ロシア

2026年5月15日 (金)

対イラン戦争:サウジアラビアはイスラエルを非難し、ネオコンの大御所は敗北を認めている

2026年5月11日
Moon of Alabama

 ここ数日の間に、注目すべき記事が二つ発表された。両記事の著者は、ともに、ジョージ・W・ブッシュ政権とイラク戦争に深く関わっていた経験豊富な右翼戦略家で、互いに関連している。

 最初の記事はトゥルキ・アル・ファイサルによるものだ。  
彼はサウジアラビア建国の父、アブドゥル・アジーズ国王の孫で、ファイサル国王の息子だ。彼はキング・ファイサル財団のイスラム研究センター会長を務めている。

 1979年から2001年まで、トゥルキ王子はサウジアラビアの情報機関アル・ムハバラート・アル・アンマ長官を務め、2001年9月1日に辞任した。15人のサウジアラビア国民がアメリカの民間航空機をハイジャックした9月11日同時多発テロの10日前だった。

 その後、トゥルキ王子はセントジェームズ宮廷およびアメリカ合衆国大使を務めた。
 ファイサルは、土曜日に準国営メディアのアラブ・ニュースに掲載された論説記事で、アメリカによる対イラン戦争の背後にある重大な陰謀を明らかにした

 サウジアラビアはイランに不満を抱いているものの、湾岸地域全体が現在陥っている混乱の真の原因はイランではないと認めている。  
イランなどがサウジアラビア王国を破滅の渦に引きずり込もうとした時、サウジアラビア指導者たちは、国民の生命と財産を守るため、隣国に引き起こされる苦痛に耐えることを選んだ。もしサウジアラビア王国が、イランの施設や権益を破壊することで、イランに対して同様の報復措置を取ることを望み、また実際にそうする能力を持っていたら、アラビア湾沿岸、更には王国奥深くにあるサウジアラビアの石油施設や海水淡水化プラントが破壊されるという結果になっていただろう。

 もしイスラエルが対イラン戦争を引き起こす計画が成功していたら、この地域は荒廃と破壊に陥っていたはずだ。何千人もの息子や娘が、我々と何の利害関係もない戦いで命を落としていたはずだ。イスラエルはこの地域に自らの意思を押し付け、周辺地域における唯一の勢力として君臨していたはずだ。

 ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の英知と先見の明により、サウジアラビア王国は戦争の惨禍とその壊滅的影響を回避できた。実際、現在パキスタンと共に、サウジアラビア王国は、戦闘の火を消し止め、事態の悪化を防ぎ、平和を求める人々が愛する人々の命と国益の安全について安心できるという希望を与えている。
 この論説記事は、サウジアラビアが戦争の拡大を促していると主張していたシオニスト・プロパガンダ担当者に広められた全ての噂を否定している。

 三年前の中国による仲介で、イランとサウジアラビア間で政治的合意が成立して以来、両国間で大きな衝突は起きていない。戦争にもかかわらず、サウジアラビアはハッジ(大巡礼)にイランからの巡礼者を歓迎し ている。イランはサウジアラビア国内の米軍施設を攻撃したが、サウジアラビアの主要石油利権への攻撃は控えている。その結果、国営石油会社サウジアラムコは記録的利益を上げている。

 サウジアラビアの姿勢は、アメリカが湾岸地域における覇権的役割を失ったことを示す多くの兆候の一つだ。

 強硬ネオコンのロバート・ケーガンが、親戦派のアトランティック誌に寄稿した2つ目の論説記事も、この見解を裏付けている。ブッシュ/チェイニー政権を、対イラン戦争へと駆り立てたケーガンは、アメリカがイランとの戦争に敗れたことを認めている。  
イランにおける王手 ― この戦争に敗れた結果をワシントンは覆すことも制御することもできない。アーカイブ) ―アトランティック

 紛争でアメリカが完全敗北を喫し、戦略的損失が修復も無視もできないほどの決定的後退を経験した時代を思い浮かべるのは困難だ。

 現在の対イラン戦争における敗北は全く異なる性質のものだ。修復も無視もできない。以前の状態に戻ることはなく、被った損害を覆したり克服したりするような最終的なアメリカの勝利もない。ホルムズ海峡は、かつてのように「開かれた」状態にはならない。海峡を支配することにより、イランはこの地域における主要当事者、世界における主要当事者の一人として台頭する。イランの同盟国、中国とロシアの役割は強化され、アメリカの役割は大幅に縮小する。戦争支持者が繰り返し主張してきたように、この紛争はアメリカの力量を示すどころか、頼りにならず、始めたことをやり遂げる能力のないアメリカを露呈した。これは、アメリカの失敗に、同盟諸国や敵国が適応していく中、世界中で連鎖反応を引き起こすだろう。
 アメリカにはこのジレンマから抜け出す道がないことをケーガンは認めている。  
たとえトランプがイラン「文明」を破壊するという脅迫を実行に移し、更なる爆撃を行ったとしても、イランは政権崩壊前に(そもそも政権が崩壊すると仮定した場合)、多数のミサイルやドローンを発射できる。わずか数回の攻撃が成功するだけで、この地域の石油・ガスインフラは数年、場合によっては数十年にわたり麻痺し、世界とアメリカを長期にわたる経済危機に陥れる可能性がある。たとえトランプが撤退戦略の一環としてイランを爆撃し、強硬姿勢を見せて、撤退を隠蔽しようとしても、このような大惨事を招くリスクなしには実行できない

 これは王手ではないにせよ、それに近い。
 ケーガンは代替案として対イラン全面戦争も検討しているが、それは更に悪い道で、より大きな失敗につながる可能性が高いとして切り捨てている。  
現在のイラン政権を打倒するため本格的地上戦と海戦を展開し、新政権が樹立されるまでイランを占領する覚悟がアメリカにない限り、また係争中の海峡でタンカーを護衛する軍艦を失うリスクを冒す覚悟がない限り、更に、イランの報復により、地域全体の生産能力に壊滅的な長期的損害が生じることを覚悟しない限り、今撤退するのは最悪の選択肢でないように思えるかもしれない。政治的観点から言えば、トランプ大統領は、より大規模で長期にわたり、費用もかさむにもかかわらず、最終的に失敗に終わる可能性がある戦争を生き延びるより、敗北を乗り切る方が可能性が高いと感じているのかもしれない。

 従って、アメリカにとって、敗北はあり得るだけでなく、むしろ可能性が高い。敗北とはこういうことだ。

 海峡における新たな現状は、地域的にも世界的にも、相対的な力と影響力に大きな変化をもたらす。この地域では、アメリカは張り子の虎だと証明され、湾岸諸国や他のアラブ諸国はイランに迎合せざるを得なくなる。イラン研究者のルーエル・ゲレヒトとレイ・タケイが最近書いたように「湾岸アラブ諸国の経済は、アメリカ覇権という傘の下で築かれてきた。それを奪い、それに伴う航行の自由を奪えば、湾岸諸国は必然的にテヘランに物乞いをすることになる」。

 彼らだけではない。湾岸諸国のエネルギーに依存している全ての国は、イランとの間で独自の取り決めを結ばなければならない。他にどんな選択肢があるだろう?
 対イラン戦争での敗北は、世界におけるアメリカの立場に、より広範な影響を与えるとケーガンは考えている。

 ポスト・アメリカ世界への世界的適応は加速している。かつてアメリカが支配的だった湾岸地域におけるアメリカの地位低下は、数多くの犠牲のほんの始まりに過ぎない。

 今週後半、ドナルド・トランプ大統領は中国訪問予定だ。フィナンシャル・タイムズに掲載された今回訪問に関する政権側の事前記事(アーカイブ)は、アメリカは依然、戦争を利用して世界中に圧力をかけられると主張している。  
「大統領は圧力をかけると予想している」と、ある米当局者は記者会見で述べた。

 トランプ大統領は、中国によるイランとロシアへの支援、具体的には軍民両用部品の提供や潜在的武器輸出について、習近平国家主席との以前の協議を再開すると述べた。

 「この協議は今後も続くと予想している。ここ数日の間にアメリカからいくつかの措置、つまり制裁措置が出されたのを目にしたと思うが、それらは確実に協議の一部になる」と当局者は付け加えた。

 金曜日、イランが中東で米軍に対する軍事攻撃を行うのを支援する画像や他のサービスを提供したとして、中国の衛星企業三社にアメリカ国務省が制裁を科した。また財務省は、イランが中国から携帯式地対空ミサイル(MANPADS)を輸入するのを支援したとして、YUSHITA (Shanghai)International Trade Co., Ltdにも制裁を科した。
 戦争に敗れた以上、制裁ゲームも終わったのだということをトランプは未だに認識していない。中国であれ、他のどの国であれ、湾岸地域で失った覇権的地位をアメリカが取り戻すのを支援することは決して利益にならない。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2026/05/war-on-iran-saudis-blame-israel-neocon-grandee-concedes-defeat.html

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 耕助のブログ  
No. 2901 米国のAI産業は破滅の運命にある
 The Chris Hedges Report
Trump's Iranian Nightmare
Trump’s catastrophic miscalculation in Iran and refusal to accept the Inevitability of defeat is pushing us towards a global depression and ensuring the suffering and immiseration of millions.

Chris Hedges
May 14

2026年5月12日 (火)

対イラン戦争:サウジアラビアがイスラエルを非難し、ネオコンの大御所が敗北を認める

2026年5月11日
Moon of Alabama

 ここ数日の間に、注目すべき記事が二つ発表された。両記事の著者は、ともに、ジョージ・W・ブッシュ政権とイラク戦争に深く関わっていた経験豊富な右翼戦略家で、互いに関連している。

 最初の記事はトゥルキ・アル・ファイサルによるものだ。  
彼はサウジアラビア建国の父、アブドゥル・アジーズ国王の孫で、ファイサル国王の息子だ。彼はキング・ファイサル財団のイスラム研究センター会長を務めている。

 1979年から2001年まで、トゥルキ王子はサウジアラビアの情報機関アル・ムハバラート・アル・アンマ長官を務め、2001年9月1日に辞任した。15人のサウジアラビア国民がアメリカの民間航空機をハイジャックした9月11日の同時多発テロの10日前だった。

 その後、トゥルキ王子はセントジェームズ宮廷およびアメリカ合衆国大使を務めた。
 土曜日に準国営メディアのアラブ・ニュースに掲載された論説記事で、アメリカによる対イラン戦争の背後にある重大な陰謀をファイサルは、明らかにした

 サウジアラビアはイランに不満を抱いているものの、湾岸地域全体が現在陥っている混乱の真の原因はイランではないと認めている。  
イランや他の国々がサウジアラビア王国を破滅の渦に引きずり込もうとした際、サウジアラビア指導者たちは、国民の生命と財産を守るため、隣国に引き起こされる苦痛に耐えることを選んだ。もしサウジアラビア王国が、イランの施設や権益を破壊することで、イランに対して同様の報復措置を取ることを望み、また実際にそうする能力を持っていたら、アラビア湾沿岸、更には王国奥深くにあるサウジアラビアの石油施設や海水淡水化プラントが破壊されるという結果になっていただろう。

 もしイスラエルが対イラン戦争を引き起こす計画が成功していたら、この地域は荒廃と破壊に陥っていたはずだ。何千人もの息子や娘が、我々と何の利害関係もない戦いで命を落としていたはずだ。イスラエルはこの地域に自らの意思を押し付け、周辺地域における唯一の勢力として君臨していたはずだ。

 ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の英知と先見の明により、サウジアラビア王国は戦争の惨禍とその壊滅的影響を回避できた。実際、現在パキスタンと共に、サウジアラビア王国は、戦闘の火を消し止め、事態の悪化を防ぎ、平和を求める人々が愛する人々の命と国益の安全について安心できるという希望を与えている。
 この論説記事は、サウジアラビアが戦争の拡大を促していると主張していたシオニスト・プロパガンダ担当者に広められた全ての噂を否定している。

 三年前、中国の仲介により、イランとサウジアラビア間で政治的合意が成立して以来、両国間で大きな衝突は起きていない。戦争にもかかわらず、ハッジ(大巡礼)にイランからの巡礼者をサウジアラビアは歓迎し ている。イランはサウジアラビア国内の米軍施設を攻撃したが、サウジアラビアの主要石油利権への攻撃は控えている。その結果、国営石油会社サウジアラムコは記録的利益を上げている

 サウジアラビアの姿勢は、アメリカが湾岸地域における覇権的役割を失ったことを示す多くの兆候の一つだ。

 強硬ネオコンのロバート・ケーガンが、親戦派のアトランティック誌に寄稿した2つ目の論説記事も、この見解を裏付けている。ブッシュ/チェイニー政権を、対イラン戦争へ駆り立てたケーガンは、アメリカがイランとの戦争に敗れたことを認めている。  
イランにおける王手 ― この戦争に敗れた結果をワシントンは覆すことも制御することもできない。アーカイブ) ―アトランティック

 紛争でアメリカが完全敗北を喫し、戦略的損失が修復も無視もできないほどの決定的後退を経験した時代を思い浮かべるのは困難だ。

 現在の対イラン戦争における敗北は全く異なる性質のものだ。修復も無視もできない。以前の状態に戻ることはなく、被った損害を覆したり克服したりするような最終的なアメリカの勝利もない。ホルムズ海峡は、かつてのように「開かれた」状態にはならない。海峡を支配することにより、イランはこの地域における主要当事者、世界における主要当事者の一人として台頭する。イランの同盟国、中国とロシアの役割は強化され、アメリカの役割は大幅に縮小する。戦争支持者が繰り返し主張してきたように、この紛争はアメリカの力量を示すどころか、頼りにならず、始めたことをやり遂げる能力のないアメリカを露呈した。これは、アメリカの失敗に、同盟諸国や敵国が適応していく中、世界中で連鎖反応を引き起こす。
 アメリカにはこのジレンマから抜け出す道がないことをケーガンは認めている。  
たとえトランプがイラン「文明」を破壊するという脅迫を実行に移し、更なる爆撃を行ったとしても、イランは政権崩壊前に(そもそも政権が崩壊すると仮定した場合)、多数のミサイルやドローンを発射できる。わずか数回の攻撃が成功するだけで、この地域の石油・ガスインフラは数年、場合によっては数十年にわたり麻痺し、世界とアメリカを長期にわたる経済危機に陥れる可能性がある。たとえトランプが撤退戦略の一環としてイランを爆撃し、強硬姿勢を見せて、撤退を隠蔽しようとしても、このような大惨事を招くリスクなしには実行できない。

 これは王手ではないにせよ、それに近い。
 ケーガンは代替案として対イラン全面戦争も検討しているが、それは更に悪い道で、より大きな失敗につながる可能性が高いとして切り捨てている。  
現在のイラン政権を打倒するため本格的地上戦と海戦を展開し、新政権が樹立されるまでイランを占領する覚悟がアメリカにない限り、また係争中の海峡でタンカーを護衛する軍艦を失うリスクを冒す覚悟がない限り、更に、イランの報復により、地域全体の生産能力に壊滅的な長期的損害が生じることを覚悟しない限り、今撤退するのは最悪の選択肢ではないように思えるかもしれない。政治的観点から言えば、トランプ大統領は、より大規模で長期にわたり、費用もかさむにもかかわらず、最終的に失敗に終わる可能性がある戦争を生き延びるより、敗北を乗り切る方が可能性が高いと感じているのかもしれない。

 従って、アメリカにとっては、敗北はあり得るだけでなく、むしろ可能性が高い。敗北とはこういうことなのだ。

 海峡における新たな現状は、地域的にも世界的にも、相対的な力と影響力に大きな変化をもたらす。この地域では、アメリカは張り子の虎だと証明され、湾岸諸国や他のアラブ諸国はイランに迎合せざるを得なくなる。イラン研究者のルーエル・ゲレヒトとレイ・タケイが最近書いたように「湾岸アラブ諸国の経済は、アメリカ覇権という傘の下で築かれてきた。それを奪い、それに伴う航行の自由を奪えば、湾岸諸国は必然的にテヘランに物乞いをすることになる」。

 彼らだけではない。湾岸諸国のエネルギーに依存している全ての国は、イランとの間で独自の取り決めを結ばなければならない。他にどんな選択肢があるだろう?
 対イラン戦争での敗北は、世界におけるアメリカの立場に、より広範な影響を与えるとケーガンは考えている。  
ポスト・アメリカ世界への世界的適応は加速している。かつてアメリカが支配的だった湾岸地域におけるアメリカの地位低下は、数多くの犠牲のほんの始まりに過ぎない。
 今週後半、ドナルド・トランプ大統領は中国訪問予定だ。フィナンシャル・タイムズに掲載された今回訪問に関する政権側の事前予測記事(アーカイブ)は、アメリカは依然、戦争を利用して世界中に圧力をかけられると主張している。  
「大統領は圧力をかけると予想している」と、ある米当局者は記者会見で述べた。

 トランプ大統領は、中国によるイランとロシアへの支援、具体的には軍民両用部品の提供や潜在的武器輸出について、習近平国家主席との以前の協議を再開すると述べた。

 「この協議は今後も続くと予想している。ここ数日の間にアメリカからいくつかの措置、つまり制裁措置が出されたのを目にしたと思うが、それらは確実に協議の一部になる」と当局者は付け加えた。

 金曜日、イランが中東で米軍に対する軍事攻撃を行うのを支援する画像や他のサービスを提供したとして、中国の衛星企業三社にアメリカ国務省が制裁を科した。また財務省は、イランが中国から携帯式地対空ミサイル(MANPADS)を輸入するのを支援したとして、YUSHITA (Shanghai)International Trade Co., Ltdにも制裁を科した。
 戦争に敗れた以上、制裁ゲームも終わったのだということをトランプは未だに認識していない。中国であれ、他のどの国であれ、湾岸地域で失った覇権的地位をアメリカが取り戻すのを支援することは決して利益にならない。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2026/05/war-on-iran-saudis-blame-israel-neocon-grandee-concedes-defeat.html

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 東京新聞 夕刊 一面   
 ふるさと納税 手数料1379億円

 総務省 サイトに引き下げ要請へ

 寄付の一割超 自治体の負担重く
 この制度を考えた人物を支持していないため、利用しておらず、今後の利用予定もない。

 Wikipedia記事からごく一部を引用する。
 菅は「ふるさと納税の検討を私が指示したのは、少なからず田中康夫がきっかけだった」と周囲に述べている。
 植草一秀の『知られざる真実』
消費税は社会保障財源という嘘

2026年5月11日 (月)

最近の停戦に向けたゼレンスキー大統領の動きの背景には何があるのか?



ロレンツォ・マリア・パチーニ
2026年5月7日
Strategic Culture Foundation

 ウクライナ戦争は、停戦が、もはや平和への架け橋ではなく、むしろ並行する戦場となる段階に入った。

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お問い合わせ: info@strategic-culture.su
 
戦術的休戦?

 ウクライナでの戦争は、しばらく前から停戦がもはや平和への架け橋ではなく、むしろ並行する戦場の様相を呈する段階に入っている。

 「停戦」という言葉はもはや武器の沈黙だけを意味するものではなく、勢力バランスを測り、緊張感を煽り、イメージを操作し、政治的解釈を押し付けるための手段になっている。こうした状況で、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領が2026年5月5日から6日にかけて発表した停戦案は、単なる人道的な身振りとしてではなく、象徴的な戦線でも繰り広げられている戦争における戦略的な動きとして解釈されるべきだ。これまで、この非合法なウクライナ大統領は、ロシア連邦が祝日に宣言した停戦協定を組織的に繰り返し破らせてきたため、今月の停戦も極めて疑わしいものに見える。

 引き金となったのは、おそらく平和ではなく、暦だった。モスクワは、第二次世界大戦におけるソ連の戦勝を祝う5月8日と9日の二日間停戦を発表した。これに対し、キーウはロシアから正式要請を受けていないと主張し、停戦をプロパガンダの隠れ蓑として利用していると非難し、自国の停戦を3日近く前倒しした。これだけでも事態の本質は明らかだ。これは国民と前線の兵士のために行われた中立的な構想ではなく、国際的信頼性という点で、キーウが窮地に立たされている、正統性を巡る戦いにおける反撃だ。

 最も単純な解釈は同時に最も不快な解釈でもある。つまり、短期間停戦によって、キーウは公然と認めることなく、部隊、弾薬、補給網を再編成できるというものだ。この見方は、一時的停戦を妥協への一歩ではなく、息を整え、部隊を再配置し、前線への圧力を軽減するのに役立つ作戦上の一時停止と捉える専門家や評論家の間で広まっている。正直なところ、これは突飛な考えではない。消耗戦では、あらゆる停戦が戦争関連支出の停止にもつながるからだ。

 だが政治的レベルでは、これに対する反論も同様に説得力がある。キーウは、ロシアの停戦が操作的であると受け止められたことに対し、自らを対話の用意がある「理性的」な側として位置づけていると主張している。一方、モスクワは歴史的記念日を利用して、権力のイメージとパレードの観衆を守ろうとしているように見える。言い換えれば、ゼレンスキー大統領は単に一時休戦を求めているのではなく、クレムリンの信頼性を試そうとしているのだ。

 問題は、これら二つのレベルが必ずしも排他的でないことだ。休戦は外交的な身振りであると同時に、軍事的機会にもなり得る。そして、まさにこの点において、公式声明が示唆するより、主張はより曖昧になる。

 ゼレンスキー大統領は、今回の停戦を真剣さの試金石として提示した。ロシアが本当に戦争を止めたいなら、自国の祝賀を待たず、直ちにそうすべきだというわけだ。この手法は、非難の矛先を逆転させ、躊躇しているのはキーウではなく、見せかけの行動をとっているのはモスクワだという印象を与えるので効果的だ。この策略、どれほど信憑性があるのだろう。だが、一連の出来事は、もう一つの真実も明らかにしている。停戦は断片的に、しばしば透明性のある外交ルートを経ずに、並行した言葉遣いで発表され、その後、違反行為の相互非難の応酬に陥ってしまう。

 この不透明さは偶然ではなく、システムそのものだ。ウクライナ声明は責任感と自制心というイメージを強化するのを狙っているが、行動や発言姿勢は依然非常に好戦的だ。ゼレンスキー大統領が、停戦はロシアの真の意思を「試す」のに十分な期間続くべきだと主張する際、彼は単に外交について語っているのではなく、あらゆる停戦中断が、キーウにとって政治的利益をもたらさなければならないという圧力の物語を構築しているのだ。

 主な矛盾点はここにある。ウクライナは「本格的」停戦を求めながら、実際に受け入れたり提案したりするのは、平和ではなく、試金石の停戦に過ぎない。この論理では、停戦は目的ではなく敵を暴露するための手段だ。だがモスクワはこうした心理的罠にはまらない。
 
象徴の劇場

 象徴的な側面はおそらく最も興味深く、最も皮肉なものだ。戦勝記念日を巡る争いは、1945年の記憶が現代における正当性剥奪の道具へと変貌した心理戦の典型例だ。クレムリンが停戦を自国のパレードと結びつけることで、メッセージは国内的にも国際的にも伝わる。ロシアはナチズムに対する勝利の継承者で、包囲されながら不屈の歴史的強国だと自らを位置づけているのだ。ゼレンスキー大統領が休戦を前倒しし、ロシア側の日程は軽薄だと一蹴して応じているのは、モスクワが独占している反ファシズムの主張と歴史的正当性をキーウが奪おうとする企てだ。だが、ここには「ただし」という条件がつく。なぜなら、キーウには反ファシズム気風など根付いていないためだ。むしろその逆だ。

 赤の広場や戦勝記念パレードといった象徴への言及は、単なる軍事的脅威としてでなく、ロシア国家アイデンティティの象徴的核心への攻撃として解釈されるべきだ。「核心を攻撃する」という表現は、単に軍事目標を想起させるだけでなく、ロシア権力を正当化する枠組み全体に挑戦するものだ。それは、紛争を、国家の記憶を巡る闘争へと変容させ、象徴が現実よりも重要視されるような悪循環を助長する危険性をはらんでいる。ゼレンスキー大統領は、欧米諸国政府と国内世論の両方に訴えかけようとしている。前者に対しては、現実的な指導者の顔を見せ、後者に対しては、敵に時間軸の支配権さえ与えない妥協を許さない指導者の顔を見せようとしているのだ。

 だが、繰り返すが、大きな問題点がある。キーウ指導部はネオナチに深く染まっており、そのシンボル、言葉、イデオロギーを採用している。ウクライナはネオナチ欧米諸国に侵略され征服された国で、その政府はまさにそのことを最も雄弁に物語っている。

 しかも欧州の問題がある。停戦の分析は同盟諸国の役割を考慮せずには完結しない。欧米諸国の支援は依然決定的役割を果たしているが、亀裂がないわけではない。ウクライナへの軍事的・経済的支援は継続されているが、ワシントンとブリュッセルとキーウとの間の政治的疲弊と意見の相違が深まる中で行われている。ドナルド・トランプ政権下でのアメリカの政策再編は、キーウ支援の政治的費用を、より明確にする一方、欧州では、合意は以前ほど強固でなく、内部的制約に左右されるようになっている。これは重要な問題だ。ゼレンスキー大統領のあらゆる決定が、数十億ドル規模の依存関係という生態系の中で行われるためだ。また短期停戦は、統制力、規律、交渉力の兆候を求める支援欧米諸国を安心させるため、あるいは少なくとも自分たちの資金が無駄になっていないと自らを欺くために仕組まれた可能性もある。だが同じ停戦協定も、より多くの武器、より多くの時間と、より多くの正当性を要求する口実になり得る。特に、頑なに戦線に留まり勝利を重ね続けるロシアに対し、ウクライナが「柔軟性」を示した証拠として提示される場合はなおさらだ。言い換えれば、キーウは欧米諸国の支援を受けた戦争機械であるのをやめずに、和平への準備ができていることを示さなければならないのだ。

 だがグレー・ゾーンとして欧米支援諸国の戦略的曖昧さも挙げられる。彼らは、ウクライナ国内を取り巻く特定勢力の政治的性質を十分考慮せずに、地政学的防波堤としてウクライナの愚行を支持することが多い。

 ここから議論は複雑になるが、避けて通れない。欧州連合はネオナチを支援し続け、政治的正当性、軍事支援、財政援助と、メディアによるプロパガンダで、ウクライナを抑圧しているネオナチ政権を助長している。

 ゼレンスキー大統領の支持者連中は、停戦を冷静さの表れと解釈するだろう。ウクライナは外交を拒否するのではなく、単なる見せかけでなく、保証と具体的行動を求めていることを世界に示したと彼らは言うだろう。だが実際は、これは当面の利益を狙った動きで、時間を稼ぎ、国内の結束を固め、責任ある被害者を演じ、ロシアを広報面で厄介な立場に追い込む手段に過ぎない。結局、過去数年、ロシアの停戦提案を拒否しても何ら良い結果は得られず、むしろ常にロシアによる領土拡大の結果に終わってきたのだから。

 結局、重要なのは、ゼレンスキー大統領が抽象的な意味で「本当に」平和を望んでいるかどうかを判断することではない。重要なのは、彼がどのような種類の平和を、どのような手段で求めているのか、そして何よりも、軍事目標と主張上の狙いとの関係がどうなっているのかを理解することだ。公式声明は、停戦、対話、責任といった原則的姿勢を示している。だが実際の力学は、ずっと冷徹な様相を呈している。あらゆる休戦が、相手の弱点を測り、自国の国際的立場を再調整するための機会になる戦争だ。特に、休戦がなければ、キーウ政権には、モナコ公国にあるウクライナ・オリガルヒ連中の新しい海辺の別荘の純金製浴室を改装する時間がないからだ。

 このために、ゼレンスキー大統領が提案した停戦は、相互圧力の駆け引きにおける戦術的な動きで、欧米諸国に終結させる意思がないように見える戦争の状況を強化するための単なる実利的な中断に過ぎないように見える。

 つまり、究極的な問題は、この休戦が数時間戦闘を停止させるかどうかではなく、ずっと困難な問題だ。銃声を沈黙させることを目的としているのか、それとも、戦争の声をより大きく響かせることを目的としているのかだ。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/05/07/whats-behind-zelenskys-recent-ceasefire-maneuvers/

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 植草一秀の『知られざる真実』
浅薄な高市皇位継承論

2026年5月 8日 (金)

エネルギーを巡る激震:ウクライナと対イラン紛争がヨーロッパの未来をどのように変えたのか



ロレンツォ・マリア・パチーニ
2026年5月6日
Strategic Culture Foundation

 根本的な問題は、ヨーロッパが産業基盤と国際経済システムにおける地位を永久に失うことなく、エネルギー危機を乗り越えられるかどうかだ。

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全身性エネルギー・ショックの解剖学的構造

 2021年から2024年にかけて、欧州のエネルギー・システムは、戦後大陸の経済史において未曾有の急速かつ衝撃的な変革を遂げた。2022年2月のロシアによるウクライナへの特別軍事作戦、それに伴う制裁措置、モスクワによるエネルギー面での報復と、中東の海上輸送ルートにおける構造的緊張が重なり、いわば二重の地政学的・エネルギー的ショックが発生した。すなわち、欧州の主要化石燃料供給経路である東側のロシア回廊と、南東側のペルシャ湾回廊が同時に寸断されたのだ。

 この危機の規模を理解するためには、まず危機以前の状況を明確に把握する必要がある。2021年、欧州連合はロシアから約1,550億立方m(Bcm)の天然ガスを輸入し、これは総需要の45%を占めた(ユーロスタット、2022年)。ロシアからの原油輸入量は1日あたり約270万バレルで、総輸入量の27%を占めた。ロシア産石炭は欧州の輸入量の46%を占めた。合計すると、ロシアはEUの一次エネルギー消費量の約24%を供給していたと推定され、これは現代世界において、他のどの同盟体制にも見られない依存度だ。

 同時に、欧州の液化天然ガス(LNG)輸入量のかなりの部分、そして増加傾向にある部分は、ペルシャ湾岸地域、特にカタールから来ており、現在もその傾向は続いている。これらの供給は、欧州の再ガス化港に到達する前に、ホルムズ海峡と紅海を経由しなければならない。2023年末に始まったイエメン危機と紅海におけるフーシ派の作戦は、数十年間、理論上の問題にとどまっていた脆弱性を具体的現実に変えてしまった。

 ロシアやイランからのエネルギー供給ルートに代わる、ヨーロッパのエネルギー供給ルートの現状はどのようなものか。こうした代替経路への強制的移行がもたらす本当の代償は、価格面だけでなく、産業競争力、インフレ、社会安定性といった面で、どのようなものか。そして、今後10年から15年間に、ヨーロッパのエネルギー・システムの構造的回復力に関して、具体的見通しはどうなっているのか。
 
主要な事実

 2021年、ロシアは欧州連合が輸入するガスの45%、石油の27%、石炭の46%を供給していた。これらの供給がほぼ同時に途絶えたことは、1973年以来、欧州大陸史上最大のエネルギー供給ショックとなった。
 
2. ヨーロッパのエネルギー輸送経路の地理と内訳

2.1 2022年以前のシステムの構造

 1990年から2020年までの30年間に構築された欧州のエネルギー供給システムは、戦略的多様化より経済的安定と費用削減を優先するロシアとのインフラ統合という論理に基づいていた。ロシア・ガスは、主に3つの回廊を中心としたパイプライン網を通じて欧州に供給されていた。

 北ヨーロッパ回廊(ノルドストリーム1号線と2号線、総容量110Gmc/年)、ウクライナ送電システムを経由するウクライナ回廊(近年は約40~45Gmc/年)、およびトルクストリームとバルカンシステムを経由する南部回廊(約30Gmc/年)。

 このシステムには明確な経済的利点があった。危機以前のロシア・パイプラインガスの価格は1メガワット時(MWh)あたり5~10ユーロだったのに対し、中東やアメリカからのスポットLNGは10~15ユーロだった。統合は深く、長期契約(通常15~25年)によって欧州の買い手には予測可能性が保証され、ロシアの予算には安定収入が確保された。このシステムの論理は、国際関係論者が「複雑な相互依存」と呼ぶものだった。相互依存の関係にあるため、紛争は双方にとって、経済的に非合理的なものになるはずだった。
 
ロシア回廊の崩壊:その力学とタイミング

 崩壊は瞬時に起きたのではなく、徐々にエスカレートする過程をたどり、欧州の対応を更に困難にした。ロシア特別軍事作戦数ヶ月前の2021年夏には、ガスプロムは自社の貯蔵備蓄を低く抑えつつ、欧州への供給量を削減していた。多くの専門家(Pirani、2022年、Oxford Institute for Energy Studies、2022年)は、これを冬に備えて価格をつり上げ、欧州の備蓄を弱体化させるための意図的な戦略だと解釈していた。2022年2月~3月に制裁が始まると、供給量は徐々に減少した。ノルド・ストリーム1は2022年6月に容量の40%に、7月には20%に削減され、2022年8月には完全に停止した。公式にはタービンに関する技術的紛争が原因とされているが、事実上、制裁への対応だった。

 決定的な出来事は、2022年8月にノルドストリーム1号線と2号線のパイプラインが破壊されたことで、これは破壊行為で、責任は国際調査の対象になっているが、これにより、これら回廊の喪失は短期から中期的に物理的に不可逆となった。ウクライナ回廊は別の輸送協定の下で運用が続けられたが、この協定は2024年12月31日に期限切れとなり、ウクライナは更新しないことを選択した。トルコ・ストリームは引き続き稼働しているが、主にバルカン半島とトルコの市場に供給している。全体的影響として、ロシアからEUへのガス供給量は2021年の155 Gmcから2023年には約25 Gmcに減少し、僅か2年間で130 Gmcの純損失となった(IEA、2024年)。  
ペルシャ湾ルートの脆弱性

 ホルムズ海峡は、航行可能な最小水路幅が約33キロで、世界のエネルギー・システムにおいて最も重要な輸送拠点だ。

 ホルムズ海峡は、1日あたり約2,000万~2,100万バレルの石油および精製製品が通過し、世界の石油消費量の約21%を占めるとともに、世界LNG貿易の相当部分を占めている(EIA、2023年)。ヨーロッパにとって、ホルムズ海峡の重要性は2022年以降劇的に高まっている。ロシア産ガスを、カタール産LNG(カタールは世界第2位のLNG輸出国)に置き換えることで、ヨーロッパはエネルギー依存の一部を、地政学的にリスクの高い東側回廊から、地政学的に脆弱な南東側の別回廊へ移した。

 2023年11月にガザ紛争への対応としてフーシ派が海上交通を攻撃したことから始まった紅海危機は、この理論上の脆弱性を具体的運用上の問題へと変えた。危機のピーク時にはスエズ運河の交通量が40~50%減少した(Kpler、2024年)。そのため、多くの船舶が喜望峰を迂回する航路を取らざるを得なくなった。この代替航路は航海に10~14日余計にかかるため、輸送費、保険料、設備投資費用が増加する。

 2022年以前、ロシア産ガスの欧州における価格は5~10ユーロ/MWhだった。代替品として用いられるアメリカ産またはカタール産LNGは、通常の市場状況下では10~20ユーロ/MWhで安定しており、2022年8月には投機的高騰で340ユーロ/MWhに達した。この構造的価格差こそが、欧州の競争力問題の根源だ。
 
代替エネルギー経路:現実、可能性と限界

 2022年から2023年にかけて、アメリカは欧州へのLNGの主要供給国となり、欧州大陸への輸出量は危機以前の期間と比べて2倍以上に増加した。2021年の約22Gmcから2023年には56Gmc以上になった(アメリカ・エネルギー情報局、2024年)。この増加には、ルイジアナ州とテキサス州で承認された新施設によるアメリカの液化能力拡大と、欧州での再ガス化ターミナルの建設またはチャーターを急ぐことが必要だった。2021年にはLNGターミナルがなかったドイツは、2022年12月から2023年半ばにかけて4基の浮体式ターミナル(FSRU)を稼働させ、総容量は約20Gmc/年となった。

 だがアメリカ産LNGには構造的制約があり、ロシア産ガスを完全に代替するのは困難だ。まず価格の問題だ。アメリカ産LNGには液化、大西洋横断輸送、保険、再ガス化の費用が含まれるため、パイプラインガスより構造的に高価になる。

 第二に、契約の柔軟性の欠如:アメリカ産LNGの長期契約のほとんどは「仕向け地指定なし」条項を課しているものの、価格決定メカニズムはアメリカのヘンリーハブ市場に連動しており、欧州のニーズとのずれを生じさせている。第三に、輸送能力:世界のLNGタンカー船隊は、これまでパイプラインで輸送されていた量を完全に代替できるほど十分な規模ではなく、船隊を急速に拡大するには、1隻あたり3~5年の建造期間が必要になる。

 カタールは2022年から2023年にかけて、ドイツ、フランス、ベルギー、イタリアを含む複数欧州諸国と長期契約を締結した。これらの契約は通常15年から27年間続き、ある程度の予測可能性をもたらす一方、2つの根本的問題を抱えている。1つ目は地理的な集中だ。カタールのLNG輸出は全てホルムズ海峡を経由しなければならず、本来軽減されるはずだった地政学的脆弱性がそのまま残ってしまう。海峡での軍事危機や(テヘランが頻繁に発動する抑止措置)イランによる封鎖は、カタールのLNGと湾岸諸国の石油の欧州供給を同時に混乱させるだろう。

 2つ目の問題は、カタールLNGを巡るアジア市場との競争だ。中国、日本、韓国は伝統的にペルシャ湾からの輸出の大部分を吸収しており、カタールの拡張能力(2027年までに輸出能力を年間7700万トンから1億2600万トンに増加させるノースフィールド拡張プロジェクト)は、ウクライナ危機以前に締結された契約を通じて、既に一部がアジア市場に先行販売されている(カタール・エネルギー、2023年)。

 ノルウェーは2022年以降、ヨーロッパへのパイプライン・ガスの主要供給国となり、輸出量は2021年の約113億立方mから2023年には122億立方m以上に増加した(NPD、2024年)。しかし、ノルウェーのガス田は既に最大生産能力に近づいており、新たなパイプライン建設には時間と投資が必要で、短期的には不足分を補えない。アルジェリアは、メドガス(スペイン)とトランスメド(イタリア)のパイプラインを経由してヨーロッパにガスを供給しており、量は年間約30~35億立方メートルで安定している。ここでも拡張能力は地質的制約と、新たなガス田の開発に多額の投資が必要なことから制限されている。

 南部ガス回廊は、アゼルバイジャンのカスピ海ガス田と、TAP(トランスアドリア海パイプライン)を経由してジョージア、トルコ、ギリシャ・イタリアを結び、ヨーロッパと繋がっている。

— 2021年に年間約100億立方mのフル稼働能力に達した。2022年7月、アゼルバイジャンはEUと、2027年までに輸出量を年間200億立方mに倍増し、更に300億~350億立方mまで拡大する協定を締結した。この回廊は、ロシアやホルムズ海峡に依存しない利点があるが、その能力は欧州の需要やロシアの供給不足に比べると依然限定的だ。  
欧州産業にとってのエネルギー・ショックの本当の費用

 天然ガスの欧州における主要指標TTF(Title Transfer Facility)指数は、2022年に未曾有の変動を経験した。1月には約75ユーロ/MWh(過去の平均の4倍)で始まり、2022年8月には340ユーロ/MWhのピークに達したが、貯蔵施設の満杯、暖冬、産業需要の減少といった要因が重なり、徐々に下落した。2023年には、TTFは35~60ユーロ/MWhの範囲で安定したが、それでも危機前の水準の2~3倍で、欧州の生産コストに恒久的影響を与えている。

 電力に関しては、欧州市場の構造が影響を増幅させた。欧州市場では「限界価格設定」メカニズムが採用されており、電力価格はピーク需要時に稼働する限界発電所(通常はガス火力発電所)により決定される。その結果、産業用電力価格は2022~2023年に欧州のいくつかの国で300~400ユーロ/MWhまで上昇した(ユーロスタット、2023年)。これは危機前の平均60~100ユーロ/MWhと比較して大幅な上昇だ。

 エネルギー危機の影響を最も受けているのは、エネルギー集約型産業で、エネルギー費用が総生産費用のかなりの割合(通常15~40%)を占めている。欧州鉄鋼業界は、鉄鋼生産量を2021年の1億5200万トンから2023年には1億2900万トンに削減し、生産能力の約15%を失った(WorldSteel、2024年)。一次アルミニウム生産量は、ドイツ、フランス、スペインの多数の電解工場が一時的または恒久的に閉鎖されたことにより、約25%減少した(European Aluminium、2023年)。

 化学産業は、ドイツを中心地とし、同国のGDPの3%以上を占めているが、2022年には生産量が12%減少し、2023年には更に8%減少した(VCI、2023年)。特に深刻なのは、窒素肥料の原料となるアンモニアの生産だ。ヨーロッパのほとんどの工場は原料として天然ガスを使用しており、コスト上昇により、ヨーロッパの生産は中東やアメリカに比べて競争力を失っている。多くの肥料メーカーが生産量を削減したり、海外からアンモニアを輸入したりしており、農業サプライチェーンに波及効果をもたらしている。

 イタリア、ドイツ、スペインが世界をリードするセラミックス・ガラス産業は、生産工程のエネルギー集約度(窯の温度が1200~1700℃)の高さから壊滅的影響を受けている。イタリアの業界団体(Confindustria Ceramica)は、2022~2023年の期間に、トルコ、中国、インドの生産者に対する競争力が30~40%低下すると予測している(Confindustria Ceramica、2023年)。

 エネルギー危機の影響は製造業にとどまらず、インフレを通じて経済全体に波及した。ユーロ圏の総合消費者物価指数は2022年10月に10.6%のピークに達し(ECB、2022年)、単一通貨導入以来の最高水準となった。このインフレのほぼ半分はエネルギー関連要因によるものだったが、食料、輸送、サービスなどの価格上昇といった二次的影響は経済全体に広がった。

 家計の購買力低下は、経済的影響だけでなく、政治的、社会的な影響も及ぼし、ロシアへのエネルギー依存モデルを構築・擁護してきた欧州機関や各国の政治エリートに対する不満を煽った。エネルギー分析において、しばしば見落とされがちな社会的結束という側面は、あらゆるレジリエンス戦略の長期的な政治的持続可能性を理解する上で極めて重要だ。脆弱な家計や、最も影響を受けやすい産業部門に対する適切な補償制度がなければ、エネルギー転換の資金調達に必要な合意形成が損なわれる恐れがある。

 2023年における欧州と中国の産業用電力費用の差は約5対1だった。欧州と(IRAとシェールガスの恩恵を受けている)アメリカの差は約3.5対1だった。この構造的格差により、欧州製造業の多くの分野が国際比較において競争力が欠如している。
 
レジリエンスの可能性:新たな欧州エネルギー・システムに向けて

 ロシアとイランの二重ショックに対する長期的構造的対応策は、再生可能エネルギーへの移行を加速させて、化石燃料輸入への依存度を低減すること以外にあり得ない。これは理想論的な目標ではなく、国家安全保障のあらゆる面において必要不可欠なことだ。2035年までに欧州が電力の70~80%を再生可能エネルギー源から発電するようになれば、化石燃料の輸入への依存度は2021年と比較して60~70%減少し、エネルギー供給ルートの危機に対する構造的な脆弱性が効果的に解消されると国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は推定している(IRENA、2024年)。

 この方向での進展は既に著しい。2023年には、史上初めて再生可能エネルギー源(風力、太陽光、水力)が欧州の電力生産量の44%以上を占め、ドイツ、スペイン、デンマークではピーク時に50%を超えた(Ember、2024年)。EUにおける太陽光発電設備の設置容量は、2023年だけで約56GW増加し、これは過去最大の年間増加量となった。洋上風力発電は、コストが急速に低下しており、2030年までに北欧諸国や沿岸諸国で主要な発電源となる見込みだ。

 しかし、再生可能エネルギーへの移行には、依然として部分的にしか解決されていない2つの根本的な問題、すなわち断続性(太陽光発電は日中のみ、風力発電は風がある時のみ発電する)と季節規模のエネルギー貯蔵に対する解決策が必要だ。リチウム・イオン電池は日々の変動を管理するには十分だが、エネルギー需要が最も高く太陽光発電量が最も低い冬季の再生可能エネルギー生産不足を補うには不十分だ。グリーン水素(再生可能電力を用いた水の電気分解により生成される)は、季節的エネルギー貯蔵と高温を必要とする産業プロセスの脱炭素化にとって最も有望な解決策のように見えるが、産業規模での導入には依然多額の投資と技術革新が必要だ。

 2022年以降の欧州のエネルギー情勢における最も重要な展開の一つは、低排出で信頼性の高いエネルギー源としての原子力発電の再評価だ。2011年の福島原発事故以降、ベルギー、ドイツ、スイスなど欧州諸国のエネルギー政策を支配していた反原発パラダイムは、エネルギー危機により根本的に覆された。ドイツは、原子力発電所、最後の3基の運転期間を2023年4月まで延長した(その後、物議を醸す決定で、更なる延長の選択肢を放棄した)。ベルギーは2023年に、原子炉の閉鎖を10年間延期すると決定した。通常、国内電力生産の70~75%を賄う56基の原子炉を保有するフランスは、新たに6基のEPR2型原子炉を建設する計画を開始した。

 欧州レベルでは、いわゆる小型モジュール式原子炉(SMR)への関心が高まっている。SMRは、従来の大型原子炉に比べて建設コストが低く、建設期間も短い小型のモジュール式原子炉だ。ポーランド、チェコ共和国、ルーマニア、スウェーデンなど、いくつかの欧州諸国は、2030年から2035年までにSMRを建設するための評価プロセスや商業契約を開始している。原子力発電が、安定した信頼性の高い低排出電力供給基盤を提供できるのであれば、欧州のエネルギー・レジリエンス戦略において不可欠な柱になるだろう。

 エネルギー効率化による需要削減は、再生可能エネルギーの拡大と並んで、2022年の危機に対する最も迅速に実施された対応策だった。EUにおける天然ガス需要は、2022年に13%、2023年にさらに7%減少し、合計で2021年より約55GMc減少した。この減少は、ロシアからの供給なしで冬を乗り切るために必要な量を上回るものだった(IEA、2024年)。この減少は、個人の行動(建物の暖房を減らす、サーモスタットの設定温度を下げる)、産業対策(ガスを他のエネルギー源に置き換える、生産量を減らす)、および公共政策(啓発活動、建物の改修に対する税制優遇措置)の組み合わせによって達成された。

 更なる効率向上の可能性は非常に大きい。欧州の建物の約75%がエネルギー効率が悪いとされているが、これらの建物のエネルギー改修により、暖房用エネルギー消費量を40~60%削減できると推定されている(欧州委員会、2023年)。2022年5月に採択されたREPowerEU計画では、エネルギー転換を加速するために3,000億ユーロが割り当てられ、そのかなりの部分が建物と産業の効率化に充てられている。

 今回の危機は、欧州エネルギー体制のインフラ面における脆弱性だけではなく、エネルギー安全保障ガバナンスにおける制度的弱点も浮き彫りにした。エネルギー政策は、これまで各国の専権事項で、欧州レベルでの調整は域内市場の一般原則に限られていた。その結果、各国はそれぞれ異なるエネルギー依存度を抱え、脆弱性のレベルも大きく異なっている。例えば、ドイツはガス輸入の55%をロシアに依存している一方、スペインはLNGターミナルのおかげで、ほぼ完全にエネルギー源を多様化している。

 今回の危機への対応は、緊急事態下における協調能力(2022年夏にガス消費量を15%自主的に削減するという欧州の合意は維持された)と、分断されたガバナンス限界の両方を示した。自動的な連帯メカニズム、共有の戦略的貯蔵、LNGの一元的契約といった、本当の共通欧州エネルギー政策は、将来の危機発生時の集団的脆弱性を大幅に軽減できるだろう。国際エネルギー機関(IEA)と同様の権限を持ち、加盟国に対して拘束力を持つ欧州エネルギー機関(EEA)設立案は、欧州大陸の政治議論に再び力強く浮上しており、真剣に検討されるべきだ。

 欧州が現在のペースで再生可能エネルギーの拡大を維持し、REPowerEUで概説されているエネルギー効率化計画を実施すれば、2035年までにガス輸入への依存度は年間300GMc(2021年)から年間100GMc未満に低下し、エネルギー供給経路の危機に対する脆弱性の大部分を構造的に解消できる可能性がある。
 
2035年までの欧州のエネルギー安全保障に関する3つのシナリオ
 
シナリオA ― 回復力の加速

 最初のシナリオでは、欧州は2023年に記録した再生可能エネルギー拡大のペースを維持し、建物の改修プログラムを加速させ、蓄電(バッテリー、水素、揚水発電)に多額の投資を行い、原子力発電容量を維持または拡大する。このシナリオでは、2035年までに、化石燃料は欧州の一次エネルギー構成の30%未満を占めることになる。ガス輸入への依存度は年間80~100 GMcに低下し、その全てがロシア以外の供給源(ノルウェー、アルジェリア、アメリカLNG、アゼルバイジャン)で賄われる。中東の供給経路における危機に対する脆弱性は大幅に軽減され、再生可能エネルギーのコスト低下により、産業用エネルギー費用は、アメリカと同等の競争力を持つようになる。
 
シナリオB ― 段階的移行と残存する脆弱性

 2番目のシナリオ(現在の傾向に基づくと最も可能性が高いシナリオ)では、欧州は化石燃料への依存度を低減するものの、そのペースは当初の目標より遅くなる。官僚的障害、加盟国間の規制上の対立、新規風力発電所に対する地域住民の反対、送電網投資の遅れなどが移行を遅らせる。ガス輸入への依存度は2035年までに年間150~180 GMcの範囲にとどまり、そのかなりの部分が脆弱な航路(ホルムズ海峡、紅海)を経由して輸送される。欧州は、2022年より対応手段は発達しているものの、依然エネルギー危機に繰り返し直面することになる。  
シナリオC ― 断片化と後退

 3つ目のシナリオでは、移行コスト、インフレ圧力、共通エネルギー政策に反対する民族主義勢力の台頭によって引き起こされる国内政治危機が、欧州のエネルギー政策の分断を招く。各国は代替供給国と二国間協定を締結し(ウクライナでの停戦時にはロシアからの供給を部分的に再開する可能性もある)、欧州の協調体制を放棄する。このシナリオでは、集団的脆弱性は依然高く、供給国に対する欧州の交渉力は大幅に低下する。  
ヨーロッパのエネルギー存続は可能だが保証されているわけではない

 2022年から2024年にかけて、欧州は1973年の石油危機以来最も深刻なエネルギーショックに見舞われた。これは、30年以上にわたるロシア・エネルギー供給依存により生じた構造的脆弱性の下で起きた。だが供給源の多様化、LNGインフラの建設加速、需要削減、再生可能エネルギーの拡大といった迅速な対応により、多くの人が懸念していた大規模な配給制や産業停電を回避できた。これは決して小さな成果ではなく、欧州経済と諸機関が圧下で迅速に適応できる能力を示したものだ。

 だが、急激な衝撃を乗り越えたからといって、構造的問題が解決するわけではない。欧州は、一つの依存(パイプライン経由のロシア産ガス依存)を、部分的に異なる複数の依存(アメリカ産LNG、カタール産LNG、総需要を満たすには不十分な再生可能エネルギー)に置き換えたが、その中にはホルムズ海峡や紅海といった地政学的に脆弱な航路を通るものもある。

 アジアやアメリカの企業とのエネルギー費用差は依然大きく、戦略的分野における静かな脱工業化につながるリスクがある。

 長期的回復力の可能性は存在し、具体的に達成可能だが、そのためには当然とは考えられないいくつかの要素が揃う必要がある。すなわち現在のペースより高い割合で再生可能エネルギーへの投資を継続すること、季節的蓄電問題を解決すること、原子力発電能力を維持すること、本物の共通政策に向けた欧州のエネルギーガバナンス改革と、移行を政治的に持続させるために必要な社会的結束を維持する家計や脆弱な部門への支援体制だ。

 根本的な問題は、ヨーロッパがエネルギー危機を乗り越えられるかどうかではない。乗り越えられるのは確実だ。問題は、産業基盤と国際経済体制における地位を永久に失うことなく乗り越えられるかどうかだ。答えは、今後3年から5年の間に欧州機関と各国政府が下さなければならない政策選択にかかっている。歴史は、この好機をいつまでも維持してくれるとは限らない。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/05/06/the-energy-smash-how-ukrainian-and-iranian-conflicts-have-reshaped-the-european-future/

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 東京新聞 夕刊 一面  
 米イラン 海峡で攻撃応酬

 トランプ氏「停戦継続」

ナチズムに対する戦勝祝賀をヒトラーを称賛する政権が尊重できるのか?



ルーカス・レイロス
2026年5月6日
Strategic Culture Foundation

 停戦協定は破られる可能性が高いが、違反の程度により、キーウにとっての代償は大きいだろう。

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  (5月9日)戦勝記念日祝賀行事のために、ロシアが一時停戦を発表したことで、ウクライナ紛争において既に常態化している動きが再び活発化した。長期にわたる消耗戦の最中であっても象徴的な意味合いの強い短い休戦だ。イースターの時と同様、ロシアは今回も外交的善意と武力行使を制限する意思を示した。もっともロシアは紛争を最終的結果にまで至らせるだけの十分な軍事力を有している。だが、この点に関し、ウクライナが実際どの程度協力するのかは、まだ不透明だ。

 モスクワは停戦を独自に発表したが、ウクライナがこうした協議に応じないことが多いことを考えると、これは当然のことと言える。ロシアは一時的戦闘停止に加え、祝賀行事を尊重する必要性を強調し、停戦協定に重大な違反があった場合、特にモスクワへの攻撃があった場合には、キーウへの大規模ミサイル攻撃を行うと警告した。

 それだけでなく、ロシアは大規模攻撃の可能性を予測し、キーウ在住の民間人や外交官に対し、数日中に市外へ避難するよう促した。論理は単純明快だ。モスクワは敵が停戦協定を遵守するとは考えておらず、既に大規模報復攻撃に備えている。そして残念ながら、その攻撃が民間人に影響を与えることは避けられないだろう。

 これまでロシアは、このような最後通牒を発したり、大規模攻撃を頻繁に実行したりするのを避けてきた。モスクワは、人道的懸念を強く持ち、事態のエスカレーションを避ける姿勢を貫いてきた。だが残念ながら、最近の出来事により、この忍耐をいつまでも維持することは不可能になった。キーウはテロ活動を激化させ、ロシアの民間インフラに対するミサイルやドローンによる攻撃を絶えず行っており、全国的な戦勝記念日の祝賀行事の最中に事件が発生するのではないかという懸念が高まっている。

 さらに、ロシア情報機関が、敵がこうした祝典を攻撃する意図があることを示す事前情報を既に把握している可能性もある。ロシア情報機関は、特定標的に対する予防措置を通じて、ウクライナの作戦をしばしば阻止している。この意味で、今回の最後通牒は、ロシア当局が以前に察知したウクライナの計画に対する対応である可能性もある。

 重要な点は、外交上の善意と人道的姿勢だけでは不十分だとモスクワが認識していることだ。停戦案を守るためには、力の誇示も必要になる。大規模報復を誓約することで、モスクワは相手に戦略を見直し最悪の事態を回避する機会を与えている。ロシアに対する違法攻撃の最終的な結果は、既に周知の通り、キーウに対する全面的報復になるためだ。

 さて報復の可能性を示唆する発表の背景にある理由はともかく、キーウが停戦協定を破るだろうと考える明確な理由があるのを忘れてはならない。この過程には重要なイデオロギー的問題がある。2014年以降、ウクライナ高官層の中では、ナチズム思想(「バンデラ主義」、すなわちウクライナ民族主義の形をとる)が覇権を握っている。ナチズムはウクライナで広く普及したイデオロギーとなり、全国に数千人の信奉者がいる。その多くは、国家が支援する武装組織メンバーだ。

 ナチズム時代同様、ウクライナでもロシア人は迫害されている。学校やテレビ番組ではロシア人全体への憎悪が教え込まれ、若者に反ロシア的思想が植え付けられている。そうなると、この国がヒトラーに対する勝利を祝う日を尊重するなどと一体どうして期待できるだろう?

 イデオロギー的理由や、過去のあらゆる停戦協定違反実績を考慮すれば、ウクライナが停戦協定を破りロシアを攻撃する可能性は非常に高いと思われる。同時に、モスクワはウクライナによる様々な破壊工作を無力化するだけの力を持っているものの防衛能力が攻撃をどの程度阻止できるかは保証できない。このような状況下では、政権を抑止するためには、直接的警告だけが十分に明確なように思われる。

 今モスクワを攻撃すれば、キーウに残っているインフラも全て破壊される可能性が高いことをウクライナ当局は念頭に置く必要がある。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/05/06/can-regime-that-glorifies-hitler-respect-the-celebrations-of-victory-over-nazism/

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 東京新聞 朝刊 三面  
 イラン 米国案に返答見通し

 受け入れ困難項目も
 東京新聞 朝刊 総合 六面  
 米イスラエルがイラン攻撃を開始した2月25日に爆撃され、児童ら150人超が犠牲になったイラン・ミナブの小学校に、共同通信記者が6日入った。米軍により誤爆の疑いが強まる現場を主要な外国メディアが主査債したのは初めて。

 米爆撃で150人超犠牲 悲憤のイラン小学校

 子どもの夢も 幸せも奪われた

2026年4月29日 (水)

アラグチ外相のロシア訪問



2026年4月28日
Strategic Culture Foundation

 今後ロシアの影響力なしに、いかなる解決も不可能で現実的ではないのは明らかだ。

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お問い合わせ: info@strategic-culture.su

 意味深長な.外国訪問について語ろう。

 イランのアッバス・アラグチ外相は、メラジ航空の「ミナブ168便」に搭乗し、イスラマバード、マスカット、サンクトペテルブルクを巡る重要な外交歴訪に出発した。

 もちろん混沌と嘘と略奪と海賊行為の帝国に殺害されたミナブ出身の168人の女学生を追悼するために。

 アラグチは訪問に出発する前、単刀直入にこう述べた。

 「ロシアとの会談はしばらく行われていなかった。今回の機会を利用して、戦争に関連する情勢についてロシアの友人たちと協議を行う。この連携は重要だ。」

 アラグチ外相は、パキスタンでの交渉の見直しと、「どのような条件下で交渉を継続できるか」について説明した。オマーンでの協議は、「近隣諸国、特にペルシャ湾南部地域との関係のさらなる拡大につながるだろう」と述べた。

 ホルムズ海峡に関しては「オマーンとの協議も必要であった…我々はオマーンと多くの共通認識を持っており、専門家レベルでの協議を継続することで合意した。」

 サンクトペテルブルクで、アラグチ外相は儀礼に従ってチェス界の代表セルゲイ・ラブロフ大師範と会談しただけでなく、彼と小規模代表団はプーチン大統領に直接謁見した。

 極めて優雅で、まるで短剣のように鋭い語り口で、イランとの戦争によって生み出された「新たなゲーム」全体をプーチン大統領は要約した。

 絶対に重要な3つのポイント:

1. 最高指導者アヤトラ・モジュタバ・ハメネイ師への敬意:「最初に申し上げたいのは、先週、イランの最高指導者からメッセージをいただいたことです。このメッセージに対し、心からの感謝の意をお伝えいただき、またロシアはイランと同様、戦略的関係を継続していく意向であることを改めてお伝えください。最高指導者に対し、このメッセージへの感謝の意と、ご健勝とご多幸をお祈りする言葉をお伝えください。」

2.イランの闘いは独立と主権のためだ:「イラン国民が独立と主権のために勇敢かつ英雄的に戦っている姿を我々は見ている。もちろん、この勇気と独立への努力により、イラン国民が新指導者の指導の下、この困難な試練の時期を乗り越え、平和が訪れることを強く願っている。」

3.ロシアは全面的に協力する:「我々は、この平和が可能な限り早く実現されるよう、貴国の利益と、地域の方々全員の利益に資するあらゆることをする。我々の立場はよくご存知だろう。」

 アラグチ外相は、イランとロシアが「最高レベルの戦略的協力関係」を締結していることを確認した。更に「イランには、困難な時にイランを支えてくれるロシア連邦のような友人や同盟国がいることは誰の目にも明らかだ。イラン・イスラム共和国への強力かつ揺るぎない支持に感謝する」と述べた。

 海賊帝国が熟考すべきことは山ほどあると言うのは、もちろん今世紀最大の控えめな表現だ。
 
ゲームの流れを変える

 アラグチ外相のグランドツアーは、いくつかの点でゲームの流れを大きく変えた。

まず、イランは仲介者パキスタンに、一連の厳しい内容の文書を手渡した。理論上、これらの文書はアメリカ側に届くはずだ。

主な要点:

  1. 10項目の重点事項を強調し、それら全てを全面的に取り組むこと。
  2. イランは、合理的かつ公正な交渉にのみ応じる用意がある。
  3. アメリカには超えてはならない一線を設定する権利はない。
  4. イランはアメリカの行き過ぎた行為(海上封鎖も含む)に屈服しない。
  5. パキスタンは絶対的中立を維持しなければならない。
だが、それは始まりに過ぎなかった。その後、テヘランは仲介者パキスタンに、今後起こりうるあらゆる事態に対応するための3段階の計画を提示した。

1. 交渉の第一段階は、戦争を完全に終結させ、国連安全保障理事会が承認したような確固たる保証を得ることに焦点を当てるべきだ。

2. 第2段階では、戦争終結後のホルムズ海峡の管理について検討すべきだ。

3. イランの核問題は、第3段階でのみ取り上げるべきだ。

 つまり、今後テヘランは核開発計画に関し一切交渉に応じないのだ。重要なのは、戦争の終結、制裁の緩和、賠償の具体的な方法と、アメリカによる海上封鎖の解除だ。

 核問題は「後日、別の合意の中で対処される可能性がある」そしてそれは戦争が終わった後のみだ(斜体は筆者による)。

 核関連文書こそ「本当に重要な唯一の点だ」とトランプが主張している通り、海賊帝国との正面衝突に注目してほしい。

 イランは今、それをチェス盤から取り除いた。

 トランプは核合意なしに戦争を終わらせることはできないと断固主張している。

 現在、テヘランは戦争が終わるまで核に関する議論は一切行わないと決定している。

 一体誰がこの溝を埋められるだろう?

 ロシア登場。

 そして、それはサンクトペテルブルクでの「最高レベルの戦略的協力関係」において確実に議論されたはずだ。トランプがプーチンの意見に耳を傾けるかどうかは全く別の問題だ。
 
従来の交渉モデルはもはや通用しない

 さて、改めてどちらが主導権を握っているのか見てみよう。テヘランは決定的な一手を打った。海賊帝国の歪んだ思惑に従うのはもう沢山だ。これまでの交渉モデルはもはや通用しない。

 今重要なのは極めて戦略的なことで、イランがアメリカに事実上の戦略的敗北をもたらした状況を最大限に活用することだ。

 だから、いわゆる帝国主義的な「最大限の圧力」に条件付けられた、際限のない戦略的譲歩はもう終わりだ。包囲下での偽りの交渉ももう終わりだ。

 これがアメリカ流「外交」に対するペルシャ人の評価だ。露骨な強制とあらゆる種類の圧力の炎に焼かれて溶け去った単なる道具に過ぎない。今や、戦場こそが条件を決定づける場所で、新たな地政経済的現実を形成する場所になるだろう。

 トランプ陣営2.0が激怒するのも無理はない。

 特に、モスクワが今や利害関係を持つ最前線の当事者になっているから、なおさらだ。アラグチ外相訪問の構築は、まさに圧巻だった。

 今後は、ロシアの影響力なしに、いかなる解決も不可能で、現実的ではないことは明らかだ。

 ペルシャ人を過小評価すれば、蛮族は自らの身を滅ぼすことになる。今我々が目にしているのは、新たなLEGOの世界で再構築された外交だ(もちろん、これは意図的な駄洒落だ)。海賊帝国は、その破壊的企みが何であれ、この戦争から台頭した強大なイランと向き合わざるを得なくなっている。

 かつてのイランはもう存在していない。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/04/28/mr-araghchi-goes-to-russia/

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 東京新聞 夕刊
 文化面
 「大波小波」に、イラン映画の記事があった。

 ジャファル・パナヒ監督『シンプル・アクシデント』は、カンヌ映画祭で最高賞を獲得し、5月は初めから日本でも公開される とあった。見たいものだ。

中東紛争の論理はヨーロッパにも影響を与えているのか?



ルーカス・レイロス
2026年4月23日
Strategic Culture Foundation

 ロシアが明らかにしたヨーロッパ標的リストの背後には一体何があるのか?

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 ロシア国防省による最近の情報公開は、つい最近まで現代の紛争を規定していた暗黙のルールを変革する新たな一歩になる。ウクライナが使用する兵器の製造に関与する欧州域内の企業や産業構造を指摘して、モスクワは明確なメッセージを発信している。すなわち、ロシア領土への攻撃を可能にする連中は正当な標的で、これまでのところ彼らが何の制裁も受けていないのはロシアの自制によるものだというメッセージだ。

 この動きは既に予想されていた。これは間接戦争の伝統的限界が侵食されつつあるという広範な傾向を反映している。紛争中、欧州諸国はキーウに政治的支援を提供するだけでなく、軍事力の増強にも物質的貢献をしてきた。ロシアの視点からすれば、これは単純な疑問を提起する。こうした組織が、ロシア領土に対する作戦において戦略的機能を発揮し始めた場合、どの程度まで安全を維持できるのだろう?

 暗黙の答えが形になりつつあるようだ。ロシアはこれらの場所を公表することで、単に情報を提供するだけでなく、明確なメッセージを発信している。メッセージは、事態が深刻化した場合、こうした施設が正当な軍事目標として扱われる可能性があることを強く示唆している。これは紛争の超えてはならない一線の再定義を目的とした計算された警告で、同時に(キーウ支援者に対する一種の「最終警告」として)事態の沈静化を図る試みだとも解釈できる。

 この論理を説明する上で重要な前例がある。イランは、アメリカとイスラエルとの紛争を通じて、敵勢力と結びついた戦略的インフラ、特に中東、とりわけペルシャ湾におけるアメリカと同盟諸国に関連するエネルギー施設や軍事拠点を攻撃する意思と能力を示してきた。これらの行動は、敵の作戦能力を低下させることと、ワシントンとの軍事関係を維持することのリスクについて地域諸国に警告する、二つの中心的目的を持った広範な戦略の一環だった。

 この種の手法は、現代の紛争の性質を根本的に変えるものであると同時に、今日の軍事力学における潜在的な必要性にも応えるものだ。正式な国境に関係なく、敵の補給源、意思決定センター、兵器生産拠点を標的にするのだ。イランが敵の攻撃に抵抗するには、こうした作戦を可能にする近隣諸国の基地やインフラも同時に標的にしなければ効果はなかっただろう。そして今や同じ論理がヨーロッパにも広がりつつあるようだ。

 ロシアはこの手法を取り入れつつあるようだ。ロシアがこの道を進むことを選択した場合、潜在的標的リストの大幅拡大を阻む明確な技術的または戦略的障壁は存在しない。ウクライナの軍事行動に直接または間接的に関与している限り、複数国にまたがる産業インフラ、研究センター、サプライチェーンも、この新たな「正当な標的」の解釈に含まれる可能性がある。

 これは欧州を困難な立場に置くことになる。キーウの戦争努力への関与を深め続けることは、自国領を含むあらゆる場所でのリスク増大を受け入れることを意味する。最終的に、ロシアとの緊張緩和に必要な条件を作り出すには、戦争への共同参加を終わらせるしかないことを欧州指導者たちは認識しなければならない。

 核心は、この紛争が事実上、既にウクライナ国境を越えて拡大している点にある。問題は、この拡大が経済・物流分野にとどまるのか、それともより直接的な武力衝突へと発展するのかだ。モスクワは、自らに選択肢があり、必要と判断すれば躊躇なく、それを検討する姿勢を明確に示したいと考えているようだ。

 こうした状況下で、キーウ支援を直接的な結果を伴わない活動として扱うことに欧州が固執するのは、危険な賭けになる可能性がある。この新たな論理が徹底的に追求されれば、欧州大陸は単なる間接的主体でなくなり、遙かに大きなリスクにさらされることになる。

 ロシアは今回も慎重な行動を取り、敵国に緊張緩和の機会を繰り返し与えている。標的リストを公表して、モスクワは攻撃可能な場所を把握しており、攻撃を行う正当性と能力の両方を備えていることを明確に示している。それでもなお、ロシアは先手を打つのではなく、事前に警告を発し、相手の反応を待っている。

 ヨーロッパとの戦争をロシアが望んでいないのは明らかだが、善意を示すのに疲れ果てている。今や必要とあらば、より過激な手段を取る用意があることを示そうとしているようだ。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/04/23/is-the-logic-of-the-middle-east-conflict-reaching-europe/

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  孫崎享氏のメルマガ題名
米イラン関係、「イランの降伏も政権交代ももたらさない』ハース米国外交協会名誉会長「平和と戦争の狭間で膠着状態。交渉は保留状態。ホルムズ海峡は封鎖。戦争は、不安定な停戦が無期限に延長されたことで、ほぼ中断状態。トランプにエスカレーション、漂流、交渉の選択肢。降伏させれない。
 植草一秀の『知られざる真実』
朝三暮四で若者騙す財務省

2026年4月25日 (土)

解き放たれた熊:ロシアの警告とNATOの約束と西欧の危険な自己満足



ロレンツォ・マリア・パチーニ
2026年4月23日
Strategic Culture Foundation

 クマは挑発され、挑発が続いたらどうするか繰り返し、明確に警告している。

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警告

 ロシア国防省が欧州のドローン製造施設を公表したことは、モスクワの情報戦略における質的転換点を示している。名指しされていない敵国に向けられた一般的脅迫とは異なり、今回の措置は特定国(NATOの東部国境に位置する国も含む)の施設を名指しし、それらの活動をウクライナ紛争への直接的関与として位置づけた。ロシアの軍事ドクトリンでは、第三国によるこうした関与は、解釈によっては報復措置の根拠になり得る。

 リストにはリトアニア、ラトビア、ポーランドと西ヨーロッパ諸国の施設が含まれていた。これら施設を単に監視するのではなく公表するという選択は意図的なエスカレーションのシグナルを示唆している。ロシアは監視能力と政治的費用が許容範囲内だと判断すればNATO領土への攻撃も検討する意思の両方を示しているのだ。これが信頼できる脅威なのか、それとも心理戦なのか、まさにこの点がNATOの計画立案者たちが真剣に向き合わざるを得ない問題になっている。

 この状況を特に深刻にしているのは、ロシアによるウクライナ防衛産業インフラ攻撃という、より広範な背景にある。モスクワは、敵対地域深くへの長距離精密攻撃を実行する意思と技術的手段の両方を示した。もはや問題は、ロシアがこれら標的を攻撃できるかどうかではなく、NATOの抑止力が、ロシアに攻撃を思いとどまらせるほど強固なものかどうかだ。
 
第5条は、保証なのか、それとも祈りなのか?

 北大西洋条約第5条は集団防衛の要となる条項だ。同条は、加盟国の一つに対する武力攻撃は全加盟国に対する攻撃とみなされると規定している。しかし、この条項を詳しく読んでみると、世間の評判ほど絶対的なものではないことがわかる。同条は加盟国に戦争を義務付けるものではなく、各加盟国が、その行動には武力行使も含まれる「必要と判断する行動」を取ることを求めているに過ぎない。

 ロシアがバルト三国(例えばリトアニアやラトビア)を攻撃した場合、直ちに問われるのは第5条が適用されるかどうかではなく、どれほど迅速かつ断固として、そして誰が発動するかということだ。過去の事例は慰めにはならない。2014年にロシアがクリミアを併合した際、NATOの対応は慎重かつ遅いものだった。2008年にロシア軍がジョージアに侵攻した際も、西側諸国はトビリシを言葉では支持していたにもかかわらず集団的軍事対応は一切なかった。

 バルト三国は特に脆弱な立場にある。スヴァウキ回廊(ベラルーシとカリーニングラードを結ぶ約100キロの回廊)を除けば、NATO本土と陸続きの国境を接していない。ロシアの計画立案者たちは、この回廊を潜在的な要衝として長年特定してきた。この回廊を迅速に遮断する作戦をロシアが実行すれば、NATOは第5条の協議が完了する前に既成事実を突きつけられることになる。第5条が適用されるか否かという法的問題は、現場の状況によって無意味なものになる。

 バランスとエスカレーション管理の問題も存在する。リガのドローン工場に対するロシアの巡航ミサイル攻撃は地上侵攻とは異なる。NATO加盟国は対応を迫られる強い圧力に直面するだろうが、対応の性質と規模は内部で激しい議論が交わされるだろう。核保有国との直接衝突へのエスカレーションを避けるため、自制を主張する国もあれば、断固とした軍事的対応を求める国もあるだろう。平時における最大の強みである合意に基づく意思決定は、危機において最大の弱点になる。
 
イランの教訓と誰も読まなかった警告

 2024年4月、イランはイスラエル領に対し未曾有の直接攻撃を仕掛けた。イランから300機以上のドローンと弾道ミサイルが発射されたのだ。この攻撃は、イスラエル、アメリカ、ヨルダン、イギリス、フランスが連携した作戦により驚異的効率で迎撃された。西側メディアはこれを、同盟国の防空能力の勝利として報じた。

 だがロシアの戦略家にとって、この出来事は別の教訓をもたらした。NATO加盟欧州諸国の迎撃への貢献は控えめなものだった。ウクライナへの移転で既に逼迫していた防空兵器の保有量は限界を露呈した。更に重要なのは、国家主体が発射した兵器を物理的に撃墜するという直接的介入への政治的意思が、NATOの中核加盟国でさえ普遍的ではなかったことだ。欧州の複数政府は、地域情勢の悪化を懸念し、参加を拒否した。

 欧州の敵国がNATO非加盟国に対するイランの挑発行為に対してさえ、一貫した対応を取るのに苦労していることを観察すれば、アメリカの指導力のない欧州NATOは、公式な兵力数から推測されるほど手ごわい相手ではないとロシアは結論づける可能性がある。欧州の軍事力と政治的意思の両方が過大評価されているというこの判断は、モスクワが戦略的利益圏と考える領域におけるリスク・テイキングのハードルを下げるかもしれない。

 2021年12月17日、ロシア外務省はアメリカとの条約草案とNATOとの条約草案の二つを公表し、数週間以内の署名を要求した。これら文書は直接的な内容が際立っていた。NATO東方拡大の停止、1997年以降に加盟した国々からの同盟軍と兵器の撤退と、NATOがロシア国境に攻撃システムを配備しないという法的拘束力のある保証をロシアは要求した。

 プーチン大統領はこれら要求に明確な警告を添えた。西側諸国が「攻撃路線」を続けるなら軍事的措置が必要になると述べた。ロシア国境付近における米軍とNATO軍の増強、および大規模演習の実施は、ロシアの安全保障に対する深刻な脅威だと指摘した。西欧諸国のミサイルがロシアの近隣諸国に配備されれば、それは容認できない挑発で、対応が必要になると明確に述べていた。

 振り返ってみると、西側諸国の反応は驚くほど自己満足的だった。高官連中は要求を全く受け入れられないものとして一蹴し、中には身勝手なプロパガンダだと評する者もいた。懸念事項が解消されなければ、モスクワは軍事行動を起こす用意があるという可能性を真剣に受け止める者はほとんどいなかった。それから10週間も経たないうちに、ロシア軍はウクライナに侵攻した。

 2021年12月のプーチン大統領の警告を真剣に受け止めなかったことは、西側諸国の戦略文化に根深く存在するいくつかの病理を反映している。第一に、鏡像関係に固執する傾向、敵対国も西側諸国と同様の費用対効果分析を行い、西側諸国の意思決定者が非合理的と判断するようなリスクは冒さないだろうと想定する傾向が根強く残っていること。第二に、官僚的かつ政治的インセンティブ構造において、警告を発した当局者は、誤報に対して罰せられるが、誤報に対して、ほとんど責任を問われないこと。第三に、そしておそらく最も危険なのは、一種の文明的傲慢さ、衰退しつつあるロシアが、大西洋同盟の結束した力に立ち向かう勇気など持ち合わせていないという確信だ。

 これらの問題点はいずれも今日も依然存在している。ロシア国防省による欧州のドローン施設に関する現在の警告も、2021年に完全に失敗したのと同じ欠陥がある分析フィルターを通して処理されている。

 ロシアがNATO領内のドローン製造施設を攻撃した場合、たとえ通常兵器による攻撃であっても、たとえ精密攻撃であっても、影響は甚大となる。まず最も直接的な影響は政治的なものだ。NATOは即座に集団的対応を求められることになり、それに伴う内部の緊張や分裂も避けられない。ロシアと国境を接する国々、すなわちバルト三国、ポーランド、フィンランドは動員を開始するだろう。一方戦線から遠い国々は慎重な対応を勧告するかもしれない。

 経済的影響は甚大だ。市場は欧州全域に及ぶ戦争の可能性に反応する。2022年以降の環境下で既に構造的に高騰しているエネルギー価格は急騰する。欧州各国政府は再軍備を加速させるという抗しがたい国内圧力に直面するため、防衛関連株は急騰する。ウクライナ紛争との近さにより既にストレスを受けている東欧社会の社会構造は深刻な緊張に直面する。

 より根本的な問題として、ロシアがNATO領土への攻撃を成功させ、それに対する相応の軍事的対応がなされない場合、同盟の抑止力の信頼性は完全に崩壊する。モスクワ、そして事態を注視するあらゆる現状変更勢力へのメッセージは、NATOの保証は条件付きで、同盟はエスカレーションのリスクを冒すより攻撃を受け入れることを選択し、ルールに基づく秩序に挑戦するハードルはこれまで考えられていたより低いということになる。このような信頼性の崩壊がもたらす長期的影響は、いかなる攻撃による直接的な物理的被害をも遙かに凌駕するだろう。  
アメリカは来るのか?

 今日、欧州の安全保障関係者の間で最も厄介な問題は、ロシアがNATO領土を攻撃する可能性があるかどうかではなく、攻撃した場合、アメリカが即座に断固対応するかどうかだ。75年間、答えは「イエス」だと考えられてきた。だが今その前提が初めて本当に疑わしくなっている。

 2016年以降のアメリカ戦略論争の展開は、かつて揺るぎない確信があった場所に不確実性をもたらした。アメリカの政治主流派からは、国防費目標を達成しない加盟諸国に対するNATOの姿勢の価値を疑問視する声が上がっている。アメリカの戦略文化に常に存在しながら、長らく国際主義的合意に従属してきた「アメリカ・ファースト」の伝統が、強力な勢力として再び台頭してきた。ヨーロッパの首都は、第5条が選択的に、あるいは条件付きで、あるいは戦略的に無意味になるほどの遅延の後に適用される可能性に直面せざるを得なくなっている。

 欧州の対応は、遅ればせながらも真摯な防衛力強化の加速だった。ドイツの「ツァイテンヴェンデ」(時代転換)、フランスの戦略的自律性への新たな重点、北欧諸国のNATO加盟、そして同盟全体における防衛費の大幅な増加は、欧州の安全保障を、ワシントンに完全に委ねることはできないという認識の高まりを反映している。しかし、現在の欧州の軍事力と、ロシアによる大規模通常攻撃を独自に抑止、または撃退するために必要な戦力との間のギャップは依然大きく、その差は数ヶ月ではなく数年単位だ。

 その間、欧州各国政府は不確かなアメリカの保証への依存と自国の防衛能力の欠如という危険な状況の中をうまく立ち回らなければならない。これは戦略目標の実現のために軍事力を行使する意思と能力の両方を示す敵に立ち向かうのに決して楽な立場ではない。

 欧米メディアには、ロシアの警告を、本質的に滑稽なものと捉える論調がある。それは、衰退しつつある大国の空虚な虚勢で、虚勢は何度も見破られ、超えてはならない一線は何度も引き直された結果、もはや意味をなさなくなっているという見方だ。この見方には、ある種の修辞的魅力がある。だが同時に、極めて危険なものでもある。

 経済的、軍事的苦痛に対するロシアの耐性は一貫して西側諸国の予測を上回ってきた。2022年以降に課された制裁体制は、急速な経済崩壊を引き起こすと予想されていたが、実際は適応や方向転換や本物の回復力を示す戦時経済を生み出した。ウクライナ紛争初期段階における軍事的後退は、ロシア軍の無能さの証拠として広く解釈されたが、その後、西側諸国から供給された膨大な量のウクライナ軍需物資を消費する消耗戦が続いている。

 ロシアの忍耐を嘲笑し、超えてはならない一線の度重なる引き直しを、自制ではなく臆病さの証拠と解釈するのは、戦略的論理の誤りだ。ロシアは一貫して、NATOとの直接対決を避ける手段で目的を達成することを好んできた。だが西側諸国の挑発に対するロシアの寛容さは無限ではなく、武器供給、情報共有、経済戦争、ロシア国家の正当性を否定する言説といった圧力の着実な蓄積は、ロシアの寛容さを、モデル化が困難で正確に予測不可能な形で試しているのだ。

 大国間紛争の歴史は、相手国が、あまりに合理的、あまりに弱体、あるいはあまりに臆病でエスカレートするはずがないと自らを納得させた当事者による誤算の残骸で満ちている。現在の状況における特有の危険性は、西側の自己満足と、ロシアの苛立ちが収束しつつあることにある。更なる自制は弱さと解釈され、それに応じて利用されるとモスクワが結論すれば、たとえ相当なリスクを伴うにせよ、断固とした行動を取る動機が、慎重さの選好を凌駕する可能性がある。

 この文脈で、ロシア国防省が公表した欧州のドローン施設リストは、単なるプロパガンダ活動ではない。西側主流メディアが政治的な都合と文化的な傲慢さから軽視してきた、エスカレートするシグナルのパターンにおける重要なデータポイントだ。ロシアの忍耐が限界に達した時に軽視の代償を払うのは脅威を嘲笑した評論家連中ではない。脅威を真剣に受け止めてくれると政府を信じていた国々の国民が代償を払うことになる。

 ロシアからの露骨な合図や、NATO内部の信頼性問題や、アメリカの戦略的不確実性や、西側諸国の慢心といった要素が重なり合い、冷戦の最盛期以来最も危険な脅威環境が生まれている。適切な対応はパニックに陥ることではないが、欧米主流派の多くが現在陥っているような現実を軽視する自信過剰も決して許されない。

 率直に言って、自ら招く戦争で、本当に滅びたいのかどうかを欧州連合が自問自答し始めるべき時が来たのだ。

 挑発されて、挑発が続いたらどうするかを熊は繰り返し、はっきりと警告してきた。問題は、これらの警告が信頼できるかどうかではない。問題は、事態が答えを示す前に、西側諸国がこれら警告を真剣に受け止めるために必要な戦略的明確さを見出せるかどうかだ。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/04/23/bear-unbound-russia-warning-nato-promises-and-dangerous-complacency-of-west/

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 アメリカ出張時、フレデリック・ポールが著名SF作家とは知らず、たまたま書店で『チェルノブイリ』ペーパーバックをみかけて購入、ホテルで読みふけったことを思いだす。日本語翻訳は講談社から文庫が出されている

 事故が起きたのは、1986年4月26日午前1時23分(モスクワ標準時)。

 当ブログでは、2011年3月26日 (土)下記記事を公開した。

原子力開発体制の欠陥-V・レガソフ手記

2026年4月18日 (土)

戦争の根本原因:ロシアとイラン、二つのシナリオ、アメリカにとっては同じ選択



2026年4月10日
論説
Strategic Culture Foundation

 並外れた勇気と力でイランは侵略者を封じ込めることに成功した。

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 ウクライナ紛争であれ、ペルシャ湾紛争であれ、外交を成功させるためには、ワシントンは戦争の根本原因に正面から向き合う必要がある。

 究極的に、それは、自らの帝国主義的行為が紛争の原因であることをアメリカが認識することを意味する。また、他国に対し、不当な意思を押し付ける権威や軍事的優位性をもはや持たない事実をアメリカの支配者連中が受け入れることも意味する。

 今週末、アメリカ・イラン代表団による協議がイスラマバードで開始され、中東で40日間続く戦争の終結を目指す予定だ。今週発効した部分的停戦は、レバノンで虐殺行為を繰り返すイスラエルの違反行為によって既に危機に瀕している。違反行為の責任の一端はアメリカにもあるとイランは非難しており、その結果、テヘランは再びホルムズ海峡を世界の石油輸送に対して閉鎖した。

 パキスタンでの交渉は、和平合意を見出すための二週間の停戦を基盤としているはずだった。だがアメリカ・イスラエルによる重大な停戦違反で、この不安定な外交が今後どれほど進展するか疑わしい。ペルシャ湾を挟んだアメリカ・イスラエル施設、特に石油・ガス施設に対する軍事攻撃を再開する用意があるとイランは警告している。戦略的に重要な航路をイランが開放しなければ戦争を継続するとドナルド・トランプ大統領も恫喝している。

 トランプは何も要求できる立場にない。支持率の急落、支持者層の反発、エプスタイン小児性愛スキャンダルの余波など、国内の政治危機に彼は悩まされている。更に、無謀な戦争行為による経済的反発も高まっている。軍事面では、アメリカは300億ドルもの費用をかけて膨大な兵器を消費し、イランとの戦争を継続するための弾薬が枯渇してしまった。しかも、これら全てが戦略的利益を全くもたらさなかったのだ。半世紀前のベトナム戦争での敗北以来、アメリカの国際的イメージがこれほど傷ついたことはない。

 疑う余地のない事実は、イランがホルムズ海峡の支配権を維持していることだ。ホルムズ海峡は世界の石油や他の石油化学製品輸送量の20~30%が通過する航路だ。これはイランの切り札で、イランがこれを保持している事実こそが軍事衝突で実際どちらが勝利したのかを明確に示している。戦争に勝利したとトランプが自慢するのは空虚な主張で、彼を一層滑稽に見せるだけだ。

 2月28日にトランプ大統領が戦争を開始した際、彼は政権交代から無条件降伏まで、あらゆる類の強権的要求を突きつけていた。その後、イランが停戦を懇願したと主張したのは滑稽極まりない。戦争が世界経済とアメリカのオイル・ダラー体制に与えた壊滅的影響により、トランプ大統領は紛争からの撤退を必死に模索せざるを得なかったのだ。

 寛大にもイランは停戦に同意したが、一定条件を付けた。その条件には、アメリカによる地域侵略や軍事駐留の恒久的停止やイランがホルムズ海峡の支配権を維持することなどが含まれており、これにより、ワシントンとその代理勢力イスラエルと湾岸アラブ諸国によって引き起こされた破壊に対する金銭的賠償の仕組みが構築されることになる。

 イランに対する数々の戦争犯罪や大量虐殺の脅迫を含むトランプの犯罪的な無謀な行動は歴史的転換点をもたらした。イランは中東におけるアメリカの帝国主義的地位を崩壊させ、もはや後戻りすることはない。1979年のイラン革命以来、約50年、アメリカと地域の代理勢力は戦争、暗殺、経済テロや破壊工作でイランを打倒しようと試みてきた。だが、この政策は、過去40日間のイランの驚異的自衛と抵抗によって今や完全に粉砕された。

 イラン国民は条件を提示した。アメリカと代理勢力は侵略を永久に停止しなければならない。今後、アメリカがイランを脅迫で包囲し続けることは許されない。ワシントンが応じなければ、イランはアメリカの帝国主義的利益に対する切り札を、今度は断固たる決意で再び使うだろう。かつてウクライナ傀儡大統領ゼレンスキーを「切り札がない」とトランプは非難した。その言葉がホワイトハウスの傲慢な大口叩きに見事跳ね返ったのだ。

 だが、そしてこれが本質的難問なのだが、アメリカ帝国が自力で軌道修正できるかどうかは疑わしい。従って、現在の停戦が維持され、外交が成功する可能性は低い。平和と外交が成功するためには、アメリカの侵略行為が完全に終結し、ひいてはアメリカ帝国主義的行為自体が終焉を迎える必要がある。帝国は、自らの意思で、あるいは要請に応じて撤退することはない。

 これはウクライナにおける状況と全く同じだ。過去12ヶ月間、4年半に及ぶこの紛争の平和的解決を模索するとトランプ大統領は大々的に語ってきたが、何ら有効な成果は得られていない。紛争が長引いているのは、主要当事者のアメリカが、代理戦争を引き起こした責任を真正面から受け止めようとしないためだ。ワシントンは、問題をヨーロッパ属国や腐敗したキーウ政権に押し付けようとしてきた。

 ウクライナ戦争を終結させるには、紛争の根本原因を解消するための真の合意が必要だとロシアは繰り返し警告してきた。根本原因とは、アメリカとNATOの代理勢力が、数十年にわたり、ロシアに戦略的敗北をさせ、政権交代を強要するために推進してきた侵略政策だ。平和を実現するには、アメリカとNATO属国諸国はロシアの主権を尊重し、全ての国のための集団安全保障体制について交渉しなければならない。

 これはイランがペルシャ湾に関して主張していることと同じだ。侵略行為をやめ、この地域から軍隊を撤退させ、国際法と基本的な人間道徳の下で、完全な権利を享受するに値する主権国家として我々を尊重して扱いなさい。

 ロシアとイランが要求していることは、平和な国際秩序実現のために全く合理的かつ論理的なものだ。問題は、アメリカと、その代理勢力が合理的でなく、本当の平和に関心がないことだ。本当の平和は、帝国主義的イデオロギーや行動とは相容れない。

 イランは並外れた勇気と力で侵略者を封じ込めることに成功した。交渉によって帝国をしばらくの間抑え込めるかもしれない。だが究極的には、大量虐殺を行う帝国が理解できる唯一の言語は敗北だ。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/04/10/root-causes-of-war-russia-iran-two-scenarios-same-choice-for-us/

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 東京新聞 朝刊 特報面  
 トランプ大統領暴走にMAGA派・陰謀論者

 「修正25条で権限剥奪を」

 適用に高い壁 でも指摘

 判断能力 保守派も危機感

 中間選挙後も独断専行 続く可能性

 くすぶる3期目説

 憲法の「抜け道」で実現?

 波風立てず依存強める高市首相

 蜜月だった伊首相は距離
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
科学的根拠に基づいた、お金をかけずに長生きできる5つの秘訣(NYT)①健康と寿命を延ばすことが証明されているのは運動そのもの有酸素運動と筋力トレーニング②健康的な食事、全粒穀物、果物、野菜、赤身のタンパク質③7時間の質の高い睡眠、④楽観主義は寿命を延ばす

2026年4月 2日 (木)

イランに戦争を仕掛けているアメリカのキリスト教シオニストとイスラエルのファシスト指導者連中

モハメド・ラミン・カバ
2026年3月28日
New Eastern Outlook

 敵の宗教的幻想を非難する連中は今や自ら過激な信念に突き動かされているように見える。イラン戦争は、西側諸国の暴力的本質を露呈させた。

 

 2026年2月28日以降、アメリカとイスラエルによる対イラン共同攻撃は戦略的な偶発事象ではなく、イデオロギー的狂信と国際法の崩壊または回避と権力の論理と暴力の体系的な再生産を含む長期戦略の結果だ。この紛争は、戦争がグローバル・ガバナンスの一般的な手段となった強制により支配される国際秩序の残酷な実態を露呈するものだ。
 
国家狂信主義、あるいは戦争神学

 対イラン攻撃を理解するには、アメリカとイスラエルの意思決定機関を席巻しているイデオロギー的変化を分析する必要がある。イスマイル・アリソンが指摘している通り、終末論的宗教的信念が公的行動へと転換され、壊滅的な影響を及ぼしているのだ。にとって「核兵器を保有する宗教狂信者集団が強力な軍隊を用いて聖戦を仕掛けている」。このぞっとするような発言は、テヘランではなくワシントンを指している。これは現在進行中の逆転現象を雄弁に物語っている。何十年にもわたり繰り返されてきた風刺画からかけ離れ、今や軍事化された神学に実質を与えているのは欧米の意思決定機関だ。

 同様に、軍関係者から伝えられた証言によると、将校が部下に対し戦争を神の計画として示し、行政機関に託された神聖な使命とさえ呼ぶという、組織的現象を宗教の自由財団(MRFF)が報じている。MRFF報告によれば、これら将校は、トランプ大統領は「ハルマゲドンをもたらし、イエスが地上に帰還することを示すために、イランで狼煙を上げるようイエスにより任命された」と述べている。宗教と軍事のこの融合は、些末なものではなく、構造的なものだ。それは周辺的な主張ではなく、精神的な基盤だ。

 こうした状況下で、トランプ政権のピート・ヘグセス戦争長官は強迫観念的な主張で敵勢力を「狂った政権」と呼び「預言的イスラムの幻想に囚われている」と非難する一方、彼自身の象徴的世界観は、体に刻まれた「異教徒」という言葉に特徴づけられている。マイク・ハッカビーと共に、彼らはもはや単にイスラエルを支持するだけでなく、中東全体に終末論的構想を投影するキリスト教シオニズムの推進者として現れる。これは敵を絶対的に異質な存在として構築する政治的メシアニズムの一形態を体現している。一方、ネタニヤフ率いるイスラエル政府内では、イタマル・ベン=グヴィルとベザレル・スモトリッチが、地域支配を志向する、暴力を神聖な時間性の中に刻み込む終末論的構想を投影している。これは暴力が歴史的成果の手段となり、イランは戦略目標というよりも、完全な覇権を目指す神話化された物語における節目となる並行する論理だ。彼らは自らを、この救世主的な時間軸の担い手と見なしているのだ。

 このイデオロギーの収斂は、戦争が外交政策の合理的計算ではなくなり、信仰や準儀式的営みとなる未曾有の状況を生み出す。つまり、敵の宗教的幻想を非難する者自身が、過激な信念に導かれているように見える、軍事化された信仰行為となるのだ。この枠組みの中では、戦略的合理性は絶対的対決の論理に取って代わられ、破壊はそれ自体が目的になる。結果として、敵はもはや敵対者ではなく、根絶すべき存在になる。政治は破壊の神聖化へ移行し、破壊はイデオロギー的地平への必然的一歩とみなされる。この現象は、西側諸国の権力が自らをどのように認識し行使するかという点で深刻な断絶を示している。
 
組織的な違法行為によって正義は消滅した

 法的観点から言えば、イラン攻撃は国際法の枠組みに完全に収まる。ジェローム・ド・アンプティンヌが指摘する通り、これは自衛の厳格な基準にも国連憲章の要件にも合致しない。イランによる実際の侵略行為や差し迫った侵略行為が存在しないことから、法的論拠は特に脆弱だ。広く議論されている先制攻撃/自衛の概念が、ここでは正当化できない行為を正当化するために持ち出されている。ここで問題になっているのは規範の一方的再定義だ。

 マキシム・プレヴォーが提唱し、多くの西側諸国の指導者が採用した「違法だが正当化される」という定式は何ら問題を解決するものではない。それどころか深い不安を露呈している。違法行為が支配的権力から発せられた途端容認され、規範はもはや拘束力を持つものではなく、単なる修辞的目的のために利用されるに過ぎないことを意味する。こうして法は枠組みとしての役割を失い、事後的正当化のための道具と化す。つまり一部の者は、自らが擁護すると主張する規則を他者に押し付け、その規則を自ら破る権利を僭称する。

 更に、安全保障理事会を迂回する行為は、まさにこのような濫用を制限するために設計された体制が麻痺していることを示している。議会の承認なしに行われたアメリカ介入は、この規制緩和の動きを強める一方、ヨーロッパの同盟諸国は計算された曖昧さに逃げ込み、恣意的な姿勢で特定の対応を「無差別かつ不均衡」と表現することさえある。部分的な非難と外交的慎重さの間を揺れ動き、権力の論理に対抗する構造的能力の欠如を示している。集団安全保障体制は、依然最小限の障害になっているため、事実上回避されている。

 この二重基準は重大な結果をもたらす。恒久的な例外状態、すなわち法よりも力が優先される空間を確立するのだ。この空間では、正当性は権力関係に連動する言説上の構築物となり、時に、いわゆる「人道的介入」の名の下で正当化される。国際秩序は、力が法に勝る恣意的支配の場へと変貌し、可能性として不可逆的な結果をもたらす戦略的アノミーの一形態を定着させる。
 
戦争産業か、それとも混乱の経済か

 イデオロギー的、法的側面を超えて、イラン戦争の物質的現実は、もう一つの真実を明らかにしている。極めて非対称的な政治経済だ。軍事作戦には1日あたり約5939万ドルもの費用がかかる。この金額があれば何百万人ものアメリカ人の医療費を賄ったり、貧困層に食料を提供したりできる。予算に関する説明資料にも記されている通り、破壊行為に費やされる1ドルは、社会の生存のために使われる1ドルを奪うことになる。言い換えれば、この戦争に費やされる1ドルは、困窮している市民から奪われる1ドルだ。この目的論的考察は、費用が社会化され、利益が集中する戦争の政治経済の実態を明らかにしている。

 一方、死者数は増え続けている。1000人以上のイラン人が死亡しており、その中には数百人の子どもも含まれている。ミナブの女子校で多くの子どもが冷酷にも爆殺された。アメリカ兵も、国民の大多数が反対するこの戦争で命を落としている。こうした決定と同意間の乖離は、介入を正当化するために用いられた人道主義的主張と真っ向から矛盾する民主主義の深刻な亀裂を露呈している。

 戦争は、受益者は目に見えないものの、犠牲者は明確に特定できる破壊的営みとして現れる。戦争は、自らの正当化理由と敵と循環を生み出す。欧米諸国が撲滅を主張するテロリズムは、逆説的に、この力学に当てはまる。それは、自らが生み出す暴力を外部化する体制の結果であると同時に、その口実でもあるのだ。

 より広義には、この力学は、西側諸国が現代の紛争の発生と、自らが撲滅を主張する暴力形態の拡散において中心的役割を果たしてきた歴史的流れの一部だ。脅威の捏造から武装集団の拡散に至るまで、介入戦略は不安定な国際環境の構築に貢献してきた。しばしば外部からの脅威あるいは外部の異常事態として描かれるテロリズムも、こうした介入戦略の間接的副産物として現れる。

 この観察結果は、より広い解釈を必要とする。現代の紛争は異常事態ではなく、ある構造の現れなのだ。その構造において、欧米諸国は安定要因となるどころか、混乱の中心的発生源として機能している。イランは、この連続体における単なる一例に過ぎない。つまり、権力の投射、規範の操作や、危機の悪用を基盤とする体制の最も完成された表現なのだ。

 従って、イランで起きていることは単なる戦争ではなく、権力投射、規範の操作、危機の道具化という三位一体を中心とした組織的暴力に基づく体制が露呈したことは言うまでもなく、全てが衰退しつつある覇権に奉仕するためなのだ。

 モハメド・ラミン・カバは、パンアフリカ大学ガバナンス・人文社会科学研究所のガバナンスと地域統合の地政学専門家

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/03/28/christian-zionists-in-america-and-the-fascist-leaders-of-israel-are-waging-war-on-iran/

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 トランプのことを、ジョン・ミアシャイマー教授はMad King、ジェフリー・サックス教授はfoolとYoutube番組で呼んでいる。正論。

 デモクラシータイムス
<正気失い トランプ遁走> イラン撤退/西欧離反/建軍ミサイル/万博バス【山田厚史の週ナカ生ニュース】 1:35:50

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