれは敗者に対して優位に立っているのを自覚している大国の行動だった。

 アメリカが衰退する大国の陥る「トゥキディデスの罠」を回避できるのかと習国家主席は鋭く問いかけ「戦略的安定」を求めた。

 だが今週、あらゆる友好的なやり取りの中で、中国首席から発せられた最も強いメッセージは、二枚舌で台湾を不安定化させる行為をアメリカが改めなければ、中国の主権に対する、そのような侵害は戦争につながるという厳しい警告だった。

 それはワシントンに対する警告で、人民大会堂の宴席に座っていたアメリカ大統領に手渡された。

 新たな歴史的時代に我々は突入している。アメリカの横暴と傲慢さは、もはや容認されない。アメリカ大統領が恩恵を求めて頭を下げても、叱責されるだけで何も得られない時、アメリカ帝国の終焉が近いのを悟るだろう。衰退ぶりは全世界が目の当たりにするほど明白だ。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/05/15/trump-gets-reality-check-from-china-xi/

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 植草一秀の『知られざる真実』2026年5月17日記事
鳩山元総理による高市発言批評
5月16日(土)午後、東京湯島の全国家電会館で「ガーベラの風」イベント

戦争と壊憲の危機にどう立ち向かうか
-「対米自立」「平和と共生」の政治実現に向けて-
を開催した。
 youtubeリンクが明記してあるので、コピーさせていただく。

https://www.youtube.com/watch?v=_lh3WqIoHDQ 2:31:31

https://www.youtube.com/watch?v=EJVz2CMcdUs1:17:56

2026年5月16日 (土)

ほとんど成果を得られずに中国を去ったトランプ

2026年5月15日
Moon of Alabama

 トランプ大統領の中国訪問が終わった。

 あの訪問から具体的成果は得られないと私は予想していた。  
トランプはいつものように帽子を手に北京にやってくる。彼はいつものようにハッタリをかませて「勝利」をもぎ取ろうとする。まるでアメリカが優位な立場にあるかのように振る舞う。中国は礼儀正しく振る舞うが、決してそれを受け入れない。

 今回訪問に向けた準備はほとんど行われなかった。シェルパたちが事前に集まって、両国間の深刻な問題を解決することもなかった。大きな契約や条約の署名もない。
 当初の希望の一つは、ボーイング社のジェット機約500機を複数の中国航空会社に売ることだった。今回訪問から帰国後、中国が200機購入するとトランプ大統領は主張した。この件について中国外務省は確認を拒否した。ボーイング社の株価は下落した。

 約20人の企業幹部がトランプに同行したが、彼らには特に計画や任務はなかったようだ。取り引きも成立せず、契約も締結されなかった。

 トランプ大統領は、NVIDIAの旧型AIチップの一部について、中国への販売をアメリカが禁止する措置を解除することを提案した。しかし、中国は既に同様性能のチップを自国製造しているため、この提案を拒否した。

 中国は、今回の協議の主な成果として「新たな立ち位置」と「建設的な戦略的安定」を挙げた。

 「新たな位置づけ」とは、アメリカと中国を対等な存在と捉え、客観的に見て中国の方が有利な立場にあると考えることだ。

 「建設的な戦略的安定」とは、中国が思うように動いている間は、アメリカは黙って静かにしていろという助言と解釈できるかもしれない。  
「建設的戦略的安定」とは、協力を主軸とした積極的安定、適切な範囲内での競争を伴う健全な安定、管理可能な相違を伴う恒常的安定と、期待可能な平和を伴う永続的安定を意味すると習近平国家主席は明確に指摘した。これら「4つの安定」は、米中関係の明確かつ実現可能な青写真を示している。これは一時しのぎの措置ではなく、長期的方針だ。ゼロサムゲームではなく、相互利益とウィンウィン協力関係だ。「4つの安定」は、建設的な姿勢で戦略的安定を主導し、戦略的安定を通じて長期的発展を保障するもので、米中関係が互いに成功と繁栄を共に築ける大国間関係であることを十分示している。
 トランプ大統領が中国訪問中、約30隻の中国船舶がイラン当局と連携してホルムズ海峡を通過した。トランプ大統領が中国にいたため、アラビア海のアメリカ海上封鎖部隊は、これら船舶を阻止する試みを敢行できなかった。このことは今後も中国の船舶航行を容認する前例になった。

 中国にとって、ホルムズ海峡は開かれている。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2026/05/trump-leaves-china-with-little-in-hand.html

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 東京新聞 朝刊 一面  
 「中国が米農産物購入」

 首脳会談で合意 年間数兆円規模か

2026年5月15日 (金)

対イラン戦争:サウジアラビアはイスラエルを非難し、ネオコンの大御所は敗北を認めている

2026年5月11日
Moon of Alabama

 ここ数日の間に、注目すべき記事が二つ発表された。両記事の著者は、ともに、ジョージ・W・ブッシュ政権とイラク戦争に深く関わっていた経験豊富な右翼戦略家で、互いに関連している。

 最初の記事はトゥルキ・アル・ファイサルによるものだ。  
彼はサウジアラビア建国の父、アブドゥル・アジーズ国王の孫で、ファイサル国王の息子だ。彼はキング・ファイサル財団のイスラム研究センター会長を務めている。

 1979年から2001年まで、トゥルキ王子はサウジアラビアの情報機関アル・ムハバラート・アル・アンマ長官を務め、2001年9月1日に辞任した。15人のサウジアラビア国民がアメリカの民間航空機をハイジャックした9月11日同時多発テロの10日前だった。

 その後、トゥルキ王子はセントジェームズ宮廷およびアメリカ合衆国大使を務めた。
 ファイサルは、土曜日に準国営メディアのアラブ・ニュースに掲載された論説記事で、アメリカによる対イラン戦争の背後にある重大な陰謀を明らかにした

 サウジアラビアはイランに不満を抱いているものの、湾岸地域全体が現在陥っている混乱の真の原因はイランではないと認めている。  
イランなどがサウジアラビア王国を破滅の渦に引きずり込もうとした時、サウジアラビア指導者たちは、国民の生命と財産を守るため、隣国に引き起こされる苦痛に耐えることを選んだ。もしサウジアラビア王国が、イランの施設や権益を破壊することで、イランに対して同様の報復措置を取ることを望み、また実際にそうする能力を持っていたら、アラビア湾沿岸、更には王国奥深くにあるサウジアラビアの石油施設や海水淡水化プラントが破壊されるという結果になっていただろう。

 もしイスラエルが対イラン戦争を引き起こす計画が成功していたら、この地域は荒廃と破壊に陥っていたはずだ。何千人もの息子や娘が、我々と何の利害関係もない戦いで命を落としていたはずだ。イスラエルはこの地域に自らの意思を押し付け、周辺地域における唯一の勢力として君臨していたはずだ。

 ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の英知と先見の明により、サウジアラビア王国は戦争の惨禍とその壊滅的影響を回避できた。実際、現在パキスタンと共に、サウジアラビア王国は、戦闘の火を消し止め、事態の悪化を防ぎ、平和を求める人々が愛する人々の命と国益の安全について安心できるという希望を与えている。
 この論説記事は、サウジアラビアが戦争の拡大を促していると主張していたシオニスト・プロパガンダ担当者に広められた全ての噂を否定している。

 三年前の中国による仲介で、イランとサウジアラビア間で政治的合意が成立して以来、両国間で大きな衝突は起きていない。戦争にもかかわらず、サウジアラビアはハッジ(大巡礼)にイランからの巡礼者を歓迎し ている。イランはサウジアラビア国内の米軍施設を攻撃したが、サウジアラビアの主要石油利権への攻撃は控えている。その結果、国営石油会社サウジアラムコは記録的利益を上げている。

 サウジアラビアの姿勢は、アメリカが湾岸地域における覇権的役割を失ったことを示す多くの兆候の一つだ。

 強硬ネオコンのロバート・ケーガンが、親戦派のアトランティック誌に寄稿した2つ目の論説記事も、この見解を裏付けている。ブッシュ/チェイニー政権を、対イラン戦争へと駆り立てたケーガンは、アメリカがイランとの戦争に敗れたことを認めている。  
イランにおける王手 ― この戦争に敗れた結果をワシントンは覆すことも制御することもできない。アーカイブ) ―アトランティック

 紛争でアメリカが完全敗北を喫し、戦略的損失が修復も無視もできないほどの決定的後退を経験した時代を思い浮かべるのは困難だ。

 現在の対イラン戦争における敗北は全く異なる性質のものだ。修復も無視もできない。以前の状態に戻ることはなく、被った損害を覆したり克服したりするような最終的なアメリカの勝利もない。ホルムズ海峡は、かつてのように「開かれた」状態にはならない。海峡を支配することにより、イランはこの地域における主要当事者、世界における主要当事者の一人として台頭する。イランの同盟国、中国とロシアの役割は強化され、アメリカの役割は大幅に縮小する。戦争支持者が繰り返し主張してきたように、この紛争はアメリカの力量を示すどころか、頼りにならず、始めたことをやり遂げる能力のないアメリカを露呈した。これは、アメリカの失敗に、同盟諸国や敵国が適応していく中、世界中で連鎖反応を引き起こすだろう。
 アメリカにはこのジレンマから抜け出す道がないことをケーガンは認めている。  
たとえトランプがイラン「文明」を破壊するという脅迫を実行に移し、更なる爆撃を行ったとしても、イランは政権崩壊前に(そもそも政権が崩壊すると仮定した場合)、多数のミサイルやドローンを発射できる。わずか数回の攻撃が成功するだけで、この地域の石油・ガスインフラは数年、場合によっては数十年にわたり麻痺し、世界とアメリカを長期にわたる経済危機に陥れる可能性がある。たとえトランプが撤退戦略の一環としてイランを爆撃し、強硬姿勢を見せて、撤退を隠蔽しようとしても、このような大惨事を招くリスクなしには実行できない

 これは王手ではないにせよ、それに近い。
 ケーガンは代替案として対イラン全面戦争も検討しているが、それは更に悪い道で、より大きな失敗につながる可能性が高いとして切り捨てている。  
現在のイラン政権を打倒するため本格的地上戦と海戦を展開し、新政権が樹立されるまでイランを占領する覚悟がアメリカにない限り、また係争中の海峡でタンカーを護衛する軍艦を失うリスクを冒す覚悟がない限り、更に、イランの報復により、地域全体の生産能力に壊滅的な長期的損害が生じることを覚悟しない限り、今撤退するのは最悪の選択肢でないように思えるかもしれない。政治的観点から言えば、トランプ大統領は、より大規模で長期にわたり、費用もかさむにもかかわらず、最終的に失敗に終わる可能性がある戦争を生き延びるより、敗北を乗り切る方が可能性が高いと感じているのかもしれない。

 従って、アメリカにとって、敗北はあり得るだけでなく、むしろ可能性が高い。敗北とはこういうことだ。

 海峡における新たな現状は、地域的にも世界的にも、相対的な力と影響力に大きな変化をもたらす。この地域では、アメリカは張り子の虎だと証明され、湾岸諸国や他のアラブ諸国はイランに迎合せざるを得なくなる。イラン研究者のルーエル・ゲレヒトとレイ・タケイが最近書いたように「湾岸アラブ諸国の経済は、アメリカ覇権という傘の下で築かれてきた。それを奪い、それに伴う航行の自由を奪えば、湾岸諸国は必然的にテヘランに物乞いをすることになる」。

 彼らだけではない。湾岸諸国のエネルギーに依存している全ての国は、イランとの間で独自の取り決めを結ばなければならない。他にどんな選択肢があるだろう?
 対イラン戦争での敗北は、世界におけるアメリカの立場に、より広範な影響を与えるとケーガンは考えている。

 ポスト・アメリカ世界への世界的適応は加速している。かつてアメリカが支配的だった湾岸地域におけるアメリカの地位低下は、数多くの犠牲のほんの始まりに過ぎない。

 今週後半、ドナルド・トランプ大統領は中国訪問予定だ。フィナンシャル・タイムズに掲載された今回訪問に関する政権側の事前記事(アーカイブ)は、アメリカは依然、戦争を利用して世界中に圧力をかけられると主張している。  
「大統領は圧力をかけると予想している」と、ある米当局者は記者会見で述べた。

 トランプ大統領は、中国によるイランとロシアへの支援、具体的には軍民両用部品の提供や潜在的武器輸出について、習近平国家主席との以前の協議を再開すると述べた。

 「この協議は今後も続くと予想している。ここ数日の間にアメリカからいくつかの措置、つまり制裁措置が出されたのを目にしたと思うが、それらは確実に協議の一部になる」と当局者は付け加えた。

 金曜日、イランが中東で米軍に対する軍事攻撃を行うのを支援する画像や他のサービスを提供したとして、中国の衛星企業三社にアメリカ国務省が制裁を科した。また財務省は、イランが中国から携帯式地対空ミサイル(MANPADS)を輸入するのを支援したとして、YUSHITA (Shanghai)International Trade Co., Ltdにも制裁を科した。
 戦争に敗れた以上、制裁ゲームも終わったのだということをトランプは未だに認識していない。中国であれ、他のどの国であれ、湾岸地域で失った覇権的地位をアメリカが取り戻すのを支援することは決して利益にならない。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2026/05/war-on-iran-saudis-blame-israel-neocon-grandee-concedes-defeat.html

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 耕助のブログ  
No. 2901 米国のAI産業は破滅の運命にある
 The Chris Hedges Report
Trump's Iranian Nightmare
Trump’s catastrophic miscalculation in Iran and refusal to accept the Inevitability of defeat is pushing us towards a global depression and ensuring the suffering and immiseration of millions.

Chris Hedges
May 14

トランプ大統領と習国家主席の首脳会談に先立ち、なぜワシントンは中国に制裁を課したのか?

サルマン・ラフィ・シェイク
2026年5月12日
New Eastern Outlook

 ドナルド・トランプ大統領の北京訪問直前にアメリカが中国企業に対して新たに制裁措置を課したことは、経済的圧力をアメリカ外交の主要手段として用いる傾向が強まっていることを浮き彫りにしている。



 ドナルド・トランプ大統領は5月13日から15日にかけて中国訪問予定だ。しかし、彼が持参するのは譲歩ではなく、数々の制裁措置だ。中国訪問の数日前、ワシントンはイランによるドローンやミサイル関連部品の調達を支援したとして、中国本土と香港に拠点を置く企業に対し新たな制裁を課した。メッセージは明白だ。アメリカは圧力をかけて交渉に臨みたいと考えている。だが外交に先立つ強制は、往々にして逆効果を生む。今回の措置は、北京に対するワシントンの影響力を強化するどころか、中国の抵抗を強め、中国とイランの関係を深め、多極化が進む世界においてアメリカの制裁権限の衰退を加速させかねない。

 外交としての強制

 トランプ政権は、イラン問題で中国の団体に制裁を科す一方、貿易、地域安定、海洋安全保障の分野で中国との協力を求めるなど、両国関係を切り離して考えることができると考えているようだ。

 タイミングが全てを物語っている。5月8日、イランによるシャヘド無人機や弾道ミサイル計画で使用される資材調達を幇助したとして、中国と香港に拠点を置く企業を含む10の個人と企業に制裁を科すとアメリカ財務省は発表した。財務省によると、一部企業は、イランの軍事産業ネットワークに関連する断熱材や調達サービスを提供していたとされる。ロイター通信は、この制裁がトランプ大統領と習近平中国国家主席との北京での会談予定日の僅か数日前に行われたと報じた。そして、トランプ大統領が中国へ向かうまさにその時、アメリカはイラン産原油を中国へ輸送する企業に更なる制裁を科し、中国のエネルギー需要に打撃を与えた。

 この動きの背景にある論理は比較的単純明快だ。トランプ大統領は、米中関係の安定化を切望したり、融和的な姿勢を見せたりすることなく北京入りすると固く決意しているようだ。イラン問題で、アメリカが敗北したという印象を完全に避けたいと考えている。事前に制裁を課すことで、ワシントンは中国との対話が、イランに対するアメリカの圧力作戦や、より広範な国家安全保障上の懸念を犠牲にするものでないことを示唆しているのだ。この制裁は国内政治的な目的も果たしている。トランプ大統領は、中国と外交的に関わりながらも、北京とテヘランの両方に対し「強硬」な姿勢を維持しているというイメージを自ら作り出せるのだ。

 これは、トランプ政権下の外交におけるより広範なパターン、すなわちエスカレーションを通じた交渉を反映している。関税、NATOの負担分担、イラン問題など、トランプ大統領は高官級会談に先立ち、交渉力を高めるため圧力戦術を頻繁に用いてきた。経済的強制は抵抗の代償を高め、妥協へのインセンティブを高めるという前提に基づいている。しかし、この戦略は相手側が、譲歩する方が抵抗するよりも代償が低いと考えている場合にのみ有効だ。中国の場合、この前提は益々疑問視されるようになっている。

 北京の対応は即座かつ予想通りだった。中国外務省は制裁を「違法な一方的措置」と非難し、中国企業の正当な利益を守ると表明した。制裁は外交上の柔軟性を生み出すどころか、譲歩を政治的に従順なものと見なさせることで、習近平の行動の余地を狭めた可能性がある。

 これはワシントンでしばしば見落とされている重要な点だ。中国指導者たちは、首脳会談前の制裁を単なる戦術的な交渉手段として解釈するのではなく、交渉開始前に中国を屈辱させるための公然たる威嚇行為とみなしている。このような状況下では、妥協は国内外における弱体化の認識を強めるリスクがあるため、政治的に大きな代償を伴う。この力学は、米中関係がもはや戦略的な曖昧さや、選択的な競争によって定義されるものでなくなった今日、特に重要だ。両国の首都では、米中関係は貿易、技術、金融、安全保障とイデオロギーが同時に絡む体系的な競争として捉えられるようになっている。このような環境下で、制裁は孤立した政策手段ではなく、より広範な封じ込め戦略の一部となる。

 経済的圧力の限界

 ワシントンにとってより深刻な問題は、制裁措置がかつてのような強制力を持たなくなっている可能性があることだ。

 数十年にわたり、アメリカは世界金融体制における支配力を利用して、敵国や第三国に服従を強要してきた。ドル体制、西側諸国の銀行ネットワークと、アメリカ市場参入は、ワシントンに絶大な影響力をもたらしてきた。少なくともワシントンの視点からすれば、二次制裁はアメリカ外交戦略において最も効果的な手段の一つとなった。しかし、地政学的環境は大きく変化している。

 今日の中国は過去の制裁対象国の大半より遙かに高い経済力を有している。また制裁に従うことには戦略的代償が益々伴うようになっているため、アメリカの圧力に抵抗する動機も強まっている。北京はイランを単なる孤立した中東の同盟国としてではなく、複数地域にわたりアメリカの影響力を抑制できる広範な国家ネットワークの一部と捉えている。

 長年にわたるアメリカの制裁にもかかわらず、中国は依然イラン最大の石油顧客だ。このような状況下では、中国がワシントンの対イラン「最大限の圧力」キャンペーンに全面的に協力する可能性は低い。実際、度重なる制裁は、制裁耐性のある経済構造を構築しようとする中国の決意をむしろ加速させているのかもしれない。北京は既に代替決済制度の利用を拡大し、人民元建て貿易を奨励し、中国企業が特定の外国制裁体制に異議を唱えたり無視したりできる法的メカニズムを採用している。アメリカによる新たな制裁措置が講じられるたびに、アメリカが支配する金融制度への依存は戦略的な脆弱性だという中国の認識が強まる。

 制裁措置の実施が効果逓減の法則を生んでいる証拠も増えつつある。アメリカは過去数年にわたり、イランによるドローン部品調達を支援したとして、中国や香港と関係のある企業に繰り返し制裁を科してきた。しかし、調達ネットワークはペーパーカンパニー、仲介業者、迂回されたサプライチェーンなどを通じて依然対応を続けている。

 サウスチャイナ・モーニング・ポストの2025年の記事では、この過程を「モグラ叩き作戦」と表現し、香港を拠点とするフロント企業を標的とした以前の制裁の後、イランの調達ネットワークが急速に再編成されたことを指摘している。サウスチャイナ・モーニング・ ポストによる先の制裁ネットワークに関する記事では、これらネットワークが存続していることから、制裁は中国とイラン、どちらの根本的戦略的計算も根本的に変えることなく、一時的に取り引きを混乱させる可能性があることが示唆されている。

 これは重要な点だ。強制手段の効果の多くは信頼性から生まれるからだ。制裁対象国が制裁は管理可能、適応可能、あるいはほとんど象徴的なものだと判断すれば、将来の制裁の抑止力は大幅に低下する。

 より断片化された地政学的秩序

 今回の制裁は、現代アメリカ外交政策におけるより広範な矛盾をも露呈している。ワシントンは、中国との戦略的競争と、中国との選択的協力という相容れない二つの結果を同時に追求する傾向を強めている。トランプ政権は、イラン問題で中国企業に制裁を科しながら、同時に貿易、地域安定、海洋安全保障といった分野で中国との協力を求めて、両国関係を切り離して考えられると考えているようだ。だが両国関係は、あまりに安全保障上の問題が絡み合っており、もはや単純な区分けは不可能になっている。

 北京の視点からすれば、中国企業に対する制裁は、単なる技術的措置ではない。それは、中国の経済的・地政学的な台頭を抑制することを目的とした、より大きなアメリカ戦略の一環だ。こうした状況下では、ワシントンとの限定的協力でさえ、中国国内では政治的に敏感な問題になる。

 皮肉なことに、制裁措置はワシントンが弱体化させようとしている連携を、かえって強化する可能性がある。中国、イラン、ロシアは、アメリカ主導の財政的・戦略的圧力への依存度を減らす共通の利益を益々共有するようになる。彼らは正式同盟関係にはないが、アメリカの強圧的政策が抵抗への共通の動機を生み出すため、より緊密な連携へ向かっている。

 これは制裁措置が全く効果がないという意味ではない。制裁は依然、取り引き経費を上げ、調達ネットワークを複雑化させ、政治的決意を示せる。だが、制裁だけで主要国の行動を根本的に変えられる時代は終わりを迎えつつあるのかもしれない。

 今、より重要な問題は、ワシントンがこうした現実に十分迅速に対応できているかどうかだ。米国が地政学的影響力を行使する主要手段として制裁に頼り続けるなら、かつて制裁を強力なものにした国際秩序自体の分裂を意図せず加速させてしまいかねない。

 トランプ大統領は北京訪問に際し、交渉力を強化したと確信しているかもしれない。しかし習近平国家主席は制裁措置を異なる視点で捉える可能性が高い。妥協のための切り札としてではなく、ワシントンが圧力自体を外交手段とみなす傾向が強まっていること、そして威圧が今後も米中関係の重要要素であり続けるだろうことの証拠と捉えるだろう。そして、威圧が国際政治の常套手段となれば、主要国が妥協へ向かうのは稀になる。むしろ、対立が恒常化する世界に備えることになる。

 サルマン・ラフィ・シェイクは国際関係およびパキスタンの外交・国内問題担当リサーチアナリスト

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/05/12/why-did-washington-impose-sanctions-on-china-before-the-trump-xi-summit/

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 耕助のブログ Pepe Escobar記事翻訳
No. 2900 トランプ中国へ行く。でもイランがすべてのカードを握っている。

2026年5月12日 (火)

対イラン戦争:サウジアラビアがイスラエルを非難し、ネオコンの大御所が敗北を認める

2026年5月11日
Moon of Alabama

 ここ数日の間に、注目すべき記事が二つ発表された。両記事の著者は、ともに、ジョージ・W・ブッシュ政権とイラク戦争に深く関わっていた経験豊富な右翼戦略家で、互いに関連している。

 最初の記事はトゥルキ・アル・ファイサルによるものだ。  
彼はサウジアラビア建国の父、アブドゥル・アジーズ国王の孫で、ファイサル国王の息子だ。彼はキング・ファイサル財団のイスラム研究センター会長を務めている。

 1979年から2001年まで、トゥルキ王子はサウジアラビアの情報機関アル・ムハバラート・アル・アンマ長官を務め、2001年9月1日に辞任した。15人のサウジアラビア国民がアメリカの民間航空機をハイジャックした9月11日の同時多発テロの10日前だった。

 その後、トゥルキ王子はセントジェームズ宮廷およびアメリカ合衆国大使を務めた。
 土曜日に準国営メディアのアラブ・ニュースに掲載された論説記事で、アメリカによる対イラン戦争の背後にある重大な陰謀をファイサルは、明らかにした

 サウジアラビアはイランに不満を抱いているものの、湾岸地域全体が現在陥っている混乱の真の原因はイランではないと認めている。  
イランや他の国々がサウジアラビア王国を破滅の渦に引きずり込もうとした際、サウジアラビア指導者たちは、国民の生命と財産を守るため、隣国に引き起こされる苦痛に耐えることを選んだ。もしサウジアラビア王国が、イランの施設や権益を破壊することで、イランに対して同様の報復措置を取ることを望み、また実際にそうする能力を持っていたら、アラビア湾沿岸、更には王国奥深くにあるサウジアラビアの石油施設や海水淡水化プラントが破壊されるという結果になっていただろう。

 もしイスラエルが対イラン戦争を引き起こす計画が成功していたら、この地域は荒廃と破壊に陥っていたはずだ。何千人もの息子や娘が、我々と何の利害関係もない戦いで命を落としていたはずだ。イスラエルはこの地域に自らの意思を押し付け、周辺地域における唯一の勢力として君臨していたはずだ。

 ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の英知と先見の明により、サウジアラビア王国は戦争の惨禍とその壊滅的影響を回避できた。実際、現在パキスタンと共に、サウジアラビア王国は、戦闘の火を消し止め、事態の悪化を防ぎ、平和を求める人々が愛する人々の命と国益の安全について安心できるという希望を与えている。
 この論説記事は、サウジアラビアが戦争の拡大を促していると主張していたシオニスト・プロパガンダ担当者に広められた全ての噂を否定している。

 三年前、中国の仲介により、イランとサウジアラビア間で政治的合意が成立して以来、両国間で大きな衝突は起きていない。戦争にもかかわらず、ハッジ(大巡礼)にイランからの巡礼者をサウジアラビアは歓迎し ている。イランはサウジアラビア国内の米軍施設を攻撃したが、サウジアラビアの主要石油利権への攻撃は控えている。その結果、国営石油会社サウジアラムコは記録的利益を上げている

 サウジアラビアの姿勢は、アメリカが湾岸地域における覇権的役割を失ったことを示す多くの兆候の一つだ。

 強硬ネオコンのロバート・ケーガンが、親戦派のアトランティック誌に寄稿した2つ目の論説記事も、この見解を裏付けている。ブッシュ/チェイニー政権を、対イラン戦争へ駆り立てたケーガンは、アメリカがイランとの戦争に敗れたことを認めている。  
イランにおける王手 ― この戦争に敗れた結果をワシントンは覆すことも制御することもできない。アーカイブ) ―アトランティック

 紛争でアメリカが完全敗北を喫し、戦略的損失が修復も無視もできないほどの決定的後退を経験した時代を思い浮かべるのは困難だ。

 現在の対イラン戦争における敗北は全く異なる性質のものだ。修復も無視もできない。以前の状態に戻ることはなく、被った損害を覆したり克服したりするような最終的なアメリカの勝利もない。ホルムズ海峡は、かつてのように「開かれた」状態にはならない。海峡を支配することにより、イランはこの地域における主要当事者、世界における主要当事者の一人として台頭する。イランの同盟国、中国とロシアの役割は強化され、アメリカの役割は大幅に縮小する。戦争支持者が繰り返し主張してきたように、この紛争はアメリカの力量を示すどころか、頼りにならず、始めたことをやり遂げる能力のないアメリカを露呈した。これは、アメリカの失敗に、同盟諸国や敵国が適応していく中、世界中で連鎖反応を引き起こす。
 アメリカにはこのジレンマから抜け出す道がないことをケーガンは認めている。  
たとえトランプがイラン「文明」を破壊するという脅迫を実行に移し、更なる爆撃を行ったとしても、イランは政権崩壊前に(そもそも政権が崩壊すると仮定した場合)、多数のミサイルやドローンを発射できる。わずか数回の攻撃が成功するだけで、この地域の石油・ガスインフラは数年、場合によっては数十年にわたり麻痺し、世界とアメリカを長期にわたる経済危機に陥れる可能性がある。たとえトランプが撤退戦略の一環としてイランを爆撃し、強硬姿勢を見せて、撤退を隠蔽しようとしても、このような大惨事を招くリスクなしには実行できない。

 これは王手ではないにせよ、それに近い。
 ケーガンは代替案として対イラン全面戦争も検討しているが、それは更に悪い道で、より大きな失敗につながる可能性が高いとして切り捨てている。  
現在のイラン政権を打倒するため本格的地上戦と海戦を展開し、新政権が樹立されるまでイランを占領する覚悟がアメリカにない限り、また係争中の海峡でタンカーを護衛する軍艦を失うリスクを冒す覚悟がない限り、更に、イランの報復により、地域全体の生産能力に壊滅的な長期的損害が生じることを覚悟しない限り、今撤退するのは最悪の選択肢ではないように思えるかもしれない。政治的観点から言えば、トランプ大統領は、より大規模で長期にわたり、費用もかさむにもかかわらず、最終的に失敗に終わる可能性がある戦争を生き延びるより、敗北を乗り切る方が可能性が高いと感じているのかもしれない。

 従って、アメリカにとっては、敗北はあり得るだけでなく、むしろ可能性が高い。敗北とはこういうことなのだ。

 海峡における新たな現状は、地域的にも世界的にも、相対的な力と影響力に大きな変化をもたらす。この地域では、アメリカは張り子の虎だと証明され、湾岸諸国や他のアラブ諸国はイランに迎合せざるを得なくなる。イラン研究者のルーエル・ゲレヒトとレイ・タケイが最近書いたように「湾岸アラブ諸国の経済は、アメリカ覇権という傘の下で築かれてきた。それを奪い、それに伴う航行の自由を奪えば、湾岸諸国は必然的にテヘランに物乞いをすることになる」。

 彼らだけではない。湾岸諸国のエネルギーに依存している全ての国は、イランとの間で独自の取り決めを結ばなければならない。他にどんな選択肢があるだろう?
 対イラン戦争での敗北は、世界におけるアメリカの立場に、より広範な影響を与えるとケーガンは考えている。  
ポスト・アメリカ世界への世界的適応は加速している。かつてアメリカが支配的だった湾岸地域におけるアメリカの地位低下は、数多くの犠牲のほんの始まりに過ぎない。
 今週後半、ドナルド・トランプ大統領は中国訪問予定だ。フィナンシャル・タイムズに掲載された今回訪問に関する政権側の事前予測記事(アーカイブ)は、アメリカは依然、戦争を利用して世界中に圧力をかけられると主張している。  
「大統領は圧力をかけると予想している」と、ある米当局者は記者会見で述べた。

 トランプ大統領は、中国によるイランとロシアへの支援、具体的には軍民両用部品の提供や潜在的武器輸出について、習近平国家主席との以前の協議を再開すると述べた。

 「この協議は今後も続くと予想している。ここ数日の間にアメリカからいくつかの措置、つまり制裁措置が出されたのを目にしたと思うが、それらは確実に協議の一部になる」と当局者は付け加えた。

 金曜日、イランが中東で米軍に対する軍事攻撃を行うのを支援する画像や他のサービスを提供したとして、中国の衛星企業三社にアメリカ国務省が制裁を科した。また財務省は、イランが中国から携帯式地対空ミサイル(MANPADS)を輸入するのを支援したとして、YUSHITA (Shanghai)International Trade Co., Ltdにも制裁を科した。
 戦争に敗れた以上、制裁ゲームも終わったのだということをトランプは未だに認識していない。中国であれ、他のどの国であれ、湾岸地域で失った覇権的地位をアメリカが取り戻すのを支援することは決して利益にならない。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2026/05/war-on-iran-saudis-blame-israel-neocon-grandee-concedes-defeat.html

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 東京新聞 夕刊 一面   
 ふるさと納税 手数料1379億円

 総務省 サイトに引き下げ要請へ

 寄付の一割超 自治体の負担重く
 この制度を考えた人物を支持していないため、利用しておらず、今後の利用予定もない。

 Wikipedia記事からごく一部を引用する。
 菅は「ふるさと納税の検討を私が指示したのは、少なからず田中康夫がきっかけだった」と周囲に述べている。
 植草一秀の『知られざる真実』
消費税は社会保障財源という嘘

2026年5月 6日 (水)

中国、アメリカ制裁に対抗

2026年5月5日
Moon of Alabama

 日曜日夜、世界時時間(UTC)20時35分頃、ペルシャ湾の船舶がホルムズ海峡を通航できるように米海軍が支援するとドナルド・トランプ大統領が発表した

 「What's Going on With Shipping」チャンネルを運営するSal Mercoglianoによると、ほぼ同時期に、アメリカの輸送予備軍に属する米国籍商船2隻がペルシャ湾を離れ、その後アラビア海に到着したという。海運会社マースクは自社の船舶1隻がペルシャ湾を離れたことを確認した。

 Mercoglianoによると、アメリカはおそらく海軍予備役将校をこれら艦船に乗せたのだろう。彼らは安全な通信機器を装備しており、それにより作戦行動を調整できた。ペルシャ湾を出る際、2隻の艦船はホルムズ湾南側のオマーン沿岸に沿って航行した可能性が高い。

 更にアメリカは自国駆逐艦2隻がホルムズ海峡に進入したと主張した。一方、イランは米軍艦艇に向け発砲し警告を発したと主張している。これらの主張はいずれも確認されていない。

 またアメリカは5隻から7隻(情報源により異なる)のイラン革命防衛隊高速艇を破壊したと主張しており、おそらくヘリコプターによる攻撃だったとみられる。これは、それら高速艇が米海軍が護衛していた船舶を攻撃しようとしていたことを示唆している。イランはこれを否定し、アメリカが攻撃したのは小型民間貨物船二隻だと主張している。(海峡には常に数百隻もの小型貨物船が行き交っている。)

 トランプ大統領が発表した壮大な「プロジェクト・フリーダム」は、ホルムズ海峡の船舶航行を可能にするためのものだった。だが実際には、ペルシャ湾で立ち往生していた約900隻の船舶のうち僅か2隻を救出するための一度限りの特別作戦だったようだ。

 この作戦と並行して、イランはペルシャ湾から出る石油の流れに対する統制を強化した。アラブ首長国連邦(UAE)は西部の油田からホルムズ海峡外の東海岸にあるフジャイラ港まで石油輸送するパイプラインを保有している。ホルムズ海峡が封鎖されているにもかかわらず、このパイプラインを使って1日あたり約200万バレルの石油を輸出している。

 



 昨日、イランはフジャイラを封鎖区域に含める地図を公開した。同時にイラン・ミサイルがアラブ首長国連邦(UAE)の施設に向けて複数発射された。イラン・ドローンがフジャイラを攻撃し石油施設が炎上した。UAE関連船舶2隻も攻撃され、1隻は依然炎上している。

 傲慢な首長国UAEは、最近アラブ主導のOPEC機構を脱退した。UAEはイスラエルとアメリカと同盟を結び、イラン攻撃に参加した。現在の状況下でUAEを攻撃すれば、イランは他のアラブ湾岸諸国から同情票を獲得するだろう。

 だが、それは同時に世界の他地域における石油供給状況を更に逼迫させることになる。

 現在イランのアッバス・アラグチ外相はイラン最大の石油顧客中国を訪問中だ。

 今回訪問は、中国がイラン産製品を加工する自国製油所に対するアメリカの制裁措置を否定した僅か数日後に行われた。  
土曜日の声明で、今回の制裁措置は「国際法および国際関係を律する基本規範に違反し」中国企業と第三国との間の事業を「不当に」制限するものだと中国商務省は述べた。

 制裁措置は「承認、執行、遵守されない」と規定する「禁止命令」を発令したと商務省は述べ、この命令は「国家の主権、安全保障、発展の利益を守るための措置」だと説明した。

 「国連の承認や国際法上の根拠を欠く一方的制裁に中国政府は一貫して反対してきた」と同省は付け加えた。
 これは些細な動きではなく、ワシントンの注目を集めることが確実な声明だ。  
中国はアメリカの域外強制力を国際商取引における日常的条件として扱うのをやめ、中国国内でその強制に従うことが法的に危険な行為になるようにできるかどうか試している。
 これは世界エネルギー供給を支配しようとするアメリカの試みに対抗する中国による最初の攻撃だ。

 この動きは、トランプ大統領の中国訪問10日前に行われた。これは、アメリカはもはや中国に圧力をかけることはできず、中国やイランなどの国々が実際反撃する可能性があることをより強く認識すべきだというメッセージだ。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2026/05/war-on-iran-project-freedom-a-one-off-stunt-tightening-uae-blockade-china-counters-u-s-sanctions.html

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 ≪櫻井ジャーナル≫
イランと中国を結ぶ鉄道の破壊に熱心なアメリカとイスラエル
 Reuters
イラン・中国外相が会談、紛争開始後初めて 緊密な関係強調

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