ミアシャイマー教授:ウクライナ戦争から外交的に抜け出す道はない
ジョン・ミアシャイマー教授、ウクライナ戦争、トランプ外交、9/11で残されたもの、単極体制から多極体制への世界的な移行について論じる。
公開日:2026年9月16日 20:46
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ミアシャイマー教授:ウクライナ戦争から外交的に抜け出す道はない

РИА Новости 、ヤシン・オズトゥルク/アナドル・エージェンシー/ゲッティイメージズ
アメリカ人政治学者ジョン・ミアシャイマー氏はウクライナ紛争は両陣営の目標が相容れないままで、外交的解決はできず、最終的に戦場で決着がつくと主張した。
ミアシャイマー教授はモスクワ訪問中に、外交・防衛政策評議会幹部会議長で、ロシア・イン・グローバル・アフェアーズ編集長のフョードル・ルキヤノフとのインタビューで以下の通り語った。
フョードル・ルキヤノフ:ジョン、もしタイムマシンがメッテルニヒやタレーランのような偉大な外交官を現代に連れてきたら、彼らは流血を食い止め、今日の紛争を終わらせるために何をするでしょうか? 彼らは成功するでしょうか?
ジョン・ミアシャイマー:確かに彼らは有能な外交官でした。ウクライナ・ロシア戦争について言えば、彼らは解決のためにあらゆる努力を惜しまなかったでしょう。しかし、私は彼らには、それはできなかったと思います。あの戦争、ウクライナ戦争は外交的に解決できるものではないと思います。戦場で決着がつくことになるでしょう。
さて、なぜ外交的に解決できないと思うのかと自問自答してみましょう。それは、ロシアの目標がウクライナにとって受け入れられないもので、ウクライナの目標もロシアにとって受け入れられないからです。例えば、ウクライナは、ロシアが併合した領土をウクライナに返還してほしいと望んでいます。
ロシアはドンバス、ザポリージャ、ヘルソンを神聖な領土とみなしています。ウクライナの立場からすれば、ロシアがこれら地域を併合することは断じて容認できません。更に、ウクライナはこれまでの経緯を踏まえて、今後の安全保障のためにNATOまたはアメリカの保証を求めています。
これはロシアにとって到底受け入れられないことです。更に、ロシアは既に併合した領土を手放すことも断じて認めない。これほどまでに大きな隔たりがある中で、どうやって両者の間で外交合意が成立するというのだろうか。ウクライナは、ロシアが併合した4つの州とクリミア半島を手放すつもりは全くないのだ。
そしてロシアは、ウクライナが領土を取り戻すことを決して認めようとしません。更に、ウクライナは欧米諸国の安全保障を求めています。ウクライナはNATO加盟を望んでおり、これはウクライナの立場からすれば理解できることです。しかしロシアはウクライナのNATO加盟を断固拒否しています。そもそもこの戦争の主な原因はそこにあります。このように、ロシアとウクライナは妥協する意思のない重要な問題において真っ向から対立しているのです。
では、どうすれば外交的解決策を見出せるのか?という問いに対する答えは「そんなものはない」です。この問題は戦場で決着がつくことになるでしょう。そして最終的な解決策は、戦争に勝利した者によって決まるのです。
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ロシア軍軍事作戦の最中、前線のハリコフ地区にある陣地に駐屯するロシア軍移動式対空部隊の兵士たち。c スプートニク / セルゲイ・ボビレフ / スプートニク
フョードル・ルキヤノフ:では勝利とは具体的にどのような状態を指すのでしょう?戦争に勝利するということはウクライナ自体を消滅させることを意味するのでしょうか?
ジョン・ミアシャイマー:ロシアがウクライナを滅ぼすとは思いません。それはほぼ不可能だと思います。ロシアがやろうとしているのは、ウクライナ領土のかなりの部分を取り込むことでしょう。既に約20%は取り込んでいると思いますが、最終的に、ウクライナから更にかなりの領土を奪おうとするでしょう。しかし、ウクライナ全土を征服することはないでしょう。
更に、この戦争が終結した時、ウクライナは機能不全に陥った残存国家になるでしょう。そしてロシアは、ウクライナがNATOに加盟できず、ロシアにとって脅威とならないよう、ウクライナが機能不全の残存国家であり続けることを強く望んでいます。ですから、いずれ朝鮮戦争と全く同じではないにせよ膠着状態に陥る紛争が起きると私は考えています。
ウクライナ人は、ロシアが領土全てを征服したという考えを決して受け入れないでしょう。ウクライナ人と西ヨーロッパ諸国も同様に、新たな現状を受け入れないでしょう。彼らは、2014年以前の国境線に戻りたいと願うでしょう。
そしてもちろん、ロシアはそうならないようにするでしょう。ロシアはウクライナが欧米諸国の一部になり、ロシア国境での西欧の防壁になるのを恐れているためです。つまり、いったんこの膠着状態が続けば、ロシアはウクライナが機能不全の残存国家であり続けることを強く望むようになるでしょう。
これが、ロシアがオデッサを奪取し、ウクライナから黒海沿岸地域を奪おうとする可能性が高い理由の一つだと私は考えています。なぜなら、ロシアはそれを将来的にウクライナを弱体化させる重要な手段と見なしているためです。そして、繰り返しますが、ロシアはウクライナを弱体化させることに既得権益があるのです。
ウクライナの立場からすれば、ロシアを存亡の危機と捉え、ロシアに対処するため欧米諸国の支援を求め、神聖な領土を取り戻したいと考えるのは全く理にかなっています。私はウクライナ人の考えを十分に理解していますが、それはロシア人にとっては受け入れがたいことです。つまりロシアと、ヨーロッパ諸国の支援を受けたウクライナという和解不可能な対立を抱える二つの当事者がいる場合、外交的な解決策は存在しないのです。
フョードル・ルキヤノフ:つまり、トランプ政権、クシュナー氏、ウィトコフ氏らがこれまで行ってきた努力は全て無駄だったのでしょうか?
ジョン・ミアシャイマー:概ねその通りだと思います。トランプ政権の場合、トランプ大統領自身が正しい直感を持っているのを強調することが重要だと思います。彼はウクライナ戦争を終結させ、アメリカとロシアの良好な関係を築きたいと考えています。この問題に関して、彼の直感が正しいのは確実です。
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モスクワのクレムリンで行われた会談に先立ち、ドナルド・トランプ大統領の娘婿ジャレッド・クシュナーとスティーブ・ウィトコフ米特使をロシアのプーチン大統領が出迎えた。 ©スプートニク / ミハイル・メッツェル / スプートニク
しかし、問題は二つあります。一つは、先ほどお話しした構造的な問題、つまり交戦当事者の目標が相容れない点です。これが一つ目の問題点です。そして二つ目は、トランプ大統領が交渉能力に欠けている、あるいは交渉が下手なことです。彼は自分を交渉上手だと考えており、ウクライナとロシアの紛争を自分の中で簡単に終結させることができると思っています。
しかし、実際は全く逆です。彼は不器用で無能な外交官で、その無能さゆえに、この戦争を終結させることすらできていません。
フョードル・ルキヤノフ:9月11日の同時多発テロから25周年を迎えました。四半世紀が経った今、大国間の政治という観点から、あの事件の意義をどう評価されますか?
ジョン・ミアシャイマー:ええ、9.11は列強間の政治と全く関係ありません。その点を理解することが非常に重要です。9.11は、アメリカ合衆国が世界唯一の列強だった一極体制時代に起きました。当時は列強間の政治など存在せず、互いに競い合うようなライバル列強もいなかったのです。
9.11に関して何が起こったかというと、アメリカの中東政策を憎むアルカイダという小さな集団が、アメリカを攻撃して深刻な被害をもたらす方法を見つけ出し、それがきっかけでアメリカは対テロ戦争を開始し、その結果、特にアフガニスタンとイラクをはじめとする終わりのない戦争の数々に巻き込まれることになったのです。そして、これらの戦争はどちらも大失敗でした。9.11への対応は大きく間違っていました。対テロ戦争を開始する必要は全くなかったのです。私たちは更に大きな問題に巻き込まれただけでした。
だが、それは大国間政治とは何の関係もありませんでした。
フョードル・ルキヤノフ:一部の人が主張するように、あの瞬間は一極世界の終焉の始まりと見なされる可能性はあるのでしょうか? ジョン・ミアシャイマー:その主張は成り立つと思います。1990年代は一極支配の最盛期だったと言えるでしょう。しかし、1990年代のロシアはひどい状態でした。そして、プーチンが権力を握ったのは2000年頃ですね? 1999年末にプーチンが政権を握ったのです。そして、プーチンがロシア人を死から蘇らせたのだと私は信じています。
しかし、1990年代、ロシアは深刻な弱体化に見舞われた。そして、中国も2001年時点では目立った成長を遂げていなかった。実際、中国がWTOに加盟したのは2001年のことである。そして、中国がWTOに加盟すると、経済成長は本格的に加速します。
ですから、1990年代を通して、2001年か2002年頃までは、アメリカ合衆国は信じられないほど強力な国だったことがお分かりいただけると思います。9.11の出来事を除けば、一極支配時代は非常に順調に進んでいるように見えます。しかし、9.11以降、状況は急速に悪化する傾向があります。ここで最も重要な出来事は、アメリカ合衆国に大きな打撃を与えた2008年の金融危機だと思います。そして2017年頃には、ロシアは復活を遂げ、プーチン大統領は、ロシア国内で、ロシアが再び大国になる状況を作り出したと思います。そして同時に、中国も2017年頃には大国となりました。つまり、一極支配から多極支配への移行は2017年頃に始まったと言えるでしょう。
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2017年5月9日。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、セルゲイ・ショイグ国防相(左)とパレードの指揮官、ロシア軍総司令官オレグ・サリュコフ大将が1941年から1945年の大祖国戦争における勝利72周年を記念する軍事パレードに参加した。 © スプートニク / グリゴリー・シソエフ / スプートニク
そしてそれは国際政治を劇的に変化させた根本的な変化です。一極支配時代には、大国間の競争相手が存在しなかったため、アメリカは世界中でより自由に介入でき、アフガニスタンやイラクといった場所で様々な問題に巻き込まれることも厭いませんでした。
しかしその後、多極化が進み、今やアメリカは何よりもまずライバル大国について懸念しなければならなくなりました。
フョードル・ルキヤノフ:なぜ2017年だけを取り上げるのですか? 私の知る限り、その年に特に重要な出来事は何も起きていません。2014年にはクリミア、2015年にはシリアがありました。なぜ2017年なのですか?
ジョン・ミアシャイマー:私が懸念しているのは勢力バランスです。問題は、1990年代から2000年代初頭にかけてのロシアを見ると、軍事力はほとんど意味をなさないことです。ロシア軍は壊滅状態でした。ところが、2015年、2016年、2017年頃になると、ロシア軍はそれまでの15年間よりも遙かに強力になっているのです。
そして、これは主にプーチン大統領の功績だと私は考えています。プーチン大統領はロシア経済の回復に多大な努力を払い、ロシア経済が繁栄し始めると、その経済力を軍事力に転換できたのです。
つまり、2016年から2017年頃になると、ランド研究所などの機関によるロシア軍に関する評価のほとんどは、ロシアの軍事力は非常に強力になったと述べています。もちろん、2017年のロシアは、冷戦時代のソ連ほど強力ではありませんでした。
しかし、2017年までにロシア軍は、そしてもちろん中国軍も同様に、非常に強力な軍事力を持つようになりました。つまり、私が主張したいのは、単極体制から多極体制への移行について語るなら、基本的に「中国やロシアのような国々はいつ大国になるのか?」という問いを自らに投げかけていることになるのです。
私にとって大国とは、世界で最も強力な国家と互角に戦えるだけの軍事力を持つ国のことです。そしてもちろん、それはアメリカ合衆国です。そして、2017年までに、アメリカの安全保障専門家のほとんどが、ロシア軍は非常に強力な存在で、アメリカに対し本格的な戦いを挑むのに十分な態勢を整えていると考えていたと思います。
そして、ロシアの軍事力、つまり軍事力の回復を考えると、それがロシアが再び大国になったという主張の根拠になったのだと思います。そして、これに関してもう一つ付け加えると、ロシアは当時も今も三大国の中で最も弱い国であることは誰もが理解していたと思います。
私は、アメリカ合衆国が依然世界最も強力な国家だと考えています。中国はそれに次ぐ二位につけていると思います。そして、今後中国がアメリカ合衆国を追い抜く危険性があると考えています。
そして、アメリカ人、あるいはほとんどのアメリカ人外交政策エリートは、その可能性を非常に懸念していると思います。ですから、非常に重要な意味で、本当に対等な競争相手はロシアではなく中国なのです。
だが、ロシアは依然大国で、それは誰もが認めていると思います。だからこそ、アメリカはウクライナ戦争にこれほど関心を寄せているのでしょう。トランプ大統領がウクライナ戦争の終結と、ロシアとアメリカの良好な関係構築に関心を持っているのは、ロシアが大国であることを理解しているからだと思います。
アメリカの視点からすれば、アメリカが中国に対抗するためロシアと同盟を結ぶか、少なくともロシアを中立に保つ方が、事実上ロシアを中国の陣営に追い込むような状況を作り出すよりも、遙かに理にかなっています。
つまり、三つの大国が存在する多極世界において、もしあなたがアメリカ合衆国で、相手が中国だとしたら、ロシアを味方につけたいと思うでしょう。しかし、ウクライナに関する我々の愚かな政策のせいで、ロシアは中国の手に落ちてしまったのです。
そして、ウクライナ戦争を解決し、ロシアとアメリカの関係を良好に保つことの重要性に関するトランプの基本的直感は、中国こそ、アメリカにとって本当の脅威だという彼の洞察、あるいは信念に大きく基づいていると私は考えています。
筆者のフョードル・ルキヤノフは『ロシア・イン・グローバル・アフェアーズ』編集長、外交・防衛政策評議会幹部会議長、ヴァルダイ国際討論クラブ研究部長。
記事原文のurl:https://www.rt.com/news/645879-mearsheimer-lukyanov-interview-ukraine/
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教授はYooutubeでも同様話題について語っている。
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ミアシャイマー教授:ウクライナ戦争から外交的に抜け出す道はない

РИА Новости 、ヤシン・オズトゥルク/アナドル・エージェンシー/ゲッティイメージズ
アメリカ人政治学者ジョン・ミアシャイマー氏はウクライナ紛争は両陣営の目標が相容れないままで、外交的解決はできず、最終的に戦場で決着がつくと主張した。
ミアシャイマー教授はモスクワ訪問中に、外交・防衛政策評議会幹部会議長で、ロシア・イン・グローバル・アフェアーズ編集長のフョードル・ルキヤノフとのインタビューで以下の通り語った。
フョードル・ルキヤノフ:ジョン、もしタイムマシンがメッテルニヒやタレーランのような偉大な外交官を現代に連れてきたら、彼らは流血を食い止め、今日の紛争を終わらせるために何をするでしょうか? 彼らは成功するでしょうか?
ジョン・ミアシャイマー:確かに彼らは有能な外交官でした。ウクライナ・ロシア戦争について言えば、彼らは解決のためにあらゆる努力を惜しまなかったでしょう。しかし、私は彼らには、それはできなかったと思います。あの戦争、ウクライナ戦争は外交的に解決できるものではないと思います。戦場で決着がつくことになるでしょう。
さて、なぜ外交的に解決できないと思うのかと自問自答してみましょう。それは、ロシアの目標がウクライナにとって受け入れられないもので、ウクライナの目標もロシアにとって受け入れられないからです。例えば、ウクライナは、ロシアが併合した領土をウクライナに返還してほしいと望んでいます。
ロシアはドンバス、ザポリージャ、ヘルソンを神聖な領土とみなしています。ウクライナの立場からすれば、ロシアがこれら地域を併合することは断じて容認できません。更に、ウクライナはこれまでの経緯を踏まえて、今後の安全保障のためにNATOまたはアメリカの保証を求めています。
これはロシアにとって到底受け入れられないことです。更に、ロシアは既に併合した領土を手放すことも断じて認めない。これほどまでに大きな隔たりがある中で、どうやって両者の間で外交合意が成立するというのだろうか。ウクライナは、ロシアが併合した4つの州とクリミア半島を手放すつもりは全くないのだ。
そしてロシアは、ウクライナが領土を取り戻すことを決して認めようとしません。更に、ウクライナは欧米諸国の安全保障を求めています。ウクライナはNATO加盟を望んでおり、これはウクライナの立場からすれば理解できることです。しかしロシアはウクライナのNATO加盟を断固拒否しています。そもそもこの戦争の主な原因はそこにあります。このように、ロシアとウクライナは妥協する意思のない重要な問題において真っ向から対立しているのです。
では、どうすれば外交的解決策を見出せるのか?という問いに対する答えは「そんなものはない」です。この問題は戦場で決着がつくことになるでしょう。そして最終的な解決策は、戦争に勝利した者によって決まるのです。
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ロシア軍軍事作戦の最中、前線のハリコフ地区にある陣地に駐屯するロシア軍移動式対空部隊の兵士たち。c スプートニク / セルゲイ・ボビレフ / スプートニク
フョードル・ルキヤノフ:では勝利とは具体的にどのような状態を指すのでしょう?戦争に勝利するということはウクライナ自体を消滅させることを意味するのでしょうか?
ジョン・ミアシャイマー:ロシアがウクライナを滅ぼすとは思いません。それはほぼ不可能だと思います。ロシアがやろうとしているのは、ウクライナ領土のかなりの部分を取り込むことでしょう。既に約20%は取り込んでいると思いますが、最終的に、ウクライナから更にかなりの領土を奪おうとするでしょう。しかし、ウクライナ全土を征服することはないでしょう。
更に、この戦争が終結した時、ウクライナは機能不全に陥った残存国家になるでしょう。そしてロシアは、ウクライナがNATOに加盟できず、ロシアにとって脅威とならないよう、ウクライナが機能不全の残存国家であり続けることを強く望んでいます。ですから、いずれ朝鮮戦争と全く同じではないにせよ膠着状態に陥る紛争が起きると私は考えています。
ウクライナ人は、ロシアが領土全てを征服したという考えを決して受け入れないでしょう。ウクライナ人と西ヨーロッパ諸国も同様に、新たな現状を受け入れないでしょう。彼らは、2014年以前の国境線に戻りたいと願うでしょう。
そしてもちろん、ロシアはそうならないようにするでしょう。ロシアはウクライナが欧米諸国の一部になり、ロシア国境での西欧の防壁になるのを恐れているためです。つまり、いったんこの膠着状態が続けば、ロシアはウクライナが機能不全の残存国家であり続けることを強く望むようになるでしょう。
これが、ロシアがオデッサを奪取し、ウクライナから黒海沿岸地域を奪おうとする可能性が高い理由の一つだと私は考えています。なぜなら、ロシアはそれを将来的にウクライナを弱体化させる重要な手段と見なしているためです。そして、繰り返しますが、ロシアはウクライナを弱体化させることに既得権益があるのです。
ウクライナの立場からすれば、ロシアを存亡の危機と捉え、ロシアに対処するため欧米諸国の支援を求め、神聖な領土を取り戻したいと考えるのは全く理にかなっています。私はウクライナ人の考えを十分に理解していますが、それはロシア人にとっては受け入れがたいことです。つまりロシアと、ヨーロッパ諸国の支援を受けたウクライナという和解不可能な対立を抱える二つの当事者がいる場合、外交的な解決策は存在しないのです。
フョードル・ルキヤノフ:つまり、トランプ政権、クシュナー氏、ウィトコフ氏らがこれまで行ってきた努力は全て無駄だったのでしょうか?
ジョン・ミアシャイマー:概ねその通りだと思います。トランプ政権の場合、トランプ大統領自身が正しい直感を持っているのを強調することが重要だと思います。彼はウクライナ戦争を終結させ、アメリカとロシアの良好な関係を築きたいと考えています。この問題に関して、彼の直感が正しいのは確実です。
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モスクワのクレムリンで行われた会談に先立ち、ドナルド・トランプ大統領の娘婿ジャレッド・クシュナーとスティーブ・ウィトコフ米特使をロシアのプーチン大統領が出迎えた。 ©スプートニク / ミハイル・メッツェル / スプートニク
しかし、問題は二つあります。一つは、先ほどお話しした構造的な問題、つまり交戦当事者の目標が相容れない点です。これが一つ目の問題点です。そして二つ目は、トランプ大統領が交渉能力に欠けている、あるいは交渉が下手なことです。彼は自分を交渉上手だと考えており、ウクライナとロシアの紛争を自分の中で簡単に終結させることができると思っています。
しかし、実際は全く逆です。彼は不器用で無能な外交官で、その無能さゆえに、この戦争を終結させることすらできていません。
フョードル・ルキヤノフ:9月11日の同時多発テロから25周年を迎えました。四半世紀が経った今、大国間の政治という観点から、あの事件の意義をどう評価されますか?
ジョン・ミアシャイマー:ええ、9.11は列強間の政治と全く関係ありません。その点を理解することが非常に重要です。9.11は、アメリカ合衆国が世界唯一の列強だった一極体制時代に起きました。当時は列強間の政治など存在せず、互いに競い合うようなライバル列強もいなかったのです。
9.11に関して何が起こったかというと、アメリカの中東政策を憎むアルカイダという小さな集団が、アメリカを攻撃して深刻な被害をもたらす方法を見つけ出し、それがきっかけでアメリカは対テロ戦争を開始し、その結果、特にアフガニスタンとイラクをはじめとする終わりのない戦争の数々に巻き込まれることになったのです。そして、これらの戦争はどちらも大失敗でした。9.11への対応は大きく間違っていました。対テロ戦争を開始する必要は全くなかったのです。私たちは更に大きな問題に巻き込まれただけでした。
だが、それは大国間政治とは何の関係もありませんでした。
フョードル・ルキヤノフ:一部の人が主張するように、あの瞬間は一極世界の終焉の始まりと見なされる可能性はあるのでしょうか? ジョン・ミアシャイマー:その主張は成り立つと思います。1990年代は一極支配の最盛期だったと言えるでしょう。しかし、1990年代のロシアはひどい状態でした。そして、プーチンが権力を握ったのは2000年頃ですね? 1999年末にプーチンが政権を握ったのです。そして、プーチンがロシア人を死から蘇らせたのだと私は信じています。
しかし、1990年代、ロシアは深刻な弱体化に見舞われた。そして、中国も2001年時点では目立った成長を遂げていなかった。実際、中国がWTOに加盟したのは2001年のことである。そして、中国がWTOに加盟すると、経済成長は本格的に加速します。
ですから、1990年代を通して、2001年か2002年頃までは、アメリカ合衆国は信じられないほど強力な国だったことがお分かりいただけると思います。9.11の出来事を除けば、一極支配時代は非常に順調に進んでいるように見えます。しかし、9.11以降、状況は急速に悪化する傾向があります。ここで最も重要な出来事は、アメリカ合衆国に大きな打撃を与えた2008年の金融危機だと思います。そして2017年頃には、ロシアは復活を遂げ、プーチン大統領は、ロシア国内で、ロシアが再び大国になる状況を作り出したと思います。そして同時に、中国も2017年頃には大国となりました。つまり、一極支配から多極支配への移行は2017年頃に始まったと言えるでしょう。
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2017年5月9日。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、セルゲイ・ショイグ国防相(左)とパレードの指揮官、ロシア軍総司令官オレグ・サリュコフ大将が1941年から1945年の大祖国戦争における勝利72周年を記念する軍事パレードに参加した。 © スプートニク / グリゴリー・シソエフ / スプートニク
そしてそれは国際政治を劇的に変化させた根本的な変化です。一極支配時代には、大国間の競争相手が存在しなかったため、アメリカは世界中でより自由に介入でき、アフガニスタンやイラクといった場所で様々な問題に巻き込まれることも厭いませんでした。
しかしその後、多極化が進み、今やアメリカは何よりもまずライバル大国について懸念しなければならなくなりました。
フョードル・ルキヤノフ:なぜ2017年だけを取り上げるのですか? 私の知る限り、その年に特に重要な出来事は何も起きていません。2014年にはクリミア、2015年にはシリアがありました。なぜ2017年なのですか?
ジョン・ミアシャイマー:私が懸念しているのは勢力バランスです。問題は、1990年代から2000年代初頭にかけてのロシアを見ると、軍事力はほとんど意味をなさないことです。ロシア軍は壊滅状態でした。ところが、2015年、2016年、2017年頃になると、ロシア軍はそれまでの15年間よりも遙かに強力になっているのです。
そして、これは主にプーチン大統領の功績だと私は考えています。プーチン大統領はロシア経済の回復に多大な努力を払い、ロシア経済が繁栄し始めると、その経済力を軍事力に転換できたのです。
つまり、2016年から2017年頃になると、ランド研究所などの機関によるロシア軍に関する評価のほとんどは、ロシアの軍事力は非常に強力になったと述べています。もちろん、2017年のロシアは、冷戦時代のソ連ほど強力ではありませんでした。
しかし、2017年までにロシア軍は、そしてもちろん中国軍も同様に、非常に強力な軍事力を持つようになりました。つまり、私が主張したいのは、単極体制から多極体制への移行について語るなら、基本的に「中国やロシアのような国々はいつ大国になるのか?」という問いを自らに投げかけていることになるのです。
私にとって大国とは、世界で最も強力な国家と互角に戦えるだけの軍事力を持つ国のことです。そしてもちろん、それはアメリカ合衆国です。そして、2017年までに、アメリカの安全保障専門家のほとんどが、ロシア軍は非常に強力な存在で、アメリカに対し本格的な戦いを挑むのに十分な態勢を整えていると考えていたと思います。
そして、ロシアの軍事力、つまり軍事力の回復を考えると、それがロシアが再び大国になったという主張の根拠になったのだと思います。そして、これに関してもう一つ付け加えると、ロシアは当時も今も三大国の中で最も弱い国であることは誰もが理解していたと思います。
私は、アメリカ合衆国が依然世界最も強力な国家だと考えています。中国はそれに次ぐ二位につけていると思います。そして、今後中国がアメリカ合衆国を追い抜く危険性があると考えています。
そして、アメリカ人、あるいはほとんどのアメリカ人外交政策エリートは、その可能性を非常に懸念していると思います。ですから、非常に重要な意味で、本当に対等な競争相手はロシアではなく中国なのです。
だが、ロシアは依然大国で、それは誰もが認めていると思います。だからこそ、アメリカはウクライナ戦争にこれほど関心を寄せているのでしょう。トランプ大統領がウクライナ戦争の終結と、ロシアとアメリカの良好な関係構築に関心を持っているのは、ロシアが大国であることを理解しているからだと思います。
アメリカの視点からすれば、アメリカが中国に対抗するためロシアと同盟を結ぶか、少なくともロシアを中立に保つ方が、事実上ロシアを中国の陣営に追い込むような状況を作り出すよりも、遙かに理にかなっています。
つまり、三つの大国が存在する多極世界において、もしあなたがアメリカ合衆国で、相手が中国だとしたら、ロシアを味方につけたいと思うでしょう。しかし、ウクライナに関する我々の愚かな政策のせいで、ロシアは中国の手に落ちてしまったのです。
そして、ウクライナ戦争を解決し、ロシアとアメリカの関係を良好に保つことの重要性に関するトランプの基本的直感は、中国こそ、アメリカにとって本当の脅威だという彼の洞察、あるいは信念に大きく基づいていると私は考えています。
筆者のフョードル・ルキヤノフは『ロシア・イン・グローバル・アフェアーズ』編集長、外交・防衛政策評議会幹部会議長、ヴァルダイ国際討論クラブ研究部長。
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習・トランプ会談の行方
本ブログで2026年9月20日 (日)付けの『ミアシャイマー教授:ウクライナ戦争から外交的に抜け出す道はない』を拝読した。拝読して思うことは2つ。一つは加藤周一の著作集第9巻(平凡社刊)の『中国・アメリカ往還』の内容と同じ構図の状況が生じたのが2026年九月。二つはミアシャイマー教授の説に賛成するもネオ・ナチの存在が表に出てこない問題が中ロ米の大国にとって,あるいは欧州にとって大きな脅威になり未来を不安定にするだろう。
1971年加藤は,中国を訪問し当時の中ソ対立の激化と米中接近の動きを観察・考察した。それらの文章を読んで小生が得た印象はいわゆる三角関係という力関係であった。三国をA,B,Cで表わせばAとBとが仲良くなればCはその関係を(嫉妬して)壊すがBとCが仲良くなればAがその関係を壊そうとする。CとAとが中立であるとすればBはどちらかをB陣営に引き込もうとする・・・。そういう話の2026年版の米中露関係がミア・シャイマー教授のいう「アメリカの視点からすれば、アメリカが中国に対抗するためロシアと同盟を結ぶか,少なくともロシアを中立に保つ方が、事実上ロシアを中国の陣営に追い込むような状況を作り出すよりも,遙かに理にかなっています」関係である。
そこで考えるに,23日から25日に行われる習・トランプ会談は専門家の見方では「劇的な進展より休戦の延長・関係維持」が現実的との指摘が多いが,中露が蜜月である以上,少なくても「ロシアを中立」に保つためのトランプ政府の戦略交渉如何ということになるだろう。
投稿: 箒川 兵庫助 | 2026年9月21日 (月) 19時58分