ドイツ:ザクセン=アンハルト州でAfDが勝利した理由と今後の展開

2026年9月8日
Strategic Culture Foundation
エド・ターナー
❗️Telegram
お問い合わせ: info@strategic-culture.su
9月6日に行われたドイツのザクセン=アンハルト州議会選挙結果は主要政党にとって予想以上に悪いものとなった。極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は43.8%の得票率を獲得し、過半数に迫る勢いを見せた。これは世論調査予測を約4%上回る数字だった。
一方、中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)への支持は急落した。得票率は17.2%にとどまり、2021年の37.1%から大幅に低下し、予想を大きく下回る結果となった。
投票率は78%近くに達し、2021年と比べて大幅に上昇した。これはドイツのための選択肢(AfD)にとって追い風となった。 分析によると、支持拡大の要因は主にこれまで投票していなかった層で、それに加えて、かつてキリスト教民主同盟(CDU)を支持していた層も相当数が加わったという。
選挙が二極化して いたこと、つまり事前調査では有権者の41%がドイツのための選択肢(AfD)主導の政権を望み、46%がキリスト教民主同盟(CDU)主導の政権を支持していたことは、いくつかの意外な影響をもたらした。その一つは、社会民主党(SPD)と緑の党にとって有利に働いたことだ。
社会民主党(SPD)と緑の党は、州議会で議席を獲得するために必要な得票率5%を確実に達成するため、キリスト教民主同盟(CDU)と左翼党の有権者から戦術的支援を受けた。
過半数を獲得した場合にのみ政権を担うと表明していたドイツのための選択肢( AfD)は、現在、候補者のウルリッヒ・ジーグムントをザクセン=アンハルト州首相に選出するための複数の道筋がある。最も可能性が高いのは、左派的経済政策と移民問題などの保守的政策を組み合わせた政党、ザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟(BSW)との連携だろう。
選挙当夜、一部分野でAfDの立場と「重複」があること、そしてAfDを政権から完全に排除することは「全く非民主的」であることをBSWは明確にした。
これが失敗に終わった場合、キリスト教民主同盟(CDU)の支援が別の道になるだろう。首相選出は秘密投票で行われ、日曜日に再選されたCDU所属議員数名は、ドイツのための選択肢(AfD)との協力にもっと前向きであるべきだと長年主張してきた実績がある。
社会全体からの支持
ザクセン=アンハルト州において、ドイツのための選択肢(AfD)は、労働者階級有権者(59%)、低学歴層(57%)、経済状況が悪いと感じている有権者(65%)の間で最も高い支持を得た。しかし、大卒者(30%)や経済状況が良いと感じている有権者(37%)の間でも、AfDはまずまずの支持率を獲得した。
また70歳以上(31%)を除く全年齢層で40%以上の支持を獲得した。従って、AfDは社会全体、州全体からの支持を得ている本物の「国民政党」だと主張できるだろう 。
今回の選挙は決して単一争点選挙ではなかった。出口調査によると、移民問題はAfD支持者の動機の一つで、91%が「ドイツに外国人が多すぎるのを非常に懸念している」という意見に同意した。しかし、治安や経済への懸念も同様に重要だった。
2002年からキリスト教民主同盟(CDU)が率いてきた州政府に対しても、有権者の66%が強い不満を抱いていた。しかし、ベルリンのフリードリヒ・メルツ政権に対する評価は更に悪く、83%が一般市民の問題に十分に関心を払っていないと見ていた。ザクセン=アンハルト州の有権者のうち、今後数年間で大いに国を良くできると信頼しているのは僅か20%だった 。
こうした感情はドイツ全土に見られるものの、ザクセン=アンハルト州をはじめとする東部諸州でより顕著で、それに加えて東部特有の不満も存在する。東部出身者は多くの場面で、依然二級市民だとザクセン=アンハルト州の有権者の73%が考えている。
この見解は、AfD支持者の83%に共通している。AfDは、ドイツ再統一に対する不満や、共産主義時代の東ドイツへの郷愁を巧みに利用することに成功している 。
もしドイツのための選択肢(AfD)が政権を樹立した場合、同党が極右的綱領を、どの程度実行できるのか、そして実際に、同党がドイツ国内で明白な「右翼過激派」だというドイツ情報機関の見解を裏付けることになるのかどうか厳しく精査されることに なるだろう。
教育、文化、治安、公共放送といった分野では、政府は積極的に攻勢に出るだろうが、過激な措置に対し、法的異議申し立てが絶えない可能性も十分にある。こうした措置には、学校で教師に特定イデオロギー的立場を表明するよう強制する試みなどが含まれる。
ドイツのための選択肢(AfD)は、この立場を利用して更なる宣伝活動をするだろう。そしてもちろん、裁判所や他勢力により目標達成を阻まれるたびに、既成勢力による陰謀の犠牲者だと主張するだろう。これはポピュリストによく見られる戦術だ。
より広範な政治的影響
この結果を受けて、メルツ首相の立場は更に厳しくなった。どのドイツ首相と比べても異例の不人気ぶりで知られるメルツだが、9月20日に行われるメクレンブルク=フォアポンメルン州議会選挙で支持率が上がる見込みは全くない。この選挙は、ドイツのための選択肢(AfD)と社会民主党(SPD)の一騎打ちになると予想されている。
同日、政治的に非常に分裂したベルリン州では、メルツ率いるキリスト教民主同盟(CDU)が低い得票率で首位を獲得する可能性もある。しかし、それは選挙結果を左右する決定的要因にはならないだろう。
重要なのは彼の党所属議員の多くが改革を要求するだろうことだ。そのほとんどは、ドイツのための選択肢(AfD)が利用できる隙を塞ぐために右傾化を求めるだろう。だが、現在の連立相手、社会民主党(SPD)との連立政権下では、それはほとんど実現不可能だ。
労働者階級有権者の支持率低下を指摘し、秋に決定予定の年金制度改革など主要改革案再開を要求する声もあるだろう。だが、それはメルツが分析する低迷するドイツ経済を立て直すために必要なこととは相容れない。
ザクセン=アンハルト州は、メルツだけでなくドイツ社会全体に対して非常に難しい問いを投げかけているのかもしれない。すなわち、ドイツは政治的にあまりに分裂しすぎ、もはや統治不可能な状態に陥っているのではないかという問いだ。
キリスト教民主党と自由民主党、あるいは社会民主党と緑の党といった容易に手を組める政党同士の連立政権では、連邦選挙で25%の得票率すら得られるまい。そのため、主流政党は、ドイツのための選択肢(AfD)を排除するためだけに、根本的に意見が異なる政党と連立政権を組まざるを得ないのだ。
これら政党は互いに争い、合意に至らず決定を先延ばしにし、そして崩壊する。そして、この負の連鎖から、ドイツのための選択肢(AfD)は利益を得られるのだ。
元記事:theconversation.com
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/09/08/germany-why-the-afd-won-in-saxony-anhalt-and-what-happens-next/
----------
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
①ベッセント財務長官、中国にAI競争で敗れれば「他の全てが無意味に」と警告、②モデル性能:差は年単位から数%へ、スタンフォードHAI ③CIA副長官、中国の脅威にはより広範な諜報活動が必要だと発言、、中国と米国の経済競争は中国企業を正当な標的とする根拠になる
« ウクライナの国防汚職は「長年の伝統」 | トップページ | 対イラン戦争:原油価格が1バレル100ドルに迫る中、依然勝利を願っているトランプ »
「NATO」カテゴリの記事
« ウクライナの国防汚職は「長年の伝統」 | トップページ | 対イラン戦争:原油価格が1バレル100ドルに迫る中、依然勝利を願っているトランプ »



コメント