アメリカがイランと戦争状態にある理由と、戦争が一時中断する可能性はあるものの終結しない理由
Brian Berletic
2026年4月28日
New Eastern Outlook
イランに対するアメリカ侵略戦争に関する議論の多くは、アメリカが「イスラエルのために」イランと戦っているという神話など地域特有の要因に焦点を当てているが、この戦争を引き起こし、またこの戦争により進展してゆく遙かに現実的で重要な世界的要因が存在している。

対イラン戦争は、中東地域と地域で生産・輸出される石油・ガスを完全支配しようとする数十年にわたるアメリカの計画の一環だ。これはエネルギーをアメリカ自身のために利用するためではなく、アメリカ自身や、アメリカが支配権を握ろうとしている国々や地域からのエネルギー生産と輸出に対するアメリカの独占を確立し強化するためだ。
これには、最近では中南米のベネズエラも含まれる。2026年初頭にアメリカがベネズエラに対して行った侵略戦争や、ベネズエラ大統領誘拐や、残ったベネズエラ政府関係者の人質化により、ベネズエラから中国への石油輸出はほぼ即座に停止し、ベネズエラの石油資源による富はアメリカ企業に分配された。
アメリカが「同盟国」に対し、しばしば「安全保障の保証」と呼ぶものは、実際は同盟国ではなく代理勢力である国々に対するアメリカの軍事占領や政治支配や統制を婉曲的に表現するものに過ぎない。
アメリカがウクライナを通じてロシアに対して行っている侵略戦争は、ドローン使用を通じてロシアのエネルギー生産、貯蔵、輸出インフラに対する直接的戦争へと急速に拡大している。これらドローンはウクライナのものとされているが、ニューヨーク・タイムズは、実際には米中央情報局(CIA)と米軍が管理していることを明らかにした。
同様に、アメリカは「分業」の下で、欧州の代理勢力に対し、ロシア・エネルギーを運ぶタンカーの海上追跡、阻止、拿捕を拡大するよう促しており、更にアメリカは、海上ドローンを使ってタンカーを攻撃する作戦も展開している。中央情報局(CIA)と米軍が、名目上「ウクライナ」作戦 とされるものを「強化」しているとニューヨーク・タイムズが指摘している。
イランに対する戦争と相まって、アメリカがアジア全般、特に中国へのエネルギー輸出を意図的に妨害、破壊、更には停止させている明確な世界的パターンが浮かび上がる。
アメリカはおそらく、イラン政府を迅速に打倒して、地域に対する支配力を強化し、ロシアと中国を更に孤立させようとしていたのだろうが、より広範でグローバルな狙いは、イランからアジア、特に中国へのエネルギー供給だけでなく、中東全体からアジアと中国へのエネルギー供給を遮断することだった。
対イラン・アメリカ攻撃の最新段階は、2月下旬に始まり、トランプ政権下の2025年、とバイデン政権末期の2024年にイランに対して行われた暴力の継続として、イラン・エネルギー生産施設を標的とするとともに、イランの主要エネルギー輸出施設、カーグ島攻撃を含んでいた。
アメリカによるイラン・エネルギー生産施設攻撃は、イランによる報復攻撃につながり、クウェート、カタール、アラブ首長国連邦、サウジアラビアなど、アメリカのペルシャ湾岸アラブ諸国の代理勢力に対して攻撃が行われた。
こうした暴力行為が複合的に作用した結果、地域全体の生産量が減少し、戦前と比較して中東全域から中国へのガスと石油のエネルギー輸出量が減少した。
ロイター通信によると、2月下旬の戦闘開始から最近の停戦合意までの間に、この地域全体から中国へのエネルギー輸出は、中国の輸入需要全体の約52%から約30%に減少した 。
2026年3月のPolitico記事は、中国がエネルギー面で中東地域に依存しているだけでなく、アジア全体がエネルギー輸入需要の70%から90%以上を中東からの輸入に依存していることを明らかにしている。特に、日本、韓国、フィリピンや台湾といったアメリカ代理勢力は、その傾向が顕著だ。
中国を孤立させ、アジアを支配する
以前アメリカはウクライナでの対ロシア戦争を扇動し、ノルド・ストリーム・パイプラインを破壊し、ロシアからのあらゆるエネルギー輸入に制裁を課し、更にロシアのエネルギー生産、貯蔵、輸出施設や、ロシア・エネルギーを運ぶタンカー自体を攻撃するなどして、ヨーロッパをアメリカのエネルギー輸出に依存させる政策をとったが、今度は中東からのエネルギーの入手を意図的に妨害して、中国とアジアの国々を標的に同様政策を推進している。
イランに対する戦争は、ホルムズ海峡を通る海上交通のイランによる厳格な規制につながり、その後、アメリカは主にイランから中国へエネルギーを輸出する船舶を標的とする封鎖を実施した。アメリカがイランとの間の海上交通を完全に支配しているという主張は誤りだが、アメリカの封鎖により、イランから中国へ向かおうとする海上交通の少なくとも半分が引き返させられたり拿捕されたりしたとフィナンシャル・タイムズが報じた。
これは、この地域から中国へのエネルギー輸出総量が再び減少したことを意味し、アメリカはアジア、特に中国への地域からの輸出を更に削減するための多くの選択肢を温存している。
一つの選択肢は、アメリカによる対イラン軍事侵略再開の脅威で、これにより、イランのエネルギー生産および輸出インフラに対する意図的な標的攻撃と広範な破壊と、アメリカがペルシャ湾岸の代理勢力として利用しているアラブ諸国のエネルギー生産施設に対するイランの報復攻撃が更に発生する可能性がある。
アメリカによる対イラン戦争と地域への影響が明らかになりつつあることは、アメリカによるノルド・ストリーム・パイプライン破壊や、ロシアからヨーロッパへのエネルギーの流れに対する段階的な標的化、制裁、制限と似ており、アメリカ・エネルギー輸出だけが唯一の選択肢として残された。そして、アメリカが既存の、より安価で信頼性の高い代替手段を排除するまで、この選択肢は経済的に実行可能ではなかったのだ。
アメリカの戦争は2024年末から今日まで続いており、終結の見通しは立っていない。アメリカ軍事侵略作戦の間には、わずか数ヶ月の比較的平穏な時期しかなく、中国やアジア諸国が中東から安価で安定したエネルギーを入手できる見込みは着実に薄れつつある。
「偶然にも」アメリカは既に巨大なエネルギー生産・輸出産業の拡大に着手しており、特にアジア市場を標的にしている。
2025年、アメリカに拠点を置くエネルギー企業グレンファーンとそのCEOブレンダン・デュバルは、アラスカで建設中の同社の新たなLNGプロジェクトが「競争のない安全な航路を通じて」アジアにエネルギーを輸出できる事実を繰り返し言及した。
当時、アメリカ自身が航路を争奪し、航路を危険なものにすることで、グレンファーンのアラスカLNGプロジェクトの実現可能性を高め、ひいてはアメリカ・エネルギー輸出能力全般の拡大を促進することになるという点は一切言及されなかった。
グレンファーン社がLNG輸出入に関する専門知識を磨いてきたのは隣国ベネズエラに対するアメリカの制裁と、本来ならコロンビアにガスを供給するはずだったパイプラインの閉鎖によってのみ可能になったコロンビア・プロジェクトを通じてのことだった点に留意すべきだ。アメリカによるベネズエラでのパイプライン閉鎖があったからこそ、グレンファーン社によるテキサス産LNGのコロンビア輸入が経済的に意味を持つようになったのだ。
同様に、アメリカが紛争をちらつかせ、実際紛争を起こして世界中の重要な海上交通の要衝を危険にさらす場合にのみ、LNGをアジアや、それ以外の地域に輸出することが経済的に意味を持つようになる。ちょうど、ノルド・ストリームが破壊され、遙かに安価で入手しやすいロシア・エネルギーに制裁が課された後、初めて、アメリカ産LNGをヨーロッパに輸出することが意味を持つようになったのと同じだ。
本末転倒だが、それには理由がある
2030年代初頭までに、アメリカはLNG輸出能力を倍増させ、韓国や日本といった主要アジア諸国や台湾の需要を満たせるようになると予想されている。だが、これもまた、より安価で信頼性の高い代替エネルギー源が市場に出回らない場合に限られる。
これはつまり、アメリカは本質的に本末転倒なことをしているものの、最終的に本題に入った時に、アメリカだけが利益を得られるような理想的状況を整えていることだ。
ヨーロッパが安価なロシア・エネルギー輸入ができなくなったのと同様、アジアにおけるアメリカ代理勢力が、エネルギー面でアメリカに完全依存するようになれば、それらの国々は、地域および世界におけるアメリカの地政学的野望の延長として、更に完全に変貌を遂げるだろう。
ヨーロッパの場合と同様、アメリカの国益追求は、アジアにおけるアメリカの代理勢力の犠牲、地域全体の平和と安定の犠牲と、特に継続的な中国台頭の犠牲を伴うことになるだろう。これは、ロシアを標的にするためにヨーロッパが利用され、ロシアとヨーロッパの国々両方を犠牲にしてきたのと同じだ。
アメリカがこれらのアジアの代理勢力を政治的に掌握し、その領土に米軍を駐留させ、更にエネルギー依存を強要していることに加え、最近のアメリカ上院公聴会では、日本、韓国、フィリピンといった国々が、この地域における、アメリカ軍事産業拠点へと変貌を遂げ、地球の裏側に位置する中国との戦争をアメリカが挑発する際に直面する「遠距離の厳しさ」を最小限に抑えるのに役立つことが明らかになっている。
アジアにおけるアメリカ製兵器の製造工場や、アメリカ艦船修理を行うための港湾施設建設は既に始まっており、日本がパトリオット迎撃ミサイルを製造し、場合によって アメリカに送っているほか、韓国は米海軍貨物船の保守に関する契約を締結している。
こうした準備は、全てアメリカが避けられないと考えている中国との紛争に先立って行われている。そもそも、アメリカがロシア、イラン、ベネズエラや他の多くの国々と対立する根本的理由は、中国と直接対決する前に、まず中国を孤立させ、封じ込めることにあるのだ。
欧州諸国やペルシャ湾岸アラブ諸国が、アメリカへの従属と、それぞれの地域におけるアメリカ侵略戦争受け入れと推進上の役割に支払っている代償を考慮すれば、日本、韓国、フィリピンも、中国とのいかなる対立に先立ち、自らを標的にしていると言える。
アメリカが「同盟諸国」 に対して、しばしば「安全保障」と呼んでいるものは、実際は同盟国ではなく、代理勢力である国々に対するアメリカの軍事占領や政治的支配や統制を婉曲的に表現しているに過ぎない。ヨーロッパから中東、アジア太平洋地域に至るまで、代理勢力のグローバル・ネットワークを維持する狙いは、アメリカ外交政策にかかる全ての費用を他国に負担させ、全ての利益をアメリカが独占することにある。
近未来から中期的に、アメリカが世界中で戦争をエスカレートさせ続ける可能性は避けられない。現在行われている戦争は、将来の中国との紛争に備えるために意図的に行われているからだ。このため、アメリカがロシアやイランと何らかの「和平」合意に達する可能性はほぼゼロに近い。
アメリカの外交政策を推進する利害関係者(兵器産業、石油・ガス大手、ハイテク大手、自動車産業など)が、多極化で提供される代替案によって世界中で取って代わられるまで、また多極世界がアメリカの軍事侵略だけでなく、侵略につながる経済的強制や政治的干渉や支配に対しても十分な抑止力を生み出せるようになるまで、世界一極覇権継続という要求のために、アメリカは世界の平和、繁栄、安定を人質に取り続けるだろう。
Brian Berleticは、バンコクを拠点とする地政学研究者、作家。
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/04/28/why-the-us-is-at-war-with-iran-and-why-the-war-might-pause-but-wont-end/
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東京新聞 朝刊 三面
2026年4月28日
New Eastern Outlook
イランに対するアメリカ侵略戦争に関する議論の多くは、アメリカが「イスラエルのために」イランと戦っているという神話など地域特有の要因に焦点を当てているが、この戦争を引き起こし、またこの戦争により進展してゆく遙かに現実的で重要な世界的要因が存在している。

対イラン戦争は、中東地域と地域で生産・輸出される石油・ガスを完全支配しようとする数十年にわたるアメリカの計画の一環だ。これはエネルギーをアメリカ自身のために利用するためではなく、アメリカ自身や、アメリカが支配権を握ろうとしている国々や地域からのエネルギー生産と輸出に対するアメリカの独占を確立し強化するためだ。
これには、最近では中南米のベネズエラも含まれる。2026年初頭にアメリカがベネズエラに対して行った侵略戦争や、ベネズエラ大統領誘拐や、残ったベネズエラ政府関係者の人質化により、ベネズエラから中国への石油輸出はほぼ即座に停止し、ベネズエラの石油資源による富はアメリカ企業に分配された。
アメリカが「同盟国」に対し、しばしば「安全保障の保証」と呼ぶものは、実際は同盟国ではなく代理勢力である国々に対するアメリカの軍事占領や政治支配や統制を婉曲的に表現するものに過ぎない。
アメリカがウクライナを通じてロシアに対して行っている侵略戦争は、ドローン使用を通じてロシアのエネルギー生産、貯蔵、輸出インフラに対する直接的戦争へと急速に拡大している。これらドローンはウクライナのものとされているが、ニューヨーク・タイムズは、実際には米中央情報局(CIA)と米軍が管理していることを明らかにした。
同様に、アメリカは「分業」の下で、欧州の代理勢力に対し、ロシア・エネルギーを運ぶタンカーの海上追跡、阻止、拿捕を拡大するよう促しており、更にアメリカは、海上ドローンを使ってタンカーを攻撃する作戦も展開している。中央情報局(CIA)と米軍が、名目上「ウクライナ」作戦 とされるものを「強化」しているとニューヨーク・タイムズが指摘している。
イランに対する戦争と相まって、アメリカがアジア全般、特に中国へのエネルギー輸出を意図的に妨害、破壊、更には停止させている明確な世界的パターンが浮かび上がる。
アメリカはおそらく、イラン政府を迅速に打倒して、地域に対する支配力を強化し、ロシアと中国を更に孤立させようとしていたのだろうが、より広範でグローバルな狙いは、イランからアジア、特に中国へのエネルギー供給だけでなく、中東全体からアジアと中国へのエネルギー供給を遮断することだった。
対イラン・アメリカ攻撃の最新段階は、2月下旬に始まり、トランプ政権下の2025年、とバイデン政権末期の2024年にイランに対して行われた暴力の継続として、イラン・エネルギー生産施設を標的とするとともに、イランの主要エネルギー輸出施設、カーグ島攻撃を含んでいた。
アメリカによるイラン・エネルギー生産施設攻撃は、イランによる報復攻撃につながり、クウェート、カタール、アラブ首長国連邦、サウジアラビアなど、アメリカのペルシャ湾岸アラブ諸国の代理勢力に対して攻撃が行われた。
こうした暴力行為が複合的に作用した結果、地域全体の生産量が減少し、戦前と比較して中東全域から中国へのガスと石油のエネルギー輸出量が減少した。
ロイター通信によると、2月下旬の戦闘開始から最近の停戦合意までの間に、この地域全体から中国へのエネルギー輸出は、中国の輸入需要全体の約52%から約30%に減少した 。
2026年3月のPolitico記事は、中国がエネルギー面で中東地域に依存しているだけでなく、アジア全体がエネルギー輸入需要の70%から90%以上を中東からの輸入に依存していることを明らかにしている。特に、日本、韓国、フィリピンや台湾といったアメリカ代理勢力は、その傾向が顕著だ。
中国を孤立させ、アジアを支配する
以前アメリカはウクライナでの対ロシア戦争を扇動し、ノルド・ストリーム・パイプラインを破壊し、ロシアからのあらゆるエネルギー輸入に制裁を課し、更にロシアのエネルギー生産、貯蔵、輸出施設や、ロシア・エネルギーを運ぶタンカー自体を攻撃するなどして、ヨーロッパをアメリカのエネルギー輸出に依存させる政策をとったが、今度は中東からのエネルギーの入手を意図的に妨害して、中国とアジアの国々を標的に同様政策を推進している。
イランに対する戦争は、ホルムズ海峡を通る海上交通のイランによる厳格な規制につながり、その後、アメリカは主にイランから中国へエネルギーを輸出する船舶を標的とする封鎖を実施した。アメリカがイランとの間の海上交通を完全に支配しているという主張は誤りだが、アメリカの封鎖により、イランから中国へ向かおうとする海上交通の少なくとも半分が引き返させられたり拿捕されたりしたとフィナンシャル・タイムズが報じた。
これは、この地域から中国へのエネルギー輸出総量が再び減少したことを意味し、アメリカはアジア、特に中国への地域からの輸出を更に削減するための多くの選択肢を温存している。
一つの選択肢は、アメリカによる対イラン軍事侵略再開の脅威で、これにより、イランのエネルギー生産および輸出インフラに対する意図的な標的攻撃と広範な破壊と、アメリカがペルシャ湾岸の代理勢力として利用しているアラブ諸国のエネルギー生産施設に対するイランの報復攻撃が更に発生する可能性がある。
アメリカによる対イラン戦争と地域への影響が明らかになりつつあることは、アメリカによるノルド・ストリーム・パイプライン破壊や、ロシアからヨーロッパへのエネルギーの流れに対する段階的な標的化、制裁、制限と似ており、アメリカ・エネルギー輸出だけが唯一の選択肢として残された。そして、アメリカが既存の、より安価で信頼性の高い代替手段を排除するまで、この選択肢は経済的に実行可能ではなかったのだ。
アメリカの戦争は2024年末から今日まで続いており、終結の見通しは立っていない。アメリカ軍事侵略作戦の間には、わずか数ヶ月の比較的平穏な時期しかなく、中国やアジア諸国が中東から安価で安定したエネルギーを入手できる見込みは着実に薄れつつある。
「偶然にも」アメリカは既に巨大なエネルギー生産・輸出産業の拡大に着手しており、特にアジア市場を標的にしている。
2025年、アメリカに拠点を置くエネルギー企業グレンファーンとそのCEOブレンダン・デュバルは、アラスカで建設中の同社の新たなLNGプロジェクトが「競争のない安全な航路を通じて」アジアにエネルギーを輸出できる事実を繰り返し言及した。
当時、アメリカ自身が航路を争奪し、航路を危険なものにすることで、グレンファーンのアラスカLNGプロジェクトの実現可能性を高め、ひいてはアメリカ・エネルギー輸出能力全般の拡大を促進することになるという点は一切言及されなかった。
グレンファーン社がLNG輸出入に関する専門知識を磨いてきたのは隣国ベネズエラに対するアメリカの制裁と、本来ならコロンビアにガスを供給するはずだったパイプラインの閉鎖によってのみ可能になったコロンビア・プロジェクトを通じてのことだった点に留意すべきだ。アメリカによるベネズエラでのパイプライン閉鎖があったからこそ、グレンファーン社によるテキサス産LNGのコロンビア輸入が経済的に意味を持つようになったのだ。
同様に、アメリカが紛争をちらつかせ、実際紛争を起こして世界中の重要な海上交通の要衝を危険にさらす場合にのみ、LNGをアジアや、それ以外の地域に輸出することが経済的に意味を持つようになる。ちょうど、ノルド・ストリームが破壊され、遙かに安価で入手しやすいロシア・エネルギーに制裁が課された後、初めて、アメリカ産LNGをヨーロッパに輸出することが意味を持つようになったのと同じだ。
本末転倒だが、それには理由がある
2030年代初頭までに、アメリカはLNG輸出能力を倍増させ、韓国や日本といった主要アジア諸国や台湾の需要を満たせるようになると予想されている。だが、これもまた、より安価で信頼性の高い代替エネルギー源が市場に出回らない場合に限られる。
これはつまり、アメリカは本質的に本末転倒なことをしているものの、最終的に本題に入った時に、アメリカだけが利益を得られるような理想的状況を整えていることだ。
ヨーロッパが安価なロシア・エネルギー輸入ができなくなったのと同様、アジアにおけるアメリカ代理勢力が、エネルギー面でアメリカに完全依存するようになれば、それらの国々は、地域および世界におけるアメリカの地政学的野望の延長として、更に完全に変貌を遂げるだろう。
ヨーロッパの場合と同様、アメリカの国益追求は、アジアにおけるアメリカの代理勢力の犠牲、地域全体の平和と安定の犠牲と、特に継続的な中国台頭の犠牲を伴うことになるだろう。これは、ロシアを標的にするためにヨーロッパが利用され、ロシアとヨーロッパの国々両方を犠牲にしてきたのと同じだ。
アメリカがこれらのアジアの代理勢力を政治的に掌握し、その領土に米軍を駐留させ、更にエネルギー依存を強要していることに加え、最近のアメリカ上院公聴会では、日本、韓国、フィリピンといった国々が、この地域における、アメリカ軍事産業拠点へと変貌を遂げ、地球の裏側に位置する中国との戦争をアメリカが挑発する際に直面する「遠距離の厳しさ」を最小限に抑えるのに役立つことが明らかになっている。
アジアにおけるアメリカ製兵器の製造工場や、アメリカ艦船修理を行うための港湾施設建設は既に始まっており、日本がパトリオット迎撃ミサイルを製造し、場合によって アメリカに送っているほか、韓国は米海軍貨物船の保守に関する契約を締結している。
こうした準備は、全てアメリカが避けられないと考えている中国との紛争に先立って行われている。そもそも、アメリカがロシア、イラン、ベネズエラや他の多くの国々と対立する根本的理由は、中国と直接対決する前に、まず中国を孤立させ、封じ込めることにあるのだ。
欧州諸国やペルシャ湾岸アラブ諸国が、アメリカへの従属と、それぞれの地域におけるアメリカ侵略戦争受け入れと推進上の役割に支払っている代償を考慮すれば、日本、韓国、フィリピンも、中国とのいかなる対立に先立ち、自らを標的にしていると言える。
アメリカが「同盟諸国」 に対して、しばしば「安全保障」と呼んでいるものは、実際は同盟国ではなく、代理勢力である国々に対するアメリカの軍事占領や政治的支配や統制を婉曲的に表現しているに過ぎない。ヨーロッパから中東、アジア太平洋地域に至るまで、代理勢力のグローバル・ネットワークを維持する狙いは、アメリカ外交政策にかかる全ての費用を他国に負担させ、全ての利益をアメリカが独占することにある。
近未来から中期的に、アメリカが世界中で戦争をエスカレートさせ続ける可能性は避けられない。現在行われている戦争は、将来の中国との紛争に備えるために意図的に行われているからだ。このため、アメリカがロシアやイランと何らかの「和平」合意に達する可能性はほぼゼロに近い。
アメリカの外交政策を推進する利害関係者(兵器産業、石油・ガス大手、ハイテク大手、自動車産業など)が、多極化で提供される代替案によって世界中で取って代わられるまで、また多極世界がアメリカの軍事侵略だけでなく、侵略につながる経済的強制や政治的干渉や支配に対しても十分な抑止力を生み出せるようになるまで、世界一極覇権継続という要求のために、アメリカは世界の平和、繁栄、安定を人質に取り続けるだろう。
Brian Berleticは、バンコクを拠点とする地政学研究者、作家。
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/04/28/why-the-us-is-at-war-with-iran-and-why-the-war-might-pause-but-wont-end/
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