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2026年3月28日 (土)

イスラエル・アメリカ・イラン戦争:非対称紛争の罠とアメリカ権力の地政学的失敗

リカルド・マルティンス
2026年3月25日
New Eastern Outlook

 何年も前から仕掛けられていた罠にトランプははまってしまった。彼が勝てない戦争で、彼が支配できない条件での戦争だ。強さを誇示するはずだったものが、今や中東の様相を一変させ、覇権主義後の分裂した世界秩序への広範な転換を加速させている。



 ネタニヤフの罠にはまったトランプ

 選挙運動中「終わりのない戦争」の連鎖を断ち切るとドナルド・トランプは約束していた。だが皮肉なことに、彼は歴代政権が慎重に避けてきたシナリオ、イランとの大規模紛争に直接踏み込んだ最初のアメリカ大統領になった。ネタニヤフは以前、オバマ、バイデン、トランプをイランとの戦争に引きずり込もうと様々罠を仕掛けたが、いずれも失敗に終わっていた。今回は成功した。エプスタイン文書が何らかの役割を果たした可能性もある。

 この軌跡から浮かび上がってくるのは単なる政策の誤算ではなく構造的な罠だ。それはベンヤミン・ネタニヤフに長年培われてきたもので非対称戦争の論理に根ざしている。

 この罠の核心は政治的野心と、軍事的現実との根本的不一致にある。ネタニヤフ首相の長年の狙い、イランの政権転覆と弱体化は従来の軍事的優位性という認識に基づいている。だがトランプ大統領は明確な戦略構想を持たず紛争に突入し、自ら設計も制御もしないエスカレーション状況を事実上引き継いだ。「トランプは計画がない人間だ」と言われる通り、イランはまさにこのシナリオを予期し、それに応じた準備を整えていた。

 トランプはイランとの単なる戦争に突入しただけではない。これまでアメリカが歴史的に戦うのに苦労し、まして撤退に苦労してきた全く異なる種類の戦争に彼は突入したのだ。

 非対称紛争

 ここで非対称紛争という概念が重要になってくる。国際関係において、非対称戦争とは、弱い立場にある主体が、直接対決を避け、強い立場にある相手の経済的、技術的、政治的弱点につけこむ紛争を指す。

 典型的な例としては、ベトナム、アフガニスタン、イラクにおけるアメリカ介入が挙げられる。これらの紛争では、当初の軍事的優位性が、長期にわたる消耗戦と戦略的疲弊に転じた。元ギリシャ財務大臣ヤニス・バルファキスが指摘している通り、こうした紛争にアメリカは「絶大な自信」を持って何度も参戦してきたが、結局「翼を切り落とされた」状態で撤退することになっている。

 これらの教訓をイランは深く理解している。通常兵器では優位に立てないイランは、決定的勝利ではなく、長期にわたる不安定化を目的とする教義を展開している。いわゆる「モザイク防衛戦略」とは、複数階層からなる分散型指揮系統で、首脳部への攻撃を受けた場合でも、作戦の継続性を確保する。これに加えて低コストのドローンや旧式ミサイルを用いて敵の高価な迎撃ミサイルを消耗させ、戦場を「消耗戦」、傷だらけ状態へと効果的に変貌させているのだ。

 影響は甚大だ。コストの非対称性は驚くべきものだ。圧力を維持するため比較的少ない費用しかイランが費やしていないのに対し、防衛システムの維持にアメリカとイスラエルは日々(数十億ドルと推定される)莫大な支出強いられている。この費用対効果の逆転こそが罠だ。より強い立場にある国を、戦争を継続することで、経済的にも政治的にも持続不可能になる状況に追い込むのだ。

 空母エイブラハム・リンカーンの撤退は、この変化を象徴する出来事だ。かつて米海軍の優位性の要とされていた空母は精密ミサイルやドローンが飛び交う環境下、益々脆弱な立場に置かれている。複数専門家が指摘する通り、この出来事は軍事教義における転換点になり「難攻不落の要塞」という概念が「大型で高価な標的」に変化しかねない。誇張されているかどうかはともかく、アメリカの信頼性に対する象徴的打撃は否めない。

 だが、この罠は軍事領域にとどまらない。地政学的な側面もある。

 今トランプ大統領は益々孤立を深めている。一方的意思決定や、広範な貿易摩擦によって既に疎外感を抱いている欧州同盟諸国は参加にほとんど意欲を示していない。イギリス、ポーランド、ドイツ、イタリアが戦争参加を明確に拒否したのは、より広範な傾向を示している。特に意思決定過程から排除された場合、アメリカ主導の介入支援に対する欧州内の抵抗感の高まりだ。NATO加盟諸国にホルムズ海峡の安全確保を迫る試みは、こうした強要と弱さの認識を更に強めるだけだ。

 湾岸君主諸国が安全保障戦略を再検討

 更に重要なのは、長らくアメリカによる地域秩序の柱とみなされてきた湾岸君主諸国が安全保障戦略を見直していることだ。今回の戦争は、ある矛盾を露呈させた。米軍基地の存在が、これらの国々の脆弱性を軽減するどころか、むしろ増大させる可能性があることだ。これらの国々は、事実上、国内のアメリカ施設を守るよう要求される一方で、アメリカの作戦はイスラエルの安全保障を優先している。この逆転現象は、アメリカの安全保障保証の信頼性を損ない、中国への多角化を含むリスク分散戦略を加速させている。

 ホルムズ海峡の選択的封鎖は、この紛争のグローバルな側面を改めて浮き彫りにしている。重要なのは、この混乱が選択的なことだ。アメリカ寄りの経済の流れを標的にする一方、代替ネットワーク、特にドル建てでないネットワークの流れは影響を受けない。これは、ドルを基盤とするグローバル・エネルギー体制に構造的課題をもたらし、経済圏の分断化という、より広範な変化を示唆している。

 変化する地政学的・戦争力学

 こうした状況下で、新自由主義的グローバリゼーション、特に湾岸地域におけるグローバリゼーションの将来が問われている。同地域の経済モデルは、歴史的に、安定と、自由な貿易ルートと、アメリカによる安全保障に依存してきた。現在の紛争は、この三つ全てを不安定化させている。この状況が続けば、より国家中心で安全保障重視の経済体制への移行が加速する可能性があり、世界市場に重大な影響を及ぼすことになろう。

 一方、あらゆる関係者の間で内部力学が変化しつつある。イランでは、戦争により国家の結束と心理的回復力が強化されたようだ。指導者層の重大な損失を含む初期の衝撃を吸収し、即座に対応できる能力は戦略的な備えと制度的継続性に対する認識を高めた。

 一方、イスラエルでは、政治・軍事言説の調子が変化しつつあるようだ。過信は薄れ、分散型で適応力の高い敵勢力が重要インフラに甚大な被害を与える可能性に直面した際の、空軍力の限界に益々注意を払うようになっている。ワシントンでは、もはや軍事的成功を期待する雰囲気ではなく、危機管理と封じ込めが主流になっている。間近に迫った中間選挙の圧力も、こうした状況に影響を与えている。

 ここで中心的疑問に立ち返る。トランプにとって「勝利」とは一体何か?

 従来の意味での勝利とは、政権転覆か決定的な軍事力低下を意味する。だが、どちらも実現不可能に見える。代わりに、トランプ大統領の狙いは、撤退を可能にする象徴的成功を追求する物語支配に移行したようだ。だが、これもイランの立場により制約されている。戦争は終わっていないとテヘランは主張し、もはやアメリカ外交を信じないとして交渉を明確に拒否し、戦争終結のための条件を提示している。

 逆効果なネタニヤフ構想

 だが、より根深い問題は構造的なものだ。ネタニヤフ首相が思い描く、イランを破綻国家へ分裂させることで実現する地域覇権の可能性は戦略的に逆効果だ。リビアやシリアやイラクの事例が示す通り、国家崩壊は長期的不安定化を招き、地域秩序だけでなくアメリカの国益をも損なう傾向がある。この意味で、この罠は二重構造になっている。つまり、勝利の見込みがない戦争と、自滅的勝利という二重の罠だ。

 究極的に言えば、この紛争は世界政治における、より広範な変革を反映している。非対称戦争と変化する同盟関係と経済的分断の組み合わせは、従来の権力尺度が益々不十分になる覇権後の国際秩序を示唆している。イランは相対的に弱い立場にあるにもかかわらず、この新たな環境のルールを形成しつつあり、回復力や適応力や戦略的な忍耐力が、物質的劣勢をいかに補えるかを示している。

 トランプは単にイランとの戦争に突入しただけではない。彼はこれまでとは異なる種類の戦争に突入したのだ。アメリカが歴史的に戦うのに苦労し、まして撤退するのに苦労してきた種類の戦争だ。

 リカルド・マルティンスは社会学博士、欧州および国際政治、地政学専門家

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/03/25/israeli-us-iran-war-the-trap-of-asymmetric-conflict-and-the-geopolitical-failing-of-american-power/

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