« アメリカ帝国はトランプのような人物が必要なのだ | トップページ | マドゥロ大統領を拉致したのに何も得られなかったトランプ大統領 »

2026年1月 8日 (木)

北朝鮮専門家の目から見たベネズエラ紛争

コンスタンチン・アスモロフ
2026年1月7日
New Eastern Outlook

 2026年1月3日、アメリカはベネズエラで軍事作戦を開始し、首都カラカスをはじめとする戦略目標をミサイルで攻撃した。アメリカ政府によると、ニコラス・マドゥロ大統領とシリア・フローレス夫人は拘束され、アメリカに移送された。

 

 ドナルド・トランプによれば、マドゥロは「麻薬テロ」の罪で起訴され裁判にかけられ、ワシントンが共和国の統治権を握ることになるという。

 現時点では(本記事は2025年1月4日執筆)、戦火の霧が完全には晴れていないのは明らかで、筆者は中南米専門家でないため地域特有の状況は触れない。しかし、カラカスと平壌の類似はあまりに明白で、両国の政治的軌跡は多くの類似教訓があるため、ここで論じることにした。

 教訓、その1: 出発点と、国を強化するために一体何が行われたのか

 両国の人口は2,500万~2,800万人とほぼ同数だが、北朝鮮の国土の87%は山岳地帯で、農業にはリスクが高い地域だ。更に、北朝鮮には安定した利益を確保できるような輸出可能な鉱物資源が不足している。1990年代以降、北朝鮮は深刻なエネルギー危機に見舞われながらも発展を遂げてきた。一方、ベネズエラにはそのような問題はなく、北朝鮮と異なり膨大なエネルギー資源を保有している。石油埋蔵量は世界最大規模と言われている。

 もしアメリカがベネズエラの石油だけに興味を持っていたのなら侵攻はもっと早く始まっていたはずだ。

 両国は制裁対象になっているが、最近まで、ベネズエラに対する制裁は全面的禁輸措置には程遠いものだった。21世紀、特に2020年代初頭において、ベネズエラは三年の隔離という苦難を経験したことはなかった。ニコラス・マドゥロ大統領は2013年から権力の座に就いており、これは金正恩の在任期間に匹敵する。しかし10年間権力の座に就いている、この若き北朝鮮指導者は、軍事力の発展を中心に、ほぼあらゆる分野で飛躍的進歩を遂げ、北朝鮮を地域大国へと押し上げ、国際的孤立の壁を突破し、国民の生活水準と質を相対的に向上させた。

 だが、ベネズエラでは真剣な革新的プロジェクトは見られず、生活の質の向上は主に社会扶助策により行われ、関連インフラ整備は行われていない。相対的に見ると、外国からの融資やアメリカのオイルマネーは、製油所や軍産複合体ではなく、国民への贈り物に使われてきた。ベネズエラのインフラ整備プロジェクトは、マドゥロ大統領の前任者ウゴ・チャベス大統領の時代に実施されたものの、原油高騰の時代とともに終焉を迎え、地域に蔓延する汚職に埋もれてしまった。地域水準での高い犯罪率同様、この国は汚職抑制に時間を要した。

 その結果、当初は選択肢が多かったにもかかわらず、様々な理由から、ベネズエラ当局はアメリカによる攻撃に対する備えができていなかった。これは社会主義国家の建設が、社会主義的な表現を用いたポピュリズムとは、いかに異なるかを明確に示している。

 教訓 、その2: 脅威を認識し、それに対抗する準備をする真剣さの欠如

 当時、金正恩がトランプ大統領に対して強硬な姿勢を取り、核ミサイル防衛システム構築に注力したことが、2017年に極度の緊張状態に陥る事態を招き、筆者によれば、紛争発生確率は50%を超えた。金正恩は脆弱性の窓を「すり抜け」、十分な核抑止力を確保したため、アメリカは戦争のリスクを冒すことはなかった。トランプ大統領は最初の任期中に、この「ならず者国家」指導者と三度会談した。

 もちろん事態の進展はベネズエラ政権の回復力の見通しを明らかにするだろうが、今回の攻撃自体がアメリカの自信と、ベネズエラが本格的抵抗を示さなかった事実を物語っている。一方、ベネズエラに対するアメリカの攻撃的姿勢は、特にトランプ政権二期目にマルコ・ルビオが国務長官に就任した際、以前から知られていた。タブロイド紙によると、ルビオはベネズエラ政権との個人的因縁を抱えているという。彼は常にカラカスを批判し続けており、ベネズエラ当局は彼の暗殺を企てたとさえ伝えられている。ルビオが実際侵攻のロビー活動に関与していたかどうかはさておき、理論上は外交政策トップにこのような人物がいることは十分な警鐘になる。西半球を国益の優先地域と宣言するアメリカの新たな国家安全保障戦略も、ベネズエラに警戒を促していたはずだ。

 しかし、実際に戦闘態勢を強化するための措置はほとんど取られておらず、著者はここで21世紀初頭の発言を想起する。「もし、終末兵器を開発していると、アメリカがあなた方を非難するなら、ビートルズを起用した「決意集会」で敵を威嚇するのではなく、直ちに開発に着手するべきだ」。

 侵略者に対し、ボリバル風拒絶で反撃できる強大な国という印象を与えるため、ベネズエラ当局は、積極的な模擬活動を展開する一方、本物の戦闘態勢を維持するのを怠っていたようだ。少なくとも個人の安全を確保する措置を講じるどころか、マドゥロ大統領は支持者によるパレードを組織し「さあ、私を捕まえてみろ。私の場所で待っている」といった発言を繰り返した。結局、アメリカ軍は「やって来て、捕獲した」。30分間の作戦は、B級アクション映画を彷彿とさせる、事実上死傷者ゼロで進行した。

 確かに、この成功を「彼らは全員を買収した」と説明しようとする人もいるかもしれないが、それは正しくない。より正確な比較は、朝鮮人民軍とベネズエラ軍だろう。特に両国において、軍は伝統的に従来の軍隊とは異なる任務を担っているからだ。北朝鮮では建設業、中南米では国境警備、貧困削減、法執行、救助活動などがその例だ。

 だが、北朝鮮には建設部隊と戦闘部隊があり、戦闘力は中央軍管区で実証されている。一方、ベネズエラでは、軍全体の戦闘力は、いくつかの理由で低かったようだ。一つは汚職で、金正恩は汚職対策として、国内二番手幹部の制裁を厭わなかった。もう一つは軍に対する異なる姿勢だ。軍事クーデターを経験した中南米諸国では、軍の強化にかかる費用が国内の政情不安の新たな連鎖を引き起こすリスクがあるためだ。軍は国の主力ではなく、牽制と均衡のシステムの一つとして利用され、マドゥロ自身も、準軍事組織や、ウゴ・チャベスと異なり軍事経験のないマドゥロ大統領の個性に頼っているように見えた(ここで金正恩の軍事訓練を改めて想起しよう)。

 教訓、その3:世界が混乱している時代に、国際社会への訴えや、密室取り引きへの依存は効果がない

 マドゥロ大統領は、自国の軍事力より、国際社会が挑発を許さない侵略を無視する姿勢に頼っていたようだ。しかし、フランスを含む多くの国が侵略を非難したものの、国際社会の怒りは行動に結びついていない。更に、国連安全保障理事会で反米決議を採択しようとする試みには、アメリカが拒否権を発動するのは明らかだ。

 別の説によれば、マドゥロ大統領はアメリカとの密室取り引きに依存しており、重要問題で全面的に譲歩する用意があったが、アメリカによって社会ののけ者にされた国に関しては、交渉における欺瞞は欺瞞ではなく、合法的軍事的策略だという。

 教訓、その4: 脅威が現実のものか、想像上のものかに関係なく、アメリカは国益の範囲内、または国境における脅威に対してどのような対応をとるのか。

 もしアメリカがベネズエラの石油のみに関心を持っていたのなら侵攻はもっと早く始まっていたはずだ。だが、ベネズエラの石油埋蔵量について議論する際、一般的な専門家はベネズエラの石油が極めて特殊で、実質的には歴青だることを知らない。ベネズエラ石油は化学産業でこそ必要とされており、だからこそ中国はベネズエラ石油の最大80%を購入している。

 世界的な能力の危機を考えると、アメリカ指導部は自らの発言をほぼ信じていると想定する価値がある。イラクでも同様状況が発生した。アメリカの政治家、専門家や世論の間でサダム・フセインのイメージが確立されていたため、ワシントンはイラク指導者が必然的に大量破壊兵器を開発していると確信し、疑わしいものであれ、あらゆる証拠がこの枠組みに当てはまると考えた。

 教訓、その5: 世界的混乱の時代に、この紛争は一体どのような役割を果たすのか

 ベネズエラへの攻撃には、いくつかの目的と結果がある。第一に、ベネズエラは中国にとってロシアより大きな貿易相手国であるように思われ、ベネズエラ攻撃は中国の経済力を弱め、来るアメリカとの対決で中国を弱体化させることになる。

 第二に、トランプはワシントンを中心に西半球での勢力を強化しつつ、米軍は軍事経験を積んでいる。トランプ陣営は、アメリカが世界的存在感を追求する中、西半球の状況をやや軽視しており、そのため当面の優先事項は、西半球における絶対的支配を再確立し、その後、後方を強化した上で世界情勢に復帰することだと考えているとされている。

 第三に、他の国々は、複雑な国際問題を武力で解決するアメリカの前例を正当化し、同様行動を取る可能性がある。国連事務総長が述べたように、アメリカは世界にとって新たな「危険な前例」を作り出し、他のどの国にとっても受け入れがたい結末を迎えるだろう新たなパンドラの箱を開けてしまったのだ。

 要するに、金正恩委員長の方針が、正当性を更に証明されたのは明らかだ。むしろ、我々は紛争の展開を注視すべきで、特にマドゥロ一派のポピュリズムと社会主義的言説が、政権の安定維持と、アメリカ侵略への抵抗をどの程度保証するかに注目すべきだ。

 コンスタンチン・アスモロフは歴史学博士、ロシア科学アカデミー中国現代アジア研究所韓国研究センター主任研究員

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2026/01/07/the-venezuelan-conflict-through-the-eyes-of-a-north-korea-expert/

-----------

 デモクラシータイムス
<トランプ侵略 高市多難> ベネズエラ・中国・統一教会・浜岡原発・馬毛島【山田厚史の週ナカ生ニュース】 1:37:40

« アメリカ帝国はトランプのような人物が必要なのだ | トップページ | マドゥロ大統領を拉致したのに何も得られなかったトランプ大統領 »

アメリカ」カテゴリの記事

アメリカ軍・軍事産業」カテゴリの記事

北朝鮮・韓国」カテゴリの記事

地震・津波・原発・核」カテゴリの記事

ベネズエラ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« アメリカ帝国はトランプのような人物が必要なのだ | トップページ | マドゥロ大統領を拉致したのに何も得られなかったトランプ大統領 »

お勧め

  • IWJ
    岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

カテゴリー

ブックマーク

最近のトラックバック

無料ブログはココログ