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2026年5月20日 (水)

ドルの罠:湾岸諸国を統制しようとするワシントンの企み


2026年5月17日
アニス・ライス
Strategic Culture Foundation

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 ワシントンがあなたに信じ込ませようとしている話は単純だ。対イラン戦争がペルシャ湾岸諸国の経済を崩壊させ、アメリカが同盟諸国国に救いの手を差し伸べているというものだ。提案されているUAEドル・スワップ協定を、ウォール・ストリート・ジャーナルは金融セーフティ・ネットと呼び、フィナンシャル・タイムズは救済策と呼び、CNBCは救済措置と呼んでいる。本当の問題は、一体誰が連邦準備制度理事会の門をくぐる権利を得るのか、そして、どのような政治的条件の下でそれが実現するのかだ。

 枠組みは整っているものの、数字が合わない。UAEは2700億ドルの外貨準備高と約2兆ドルの政府系ファンドを保有している。救済対象とされる国は、救済資金の10倍ものドルを保有しているのだ。救済策は弱者を救うものだが、今回の救済策は、湾岸諸国の反抗に耐えられない体制を守るためのものだ。

 2026年4月中旬、ワシントンでスコット・ベセント財務長官と会談した際、アラブ首長国連邦中央銀行のハレド・モハメド・バラマ総裁はドル・スワップ協定構想を提起した。このニュースはウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。数日後、ベセント長官は上院歳出委員会でこの構想を擁護して、スワップ協定は「米ドルの優位性とアメリカの経済防衛力の強さを証明するものだ」と述べた。

 CNBCの番組「スクワーク・ボックス」で、この動きを支持するかどうか問われたドナルド・トランプ大統領は「もし彼らに問題があるなら…私は彼らを支援する」と答えた。

 スワップ・ラインとは、中央銀行、二行間の予備的取り決めのことだ。例えるなら、2軒の家をつなぐ非常用水道管のようなものだ。バルブが開くまでは何も流れないが、水道管自体が近隣住民の不安を和らげてくれる。

 この発表に関して注目すべき点が3つある。まず何も署名されていない。資金も一切移動していない。UAE自身の大使館でさえ公式に反論している。アブダビが外部からの財政支援を必要としているという指摘は「事実を誤解している」と大使館は述べている。

 では、救済される国が救済を必要としていないと否定した場合、ワシントンは一体何を発表していることになるのか?
 
救命ボートを必要とするヨット

 数兆ドルもの国家資産を持つ国が、なぜワシントンとの緊急連絡回線を必要とするのだろう? 主流メディアは、対イラン戦争の緊張感を漠然と指摘しているが、実際の財務状況は別のところを示している。

 自分のヨットに乗っている人に救命胴衣を投げるわけにはいかない。UAEは、ベセントが議会の承認なしに運用できるアメリカ財務省基金全体の10倍ものドル準備金を保有している。その基金、 為替安定化基金 (ESF)の上限は約2190億ドルだが、アブダビ中央銀行の準備金だけでもそれを上回っている。UAEの政府系ファンドを加えると、救助者が指ぬきを持って洪水に駆けつけるようなもので、被救助者は指ぬきすら持っていないことになる。

 ベセントは上院に「アジア同盟国を含む多くの国々が、独自の通貨スワップ協定を求めている」と述べた。彼は目標を「湾岸地域とアジアにおける新たな米ドル資金調達センターの設立」と位置づけた。

 アラブ首長国連邦の要請は入り口に過ぎないかもしれないが、ワシントンはより広範な構想を練っている。アメリカの保護に対する信頼を湾岸諸国が弱めているまさにその時に、ドルを中心とした地域的流動性マップを構築することだ。

 スワップラインは、事前に設置された圧力インフラで、UAEの不足に対応するためではなく、湾岸諸国の首都が、ドルが要求する服従に見合う価値はもはやないと判断する日のために構築されたものだ。
 
ガタガタと震え始めたリサイクル装置

<  50年以上にわたり、ドルは静かな機械のように機能してきた。湾岸諸国はドル建てで石油を販売し、そのドルは国債、不動産、株式や武器へ還元される。これを帝国が自らの財源を確保する方法だと『エコノミック・ヒットマンの告白』の著者ジョン・パーキンスは表現した。

 その資金の流れこそが、8%の連邦財政赤字を乗り切るのを可能にしているのだ。アメリカ経済は自力で収支を均衡させていない。均衡化を、ドル余剰資金を再投資してくれる誰かに委託しているのだ。湾岸諸国は、資金拠出が石油自体と結びついている唯一の資金提供諸国だ。

 イラン戦争とホルムズ海峡封鎖は湾岸諸国を崩壊させたわけではない。湾岸諸国は依然健全な財政状態を保っている。戦争によって問題になったのは、その循環自体だった。2025年5月、トランプ大統領のリヤドとアブダビ訪問は、現代アメリカ外交史上最大規模の二つの支援策を生み出した。

 サウジアラビアは、兵器、エネルギー、インフラ分野に1兆ドルを投じると約束し、その中にはアメリカ史上最大の1420億ドルの兵器取り引きも含まれる。アラブ首長国連邦は、AI、半導体、バイオテクノロジー分野を中心に、10年間で1兆4000億ドル拠出すると約束した。両国とも覚書が多く、正式契約書は少なかった。

 一年後、対イラン戦争が続き、ホルムズ海峡の領有権争いが激化し、アメリカ安全保障保証が機能し損ねているのを湾岸諸国の首都が目の当たりにする中、これら覚書には疑問が残る。果たしてそれらは実行されるのか? そして、リヤドとアブダビが、ワシントンへのドル送金が安全をもたらすという確信を失っているとしたら、なぜこれまでと同じペースで送金を続けるのか? まさにこの疑問が持ち上がった瞬間、スワップ協定が締結されたのだ。
 
ドル売りへの警告射撃

 この動きの中心人物を見てみよう。スコット・ベセントは1992年、ジョージ・ソロスと共にイギリス・ポンドを空売りし、イングランド銀行をわずか1日で破綻させることで巨額の富を築いた。彼は脆弱な通貨制度の弱点を探し出す略奪者として実績を積んできた。そして今、彼はその弱点を守る立場に立っているのだ。

 彼が資金を引き出している為替安定化基金ESFの上限は約2190億ドルだ。これは彼が議会の承認を得ずに使える資金の総額で、今回の危機規模からすれば、ほんのわずかな金額に過ぎない。

 では、この発表は実際は何を意味するのか? それは、ロンドン、シンガポール、香港の取引所、つまり次にドル売り注文が出されるだろう場所に向けて放たれた警告弾だ。ベセントはかつてその取引所に籍を置いていたため、その場所をよく知っている。また、彼は信憑性のある脅しが実際の火災と同等の効果を発揮することも知っている。要は、皆が参入する前に、取り引きが混雑しているように見せかけることだ。

 その意図は彼自身の言葉に表れている。ベセントは上院に対し、UAEとの通貨スワップ協定を緊急措置とは説明しなかった。彼はそれを、湾岸地域とアジア全域に恒久的ドル資金調達拠点を構築するための「重要な第一歩」と呼んだ。
 
パイプはすでに東に向かって敷設されている

 主流メディア報道では、このスワップ協定は二国間協定として扱われている。しかし、報道で触れられていないのが中国だ。アラブ首長国連邦(UAE)は 2012年から中国人民銀行と人民元スワップ協定を結んでおり、サウジアラビアも2023年11月に同様協定を締結した。両国は、中央銀行が自国デジタル通貨で決済を行い、ドルを介さずに済むようにする中国主導のプラットフォーム「プロジェクトmBridge」に参加している。

 中国の人民元スワップ・ネットワークは現在40カ国以上に及んでいる。一方、FRBの常設ネットワークは5カ国にとどまっている。石油販売を人民元建てに移行する可能性があるとUAE当局が4月に警告した際、大多数はそれを交渉戦術だと解釈した。だが、それは、はったりではなかった。既にインフラは整っていたのだ。

 この傾向は中央銀行に限ったことではない。アラブ首長国連邦が警告を発してから10日後、サウジアラビアは中国の消費者向け決済ネットワーク、Alipay+の直接利用を1200万人の国民に許可した。

 リヤドはあらゆるレベルで選択肢を創出している。中央銀行間決済はmBridge、消費者決済はAlipay+、その両方を支える国内決済ネットワーク「mada」だ。インフラが既に整っているのだから、方向転換を宣言する必要はない。まずは代替手段を構築し、その後、ドル体制への依存が自然に解消されるのを待つべきだ。

 ベセントが提唱する「湾岸地域とアジアにおける恒久的資金調達センター」は、中国がドル圏外の貿易インフラ構築に15年を費やした後に実現した。ワシントンは今、湾岸諸国に対し、もはや理論上の選択肢でなくなった今、アメリカが管理するルートへの再コミットメントを求めている。イラン戦争によりアメリカ安全保障の限界が露呈した後、この要求はかつてほどの重みを持たなくなっている。
 
内側に開く連邦準備制度理事会(FRB)の門

 ケビン・ウォーシュ就任で真の転換期が訪れた。退任する連邦準備制度理事会議長のジェローム・パウエルは、潔白な状態で退任するわけではない。2026年1月、司法省は 連邦準備制度理事会に対し、パウエルに関連する刑事訴追をちらつかせる大陪審召喚状を発行した。パウエル議長は、この調査を連邦準備制度理事会に金利面で圧力をかけるための「口実」だと非難した。トランプ大統領はパウエル議長解任を繰り返し示唆していたが、連邦判事が司法省の召喚状を却下したことで、後に圧力活動は弱まった。

 ウォーシュは中立的テクノクラートではない。彼は1億ドル以上の資産を持つ元モルガン・スタンレーの銀行家で、スタンレー・ドラッケンミラーのファミリーオフィスから1020万ドルの顧問料を昨年受け取った。また彼は国内最大級のトランプ献金者ネットワークの一つで、アブラハム合意の政治構造と深い繋がりを持つローダ一族の一員と結婚している。

 連邦準備制度理事会(FRB)の門をメキシコ湾岸地域に開くために任命される人物は、その門が開かれようとしているシステム外部からやってくるわけではない。

 ウォーシュは、エリザベス・ウォーレン上院議員をはじめとする上院銀行委員会の民主党議員らへの公式回答で、これを可能にする原則を説明した

 「連邦準備制度理事会(FRB)の独立性は、金融政策の運営において最高潮に達している」と彼は記した。「だが、その独立性は、議会によって義務付けられたFRBの全機能に及ぶものではない」。更にウォーシュは「国際金融に影響を与える問題に関しては、FRBは政権および議会と協力していく」と付け加えた。

 それが決定的証拠だ。連邦準備制度理事会(FRB)の世界経済への扉を、それを守るべき人物が行政機関に引き渡そうとしているのだ。

 現在この体制の中心には三人座っている。財務省のベセントは、かつて中央銀行を破綻させたこともある強欲な人物で、今回提案の先頭に立っている。連邦準備制度理事会のウォッシュは背後にある流動性供給の鍵を握っている。そして両者の背後にはローダーがおり、彼のネットワークは湾岸地域へのアブラハム合意推進の政治的原動力になっている。

 正常化によって流動性は増加するのか? 合意に署名したペルシャ湾岸諸国にはFRBの融資窓口が開かれ、それ以外の国々には閉ざされたままなのか?

 今日から、一体誰がアメリカのパイプラインを手に入れるか見守ろう。それが本当の疑問への答えとなる。他の国々は既に自国パイプラインを敷設し始めている。

元記事: thecradle.co

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/05/17/dollar-trap-washingtons-bid-to-keep-the-gulf-in-line/"

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