« 状況を一変させる出来事:フーシ派がサウジアラビア・タンカーを攻撃し、危機は新たな局面を迎えた | トップページ | 対イラン戦争:アメリカのミサイル防衛兵器備蓄は深刻な枯渇状態にある »

2026年7月30日 (木)

映画『オデュッセイア』について世界が語る中「アキレウスの盾」を掲げ、イスラエルとの共同開発計画を推進するギリシャ


Erkin Oncan
2026年7月26日
Strattgic Culture Foundation

 アキレウスの盾に再び脚光を浴びせるべくギリシャ政府は動き出した。だか今回、この伝説の盾は冶金の神ヘパイストスに鍛造されるのではなく、イスラエルが製造する。

❗️Telegram Twitter , と VK でご参加願いたい。

お問い合わせ: info@strategic-culture.su

 クリストファー・ノーラン監督待望の新作映画『オデッセイア』は公開以来世界で最も話題を呼んだ作品の一つとなり、様々な点で注目を集めている。

 この映画の原作となった叙事詩『オデュッセイア』によると、トロイア戦争後、10年にわたる帰郷の旅の間、イタカの王オデュッセウスは半神半人の戦士アキレウスが死後所有していた伝説の盾を携えていた。実際、映画『オデュッセイア』では、オデュッセウスが冥界(ハーデース)でアイアスの霊と出会い、彼らの間の争いの原因になった武器についても語られている。

 ホメロスの『イリアス』で詳細に描かれる「アキレウスの盾」は海の女神テティスの依頼を受け冶金の神ヘパイストスが鍛造した神話上の産物だ。英雄ヘクトルとの戦いで、アキレウスはこの盾を使い、それに刻まれている宇宙の精緻な描写で有名になった。

 この映画を通して、古代叙事詩について、世界が再び議論を交わす中、これら神話の舞台とされるギリシャが伝説の盾を現代に蘇らせた。だが今回、この盾は、ヘパイストスに作られるのではなく、イスラエルが製造する。

 ギリシャ安全保障理事会(KYSEA)は同国の防衛戦略に関する重要提案を承認した。総額48億9000万ドルに上るこの提案は、ギリシャの軍事近代化計画における最も重要な措置の一つとみなされている。

 この提案には「アキレウスの盾」と呼ばれる統合防空システムの開発に加え、新たな監視能力、輸送機、無人航空機とギリシャ海軍と陸軍の近代化計画が含まれている。
 
「アキレウスの盾」の中身は一体何なのか?

 「アキレウスの盾」は人工知能でデータ統合する多層構造防空システムだ。

 大部分がイスラエルで生産されるこのシステムは様々なセンサーや兵器からのデータを単一統合指揮統制(C2)ネットワークに統合する。これにより、軍司令官は脅威をリアルタイムで検知し、優先順位付け、対応することが可能になる。

 このシステムは、戦場データを分析し、優先順位に基づいて標的をランク付けし、戦術対策を提案する機能も備えている。

 従来の防空システムでは、レーダーが目標を探知し、それに接続されたミサイルが攻撃する。

 だが「アキレウスの盾」は違う概念に基づいて動作する。人工知能の支援により、システムは迫りくる脅威に対して最も適切な対応策を判断する。

 このプロジェクトにおけるイスラエルとの関係は単一ミサイルの購入にとどまらない。レーダー、迎撃ミサイル、指揮統制インフラ、戦闘管理ソフトウェアなど幅広い分野にわたる協力関係を意味する。

 「アキレウスの盾」のイスラエル製構成要素中で最も重要なものの一つは、イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ(IAI)が製造するバラクMXだ。このシステムには、レーダー、指揮統制センター、ミサイル発射装置、迎撃ミサイルなどが含まれる。

 もう一つの重要な要素は、イスラエル防衛企業ラファエル・アドバンスト・ディフェンス・システムズ社が製造する「ダビデの投石器」だ。このシステムは、弾道ミサイル、長距離ロケット、巡航ミサイルに対抗するように設計されている。

 「アキレウスの盾」に搭載されると予想されるもう一つのシステムは、ラファエル・アドバンスト・ディフェンス・システムズ社製の短・中距離地上配備型移動式防空システム「ラファエル・スパイダー」だ。これはドローン、低空飛行機、ヘリコプターを迎撃するために配備される。迅速な展開能力と機動性が主な利点だ。このシステムは、特に島嶼防衛に適していると考えられている。

 ギリシャの動きを、単なる従来型兵器購入として評価するだけでは、この地域で起きている変革を理解するのに不十分だ。このプロジェクトを通してギリシャは単に技術を購入するだけではない。エーゲ海と東地中海地域にイスラエルの防空教義を適用しようとしているのだ。

 大半の資金はイスラエルに支払われる。

 総額48億9000万ドルのこのプロジェクト中、約30億ドルが「アキレウスの盾」計画に割り当てられると予想されている。この資金の大部分はイスラエル防衛企業に支払われる。だが、この合意には「地元企業の参加」という要件も含まれている。プロジェクトの少なくとも25%はギリシャ企業により実施される。これは約8億ドル相当の事業機会がギリシャにもたらされることを意味する。

 ギリシャのニコス・デンディアス国防相によると「アキレウスの盾」は、ギリシャ政府の「アジェンダ2030」防衛戦略の中核要素の一つだ。

 この戦略は一言で要約できる。つまり防衛を、技術中心のネットワーク化された多層的システムに転換することだ。

 「アキレウスの盾」計画に加えて、非動力学的方法で、敵対的な無人航空機を無力化するよう設計された電子戦システム、長距離の情報収集、監視、偵察任務用のHERON 1無人航空機、あらゆる気象条件下で独立した地球観測能力を実現する合成開口レーダー(SAR)マイクロ・サテライト、追加のV-BAT垂直離着陸(VTOL)ドローン10機、および新しい軍用輸送機などの追加計画もギリシャ安全保障理事会は承認した。

 9月に同計画の次段階を国防省が発表する予定だ。この枠組みの中で、ギリシャは2027年から2037年までの長期防衛計画枠組みも提示するとみられている。

 ギリシャがこれらの新たな協力関係と戦略的狙いを通じて目指しているのは単に技術を購入する国になることではなく、技術開発の同盟国になることだ。

 だがイスラエルにとって、このプロジェクトの重要性は金銭的利益を遙かに超える。

 このプロジェクトからイスラエルが得られる最大の恩恵は、ギリシャとトルコが、ともに重要な役割を担うエーゲ海と東地中海という重要地域で、自国の防衛システムがどのように機能するかを観察できることだ。

 言い換えれば、今後はギリシャが関与する全ての紛争が、これまで以上に綿密かつ慎重にイスラエルによって監視されることになる。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/07/26/while-the-world-talks-about-odyssey-greece-makes-its-achilles-shield-move-developed-jointly-with-israel/

----------

 植草一秀の『知られざる真実』
日本を破壊する高市暴政

« 状況を一変させる出来事:フーシ派がサウジアラビア・タンカーを攻撃し、危機は新たな局面を迎えた | トップページ | 対イラン戦争:アメリカのミサイル防衛兵器備蓄は深刻な枯渇状態にある »

ギリシャ」カテゴリの記事

イスラエル・パレスチナ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 状況を一変させる出来事:フーシ派がサウジアラビア・タンカーを攻撃し、危機は新たな局面を迎えた | トップページ | 対イラン戦争:アメリカのミサイル防衛兵器備蓄は深刻な枯渇状態にある »

お勧め

  • IWJ
    岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

カテゴリー

ブックマーク

最近のトラックバック

無料ブログはココログ