アメリカのカリブ海での軍事力増強はガザ和平を妨害するイスラエル戦略の一環?石油とマチャドとベネズエラ政権転覆

ホアキン・フローレス
2025年11月29日
Strategic Culture Foundation
ネタニヤフにとって、従順なベネズエラ政府は、彼に都合の悪い様々な統合枠組みの一部に対し有利な立場に立てる可能性があるのだ。
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なぜアメリカ海軍はベネズエラを直接攻撃せず威嚇姿勢をとっているのだろう。この問いに答えるには、意外にも意外性のない点に目を向ける必要がある。まずは昨年10月。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、ベネズエラ反政府派指導者マリア・コリーナ・マチャドのノーベル平和賞受賞をいち早く個人的に祝福した人物の一人なのは誰の目にも明らかだ。これに倣った主要国指導者は、アルゼンチンのミレイとドイツのメルツしかいない。両者はリクードの政治とイスラエルのガザ戦争への無批判同調姿勢で知られ、まさにその点で際立っている。なぜマチャドはこの三人からこれほど称賛されたのか。
公式見解では、ベネズエラのジャングルに潜む、イランの支援を受けたレバノンのヒズボラの隠れた細胞をマチャドが一掃するとされているが、これを真剣に受け止める大人などほぼ皆無だ。ほとんど侮辱的で、信じ難く、1980年代の下手な脚本のハリウッドB級映画のようだ。ネタニヤフのベネズエラへの関心は、むしろ石油とイスラエルのエネルギー源多様化の必要性が焦点だ。同時に、停戦と国連安保理決議2803に異議を唱える場合、地域的経済正常化のリスクを冒しても、ガザに対する影響力を得ることを狙っている。ベネズエラのような代替案を示すことで、イスラエルは、たとえ政治的影響で供給国からの現在の石油供給が途絶えたとしても、ガザ和平を頓挫させるよう圧力をかける柔軟性を得ることになる。トランプはネタニヤフの戦略に同調しているのか、それとも何か他の動機があるのか?
ベネズエラは世界最大の確認済み石油埋蔵量を保有しており、2024年時点の約3030億バレルはサウジアラビアをも上回る。ドナルド・トランプ・ジュニアとのインタビューで、マチャドはベネズエラ埋蔵量はサウジアラビアより大きいと強調し、ベネズエラ石油をアメリカの利益のために無制限に搾取できると極めて植民地主義的な言葉で語った。彼女は本当にアメリカの利益だけを意味していたのか? ベネズエラ情勢を理解するには、ネタニヤフ首相、トランプとムハンマド皇太子がガザの和平と正常化を巡って抱いている緊張関係を理解する必要があるのかも知れない。

イスラエルは経済、エネルギー、安全保障の面で、今後二つの主要戦略を掲げている。欧州と欧米諸国の支援に頼るか、地域経済に統合するかのどちらかだ。前者は従来の地域的方向性を維持するが、経済的に非効率だ。ベネズエラのような新たな資源がなければ、イスラエルは停滞するリスクがあり、一方、地域パートナーは発展し、サウジアラビアに過剰な影響力を与えることになる。まさにこれが、テルアビブがIMEC(インド・中東・ヨーロッパ経済回廊)と正常化を推進してきた理由だ。安価なベネズエラ産原油入手は、こうした動きを遅らせるか、あるいはイスラエルの交渉力を強化する可能性がある。
第二の戦略は、地域経済統合への積極的関与、アブラハム合意の拡大と、サウジアラビアとの正常化で、これはイスラエルにとって全体的に望ましいものだ。それは既存の欧米諸国との関係は強化するが、その明白さはネタニヤフの交渉力を弱め、ガザをイスラエル領とみなす入植・併合派の過激派を疎外する結果となり国内で政治的に危険な道を進むことを余儀なくさせる。
イスラエルは、輸送拠点としての戦略的地位を確保し、サウジアラビア原油の一部を利用するため、現在の供給国が提供するより有利な価格設定とメカニズムを模索する計画だ。イスラエルは、特にサウジアラビアとの関係において、地域における自国の方向性を変える必要があると認識している。 トランプ大統領の20項目計画の成功次第の、2002年に発足した長年のアラブ和平構想に基づいて、ガザ地区の平和と再開発が実現しない限り、イスラエルとの正常化やアブラハム合意にリヤドは参加するまい。
イーライ・コーエン大臣によれば、イスラエルは、サウジアラビアから自国を経由しヨーロッパに直接石油を輸送する経路を提案した。計画では、700キロのパイプラインをエイラートまで敷設し、そこからエイラート・アシュケロン・パイプライン会社(EAPC)(別名「ヨーロッパ・アジア・パイプライン」)を経由してアシュケロンに至り、最終的に地中海をキプロス、ギリシャを経由してヨーロッパ市場に輸送する。この計画をアブラハム合意を拡大し、この地域におけるイスラエルの戦略的、経済的立場を強化する方策とコーエン大臣は位置付けているが、もちろんイスラエル国防軍のガザ侵攻が大いに阻害したサウジアラビアとの正常化に依存している。この広範な合意は、イスラエルが愛憎入り混じる関係にあるIMECプロジェクト(インド・中東・ヨーロッパ経済回廊)の大きな特徴になっている。
イスラエルにとってアブラハム合意は、理想的には正常化につながり、イスラエルはインドからの製品、中東地域からの石油・天然ガス輸出の主要拠点として、IMECプロジェクトの一環としてヨーロッパ向けに取り組むはずだった。しかしイスラエルがガザを「放棄」しない限りサウジアラビアが正常化に同意しないため、ネタニヤフ首相が20項目計画を遵守しない限りIMECは機能しないだろう。イスラエルとサウジアラビアは共にIMECを望んでいるが、地理的に制約を受けるのはサウジアラビアだけだ。イスラエルの役割は確かにインドとの関係と合致する。それはインドにとって望ましいことではあるが、インド製品のヨーロッパへの輸送を阻む障害を回避する点において根本的なものではない。

イスラエルはIMECを自国の経済的・戦略的立場の中核と見なしているが、回廊の設計はイスラエルの完全支配下にあるわけではない。湾岸諸国、特にサウジアラビアは、エネルギー輸出をイスラエルではなくガザ地区経由にすると選択し、事実上イスラエルを後回しにすることができる。そのシナリオでは、パイプラインや輸送インフラがイスラエル領土を迂回し、イスラエルはエネルギーの流れや地域貿易に対する影響力を大幅に低下させる可能性がある。この可能性は、IMECからイスラエルが得る利益が、湾岸諸国の協力とガザ地区とパレスチナの正常化に関する譲歩に左右されることを浮き彫りにしている。
もしイスラエル国防軍がガザで軍事的・政治的に成功し、パレスチナ人を民族浄化していれば、ガザは事実上イスラエル領となり、イスラエルから独立した代替拠点としてのガザは選択肢から消えていただろう。もしかしたら、このことが、失敗した征服戦争におけるネタニヤフ首相の策略の一部を説明するかもしれない。
サウジアラビアには、まだ別の選択肢があるかもしれない。かつて、サウジアラビアはレバノンに直接石油を輸送するパイプラインを持っていた。1950年に操業を開始したTAPLINEは、サウジアラビア産原油をヨルダンとシリアを経由してレバノンに輸送し、地中海に輸出した。このパイプラインは、一時はレバントの政治経済の再構築を約束した。当時アラムコを支配していたアメリカ企業に建設され、スエズ運河を経由するタンカー輸送をすることなく、サウジアラビア産原油を地中海に輸出することが目的だった。
しかし、1967年の戦争中、シリアはアメリカとの関係を理由にサウジアラビアを罰するため、パイプラインを遮断した。これによりシリア区間が閉鎖され、パイプライン全体が麻痺した。しかし、最近のシリア政権転覆により状況は変化した。

1950年代のTAPLINE経路
イスラエルが将来サウジから原油を輸入する場合でも、現在の供給ネットワークを維持する場合でも、直面する問題は同じだ。ガザ和平計画を後退させ、再び戦闘行為に関与すれば、サウジ計画の実現が阻止され、ブラジルとトルコの躊躇が一層顕著になり、大幅削減、更には停止につながる可能性が高い。
イスラエルによるガザ紛争は、IMECにとって、まさに悩みの種になっている。ガザ紛争はイスラエルとサウジアラビア間の「正常化交渉を阻害」し、回廊の存続を危うくしていると評論家たちは指摘している。
トランプはベネズエラの政権転覆に関心があるかもしれない。あるいは、そうでないのかもしれない。費用対効果の観点から、あるいは現在の体制がトランプにとって非常にうまく機能していることを考慮すると、それを正当化するのは難しい。マドゥロ現政権下でシェブロンは既にベネズエラの5か所で黒字経営をしており、PDVSAと30~40%の株式を保有している。トランプ政権は今夏から2025年8月まで、財務省のOFAC(海外資産管理局)免除措置を発令し、一部の制裁措置は一時停止されたため、事業は継続可能となっている。現在の地政学的局面におけるマドゥロとトランプの明らかな共通認識は、重要な背景を掘り下げた我々の記事「“Are Trump and Maduro secretly friends? Smoke & mirrors in 47’s win-win game in Venezuela”(トランプとマドゥロは密かな友人か? 47のベネズエラにおけるウィンウィンゲームにおける煙幕と鏡)」の基盤になった。
無視できない別の視点がある。既にベネズエラは、ワシントンに完全に都合のいいように機能しているのだ。カラカスを公然と悪者にして、アメリカは実際機能している取り決めを覆い隠している。現時点で、アメリカだけがベネズエラ原油を通常価格で購入できるが、その場合も、取引の全てが小売価格でベネズエラに入金される精製製品で決済されるため、実質的に追加割引を受ける。他の全員が高額プレミアムを支払う。アメリカ以外の購入者は、現在施行されている関税制度に更に25%関税が課せられる。実質的な影響は、ベネズエラをアメリカの事実上の私有埋蔵のようなものにし、見出しで報道されるドラマが示すよりワシントンにとって安価で安全なものになる。
以下は追加情報だ。
8月初旬のVenezuela Analysisによれば
「金曜、アメリカ石油会社シェブロンは、アメリカ財務省による新たな制裁免除を受け、ベネズエラ合弁事業からの原油出荷を再開予定だとシェブロンのマイク・ワースCEOが確認した。」
「今月、我々が関心を持っているベネズエラの事業から限られた量の石油がアメリカに流れ始めるようだ。」[…]
この石油企業幹部は、ベネズエラでの石油掘削と輸出事業の再開は、シェブロンの利益への短期的影響は限定的だが、債務返済の促進につながると付け加えた。ベネズエラでの事業継続をドナルド・トランプ政権に強く働きかけてきたワースは、アメリカ制裁を遵守する同社の決意を改めて表明した。
匿名情報筋は最近ロイターに対し、以前の報道を受けて特定ライセンスが発行されたことを確認した。一般ライセンスと異なり、特定ライセンスは企業に直接付与され、アメリカ財務省に公表されることはない。
「ベネズエラに残る唯一のアメリカ大手石油会社シェブロン社は、制裁対象国である同国に長期的に留まり、適切な時期が来れば経済再建に貢献したいと考えている」とマイク・ワースに関する最近のシェブロン記事でブルームバーグが報じた。こうした曖昧な姿勢は、シェブロン社が何らかの結果に関与することを意味するものではないが、同時に、当面ベネズエラで操業を継続する計画であることを明確に示している。
エクソンモービルは、数十年前にカラカスが国有化改革を施行した後、ベネズエラでの操業を停止すると決定したが、おそらく再び操業を開始する可能性がある。アメリカはいつでもベネズエラに対する制裁を解除する決定を下す可能性があるが、そのためには価格とOPECの政策をうまく調整する必要がある。
制裁により制限されているベネズエラ産原油は、世界的原油価格の上昇を後押しする傾向がある。市場シェアを失うことなく、より多くの原油を高値で販売できるため、OPEC最大の産油国で、柔軟な余剰生産能力を持つサウジアラビアは現在の制度の恩恵を受けている。つまり、アメリカのベネズエラに対する制裁は、総生産量を制限し、アメリカとサウジアラビアの収入と市場への影響力を間接的に強化すると同時に、サウジアラビアにOPEC内での生産と価格管理に関する影響力を与えているのだ。
ここで重要なのは、その背景だ。ベネズエラの原油生産量は約90万バレル/日なのに対し、サウジアラビアの原油生産量は約900万バレル/日だ。つまり、ベネズエラの生産量はサウジアラビアの生産量の僅か10%に過ぎない。ベネズエラが市場に完全復帰すれば、世界的価格下落を引き起こし、サウジアラビアやアメリカなど原油輸出国にとって経済的に不利な状況となるだろう。アメリカは、生産量1,350万バレル/日のうち約400万バレルを輸出している。
ベネズエラの政治構造を再構築したり、シェブロンとPdVSAの合弁事業におけるシェブロンの持ち分を増やしエクソン・モービルを呼び戻したりできるとまだトランプは考えているのかもしれない。マドゥロも協力する意向を示している。しかし、アメリカのエネルギー企業は既に出入りできており、制裁はワシントンの裁量で解除される可能性がある。ベネズエラは依然ドルを保有し、石油取引の大半を米ドルで行っており、2024年の売上高は175億ドルに達する。政権転覆はどんな付加価値をもたらすだろう? アメリカの積極的関与がなければ成功する可能性は低く、公然と攻撃すれば石油インフラが壊滅し、アメリカはリスクの高い軍派遣に巻き込まれることになる。シェブロンは政権交代を推進しているわけではない。現実的に、制裁や脅迫や戦争より貿易と商売を優先しているのだ。
実際、アメリカのベネズエラ産原油輸入量は2025年に増加し、1月には日量約25万バレルに達した。これは2019年の制裁開始以来最高水準の一つだ。またタンカー追跡データによると、輸出量は8月に9ヶ月ぶりの高水準に達し、日量約6万バレルがアメリカ・メキシコ湾岸に輸出された。この増加は主にシェブロンがアメリカのライセンスに基づいて操業を再開したことによるもので、ベネズエラ産原油供給とアメリカ製油所との直接的なつながりを裏付けている。アメリカはベネズエラ産原油の37%を輸入している。
振り返ってみれば、現状のままでほぼ安定していると言えるかもしれない。価格は安定しており、サウジアラビアも満足しているようだ。ベネズエラは合弁事業から非取引的な条件で現物報酬を受け取ることが可能で、CNN報道によると報酬はバレル単位で支払われたという。
「7月、トランプ政権はアメリカ大手石油会社シェブロンに、ベネズエラ産原油の輸出を許可するライセンスを再交渉した。ロイター通信によると、ライセンスの新条件では、シェブロンはベネズエラへの料金とロイヤルティを現金ではなく石油で支払うことが認められ、実質的に同国からのシェブロンの原油輸出量は半減した。」
今のところ、トランプの海軍力増強とカラカスにおける政権転覆への期待は、うまく噛み合っていないようだ。アメリカと産油国はベネズエラの現状に満足しているようだ。カラカス自身も戦争や政権転覆より現状を好んでいる。他に何が影響しているのだろう?
ネタニヤフにとって、従順なベネズエラ政府は、彼にとって都合の悪い様々な統合枠組みの一部に対し有利な立場に立つ可能性があり、少なくとも、彼にとって妥当な将来の選択肢があるように見せかけるだろう。
イスラエルは、アゼルバイジャンからトルコ経由で、カザフスタンからロシア経由で、あるいはブラジルからトルコ経由で輸入される石油に依存している。これらの石油は、ネタニヤフ首相のガザに対する好戦的姿勢により危機に瀕している。加えて、イスラエルはエネルギー供給に関し戦略的権能を有している。トルコが既に行動を起こしていることを示す証拠をいくつか検証する予定だ。第二部では、これら要素を取り上げ、イスラエルのエネルギー供給の本当の仕組み、これら経路がネタニヤフ首相のガザにおける政治的影響力を制限している理由と、マチャドとの特別協定に基づくベネズエラ産重質原油の安定供給が、アメリカには解決する動機皆無で、むしろ反対しているように見える問題を解決する可能性がある理由を考察する。
次回の記事では、マチャドとネタニヤフ首相の合意内容の詳細や、東地中海やペルシャ湾からの不定期再展開を含む、ベネズエラに対する最近の米海軍の姿勢の背後にある論理に焦点を当てる。カラカスにおけるアメリカ主導の政権転覆を通じてベネズエラをイスラエルに開放すれば、イスラエルに信頼できる代替ルートを与えることになり、トランプ大統領自身のガザ開発計画を阻害することになるだろう。しかし空母群は依然地平線のすぐそばで停泊を続けている。
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/11/29/is-us-caribbean-buildup-part-of-israel-strategy-derail-gaza-peace-oil-machado-and-venezuelan-regime-change/
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