この戦争は、なぜもっと早く進行しないのか

ティム・カービー
2026年7月25日
Strattgic Culture Foundation
発言内容をロシアは変えているものの、大規模攻勢に出る理由はないとティム・カービーは述べている。
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最近、ウクライナ紛争を「特殊軍事作戦」ではなく「戦争」とドミトリー・ペスコフ大統領報道官が呼ぶようになった。もちろん、これは大きな話題になっている。なぜなら、エスカレーションは常に刺激的な話題で、キーウ上空では実際事態が激化しているからだ。最近のロシア軍攻撃は、オデーサ港と船舶への攻撃、キーウの民間人居住地域に近いため「安全」とされていたドローン製造施設への攻撃、ウクライナ軍が敵地で燃料補給を行っていた数百のガソリン・スタンドの破壊など、より広範囲かつ激しいものになっている。要するに、ロシア軍は長年にわたる紛争の中でこれまで「立ち入り禁止」と思われていた標的の攻撃を開始したのだ。2026年夏に「大きな」出来事が起こると評論家たちは予測していたが、おそらくこれがその「大きな出来事」で、彼らが期待していたメディア受けする「赤い矢」作戦ではないのだろう。たとえ政治家たちが、この用語を放棄し始めたとしても、当面の間、この紛争は特殊軍事作戦のままだろう。ここでのエスカレーションは垂直方向ではなく水平方向だが、なぜそうなるのか詳しく見て行こう。
これが全面戦争に発展しない理由として誰もが覚えておくべき重要な点は、プーチン大統領が非常に法律を重んじ、法律を非常に重視していることだ。ペスコフ報道官発言とロシアの法律は全く別物だ。国家院は伝統的な意味での宣戦布告を決議していない。とはいえ、過去のテロ攻撃を受けてロシアは宣戦布告を検討したのは確実で、宣戦布告のための文書はいつでも署名できるよう準備されている可能性がある。しかし、全面戦争の事前準備が行われているかどうかに関わらず、プーチン大統領は、即興の発言ではなく、法的な枠組みが承認された場合にのみ、大規模拡大を実行するだろう。新たな法律が制定されていないことは、全面的集団攻撃は行われないということだ。何十年も権力を握ってきたウラジーミル・ウラジーミロヴィチが、突然「私がそう言ったので今こそ全面戦争だ」と宣言することはない。それは彼のやり方とは全く異なるものだ。しかし、もしそのような法案がドゥーマ(下院)で可決されれば、それは全く別の議論になるが、今のところ、法的枠組みは変わらない。
「タカ派、一般市民、軍幹部、あるいはその全てからロシアを総動員するようプーチン大統領は圧力を受けている」という一種の神話が常に存在する。だが、どの強大な国の指導者も、統治期間中、昼夜を問わず多くの派閥から圧力を受けているのが真実だ。プーチンが圧力を受けていない時などあっただろうか? ロシアで世論は重要視され、監視されているが、ロシアは正教文明で、神の言葉は教会内の少数の専門家に解釈され、社会の残りの人々はそれに従う。ロシアは、誰もが聖書を読み、そこに自分なりの真理を見出し、全知全能の専門家だと宣言するようなプロテスタント国家ではない。戦争の論理を理解できないかもしれないロシア国民は「知らないことがあるかもしれない」と割り切り、皇帝の決定を信じることで満足している。国民は忠誠心があり、忍耐強く、上記のような権威に対する正教的な態度を持っている。だが、クレムリンの「臆病さ」に、ロシア人がまだ反旗を翻していないのを信じられない人は、こう自問自答してみよう。メキシコとアメリカが戦争になったとして、ガソリン価格が少し上がったとか、TikTokが使えなくなったとかいう理由で、首都を襲撃して降伏を要求するだろうか?
戦争が始まった頃を振り返ってみると、ウクライナがモスクワに進軍すると欧米諸国の指導者連中は予想もしていなかった。彼らは、この紛争と、その戦いを正当化する制裁により「ルーブルは紙屑と化し」、ロシア経済は「崩壊する」と確信していた。欧米の政治家たちは未だ冷戦思考に囚われており、ソ連は軍事的に敗北したのではなく、イデオロギーと経済面で敗北したのだ。そのため、2022年には、ロシアを破滅させるのは通貨、原油価格と、制裁であり、緑のシャツを着た指導者、ゼレンスキー大統領率いる攻勢ではないように思われた。ウラジーミル・ウラジーミロヴィチはこのことを良く理解しており、欧米イデオロギーは、ほとんどの欧米諸国の人々にとっても忌まわしいものとなっているため、本当の「戦場」は経済だ。ロシアは20回もの制裁を乗り越えただけでなく、繁栄を遂げ、グローバリスト支配から軽々と脱出した。だが、この分離独立が根付くには時間が必要なのかもしれない。クレムリンの視点からすれば、経済世界の変化は彼らにとって都合が良いのかもしれない。だからこそ、急ぐ必要はないのだろう。物事が順調に進んでいるなら、時間をかけても構わないではないか。兵士を危険から遠ざけ、経済発展という本当の戦線で戦う方が良いのではないか。もしロシアが国家主導の資本主義という緩慢な戦いで成功を収めているなら、その立場を変える根本的理由はない。
兵士の保護について言えば、軍事戦略を念頭に置いてアパート群を建設したソ連技術者たちは、実に優秀な人物たちだったと言える。どの建物も、想像を絶するほどの攻撃に耐え、地下室は掩蔽壕と化しているが、これらの建物はロシア本土外にあるため、防御設計はSMO開始以来、クレムリンに対して利用されてきた。特に爆撃で跡形もなく破壊することが選択肢にない場合、都市や村を迅速に安全に制圧する方法は、いまだ存在しない。この戦争は、ドンバスを破壊するためではなく、救うために行われたのだ。戦争に関するペスコフ報道官発言は、この現実を変えるものではない。この問題を考えると、専門家たちが望むほどロシアが速く進撃するのは不可能で、現地住民をクレムリンが救おうとしている地域で、本物の戦争になることもない。この乗り物に二速ギアはなく、ただゆっくり進むだけだ。
最近ロシアが、標的を水平方向に拡大させる一方、垂直方向への拡大を依然恐れている理由の一つは、核戦争の瀬戸際にあることをクレムリンが十分理解しているからだ。更に、彼らはエプスタイン・エリート層がいかに邪悪で、狂気に満ち、自己中心的かも知っている。エプスタインの周辺にロシア・スパイがいるというニュースが全て捏造だとしても、彼らは自分たちが誰を相手にしているのか知っている。欧米諸国に対してロシア人が抱く純朴さは時に驚くべきもので、この紛争が始まった理由の一つでもあるが、現時点では全ての仮面が剥がれ落ち、EUを牛耳る悪魔連中の目をロシア指導部が見つめているようだ。ブリュッセルの闇金融のしもべ連中がこのチェスゲームで負ければ、怒りに任せて盤面をひっくり返し、人類を核の炎で焼き尽くす可能性も十分ある。これが、バラはどんな名前で呼ばれようと香りは変わらないもう一つの理由で、最近のペスコフ報道官発言は核シェルターを掘り始める理由にはならない。クレムリンの行動から推測できる重要な戦略目標の一つは、彼らが核戦争を一切望んでいないことだ。紛争のエスカレーションに関して言えば、彼らはこれまでも、そして今なお、圧倒的に「冷静な判断力」を維持している。クレムリンには核戦争を回避するため長期的戦略を講じる覚悟がある。ヨーロッパは静かに事態の収束に向かう必要があるのだ。
2026年の夏は、リヴィウとキーウでの逮捕、解雇、抗議活動など、ゼレンスキー政権にとって厳しいものだった。彼の強制捜査、弾圧j、この戦争における大規模な軍事的失敗と広報戦略は臨界点に達しつつある。欧米諸国が東欧の大国を不安定化させるのを夢見ていたとすれば、ウクライナでは確かに成功したと言えるだろう。ゼレンスキーは沈みゆくこの船をどれだけ長く持ちこたえられるのだろう? 誰も答えを知らないが、帆が破れ、甲板では火が燃え、敵のガレオン船で男たちが水を汲み出しているのを見れば、敵船への乗船作戦を呼びかけ理由はない。今はただ立ち向かい発砲する時だ。キーウのラクダの背で最後の藁がいつ折れるか誰にもわからないが、ラクダは確実に重荷を背負っているように見える。
2026年夏に予定されていた大規模エスカレーションは実際起きた。それは水平方向へのエスカレーションで、ロシア内の標的として、これまで聖域だった多くの地域が追加された。だがロシアの主張は変化してはいるものの、ロシアが大規模攻勢に出る理由はない。母なるロシアは受けた攻撃に対して必ず反撃する。戦争の性質、あるいは特殊軍事作戦の性質は、全面戦争宣言が法律として制定されるまで根本的には変わらないだろう。そして現時点でそのような必要性はない。今後もこの戦争は、メディアにとって不都合なものであり続ける。
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/07/25/why-the-war-wont-go-any-faster/
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植草一秀の『知られざる真実』』
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