« 対イラン戦争:莫大な軍需品消耗+成果の欠如=イランの勝利 | トップページ | NATOのルッテ事務総長がトランプの忠実な子分であることに欧州属国諸国が激怒している本当の理由 »

2026年3月30日 (月)

イランの大胆な戦略的動き―「占領地に対するミサイル優位」宣言と「核抑止力」警告

アラステア・クルック
2026年3月27日
Strategic Culture Foundation

 イランがホルムズ海峡の支配権を維持できればアジアの地政学は新たな戦略的現実に再構築される。

❗️Telegram Twitter , と VK でご参加願いたい。

お問い合わせ: info@strategic-culture.su
 
戦争が始まって四週目に入ったが、今後一体どうなるのか?

 第一に、イランは激しい爆撃を受けているものの、その軍事的有効性は明白とは言えない。湾岸諸国におけるアメリカとイスラエルの権益に対する反撃能力をイランは益々強めており、意図的に選んだ不透明な体制(モザイク作戦と呼ばれる)で指導部は効果的に活動している。またイランはミサイルとドローンによる頻繁な攻撃を継続し、ミサイル攻撃の高度化を段階的に進めている。イラン国家に対する国民の支持は強固なものになっている。

 アメリカとイスラエルの爆撃は甚大な被害をイランに与えているが、これら攻撃が、イラン全土に分散し、地中深く埋められたミサイル「都市」を発見、あるいは破壊した証拠はほとんどない。むしろ、イランの隠された軍事インフラ破壊に失敗したアメリカとイスラエルは、レバノンやパレスチナで展開されているように、国民の士気を低下させるのを狙った民間目標に攻撃の矛先を変えたことを示唆する証拠がある。

 だが議論の余地がないのは、綿密に練られた戦略をイランが段階的に展開していることだ。一方、トランプには計画がなく、内容は日々変化している。イスラエルには計画があり、アメリカが提供したAIが検知できる限り多くのイラン指導部暗殺だ。更に、イスラエルの狙いは、イランを分断し、民族的・宗派的小国家に分割し、(シリアのような)弱体な無政府状態に陥らせることにある。

 今のところ、アメリカが表明している狙いは、経済インフラ(サウス・パルス・ガス施設)攻撃から、イラン核施設(ナタンズとイラン・ロシア共同運営のブシェール原子力発電所)のごく近隣への二度の重要な攻撃に至るまで、エスカレーションの脅威を断続的に示すものになっている。これら近距離ミサイル攻撃は、アメリカかイスラエルが核レベルにエスカレーションする可能性を示唆する「メッセージ」として意図されていると思われる。(だが、これに対し、イスラエルのディモナ核施設に近接するディモナ町へのミサイル攻撃でイランは応酬した。)

 ディモナ攻撃で甚大な被害が出た後、「ミサイル優位」を実現したと重要かつ明確な声明をイランは発表した。この主張は、イスラエルの最も厳重に警備された戦略的施設の一つをイランが攻撃した際、イスラエルが防空迎撃ミサイルを発射できなかった事実に基づいていた。

 戦争は「新たな局面」に入ったとイラン議会議長で軍指導者のモハマド・ガリバフは警告した。

 「イスラエルの空は無防備だ…我々が事前に計画していた次段階を実行する時が来たようだ…」

 軍事評論家ウィル・シュライバーによれば、米軍の弾薬庫(米軍の貯蔵施設)備蓄が枯渇に近づいており、整備の遅れと兵站支援能力の欠如により出撃能力が崩壊しているのはほぼ確実だという。米軍有人機は依然イラン領空深くには侵入していない。だが、自国の弾薬庫の備蓄は十分だとイランは主張している。

 ここ数日「48時間以内にホルムズ海峡を開放しなければイランの民生用発電所を段階的に破壊する。まず最大規模の発電所からだ」という最後通牒をトランプ大統領はイランに突きつけ、事態を更にエスカレートさせた。(イラン最大の発電所は、イランとロシアが共同運営するブーシェフル原子力発電所だ。)イランの早い降伏をトランプ大統領は依然期待しているようだ。だがイランは既にこの最後通牒を拒否し、独自の最後通牒で応じている。  
アヤトラ・モジタバ・ハメネイ師によるトランプへの最後通牒

 綿密に構成された12分間の演説で、アヤトラ・イマーム・サイード・モジタバ・ハメネイ師は、おなじみの主張から、遙かに重大な事柄へ話を進めた。演説前半は予想通りの展開だったが、レバノンの評論家マルワ・オスマンの報告によると、

 「演説の途中で、論調は過去を振り返るものから戦略的なものへ変化した。ハメネイ師は、それぞれ明確な期限を定めた三つの具体的要求を示した。中東からの米軍の迅速な撤退と、60日以内の制裁の全面的撤回と、経済的損害に対する長期的な財政的補償だ。」

 「そして最後通牒が突きつけられた。従わなければ、イランは経済、軍事、可能性として核兵器面でエスカレートする。仮説ではなく作戦上で。ホルムズ海峡封鎖、ロシアおよび中国との防衛関係の正式化と、曖昧な態度から明確な核抑止力表明へ移行する。」

 外部の反応のタイミングも同様に意味深長だった。数時間内に、北京とモスクワは、ともに声明を発表し、言葉を慎重に選んだものの、新最高指導者発言内容と紛れもなく一致しており両者の連携を示唆していた。

 戦争は新局面を迎えている。11月の中間選挙を控えた国内情勢で、この戦争がどのような影響を与えるかトランプ大統領は注視している。アメリカ国民は、投票するかどうか、あるいはどう投票するかを、9月か10月までに考えを固める傾向がある。彼の陣営は、夏までに、トランプにとって、もっともらしい「勝利」を予測できるような戦争からの出口戦略を必死に模索しているが、そもそも勝利などあり得るのか。

 「イランのエネルギー網に対してトランプが行う可能性がある攻撃は、不安定化と注意をそらすためのもので、米海兵隊と第82空挺師団がカーグ島、あるいは他のイランの島々を占領するためのものだ」とSimpliciusは示唆している。地上部隊による作戦は依然非常に可能性が高いと「高官筋」は主張し続けている。

 エスカレーション段階でトランプに対抗する準備が明らかにイランはできている。イランの指導スタイルは新最高指導者就任により明らかに変化した。彼はもはや漸進的「駆け引き」に関心を示していない。西アジアの地政学的状況を変えるような決定的結果をイラン指導部は目指している。

 そしてホルムズ海峡がこれを実現する交渉材料になるとイランは考えている。

 承認され、革命防衛隊(IRGC)の審査を受けた船舶のみがホルムズ海峡を航行可能な厳選された安全な航路をイランは設けている。ただし、貨物代金は人民元で支払われ、手数料が課される。このようなスエズ運河型の規制制度により、イランは年間8000億ドルの手数料収入を得られる可能性があると推定される。

 理論上、これによりエネルギー市場への供給が可能になるが、トランプ大統領が最後通牒を実行に移した場合、イランは海峡を完全封鎖するという条件付きだ。

 イランの新たな要求は「欧米諸国には考えられないほど広範囲に及ぶ」とマイケル・ハドソン教授は指摘している。「アラブOPEC諸国は、アマゾン、マイクロソフト、グーグルが運営するアメリカのデータ・センターを皮切りに、アメリカとの緊密な経済関係を断ち切らなければならない。そして、1974年の石油ドル協定以来、アメリカの国際収支を支えてきた既存のオイルダラー資産を売却しなければならない」というものだ。

 「オイルダラー還流は、アメリカによる世界石油貿易の金融化と、兵器化と、アメリカ支配に基づく秩序(本物のルールでなく、単にアメリカの場当たり的要求)順守に抵抗する国々を孤立させる帝国主義戦略の基盤になっている」とハドソン教授は述べている。

 イランがホルムズ海峡を掌握し、更にフーシ派が紅海を支配すれば、エネルギーと、その価格決定権はアメリカから奪われる可能性があり、ウォール街へのオイルダラー流入がなくなれば、アメリカによる金融主導の世界支配は終焉を迎える。

 ここで問題になっているのは、米軍を中東から追い出そうとするイランの野望だけでなく、GCC諸国や(日本や韓国など)アジア諸国がホルムズ海峡の航行権を得るため、やむなくイランの「属国」にならざるを得ない地政学的変容でもある。そして、安全な航行を保証できるのはイランだけだ。

 事実上、イランがホルムズ海峡の支配権を維持できれば、アジアの地政学は新たな戦略的現実に再構築されるはずだ。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/03/27/iran-audacious-strategic-moves-declared-missile-dominance-over-occupied-territories-warning-of-nuclear-deterrence/

----------

Tel Aviv Is No Longer A Safe Zone; Iran Has Pointed A Gun At Its Heart. | Prof. John Mearsheimer 58:19
Trump Desperately Tries to Run Away - But It’s Already Too Late | Col Douglas Macgregor 28:05
 Arc Times
トランプ政権、地上戦「数週間」の危険/高市首相、集団的自衛権の行使を約束か?/高市官邸、安保法制で自衛隊派遣の本音じわり(布施祐仁❎尾形聡彦)【3/29(日) 18:15~ ライブ】 1:32:36
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
イラン戦争が長期化した時に日本のエネルギー事情はどうなるか(AI回答)2026年現在のデータ(原油、中東依存度約95%、備蓄:国家146日分+民間101日分等)。LNGホルムズ依存6.3%。今後100日(約3ヶ月):備蓄本格使用+代替調達開始、経済への打撃拡大供給状況

« 対イラン戦争:莫大な軍需品消耗+成果の欠如=イランの勝利 | トップページ | NATOのルッテ事務総長がトランプの忠実な子分であることに欧州属国諸国が激怒している本当の理由 »

イラン」カテゴリの記事

アメリカ軍・軍事産業」カテゴリの記事

ロシア」カテゴリの記事

シェール・ガス・石油」カテゴリの記事

サウジアラビア・湾岸諸国」カテゴリの記事

トランプ大統領」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 対イラン戦争:莫大な軍需品消耗+成果の欠如=イランの勝利 | トップページ | NATOのルッテ事務総長がトランプの忠実な子分であることに欧州属国諸国が激怒している本当の理由 »

お勧め

  • IWJ
    岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

カテゴリー

ブックマーク

最近のトラックバック

無料ブログはココログ