パックス・イラニカ?アメリカ軍事覇権の終焉?

ラファエル・マチャド
2026年6月17日
Strategic Culture Foundation
中東におけるアメリカの影響力が弱まり、イランがホルムズ海峡の支配権を握ることになった。
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数日後にイランとアメリカが署名する予定の覚書により中東に形成されつつある「平和」の持続性には誰もが懐疑的だ。そもそも覚書が署名されない可能性さえある。たとえ署名されたとしても、少なくとも二ヶ月を要する段階的な和平過程を伴うことを考えれば、全てが当事者やパキスタンの仲介者の意図通りに進むとは考えにくい。
しかしながら、この「和平」が提示され、アメリカが受け入れた条件で、イランの圧倒的勝利が目前に迫っている。たとえ外交過程が頓挫しても、アメリカがイランに一方的に有利な条件で和平を受け入れた事実は変わらず、テヘランは戦争開始前よりも遙かに強い立場に立つことになる。
まず第一に、アメリカの失敗は明白で、非常に単純な評価に基づいている。ワシントンは対イラン紛争において、いかなる戦略的目標も達成できなかった。すなわち「政権」は打倒されず、核開発計画は破壊されず、軍事力は排除されず、抵抗枢軸への支援は排除されず、そして最後に、ホルムズ海峡を武力で再開することもできなかったのだ。
アメリカは、あらゆる紛争で最も基本的な過ちを犯した。勢力バランスの判断ミスだ。そして当然ながら、アメリカはイスラエルと、アメリカ内の同盟者に誤った判断に導かれた。正当な理由から、国防総省は当初から対イラン軍事行動に反対していたことが報告されている。
戦術的・作戦的側面を考慮しても、アメリカは意図した通りに自国の勢力を拡大することができなかった。アメリカはイラン上空の制空権を確保できず、イラン領空外からのミサイル発射に頼らざるを得なかった。アメリカがイラン領空に侵入するたびに、F35戦闘機さえ撃墜できる対空ミサイルに遭遇した。また、ミサイルやドローンの集中砲火によって地域基地が攻撃され、作戦上無力化されたため、アメリカの兵站は複雑化し、より遠方の基地を使用せざるを得なくなった。イランはアメリカ空母を遠ざけることにも成功し、一隻は整備のため港に戻った。さらに、ドローンが戦術的に中心的役割を果たす戦争に、アメリカがまだ対応できていないことを露呈した。だが、おそらく最も大きな恥辱は、イランがアメリカに自国の産業上の弱点を突きつけたことだ。アメリカはトマホーク、パトリオットや他の攻撃・防御ミサイルを大量に消費したが、これらミサイルは少量しか生産されていない。アメリカのミサイル備蓄量が何の目的も実現されないまま急速に減少した事実は、アメリカが紛争再開に消極的になった決定的要因となったのは確実だ。
また、撃墜されたパイロット救出とされる作戦で、複数の航空機やヘリコプターが破壊された説明不十分な状況もあった(パイロットはその後二度と姿を見せず、身元も特定されていない)。停戦がこの救出作戦とされる作戦の僅か数日後に行われた事実は、この話が非常に不正確で、おそらくイランの濃縮ウランを奪取しようとした特殊部隊の作戦が失敗に終わったことを示唆している。
だからこそ、問題を「ホルムズ海峡の支配」に矮小化するのは、まさに素人じみた行為と言える。海峡の支配は、イランがアメリカに戦術的に不意打ちを仕掛け、アメリカが対処できないような課題を示し、地域における重要な軍事的優位性を奪うことで、アメリカを驚かせたからこそ可能になったからに他ならないためだ。
当然ながら、ホルムズ海峡の支配権は紛争に大きな影響を与え、事態をより複雑化させ、世界的問題へと発展させた。アメリカとイスラエルの標的だけでなく、アラブ湾岸諸国への攻撃を実行したことも、力を誇示し、紛争をより広範で複雑な問題へ拡大させるという同じ論理に基づいていた。この姿勢だけでも、カタールは譲歩を余儀なくされ、イランとの単独和平と関係改善を模索せざるを得なくなった。
もし、アメリカが目的を実現できないことや、戦術的困難を指摘するだけでは、イランに対する敗北を証明するには不十分だというなら、和平条約の草案である覚書の不均衡こそが、確実に十分な証拠になる。
この覚書は3段階で展開される予定だ。最初の直接的成果は、あらゆる戦線での軍事行動の終結とアメリカの海上封鎖の解除だ。レバノンの状況は、イスラエルという「ジョーカー要因」のため既に極めて不安定な状態にある。しかし、既に現実となっている海上封鎖解除により、ホルムズ海峡はイランの支配下に置かれ、イランは「通行料」を徴収しないにせよ、船舶通過を許可するための「サービス料」を既に徴収している。
次の段階は、覚書署名後30日間続き、アメリカがペルシャ湾周辺での軍事駐留を増強しないこと、凍結されていた120億ドルの資産をイランに返還すること、イランの石油、ガス、石油化学製品輸出に対する制裁を即時解除すること、イランとオマーンによるホルムズ海峡の共同管理を認めること、そしてアメリカがイスラエルに対し、レバノンからの撤退を迫ると約束することなどが含まれる。これら全ての見返りとして、イランは核兵器開発や取得を目指さないことを約束する。
そして最終段階は少なくとも60日間続く見込みで、凍結された資産の残りの120億ドルの返還、イラン復興のための3000億ドルの供与(賠償金に相当)、そして残りの全ての制裁解除過程の開始が予定されている。見返りとして、イランはウラン濃縮に関する協議に応じると約束している。
要するに、この覚書に基づくイランの義務は最小限である一方、アメリカが負う約束は不釣り合いに大きい。トランプ大統領が言う通り、アメリカが「勝利」し、「いつでもイランを破壊できる」なら、一体なぜこれほど多くの約束を負い、これほど多くの条件を受け入れる必要があるのか?
現実には、世界的石油危機、ミサイル備蓄不足、イラン国民の抵抗力と、極超音速ミサイルやドローンへの対処の難しさといった要因が重なり、突如アメリカは、想像しうるあらゆる利益を遙かに上回る損害をもたらす可能性がある泥沼に陥ってしまった。おそらく、この紛争を始めたことの過ちにようやく気づき、支持率が極めて低い状況で、ワールドカップ開催を控え、数々の国内外の危機に頭を悩ませているトランプ大統領は「イラン問題」を何とか解決したいと考えているようだ。
ここで証明されているのは、アメリカは依然軍事超大国ではあるものの、特定の条件下、十分な準備があれば、アメリカを打倒するのは可能であることだ。ここで言っているのは、どの国でも戦争でアメリカに勝てるということではなく、一定規模の地域大国は、カラー革命の影響を受けにくく、長年の軍事的準備と、米海軍の潜在能力や制空権を無効化できる技術への投資により、防衛戦争でアメリカに勝てることだ。
冷戦終結後の時代に、アメリカが圧倒的な優位性を確立した「一極支配の時代」を最近経験したばかりで、その極致はサダム・フセイン政権の急激な崩壊だった。だが世界はもはや以前と全く異なり、それ自体が、我々が多極化への地政学的移行期にある証拠だ。
中東におけるイランの勢力は弱体化し、ホルムズ海峡の支配権を握ることになった。イランが全てのアラブ湾岸諸国と同時に対峙できる能力は既に証明されており、イスラエルがアメリカの支援なしにイランを打倒するのは不可能なことも明らかになった。これにより、中東地域にイランによる平和(パクス・イラニカ)が実現する可能性が開かれたが、この状況にはまだ多くの課題が待ち受けている。
しかし、イスラエルは依然問題だ。救世主思想に駆り立てられ、海外在住ユダヤ人の影響力から得られる特権的扱いに慣れきっているイスラエルは、覚書の条項を尊重する意思も、武力による大イスラエル建国への試みを諦める意思も持っていないようだ。イラン・アメリカ間の和平合意を完全に実現するのを困難にしているのは、まさにこのイスラエルの存在だ。
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/06/17/pax-iranica-the-end-of-uncontested-u-s-military-hegemony/
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耕助のブログ Aaron Maté記事の翻訳
No. 2939 トランプのイラン・トラップ:勝てない戦争、実現できない平和
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