2023年3月24日
ケイトリン・ジョンストン
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欧米の政治/メディア支配階級はイラク侵略20周年に間に合うようロシア・中国間の親密さの高まりを表現するために最近突然「悪の枢軸」という言葉を復活させた。
先週、有名なイラク戦争応援団ショーン・ハニティは中国とロシアとイラン間に「新たな悪の枢軸が出現している」と彼の番組で述べ、以来このスローガンは今週何度も繰り返されている。
火曜日には、ウラジーミル・プーチンと習近平は「無限のパートナーだと言った二人の独裁者」で「これはイランが連中の弟分となる新たな悪の枢軸だ」と元国連大使ニッキー・ヘイリーがフォックス・ニュースで主張した。
また火曜日マイク・ローラー下院議員は「モスクワでの習主席とプーチンの会談は大いに懸念され、この新しい悪の枢軸によりもたらされる脅威の高まりを浮き彫りにしている」とツイートし、木曜日には「我々は新たな悪の枢軸に対処しており、ウクライナでプーチンを止め損なえば、ロシアは更に東ヨーロッパに押し入り、中国が台湾に対して動く広範囲にわたる影響をもたらすだろう」とツイートした。
水曜日テレグラフは「中国-ロシア枢軸」と「北京-モスクワ枢軸」という言葉を組み込んで「習とプーチン、新たな悪の枢軸を構築」という見出しの記事を掲載した。
水曜日にブライアン・マスト下院議員も習主席とプーチンが握手している写真とともに「これは新たな悪の枢軸だ」とツイートした。
木曜日、イギリスのタブロイド紙The Sunは「ボスは誰か? ボディーランゲージ専門家は、プーチンと習の「悪の枢軸」会議に隠されたメッセージを明らかにし、誰が本当に権力を持っているか明らかにした」という題の記事を掲載したが「悪の枢軸」という言葉は実際の本文のどこにもない。
「悪の枢軸」というスローガンは、ジョージ・W・ブッシュが9/11の数ヶ月後に行った好戦的愛国主義演説で最初に悪名高いものになったが、当時はイラク、イラン、北朝鮮に言及していた。翌年アメリカ帝国は世界的軍事拡張主義と中東全域での攻撃的介入主義の新時代を迎え、イラクは廃墟となった。
ブッシュ(そして彼がこの言葉を作り出すのを手伝ったスピーチライター、ネオコン戦争プロパガンダ屋デビッド・フラム)は、アメリカがその一員として連合軍で戦った第二次世界大戦の枢軸国の記憶を呼び起こすため「枢軸国」という言葉を使用した。欧米戦争屋連中は彼らがしたい全ての戦争を第二次世界大戦になぞらえ、彼らの敵はたまたま新たなアドルフ・ヒトラーで、彼と戦おうとする人は誰であれ新たなウィンストン・チャーチルで、戦争に反対する人は誰であれ新たなネヴィル・チェンバレンだと描いてきた長い歴史がある。
この考え方の狙いは、実際の現実生活の複雑な分析をする成人した大人のようにではなく、漫画番組を見る子供のように、全ての人々に善人・悪人の観点で考えさせることだ。アメリカ帝国は何世代にもわたり、第二次世界大戦を純粋な善人対悪人の紛争として描き出してきたので、今やプロパガンダ屋連中は、ペンタゴンの標的はすべてヒトラーで、アメリカとその同盟諸国はヒトラーと戦う勇敢な英雄だと言えるのだ。
そして、それがイラク侵略20周年に、ジョージ・W・ブッシュのタカ派的スローガンを思い出すのではなく、第二次世界大戦を想起させる最近の「悪の枢軸」レッテル復活の背後にある狙いだと思われる。ロシアや中国やイラン、時には北朝鮮のような他の国を指すのに、肝である「悪」の部分なしに「枢軸」という用語の使用が大幅に増加しているように見える。
大量虐殺アザラシ、ジョン・ボルトンは、しばらく「枢軸」を実現させようとしてきた。彼は先月ワシントンポストのインタビューでロシアと中国の関係を指すのにその用語を使用し、そこで彼はまた、我々は既にこれらの国々に対する「世界戦争」をしていると主張した。今週早々テレグラフのインタビューで、ボルトンは「中国-ロシア枢軸」に言及し「イランや北朝鮮などの従者」がいると述べた。
月曜日、ジェイミー・ラスキン下院議員は「ロシア、中国、イランを結ぶ権威主義枢軸」についてツイートした。
水曜日、リサ・マクレーン下院議員は「習とプーチンは、憂慮すべき世界的な脅威をもたらす新しい世界秩序を求めている。西側は、この中露枢軸と、それが自由にとって何を意味するか懸念する必要がある。」とツイートした。
(ここで少々立ち止まり、第二次世界大戦の枢軸国全てとアメリカが連携している今、他の国々が「枢軸」というレッテルを貼られるのはいささか奇妙だと言って良いだろうか?)
木曜日、下院外交委員会公聴会でマイケル・マコール委員長は、開会挨拶でこの視点を推進する世界観に若干光を当てた。
「皆様が強さを投影すれば、皆様は平和を得られるが、皆様が弱さを投影すれば、侵略と戦争を招くことを歴史は示している。ネヴィル・チェンバレンとヒトラーを振り返るだけで十分で、実際時間の経過がその公理を証明している」とマコールは言い「私の判断ではこの同盟は第二次世界大戦で見たものと非常によく似て見え始めている。ロシア、中国、イラン、北朝鮮だ」と付け加えた。
もちろんマコールの考え方の問題は、彼はアメリカが敵国のこの邪悪な「枢軸」形成に対して背後にある唯一の原動力ではなく、単なる受け身の目撃者のふりをしていることだ。ロシアや中国やその他のアメリカに吸収されない政府は、彼等全員に対するアメリカの敵意によって益々緊密にさせられており、地球上の全政府に完全服従を要求する世界規模の帝国から国家主権を守るために、いくつか重要な違いを克服し益々親密な戦略的提携に急速に移行しつつあるのだ。
新しい一番の敵、中国に対し武器として利用する可能性がある従属国としてソ連後のロシアを獲得することを帝国は長年予想してきたが、代わりに正反対のことが起きた。2021年「ロシアは国境問題や中国の台頭のために、ヨーロッパやイギリスやアメリカとより積極的に関与する用意ができており、西側に向かって動く用意が出来ていると何年も聞いている」とアメリカ権力構造の部内者のヒラリー・クリントンはブルームバーグ・ニュー・エコノミー・フォーラムで語った。しかし、そういうことにはなっていない。
「我々はそれを見ていない」とクリントンは言った。「代わりに我々が目にしているのは、中国を更に強く抱擁するプーチンの協調的努力だ。」
この誤った予測がなければ、おそらくロシアの友情を勝ち取るためにもっと努力がなされたはずだ。もしアメリカ帝国支配者連中がモスクワが帝国の指輪にキスして敬意を示すとそれほど確信していなければ、連中は次々の政権の振る舞いで完全従属しか受け入れないと言いながら、プーチン初期の善意の身振りをはねつけ、NATOを拡大し、ロシア国境で攻撃的瀬戸際政策を実行するのを、さほど快適とは感じなかったはずだ。
だが連中が違う要求をしたために、モスクワがワシントンでなく北京と協力すると決定したことについて、マイケル・マクフォールのような気難しい冷戦戦士がうめき声を上げるのを今我々は聞かされなければならないのだ。
「ソ連崩壊後、民主的ロシアは重要な尊敬されるヨーロッパ大国になる可能性があった」とマクフォールは最近ツイッターで不満を述べた。「だがプーチンはロシアを別の方向に押し進め、ロシアをアジア独裁権力の属国に変えた。可能性は無駄になった。しかたがない」
もちろん、これはマクフォールの言い方で「ロシアは中国の属国ではなく、我々の属国になるはずだった!」という意味だ。
実際この騒ぎの全ては、アメリカの一極覇権はどんな犠牲を払っても維持しなければならないという帝国の教義に真っ向から衝突する多極世界の出現で起きている。その最後のビットがなければ、アメリカ帝国が地球を単独支配するのをやめるのはそれほど問題ではないだろうが、アメリカ合州国を凌駕しようとする全ての試みは敵の侵略行為として扱わなければならないという強烈な信念があるために、今世界大国が益々敵対的な二つの同盟集団に分割されて、益々熱い世界紛争が増えるのを我々は目にしている。
これは狂気であり、止める必要がある。
補足:常に秀逸なMoon of Alabamaは、私と同時に、政治/メディア支配階級によるこの言葉使用例を更に多く挙げ「悪の枢軸」スローガン復活に関する独自記事を掲載した。
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記事原文のurl:https://caitlinjohnstone.com/2023/03/24/theyre-rebooting-axis-of-evil-on-the-20th-anniversary-of-the-iraq-invasion/
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