緩慢なエプスタイン地震:大衆とエリート間の亀裂

アラステア・クルック
2026年2月9日
Strategic Culture Foundation
エプスタイン事件以降、何もかも以前と同じようには続かない。「二度と繰り返してはならない」という価値観も、極端な格差による二極化した経済も、信頼も。
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エプスタイン事件後、何もかも以前と同じようには続かない。血みどろの戦争終結時の心情を反映したものである戦後の「二度と繰り返さない」という価値観や「より公正な」社会への広範な憧れも、富の極端な格差という二極化した経済も、信頼も、エプスタイン事件記録が明らかにした、西洋エリート層の一部に蔓延していた腐敗や、腐った制度や、歪んだ行為の後では、全てが以前と同じようには続かない。
このような背景に対して「価値観」について一体どう語ればよいのだろう?
ダボス会議で「ルールに基づく秩序」は安っぽいポチョムキンのハリボテに過ぎず、偽者なのが完全に明らかになったにもかかわらず、上辺は維持されたとマーク・カーニーは明言した。なぜか? 単純に、欺瞞が有用だったためだ。「緊急」だったのは、急進的で反価値観的ニヒリズムに体制が崩壊していくのを隠蔽する必要があったためだ。エプスタインを取り巻くエリート連中が、道徳的、法的、あるいは人間的限界を超えて活動し、卑劣な欲望に基づいて平和と戦争を決定づけている現実を隠すためだったのだ。
支配者連中の完全な非道徳性が一般大衆に知れ渡れば、西洋は秩序ある生活の基盤となる道徳物語という構造を失ってしまうのをエリート連中は理解していた。体制側が道徳を軽視しているのが明らかになれば、一体なぜ他の人々が同じように振る舞うべきだろう? この冷笑主義は下層階級にも波及するはずだ。そうなったら、一体何が国家を一つにまとめられるだろう?
まあ、全体主義しかない可能性が一番高い。
ポストモダンのニヒリズムへの「転落」は、ついに避けられない「行き止まり」(ニーチェが1888年に予言した通り)へと突き進んだ。「啓蒙主義」のパラダイムは、ついにその正反対、すなわち(貪欲な私腹を肥やすこと以外)価値も意味も目的もない世界へと変貌を遂げた。これは、プラトン以来、西洋文明の中心だった「真実」という概念自体の終焉をも意味する。
この崩壊は西洋の機械的理性の欠陥も浮き彫りにしている。「この種の演繹的で閉鎖的な推論は、我々が想像する以上に西洋文化に大きな影響を与えてきた。…それは明らかにされたからではなく、科学的に証明されたため反論できないと信じられる規則を課すことになり、従って、それらに異議を唱える余地はない」とオーレリアンは指摘している。
この機械的な思考様式は(知的衰退と指導力への信頼の崩壊に続く)「ダボス会議の決裂」第三段階で大きな役割を果たした。決定論的かつ疑似科学的世界観に基づく機械的思考は、経済的矛盾を招き、西側諸国の経済学者たちに、目の前にあるもの、すなわち、オリガルヒと部内者に完全に利用される極度に金融化された経済体制を見失わせたのだ。
経済モデルの失敗がどれほど大きくても「数理経済学者が政府の政策に及ぼす強力な影響力を弱めることはない。問題は、因果関係を二元的に捉える科学が、生命の混沌にも複雑性にも対処できなかったことにある」(オーレリアン)。ニュートン物理学以外の理論、例えば量子論やカオス理論などは、我々の思考様式からほぼ排除されてきたのだ。
エプスタインの暴露に続く「ダボス」の意味は、信頼というハンプティ・ダンプティの卵が壁から落ちて割れ、二度と元には戻れないことだ。
もう一つ明らかなのは、エプスタインのお仲間連中が歪んだ個人だけで構成されていたわけでないことだ。「暴露された事実は、体系的で組織的で儀式化された慣行を示唆している」。そして評論家のルーカス・レイロスが指摘している通り、これが全てを変える。
「この種ネットワークは強固な制度的保護に支えられている場合にのみ存在可能だ。儀式的小児性愛も、国境を越えた人身売買も、過激コンテンツの組織的生産も、政治、警察、司法やメディアの庇護なしには存在しえない。これが権力の論理だ。」
膨大なメールから、エプスタインが小児性愛者で、全く不道徳な人物であるのは確実だが、同時に非常に知的で、本格的な地政学の当事者でもあり、彼の政治的洞察力は世界中の高官から高く評価されていた。(2018年というかなり以前から、また最近公開されたメールのやり取りでも)マイケル・ウルフが述べている通り、ユダヤ勢力と、それ以外の勢力との争いでも、彼は地政学の主要当事者だった。
これはエプスタインが諜報機関の道具というより、むしろ連中の「仲間」だったことを示唆している。指導者連中が彼と関わりを持とうとしたのも無理はない(極めて不道徳な理由も無視できない)。そしてディープステート(実際の単一政党)が彼を通して策略を巡らせていたのは明らかだ。しかも結局エプスタインは余りに多くのことを知りすぎていた。
エプスタインがアメリカにとって何を意味するかについて元アメリカ民主党陣営の政治問題顧問デイビッド・ロスコフは以下のように推測している。
「[アメリカの若者は]社会制度が役に立たないことに気づき、自分たちで[自力で]救わなければならない…ミネアポリスでは、もはや憲法問題や法の支配や民主主義の問題ではないと数万人の人々が主張している。これは聞こえはいいかもしれないが、普通の人が普段の食卓で話す問題から、かけ離れている」
「最高裁は我々を守ってくれない、議会も我々を守ってくれない、大統領は敵だ、我々の都市に軍隊を配備していると人々は言っている。我々を守れるのは我々自身だけだ。」
「[『問題は経済だ、愚か者め』という表現を使って『問題は億万長者だ』]とロスコフは説明している。
平等と、エリートが責められずに済んでいることが、全ての人にとっての中心的問題であまことを理解しなければ、また、体制が不正に操作されていて、自分たちのためには機能していないと人々が考え、アメリカン・ドリームはもはや現実ではないと考え、国の支配権が一握りの超富裕層に奪われ、彼らは課税されず、益々裕福になり、残たの我々が益々取り残されているのを理解しなければ、今日の35歳未満の人々の絶望を理解することはできないと私は言いたい。
ダボス/エプスタイン問題は国民と支配層間の断絶を示すとロスコフは言っている。
「今や選挙や議会委員会や演説では解決できないジレンマに欧米社会は直面している。これほどの恐怖を隠蔽してきた体制の権威を、どうして受け入れ続けられるだろう? 上位の地位にある人々が恣意的に適用する法律への敬意を、どうして維持できるだろう?」とレイロスは言う。
だが敬意の喪失は行き詰まりの根幹ではない。旧来の政党は、適正な賃金の仕事や医療や高額な教育費や住宅費といった「家計経済」の失敗に答えを出せない。
主流政党はどれも、こうした実存的問題に信頼できる答えを出せない。何十年にもわたり、経済はまさに「不正操作」され、実体経済を犠牲にして、債務に基づく金融経済へと構造的に方向転換されてきたためだ。
現在のアングロ・リベラル市場構造を完全に根こそぎにし、別のものに置き換える必要があるはずだ。それには10年にわたる改革が必要で、オリガルヒ連中はこれに断固抵抗するのは確実だ。
理想的には、新たな政党の台頭かもしれない。ところが、ヨーロッパでは、根深い構造的矛盾から抜け出す可能性を秘めていたはずの「橋」が、非中道的な政策思考の出現を阻止するための防疫線という名目で、意図的に破壊されてきた。
抗議行動が現状を変える効果を持たず、現体制のアリスの国に出てくるトゥイードルダムとトゥイードルディーのように良く似た二党間で選挙が続けば、若者は「誰も我々を救ってくれない」と結論するだろう。そして絶望の中で、未来は街頭でしか決められないと彼らは結論するかもしれない。
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2026/02/09/the-slow-epstein-earthquake-the-rupture-between-the-people-and-the-elites/
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東京新聞 夕刊 文化|特集面 山崎雅弘氏
2・8衆院選 ― 強権支配の入り口になる恐れ
具体的政策は曖昧なまま
論理より情緒 徹底した推し活選挙
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