傲慢と暴力のトランプ帝国

画像は、2025年10月30日にカラカスで開催されたカリブ海における米軍の活動に反対する集会で、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領支持者が着ていたドナルド・トランプ大統領と「ヤンキー・ゴー・ホーム」というスローガンが描かれたTシャツ。(写真:フェデリコ・パラ/AFP、ゲッティイ・メージズより)
大統領最新の国家安全保障戦略覚書は他者に強制する自由をアメリカ主権の本質とみなしている。このまま放置されれば、アメリカを再び苦しめることになる不穏な文書だ。
ジェフリー・D・サックス
2025年12月11日
Common Dreams
最近ドナルド・トランプ大統領が発表した2025年国家安全保障戦略(NSS)は、アメリカの新たな権力の青写真だと謳っているが、四つの点で危険なほど間違っている。
第一、NSSは誇大妄想に根ざしている。つまり、アメリカは、あらゆる主要権力において比類なき優位性を享受しているという信念だ。第二、NSSは極めてマキャベリ的な世界観に基づいており、他国をアメリカの利益のために操るべき道具とみなしている。第三、NSSは、国際法や国際機関を、アメリカと世界の安全保障を共に強化する枠組みとしてではなく、アメリカ主権を阻害するものとして軽視する素朴なナショナリズムに基づいている。
第四、これはCIAと軍を利用するトランプによる暴力的行為だ。国家安全保障問題報告書の公表から数日後、公海上でベネズエラ産原油を積載するタンカーを、その船が以前アメリカの対イラン制裁に違反したという根拠の薄い理由で、アメリカは厚かましくも拿捕した。
この拿捕は、差し迫った脅威を回避するための防衛措置ではなかった。また、アメリカの一方的制裁を理由に公海上での船舶拿捕は到底合法ではない。そのような権限を持っているのは国連安全保障理事会のみだ。むしろ、この拿捕はベネズエラ政権転覆の強制を狙った違法行為だ。これは、ベネズエラで政権を不安定化させるため、トランプ大統領がCIAに秘密工作を指示したと宣言したことを受けての措置なのだ。
威圧的行動によって、アメリカの安全保障は強化されない。むしろ構造的にも道徳的にも戦略的にも弱体化する。同盟諸国を脅かし、近隣諸国を威圧し、国際ルールを無視する大国は、最終的に孤立することになる。
言い換えれば、NSSは単なる机上の空論ではない。急速に大胆な実践に転化されつつある。
現実主義のきらめき、そして傲慢への迷走
公平を期すなら、NSSには長らく待たれていた現実主義の瞬間が含まれている。アメリカは世界全体を支配しようと試みることはできないし、試みるべきでもないことを暗黙のうちに認めているのだ。また、一部同盟国がアメリカの真の利益とは相容れない、費用のかかる戦争にアメリカを引きずり込んだことを正しく認識している。また少なくとも理論上は、大国による強烈な聖戦からは一歩引いている。この戦略は、普遍的政治秩序をアメリカが押し付けることが可能だ、あるいは押し付けるべきだという幻想を否定している。
だが謙虚さは長くは続かない。国家安全保障戦略(NSS)はすぐに、アメリカは「世界最大かつ最も革新的経済」「世界をリードする金融体制」「世界で最も先進的で最も収益性の高いハイテク部門」を有し、これら全てを「世界で最も強力で有能な軍事力」に支えられていると再主張する。これらの主張は、単なる愛国心の表明ではなく、アメリカの優位性を盾に、他国に条件を押し付けことの正当化として機能している。この傲慢さの矢面に立たされるのは様々な小国になりそうだ。他の諸大国を、とりわけ核兵器保有国であるがゆえにアメリカは打倒できないためだ。
教義における露骨なマキャベリズム
NSSの壮大さは露骨なマキャベリズムと融合している。NSSが問うているのは、アメリカと他国が相互利益のためにどのように協力できるかではなく、市場、金融、技術、安全保障におけるアメリカの影響力をいかに活用し他国から最大限の譲歩を引き出せるかだ。
この点は、西半球に関するNSSの議論において最も顕著で、モンロー主義に対する「トランプ的帰結」を宣言している。NSSは、中南米が「敵対的外国の侵略や主要資産の所有から自由であり続ける」のをアメリカが保証し、同盟と援助は「敵対的外部影響力を弱める」ことを条件とすると宣言している。この「影響」は、明らかに、中国の投資やインフラ整備や融資を指している。
NSSは次のように明確に規定している。「アメリカに最も依存しており、従ってアメリカが最も影響力を持つ」国々とのアメリカ協定は、アメリカ企業にとって独占供給契約でなければならない。アメリカ政策は、地域インフラを建設する「外国企業を排除するため、あらゆる努力を払う」べきで、アメリカは世界銀行などの多国間開発機関を「アメリカの利益にかなう」ように再編すべきだ。
中南米諸国政府は、多くがアメリカ、中国両国と広範囲に貿易を行っているが、事実上「中国でなく我々と取引しなければならない。さもないと酷い目に逢うぞ」と告げられているのだ。
このような戦略は戦略的に素朴だ。中国は西半球の多くの国々を含む世界のほとんどの国々にとって主要貿易相手国だ。アメリカは中南米諸国に中国企業を追放するよう強制はできないだろうが、そのような取り組みはアメリカ外交に深刻な打撃を与えるだろう。
親密な同盟諸国さえ警戒するほど露骨な暴力行為
NSSは「主権と尊重」の原則を掲げてはいるものの、その行動により既に、この原則はアメリカの主権と、他の国々の脆弱性に貶められている。この新たな原則を、一層異常なものにしているのは、それが今や中南米の小さな国々だけでなく、ヨーロッパにおけるアメリカの最も緊密な同盟諸国さえも恐怖に陥れていることだ。
注目すべき進展として、アメリカに最も忠実なNATO諸国の一つデンマークが、アメリカをデンマークの国家安全保障に対する潜在的脅威だと公然と宣言したのだ。デンマークの防衛計画担当者は、トランプ政権下のアメリカがグリーンランドに対するデンマーク王国の主権を尊重するとは想定できず、アメリカが強制的にグリーンランドを奪取しようとする事態は、デンマークが今こそ備えなければならない不測の事態だと公言している。
これは様々な意味で驚くべきことだ。グリーンランドには既に米軍のピツフィク宇宙軍基地があり、西側諸国の安全保障体制にしっかり組み込まれている。デンマークは反米主義でもなければ、ワシントンを挑発しようとしているわけでもない。友好国とされるものに対してさえ予測不可能な行動をアメリカが取り始めた世界に対して、単に合理的に対応しているに過ぎない。
ワシントンに対する防衛策を検討せざるを得ないとコペンハーゲンが感じていることは多くを物語っている。それは、アメリカ主導の安全保障体制の正当性が内部から揺らいでいることを示唆している。デンマークでさえアメリカに対するヘッジが必要だと考えているなら、問題はもはや中南米の脆弱性というだけではない。かつてアメリカを安定の保証人と見なしていた諸国が、今やアメリカを潜在的、あるいは確実な侵略者と見なす国家間の信頼の体系的な危機だ。
要するに、NSSは、これまで大国間の対立に費やしていたエネルギーを、小国への威圧に転換するようだ。海外で数兆ドル規模の戦争を起こすことにアメリカが少々消極的になっているように見えるとすれば、制裁や、金融による圧力や、資産の差し押さえや、公海での窃盗といった手段を武器にしたいと思っているのだ。
欠けている柱:法、互恵、礼儀
おそらくNSSの最も深刻な欠陥は、アメリカの安全保障の基盤としての国際法、互恵主義、基本的礼儀への取り組みが欠如していることだ。
NSSは、世界的な統治構造を、アメリカの行動に対する障害とみなしている。気候変動対策協力を「イデオロギー」だと一蹴し、最近のトランプ大統領国連演説によれば、事実上「でっち上げ」だと主張している。国連憲章を軽視し、国際機関を、主にアメリカの意向に沿って動かすための道具とみなしている。だが、歴史的にアメリカの利益を守ってきたのは、まさに法的枠組み、条約と、予測可能なルールだ。
アメリカ合衆国建国の父たちは、このことを明確に理解していた。アメリカ独立戦争後、新たに主権を獲得した13州は、すぐに憲法を採択し、課税、防衛、外交といった主要権限を統合した。これは州の主権を弱めるためではなく、合衆国連邦政府の設立によって主権を確保するためだった。第二次世界大戦後のアメリカ合衆国政府の外交政策も、国連、ブレトンウッズ機関、世界貿易機関と軍備管理協定を通じて、同様の目的を実現した。
トランプ政権の国家安全保障戦略(NSS)は今やその論理を覆し、他者に強制する自由を主権の本質とみなしている。この観点から見ると、ベネズエラ・タンカー拿捕事件とデンマークの不安は、この新たな政策の表れと言えるだろう。
アテネ、メロス、ワシントン
こうした傲慢さは、いずれアメリカを苦しめることになるだろう。古代ギリシャの歴史家トゥキュディデスは、紀元前416年にアテネ帝国がメロス島の小島と対峙した際、アテネ人は「強者はできることをし、弱者は耐え忍ぶべきことをする」と宣言したと記録している。だが、アテネの傲慢さは、同時にアテネの破滅を招いた。12年後の紀元前404年、スパルタによってアテネは陥落した。アテネの傲慢さ、行き過ぎた支配と、小国への軽蔑が、最終的にアテネを滅ぼす同盟を活性化させたのだ。
2025年国家安全保障戦略(NSS)も同様に傲慢な論調で語っている。法より権力、同意より強制、外交より支配を重視する教義だ。アメリカの安全保障は、威圧的な行動によって強化されることはない。むしろ構造的、道徳的、戦略的に弱体化する。同盟国を脅迫し、近隣諸国を威圧し、国際ルールを無視する大国は最終的に孤立することになる。
アメリカの国家安全保障戦略は全く異なる前提に基づくべきだ。すなわち、多元的世界を受け入れること、国際法を通じると主権は弱まるのではなく強化されるという認識、気候、健康、技術に関する世界協力が不可欠だと認めること、そしてアメリカの世界的影響力は強制よりも説得にかかっているという認識だ。
記事原文のurl:https://www.commondreams.org/opinion/trump-national-security-strategy-memo
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