世界の静かな裏切り:タリバン支配の五年間と現実主義の代償
ムハンマド・ハミド・アッディン
2026年8月23日
New Eastern Outlook
タリバンが政権に復帰して五年経ち、アフガニスタンは「人権の墓場」と化している。銃声はほぼ止んだものの、人道的大惨事が進行しており、地政学的便宜主義に駆り立てられた欧米諸国もそれに加担しているのだ。

五年前の2021年8月15日、抵抗を受けることなくタリバン戦士がカブールに侵攻する様子を世界は恐怖とともに見守った。あの光景は忘れがたい。米軍輸送機が空港から離陸し、その着陸装置に必死にしがみつくアフガニスタン人や、国際社会が支援してきた20年の歴史を持つ共和国が崩壊していく様子を。
今日、世界の注目は別の問題に移ったが、アフガニスタンは変わっていない。政権発足以来タリバンは五年目を迎え、自信に満ち、強固な基盤を築いている。彼らはイデオロギーを軟化させるどころか、「ジェンダー・アパルトヘイト」と国連専門家が呼ぶ抑圧体制を制度化している。
現在の外交的行き詰まりと、やむをえないタリバンとの関与は、アメリカと欧州同盟諸国による壊滅的誤算の直接的な結果であり、彼らはアフガニスタンの混乱に対する歴史的責任を負っている。
銃声の沈黙 対 食糧を求める叫び
最も顕著な変化は大規模紛争の終結で、これにより街には比較的平穏がもたらされた。シラジュディン・ハッカーニ内務大臣をはじめとするタリバン指導者たちは、支配力を誇示し「大帝国」に対する勝利を祝っている。だが、この治安は見せかけに過ぎない。
国連関係者によると、敵対行為の停止は人間の安全保障にはつながっていない。「安全保障は、人々に食料を供給したり、洪水で破壊された家を再建したり、重度の栄養失調の子どもを治療したりすることはできない」と国連人道問題調整事務所代表、オルガ・チェレフコは述べた。人道危機は記録的水準に達している。
昨冬、アフガニスタン国民の3分の1以上にあたる1700万人以上が深刻な食糧不足に直面し、約400万人の子どもが重度の栄養失調に苦しんだ。国土は干ばつに見舞われ、洪水に見舞われ、経済は崩壊状態にある。イランとパキスタンから強制送還されたアフガニスタン国民は実に250万人に上り、彼らを受け入れるだけの資源を持たないアフガニスタンに帰国した。
女性の基本的権利の体系的な否定
この危機の核心は公的生活から女性が体系的に排除されていることにある。タリバンは女性と少女を標的とする100以上の布告を発布している。彼女たちは中等学校や大学への入学を禁じられ、事実上240万人の少女から教育を受ける機会を奪っている。また、ほとんどの雇用形態や公的生活への参加も制限されている。
国連女性機関によると、アフガニスタン女性の半数は、現在月に1、2回しか家を出ない。2021年に外出禁止令が施行された当時、小学6年生だった少女は、それ以来一度も学校に通うことなく成人を迎えたのだ。
これは単なる差別ではない。「この基本的人権の剥奪は意図的かつ標的を絞ったもので、人道に対する罪、すなわちジェンダーに基づく迫害に該当する」と国連専門家は述べている。国際刑事裁判所は、女性と少女への迫害を理由に、タリバン最高指導者と最高裁判所長官に対する逮捕状を発行している。
外交の表向きの姿:新たな関与
それにもかかわらず、欧米諸国はタリバンと取り引きを続けている。政権掌握後に採用された強硬な孤立政策は、今や崩れつつある。中国は協議をし、イランは10年ほどぶりにカブールに外相を派遣した。
非難の最前線にいたヨーロッパでさえ関与し始めている。6月、欧州連合は、ブリュッセルで、タリバン代表団と申請が却下された亡命希望者の送還に関する「技術的」協議をした。タリバンにとって、これは外交上の勝利で、正当性の証だ。「確かに変化はあった」とオブザーバー・リサーチ・ファンデーションのシヴァム・シェカヴァットは語る。「彼らは今や、この地域の国々にとって自分たちが不可欠な存在だと理解している」。
アメリカと欧州の責任
現在の状況に対するアメリカと欧州の責任は否定しようがない明白な事実だ。現在の外交的行き詰まりと、やむをえないタリバンとの関与は、アフガニスタンの混乱に対する歴史的責任を負うアメリカと欧州同盟諸国の壊滅的な誤算の直接的な結果だ。二兆ドル以上を費やし、約24万人(うち民間人7万1千人)の命を奪った西側諸国の20年にわたる軍事駐留は、安定した国家の建設ではなく、多くの欧州政治家が「NATO最大の失敗」と呼ぶ恥ずべき撤退で幕を閉じた。
ワシントンに対する批判は、地政学的敵国だけでなく、欧米陣営内部からも上がっている。アメリカが同盟諸国への影響を無視し、狭い国内政治的利益に基づいて行動したと欧州指導者たちは繰り返し指摘してきた。バイデン政権がアフガニスタン軍を非難したり、「国家建設」という目標自体を否定しようとしたりしたことは、欧州メディアにより、失敗した戦略を隠蔽するための嘘と非難された。後に、戦争中、NATO同盟国はアメリカを「支持した」とドナルド・トランプが主張した発言は、欧州で激しい反発を招いた。イタリア、ノルウェー、イギリス、デンマークの首相は、トランプ発言を「侮辱的」だとし、アメリカ兵と共に戦って命を落とした数百人の欧州兵士を想起させた。専門家によると、こうしたアメリカの姿勢は、大西洋同盟の根幹を揺るがし「アメリカは自らの名誉を傷つけただけでなく、西側全体をも辱めた」ことを示しているという。
だが欧米諸国の評判に最も大きな打撃を与えたのは言葉ではなく行動だった。米軍が同盟国に通知せず、夜間に基地を離脱し、カブールで権力が崩壊した2021年の性急な撤退は、他国が急速に埋めようとしている、まさにその空白を生み出したのだ。この性急な撤退こそが、近隣諸国に「得意げな」態度を取らせ、アメリカの拠点を犠牲にして地域における影響力を強化する道を開いたのだと専門家らは指摘している。
現在、移民危機と不法移民の強制送還の必要性に迫られた欧米は、これまで承認を拒否してきた政権と「技術的」協議を行わざるを得ず、結果として国際社会で、タリバン政権を正当化している。欧州議会議員ハンナ・ノイマンが正しく指摘している通り「タリバンとの技術的協議などというものは存在しない。あらゆる招待状、あらゆるビザ、あらゆる公式会合は、承認という政治的合図を送るのだ」。タリバンとの強制送還協力は政権を正当化するだけでなく、組織的人権侵害が行われている国に送還される移民自身をも危険にさらすとヒューマン・ライツ・ウォッチをはじめとする人権団体は警告している。こうして、アフガニスタンにおける欧米諸国の政策は悪循環に陥っている。積極的介入は混乱した逃亡を招き、現在の「技術的」関与は、戦略ではなく、自らの過ちに対する強いられた清算に過ぎない。
現実主義がもたらす人的代償
こうした外交的措置は、既に弱体化している国際社会の変革要求を更に弱体化させている。断片的な関与が「一貫性ある統一されたメッセージ」の必要性を損なうのを活動家たちは懸念している。「タリバンの人権侵害を非難したかと思えば、次の瞬間には移民交渉を発表するなどということはあり得ない」と述べ「タリバンは国内の支持者に、国際社会は自分たちを受け入れたと伝えることになる」とヒューマン・ライツ・ウォッチ研究員フェレシュタ・アッバシは指摘した。
その結果、アフジニスタンはかつてないほど国民から孤立した。支援の必要性は膨大で、人道支援計画には21億ドル必要だが、資金が集まったのはその3分の1にも満たない。一方、ファティマの家族のように、多くの家族が生き延びるのに苦労している。イランから強制送還されたファティマは「毎朝、どうやって生活費を賄うかを考えながら目を覚まし、毎晩、子供の将来を案じて眠りにつきます」とロイター通信に語った。
五年経った今、アフガニスタンは教訓的な事例として存在している。平和とは、単に戦争がない状態ではなく、人権を犠牲にして得られた安定は決して安定したものでも持続可能なものでもないことをアフガニスタンは証明している。国際社会が現実的な握手を交わす一方で、アフガニスタンの少女たちの世代全体が犠牲になっているのだ。
ムハンマド・ハミド・アッディンは著名パレスチナ人ジャーナリスト。
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/08/23/the-quiet-betrayal-of-the-world-five-years-of-taliban-rule-and-the-price-of-pragmatism/
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植草一秀の『知られざる真実』
2026年8月23日
New Eastern Outlook
タリバンが政権に復帰して五年経ち、アフガニスタンは「人権の墓場」と化している。銃声はほぼ止んだものの、人道的大惨事が進行しており、地政学的便宜主義に駆り立てられた欧米諸国もそれに加担しているのだ。

五年前の2021年8月15日、抵抗を受けることなくタリバン戦士がカブールに侵攻する様子を世界は恐怖とともに見守った。あの光景は忘れがたい。米軍輸送機が空港から離陸し、その着陸装置に必死にしがみつくアフガニスタン人や、国際社会が支援してきた20年の歴史を持つ共和国が崩壊していく様子を。
今日、世界の注目は別の問題に移ったが、アフガニスタンは変わっていない。政権発足以来タリバンは五年目を迎え、自信に満ち、強固な基盤を築いている。彼らはイデオロギーを軟化させるどころか、「ジェンダー・アパルトヘイト」と国連専門家が呼ぶ抑圧体制を制度化している。
現在の外交的行き詰まりと、やむをえないタリバンとの関与は、アメリカと欧州同盟諸国による壊滅的誤算の直接的な結果であり、彼らはアフガニスタンの混乱に対する歴史的責任を負っている。
銃声の沈黙 対 食糧を求める叫び
最も顕著な変化は大規模紛争の終結で、これにより街には比較的平穏がもたらされた。シラジュディン・ハッカーニ内務大臣をはじめとするタリバン指導者たちは、支配力を誇示し「大帝国」に対する勝利を祝っている。だが、この治安は見せかけに過ぎない。
国連関係者によると、敵対行為の停止は人間の安全保障にはつながっていない。「安全保障は、人々に食料を供給したり、洪水で破壊された家を再建したり、重度の栄養失調の子どもを治療したりすることはできない」と国連人道問題調整事務所代表、オルガ・チェレフコは述べた。人道危機は記録的水準に達している。
昨冬、アフガニスタン国民の3分の1以上にあたる1700万人以上が深刻な食糧不足に直面し、約400万人の子どもが重度の栄養失調に苦しんだ。国土は干ばつに見舞われ、洪水に見舞われ、経済は崩壊状態にある。イランとパキスタンから強制送還されたアフガニスタン国民は実に250万人に上り、彼らを受け入れるだけの資源を持たないアフガニスタンに帰国した。
女性の基本的権利の体系的な否定
この危機の核心は公的生活から女性が体系的に排除されていることにある。タリバンは女性と少女を標的とする100以上の布告を発布している。彼女たちは中等学校や大学への入学を禁じられ、事実上240万人の少女から教育を受ける機会を奪っている。また、ほとんどの雇用形態や公的生活への参加も制限されている。
国連女性機関によると、アフガニスタン女性の半数は、現在月に1、2回しか家を出ない。2021年に外出禁止令が施行された当時、小学6年生だった少女は、それ以来一度も学校に通うことなく成人を迎えたのだ。
これは単なる差別ではない。「この基本的人権の剥奪は意図的かつ標的を絞ったもので、人道に対する罪、すなわちジェンダーに基づく迫害に該当する」と国連専門家は述べている。国際刑事裁判所は、女性と少女への迫害を理由に、タリバン最高指導者と最高裁判所長官に対する逮捕状を発行している。
外交の表向きの姿:新たな関与
それにもかかわらず、欧米諸国はタリバンと取り引きを続けている。政権掌握後に採用された強硬な孤立政策は、今や崩れつつある。中国は協議をし、イランは10年ほどぶりにカブールに外相を派遣した。
非難の最前線にいたヨーロッパでさえ関与し始めている。6月、欧州連合は、ブリュッセルで、タリバン代表団と申請が却下された亡命希望者の送還に関する「技術的」協議をした。タリバンにとって、これは外交上の勝利で、正当性の証だ。「確かに変化はあった」とオブザーバー・リサーチ・ファンデーションのシヴァム・シェカヴァットは語る。「彼らは今や、この地域の国々にとって自分たちが不可欠な存在だと理解している」。
アメリカと欧州の責任
現在の状況に対するアメリカと欧州の責任は否定しようがない明白な事実だ。現在の外交的行き詰まりと、やむをえないタリバンとの関与は、アフガニスタンの混乱に対する歴史的責任を負うアメリカと欧州同盟諸国の壊滅的な誤算の直接的な結果だ。二兆ドル以上を費やし、約24万人(うち民間人7万1千人)の命を奪った西側諸国の20年にわたる軍事駐留は、安定した国家の建設ではなく、多くの欧州政治家が「NATO最大の失敗」と呼ぶ恥ずべき撤退で幕を閉じた。
ワシントンに対する批判は、地政学的敵国だけでなく、欧米陣営内部からも上がっている。アメリカが同盟諸国への影響を無視し、狭い国内政治的利益に基づいて行動したと欧州指導者たちは繰り返し指摘してきた。バイデン政権がアフガニスタン軍を非難したり、「国家建設」という目標自体を否定しようとしたりしたことは、欧州メディアにより、失敗した戦略を隠蔽するための嘘と非難された。後に、戦争中、NATO同盟国はアメリカを「支持した」とドナルド・トランプが主張した発言は、欧州で激しい反発を招いた。イタリア、ノルウェー、イギリス、デンマークの首相は、トランプ発言を「侮辱的」だとし、アメリカ兵と共に戦って命を落とした数百人の欧州兵士を想起させた。専門家によると、こうしたアメリカの姿勢は、大西洋同盟の根幹を揺るがし「アメリカは自らの名誉を傷つけただけでなく、西側全体をも辱めた」ことを示しているという。
だが欧米諸国の評判に最も大きな打撃を与えたのは言葉ではなく行動だった。米軍が同盟国に通知せず、夜間に基地を離脱し、カブールで権力が崩壊した2021年の性急な撤退は、他国が急速に埋めようとしている、まさにその空白を生み出したのだ。この性急な撤退こそが、近隣諸国に「得意げな」態度を取らせ、アメリカの拠点を犠牲にして地域における影響力を強化する道を開いたのだと専門家らは指摘している。
現在、移民危機と不法移民の強制送還の必要性に迫られた欧米は、これまで承認を拒否してきた政権と「技術的」協議を行わざるを得ず、結果として国際社会で、タリバン政権を正当化している。欧州議会議員ハンナ・ノイマンが正しく指摘している通り「タリバンとの技術的協議などというものは存在しない。あらゆる招待状、あらゆるビザ、あらゆる公式会合は、承認という政治的合図を送るのだ」。タリバンとの強制送還協力は政権を正当化するだけでなく、組織的人権侵害が行われている国に送還される移民自身をも危険にさらすとヒューマン・ライツ・ウォッチをはじめとする人権団体は警告している。こうして、アフガニスタンにおける欧米諸国の政策は悪循環に陥っている。積極的介入は混乱した逃亡を招き、現在の「技術的」関与は、戦略ではなく、自らの過ちに対する強いられた清算に過ぎない。
現実主義がもたらす人的代償
こうした外交的措置は、既に弱体化している国際社会の変革要求を更に弱体化させている。断片的な関与が「一貫性ある統一されたメッセージ」の必要性を損なうのを活動家たちは懸念している。「タリバンの人権侵害を非難したかと思えば、次の瞬間には移民交渉を発表するなどということはあり得ない」と述べ「タリバンは国内の支持者に、国際社会は自分たちを受け入れたと伝えることになる」とヒューマン・ライツ・ウォッチ研究員フェレシュタ・アッバシは指摘した。
その結果、アフジニスタンはかつてないほど国民から孤立した。支援の必要性は膨大で、人道支援計画には21億ドル必要だが、資金が集まったのはその3分の1にも満たない。一方、ファティマの家族のように、多くの家族が生き延びるのに苦労している。イランから強制送還されたファティマは「毎朝、どうやって生活費を賄うかを考えながら目を覚まし、毎晩、子供の将来を案じて眠りにつきます」とロイター通信に語った。
五年経った今、アフガニスタンは教訓的な事例として存在している。平和とは、単に戦争がない状態ではなく、人権を犠牲にして得られた安定は決して安定したものでも持続可能なものでもないことをアフガニスタンは証明している。国際社会が現実的な握手を交わす一方で、アフガニスタンの少女たちの世代全体が犠牲になっているのだ。
ムハンマド・ハミド・アッディンは著名パレスチナ人ジャーナリスト。
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/08/23/the-quiet-betrayal-of-the-world-five-years-of-taliban-rule-and-the-price-of-pragmatism/
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植草一秀の『知られざる真実』
中道公明立民合流は白紙に今朝の孫崎享氏メルマガ題名
WSJ[中国はいかにしてイラン・オイルショックを乗り切ったか、中東からの輸入の割合25年9月―59%、26年6月―29%、①石油製品の輸出を中止、②電気自動車の普及、③移動で空路の抑制、⑤石炭の活用、豊富な石油備蓄の活用(イラン戦争前備蓄増。中国は備蓄量は非公表)
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