戦争を要求するヨーロッパの声を聞いたロシア、備えはできていると宣言

アラステア・クルック
2026年6月29日
Strategic Culture Foundation
今やこれに対応して、ロシアはヨーロッパでの戦争に備える戦略的決定を下した。
❗️Telegram
お問い合わせ: info@strategic-culture.su
アメリカ・イラン間のルツェルン会談で展開された緊張緩和の枠組みは、当初のイランの10項目計画にほぼ忠実だった。一方、イランが既にIAEAによるイラン核施設査察に同意したとトランプ大統領とバンス副大統領は主張し(イランはこの主張を繰り返し否定している)、事態を意図的に混乱させている。バンスは、IAEAが今週査察を開始した可能性があると発表した。いや、この「枠組み」は、アメリカとの最終合意に達した場合、60%濃縮核兵器備蓄の希釈に対するIAEA監視の可能性のみを指している。
後に「イランは将来にわたり最高レベルの核査察に全面的に同意した」とトランプはソーシャルメディアで虚偽主張をした。実際は、ロシアの要請を受けて、イランとロシアの共同発電所、ブッシュ発電所をIAEAが査察しているに過ぎない。自国の関与に関して確実に遵守したいとロシアは考えているからだ。言い換えれば、これはロシアがIAEAへの遵守義務を果たすための要請なのだ。
その後(非常に良い合意が得られなければ)「軍事的に仕事を終わらせなければならないかもしれない」とトランプはイランに警告した。彼によれば、それには「約一週間」かかるという。更に、イランは凍結解除された資金を、ESCROW口座(アメリカが管理する口座)に保管し「国民のためにトウモロコシと大豆を購入する」必要があると付け加えた。「なぜなら、現在イラン国民は非常に飢えており、彼らは、もっぱらアメリカだけから購入しているからだ」と述べた。
つまり、今後何が起きるのかは明白だ。ニューヨークの不動産取り引きで培った交渉術にトランプは回帰しようとしている。 1987年にトニー・シュワルツが代筆した著書『(邦訳書名 トランプ自伝 アメリカを変える男)原題:Trump: The Art of the Deal=取り引きの技術で「極端で予測不可能な要求を突きつけることで、相手に不安を与え、譲歩を強要する」よう彼は勧めている。
つまり我々は、ケロッグ将軍の戦略に立ち返ることになる。プーチンやイランに対し有効な唯一の手段は圧力をかけること、更に圧力をかけることだとケロッグはトランプに助言したのだ。
トランプお馴染みの手口だ。最初は少し柔軟性を見せて相手を挑発し、交渉に引き込む。その後、イランが譲歩したという虚偽主張や極端な要求を突きつけて対イラン圧力を強める(同時にトランプ自身、怒れるネオコン支持層や国内支持基盤に強硬姿勢を示す)。
この種の圧力は、ニューヨークの不動産取り引きには有効かもしれないが、イランとロシアのどちらにも効果はあるまい。
こうした脅しは、イランに対して逆効果で、アメリカを衝突の道へ導く。「イスラマバード合意は圧力や強制の結果ではなく、イラン国民の抵抗と権威の結果だ」とイランの首席交渉官、ガリバフは反論した。
実務的観点から言えば、アメリカの軍事情勢に精通したウィル・シュライバーが指摘している通り、イランには「アメリカが戦場で投入できるよりも数が多く能力も高い」強みがあるのだ。
「私の見解では、ペルシャ湾地域での強力な米軍駐留はもはや全く維持不可能だ」とシュライバーは述べている。「彼らは今面子を保とうとしているだけだ。現時点で72時間に及ぶ高強度作戦を米軍が遂行できるとは到底思えない」と彼は結論している。
「だが彼らは試みるだろう。おそらくトランプのはったりだが、優位に立つため、最後の切り札を切ろうとしても驚かない。(おそらくは中間選挙後で、アメリカが軍需品不足をある程度解消した後だ)」
これに対して、イランはホルムズ海峡を再封鎖し、同時に地域(湾岸)インフラを攻撃する可能性が高い。トランプはどちらが先に「チキンゲーム」を仕掛けるかで、経済を左右するだろう。更なる軍事行動は、アメリカの軍事的地位を一層低下させるだけだ。
だがイランでの損失を最小限に抑えるため、トランプ大統領がウクライナとロシアに再び焦点を移す可能性も十分ある。対イラン戦争は、いずれにせよ中間選挙に向けた彼の戦略にとって不利な要素だからだ。昨日「トランプ大統領がゼレンスキー大統領に、ロシアに対して『より大胆な』行動を取るよう非公式に許可を与えた」というウクライナ高官発言を引用した記事をキーウ・インディペンデント紙が掲載した。
またしても同じ話だ。「プーチン大統領は圧力なしには何も行動を起こさないとトランプは本気で考えている」とウクライナ当局者は付け加えた。
Simpliciusはこう推測している。
「自ら容易に解決できると約束した紛争を一つも解決できなかったことにトランプは明らかに苛立ちを募らせている。そして最近、イランとの覚書をめぐる騒動直後、ウクライナに『再び注意を向ける』とさえ彼は認めた。」「従って、トランプが次に何を計画しているにせよ、ロシアを『軟化』させるため、ヨーロッパ諸国に『戦場を形成する』よう密かに促していた可能性は十分考えられる。」
これが事実だとすれば(おそらく事実だ)、ヨーロッパ諸国は火遊びをしており、大火災を引き起こす危険を冒していることになる。
6月7日、E3の指導者、スターマー、メルツ、マクロンはゼレンスキーと会談し、揺るぎない支持を約束するとともに、ロシアへの更なる圧力を誓約して、こう述べた。
「迎撃ミサイルの生産規模拡大、長距離攻撃能力および弾道ミサイル迎撃システム共同開発の緊急な必要性を強調し、更にウクライナ軍の将来的持続可能性を支援する」。要するに、ヨーロッパ諸国はモスクワとサンクトペテルブルクへの大規模攻撃をエスカレートさせるつもりで、それはおそらく両都市住民を死傷させ不安に陥れるだろう。
E3は、来るG7サミットとEUサミットの演出方法を綿密に計画し、ゼレンスキー大統領を両イベントに登場させ「プーチン大統領に対して現在の戦線を起点として、即時かつ完全な停戦に同意するよう圧力を強める」と約束した。また、アンカラで開催されるNATOサミット(7月7~8日)に先立ち、ウクライナへの軍事支援強化を約束するため連携することも欧州首脳は誓約した。
ロシアのより奥深く、より破壊的に攻撃するための新型ミサイルをE3諸国は積極的に配備している。例えば、イギリス政府は次のように発表している。
「ウクライナ向け低経費先進長距離攻撃兵器開発を目指すイギリス・プロジェクトは、イギリス設計兵器三基が飛行試験に成功し重要な節目を迎えた。地上発射型のこれら攻撃兵器は、225kg弾頭を搭載し、時速600kmで500km以上離れた標的を攻撃する能力があると報じられている。」フィナンシャル・タイムズによると、先週のG7サミットで、ウクライナがロシア深奥の標的に行った長距離攻撃作戦にトランプ大統領は「非常に感銘を受け熱狂した」という。サミットで、ロシアのエネルギー関連企業に対する制裁強化にもトランプ大統領は合意した。
ウクライナはロシアに対し劣勢に立たされているのではなく(トランプ大統領が事前説明を受けていた可能性もある)、むしろ優勢に立っているとトランプ大統領を説得するための大規模心理作戦をE3(英仏欧3カ国)が企てていたのは明らかだ。そして、ロシアの降伏(停戦、国境の現状維持、ロシアによる賠償金支払い、犯罪で起訴されたロシア当局者に対する戦争犯罪裁判など)を強要するための欧州の政策を支持すべきだとアメリカを説得しようとしていたのだ。
これらの展開により、ロシアから二つの大きな変化がもたらされた。
まず、クレムリン側近、特にプーチン大統領報道官ユーリ・ウシャコフは、過去三日間、アンカレッジ首脳会談の「精神」とそれに伴う合意は「事実上崩壊した」「アメリカはそれらを放棄した」と述べている。もはやこれら約束が守られるとモスクワは期待しておらず、もっぱち軍事力による自国「勝利」の確保に注力している。
ラブロフ外相は更に踏み込み、アラスカでの会談はウクライナが軍を再建・再軍備する時間を稼ぐためのアメリカの「策略」だと述べ、同様に欺瞞として行われたミンスク合意になぞらえた。
セルゲイ・リャブコフ外務次官は次のように述べた。
「また、ワシントンの路線が、アメリカの最も緊密な欧州同盟諸国、すなわちイギリスとフランスが追求する最も過激な反ロシア政策に近づいていると我々は見ている。」これは戦略上の大きな転換だ。ロシアはもはやワシントンとの関係構築は求めないが、ワシントンとの接触は今後も続くだろう。
二つ目の展開は、6月23日に聖ゲオルギー・ホールで士官候補生に向けてプーチン大統領が行った演説に端を発する。要約すると、ロシアの脅威を欧米諸国が捏造し、脅威を作り出したのはロシアだと非難していると、若い士官候補生にプーチン大統領は語った。これは1941年以来、歴史的に繰り返されてきたパターンだとプーチン大統領は述べた。
今や一線を越えたとプーチン大統領は示唆した。最近までNATO諸国はキーウ政権による対ロシア戦争支援に留まっていたが、今や欧米諸国は公然と対ロシア戦争準備について語り、軍事攻撃予算を積み増していると大統領は述べた。この点、ドイツのメルツ首相は非常に声高に発言しているとプーチン大統領は付け加えた。
ロシアの対応は、核戦力三本柱と陸軍の近代化と、航空宇宙軍と海軍の戦闘能力強化に重点を置いていると彼は述べた。西側諸国の対ロシア戦争準備に関する議論のすぐ後に、核戦力三本柱について明確に言及したことは、トランプと欧州諸国への明確なメッセージなのは確実だ。
ヨーロッパ諸国の戦争要求をロシアは聞いた。そして今、それに応える形で、ヨーロッパでの戦争に備える戦略的決断を下したのだ。
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/06/29/russia-hearing-the-european-clamour-for-war-announces-it-is-ready/
----------
≪櫻井ジャーナル≫
NATOの露国に対する直接的な攻撃が露骨になり、露軍が反撃を決断
« トランプの対イラン戦争失敗はロシアにとって不吉な兆候 | トップページ | ガザ地区で彼らは依然民族浄化を推進している »
「アメリカ軍・軍事産業」カテゴリの記事
- ジョー・バイデンはハーグで癌で死にかけているべきだ(2026.08.14)
- ウクライナ軍に組み込まれつつあるNATO(2026.08.12)
「NATO」カテゴリの記事
- ウクライナ軍に組み込まれつつあるNATO(2026.08.12)
- ウクライナが殺戮をゲーム化しているのは「ぞっとする」とイギリス国防相が発言(2026.08.12)
- ばれた…NATOの戦略的行き詰まりで幕を閉じた40日間の対ロシア・テロ行為(2026.08.09)
- 人気の国防大臣をゼレンスキー大統領が解任した理由(2026.08.07)
「ロシア」カテゴリの記事
- ウクライナ軍に組み込まれつつあるNATO(2026.08.12)
- ウクライナが殺戮をゲーム化しているのは「ぞっとする」とイギリス国防相が発言(2026.08.12)
- ばれた…NATOの戦略的行き詰まりで幕を閉じた40日間の対ロシア・テロ行為(2026.08.09)
- 持てる者と持たざる者(2026.08.09)
「ウクライナ」カテゴリの記事
- ウクライナ軍に組み込まれつつあるNATO(2026.08.12)
- ウクライナが殺戮をゲーム化しているのは「ぞっとする」とイギリス国防相が発言(2026.08.12)
- ばれた…NATOの戦略的行き詰まりで幕を閉じた40日間の対ロシア・テロ行為(2026.08.09)
- 人気の国防大臣をゼレンスキー大統領が解任した理由(2026.08.07)
「イギリス」カテゴリの記事
- ウクライナが殺戮をゲーム化しているのは「ぞっとする」とイギリス国防相が発言(2026.08.12)
- 軍国主義と戦争を煽ってホームレス問題を解消しようとしているイギリス新首相アンディ・バーナム(2026.07.27)
- 厚顔無恥なイギリス…ウクライナのEU加盟を支持するロンドン(2026.07.04)
- 戦争を要求するヨーロッパの声を聞いたロシア、備えはできていると宣言(2026.06.30)
「ドイツ」カテゴリの記事
- 持てる者と持たざる者(2026.08.09)
- 戦争を要求するヨーロッパの声を聞いたロシア、備えはできていると宣言(2026.06.30)
- トランプの対イラン戦争失敗はロシアにとって不吉な兆候(2026.06.30)
« トランプの対イラン戦争失敗はロシアにとって不吉な兆候 | トップページ | ガザ地区で彼らは依然民族浄化を推進している »



コメント