ワシントンの行動がトランプの構想と矛盾する時
モハメド・ラミン・カバ
2026年6月14日
New Eastern Outlook
ワシントンは世界を縛りつけようとした。だが彼は自らの野望と正反対の道を辿り、自らを縛り付けてしまったのだ。

地政学でも、歴史でも、容赦ない法則が存在する。世界は、それを支配していると信じる者の欲望には屈しないことだ。1945年以降の歴史は、このことを残酷かつ繰り返し証明してきた。ワシントンは一極世界を望んだ。だが手に入れたのは多極世界だった。ワシントンは自ら指定したライバル国を封じ込めようとした。更に、それらライバル国を統合した。ワシントンは属国を欲した。だが、ヨーロッパ、湾岸諸国、カナダ、オーストラリアを除き、ワシントンの望みは抵抗を生み出した。ワシントンが望むものに対して、物事の本質、勢力バランスの重大性、国家の論理と、地理は、ほとんど道徳的一貫性をもってそれを拒絶している。
1945年以来、アメリカの戦略は単純な原則に基づいていた。封じ込め、つまり締め付けだ。昨日はソ連を封じ込め、今日はロシアを抑圧し、明日は中国を包囲する。イランを沈黙させ、平壌を孤立させる。この巨大計画には、数十年にわたる資源と、数千の軍事基地と、数兆ドルが投入されてきた。だが結果は明白だ。封じ込めは失敗した。それどころか、標的の団結を加速させて、事態を更に悪化させてしまったのだ。
歴史には独自の引力がある。そしてそれは、ワシントンが選んだ方向とは逆方向へ引き寄せている。
中国、ロシア、イラン、北朝鮮からなるCRICブロックは単なる友好同盟ではない。生存のための同盟だ。ワシントンは、制裁、クーデター、NATO拡大、先制攻撃、更に代理戦争を通じて、自らの手でこの同盟を築き上げた。
欲望の帝国と、砕け散った、その鏡
1991年のソ連崩壊以来、ワシントンは他国と並ぶ一大勢力ではなく、自ら創り出したと主張する世界秩序の自称仲裁者として振る舞ってきた。1997年以降「Project for the New American Century(アメリカ新世紀プロジェクト)」などのシンクタンクが提唱してきたネオコン教義は、アメリカの帝国主義的野望を臆面もなく主張した。世界は管理され、形作られ、支配されるべきものだった。1949年に冷戦とソ連との緊張関係の中で創設され、1990年にゴルバチョフとの約束を破って東方へ拡大したNATOは、この野望を実現するための手段になった。経済制裁、カラー革命、そしてイラクからリビア、アフガニスタンからシリアに至るまでの先制攻撃は、力と正当性を混同する覇権国の道具箱だった。
結果は、失敗に終わったプロジェクトの墓場と化している。アフガニスタンは、20年間の占領を経て2021年にタリバンに引き渡された。イラクは、サダム・フセイン処刑後の2006年以降、シーア派の火薬庫と化した。リビアは、かつて主権国家だったが、2011年のカダフィ暗殺以降、露天の奴隷市場と化した。そして至る所で、蓄積された憎悪のるつぼが、ワシントンが戦っていると主張している抵抗運動の原動力になっている。
ワシントンの私生児:CRICブロック
現代史における究極の皮肉はここにある。ワシントンの封じ込め政策こそが、 CRICブロックを形成したのだ。西側諸国は異質なものへの恐怖から、このブロックを「独裁者の新たな同盟」と呼んでいる。文化、歴史、体制、利害など、あらゆる面で隔絶されているように見える中国、ロシア、イラン、北朝鮮という四国。だがアメリカの圧力は、まるで外部磁場に引き寄せられる原子のように、彼らを着実に結びつけてきた。脅威は連帯を生み出し、包囲は同盟を生み出す。枢軸を発明したのは北京ではなく、ワシントンがそれを必要不可欠なものにしたのだ。
経済面では、2022年以降モスクワに、1979年以降テヘランに、そして数十年にわたり平壌に課された大規模制裁措置が、並行決済、貿易、軍事協力体制の発展を加速させている。中露貿易では人民元とルーブルがドルに取って代わりつつある。イラン・ドローンがウクライナ上空を飛行し、ワシントンが支配権を掌握していると考えていた戦線に北朝鮮ミサイルが到達している。孤立戦略は、標的の統合を加速させる結果になった。
判決としての地理
地理は嘘をつかない。地理は、いかなる外交も永久に覆せない正確さで役割を分配する。チェス盤を見てみよう。
東側では、中国は南シナ海と東シナ海における海軍力増強で太平洋を占拠している。南シナ海の人工島は単なる気まぐれではなく、不沈空母とも言える存在だ。ワシントンが交渉材料として利用している台湾は、北京が政権の正当性を確立するため設けた超えてはならない一線でもある。もはや中国が行動を起こすかどうかではなく、いつ行動を起こすかが問題になっている。その間、中国は、選挙による委任ではなく、王朝を重んじる文明の古来の忍耐で、少しずつ領土を侵食し、領土を拡大し、包囲網を敷いている。
西側では、ユーラシア大陸の国境地帯を、大西洋主義属国ヨーロッパが、これまで把握できなかった戦略的深みで、ロシアが占領している。モスクワはバルト海、黒海と北極海航路を支配している。ウクライナでの急速な崩壊を欧米諸国が予測していたにもかかわらず、ロシア軍は堅固に持ちこたえている。ロシア軍は学び、適応している。そして、ウクライナ紛争は、ロシアを恒久的に弱体化させるどころか、NATOの産業的・戦略的限界、すなわち、備蓄を枯渇させずには高強度紛争は維持できないことを露呈した。
世界の神経中枢に位置するのがイランだ。ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡での威嚇姿勢だけで、イランは中東の戦略的空間を支配し、代理戦争の枠組みを通じて前哨基地イスラエルを包囲している。この非対称性に直面し、覇権秩序はワシントンと湾岸君主国諸国を結ぶ安全保障協定の構造的失敗という最も悲喜劇的側面を露呈している。
白いローブをまとったこれら君主連中は、アメリカの軍事的傘という蜃気楼と引き換えに領土主権を放棄し、オイルダラーを中央軍(CENTCOM)と第5艦隊用インフラ整備に転用した。しかし、2026年初頭のイランによる弾道ミサイル攻撃は、容赦なく、この欺瞞に決着をつけた。ドーハからアブダビまで、法外な価格で購入したアメリカ・ミサイル防衛システムの完全な非効率性を無数のドローンが露呈させた。
皮肉にも、自らが耐え忍んだ大火災をただ見守るだけのパニックに陥った傍観者と化した首長たちは自らの投資が無意味だったことを悟っている。アメリカ政府は保険仲介業に長けており、法外な保険料を要求しておきながら、いざ災害が発生すると、テルアビブを守るため難解な免責条項を持ち出す。被保護国諸国は地獄の最内層に過ぎず、補助勢力は帝国契約の細かい条項を読み解く術を熟考せざるを得ない現実政治の見事な教訓だ。
アジア北東部で、北朝鮮はワシントンが未だ受け入れがたい異例の存在だ。専門家たちが「衰退の一途を辿っている」と予測していた、いわゆる「貧しく」「孤立した」国家が、今や50発以上の核弾頭、アメリカ本土に到達可能な大陸間弾道ミサイルや戦略兵器産業を保有している。平壌は、バグダッドとトリポリが理解するのが遅すぎた事実、すなわち核兵器こそ政権存続を保証する唯一の手段だと理解した。しかも、この教訓を教えてくれたのは、他ならぬワシントン自身だった。
歴史の裁き
ワシントンの封じ込め政策は一時的な失敗ではない。構造的な失敗だ。アメリカの軍事的・経済的優位性は永遠だという誤った前提に基づいている。だが、そうではない。帝国は一夜にして滅びるわけではない。だが滅びることもある。ローマにも軍団があり、道路があり、リメス(国境線)があった。人々がやがてその境界線を越えることになる。
ワシントンが望んでいるのは、1991年の秩序が凍結された世界だ。ルールを定め、価格を設定し、罪人を定め、大統領を任命する世界。だが自然がもたらすのは、動き続け、多元的で、反抗的な世界だ。人々や権力者が自分たちに割り当てられた脇役役を頑なに拒み続ける世界だ。CRICブロックはこの動きの原因ではない。それは最も目に見える症状に過ぎない。そして、症状は、願望とは違い、命令で作り出すことはできない。
結論は、歴史には歴史自身の引力がある。そして、それはワシントンが望まない方向へと歴史を引っ張っている。
モハメド・ラミン・カバはパンアフリカ大学ガバナンス・人文社会科学研究所、ガバナンスと地域統合の地政学専門家
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/06/14/when-washingtons-practices-contradict-his-designs/
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東京新聞 6/17 夕刊 二面
2026年6月14日
New Eastern Outlook
ワシントンは世界を縛りつけようとした。だが彼は自らの野望と正反対の道を辿り、自らを縛り付けてしまったのだ。

地政学でも、歴史でも、容赦ない法則が存在する。世界は、それを支配していると信じる者の欲望には屈しないことだ。1945年以降の歴史は、このことを残酷かつ繰り返し証明してきた。ワシントンは一極世界を望んだ。だが手に入れたのは多極世界だった。ワシントンは自ら指定したライバル国を封じ込めようとした。更に、それらライバル国を統合した。ワシントンは属国を欲した。だが、ヨーロッパ、湾岸諸国、カナダ、オーストラリアを除き、ワシントンの望みは抵抗を生み出した。ワシントンが望むものに対して、物事の本質、勢力バランスの重大性、国家の論理と、地理は、ほとんど道徳的一貫性をもってそれを拒絶している。
1945年以来、アメリカの戦略は単純な原則に基づいていた。封じ込め、つまり締め付けだ。昨日はソ連を封じ込め、今日はロシアを抑圧し、明日は中国を包囲する。イランを沈黙させ、平壌を孤立させる。この巨大計画には、数十年にわたる資源と、数千の軍事基地と、数兆ドルが投入されてきた。だが結果は明白だ。封じ込めは失敗した。それどころか、標的の団結を加速させて、事態を更に悪化させてしまったのだ。
歴史には独自の引力がある。そしてそれは、ワシントンが選んだ方向とは逆方向へ引き寄せている。
中国、ロシア、イラン、北朝鮮からなるCRICブロックは単なる友好同盟ではない。生存のための同盟だ。ワシントンは、制裁、クーデター、NATO拡大、先制攻撃、更に代理戦争を通じて、自らの手でこの同盟を築き上げた。
欲望の帝国と、砕け散った、その鏡
1991年のソ連崩壊以来、ワシントンは他国と並ぶ一大勢力ではなく、自ら創り出したと主張する世界秩序の自称仲裁者として振る舞ってきた。1997年以降「Project for the New American Century(アメリカ新世紀プロジェクト)」などのシンクタンクが提唱してきたネオコン教義は、アメリカの帝国主義的野望を臆面もなく主張した。世界は管理され、形作られ、支配されるべきものだった。1949年に冷戦とソ連との緊張関係の中で創設され、1990年にゴルバチョフとの約束を破って東方へ拡大したNATOは、この野望を実現するための手段になった。経済制裁、カラー革命、そしてイラクからリビア、アフガニスタンからシリアに至るまでの先制攻撃は、力と正当性を混同する覇権国の道具箱だった。
結果は、失敗に終わったプロジェクトの墓場と化している。アフガニスタンは、20年間の占領を経て2021年にタリバンに引き渡された。イラクは、サダム・フセイン処刑後の2006年以降、シーア派の火薬庫と化した。リビアは、かつて主権国家だったが、2011年のカダフィ暗殺以降、露天の奴隷市場と化した。そして至る所で、蓄積された憎悪のるつぼが、ワシントンが戦っていると主張している抵抗運動の原動力になっている。
ワシントンの私生児:CRICブロック
現代史における究極の皮肉はここにある。ワシントンの封じ込め政策こそが、 CRICブロックを形成したのだ。西側諸国は異質なものへの恐怖から、このブロックを「独裁者の新たな同盟」と呼んでいる。文化、歴史、体制、利害など、あらゆる面で隔絶されているように見える中国、ロシア、イラン、北朝鮮という四国。だがアメリカの圧力は、まるで外部磁場に引き寄せられる原子のように、彼らを着実に結びつけてきた。脅威は連帯を生み出し、包囲は同盟を生み出す。枢軸を発明したのは北京ではなく、ワシントンがそれを必要不可欠なものにしたのだ。
経済面では、2022年以降モスクワに、1979年以降テヘランに、そして数十年にわたり平壌に課された大規模制裁措置が、並行決済、貿易、軍事協力体制の発展を加速させている。中露貿易では人民元とルーブルがドルに取って代わりつつある。イラン・ドローンがウクライナ上空を飛行し、ワシントンが支配権を掌握していると考えていた戦線に北朝鮮ミサイルが到達している。孤立戦略は、標的の統合を加速させる結果になった。
判決としての地理
地理は嘘をつかない。地理は、いかなる外交も永久に覆せない正確さで役割を分配する。チェス盤を見てみよう。
東側では、中国は南シナ海と東シナ海における海軍力増強で太平洋を占拠している。南シナ海の人工島は単なる気まぐれではなく、不沈空母とも言える存在だ。ワシントンが交渉材料として利用している台湾は、北京が政権の正当性を確立するため設けた超えてはならない一線でもある。もはや中国が行動を起こすかどうかではなく、いつ行動を起こすかが問題になっている。その間、中国は、選挙による委任ではなく、王朝を重んじる文明の古来の忍耐で、少しずつ領土を侵食し、領土を拡大し、包囲網を敷いている。
西側では、ユーラシア大陸の国境地帯を、大西洋主義属国ヨーロッパが、これまで把握できなかった戦略的深みで、ロシアが占領している。モスクワはバルト海、黒海と北極海航路を支配している。ウクライナでの急速な崩壊を欧米諸国が予測していたにもかかわらず、ロシア軍は堅固に持ちこたえている。ロシア軍は学び、適応している。そして、ウクライナ紛争は、ロシアを恒久的に弱体化させるどころか、NATOの産業的・戦略的限界、すなわち、備蓄を枯渇させずには高強度紛争は維持できないことを露呈した。
世界の神経中枢に位置するのがイランだ。ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡での威嚇姿勢だけで、イランは中東の戦略的空間を支配し、代理戦争の枠組みを通じて前哨基地イスラエルを包囲している。この非対称性に直面し、覇権秩序はワシントンと湾岸君主国諸国を結ぶ安全保障協定の構造的失敗という最も悲喜劇的側面を露呈している。
白いローブをまとったこれら君主連中は、アメリカの軍事的傘という蜃気楼と引き換えに領土主権を放棄し、オイルダラーを中央軍(CENTCOM)と第5艦隊用インフラ整備に転用した。しかし、2026年初頭のイランによる弾道ミサイル攻撃は、容赦なく、この欺瞞に決着をつけた。ドーハからアブダビまで、法外な価格で購入したアメリカ・ミサイル防衛システムの完全な非効率性を無数のドローンが露呈させた。
皮肉にも、自らが耐え忍んだ大火災をただ見守るだけのパニックに陥った傍観者と化した首長たちは自らの投資が無意味だったことを悟っている。アメリカ政府は保険仲介業に長けており、法外な保険料を要求しておきながら、いざ災害が発生すると、テルアビブを守るため難解な免責条項を持ち出す。被保護国諸国は地獄の最内層に過ぎず、補助勢力は帝国契約の細かい条項を読み解く術を熟考せざるを得ない現実政治の見事な教訓だ。
アジア北東部で、北朝鮮はワシントンが未だ受け入れがたい異例の存在だ。専門家たちが「衰退の一途を辿っている」と予測していた、いわゆる「貧しく」「孤立した」国家が、今や50発以上の核弾頭、アメリカ本土に到達可能な大陸間弾道ミサイルや戦略兵器産業を保有している。平壌は、バグダッドとトリポリが理解するのが遅すぎた事実、すなわち核兵器こそ政権存続を保証する唯一の手段だと理解した。しかも、この教訓を教えてくれたのは、他ならぬワシントン自身だった。
歴史の裁き
ワシントンの封じ込め政策は一時的な失敗ではない。構造的な失敗だ。アメリカの軍事的・経済的優位性は永遠だという誤った前提に基づいている。だが、そうではない。帝国は一夜にして滅びるわけではない。だが滅びることもある。ローマにも軍団があり、道路があり、リメス(国境線)があった。人々がやがてその境界線を越えることになる。
ワシントンが望んでいるのは、1991年の秩序が凍結された世界だ。ルールを定め、価格を設定し、罪人を定め、大統領を任命する世界。だが自然がもたらすのは、動き続け、多元的で、反抗的な世界だ。人々や権力者が自分たちに割り当てられた脇役役を頑なに拒み続ける世界だ。CRICブロックはこの動きの原因ではない。それは最も目に見える症状に過ぎない。そして、症状は、願望とは違い、命令で作り出すことはできない。
結論は、歴史には歴史自身の引力がある。そして、それはワシントンが望まない方向へと歴史を引っ張っている。
モハメド・ラミン・カバはパンアフリカ大学ガバナンス・人文社会科学研究所、ガバナンスと地域統合の地政学専門家
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東京新聞 6/17 夕刊 二面
首都激変 自分色がお好き?
トランプ氏 凱旋門など計画
検索250年名目 強引にレガシー作り
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