中国

2026年1月 6日 (火)

想像以上に酷いトランプ外交政策の狂気



マーティン・ジェイ
2026年1月5日
Strategic Culture Foundation

 彼の愚かなお仲間には対ベネズエラ奇策が麻薬密売に関するものだと本気で信じている人がいるのだろうか?

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 最近ベンヤミン・ネタニヤフ首相がトランプのねぐらを訪問したことで、トランプ就任以来六度目の一対一会談になる。これは様々な意味で示唆に富む事実だ。肝心なのは、アメリカとイスラエルはイランと戦争する必要があるとビビがトランプを説得するのに苦戦している点だ。トランプはこの動きに抵抗している。中東における新たな「永遠戦争」にアメリカを引きずり込むシナリオは、世界中で外交政策の失策が裏目に出て、幾度となく窮地に追い込まれているトランプにとって魅力的ではない。ベネズエラを出港した石油タンカーを拿捕するトランプの非道な公海海賊行為を受けて、既に複数戦線で新たな紛争が勃発していると指摘する評論家もいる。

 対イラン戦争はアメリカにとって全く意味をなさない。おそらく敗者になるだろう。イラン政策の失敗で任期を終えたジミー・カーター大統領と同じ運命をトランプは辿りたくないのだ。これはまた、昨年6月、イラン核施設爆撃開始が成功したというトランプ自身の妄想的主張の維持にも繋がる。もしイスラエルのイラン攻撃を、たとえ間接的であれ、例えば空中給油といった形で支援するのに彼が同意すれば、メディアの激しい反発は計り知れないものになるだろう。それは、今トランプにとっては最も避けたい事態だ。

 興味深いのは、トランプが米軍を中東に派遣したくないことだ。中東は、普段から彼は全く無知で、何とも理解が及ばない分野だ。やや滑稽なことに、これは他の地域で米軍の力を誇示するのを彼が望まないという意味ではない。これは、彼のいわゆる「反戦」姿勢について我々が信じ込まされてきたイメージとは正反対だ。

 ベネズエラにおけるトランプ大統領の現在の動きは特に懸念される。中国行きベネズエラ産石油タンカーの拿捕は、火遊び以外何物でもないとしか思えない。これはトランプ大統領にとって、これまでで最も大胆かつ危険な策略と言える。中国が黙って受け入れるはずはなく、昨年の関税脅迫への対応と同様、報復措置に出ても驚くべきではない。アメリカあるいは同盟国のタンカーを中国が拿捕するなど同様報復措置に出ることは容易に想像できる。中国にはそのための手段と技術と軍事装備がある。そうしない理由などあるだろうか?

 問題はトランプの脆弱な自尊心だ。以前中国が関税引き上げをちらつかせ、ドル安を加速させ、アメリカによる希土類元素購入を制限した際、譲歩したのは当然の選択だった。だが中国がアメリカの石油タンカーを拿捕すれば、メディアの注目は高まり、トランプが静かに撤退するのは遙かに困難になる。虚栄心と感情次第で一日も経たないうちに変わることもある気まぐれで子供じみた意思決定は、中国との対立では余りに危険すぎる。

 トランプは横暴な男だ。インドや、南米諸国などの小国に喧嘩を売るのが好きで、抵抗がほとんどないと思われる場所で影響力を行使する。だが中国は違う。急成長を続ける経済が燃料安全保障にかかっている新興超大国だ。その計画に水を差すのは正気の沙汰ではない。そして彼が有能な人物から助言を受けていないことも露呈している。マルコ・ルビオはホワイトハウス高官の中でも最も無能で滑稽な外交政策のまぬけと言えるだろう。

 本当の懸念は、これまで同様、誤算と、それに続くエスカレーションの悪循環で、それは取り返しがつかないものだ。1970年代と80年代には、ニクソンやカーターやレーガンといった大統領でさえ、この地域に経験豊富な外交官を派遣し、衝動的発言をする大統領連中を安全策として支えていた。今日、外交はジャーナリズムより効果が低い場合が多く、最近イギリス政府は、十代の若者をモロッコの新大使に任命した。外交官たちはソーシャルメディアに夢中で、存在感を維持するのに苦労する役人になっている。つい先日、トランプ大統領は自身の政治的見解に沿わない外交官を30人解雇した。これは特使がもはや重要なパイプ役ではなく、単なる取り巻きやイエスマンになっていることを示している。

 トランプの問題は、国際外交が彼の救いの手になり得たにもかかわらず「トランプ第一、イスラエル第二、アメリカ第三」という彼の姿勢が注目され始め、悲惨な結果を招いていることだ。例えば、最近日本は米国債の売却を開始した。一般のソーシャルメディア・ユーザーでさえ点と点を結びつけている。トランプのベネズエラ、ナイジェリア、グリーンランド介入は、いずれも石油や鉱物資源が豊富な地域を標的としている。このパターンを見抜のに天才である必要はない。

 ベネズエラでの策略が本当に麻薬密売対策のためだと信じている人などいるだろうか? イランに対してネタニヤフ首相は石油カードを切っているのかもしれないが、ビビがアメリカを戦争に引きずり込むには汚い手を使う必要があるのは明らかだ。おそらくイランにイスラエルを攻撃させて、親イスラエルの闇の国家がトランプに牙をむくのを傍観する形で。トランプにとっては、ベッドの下にサソリを潜めて寝る方が、彼が好んで主張する偽の勇ましさでロビー団体と対峙するよりもましなのかもしれない。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/01/05/madness-of-trump-foreign-policy-its-worse-than-you-think/

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 属国傀儡、伊勢神宮は参拝しても、宗主国の極悪非道には口をつぐむ。
 物言えば唇寒し冬の風

 植草一秀の『知られざる真実』
米国の侵略論評できない首相
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
トランプの奔放を止めるのは何か。米国自身。11月中間選挙。現在 民主党支持46.2%、共和党42.2%。この傾向継続なら民主党は下院過半数達成。共和党は微差で上院過半数維持。選挙民にとり最大課題は経済(雇用含む)。これに対しトランプ批判が支持を上回る。

2025年12月 9日 (火)

高市早苗首相発言による「波及効果」

ウラジミール・テレホフ
2025年12月7日
New Eastern Outlook

 2025年11月7日の台湾問題に関する高市早苗首相発言に端を発したスキャンダルは、今もなお波紋を広げており、収まる気配はない。

 

 彼女の発言が世界政治の舞台に引き起こした「水面の波紋」は消えるどころか、新たな当事者たちに広がり続けている。

 日本の防衛大臣、台湾に近い島を訪問

 高市首相が以前、中国が台湾問題で軍事的解決を選択し、ひいては日本にとって「存立危機事態」となる可能性について発言したことに既にNEOは触れている。今や高市首相発言が経験の浅い政治家の単なるうっかり失言だったという希望は消え去りつつあるようだ。女性初の首相に就任し、まさにその道を歩み始めたばかりの彼女は、理論上、経験豊富な男性政治家が巧妙に仕掛けた罠に真っ向から陥った可能性もある。例えば、議題と無関係の国会行事で、予期せぬ質問を投げかけられたかもしれないのだ。

 高市首相発言によって引き起こされた、この地域の二大国間の関係悪化を反転させる可能性は今のところ示唆されていない。

 だが高市首相は発言を撤回するどころか「穏便な」説明さえ拒否している。しかも、中国政府はそうした説明があれば事は片付いたと控えめに示唆しているにもかかわらず、このような対応をとっているのだ。

 高市首相発言が偶然の失言だったという仮説は、二週間後の出来事により更に揺るがされた。小泉進次郎防衛大臣は、台湾東岸に最も近い日本最西端の有人島で人口1500人の小さな与那国島を視察した。更に重要なのは「我が国への武力攻撃の可能性を低減するため」と自ら述べた通り、同島にミサイルを配備する計画を彼が発表したことだ

 具体的にどのようなミサイルを指しているか彼は明らかにしなかった。日本は現在、幅広い海上・地上配備型ミサイルを開発しており、与那国島に配備されれば、中国沿岸部から最短距離でも500キロ未満であるため、中国の複数の省が射程内に入る可能性がある。日本からの既に薄っぺらな脅威に対する中国国防省の反応は、予想以上のものだった。

 二国間関係の悪化が更に進む前に、日本外務省全権大使による北京緊急訪問という形で状況改善の試みがあったことは特筆に値する。しかし、この試みは成果を上げなかった。もしこの二つの展開が日本による「アメとムチ」戦略の試みなら、世界第二位の大国に対するこのような姿勢は適切とは言えない。

 危機の深刻化と拡大

 高市首相発言を契機に悪化した地域二大国間の関係改善の可能性は、現時点では全く見えていない。南アフリカで開催されたG20サミットの際に予定されていた李強中国首相との会談は実現しなかった。日中韓3カ国首脳会談は当初2026年1月に予定されていたが、無期限延期となった。この3カ国協議メカニズムが三年の中断を経て2024年5月に再開されることは、各国に存在する長年の深刻な問題がようやく解決される兆しと目されていただけに、これは特に注目に値する。

 しかし今日、日中両国の人的交流、特に観光業において新たな障害が立ちはだかっている。また長らく主に中国が輸入してきた日本の水産物輸出にも新たな規制が課されつつある。

 過去二年間、この分野の状況は二国間関係の現状を示す信頼できる指標となってきた。関係改善の兆しが見えてきたことで、福島第一原発の損傷した原子炉冷却に使用された処理水放出に起因する日本の海水、ひいては水産物の品質に対する中国当局の懸念は薄れた。現在、中国当局は輸入停止の正当化として、「不完全な」書類だけでなく、「高市首相の台湾問題に関する誤った発言が中国国民の憤慨と非難を招いた」ことを挙げている。

 日本に対する中国国民や専門家の言説の急激な強硬化も見逃せない。彼らは第二次世界大戦と戦後初期の様々な事実データを用いている。特に注目されているのは、1947年の平和憲法を改正しようとする日本の試みだ。この問題に関する論評は、議論の余地ない一般的な警告で締めくくられている。「戦争を好む者は滅びる」。だが問題は「戦争を好む者」が、生き残ることを期待し、何年もの間、何の罰も受けずに公然と行動していることだ。

 現アメリカ大統領は、政治的特異性や個人的欠点はあるものの、そのような範疇には当てはまらないようだ。東アジアの二大国間対立が急速にエスカレートしていることに、彼は心から警戒しているようだ。両首脳と直接会談してからわずか1ヶ月後、ドナルド・トランプは電話をかけた。一部報道によると、高市首相との会談で、彼は日中関係の現状に対する「懸念」を表明し「エスカレーションを避ける」よう促したという。しかし、この対立は世界政治の舞台に広がり続け、既に国連の場にまで及んでいる。

 この問題は、11月下旬、中国の王毅外相とフランス大統領の外交顧問エマニュエル・ボンヌとの電話会談、そして中国訪問中のジョナサン・パウエル・イギリス国家安全保障問題担当大統領補佐官と王毅外相との会談の際に浮上した。注目すべきは、ボンヌ自身もそのわずか一か月前に中国を訪問していたことだ。

 台湾での反応

 台湾問題を巡る大国間の地政学的駆け引きにおいて、台湾が受動的駒として扱われているわけではないことは改めて強調しておくべきだろう。しかし、これは北京が主張する「台湾問題」の実態とは程遠いもので、単に歴史的経緯と「誤解」により、台湾は中国の行政管轄下にないだけだと主張している。

 しかし、中国は台湾の活発な国内政治のあらゆるニュアンスを綿密に監視しており、台湾の主要政治勢力の中で、現在野党となっている国民党を明確に支持している。孫文と、その後継者蒋介石と、現在の党指導部の時代から、国民党は「一つの中国」原則の堅持を宣言してきたが、もちろんそれは独自条件に基づくものだった。国民党は日本との関係構築の必要性を否定していないものの、複数の国民党議員や馬英九前総統(2008年から2016年まで総統を務めた)は、高市発言に対し、基本的に「中国本土との関係は我々自身で管理する」と慎重な批判を示した。

 一方、台湾現政権の代表たちは、民進党の頼清徳総統をはじめ、高市首相発言と前述の日本防衛計画の両方に十分な理解を示している。一方、国民党と連立政権を組む台湾人民党は、日中対立の高まりの中で、仲介役としての役割を担っている。

 現在、これは世界政治の安定に対する大きな脅威の一つとなっているため、更なる進展を継続的に監視する必要がある。

ウラジミール・テレホフはアジア太平洋問題専門家

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/12/07/a-ripple-on-effect-following-sanae-takaichis-remark/

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 東京新聞 朝刊 特報面

「台湾有事は存立危機事態」

「村山談話の会」高市首相答弁撤回を要求

 「若者同士の交流維持が重要」

 「まずは相手を理解しようとすること」

 「国民感情悪化を憂慮」

 「まさに戦争前夜」

元外交官ら「対話へ努力を」

貿易・観光に打撃「外交音痴

 辺野古・高江リポート

 「まだ戦闘機は飛んでいる」
 墜落64年で集会、辺野古では基地反対訴え

2025年12月 4日 (木)

アメリカのカリブ海での軍事力増強はガザ和平を妨害するイスラエル戦略の一環?石油とマチャドとベネズエラ政権転覆



ホアキン・フローレス
2025年11月29日
Strategic Culture Foundation

 ネタニヤフにとって、従順なベネズエラ政府は、彼に都合の悪い様々な統合枠組みの一部に対し有利な立場に立てる可能性があるのだ。

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 なぜアメリカ海軍はベネズエラを直接攻撃せず威嚇姿勢をとっているのだろう。この問いに答えるには、意外にも意外性のない点に目を向ける必要がある。まずは昨年10月。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、ベネズエラ反政府派指導者マリア・コリーナ・マチャドのノーベル平和賞受賞をいち早く個人的に祝福した人物の一人なのは誰の目にも明らかだ。これに倣った主要国指導者は、アルゼンチンのミレイとドイツのメルツしかいない。両者はリクードの政治とイスラエルのガザ戦争への無批判同調姿勢で知られ、まさにその点で際立っている。なぜマチャドはこの三人からこれほど称賛されたのか。

 公式見解では、ベネズエラのジャングルに潜む、イランの支援を受けたレバノンのヒズボラの隠れた細胞をマチャドが一掃するとされているが、これを真剣に受け止める大人などほぼ皆無だ。ほとんど侮辱的で、信じ難く、1980年代の下手な脚本のハリウッドB級映画のようだ。ネタニヤフのベネズエラへの関心は、むしろ石油とイスラエルのエネルギー源多様化の必要性が焦点だ。同時に、停戦と国連安保理決議2803に異議を唱える場合、地域的経済正常化のリスクを冒しても、ガザに対する影響力を得ることを狙っている。ベネズエラのような代替案を示すことで、イスラエルは、たとえ政治的影響で供給国からの現在の石油供給が途絶えたとしても、ガザ和平を頓挫させるよう圧力をかける柔軟性を得ることになる。トランプはネタニヤフの戦略に同調しているのか、それとも何か他の動機があるのか?

 ベネズエラは世界最大の確認済み石油埋蔵量を保有しており、2024年時点の約3030億バレルはサウジアラビアをも上回る。ドナルド・トランプ・ジュニアとのインタビューで、マチャドはベネズエラ埋蔵量はサウジアラビアより大きいと強調し、ベネズエラ石油をアメリカの利益のために無制限に搾取できると極めて植民地主義的な言葉で語った。彼女は本当にアメリカの利益だけを意味していたのか? ベネズエラ情勢を理解するには、ネタニヤフ首相、トランプとムハンマド皇太子がガザの和平と正常化を巡って抱いている緊張関係を理解する必要があるのかも知れない。

 

イスラエルの限られた選択肢:二つの選択肢

 イスラエルは経済、エネルギー、安全保障の面で、今後二つの主要戦略を掲げている。欧州と欧米諸国の支援に頼るか、地域経済に統合するかのどちらかだ。前者は従来の地域的方向性を維持するが、経済的に非効率だ。ベネズエラのような新たな資源がなければ、イスラエルは停滞するリスクがあり、一方、地域パートナーは発展し、サウジアラビアに過剰な影響力を与えることになる。まさにこれが、テルアビブがIMEC(インド・中東・ヨーロッパ経済回廊)と正常化を推進してきた理由だ。安価なベネズエラ産原油入手は、こうした動きを遅らせるか、あるいはイスラエルの交渉力を強化する可能性がある。

 第二の戦略は、地域経済統合への積極的関与、アブラハム合意の拡大と、サウジアラビアとの正常化で、これはイスラエルにとって全体的に望ましいものだ。それは既存の欧米諸国との関係は強化するが、その明白さはネタニヤフの交渉力を弱め、ガザをイスラエル領とみなす入植・併合派の過激派を疎外する結果となり国内で政治的に危険な道を進むことを余儀なくさせる。
 
インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)とサウジアラビアの視点

 イスラエルは、輸送拠点としての戦略的地位を確保し、サウジアラビア原油の一部を利用するため、現在の供給国が提供するより有利な価格設定とメカニズムを模索する計画だ。イスラエルは、特にサウジアラビアとの関係において、地域における自国の方向性を変える必要があると認識している。 トランプ大統領の20項目計画の成功次第の、2002年に発足した長年のアラブ和平構想に基づいて、ガザ地区の平和と再開発が実現しない限り、イスラエルとの正常化やアブラハム合意にリヤドは参加するまい。

 イーライ・コーエン大臣によれば、イスラエルは、サウジアラビアから自国を経由しヨーロッパに直接石油を輸送する経路を提案した。計画では、700キロのパイプラインをエイラートまで敷設し、そこからエイラート・アシュケロン・パイプライン会社(EAPC)(別名「ヨーロッパ・アジア・パイプライン」)を経由してアシュケロンに至り、最終的に地中海をキプロス、ギリシャを経由してヨーロッパ市場に輸送する。この計画をアブラハム合意を拡大し、この地域におけるイスラエルの戦略的、経済的立場を強化する方策とコーエン大臣は位置付けているが、もちろんイスラエル国防軍のガザ侵攻が大いに阻害したサウジアラビアとの正常化に依存している。この広範な合意は、イスラエルが愛憎入り混じる関係にあるIMECプロジェクト(インド・中東・ヨーロッパ経済回廊)の大きな特徴になっている。

 イスラエルにとってアブラハム合意は、理想的には正常化につながり、イスラエルはインドからの製品、中東地域からの石油・天然ガス輸出の主要拠点として、IMECプロジェクトの一環としてヨーロッパ向けに取り組むはずだった。しかしイスラエルがガザを「放棄」しない限りサウジアラビアが正常化に同意しないため、ネタニヤフ首相が20項目計画を遵守しない限りIMECは機能しないだろう。イスラエルとサウジアラビアは共にIMECを望んでいるが、地理的に制約を受けるのはサウジアラビアだけだ。イスラエルの役割は確かにインドとの関係と合致する。それはインドにとって望ましいことではあるが、インド製品のヨーロッパへの輸送を阻む障害を回避する点において根本的なものではない。

 
IMECインフォグラフィック 出典: www.imec.international

 イスラエルはIMECを自国の経済的・戦略的立場の中核と見なしているが、回廊の設計はイスラエルの完全支配下にあるわけではない。湾岸諸国、特にサウジアラビアは、エネルギー輸出をイスラエルではなくガザ地区経由にすると選択し、事実上イスラエルを後回しにすることができる。そのシナリオでは、パイプラインや輸送インフラがイスラエル領土を迂回し、イスラエルはエネルギーの流れや地域貿易に対する影響力を大幅に低下させる可能性がある。この可能性は、IMECからイスラエルが得る利益が、湾岸諸国の協力とガザ地区とパレスチナの正常化に関する譲歩に左右されることを浮き彫りにしている。

 もしイスラエル国防軍がガザで軍事的・政治的に成功し、パレスチナ人を民族浄化していれば、ガザは事実上イスラエル領となり、イスラエルから独立した代替拠点としてのガザは選択肢から消えていただろう。もしかしたら、このことが、失敗した征服戦争におけるネタニヤフ首相の策略の一部を説明するかもしれない。

 サウジアラビアには、まだ別の選択肢があるかもしれない。かつて、サウジアラビアはレバノンに直接石油を輸送するパイプラインを持っていた。1950年に操業を開始したTAPLINEは、サウジアラビア産原油をヨルダンとシリアを経由してレバノンに輸送し、地中海に輸出した。このパイプラインは、一時はレバントの政治経済の再構築を約束した。当時アラムコを支配していたアメリカ企業に建設され、スエズ運河を経由するタンカー輸送をすることなく、サウジアラビア産原油を地中海に輸出することが目的だった。

 しかし、1967年の戦争中、シリアはアメリカとの関係を理由にサウジアラビアを罰するため、パイプラインを遮断した。これによりシリア区間が閉鎖され、パイプライン全体が麻痺した。しかし、最近のシリア政権転覆により状況は変化した

 
1950年代のTAPLINE経路

 イスラエルが将来サウジから原油を輸入する場合でも、現在の供給ネットワークを維持する場合でも、直面する問題は同じだ。ガザ和平計画を後退させ、再び戦闘行為に関与すれば、サウジ計画の実現が阻止され、ブラジルとトルコの躊躇が一層顕著になり、大幅削減、更には停止につながる可能性が高い。

 イスラエルによるガザ紛争は、IMECにとって、まさに悩みの種になっている。ガザ紛争はイスラエルとサウジアラビア間の「正常化交渉を阻害」し、回廊の存続を危うくしていると評論家たちは指摘している
 
ベネズエラは既にトランプのために働いている

 トランプはベネズエラの政権転覆に関心があるかもしれない。あるいは、そうでないのかもしれない。費用対効果の観点から、あるいは現在の体制がトランプにとって非常にうまく機能していることを考慮すると、それを正当化するのは難しい。マドゥロ現政権下でシェブロンは既にベネズエラの5か所で黒字経営をしており、PDVSAと30~40%の株式を保有している。トランプ政権は今夏から2025年8月まで、財務省のOFAC(海外資産管理局)免除措置を発令し、一部の制裁措置は一時停止されたため、事業は継続可能となっている。現在の地政学的局面におけるマドゥロとトランプの明らかな共通認識は、重要な背景を掘り下げた我々の記事「“Are Trump and Maduro secretly friends? Smoke & mirrors in 47’s win-win game in Venezuela”(トランプとマドゥロは密かな友人か? 47のベネズエラにおけるウィンウィンゲームにおける煙幕と鏡)」の基盤になった。

 無視できない別の視点がある。既にベネズエラは、ワシントンに完全に都合のいいように機能しているのだ。カラカスを公然と悪者にして、アメリカは実際機能している取り決めを覆い隠している。現時点で、アメリカだけがベネズエラ原油を通常価格で購入できるが、その場合も、取引の全てが小売価格でベネズエラに入金される精製製品で決済されるため、実質的に追加割引を受ける。他の全員が高額プレミアムを支払う。アメリカ以外の購入者は、現在施行されている関税制度に更に25%関税が課せられる実質的な影響は、ベネズエラをアメリカの事実上の私有埋蔵のようなものにし、見出しで報道されるドラマが示すよりワシントンにとって安価で安全なものになる。

 以下は追加情報だ。

 8月初旬のVenezuela Analysisによれば

 「金曜、アメリカ石油会社シェブロンは、アメリカ財務省による新たな制裁免除を受け、ベネズエラ合弁事業からの原油出荷を再開予定だとシェブロンのマイク・ワースCEOが確認した。」

 「今月、我々が関心を持っているベネズエラの事業から限られた量の石油がアメリカに流れ始めるようだ。」[…]

 この石油企業幹部は、ベネズエラでの石油掘削と輸出事業の再開は、シェブロンの利益への短期的影響は限定的だが、債務返済の促進につながると付け加えた。ベネズエラでの事業継続をドナルド・トランプ政権に強く働きかけてきたワースは、アメリカ制裁を遵守する同社の決意を改めて表明した。


 匿名情報筋は最近ロイターに対し、以前の報道を受けて特定ライセンスが発行されたことを確認した。一般ライセンスと異なり、特定ライセンスは企業に直接付与され、アメリカ財務省に公表されることはない。


 「ベネズエラに残る唯一のアメリカ大手石油会社シェブロン社は、制裁対象国である同国に長期的に留まり、適切な時期が来れば経済再建に貢献したいと考えている」とマイク・ワースに関する最近のシェブロン記事でブルームバーグが報じた。こうした曖昧な姿勢は、シェブロン社が何らかの結果に関与することを意味するものではないが、同時に、当面ベネズエラで操業を継続する計画であることを明確に示している。

 エクソンモービルは、数十年前にカラカスが国有化改革を施行した後、ベネズエラでの操業を停止すると決定したが、おそらく再び操業を開始する可能性がある。アメリカはいつでもベネズエラに対する制裁を解除する決定を下す可能性があるが、そのためには価格とOPECの政策をうまく調整する必要がある。

 制裁により制限されているベネズエラ産原油は、世界的原油価格の上昇を後押しする傾向がある。市場シェアを失うことなく、より多くの原油を高値で販売できるため、OPEC最大の産油国で、柔軟な余剰生産能力を持つサウジアラビアは現在の制度の恩恵を受けている。つまり、アメリカのベネズエラに対する制裁は、総生産量を制限し、アメリカとサウジアラビアの収入と市場への影響力を間接的に強化すると同時に、サウジアラビアにOPEC内での生産と価格管理に関する影響力を与えているのだ。

 ここで重要なのは、その背景だ。ベネズエラの原油生産量は約90万バレル/日なのに対し、サウジアラビアの原油生産量は約900万バレル/日だ。つまり、ベネズエラの生産量はサウジアラビアの生産量の僅か10%に過ぎない。ベネズエラが市場に完全復帰すれば、世界的価格下落を引き起こし、サウジアラビアやアメリカなど原油輸出国にとって経済的に不利な状況となるだろう。アメリカは、生産量1,350万バレル/日のうち約400万バレルを輸出している。

 ベネズエラの政治構造を再構築したり、シェブロンとPdVSAの合弁事業におけるシェブロンの持ち分を増やしエクソン・モービルを呼び戻したりできるとまだトランプは考えているのかもしれない。マドゥロも協力する意向を示している。しかし、アメリカのエネルギー企業は既に出入りできており、制裁はワシントンの裁量で解除される可能性がある。ベネズエラは依然ドルを保有し、石油取引の大半を米ドルで行っており、2024年の売上高は175億ドルに達する。政権転覆はどんな付加価値をもたらすだろう? アメリカの積極的関与がなければ成功する可能性は低く、公然と攻撃すれば石油インフラが壊滅し、アメリカはリスクの高い軍派遣に巻き込まれることになる。シェブロンは政権交代を推進しているわけではない。現実的に、制裁や脅迫や戦争より貿易と商売を優先しているのだ。

 実際、アメリカのベネズエラ産原油輸入量は2025年に増加し、1月には日量約25万バレルに達した。これは2019年の制裁開始以来最高水準の一つだ。またタンカー追跡データによると、輸出量は8月に9ヶ月ぶりの高水準に達し、日量約6万バレルがアメリカ・メキシコ湾岸に輸出された。この増加は主にシェブロンがアメリカのライセンスに基づいて操業を再開したことによるもので、ベネズエラ産原油供給とアメリカ製油所との直接的なつながりを裏付けている。アメリカはベネズエラ産原油の37%を輸入している

 振り返ってみれば、現状のままでほぼ安定していると言えるかもしれない。価格は安定しており、サウジアラビアも満足しているようだ。ベネズエラは合弁事業から非取引的な条件で現物報酬を受け取ることが可能で、CNN報道によると報酬はバレル単位で支払われたという

 「7月、トランプ政権はアメリカ大手石油会社シェブロンに、ベネズエラ産原油の輸出を許可するライセンスを再交渉した。ロイター通信によると、ライセンスの新条件では、シェブロンはベネズエラへの料金とロイヤルティを現金ではなく石油で支払うことが認められ、実質的に同国からのシェブロンの原油輸出量は半減した。」
 今のところ、トランプの海軍力増強とカラカスにおける政権転覆への期待は、うまく噛み合っていないようだ。アメリカと産油国はベネズエラの現状に満足しているようだ。カラカス自身も戦争や政権転覆より現状を好んでいる。他に何が影響しているのだろう?  
結論に向けて

 ネタニヤフにとって、従順なベネズエラ政府は、彼にとって都合の悪い様々な統合枠組みの一部に対し有利な立場に立つ可能性があり、少なくとも、彼にとって妥当な将来の選択肢があるように見せかけるだろう。

 イスラエルは、アゼルバイジャンからトルコ経由で、カザフスタンからロシア経由で、あるいはブラジルからトルコ経由で輸入される石油に依存している。これらの石油は、ネタニヤフ首相のガザに対する好戦的姿勢により危機に瀕している。加えて、イスラエルはエネルギー供給に関し戦略的権能を有している。トルコが既に行動を起こしていることを示す証拠をいくつか検証する予定だ。第二部では、これら要素を取り上げ、イスラエルのエネルギー供給の本当の仕組み、これら経路がネタニヤフ首相のガザにおける政治的影響力を制限している理由と、マチャドとの特別協定に基づくベネズエラ産重質原油の安定供給が、アメリカには解決する動機皆無で、むしろ反対しているように見える問題を解決する可能性がある理由を考察する。

 次回の記事では、マチャドとネタニヤフ首相の合意内容の詳細や、東地中海やペルシャ湾からの不定期再展開を含む、ベネズエラに対する最近の米海軍の姿勢の背後にある論理に焦点を当てる。カラカスにおけるアメリカ主導の政権転覆を通じてベネズエラをイスラエルに開放すれば、イスラエルに信頼できる代替ルートを与えることになり、トランプ大統領自身のガザ開発計画を阻害することになるだろう。しかし空母群は依然地平線のすぐそばで停泊を続けている。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/11/29/is-us-caribbean-buildup-part-of-israel-strategy-derail-gaza-peace-oil-machado-and-venezuelan-regime-change/

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 Global Outrage|Col. Larry Wilkerson
VENEZUELA CRISIS DEEPENS — Trump’s Strike Sparks Global Outrage | Col. Larry Wilkerson 59:36
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
各報道機関高市内閣支持率、日経75%(+1)。産経75.2(-0.2) 、 読売72(+1)、共同 69.9(+5.5) 、朝日 69(+1)、NHK65.6

2025年11月28日 (金)

日中関係を急激に悪化させた高市首相の台湾発言

ウラジーミル・テレホフ
2025年11月27日
New Eastern Outlook

 今年11月7日、国会委員会の場で、台湾をめぐる情勢の激化に対する対応の可能性についての高市早苗首相発言が、日中関係に深刻なスキャンダルを引き起こし、その影響は今日に至るまで収まっていない。

 

 国内の政治的背景

 高市首相は、2026年度予算案に関する衆議院委員会での予備的議論で、台湾問題全般についていくつかの発言をした。この予算案は、翌年の4月1日に始まる予定だ。つまり、来年度の国家支出の最適な配分に関する議論の中で、このような問題を提起すること自体奇妙だと言わざるを得ない。

 特に、現在の日本には、最優先で取り組むべき、ほぼ根本的問題が山積していることを考えればなおさらだ。中国とのスキャンダルの最中であったにもかかわらず、人口減少の脅威を最大の脅威として高市首相自身も挙げている。経済状況も良くなく、今年第3四半期のGDPは1.8%も減少した。

 もちろん、特別な願望があれば、高市首相への質問で概説された問題と日本の国家予算編成という話題との間に関連性を見出すこともできる。

 与党、自由民主党にとって、この定例行事はそれ自体が重要だ。昨秋、国会で過半数を失った自民党は、来年の国の運営に関する基本文書を野党と何らかの形で調整しなければならないからだ。同時に、自民党の伝統的選挙基盤で勢力を伸ばし続けている参政党という新勢力を、自民党は相当な懸念をもって注視している。

 つまり「台湾に一体何の関係があるのか?」という問いは決して空論でないように思われる。この問題が「予期せぬ」形で提起されたことは、事前に計画されていたという以外、答えを見つけるのは困難だ。

 高市首相は、具体的に一体何と言ったのか

 理解できる限り、高市総理への質問は二つの部分から構成されていた。第一は、中国軍による台湾封鎖と侵攻という仮定の可能性の評価に関するもので、第二は、これに対する日本の対応の可能性に関するものだった。当然ながら、高市総理への質問で概説された問題と日本の国家予算編成という話題との間に関連性を見出すことは可能だ。具体的には、首相答弁の中で「邦人救出」の必要性について言及された部分で、もちろんこれには金銭的なものも含め一定の費用が伴う。

 この場合「救出」が必要となる「日本人」とは具体的にどのような人を指すのか。二国間協力の規模が年々拡大するにつれ、台湾における日本人の数は増加の一途を辿っている。特に、東京に本部を置く日本台湾交流協会「事務所」が台北に設置されており、事実上大使館のような機能を果たしている。職員の中には、(準)武官もいる。

 しかし近年、日本では、台湾周辺の情勢悪化の懸念が、いわゆる「離島防衛問題」とも結び付けられている。これには台湾沖に位置する日本領琉球諸島の島々も含まれる。その中で最も人口の多い石垣島は人口5万人だが、台湾から300キロとかなり離れている。だが台湾問題のエスカレーションによる脅威を口実に、これらの島々に自衛隊基地が建設されている。

 それでもなお、高市首相が前述の「邦人救出」という主題で発言を限定していれば、中国との関係に多少なりとも深刻な問題が生じることはなかったろう。だが彼女はそれに加え、台湾問題を日本にとって「存立危機」の源泉と捉え、中国が武力行使で解決を図る可能性に関する評価を付け加えた。これは(むしろ当然ながら)紛争への自衛隊の関与を示唆する。だからこそ、高市首相の前述発言以降、日中関係はいわゆる「悪化の一途を辿り始めた」のだ。

 高市首相の発言に対する反応

 中国の公共空間において、日本に対するこれほど否定的な流れを筆者が見るのは久しぶりだ。高市首相の不運な発言のわずか一週間前には、日中関係にいくらか前向きな兆しが見え始めていたにもかかわらずだ。

 現在、高市首相個人に対する一連の痛烈な批判記事が、好意的とは言えない似顔絵と共に次々掲載されている。大阪の中国領事館ウェブサイトには、高市首相の「汚い喉を切り裂く」という誓約(すぐに削除されたものの)まで書かれた。東京の中国大使館もウェブサイトに声明を掲載した。声明は、意味合いは高市首相に劣らず厳しいものの、言葉の辛辣さは控えめだった。“No renunciation of use of force, no compromise regarding external interference.”(「武力行使の放棄なし、外部からの干渉にも妥協なし」)という見出しでGlobal Timesが報じた。G20サミットに合わせ李強首相と高市首相間で以前合意されていた会談は開催しないと中国外務省が発表した。

 無人島である尖閣諸島(釣魚島)を巡る情勢は緊迫化している。両国は、隣国に留学する児童・学生に挑発行為への警戒を呼びかけている。中国の関係省庁は、日本観光旅行を控えるよう「強い勧告」を出した。近年、日本を訪れる外国人観光客の中では中国人が上位を占め、観光産業が未曾有の活況を呈しているにもかかわらず、こうした動きが続いている。一方、日本の経済産業省が、主要貿易相手国である中国への「依存からの脱却」の必要性を訴える声明を発表した。

 同時に、急激に悪化した二国間関係において、ある種の緊張緩和に向けた試みも行われている。特に、日本外務省特使が北京を緊急訪問したが何の成果もなかった。日中関係は全体的に急激に悪化し、日本の野党指導者たちも、先ほど問題になった首相発言に強く反発した

 「第三者」の反応としては、高市総理発言に対する台湾指導部の肯定的評価は予想通りだった。しかし日本にとって、この問題に関し駐日アメリカ大使が表明した支持の方が遙かに重要と思われる。高市総理の立場への「理解」は、アメリカ海軍高官の一人、J・コドル提督に示された。ちなみにコドル提督は公の場に姿を現す機会が増えている。しかし、注目すべきは、同じ件に関し韓国国会議長が否定的反応を示したことだ。

 最後に、重要な点を指摘しておきたい。米国の立場とは異なり、日本は台湾問題に関して公式詳細を公に述べるのを避けている。これは、外交関係を回復した1972年の日中韓共同声明において既に説明されている。当時、日本はこの問題に関し、中国が提示した方式の意味について「理解する」と表明したに過ぎない。だが、この文書には、台湾が中国に帰属するという事実を日本が認めたという記述はない。

 つまり、ここで論じた最新で、もちろん最後ではない残念な事件は、東アジアの二大大国間関係におけるかなり深刻で長期にわたる困難の一側面を反映したにすぎない。

 ウラジーミル・テレホフはアジア太平洋問題専門家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/11/27/takaichis-remark-on-taiwan-sharply-deteriorated-japan-china-relations/

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 ≪櫻井ジャーナル≫
首相の台湾有事発言の背景には米軍の対中国戦略があり、単なる舌禍事件ではない

2025年11月13日 (木)

ハートランド再征服に乗り出すティムール・トランプ。本当だろうか?



Pepe Escobar
2025年11月10日
Strategic Culture Foundation

 西から来る征服者がパミール高原を横断することはないと歴史は定めていた。アレクサンダー大王もそうだったし、イスラム教もそうだった。だが中国征服者のティムール・トランプもそうなるかもしれない。

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 期待を裏切らず、彼お得意の単純化思考の賢者風せりふで、何世紀にもわたる複雑なハートランド史をドナルド・トランプ大統領は定義した。

 「ここは世界の中でも厳しい場所だ。ここより厳しく賢明な場所はない。」

 さて、チンギス・ハンからティムールまで、あらゆる腕っ節の強い連中は今ほっとしているかもしれない。特に、ホワイトハウスでの写真撮影兼夕食会に団体で招待された、中央アジア5カ国(カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)の指導者たちはほっとしていることだろう。

 古代シルクロードの砂粒一つ一つが知っている通り、ティムール・トランプにとって自慢話はまさに天職だ。彼はウズベキスタンとの「素晴らしい」貿易協定を称賛した。ウズベキスタンとの「驚異的」貿易協定を彼は称賛した。この協定に基づいて、タシケントは鉱物資源、航空、インフラ、農業、エネルギー・化学、ITなどの重要分野で、2035年までに総額350億ドル、最大1000億ドルに上る購入と投資を行うことになる。

 タシケントがどのようにして資金調達し、どう具体的に投資する予定なのか詳細は一切明らかにされていない。だが、これは実利的な実務家、ウズベキスタンのシャフカト・ミルジヨエフ大統領がティムール・トランプを惜しみなく称賛する絶好の機会になった。

 「ウズベキスタンでは、あなたを世界の大統領と呼んでいます。(中略)あなたは8つの戦争を止められました。(中略)

 カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領も、この発言を忠実に繰り返した。

 多くの国の何百万人もの人々があなたに心から感謝しています。あなたは偉大な指導者で、政治家で、我々全員が共有し、大切にしている常識と伝統を取り戻すため天から遣わされた方です。あなたの大統領職の下、アメリカは新たな黄金時代を迎えています。平和の大統領として、トランプ氏はわずか8ヶ月で8つの戦争を終結させました。

 そして、まさにその通り、崩壊しつつあるアブラハム合意にカザフスタンが署名する用意があるとトカエフ大統領は正式発表したが、アスタナは1992年に既にイスラエルと正常化しており、テルアビブとは常に比較的緊密な関係を保っていたことを考えれば、これは全く冗長なことだ。

 訳:アブラハム合意詐欺は、アメリカとカザフスタンによるハイテク金属・希土類元素取り引きの締結を巡る持ちつ持たれつ関係の一環だ。ここで唯一重要なのは、中国の希土類元素規制を回避し、自国のハイテク・防衛分野への供給を継続しようと、アメリカとイスラエルがサプライチェーンを急ピッチで争っていることだ。

 中央アジアは、レアアースとウランが豊富だ。問題は、現時点でアメリカよりロシアと中国にカザフスタンが遙かに多くの鉱物を輸出していることだ。

 ティムール・トランプは、とにかく満面の笑みで「素晴らしい指導者を擁する素晴らしい国だ」とトカエフに言及した。

 さて、この「素晴らしい」国は、SCOの正式加盟国で、BRICSパートナー(ウズベキスタンも同様)で、中国に非常に近い一帯一路(BRI)のパートナーで、ユーラシア経済連合(EAEU)の正式加盟国で、独立国家共同体(CIS)の正式加盟国でもある。

 そのため、カザフスタンはロシアと中国との戦略的協力関係と非常に緊密な貿易関係を享受している。更に、彼らの商売用の言語は依然ロシア語が主流だ。

 再び問題の核心に触れよう。ティムール・トランプはBRICS/SCO連合を内部崩壊させることに固執しているようだ。もちろん「スタン諸国」が従順でなければ、いわゆるカラー革命の企みとまでいかないにせよ。ちなみに最近隣国キルギスタンが主導したカザフスタンでのカラー革命の企みでトカエフ政権を救ったのはプーチン大統領とロシア軍だった。  
戦略的転換の特徴

 ティムール・トランプは「シルクロードのつながり」を復活させたいとさえ言った。少なくとも、彼の話は2010年代初頭、ヒラリー・クリントンが、依然戦争状態にあるアフガニスタンを中心とするアメリカ版シルクロードの構築を企てたはかげた話とは違う。

 ティムール・トランプは「C5+1」構想、つまりアメリカと「スタン諸国」の枠組みに言及した。これは「安定」とは無関係で、戦略的拡大に他ならない。特に今、混沌の帝国は20年の歳月と数兆ドルを費やし、タリバンを、タリバンに置き換えるのに成功し、事実上アフガニスタンに別れを告げるべき状況にある。アフガニスタンは、中国・パキスタン経済回廊(CPEC)と並行するプロジェクトとしてSCOとBRIに徐々に統合されつつある。

 つまり、ティムール・トランプの見世物は、アメリカ投資を雪崩のように押し寄せさせ、ひいては中央アジア地域へのより深い関与と影響力の拡大という狙いに尽きる。これは、不安定な鉱物資源サプライチェーンや大量の派手な「投資」といったものではなく、むしろ戦略的方向転換を狙ったものだ。まさに夢物語だ。

 パイプラインに関しては、2000年代半ばに、今や故人となった戦争犯罪人ディック・チェイニーがハートランドのパイプラインをアメリカに有利に利用しようと、あらゆる手を尽くした。貿易「代表団」を24時間体制で派遣するなど。だが全て無駄に終わった。

 ハートランドのチェス盤で混沌の帝国が再起を企てている可能性をロシアは十分承知している。その影響力は、一連のNGOや「教育」計画や「管理委員会」といった、いつもの札付き連中によってもたらされている。

 ティムール・トランプは「巨大な」ハートランドを一枚岩のように見ている。地図上で正確に指し示せると仮定すればの話だが(彼らの歴史はさておき)。かつてはソ連時代のようにロシアの一部だった。だから今、彼らはアメリカの猛攻に最大限備える必要がある。実に単純な話だ。

 予想通り、眠れないほど心配はしない姿勢をロシアは見せている。クレムリン報道官ドミトリー・ペスコフは「C5+1の場で中央アジア諸国とアメリカが協力するのは極めて自然なことだ」と述べた。ペスコフとロシア指導部は、ロシアと中央アジアの「スタン諸国」が頻繁に会合を開き、あらゆることを話し合っているのを十分認識している。前回の会合は1ヶ月ほど前だった。

 では、なぜ今なのか? ティムール・トランプの攻勢だ。混沌の帝国は、ロシアと中国を真に制圧する力がないにもかかわらず、南半球全域で猛威を振るっている。以前、ウズベキスタンのミルジヨエフ外相とカザフスタンのトカエフ外相は、ニューヨークで開催された第80回国連総会の傍らアメリカ財界首脳と会談した。もちろん彼らは商売について語った。

 そして彼らはやり方を知っている。依然ワシントンは世界金融市場に対して完全な影響力を持っている。ジャングルの王者を敵に回すのは賢明ではない。壊滅的制裁が間近に迫っている。「スタン諸国」が石油、ガス、レアアースへの帝国主義的執着を利用できる限り、それで構わない。しかし、ロシアと中国の観点から見れば、中央アジアにおける米軍基地問題が再び議題に上れば、全く別の話になる。
 
さあ頭蓋骨のピラミッドを建てよう

 ティムール・トランプとその「鉄の帝王」前任者の間には、目に見える以上に多くの魅力的な類似点がある。

 
ウズベキスタン、シャフリサブズのティムール。写真:PE

 ティムールは、絶対征服者チンギス・ハンの親族で、自ら模範としていると自負していた。西洋が記した歴史は、ティムールを残酷な伝説の人物として描いている。真の残虐行為と見なされるためには、言語に絶するほどの恐怖をもたらさなければならなかった時代に、連続虐殺を行った人物として。

 ティムールの伝説には、斬首された敵やその頭蓋骨が山積みになった血みどろの「塔」が延々続く。これはモンゴルの伝統に宗教的な意味合いが込められており、ティムールはそれを科学的手法にまで高めた。ティムールにとって、恐怖には何よりも緻密な秩序が求められた。バグダッドには750体の首が積み重なった塔が120基、エスファハーンには7万体の首が軍団間で公平に分割され、積み上げられた。

 しかし、知識人、職人、芸術家、宗教関係者は処刑を免れた。ティムールは再びモンゴルの原則を体系化し規定した。有能で有用な囚人は生かしておくべきだという原則だ。

 重要な戦略原則は、抵抗する者を根絶することだった。最終的には抵抗がなくなり、城塞は自発的に陥落するはずだ。ティムールの治世に、それが規範となった。即時降伏は人命救助という報酬で報われ、敵は屈服し身の代金を支払わなければならなかった。抵抗が長引いた場合、都市は略奪を含む代償を払うことになるが、民間人は救われる。第三の要約:強姦と略奪と完全な殲滅を意味する地獄。

 しかし、このアミールが大洋のハンとして君臨したのは単に残酷だったからではない。ティムールは(強調は筆者)テロ戦争を開始したが、世界の終末を信じる集団的信念を煽ることはなかった。ちなみに、ヨーロッパは彼を愛した。彼はジョチ・ウルスによるロシア正教徒虐殺を阻止し、キリスト教最大の敵であるオスマン・トルコのバヤズィトを倒す前に、コンスタンティノープルのバシレウスと取り引きしたためだ。

 つまり、ティムールは西洋の客観的同盟者だった。決して危険な存在ではなかった。加えて、彼は外交に非常に長けていた。百年戦争で王国が滅亡する前に、フランス国王シャルル6世は金箔で書かれ、ティムールの印章(宇宙征服を象徴する三つの円)が押された手紙を受け取った。ティムールは貿易協定を望んでいた。しかし、ヨーロッパの無能さゆえに、結局実現しなかった。

 ティムールの宮廷は派手なマール・アル・ラーゴではなかった。そこは真の富裕と贅沢な趣味の頂点で、素晴らしい宝石、放浪する象、豪華な衣装、素晴らしい家々があった。

 彼はサマルカンドに埋葬されている。他のティムール朝王族から見事に隔離された黒翡翠の一枚岩を頂部に戴く厳粛な墓所だ。彼は精神的指導者、サイード・バラカ・ハーンの背後に安置されており、廟の門には「世界が彼を拒む前に、世界を拒んだ者は幸いなり」という純粋なスーフィー碑文が刻まれている。

 
サマルカンドのティムールの墓。写真:PE

 ティムールは本質的に部族トルコ人で、イスラム教徒で、思想的にはモンゴル人だった。まさに矛盾に満ちた人物だった。人生の一部をジョチ・ウルスや他のモンゴル族(彼自身より遙かに多くのモンゴル人)の首脳との戦いに費やしたにもかかわらず、彼は自らをチンギス・ハーンの後継者だと宣言した。

 オスマン帝国のバヤズィトを倒し、事実上コンスタンティノープルに50年の猶予を与えたにもかかわらず、彼はトルコ人だった。

 そして、たとえキリスト教徒と同盟を結び、シャーマニズム最高の伝統に従って異教の神々に敬意を払っていたとしても、彼はまた自らをコーランの信奉者とみなしていた。彼運搬可能なモスクを携えて戦争に赴いた。

 ティムールは究極のシルクロードの夢を抱いていた。それは中国征服だった。モンゴル統一が虚構となり、元皇帝が完全に中国化され、トランスオクシアナの突厥・モンゴル人と大きく違うことが判明した時でさえ、彼らは依然元朝の宗主権を認めていた。

 
サマルカンドにて:ティムール帝国は拡大を続けた。だが中国を征服することはなかった。写真:PE

 だが、明王朝になると、全く異なる物語が展開した。ティムールは征服遠征の準備を進めていた1405年、オトラル(現在のカザフスタン南部)で熱病に倒れ、遺言を口述し、10万人の兵士を空虚な場所に残した。

 明王朝は大難を逃れた。そのため、西から来る征服者がパミール高原を越えることはないと歴史は定めていた。それはアレクサンダー大王にもイスラム教にも起きたことだ。

 だが中国征服者ティムール・トランプならそうなるかも知れない。もちろん彼の心の中で。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/11/10/timur-trump-sets-out-to-reconquer-the-heartland-really/

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 昔観光で訪問したサマルカンド、グーリ・アミール廟のPepe Escobarによる写真をみるとは驚くばかり。
Professor John Mearsheimer: Everyone Knows What Israel Is Up To | Mearsheimer LATEST Trump US Lobby 16:43
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
トランプ政治と一九三〇年代ナチスの台頭時の類似性、報道機関への攻撃は恐ろしい。その影響はナチス・ドイツ時代よりも今日の方がはるかに大。トランプ氏のメディア攻撃は、真実、事実、客観性への攻撃り、最も顕著に表れているのは名門大学に対する組織的な攻撃

2025年11月 4日 (火)

トランプ大統領と習近平国家主席と韓国でのG2サミット



ペペ・エスコバル
2025年10月31日
Strategic Culture Foundation

 中国は心配していない。技術面では、アメリカの支援は今後2~3年で必要なくなると予想されている。

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 こうして、大いに期待されていたG2サミット最新版が発表され、幕を閉じた。まるで、トランプ関税癇癪から一時休戦へと切り替わったかのような印象だ。

 当然ながら「貿易摩擦」の緩和に焦点を当てる歪曲報道で溢れたが、現実的に本当に重要なのは、韓国での1時間40分の議論後、笑顔の握手で締めくくる完全「合意」に至らなかったことだ。

 まあ、トランプが北京から何を引き出そうとしているのか、平均以上のIQを持つ人々全員最初から分かっていた。基本的に三項目だ。
 
  1. 希土類元素の輸出規制緩和。なぜなら、少なくとも5年以内にサプライチェーンを再構築する方法がないため、サプライチェーン崩壊でハイテク産業を内包する広大なアメリカ軍産複合体全体が「影響を受ける」ことは許されない。
  2.  
  3. 大量のアメリカ農産物、特に大豆を中国は購入すべきこと。さもなければトランプ支持層が反発し、中間選挙どころか次期大統領選の勝利さえ危うくなる。「不良資産」とされるスティーブ・バノンは、既にトランプ出馬を公式発表している。
  4.  
  5. 法外な価格のアメリカ石油を中国は大量購入し、同時にロシアからのエネルギー輸入を劇的に削減すべきこと。そうすれば、モスクワはウクライナ問題に関し「交渉の席」に戻ることを「余儀なく」されるはずだ。
 ロシアと中国の包括的戦略的協力関係におけるエネルギーの役割を考慮する第三項について中国が検討する可能性はまったくなかった。

 つまり我々が得たのは第一項と、第二項に関する小さな譲歩で、かなり漠然としたものだった。

 一方、アメリカが、いわゆる「フェンタニル関税」10%を撤回し「一国二制度」の拠点、香港とマカオからの製品を含む全中国製品に課せられる24%の相互関税を更に一年停止すると中国商務省は公式発表した。

 大豆の譲歩は予想されていた。ブラジルは大豆価格を1トンあたり530ドルから680ドルに引き上げるという、あまり賢明と言えない戦略をとった。中国はBRICS諸国からの輸入拡大をためらい始めた。しかも中国はブラジルにとって最大貿易相手国だ。米ドル安と農家が10%値引きに応じるほどのアメリカの豊作を組み合わせ、中国は最終的に有利な条件で取り引きを成立させた。しかもサーカス団長の国内支持者をなだめる、おまけまでついた。  
「巨大船」の運行

 このサーカス団長のトレードマーク、自分の頭の中にしか存在しないかもしれない合意に関する自慢より、G-2が中国にどのように解釈されたかに注目する方が遙かに重要だ。

 強調されたのは協力と、トランプの不安定さへの宥和と、長期的視点に立った、さりげない歴史の教訓だった。例えば、習近平国家主席が用いた用語を見れば、中国の典型的比喩が浮かび上がる。

 「風や波や課題に直面しても、我々は正しい進路を守り、複雑な状況をうまく切り抜け、中米関係という巨大な船が着実に前進していくようにしなければならない」

 中国閣僚による他の文書は、習近平国家主席の「巨船」より更に先を行くものだった。それらは「お互いの成功と共通の繁栄」という概念を強調している。これは中国政府から出されたもので、目新しいものではない。だが、驚くべき明確な記述があった。

 「中国の発展と復興と、トランプ大統領の『アメリカを再び偉大にする』という目標は互いに相反するものではない。」

 言い換えれば、今や北京指導部は、中国の新たな力と「客観的状況」(地政学的・地経学的チェス盤の状況)に十分自信を持っているのだ。そのため米中は必ずしもゼロサムゲームの深淵に陥る必要はないと彼らは考えている。

 それをトランプ自身が十分に理解しているかどうかは分からない。彼に助言する様々な反中主義者連中は、確実に理解していない。

 また、私がここで述べたように、その直前、今週初めクアラルンプールで開かれたASEAN首脳会議に組み込まれた、いくつかの首脳会談で何が起きたのかという文脈で、韓国でのG2を位置づけるのも非常に重要だ。

 ASEAN+3(中国、日本、韓国)とRCEP(アジア太平洋の大半を包含)間の新たな相互連携貿易推進は東アジアが協調して帝国主義的関税癇癪に対抗していることを示している。

 そして極めて重要な漸進的な世界の人民元化に関し、今週、アラブ石油王国との石油元取り引きを公式に促進するとともに、BRICS諸国とパートナー諸国全てに中国の越境銀行間決済システム(CIPS)、つまりデジタル人民元を使用するよう北京が呼びかけた。

 同時に、希土類輸出規制措置が中国のグリーン・テクノロジー製品の対外貿易にどのような影響を与えるかを商務副部長兼中国国際貿易代表部の李成剛が確認した。

 こうした輸出規制は何よりも安全保障の向上に関係していると彼は述べた。「グリーン開発は開発哲学だ。(中略)安全保障と開発の関係について(中略)要するに、安全保障の確保はより良い開発に不可欠で、より良い開発は、より強固な安全保障を保証する。」

 グローバルサウス諸国はそれを理解するだろう。国防総省が必ずしも理解するわけではない。
 
半導体や台湾には一言も触れず

 G2直後、第32回APEC首脳会議の初会合で「アジア太平洋共同体」(概念上無効な「インド太平洋」ではない)の利益のために包括的経済グローバル化を推進するための5項目提案を習近平が行い、引き続き注目を集めた。

 グローバルサウス諸国に習主席は直接呼びかけた。「多国間貿易体制の保護」や「開かれた地域経済環境」の構築、「産業チェーンとサプライチェーンの安定と円滑な流れ」の維持、貿易のデジタル化とグリーン化の推進、「普遍的に利益のある包括的な発展」の促進に向けた「共同の取り組み」を彼は主張した。

 それはまさにトランプ2.0綱領とは違う。

 さて、2026年に中国はAPECを、2026年にアメリカはG20を主催する。韓国で開催される今回のG2は、確かに象徴的な休止、あるいは一時休止と捉えられるかも知れない。だが、彼自身も含め、サーカス団長が次に一体何をするのかは誰にも分からない。

 最後に重要な点が二つある。先端半導体の輸出規制に関するアメリカの譲歩の可能性について、米中双方とも一言も言及していない。つまり合意に至っていないのだ。中国は心配していない。今後2~3年でアメリカの支援を必要としなくなるとハイテク業界は見込んでいるのだ。

 台湾には一言も触れられていない。全く予想がつかないが、周波が台湾問題について書いた最新の鋭いコラム内容を誰かがトランプの耳元で(トランプは読んでいない)ささやいた可能性もある。

 つまり、挑発やエスカレーションは起こらない。少なくとも今のところは。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/10/31/trump-xi-and-that-g-2-in-south-korea/

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 The Chris Hedges Report

 Trump’s Greatest Ally is The Democratic Party

The Democratic Party and its liberal allies refuse to call for mass mobilization and strikes — the only tools that can thwart Trump’s emergent authoritarianism — fearing they too will be swept aside.

Chris Hedges
Nov 03, 2025

 庶民の生活を破壊すると旭日大綬章! 盗人に追い銭。ノーベル戦争賞顔負け。

 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
RT: イスラエルがなぜ全ての人々との戦闘を止められないのか、極右政権は主要同盟国を犠牲にしても、正統性維持に国家主義的な好戦主義に依存。トランプ米大統領主導でガザ地区における和平合意が成立したものの、その永続性は依然極めて不透明。広範なパレスチナ問題に直結。
 植草一秀の『知られざる真実』
違和感満載高市政権高支持率

2025年10月30日 (木)

二人の外人男性が新疆ウイグル自治区の理髪店に入った…



ペペ・エスコバル
2025年10月16日
Strategic Culture Foundation

 旧「西域」の将来: エネルギーが豊富で、多文化で、多宗教で、地政学的に「適度に繁栄した」中国新シルクロードの中心地。

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 南シルクロードの和田(ホータン)―タクラマカン砂漠を何度も往復し、砂丘を越え、砂漠の真ん中にある「失われた部族」ダリヤブイ村を訪ねた後、于?のオアシスにある驚くほど近代的なホテルに戻る。真夜中。ウイグル料理の饗宴を終えたばかりで、やるべきことはただ一つ。髭を剃ることだ。

 ドキュメンタリー撮影のために新疆を旅する利点は、運転手も含め、一流ウイグル人の制作チームに支えられることだ。彼らは何でも知っている。「大丈夫だよ」と運転手の一人が言う。「通りの向こう側に理髪店があるから」。実際、真夜中にきらめく大通りだ。店はまだ開いている。ウイグルスタンでは、生活はいつもと変わらない。

 友人のカール・ザと一緒に道を渡って理髪店に行き、二人の若い理髪師と彼らの相棒で、スマートフォンで熱心にビデオゲームで遊んでいるおしゃれな若者のおかげで(ウイグル)生活の素晴らしい一片に飛び込んだ。彼は地域のことを何でも知っているようだった(もしかしたら、賢者風に地域を仕切ってさえいるかもしれない)。

 彼らは日々の決まった作業、仕事の流れ、生活費、スポーツ、オアシスでの暮らし、女の子との駆け引き、将来の展望など、あらゆることを語ってくれる。いや彼らは強制収容所の難民ではないし、強制労働の奴隷でもない。彼らと一時間半も一緒に過ごせば、ウイグル社会学の博士号が手に入る。しかも生放送で。しかも、深夜1時に10ドル以下で散髪(カール)と髭剃り(私)が受けられる、おまけ付きだ。

 シルクロードの三要素、絹と翡翠と絨毯を正式に見終えた時、我々は次の旅に備えられた。ホータンの伝説のオアシスで、絹と絨毯が何世紀にもわたり、どのように生産されてきたのか目の当たりにした。

 
ホータンの絨毯織り。写真:ペペ・エスコバル

 そしてホータンの翡翠は、歴史的にはホータンほど有名ではないが、現在最高級の黒翡翠と白翡翠を含め、採掘から精製された最終製品まで全てに携わる最先端翡翠企業を誇っている。

 
和田最高級の翡翠の研磨作業。写真:ぺぺ・エスコバール

 実際、これはシルクロード四重奏と言えるだろう。というのも宝石をちりばめたナイフの生産地として世界的に知られるイェンギサルという小さなオアシスでは、ナイフも加えるべきだからだ。ウイグル族の男性全員、男らしさの証として、そして新疆産のみずみずしいメロンをいつでも切り分けるためナイフを携帯している。

 
英吉沙イェンギサル:世界のナイフの首都。写真:ぺぺ・エスコバール

 北方シルクロード全域で、欧米諸国の情報機関に適切に報告するため、我々は労働奴隷や強制収容所を絶えず警戒していた。そして、庫車クチャから阿克蘇アクスへ向かう途中、起伏に富んだ綿花畑の中で、一人の女性を見つけた。

 
綿花畑の女性。写真:ぺぺ・エスコバール

 我々は雑談を始め、すぐに彼女が綿花を摘んでいるのではなく、綿花農園で機械が回転し、機械農法で綿花を摘む道を切り開いているのだと分かった。彼女は日常生活について全て話してくれた。彼女は地元のウイグル人で、この同じ(私有)綿花畑で20年近く働き、家族と暮らし、それなりの給料をもらっていた。人生で一度も強制労働や強制収容所を見たことはない。  
オアシスの町で本物のウイグル生活を楽しむ

 南北シルク・ロードを横断し、吐魯番トルファンや庫車クチャから和田ホータンや喀什カシュガルに至るまで、歴史的に重要なオアシス都市を巡り、ウイグル人自身やウイグル人の間で伝えられる、ありのままのウイグル人の日常生活を我々は取材した。政治の話は一切持ち込まなかった。

 私たちは彼らの広々とした家に招待された。大きな中庭があり、屋根にはブドウが育っていた。二つの結婚式に私たちは出席した。一つは四つ星ホテルでの比較的控えめな結婚式、もう一つはカシュガルの最高級レストランでのボリウッド映画風結婚式だった。

 
カシュガルで行われた、派手なウイグル族の結婚式を見下ろす。新郎新婦は「LOVE」という文字のすぐ背後に座っている。写真:ぺぺ・エスコバール

 理髪師、パン屋、バザール商人、ビジネスマン、ビジネスウーマンと話をした。彼らの素晴らしい料理を心ゆくまで味わった。人生の意義は完璧な拉条子ラグマンの鉢と完璧な馕ナンに宿る。

 
ウイグル料理の聖杯:ラグマン、プロフ、カシュガル・バーベキュー。写真:ぺぺ・エスコバール

 それ以上に、香港返還直後の1997年に初めてシルクロードを旅して以来、私が抱いてきた執着は、我が友、唐代初期の放浪僧、玄奘三蔵の足跡をもう一度たどり、それらオアシスの町々の魅惑的な古代シルクロードの歴史をたどり更に深く掘り下げたいというものだった。

 したがって、この改訂版西遊記は、多くの点で、中国の一部となる前の仏教の「西域」への旅だった。

 トルファンとクチャは、7世紀初頭の玄奘三蔵の西遊記における重要都市だった。玄奘三蔵はラクダ、馬、護衛を従え、天山山脈を越え、紺碧のイシククル湖(現在のキルギスタン)のほとりで西突厥のカガン(上質な緑色の絹の衣をまとい頭に3メートルの絹の帯を巻いていた)と出会い、サマルカンド(現在のウズベキスタン)まで歩き続けた。

 これらは全て、中国文化、仏教、ソグド人(シルクロード貿易の重要な仲介者で、唐時代に中国で最も影響力ある移民共同体だったペルシャ人)や、ペルシャそのもののつながりが絡み合った、シルクロードの魅力を表す小さな翡翠のようなものだ。

 サマルカンドで玄奘は初めて極めて豊かなペルシャ文化に触れたのだ。それは同じように洗練された中国文化とは全く異なるものだった。そして5世紀に独立した高昌王国や、その後唐王朝にとって最も重要な貿易相手国となったのはローマではなくサマルカンドだった。

 
トルファン郊外にある高昌王国の遺跡。

 そこで古代シルクロードの興味深い地政学的、地経学的側面についてお話しする。

 一流学者や習近平周辺の経済計画担当者を除けば、シルクロード経済、特に7世紀から10世紀にかけての唐王朝における中心人物が…唐王朝自身であったことを知る人はほとんどいない。何より重要なのは、当時の「西域」に西突厥との深刻な軍事衝突を資金面で支えることだった。

 そこで、唐の軍隊は北方シルクロードのオアシス沿いに配備されたが、興味深いひねりがあった。そのほとんどは中国人ではなく、甘粛回廊や「西域」の向こう側から来た現地の人々だった。

 征服と敗北の繰り返しだった。例えば、唐朝は670年から692年にかけて、チベット人に極めて重要なオアシス、クチャを奪われた。その結果、軍事費が増加した。740年には、唐朝は西域の4つの軍事司令部、哈密ハミ、トルファン、北亭、クチャ(いずれもシルクロードの主要オアシス)に毎年90万反もの絹を送っていた。これはまさに地域経済を支えるものだった。

 いくつかの年代を振り返ると、地政学的シナリオがいかに絶え間なく変化してきたか分かる。まずは800年代初頭、ウイグル人がトルファンを実際に支配し始めた頃から始まる。当時、ウイグル人のカガンはソグディアナ(サマルカンド周辺の地域)出身の教師と出会い、その教師からマニ教を紹介された。マニ教は3世紀にマニによりペルシャで創始された魅力的な宗教で、光と闇の勢力が宇宙を支配するため永遠に争っているとされている。

 その後、ウイグル族のカガンは運命的決断を下した。マニ教を採用し、それを三言語(ソグド語、ウイグル語、中国語)の石板に記録したのだ。
 
仏教から自治区への長い行進

 チベット帝国も700年代後半には非常に強大な勢力を誇っていた。780年代には甘粛に侵攻し、792年にはトルファンを征服した。しかし、803年にはウイグル人がトルファンを奪還した。しかし、モンゴルに残っていたウイグル人は840年にキルギス人に敗れ、一部のウイグル人はトルファンにたどり着き、新たな国家、ウイグル・カガン国を建国した。その首都は高昌城で、私はついにそこを訪れることができた。

 
高昌城跡。写真:ぺぺ・エスコバール

 こうしてトルファンはようやくウイグル人となり、交易には中国語ではなくウイグル語が使われるようになった。この状態は何世紀にもわたって続いた。経済は主に物々交換が中心となり、通貨は絹に代わり綿花が使われるようになった。宗教的には、唐時代、トルファンの人々は仏教徒、道教徒、ゾロアスター教徒、更にはキリスト教徒やマニ教まで混在していた。20世紀初頭、ドイツ人考古学者たちは高昌の東城壁の外で、メソポタミアに起源を持つ東方キリスト教の証拠となる小さな教会を発見した。教会はシリア語を礼拝言語としていた。

 そのため、マニ教は一時期、ウイグル・カガン国の公式国教になった。彼らの芸術は実に卓越していた。しかし、マニ教の洞窟壁画は、息を呑むほど美しいベゼクリク洞窟に一つだけ現存している。私は500元支払い、非常に知識豊富な若いウイグル人研究者の案内でその壁画を鑑賞する特権を得た。

 マニ教美術の壁画が消失した理由は、1000年頃、ウイグル・カガン国がマニ教を放棄し、仏教に完全に帰依すると決定したためだ。柏孜克里克ベゼクリクにある悪名高い第38窟(私が訪れた場所。写真撮影禁止)でさえ、その証拠を示している。この窟は二層構造になっており、仏教層の下にマニ教層が築かれていた。

 政治的には、この駆け引きは衰えることなく続いた。これがシルクロードの真髄だ。1209年、モンゴル軍はトルファンでウイグル・カガン国を破ったが、ウイグル人は介入しなかった。1275年、ウイグル人は伝説のクビライ・ハンと同盟を結んだ。しかしその後、農民反乱軍がモンゴルの平和を覆し、14世紀に明王朝を樹立した。しかし、トルファンは依然中国本土の国境外に留まった。

 決定的出来事は1383年だ。イスラム教徒のシディル・ホージャがトルファンを征服し、住民全員にイスラム教改宗を強制した。これは今日まで続いている。少なくとも表面的には、新疆ウイグル自治区のオアシスの町でイスラム教徒かどうか尋ねると、多くの人が丁寧に答えを拒む。仏教の過去は集合的無意識の中に、目に見える形で、高昌の壮大な遺跡の中に残っている。

 新疆ウイグル自治区は、清朝軍が1756年に支配権を握るまで、中国から独立を保っていた重要な事実がある。先月の旅の途中、私たちはちょうど新疆ウイグル自治区成立70周年の真っ只中にいた。新疆ウイグル自治区全体が「70」の数字が描かれた赤い旗や横断幕で彩られていた。

 
乌鲁木齐ウルムチ市:新疆ウイグル自治区建国70周年を祝う。写真:ぺぺ・エスコバール

 これがかつての「西域」の未来だ。エネルギー資源が豊富で、多文化、多宗教、地政学的に「適度に繁栄した」中国の新シルクロードの中心地になるのだ。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/10/16/two-foreign-guys-walk-into-a-barber-shop-in-xinjiang/

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2025年10月29日 (水)

中国は希土類を巡って争う用意ができている



ロレンツォ・マリア・パチーニ
2025年10月28日
Strategic Culture Foundation

 世界最大の経済大国ともなれば、戦いに備えなければならない。

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あらゆる状況に備える

 世界最大の経済大国ともなれば、戦いに備えなければならない。

 希土類元素における優位性を確保するために中国は戦う準備ができている。

 ドナルド・トランプ大統領によるガザ地区でのいわゆる「強制」停戦、20項目の「和平案」、西アジアにおける外交戦略に世界の注目が集まる中、北京の予想外の決定が、世界経済の地図と米中関係の枠組みを突如塗り替えた。10月9日、中国商務省が希土類元素の輸出に厳しい制限を課す新たな規制を発表した。これは防衛産業と半導体産業に直接的影響を与え、既に脆弱だったワシントンと北京の緊張緩和を崩壊させるものだ。

 北京の発表はトランプ大統領を激怒させたと言って過言ではない。翌日、トランプ大統領はTruth Socialで攻撃し、11月1日から中国からの輸入品に100%の追加関税を課すと宣言した。トランプ大統領は中国を「世界を人質に取っている」と非難し「中国はレアアースを巡り全ての国を困難な立場に追い込んでいる。ガザ和平計画が進行中のこの時期に、これは特に不適切だ!」と綴った。

 APEC首脳会議に合わせて予定され大いに期待されていた習近平国家主席とトランプ大統領の会談は今のところ実現しそうにない(あるいは何かひねりがあるのだろうか?)。

 しかし、具体的に一体何について話しているのだろう?
 
希土類元素の重要性

 化学的観点から見ると、希土類元素は17種類の金属物質のグループを指す。周期表のランタノイド系列に属する15種類の元素に加え、スカンジウムとイットリウムが含まれる。誤解を招く名称だが、これら元素は地殻中に比較的豊富に存在している。「希少」なのは、商業的に利用可能な濃度が稀で、分離工程が極めて複雑なためだ。希土類元素は現代技術に不可欠な存在で、電気自動車のバッテリー、風力タービン、スマートフォンや戦闘機のレーダーなどの高度な軍事機器に使用されている。

 米国地質調査所(USGS)によると、これら元素がなければ、人工知能(AI)、防衛技術、再生可能エネルギー・システム用半導体の生産は完全に停止してしまう。風力タービン1基には約300キロのネオジムが必要で、F-35戦闘機1機には数千ドル相当の希土類元素が使われている。

 中国はこの分野で圧倒的な地位を占めている。USGSの2025年版報告書によると、世界の埋蔵量約36%、約4,400万トンが中国に集中しており、次いでベトナム(22%)、ブラジル(18%)となっている。生産量においては、この不均衡は更に顕著で、2024年には中国が世界の生産量(27万トン)の約70%を占め、2025年もこの数字は安定すると予想されている。精製能力に関しては中国の優位性は圧倒的で、世界全体の90%以上を占めている。

 この優位性は偶然ではない。1980年代以降、中国政府は国家補助金、低コストの採掘、そして最大17%の輸出割引を通じて、この産業を支援してきた。対照的に、アメリカは総埋蔵量の僅か2%しか保有しておらず、輸入の約70%を中国に依存している。ワシントンは代替サプライチェーン構築に取り組んでいるが、2030年までに本物の多様化を実現するのは極めて困難だと専門家は一致している。従って、中国の新たな輸出制限は、特に脆弱な点を突いていると言えるだろう。
 
中国の採掘技術

 過去20年間、中国は世界のレアアース分野における支配的地位を確固たるものにし、世界生産量の60%以上で、下流の精製・加工においては更に高い割合を占めている。この優位性は、単に資源の豊富さだけでなく、エネルギー転換と世界的な技術安全保障にとって戦略的とみなされるこの分野において、中国が構造的優位性を維持してきた産業政策と、技術革新と環境戦略の協調的な組み合わせによるものだ。

 中国の希土類元素抽出技術は、硬岩鉱山からの抽出とイオン性粘土鉱床からの抽出という2つの主な手法に分かれている。

 前者の場合、中国は従来の露天掘りおよび地下採掘方法を採用し、爆薬と機械的破砕技術を用いてバストネーサイト、モナザイト、ゼノタイムなどの鉱物を採掘している。しかし、革新性はその後の段階にある。最初の分離は選択的かつ高強度の磁気浮上法によって行われ、その後、希酸を用いた化学的前処理により原鉱の収率を最大化している。

 江西省、広東省、広西チワン族自治区などの南部地域に典型的に見られるイオン性粘土鉱床で用いられる工程は、より高度だ。これらの場合、希土類元素は結晶構造ではなく粘土表面に吸着されているため、より繊細で化学的に制御された抽出技術が必要になる。中国は、アンモニウム塩、硫酸塩、または塩化物を含む溶液を土壌に注入する原位置浸出法(in-situ leching)の利用を完成させた。この技術により、大量の岩石を掘削したり輸送したりすることなく、希土類元素イオンが得られる。この方法は環境への影響と人件費を削減するが、地下水汚染のリスクを伴う。現在では、モニタリング・プロトコルと地質化学的バリアにより、このリスクは部分的に軽減されている。

 中国の真の技術力は分離・精製段階にあり、中国はそこで非常に効率的な手法を開発している。鍵となる技術は、希土類元素同士を分離する多重溶媒抽出だ。この工程は数千段階の分離段階を経て行われ、酸と有機溶媒の混合物が閉ループシステム内で循環することで、99.99%を超える純度を実現している。

 同時に、包頭希土類研究所や中国科学院プロセス工学研究所といった研究センターでは、イオン交換樹脂やナノ濾過膜を基盤とした革新的技術を導入し、試薬の消費量を削減し、回収効率を向上させている。これらの技術は、酸の大量使用を伴う環境汚染の大きい手法に徐々に取って代わり、この分野の持続可能性向上に貢献している。

 これら全てが、人工知能とモノのインターネット(IoT)システムを鉱業オペレーションに統合する高度なデジタル化プロセスへと明らかに移行しつつある。リアルタイム・センサー、機械学習アルゴリズム、予測モデルを活用することで、企業は試薬の使用量を最適化し、鉱物の挙動を予測し、抽出フローを監視して廃棄物とエネルギー経費を削減することが可能になった。

 中国北方希土類集団やミンメタルズ希土類有限公司などのこの分野の大手企業は、自律走行車、地質マッピング用ドローン、化学浸出作業用遠隔操作システムなどを含む鉱業インテリジェンス・ソリューションを導入している。これらイノベーションは「中国製造2025」計画に示された国家産業近代化戦略の一環で、グリーン経済に不可欠な材料分野における中国の技術的リーダーシップを強化することを目指している。

 数十年にわたる集中的採掘により甚大な生態系被害がもたらされたことを受け、レアアース関連の環境プロトコルも大幅に見直しが行われた。特に、トリウムとウランを含む廃水や放射性廃棄物の処理に関し、より厳格な規制が導入された。同時に、永久磁石、触媒、使用済み電池に湿式製錬法と乾式製錬法を適用するリサイクルチェーンが開発された。この「都市型採掘」戦略により、貴重資源の回収が可能となり、新規鉱床への依存度を低減し、レアアースセクター全体の環境影響を軽減している。

 これにより、中国は、生産能力(規模は膨大で依然比類のないものだ)だけでなく、垂直統合型サプライチェーンにおいても優位性を獲得している。この統合モデルにより、中国は原材料だけでなく、風力発電、エレクトロニクス、電気自動車、防衛といった戦略分野におけるグローバルサプライチェーンや環境負荷の少ない最先端技術の面でも優位性を獲得している。
 
中国の新たな法令は地政学的メッセージ

 10月9日の大統領令は「国家安全保障」を理由に輸出制限を正当化している。トランプ大統領の関税への報復として2025年4月に導入された当初の制限は、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、ジスプロシウムの7元素を対象にしていた。10月の発表では、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、ユーロピウム、イッテルビウムの5元素が新たに追加され、輸出許可の対象となる元素の総数は12になった。また、これらの許可はレイセオンやロッキード・マーティンなどアメリカの大手防衛産業請負業者には発行されないこと、制裁対象となっている通信市場のリーダーで、防衛産業請負業者でもあるファーウェイを含む中国企業も保護されることが明確にされた。

 中国の新たな計画は単なる経済的な決定にとどまらず明確な地政学的メッセージを発しているのは明らかだ。北京は天然資源における東洋の優位性を主張して欧米諸国の技術的主張に対抗しようと試みており、実際、中国は長年にわたり、特に2010年の対日禁輸措置で、レアアースを地政学的手段として利用してきた。アメリカの防衛産業は依然として中国原料に大きく依存しており、新たな輸出制限は生産ラインを麻痺させる可能性がある。

 一方、トランプは彼最大の懸念を露呈している。それは「アメリカ第一主義」経済が国内インフレを加速させ逆効果になる可能性だ。こうした事態への報復は中国本土沿岸から僅か数十キロ沖合、アメリカ体制のあらゆる政党が切望する台湾で起きるかもしれない。

 この断固たる行動により、北京は対立の舞台を自らが選んだ場所へ移した。たとえ習近平国家主席とトランプ大統領の韓国での会談が最終的に実現したとしても、APEC首脳会議が外交と経済戦争が激突する新たな戦場になるのは既に明らかだ。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/10/28/china-ready-fight-over-rare-earths/

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 The Mearsheimer Lens
URGENT: China Weaponizes Rare Earths – Washington STRIKES BACK! | Prof. John Mearsheimer 31:11
 多数コメントが寄せられているが、今回「意見に賛成」多数派ではさそう。

2025年10月21日 (火)

シルクロードの核心、芸術と貿易と国家権力



ペペ・エスコバル
2025年10月14日
Strategic Culture Foundation

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 敦煌 ? 歴史を通じて、シルクロード(実際は道路網)は最高のハイウェイ・スターだ。古代ユーラシアを横断する史上最も重要な連結回廊で、中国学者が一致して世界の主要文明システムと定義する中国、インド、ペルシャ、バビロン、エジプト、ギリシャ、ローマを結び、東西間の経済的、文化的交流のいくつかの歴史的段階を示している。

 敦煌研究の第一人者、季賢林教授は、西洋の覇権主義者連中を永遠に狂わせる公式を考案した。

 「世界には影響力のある文化体系は五つではなく四つしかない。中国、インド、ギリシャ、イスラムだ。これらは全て中国の敦煌と新疆ウイグル自治区でのみ出会った。」

 歴史を通じて敦煌が重要な地政学的地位にあったことから、必然的に素晴らしい芸術的成果が生み出された。

 前回の旅から数年、そしてコロナショック、そしてその後の中国復興を経て、私はついに新たな西遊記に乗り出す栄誉に恵まれ、かつての首都長安の西安から甘粛回廊を経て敦煌まで、本来の古代シルクロードを辿る旅に出ることとなった。

 輝かしいユーラシア文化は古代シルクロードを舞台に、集い、交流し、その翼を広げていった。甘粛省河西回廊の西端に位置する敦煌は、南北に山々、東に中原、西に新疆ウイグル自治区に囲まれた、中国シルクロード東部における最も重要な拠点だった。

 「燃える灯台」と呼ばれた敦煌は、陽関と玉門関という二つの関所を掌握し、極めて戦略的な要衝に位置していた。漢の武帝は、敦煌が西に迫る恐るべきタクラマカン砂漠の手前にある最後の主要な水源で、西へと続く三つのシルクロードの主要ルートにまたがる位置にあることを明確に理解していた。

 玉門関は、紀元前2世紀に漢帝国に設定された、玉門関の中でも最も重要な関所だ。ゴビ砂漠南部、祁連山脈の西端に位置し、古代中国の西境界を示していた。

 
ジェイド・ゲート峠。写真:ペペ・エスコバル

 敦煌でタクシー運転手と交渉した後、眩しいほど美しい青空の下、峠とその周辺で一日中過ごした。漢王朝が交通管理制度、烽火制度、そして万里の長城防衛制度(漢の長城の遺構は今も残っている)をどのように構築し、長距離シルクロードの安全を保証したのか、感嘆するばかりだ。

 
万里の長城遺跡。写真:ペペ・エスコバル
 
キャラバンに話しかける:「人と人の交流」の秘密

 完璧に整備された敦煌ブックセンターは、歴史書に「漢民族と非漢民族が出会う大都市」と記されている。習近平の「民衆交流」のまさに先駆けと言えるだろう。その精神は今も健在で、特にウイグル料理が中心の美食の饗宴である豪華な夜市では、その精神が息づいている。

 
ウイグルのビジネス・ウーマン 写真:ペペ・エスコバル

 中原産の絹や磁器、「西域」産の宝飾品や香水、華北産のラクダや馬、河西産の穀物など、あらゆるものが敦煌で取引されていた。商取引、移住、軍遊戯、文化交流、そして多くの文人、学者、芸術家、官僚、外交官、巡礼者、軍人などが、ソグド、チベット、ウイグル、タングート、モンゴルといった古代中国の文化を活気に満ちた混合体へと導き、それらが最終的に敦煌芸術へと発展していった。

 遍歴仏教、ネストリウス派、ゾロアスター教、イスラム教など、敦煌の洗練された美的感覚は、中央アジアや西アジアから伝わった建築、彫刻、絵画、音楽、舞踊、織物、染色技術により徐々に影響を受けてきた。

 習近平主席が掲げる「小康」を謳う近代化中国において、「シルクロード」という用語は非常に微妙なニュアンスを帯びている。例えば、西安の小白雁塔では既に「シルクロード:長安・天山回廊路網」と表現されている。  これは地理的に正しい解釈で、政治的に正しい新疆ウイグル自治区(何世紀にもわたって、必ずしも中国の領土ではなく、本質的に「西部地域」の一部だった)ではなく、天山山脈を強調している。

 シルクロードの始まりについては、現在では学術的に認められている単一の説が採用されている。紀元前140年、漢の武帝が張騫を「西域」への二度の交易使として派遣したというものだ。『史記』によると、張騫は中国史上初の公式外交官として、事実上「西域」との交易路を開き、その後、西北諸国全てが漢との交易、特に絹織物貿易を開始したとされている。

 西安の陝西歴史博物館から敦煌書院、そして蘭州の甘粛博物館まで、学者や博物館学芸員との交流や素晴らしいシルクロードの展示品の補足として、シルクロードに関する現在確立された公式の物語をたどるのは非常に興味深いことだ。それによれば「シルクに代表される古代中国の文明は、西域、中央アジア、西アジアの諸国に影響を及ぼし始めた」とされている。

 事実はそれより遙かに複雑で、香辛料、金属、化学薬品、鞍、皮革製品、ガラス、紙(紀元前2世紀に発明)など、あらゆるものが市場に出回っていたが、大まかな流れは次の通りだ。中央平原の商人は、中国から絹、青銅鏡、漆器を積んだ隊商で砂漠や山頂を越え、それらを商品と交換しようとした。一方、西方の商人は毛皮、翡翠、フェルトを中央平原に持ち込んだ。

 多民族間の「人的交流」について話そう。ちなみに「シルクロード」という言葉を使った人は誰もいなかった。「サマルカンドへの道」、あるいは不気味なタクラマカン砂漠を巡る「北路」や「南路」といった言葉が使われていた。



唐代の貨幣制度について…

 3世紀までに、敦煌は既にシルクロード交通の頂点に位置し、商人や巡礼者たちが近くにある莫高窟の建設を後援し始めた。

 
莫高窟の主楼閣。写真:ペペ・エスコバル

 莫高窟は、甘粛省で敦煌五窟として知られる地域の一つだ。莫高窟は、現存する813の洞窟群で構成され、そのうち735が莫高窟にある。莫高窟に近づくのは、それ自体大きなスリルだ。数え切れないほどの中国人観光客でいっぱいの公園公式バスに乗り込み、砂漠を進むと、鳴沙山脈の東麓に到着する。目の前には当泉河が流れ、東には祁連山脈がそびえ立つ。洞窟は崖っぷちに切り込まれ、いくつもの坂道や歩道で繋がっている。

 洞窟群は4世紀から14世紀にかけて築造され(最古の壁画は5世紀のもの)、高さ30メートルにも及ぶ断崖に沿って南北1.6キロにわたり4層に連なる洞窟群だ。南部地域には492の洞窟があり、45キロを超える壁画、2,000体を超える彩色仏と、5つの木製の庇が安置されている。これらは元々、仏像を祀るために使われていた。

 
敦煌書院博物館にて:芸術家たちの出身地。写真:ペペ・エスコバル

 今もなお見られるものは息を呑むほど美しい。特に注目すべきは、290窟の釈迦の生涯を描いた格闘場面、296窟の少女アプサラ(神話の舞踏家)、257窟の鹿王、249窟の狩猟場面、285窟のガルーダ(中国語で「緋色の鳥」を表す)、217窟の盛唐の傑作『法華経』に登場する魔都の寓話、196窟の菩薩坐像、そして285窟の完璧な状態で保存された礼拝する菩薩像などだ。

 
莫高窟の見どころの一つので仏像。写真:ペペ・エスコバル

 規則は非常に厳格で、公式ガイド同行のもと厳選された洞窟のみ訪問し、写真撮影は禁止、洞窟内を照らすのはガイドの懐中電灯のみという厳しいものだった。私は敦煌大学で学び、現在は考古学の博士課程に在籍するヘレンさんの案内で訪問する機会に恵まれた。見学後、彼女は敦煌書院の画期的保存修復活動について詳しく説明してくれた。

 洞窟の建設は、分業という点でも壮大な事業だった。想像願いたい。崖から洞窟を掘り出す彫刻刀職人、同じく洞窟を掘る石工、木造または土造建造物を建てるレンガ職人、木製の道具を修理する大工、彫像を制作する彫刻家と、洞窟や彫像に絵を描く画家。

 莫高窟は、中国、ペルシャ、インド、中央アジアの美術を融合させた仏教壁画の印象的コレクションにおいて、美的体験として他に類を見ないものだ。

 そして、目に見えないものがある。蔵経洞で発見された4万点以上の巻物だ。シルクロード沿いで発見された文書や遺物の最大の埋蔵量で、仏教、マニ教、ゾロアスター教と、東方キリスト教会(シリアから来た)に関する文書が収められており、敦煌がいかに国際色豊かな都市であったかを示している。これは19世紀後半に始まったヨーロッパによる学術的や他の目的を問わない敦煌の財産略奪の一部で、全く異なる複雑で長い物語だ。

 地経学的に見ると、敦煌は10世紀近くにわたり、特に唐王朝(6世紀から9世紀)の時代には極めて豊かな都市だった。唐は、絹織物(絹と麻)、穀物、貨幣という三つの異なる通貨を用いた非常に興味深い貨幣制度だった。

 帝都長安に置かれた中央政府は、全ての貿易を単一単位に集約して表していた。敦煌駐屯地は戦略上重要な拠点で、六種類もの絹織物で税金が支払われていた。つまり、それぞれの地域で生産された絹織物で税金を支払っていたのだ。唐はこれら織物を全て敦煌に移送した。駐屯地の将校たちは、この税としての布を貨幣や穀物に換金し、地元商人に支払い、兵士に食料代として与えた。

 つまり、唐王朝は常に織物を通して、敦煌経済に多額の資金を投入していたのだ。まさに官民一体の国家開発モデルと言えるだろう。2013年に北京の計画担当者たちが「新シルクロード」構想を打ち出した時、このモデルは彼らにとって避けられないものだった。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/10/14/art-trade-and-state-power-at-heart-of-the-silk-road/

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 No Kings行動に関するJeffrey Sachs教授のYoutube
Urgent !! Trump’s America on the Edge The People Rise, The Kings Fall !! Prof. Jeffrey Sachs 19:14
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
公明は衆議院小選挙区で自民党候補に投票。蹴れば賞めるした場合どうなるか、公明票の減とその際の自民議席減、1万票減→自民議席26減、二万票減→46議席減、 公明比例獲得数減→52議席減
 東京新聞 社会面
伊東市長 失職公算大 市議選 不信任派が多数当選
 学歴詐称がそれほど問題なら、大物はどうして放置しておくのだろう?

 自称カイロ大学卒業生は、のうのうと我が世の秋?
 都議会記者団は速記者団。

 東京新聞 こちら特報部 こういう報道こそ読みたい。
政治とカネ
 維新逃げる気? 自民と連合合意
 秘書給与詐欺・収賄など 相次ぎ関係者立件
 地元「反省感じない」

 裏金「一緒は無理」どこへ
 「有言不実行で不誠実」◆結局は補完勢力か
 植草一秀の『知られざる真実』
落ち目の維新が消滅に突進

2025年8月28日 (木)

トランプ・欧州・ウクライナ会談:分業と戦略的順序付けの売り込み

Brian Berletic
2025年8月20日
New Eastern Outlook

 最近アラスカで行われたアメリカのドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の会談、それに続くワシントンでの欧州首脳、ウクライナ大統領、トランプ大統領の会談を受けて、予想通りのアメリカの政策が形になり始めている。

 トランプ・欧州・ウクライナ会談:分業と戦略的順序付けの売り込み

 今年2月、アメリカのピート・ヘグゼス国防長官が、ウクライナ防衛連絡グループで欧州首脳に語った通り、アメリカがアジア太平洋地域に軸足を移し、そこでの中国封じ込めを優先できるようにすべく、NATOの支出、兵器生産、ウクライナへの物資支援の移転を増やすことで、ウクライナにおけるロシアとのワシントンの代理戦争を引き継ぐ任務を欧州は負っている。

 ヘグゼス長官は、紛争は終結ではなく凍結されると明言し、凍結を確実にするために欧州および非欧州部隊(米軍ではない)がウクライナに派遣され、その後欧州がウクライナ軍の再編と再建を行うと述べた。

 ヘグゼス長官が説明した通り「不足という現実」により、アメリカはロシアと中国、二つの大国間の紛争に、同時に、直接的かつ全面的には関与できず、アメリカが別の紛争を追求する間、一つの紛争を凍結する必要がある。

 アメリカがウクライナでロシアと対峙したのと同じやり方で、アジア太平洋地域において中国と対峙しようとしている事実自体が、どちらの国(あるいはいかなる国)とも真の平和を築くことへの関心が全くないことを示している。中国を早期に封じ込められれば、後にロシアと対峙し、封じ込められるとアメリカは考えている。

 元トランプ政権高官のウェス・ミッチェルによるマラソン・イニシアチブの2024年論文「戦略的順序付け再考」は、次のように明確に述べている。  
順序付けの考え方は、単純に、ある敵に資源を集中させて、その破壊力を弱め、その後別の敵に目を向け、その敵を阻止するか打ち負かすというものだ。
 ミッチェルはまた、アメリカの「欧州とインド太平洋地域の同盟国」に関して「分業」という言葉を使ったが 、ヘグゼス長官は今年初めにブリュッセルでこの言葉をそのまま繰り返し、「分業」と「戦略的順序付け」がワシントンが追求している連携政策であることを明らかにした。

 ロシアと台頭しつつある多極世界にとって究極の試練は、それぞれの国を狙うアメリカの計画に耐えられるかどうかだけでなく、この戦略をワシントンに逆らって転用できるかどうかにかかっている。

 第一原則:アメリカ優位性の追求

 冷戦終結にあたり、1992年の記事「アメリカの戦略計画はライバル国の出現阻止を求める」でニューヨーク・タイムズが報じた通り、アメリカは「建設的な行動と、いかなる国家または国家集団もアメリカの優位性に挑戦するのを抑止できる十分な軍事力により、その地位を永続させることが可能な一つの超大国に支配される世界」を作ろうとした。

 同じ記事で、今日では「多極主義」と呼ばれている「集団的国際主義」をワシントンが拒否していることにも言及している。

 1990年代も現在も、ロシアと中国を封じ込めようとするアメリカの野望の原動力となっているのは、正当な国家安全保障上の懸念ではなく、アメリカ自身が決して他国によるそのような行為を容認しない方法での、両国の国境内および国境沿いの海外におけるアメリカ「権益」の保護だ。

 アメリカの「戦略的シーケンシング」は、ロシアと中国だけに限ったものではない。これは、様々な「分業」の実施と相まって、アメリカの優位性に挑戦するあらゆる国を搾取し、弱体化させることを目的としている。

 当面の焦点はアジア太平洋地域だが、中東、中南米、アフリカ諸国も戦略的に標的にされている。シリア情勢の不安定化、イランへの執拗な圧力、そして多極化した世界の他の国々において、ロシアや中国と関係を維持する国々(東南アジアのタイやカンボジアなど)を孤立させようとする継続的取り組みは全て、このより大規模な計画の一環だ。

 ワシントンの目標は、自国の覇権主義的野望に効果的に対抗できる結束力ある多極同盟の形成を阻止することだ。アメリカは、一国ずつ、あるいは少数の国を一度に排除することで、自国の優位性を維持し、統一戦線の形成を阻止しようとしている。

 アメリカ外交政策の統一原則が優位である限り、「平和の追求」は単に、ある地域で後退を修正し、別の地域で強化を図るための時間を稼ぐ手段にすぎない。

 ウクライナはアメリカの戦争であり、アメリカだけの戦争だ。

 ウクライナ戦争自体は、最近「バイデンの戦争」と表現したり、「ウクライナのゼレンスキー大統領はロシアとの戦争をほぼ即座に終わらせることができる」とトランプ政権が主張したりしているにもかかわらず、実際、この戦争はトランプ大統領の一期目任期を含む複数の大統領政権にわたるアメリカ外交政策の産物だ。

 今年初めにニューヨーク・タイムズに掲載された記事によると、現在ウクライナ軍はアメリカが指揮を執っている。また、2014年以降、アメリカ中央情報局(CIA)がウクライナの情報機関を統制・指揮しているともニューヨーク・タイムズは報じている

 従って、ウクライナ紛争は、アメリカがそう決定するか、ロシアにそうするよう強制された場合のみ終結できる。

 ウクライナ紛争に関するアメリカ外交政策のこうした基本的な第一原則を理解することは、アメリカとその属国が「分業」と「戦略的順序付け」を試みるために使っているプロパガンダをうまく乗り切るためには不可欠だ。

 トランプ政権における政策継続

 トランプ政権は就任以来、世界的優位性を追求するため、ウクライナでのロシアに対する代理戦争、今年6月に全面戦争にエスカレートしたイランとの対立、中国周辺に沿ったアジア太平洋地域、更には台湾国内におけるアメリカの軍事的存在の継続的拡大など、バイデン前政権から引き継いだあらゆる紛争と対決を継続している。

 ロシアに関するアメリカ政策は、2019年にRAND研究所が発表した論文「ロシアの手を広げさせる:有利な立場からの競争」で詳しく説明されている。

 この文書には、「石油輸出の妨害」「天然ガス輸出の削減とパイプライン拡張の妨害」「制裁賦課」といった経済対策が列挙されているが、これらの対策は、アメリカが文書発表当時と、それ以降も、第1次トランプ政権下、その後のバイデン政権下、そして現在トランプ大統領の第2期在任期間中を含め、実施してきたものだ。

 RAND論文が挙げた地政学的措置には、第1次トランプ政権下で始まった「ウクライナへの致死的援助の提供」、昨年末、アメリカによるシリア政府転覆に成功したことで明らかになった「シリア反政府勢力への支援強化」、ロシアが今のところ首尾よく無力化している「ベラルーシでの政権転覆の推進」、そして、トランプ政権下で現在展開されている、ロシアとイランの国境沿いに米軍を配置する可能性がある99年間領土リースの形で展開されている「南コーカサスの緊張利用」などがある。

 これらの政策は、アメリカがウクライナにおけるロシアとの「平和」に関心があるように見せかけながら、ロシア連邦を包囲し、封じ込め、弱体化させ、過度に拡大させようとする継続的な試みであり、最終的にはソ連型の崩壊を招こうとしているのだ。

 過去がそうだったように、未来もそうなる

 挫折や限界にかかわらず、アメリカが世界各国との建設的協力ではなく、それらの国々に対する優位性を追求し続ける限り、アメリカが「敵」や「脅威」と名付けた国々に対する「和平」提案は、一時停止や再編や再軍備や敵対行為の再開という確立されたパターンを表すもので、本当の政策転換ではない。

 最近の例は、シリアに対するアメリカの政権転覆戦争だ。2015年のロシア介入後、戦争は一時中断された。アメリカはこの中断を利用して、シリア国内および周辺地域で代理勢力の再軍備と再編を行い、シリア同盟国であるロシアとイランは、他地域で一連の犠牲を伴う紛争に巻き込まれた。ロシアとイランが十分過剰に展開した時点で、アメリカは2024年後半に戦闘を再開し、迅速かつ確実にシリア政権を転覆させた。

 シリア崩壊後、アメリカとイスラエルはイランに対し軍事作戦を遂行し、レバノン、イラク、イエメンに残るイラン同盟国を排除する動きが現在も続いている。

 ウクライナにおけるロシアに対するワシントンの代理戦争が一時停止すれば、アメリカの取り組みは他の場所に移るだけだ。

 ヘグゼス長官が2月に明らかにしたように、いかなる停戦も、アメリカとトルコがシリアを占領したのと同様、欧州軍によるウクライナ占領を伴うことになる。またウクライナ軍再武装と再編も含まれる(これはワシントンで最近行われた米欧ウクライナ会議でも具体的に言及された)。そして、状況が再びワシントンに有利になった時点で、敵対行為を再開することも含まれる。

これは、ヘグゼス国防長官の「分業」と「戦略的な順序付け」に関する発言が意味するだけでなく、冷戦中、そしてそれ以降ずっとアメリカが行ってきたことでもある。

 ブッシュ・ジュニア政権時代、アメリカはコーカサス地域のジョージアに加え、東欧諸国でも政権転覆を謀ったことを認めている。2003年にはジョージア政府を転覆させ、2014年にはウクライナ政府を転覆させた。ウクライナと同様、アメリカはジョージア軍の再編と強化を開始し、EUの調査結果によると、2008年にはジョージアがロシア軍に対して短期間で失敗に終わった戦争を開始した。

 翌年、オバマ政権下でアメリカは米ロ関係の「リセット」を模索し、当時のアメリカ国務長官ヒラリー・クリントンはロシアのセルゲイ・ラブロフ外相に新たな関係の象徴として文字通り物理的 「リセット」 ボタンを贈呈した。

 現実には、アメリカは単に次の一連の挑発行為を準備するための時間と空間を探していただけで実際そうだった。2011年以降、ロシアの同盟国リビアとシリアを標的にすることを含め、アラブ世界の多くを分裂させ破壊し、前述の2014年のウクライナ政府転覆に成功した他、オバマ政権下で始まり今日まで続くアメリカの「アジアへの回帰」もそうだ。

 最近のアメリカの政策は、平和を求めているように見せかけながら次の一連の対立に備えるサイクルの最新のものに思われるだけでなく、アメリカは、ウクライナ紛争の凍結は、まず中国を封じ込めることを優先するための時間と空間をアメリカに与えるためであるとほぼ述べており、そのことは、その後ウクライナでロシアに敵対するためにアメリカが戻ってくることを暗示している。

 アメリカが、ウクライナに関する「役割分担」を実施し、ロシアや中国や同盟諸国を打ち負かすための「戦略的順序付け」過程を推進する試みを、ロシアが、どの程度受け入れるか、または妨害するかは時間がたてば分かるだろう。また、多極世界の残りの国々が、ロシアを支援するため十分団結するか、または同様のアメリカの取り組みにより、自国が分裂し混乱させられるのを許すかどうかについても同様だ。

 ロシアの計算は、特別軍事作戦(SMO)を最後まで継続し、ウクライナ軍を崩壊させ、2014年以降キーウに置かれたアメリカが据えた傀儡政権を排除できるという自信に基づくのか、それとも欧米諸国全体よりも有効に活用でき、将来より強い立場からアメリカとその代理勢力に対抗できるとモスクワが考える休戦に同意する必要性に基づくものか、いずれかになるだろう。

 アメリカが東方へと目を向けるにつれ、ロシアはイランや中国といった同盟国を支援するための「ピボット」用資源を確保しようとしているのかもしれない 。しかし、アメリカとは異なり、ロシアにはワシントンのように、ある紛争に対処しつつ、別の紛争にピボットするために協力できるような膨大な数の属国がない。

 多極世界の将来は、アメリカの侵略、強制、占領から自国を守るために多極諸国が互いに協力するのと同じくらい、アメリカによる政治的占領と搾取を防ぐため各国を支援することにかかっているのかもしれない。

 ロシアと台頭する多極化世界にとって究極の試練は、それぞれの国を狙うアメリカの計画に耐えられるかどうかだけでなく、この戦略をワシントンに転用できるかどうかにかかっている。もしロシアがウクライナにおけるSMOを決定的に終結させ、同時に中国やイランなどの国々との同盟関係を強化できれば「分業体制」を無意味にできるだろう。

 同様に、中国がこの期間を利用して地域的影響力を強化し、欧米諸国以外の国々との結びつきを深められれば、アジア太平洋地域への軸足の転換がそれほど効果的でなくなることにアメリカは気づくだろう。

 現在の地政学的情勢は、まるで地政学的チェスゲームのような、一か八かの勝負を挑むゲームだ。アメリカはライバルを一人ずつ追い詰められると確信しているが、多極化世界が協調して王手を仕掛ければ、このゲームは永久に終結する可能性がある。成功とは、世界的な勢力バランスの中で、平和と安定と繁栄を特徴とする世界を実現することだ。失敗とは、我々共通の未来を、一世紀にもわた破壊しようとしてきたアメリカ国内の少数の特別権益利団体に手渡すことだ。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/08/20/trump-europe-ukraine-meeting-selling-division-of-labor-and-strategic-sequencing/

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