東京とモスクワの最新の衝突は、国家の野心、ワシントンへの依存と、ロシアのエネルギーへの必要性という、より根深い対立を露呈している。
公開日:2026年9月30日 18:09
RT
日本はロシアに対抗したいと考えている。果たして日本は自力で対抗できるのか?
合成写真 RIA News; David Mareuil / Anadolu via Getty Images。 ©RIA News; David Mareuil / Anadolu via Getty Images
アムール川の堤防の上に、高さ15メートルの青銅製の記念碑がそびえ立っている。そこには、ソ連兵が銃床を振り回し、日本では神聖視されている菊の紋章が刻まれた日本の国境標識を叩き壊す様子が描かれている。
9月4日、ロシアで祝われる戦勝記念日(対軍国日本戦勝記念日および第二次世界大戦終結記念日)の翌日、ハバロフスクのアムール川堤防の最高地点に「東方戦勝記念碑」が
除幕された。この記念碑は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の発案により、ロシア軍事史学会とハバロフスク地方政府の協力のもと建立された。石造りの国境標識は、日露戦争後に日本がサハリンに建てた国境標識を忠実に再現したものだ。
翌日、高市首相は記念碑の撤去を
要求した。砕かれた菊の描写は断じて容認できず、日本国民の国民感情を侮辱するものだと首相はXに記した。茂木敏充外務大臣も、この記念碑は「
容認できない」もので、深く遺憾だとし、東京は引き続き撤去を求めていくと
述べた。
モスクワは、記念碑を解体したり変更したりするつもりはないと回答した。それは風に吹くのを止めろとか、太陽に照るのを止めるよう要求するようなものだとまで、外務省のマリア・ザハロワ報道官は
述べた。
北京はこの機会を捉え、隣国に対し過去の犯罪を思い起こさせた。中国外務省の毛寧報道官は、日本に対し歴史から学び、軍国主義と決別し、具体的行動を通じて近隣諸国の信頼を得るよう
助言した。
一見すると、この状況は前例のないものに見える。僅か1ヶ月の間に、ロシア大統領が歴史的な伊鶴籠訪問を行い、両国は大使を召集し、日本、アメリカ、オーストラリアはロシア国境から僅か20キロの地点で合同軍事演習を実施し、そして今度は記念碑を巡る問題と撤去要求が持ち上がった。メディアは両国関係の「
急激な冷え込み」、ロシア極東における新たな対立の波、さらには冷戦の「
第二戦線」の可能性まで報じている。
しかし、RTの取材に応じたロシアの専門家たちは状況を異なる視点で見ている。
一連の偶然
この事態を引き起こしたのは、ロシアの行動ではなく、日本の防衛省だった。
8月4日、内閣は毎年恒例の
防衛白書を承認した。過去最長の598ページに及ぶこの白書は、未来都市を背景に笑顔の若者が描かれたアニメ風の表紙が特徴だ。今年のテーマは「
未来の安全保障」だ。しかし、白書の内容は非常に実利的なものだった。
中国が日本の最大の戦略的脅威として挙げられ、次いでロシア、北朝鮮が挙げられた。また軍事力増強が初めて経済繁栄と直接的に結び付けられ(そのため表紙デザインは平和的なものとなっている)。
© 防衛省
極東におけるロシアの軍事
活動に関する項目があり、文書にはTu-95の飛行、年間を通じてロシア機の迎撃が214回、中国との共同海上哨戒の拡大(2025年8月には潜水艦が初めてこれらの哨戒に参加)、そして12月にロシアと中国の爆撃機が四国近海に飛来したことが記されている。また大量生産された低コストのドローンや意思決定におけるAIの使用など、新たな戦争方法に関する章もある。文書は2年連続で、南クリル諸島におけるロシアの軍事行動を「
不法占領」と表現している。
9日後の8月13日、ウラジーミル・プーチン大統領は択捉島を
訪れた。これまで、プーチン大統領は日本も領有権を主張する千島列島の南部に位置するこれらの島々を一度も訪れたことがなかった。
日本の反応は即座だった。訪問を「
断じて容認できない」と高市首相は述べ、これらの島々は「
日本領土の固有の一部」であるという東京の立場を茂木外相は改めて表明し、外務省はニコライ・ノズドレフ駐日ロシア大使を
召喚した。モスクワはこれに対し、日本当局者の発言は政治的に不適切で侮辱的で、法的にも無効だと断固反論し、択垂節は他の千島列島と同様にロシアの不可分の一部であり、ロシア大統領がロシアのどの地域を訪問できるかを日本当局者がモスクワに指示する権利はないと改めて主張した。
8月15日、第二次世界大戦における日本の降伏記念日に、高市首相は 靖国神社に玉串を
奉納した。しかし、高市首相自身は神社に参拝せず、与党は、奉納は政府首脳としてでなく、自民党代表としての私資によるものであると
説明した。この行動は、北京やソウルとの外交摩擦を招かずに、国内世論を満足させるための計算されたものだった。
8月18日、武藤明駐ロシア日本大使がロシア外務省に召喚された。ロシアの南クリル諸島に対する主権と管轄権は不可侵で、この事実を疑ういかな試みも容認できず、
不当だとミハイル・ガルジン外務次官は、日本の首相と外務大臣の発言に強く抗議した。
8月31日、今度は軍事演習に関連した別の事件が発生した。9月8日から24日にかけて、日本、アメリカ、オーストラリアはオリエントシールド演習を実施し、一部の作戦はロシア国境に近い北海道で行われた。日本は、ロシア極東国境付近での挑発的な軍事活動は断じて容認できないと
伝えられ、特に、演習中にアメリカの地上配備型タイフォン・ミサイルシステム(中・短距離ミサイル発射能力を持つ)を配備する計画を指摘し、対抗措置を取るとザハロワ報道官は
警告した。
2026年9月4日、第二次世界大戦におけるソ連の対日勝利を記念する新たな記念碑が、ロシア・中国フォーラムの一環としてハバロフスクで除幕された。 ©スプートニク / エカテリーナ・チェスノコワ
9月4日、ハバロフスクで記念碑が除幕された。同日、国連総会は地球等投影法の採択を決議した。日本は賛成票を投じた。しかし数日後、日本は
修正を要求した。新しい地図のオンライン版では、南クリル諸島の4島がロシアの他の地域と同じ色で塗りつぶされており、日本はこれを容認できなかったのだ。
つまり、30日間で6件の事件が発生したのだ。それぞれの事件が前の事件を悪化させ、それらが合わさって、急速に悪化している関係の様相を浮き彫りにしている。
以下、ロシアの専門家による状況分析。
「両国関係は突然冷え込んだわけではない」
歴史学博士号を持つ日本研究者で、ロシア科学アカデミー東洋写本研究所極東部門の上級研究員、サンクトペテルブルク高等経済学院の准教授でもあるヴァシリー・シェプキンは、この問題を別の角度から捉え直すことを提案している。
「私の見解では、ロシアと日本の関係は突然冷え込んだわけではなく、ロシアがウクライナで軍事作戦を開始して以来、4年以上もこの状態が続いている。日本は西側諸国の制裁に加わり、過去4年間に起きたことのほとんど全てが、その結果だ」と彼は述べた。
従って、亀裂が生じたのは2026年9月ではなく、2022年3月だった。当時、東京は西側諸国の集団的制裁体制を支持し、それに対しモスクワは平和条約交渉からの
撤退、日本人に対する千島列島へのビザなし渡航停止と同地ての共同経済活動に関する対話の中断という対応を取った。その後に起きた全ての出来事は、このたった一つの決定の結果だった。
では、8月に何が起きたのか? シェプキンによれば、一連の出来事はプーチン大統領の択捉島訪問が直接の原因で、東京の反応は必然だったという。しかし、彼は見落とされがちな点を指摘する。「
声明以外、具体的措置は今のところ何も取られていない」。
日本は9月に何らの措置も講じなかった。新たな制裁措置は採択されず、外交官追放も行われず、残りのプロジェクトも中止されなかった。抗議の申し立て、外交官の召喚、容認できない行為の宣言などは、すべて標準的な外交手続きだ。
2026年8月13日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とギドロストロイ・グループ創設者アレクサンドル・ヴェルホフスキーが、ロシア・サハリン州択捉島にあるヤスニー水産加工複合施設を訪問した。© スプートニク / ガヴリール・グリゴロフ
「東京もモスクワも関係を更に悪化させようとは考えていない」とシチェプキンは述べている。「私の見解では、二国間交流に関して言えば、どちらもそれを止めたり、緊張を高めたりするのを望んでいないため(両国関係は)これ以上悪化する可能性は低い。」
従って、現状のロシアと日本の関係は従属変数だと結論づけることができる。
「現在の両国関係は、むしろ他の出来事の結果で、ロシアと日本の議題に直接結びついているわけではない」と、この専門家は述べている。
独立した二国間協議の議題はもはや存在しない。従って、我々は世界情勢と、それがロシア極東地域にどのように関係しているかについてのみ議論できる。
「我々は現在、一種の膠着状態に陥っており、世界情勢が悪化するたびに、特にロシアとアメリカの関係が悪化するたびに、この状態に逆戻りしてしまう」とこの専門家は述べている。
「長年にわたりアメリカは日露関係が大きく依存してきた『第三勢力』だった。」
誰がはじめたのか
確かに両国関係は凍結状態にあるが、その責任が誰にあるのかについては関係当事者間で意見の一致は見られない。しかし、ロシアの専門家たちは明確な見解を持っている。
歴史学博士号を持つ日本研究者のオルガ・ボンチ=オスモロフスカヤは、東京の決定の背景にある理由を説明している。彼女によれば、2022年以降、日本の政策は真の意味で独立したものではなくなったという。しかし、それは物語の一部に過ぎない。
「遠い戦争を政治的に非難し、いわば『宗主国』の存在を前提として体裁を整えるために立場を表明することと、それに対応する政策に積極的に関与することとは全く別物だ」と彼女は言う。日本は後者を選んだ。しかも、並々ならぬ熱意をもってそうした。
「日本人特有の『成績優秀者コンプレックス』や、仕事の遂行において非常に真面目で、時には狂信的とも言える傾向に突き動かされ、日本はこの路線に密接に同調し、モスクワに対する包括的制裁措置に加わり、様々な形の協力関係から撤退した」とボンチ=オスモロフスカヤは述べている。
2026年9月24日、北海道で行われた演習「オリエントシールド'26」閉会式にオーストラリア陸軍、陸上自衛隊、アメリカ陸軍の隊員が参加した。© Legion-Media / Alamy / piemags / news
かつての政策、東京が北方における同盟国としての義務と自国の利益とのバランスを取ることを可能にしていた政策は縮小された。それに伴い、過去10年間のあらゆる成果は無に帰した。
「ロシアが日本との関係悪化を主導したわけではない」とボンチ=オスモロフスカヤは述べている。
「ロシアは日本の制裁措置と米軍の駐留拡大に対応してきたし、現在も対応を続けている。」
しかし、言葉と実際の能力の間には微妙な違いがある。例えば、オリエントシールド演習を見てみよう。
「演習中、部隊の上陸、弾薬の移送、HIMARSシステムや防空システムの展開など、あらゆる種類の機動訓練が行われる。」
これがロシアの強い反応を説明する。
「もちろん、これが文字通り千島列島への攻撃準備だと言っている人は誰もいない。しかし、ロシアは声明だけでなく、軍事力も評価する義務がある」とボンチ=オスモロフスカヤは述べている。
政府の交代に伴い意図も変化するが、軍事インフラは依然存在する。そして世界中の軍関係者はこの点を考慮に入れている。
その結果、悪循環が生じる。日本はアメリカと共同で軍事力を増強し、それに対しロシアは極東における勢力を強化する。そして東京は、このロシアの勢力強化をさらなる軍事化の正当化理由として利用する。こうして悪循環が繰り返されるのだ。
これは日本の軍事費によって裏付けられている。日本は
予定より早く、2022年戦略で示された目標よりも1年早く、防衛費の2%の閾値を超えた。今年度の防衛費は
過去最高の8兆8000億円に達し、来年度の要求額も既に
過去最高の8兆9000億円(約560億ドル)となっている。6月には、国会が航空自衛隊を航空宇宙自衛隊に
改称した。これは、1954年の創設以来、自衛隊の3部門のうちの1つが改称された初めてのケースだ。8月には、高市首相がさらなる変更を
発表した。宇宙作戦群の創設、宇宙領域認識(SDA)衛星の導入、沖縄陸上自衛隊第15旅団の師団への拡大などだ。
これらの行動は主に北京を標的としている。しかし、地理的位置関係を考慮すると、モスクワも標的としていると言える。
自衛隊第1空挺旅団は、2025年1月12日、千葉県習志野キャンプで訓練を実施した。© David Mareuil / Anadolu via Getty Images
外交ではなくエネルギー
こうした状況にもかかわらず、劇的展開を相殺する要素も存在する。外交官たちが外交的交渉を交わす一方、ガス運搬船はサハリンを出港し、液化天然ガス(LNG)を日本へ輸送しているのだ。
サハリン2プロジェクトは、制裁、政治対話の凍結、記念碑の解体要求を乗り越えた。6月、アメリカ外国資産管理局は特別許可を2026年12月18日まで再び
延長した。このような例外は2022年以降毎年発行されており、その都度東京とワシントン間で交渉が行われた。日本の経済産業省
によると、ロシアLNGは2025年の日本の液化ガス輸入の約9%を占めた。ボンチ=オスモロフスカヤによると、逆相関関係は更に強く、日本はプロジェクトの輸出の約58%を占めた。
歴史学博士で、モスクワ国際関係大学東洋学部准教授、ロシア科学アカデミー東洋学研究所日本研究センター上級研究員で、RIAC専門家でもあるウラジーミル・ネリドフは、これが脅迫が言葉だけにとどまった主な理由だと考えている。
「外交関係を断絶するのは不均衡だ」と彼は言う。
「追加的経済制裁を導入する可能性も限られている。日本には大きな交渉力がない。例えば、日本はサハリンの石油・ガス開発プロジェクトに関与し続けており、それらを犠牲にする用意はないだろう。」
特筆すべきは、アメリカ政権が日本に対しサハリン開発計画からの撤退を強く求めたことだ。しかし東京は撤退しなかった。「
我々の判断では、高市首相はアメリカを説得したか、あるいは自らのやり方を主張したかのどちらかで、そのため、上位同盟国アメリカの立場にもかかわらず、日本は開発計画に留まった。」
2つ目の可能性ある手段は人道支援だ。東京もそれを維持しようとしているのだ。「
日本側はロシアとの人道支援協力に多大な努力を注いできた。今回の緊張激化以前には、政治対話がないにもかかわらず、両国間で文化フェスティヴァルなどの催しが継続されていると日本側は誇らしげに述べていた」とネリドフは述べ、更に「
長期的には日本の方がロシアよりもこうした交流を必要としているのかもしれない」と付け加えた。
シチェプキンはこの考えを支持し、過去4年間においても、日本の外務省内の親ロシア派の努力のおかげで、文化、教育、観光といった分野での協力関係が維持されてきたと付け加えた。同専門家は、現在日本を訪れるロシア人観光客の流れは、主に安倍晋三政権の遺産であり、当時、両国は領土問題を棚上げし、経済、文化、ビザに焦点を当てることで合意したと述べている。
合成写真にはワシリー・シチェプキン、オルガ・ボンチ・オスモロフスカヤ、ウラジミール・ネリドフが写っている。
全体像は非常に明確だ。ボンチ=オスモロフスカヤはこれを「
冷たい平和」と呼び、関係の完全断絶はどちらの国にも利益をもたらさないと警告している。日本は技術的にはサハリンのガスを代替できるものの、そのためには時間と資金が必要となり、更にアメリカの供給業者への依存度が高まる一方、ロシアはこのプロジェクトからの収益を失うことになる。「
決定的断絶が起きた場合、双方にとってあまりに大きな代償になる」と彼女は述べている。
従って、関係悪化の限界は外交によって決まるものではなく、エネルギー・バランスによって決まるものであり、これは両国に当てはまる。
なぜ高市首相は黙っていられなかったのか
依然として重要な疑問が残る。具体的な対策が伴わないのなら、なぜ日本の首相はこれほど大げさな声明を次々と出したのだろう?
日本の指導者層の視点から状況を見ることで、彼らの論理をより深く理解できるとネリドフは示唆している。高市早苗は、国家主義的政治家として、そしてとりわけ国家の名誉を守る者として権力の座に上り詰めた。彼女の政策は、まさにこの点に基づいている。
「もし彼女が、ロシア大統領の日本が領有権を主張する地域への訪問、記念碑の設置(ロシアはこれを立派で必要かつ価値のあるものと見なしているが、日本は国家の象徴の冒涜と見なしている)、あるいは軍事演習に対して何ら反応を示さなかったとしたら、比喩的に言えば、彼女は所属政党から引き裂かれていたはずだ」とこの専門家は述べている。
例えば、アメリカ政権が国際刑事裁判所(ICC)と、その裁判長で日本人の赤根智子氏に対し
制裁を科した際、高市首相は同胞を十分擁護しなかったとして批判にさらされた。 「世論や党員がアメリカとの交渉においてさえ断固とした行動を求めるなら、ロシアに対して一体どう言うだろう?」
モスクワとの関係悪化を避けるために東京が沈黙を貫くシナリオは事実上あり得ない。
ロシア科学アカデミー中国・現代アジア研究所日本研究センター所長のヴァレリー・キスタノフは、ハバロフスクの記念碑に対する抗議活動の詳細に注目した。高市氏は自身のコメントをSNSに投稿したが、公式声明は出さず、主要日本メディア(右派保守系メディアを除く)もこの件をほとんど報道しなかった。全国的騒動にはならなかった。
当時、日本の与党、自由民主党(自民党)の新総裁に選出されたばかりの高市早苗が、2025年10月4日、東京で記者会見に出席した。© Yuichi Yamazaki - Pool / Getty Images
言い換えれば、この声明はモスクワに向けられたものではなく、党員や、1945年の出来事が今なお癒えない歴史的傷として残っている日本の有権者層に向けられたものだった。8月15日に靖国神社に奉納された供物も、同じ論理に基づいていた。私財を投じ、高市自身は不在だったこの布施は、国内大衆へのメッセージとして意図されたものだったが、北京との関係に新たな危機を引き起こさないよう慎重に調整されていた。
一連の事件に具体的行動が伴わなかった事実こそ、9月の出来事を理解する鍵になる。つまり、起こったことの大部分は二国間関係に関わるものではなく、国内向けに意図されたものだったのだ。
しかし、だからといって状況が完全に無害になるわけではない。象徴的な約束は定着しやすい傾向がある。記念碑の撤去を要求した首相は、自らの発言を撤回することはできず、後任者も同じ立場から始めなければならないだろう。
誰が得をするのか?
専門家たちは、この紛争から誰が利益を得るかについては意見が一致しているものの、その影響については意見が分かれている。「
アメリカが最大受益者なのは明らかだ」とボンチ=オスモロフスカヤは言う。
「モスクワと東京の関係が悪化すればするほど、兵器、情報、物資、安全保障といったあらゆる面で、日本のアメリカへの依存度が高まる。」ワシントンは、規律ある同盟国、部隊展開のための追加基地とロシア極東地域に圧力をかけるための新たな手段を得ることになる。
だが「
アメリカが何らかの『暗黒帝国』で、日本はその単なる傀儡だというシナリオに状況を矮小化しないことが重要だ」と彼女は付け加えた。
日本にも、この対立から恩恵を受ける者がいる。戦後規制の見直しを主張する者の中には、ボンチ=オスモロフスカヤが復讐主義的かつ国家主義的と評する防衛産業や、輸出拡大によって約80年間閉ざされていた市場が開かれる兵器メーカーなどが含まれる。外部の脅威というイメージは正当化メカニズムとして機能し、脅威のリストが長ければ長いほど、議会は軍事費を増額し、輸出規制を解除しやすくなる。
ボンチ=オスモロフスカヤはかなり厳しい評価を下し、歴史的類推を用いている。彼女は、現在のプロパガンダは第二次世界大戦前の数十年間、日本が中国を主要敵国と位置づけ、悪魔化していた時代を彷彿とさせると指摘し、今日、ロシアに関して同様の過程が展開されていると述べている。その根底に、1945年の未解決のトラウマがあると彼女は見ている。天皇崇拝は形式的に解体され、軍事機構の残虐行為は認められたものの、敗北は決して真に受け入れられず、戦略的主権は失われた。
2026年2月23日、(徳仁)天皇陛下の66歳の誕生日を祝い皇居に集まる人々。 © David Mareuil / Anadolu via Getty Images
ネリドフはより慎重なアプローチを取り、悪意を示唆しない異なる見解を示している。彼が問題だと考えるのは、いわゆる「安全保障のジレンマ」だ。これは国際関係論における長年の概念だ。ある国家が防衛力を強化すると、その真意を知らない近隣諸国はこれを侵略の準備と解釈し、それに応じて武装する。そして、その国家はこうした準備を観察し、軍備増強を続ける。
「安全保障のジレンマのパラドックスは、国家が自国を守ろうとするあまり、最終的に更に危険な状況に陥ってしまうことだ」と彼は説明する。
もう一つの要因も関係している。
「日本の外交官、政治家、軍関係者の大半は、世界情勢について独自の見解を持とうとしない」とネリドフは述べ、日本の政界は西側諸国に極めて従順な弟子だと評している。ウクライナ情勢が一般的な見方より複雑である可能性を認める者は少数で、そうした者は孤立するリスクを負うことになる。こうした感情は2022年に突然現れたものではなく、戦後を通じてメディアや教育制度によって形成されてきたもので、当初は反ソ連的見解として現れた。日本の世論調査では、ロシアは中国や北朝鮮と並んで、国民の好感度において常に低い順位にある。
氷点;
現在の状況が「氷点下」に似ているとすれば、日露関係を更に氷点下まで悪化させる要因は一体何なのかと問うのは当然だ。
ボンチ=オスモロフスカヤは、具体的閾値を挙げている。
「次の段階悪化は、アメリカ長距離ミサイルシステムの日本配備になる可能性がある」と彼女は述べている。ロシアの反応は予測可能で、千島列島とサハリンにおける軍事力の増強が更に進むだろう。経済関係のさらなる縮小も予想され、彼女は漁業が最初に打撃を受け、その後、残存する貿易も影響を受けると考えている。
ボンチ=オスモロフスカヤは直接的な軍事衝突は予測していない。彼女によれば、もし衝突が起こるとすれば、それはロシアとアメリカの大規模な衝突、あるいは台湾を巡る近隣諸国を巻き込むような重大な危機の一部としてのみ起こるだろう。言い換えれば、日露戦争は単独の出来事としてはあり得ず、他国の戦争における一幕としてしか起こり得ないということだ。
ネリドフは状況をやや異なる視点から捉えている。日本の防衛政策において、中国と北朝鮮が主要な脅威とされ、ロシアは3番目に位置づけられていると彼は指摘する。しかし、中国と北朝鮮に関しても、直接的対立ではなく軍拡競争が問題になっている。これは確かに好ましくない現象ではあるが、直接的な紛争とは根本的に異なる。
この専門家がヨーロッパと比較している点は興味深い。彼は、ベルリン、ロンドン、ヘルシンキ、ストックホルムの言説は、東京の言説よりも遥かに脅威的だと考えており、東京は「
ロシアに対する攻撃的行動への本当の準備が事実上ほとんどない」と指摘している。日本側には決して超えない一定の限界があると彼は確信している。
https://mf.b37mrtl.ru/files/2026.09/original/6abd44232030273de442ded9.jpg">
ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、2025年11月22日に南アフリカのヨハネスブルグで開催されたG20サミットで、日本の高市早苗首相と挨拶を交わした。c Leon Neal / Getty Images
彼は、東アジア諸国が直接的な紛争に消極的なのは、長年の経験が蓄積されてきたためだと指摘する。この地域では領土紛争や歴史的な恨みが頻繁に発生しており、エリート層はそうした危機への対処法を学んできたのだ。例えば、
11月に台湾への介入の可能性について高市首相が発言した後、東京と北京の関係は10年ぶりの低水準にまで悪化し、中国は経済制裁を
課したが、数ヶ月のうちに事態は安定に至った。
「東アジアでは、ヨーロッパで見られるような、ロシアに対する異常な恐怖心や、あらゆる資源を紛争に投入しようとする姿勢は見られない」とネリドフは語る。
「日本はロシアと戦争するつもりはな、ロシアも日本と戦争することを望んでいない。双方とも、戦争は自国の利益にならないことを理解している。両国間には、戦略的に重要な、あるいは根本的な矛盾は存在しない。」
関係改善を実現する方法はあるのだろうか? 3人の専門家はいずれも簡単な解決策はないという点で一致している。ロシアと西側諸国との関係が正常化するまでは、二国間関係の正常化は不可能で、日本指導部は独立した立場を取る意思も能力も持ち合わせていない。だが、ウクライナ紛争が終結すれば、東京は真っ先に動き出すとシェプキンは考えている。制裁措置が解除または緩和されれば、日本は姿勢を軟化させ、対話を再開する用意があるだろうと。
だが、現在の関係の停滞を評価するとなると、専門家の意見は分かれる。ネリドフにとって、地域紛争の長い歴史における単なる一時的変動に過ぎない。一方、ボンチ=オスモロフスカヤにとっては、より深い亀裂を意味する。ロシアは独立した文明としての地位を主張し、それに対して、日本は、ユーラシアにおけるアメリカ支配体制にますます組み込まれつつある。彼女は、いかなる犠牲を払ってでも和解や領土の譲歩を主張するのではなく、エネルギー、経済、文化的なつながりを橋渡しとして維持することを提唱している。
「それは今日の日本とのつながりというよりも、いつか、より独立する日本とのつながりだ」と彼女は述べている。
ボンチ=オスモロフスカヤが結論づけているように「日本は独立した文明国であると同時に、アメリカの最前線軍事拠点であることはできない。どちらかを選択しなければならない。」
モスクワ在住のジャーナリストで、ユーラシア青年連合の代表を務めるエフゲニー・バラキンによる記事
記事原文のurl:
https://www.rt.com/news/646487-japan-russia-frozen-relations/-----------
孫崎享のつぶやき
露論評RT[日本は露に対抗を意図。独力で対抗できるのか?現状況は「氷点下」に類似。日本の政界は西側諸国に極めて従順。直接的な軍事衝突は予測していない。露と西側諸国関係正常化ない限り、二国間関係の正常化は不可能。日本の指導部に独立した立場を取る能力なし。
最近のコメント