« この戦争は、なぜもっと早く進行しないのか | トップページ | 対イラン戦争:他所で戦争が進行する中、再び保留された直接行動 »

2026年7月28日 (火)

バブ・エル・マンデブ危機と経済戦争の新たな最前線

アッバス・ハシミテ
2026年7月26日
New Eastern Outlook

 バブ・エル・マンデブ危機は、現代の戦争における広範な変革を象徴するもので、海上貿易とグローバル・サプライチェーンの混乱が従来の軍事作戦と同等の戦略的重要性を持つようになり、新たな法的、外交的、安全保障上の対応が求められている。

 

 戦場から輸送航路へ

 最近のアメリカ・イラン紛争の展開は、現代の戦争は、もはや戦場だけで戦われるのでなく、航路や、エネルギー回廊、サプライチェーン、金融ネットワークに沿って戦われることを示している。代理勢力とサウジアラビアの間で最近エスカレートした緊張を受けて、アラビア半島とアフリカ間に位置し、紅海とアデン湾、インド洋を結ぶバブ・エル・マンデブ海峡を封鎖するというフーシ派の発表は、現代の紛争では、運輸航路が戦略標的になっていることを示している。イエメンの首都へのイラン機着陸を阻止するために、サウジアラビアがサヌア空港を攻撃したとされることで両者間の緊張が高まった。

 これらの脅威的事態の根本原因が中東全体を不安定、暴力、混乱に陥れたアメリカの一方的攻撃と介入主義的姿勢にあるため、新たな海洋規則や法律を制定するだけでは不十分だ。

 バブ・エル・マンデブ海峡は、最も重要な貿易航路の一つだ。通常、世界の年間海上貿易の約14%がバブ・エル・マンデブ海峡を通過し、大部分は化石燃料だ。国際エネルギー機関(IEA)によると、2025年には、1日あたり約420万バレルの石油と石油液体がバブ・エル・マンデブ海峡を通過すると予測されている。これは世界の海上石油輸送量の約6%に相当する。ホルムズ海峡封鎖により、世界は既にエネルギー危機やインフレに直面していることから、フーシ派による脅威が世界的注目を集めている。同海峡は、世界のエネルギー貿易の約20%が通過する航路だ。

 経済的な強制手段として利用される海上交通の要衝

 近代史上初めて、この二つの海上交通の要衝が同時に継続的攻撃にさらされている。推定によると、これら二つの海峡における同時多発的な海上交通の混乱は、世界の石油供給量の約25~26%を遮断し、世界のコンテナ輸送業者の最大30%を脅かすことになる。更に、バブ・エル・マンデブ海峡の部分的封鎖は、保険料の上昇、輸送経費の増加、エネルギー供給の遅延と、世界の海上サプライチェーンの混乱を招く。これら要因は全て、世界的エネルギー危機を悪化させるだけでなく、世界的インフレの加速にもつながる。グローバル化により、これら航路は不可欠なものとなり、特に非対称戦争において、地政学的圧力の戦略的手段になっているためだ。

 これは海上交通の要衝が現代戦における戦略的戦場になりつつあることを示している。従来の戦争では、各国は都市、領土、軍事基地を攻撃していた。しかし、近年の傾向を見ると、現代の紛争では港湾、パイプライン、海底ケーブル、物流、金融ネットワーク、航路が標的になることが増えており、戦争の様相が大きく変化していることがわかる。これらの要因全てが、現代戦における交戦当事者の本当の狙いが、標的破壊ではなく、自国権益を確保するため、経済的代償を増大させることなのを示している。世界的インフレの進行とエネルギー危機のため、既に同盟諸国とライバル諸国両方から戦争終結を求める国内外の圧力にトランプ政権は直面している。バブ・エル・マンデブ海峡の部分的封鎖でさえ、この圧力を未曾有のレベルにまで高めることになる。

 現代の海洋紛争における法的な空白

 近年の現代戦の変容は国際安全保障に対する深刻な懸念を引き起こしている。この新たな脅威に対し、フーシ派は国際海洋法、特に1856年のパリ宣言とサンレモ海事規則の曖昧さを悪用している。これらの法律や規則は国家のみ念頭に策定されたもので、非国家主体の行動に対応できていない。フーシ派によるバブ・エル・マンデブ海峡の部分封鎖は、管轄権と責任と事態沈静化に向けた対応策のあり方に深刻な疑問を投げかけている。この封鎖に対する軍事対応は、地域全体を巻き込むエスカレーションを引き起こしかねない。

 相互依存の世界における海洋安全保障の再考

 現代戦の変容は、海洋安全保障に関する戦略的な明確化が今こそ必要なことを示している。現状と危機を鑑みると、新たな海洋法枠組みが不可欠だ。しかし、いかなる新たな仕組みも、より慎重かつ包括的なものとなるように策定されなければならない。欧米諸国が一方的に押し付けるグローバル海洋法は、ロシアや中国や台頭する中堅諸国にとって到底受け入れられるものではない。更に、新たな海洋規則や法律を策定するだけでは不十分だ。こうした脅威的事態の根本原因は、中東全体を不安定、暴力と混乱へと導いたアメリカの一方的攻撃と介入主義的姿勢にあるためだ。従って、この紛争の根本原因に対処する上で、国際機関が重要な役割を果たす必要がある。

 更に、国際機関や国際組織の構造も変更する必要がある。全ての国家に平等な権利が与えられるべきだ。加えて、イスラエルやアメリカなどの攻撃的な国々が他国の主権を侵害するのを防ぐためには、国際的な合意と枠組みが不可欠だ。また、この不必要な戦争を終わらせるために、世界はトランプ政権への外交圧力を強める必要がある。この戦争の影響はアメリカ国内でも、あらゆる家庭に及んでいるため、アメリカ国民もそれぞれ役割を果たす必要がある。また、中東における継続的な緊張の高まりが、世界経済に影響を及ぼすことを世界は認識する必要がある。

 アッバス・ハシミテは、地域および世界の地政学的問題に関する政治評論、リサーチ・アナリスト。現在、研究者、ジャーナリストとして活動。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/07/26/the-bab-el-mandeb-crisis-and-the-new-frontline-of-economic-warfare/

----------

 東京新聞 朝刊 一面
 強引国会「反省点ない」

 首相 疑念に答えないまま成果強調

 閉会受け会見

 定数削減「まい進する」

 首相、早期成立意欲
 東京新聞 朝刊 二面  
 イラン攻撃停止 進言か

 米軍司令官「効果限定的」

 痛いトランプ氏

 ガソリン高騰、ミサイル枯渇

 離れる支持、出口戦略描けず

 「美しい妹」は誤訳、首相落胆

« この戦争は、なぜもっと早く進行しないのか | トップページ | 対イラン戦争:他所で戦争が進行する中、再び保留された直接行動 »

イラン」カテゴリの記事

アメリカ軍・軍事産業」カテゴリの記事

イスラエル・パレスチナ」カテゴリの記事

イエメン」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« この戦争は、なぜもっと早く進行しないのか | トップページ | 対イラン戦争:他所で戦争が進行する中、再び保留された直接行動 »

お勧め

  • IWJ
    岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

カテゴリー

ブックマーク

最近のトラックバック

無料ブログはココログ