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2026年8月22日 (土)

シリア新政権が依然ロシアを必要としている理由

食料、石油、軍事ノウハウ、教育面でのつながりは、モスクワが欧米諸国、トルコ、湾岸諸国との関係を強化している一方、ダマスカスにとって依然重要な存在であり続けている。
公開日:2026年8月14日 19:33 | 更新日:2026年8月14日 20:35
RT

ムラド・サディグザデ
ムラド・サディグザデは中東研究センター所長、高等経済学院(モスクワ)客員講師)

 シリア新政権が依然ロシアを必要としている理由

 
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、2026年1月28日、ロシアのモスクワでシリアのアフマド・アル・シャラー大統領と会談。© クレムリン報道局 / 提供 / アナドル通信社(ゲッティイメージズから)

 ここ数日の二つの出来事は、ダマスカスでの政権交代後、ロシアとシリアの関係がどのように変化しているかを明らかにするものだ。

 8月9日、約18カ月に及ぶ交渉を経て、ロシアとシリアはタルトゥスとフメイミムにあるロシア軍基地の施設利用に関する今後の枠組みを定める新たな覚書に合意した。ほぼ同時に、ロシア連邦人道・文化協力機関のРоссотрудничествоロスソトルドニチェストヴォ代表団がシリア当局者と会談し、ダマスカスにあるロシア文化交流センター「ロシア・ハウス」再開に向けた準備が発表された。軍事協力は解体されるのではなく再構築され、人道支援の連携が回復する一方、貿易、食料供給、エネルギー、教育といった分野で両国は引き続き結びついている。

 欧米諸国の議論の多くは、バシャール・アサド政権の崩壊により、シリアにおけるロシアの立場が著しく低下するという前提に基づいていた。モスクワはアサド政権の主要政治的・軍事的パートナーの一つで、政権を交代させた勢力は旧体制と戦ってきた。だが、外交政策は象徴的意味合いだけで左右されることは稀で、特に壊滅的紛争から立ち直りつつある国ではなおさらだ。シリア新政権は、外部の協力相手をより現実的な基準で判断するようになっている。復興、食糧、エネルギー、安全保障と、政治的な自由裁量を必要としている今、それぞれの協力相手はシリアに一体何を提供できるのか。

 政治的遺産から実務的協力関係へ

 ダマスカス新政権は、忠誠を誓うべき過去のロシアとの関係はもはや存在しないが、対処すべき現在の課題を抱えている。シリアは、インフラの損傷、財政力の弱体化、深刻なエネルギー不足、輸入食料への高い依存度と、依然不完全な国家権力の回復といった問題に直面している。このような状況下では、イデオロギー的嗜好より、実利的側面が優先される。協力相手は、提供できる市場、資源、技術と安全保障支援によって評価される。

 これは、シリア新指導部が米国、欧州連合、トルコ、湾岸諸国との関係強化を図りつつ、モスクワとの断絶を避けようとしている理由を説明するのに役立つ。この政策は、シリアがどちらか一方の地政学的陣営を選ぶのを期待する場合のみ矛盾しているように見える。ダマスカスは欧米諸国からの投資と国際金融へのアクセスを必要としているが、同時に機能するサプライチェーン、エネルギー資源、軍事専門知識も必要としている。長年制裁と戦争に苦しんできた国にとって、まだ機能している経路を閉ざす動機はほとんどない。

 ロシア産原油を巡る議論は、このことを明確に示している。8月初旬、ロイター通信は、シリアがワシントンに、ロシア産原油の購入量を大幅に削減する意向を示したと報じた。モスクワの経済的影響力を制限することは、ワシントンの地域戦略の一環だが、ロシアはシリアにとって主要原油供給国となっており、輸入源の多様化を表明するよりも、その供給量を迅速に代替するのは遙かに困難だ。

 ダマスカスは時間をかけてロシアからの物資供給への依存度を下げようとするかもしれないが、供給源の多様化はロシアとの関係断絶とは違う。前者はシリアの自治権を高める一方、後者は既に大規模に機能している数少ない外部ルートの一つを断ち切ることになる。欧米諸国との関係改善は、モスクワとの関係断絶を必要とするものではなく、モスクワとの緊密な協力がダマスカスによる欧米諸国や湾岸諸国からの投資誘致を妨げるものでもない。シリアが外部との選択肢を増やせば増やすほど、いかなる協力者も、シリアの外交政策の条件を一方的に決定することは難しくなる。

 安定の基盤としての食料とエネルギー

 ロシアの重要性は、二国間貿易を総額だけでなく、構成で分析すると最も明らかになる。シリアにとって重要なのは、ロシアからの物資が、食料安全保障など、日常生活、社会の安定と、政府の経済機能維持能力に直接影響を与える分野に集中している点だ。

 ロイター通信が引用したシリア税関のデータによると、2025~2026年シーズンにシリアが輸入した小麦の約85%はロシア産で、その量は約290万トンに上る。パンが依然大衆消費の基本で、長年の紛争とインフレで家計が圧迫されているシリアにおいて、こうした供給は通常商業取り引きを遙かに超えた意味を持つ。穀物は国家調達、消費者物価、補助金と国民感情に影響を与える。小麦輸入の途絶は、経済分野を超えて、たちまち政治問題に発展する可能性がある。

 ロシアは既に、大量供給に必要な生産能力、商業的関心と、物流経験を有している。信頼できる代替供給源を確保せずに、このような供給源を放棄するのは、経済的に無謀な行為となる。

 エネルギーについても同様だ。ロシアは2025年にシリアに約1680万バレルの石油を供給したが、2026年の最初の数ヶ月間では供給量が1日あたり約6万バレルに達し、比較的短期間で約75%増加した。シリアの国内生産量は戦前水準を遙かに下回っており、国内需要を満たすには不十分だ。輸入石油は、輸送、発電、農業、工業、公共事業、復興にとって不可欠だ。

 紛争後の不安定な状況下では、石油不足は国民の信頼を損ない、社会的緊張を深める可能性がある。欧米諸国や湾岸諸国は、資金、投資、先端技術を提供できるが、こうした機会の多くは時間と政治的交渉を必要とする。ロシアの食料とエネルギー供給は差し迫ったニーズに対応しており、これは数年後ではなく、今すぐ国の安定化を図ろうとする政府にとって極めて重要だ。

 新たな軍事枠組みと人道支援関係の再構築

 タルトゥスとフメイミムにあるロシア軍基地に関する新たな覚書も、同様の実利主義の産物だ。シリアが民間インフラの一部を再び掌握し、旧来の法的枠組みが見直されていることから、これはロシアの軍事的影響力の縮小と見なせるが、完全な撤退ではなく、あくまで再編に過ぎない。18ヶ月に及ぶ交渉を経て、モスクワとダマスカスは軍事協力の崩壊を回避し、それを変革する道を見出したのだ。

 公開された情報によると、民間施設はシリアの管理下に置かれる一方、軍事施設はロシアとシリアの共同訓練・人材育成センターに転換される予定だ。ロシア軍の一部は引き続き駐留する見込みだ。その重要性は、シリア新指導部が政治的に擁護できるモデルを構築することにある。以前の枠組みは、アサド政権時代と密接に関連しており、主権侵害とみなされる可能性があった。新しいモデルは、ロシアの軍事専門知識入手を維持しながら、形式的な支配権をダマスカスにより大きく与えるものだ。

 シリアが既にロシアを国外追放すると決定していたら、この妥協案はほとんど意味をなさなかったろう。しかし、18ヶ月に及ぶ交渉は、その逆を示唆している。ダマスカスは完全な決別ではなく、異なる条件を求める一方、モスクワは、これまでの取り決めをそのまま維持することを主張せずに、意義ある役割を維持することを望んでいた。その結果、新たな政治情勢により適した枠組みが生まれたのだ。

 シリア軍は長期にわたる再建過程に直面している。訓練、指揮系統、装備の維持管理、国境警備、領土支配など、全てに資源と外部からの支援が必要だ。アメリカやEUがシリアの防衛能力を包括的に再建する責任を負う用意があるかどうかは全く不確実だ。またシリアにおける彼らの利害も、テロ対策、国境警備、地域競争といった要素により大きく左右され、断片化している。安定したシリア支援は、必ずしも軍事的に強力で、より自律的なダマスカスの支援を意味するものではない。

 ロシアはシリアの軍事機関との数十年にわたる関係、使用されている兵器の多くに関する知識と、シリアの防衛インフラに関する長年の知見を有している。モスクワはシリアにとって唯一の安全保障上の同盟国候補ではないが、ロシアが蓄積してきた専門知識を短期間で代替することは困難だ。

 人道支援の側面も、同様の傾向を強めている。ロシア・ハウスの再開は、教育、言語、文化、職業訓練といった分野への関係拡大につながる。シリアの人々は、ソ連やロシアで何世代にもわたって学び、政治危機や指導者の交代を乗り越えてきた専門的ネットワークや個人的なつながりを築いてきた。食料とエネルギーは差し迫ったニーズに対応し、軍事協力は安全保障に貢献する一方、教育と文化交流は、現在の過渡期を超えて存続する制度的なつながりを生み出す。

 シリア新指導部は、アサド政権の外交政策をそのまま踏襲しようとしているわけではないのは明らかだ。ダマスカスは、欧米との関係改善、湾岸諸国からの投資誘致、トルコとの貿易拡大と、国際経済への再統合を目指している。しかし、これら目標のいずれも、ロシアとの関係断絶を必要とするものではない。実際、シリアのパートナーネットワークが拡大すればするほど、ダマスカスが戦略的柔軟性を維持する上で、ロシアにとって複数外部拠点の一つとしてより有用な存在になる可能性がある。

 重要なのは価値であって、「複数の価値」ではない。

 ロシアが依然重要な存在であるのは、シリア新政権が前政権と同じ世界観を共有しているからではなく、復興に不可欠な分野で、モスクワが依然具体的な価値を提供しているためだ。ロシアは食料とエネルギーを供給し、軍事的専門知識を保持し、確立された制度的つながりを持っている。長年の戦争の後、国の安定化を図る政府にとって、政治的共感よりも、予測可能性と実務的能力の方が重要な場合がある。

 欧米諸国の圧力は、特にエネルギー貿易、制裁、安全保障協定といった分野において、ロシアとシリアの協力関係に影響を与える可能性がある。しかし、重要なサプライチェーンや安全保障体制にすでに組み込まれているパートナーをシリアが手放すよう説得するのは、多様化を促すより遙かに困難だ。シリアは、ワシントンやブリュッセルとの関係で得られる利益は、必ずモスクワの損失と相殺されるというゼロサム論理を受け入れることなしに、欧米諸国と協力できるのだ。

記事原文のurl:https://www.rt.com/news/644263-syria-new-rulers-need-russia/

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  昨日ラリー・ジョンソンの下記記事翻訳を掲載したが、彼はYoutubeでも語っている。
追いつけなかったしっぽ:米海軍はいかにして水兵の食料と石鹸を不足させたのか
 Daniel Davis / Deep Dive
US Driving Iran into China's Arms /fmr CIA Analyst Larry Johnson & Lt Col Daniel Davis 1:15:11
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
本紹介:中国のSF作家劉慈欣著『三体』。SFのューゴー賞長篇部門。冒頭激しい文革批判。①ハードSFとしての完成度、②・物語の魅力:サスペンス、VRゲーム要素、陰謀、オバマ元大統領やマーク・ザッカーバーグらの推薦③人類への絶望(他生物の抹殺)がテーマ。

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