イスラエルにとって資産から負債に変貌したトランプ

アラステア・クルック
2025年12月22日
Strategic Culture Foundation
今や「地域の現実」が変化したことに、おそらくイスラエルは気づき始めているだろう。
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イスラエルの著名評論家アンナ・バルスキーは、(ヘブライ語の)マアリヴ紙にこう書いている。「ガザでの[トランプ]計画を失敗させよう」。
「イスラエルは『待ちの策略』を練っている。正面から拒絶するのではなく…[むしろ]この地域の現実が成立するのを期待しているのだ」そして、ここに「難点」がある。「イスラエルの『前提条件』をトランプ大統領は受け入れるつもりがないと首相官邸は理解しているようだ」。「そして、ここに問題の核心がある…つまり、ハマスは武装解除も領土からの撤退もするつもりがないのだ」。
「[だが]、トランプ大統領のガザ計画を巡る亀裂は現実のものだ…明確な命令をイスラエルは要求している。まず、ハマスの武装解除、すなわち権力の実質的排除、そしてその後でのみ、復興と、国際的な力と、イスラエル撤退だ」
従って… 「湾岸諸国、エジプト、そしてアメリカ体制の重要部分は、違う秩序を提案している。まず復興と国際的仕組みが構築され、次に安定化部隊とテクノクラート政府が導入され、そして『その過程で』ハマス問題は徐々に解決される」。
従って、イスラエル指導部は幻滅し、不満を抱いている。
だが、これはほんの一端に過ぎない。アロン・ミズラヒが指摘している通り、問題はもっと深いところにある。
「イスラエルとの国交正常化にアラブ諸国が同意していないことにイスラエル指導者たちは気づいている。ユダヤ民族主義者たちはホワイトハウスに味方を据えているかもしれないが、彼が考えているのはアラブでの金儲けだけだ。(ヨルダン川西岸の)併合もイランの(政権交代も)ない。そして今、ガザ地区の『第二段階』という『侮辱的』要求を突きつけている。イスラエルは外国軍駐留を容認するだけでなく、復興も認めなければならないのだ。」問題はネタニヤフとトランプ大統領の利益の戦略的相違が益々拡大していることだ。両者はトランプ大統領のガザ計画に関して意見が分かれているだけでなく、シリア(アメリカのトム・バラック特使はトルコの立場を支持しているとみられている)やレバノン(ワシントンはベイルートを支持しているとみられている)に関しても意見が分かれている。
「トランプには成果が必要だ。何かに署名する必要がある」。一方、イスラエルの狙いはシリアとレバノンで現在享受している軍事行動の自由を維持することにあるが、これはイスラエルと地域大国間で注目を集める合意をまとめようというアメリカの努力を阻害し、混乱させる。
トランプ大統領はノーベル賞を望んでおり、最近の発言から判断すると、ネタニヤフ首相は「成果を出していない」と感じている。この幻滅感はイスラエル首相官邸にも同様に伝わっている。
トランプ大統領の一貫性のない意思決定が、ネタニヤフ首相にとって依然大きな不満の原因になっているとベン・カスピットは述べている。
「大統領は今日はあなたの味方かもしれない、だが明日には瞬きもせず簡単に寝返るかもしれないとある側近は言う。トランプの場合、前夜に誰と話したか、あるいはどのような経済的利害が絡んでいるかによリ、毎日が新たな戦いになる。これは困難で、何よりも終わりのない闘いだ…」取引重視、ビジネス第一主義へのトランプ大統領の転換は、最近のアメリカ国家戦略声明(NSS)にも明記されており、アメリカの焦点はイスラエルの安全保障上の懸念から 「協力関係と友好関係と投資」に移っている。11月のビン・サルマン国王ワシントン訪問は、まさに、この転換を如実に示しており、 ハイレベル会合と、投資フォーラムと、これら分野における協力拡大に関する多数の合意によって形成されていた。
イスラエルから見れば「カタールやサウジアラビアとの協力は、トランプにとって巨額投資という魅惑的約束を意味し、それが効果的で成功しているという彼のイメージを強化するが、更に重要なのは、中東全域での不動産取引で何十億ドルも儲ける個人的な道を開いたことだ」とある評論家は示唆している。
2024年にトランプ大統領の息子ドナルド・ジュニアとエリックが、ザック・ウィトコフとアレックス・ウィトコフ(トランプ大統領特使スティーブ・ウィトコフの息子)などの関係者と一緒に設立したWorld Liberty Financialは、トランプ一家の湾岸事業の優先事項、つまり一族の資産に数十億ドル追加するプロジェクトを強調している。
更に、イスラエルへのトランプの過剰な偏愛は、ホワイトハウスのハヌカ・パーティーでマーク・レヴィンに、自分はアメリカ初のユダヤ人大統領だと認めたように、トランプが「その通りだ。その通りだ」と、根拠もなく「アメリカ第一主義者」の傷口に塩を塗り込むような発言をしたほどだ。この卑屈な態度はシオニズムにとって戦略的損害をもたらした——議会のアメリカ保守派にさえ。「彼らはイスラエルを憎んでいる」とトランプは同じ集会で述べた。
「イスラエルとアメリカ政治体制における大勢の支持者連中は、今や、トランプに『全てを』賭けたのは重大な過ちだったのではないかと自問自答しているはずだ」とアロン・ミズラヒは主張している。彼らは戦略的目的のためトランプを支持したので、イスラエルのイメージを守り「反ユダヤ主義」法を施行するという彼の決意だけを理由に支持したわけではないのだ。
ミズラヒは次のように説明する。
「PR関連の、素晴らしく、潜在的に重要な目的は、イスラエルの終末論的右派の真の目的ではない。現実世界の権力拡大と、人々や領土に対する支配こそ彼らの決定的かつ指導的構想で願望だ。その実現を支援するためにトランプは選ばれたのだ。イスラエルがシリアの一部を正式領有すること、レバノンのヒズボラを壊滅させること、ヨルダン川西岸地区を併合し民族浄化すること…イランを崩壊させること、そして中東におけるあらゆるライバル勢力の台頭を抑制すること、そしてアラブ湾岸諸国のようにシオニズムに融和的な勢力も含め、それが実現することだ」「彼らは、アメリカを含む世界でのシオニズムへの一般的嫌悪感が、新たな指導者と、規範と基準に取って代わられるまでの時間が限られていることを知っている。だからこそ、彼らは緊急に行動する必要がある。そして彼らが今やっているのはまさにこれだ。被害対策ではなく、衝撃への備えだ。彼らは防御ではなく攻撃に臨んでいるのだ。」
ネタニヤフ首相とトランプの年末首脳会談ではトランプ大統領のガザ計画の第二段階が最も喫緊の課題となる可能性が高いものの、イスラエルにとって、より大きな戦略的脅威となるのはイランだとベン・カスピットは書いている。そしてこの文脈で、イスラエルがトランプ大統領の失策と見なしている点をもう一つ、イスラエルの戦略評論家シェムエル・メイアが指摘している。
イランのウラン濃縮施設は6月13日に本当に「消滅」したのだろうか? そして、イランが今も保有する60%濃縮ウラン440kgはどうなったのだろう?
トランプ大統領のイラン攻撃の結果について懐疑的な見方が広がる中「今週、イスラエル言論界で驚くべき核関連ニュースが浮上した。それは目に見える以上の内容だった。軍事長官ロマン・ゴフマン少将を次期モサド長官に任命するとネタニヤフ首相が予想外に発表したのだ。」
ゴフマンは諜報活動経験はないが、数年前に核問題について執筆し、イスラエルの戦略抑止原則に根本的変更を提案したことで知られている。
モサド長官として、ゴフマンはネタニヤフに直接かつ専属的に報告する。イスラエルでは、首相は原子力委員会委員長も兼任している。「ゴフマンは型破りな思考をするだけでなく、ネタニヤフの考え方に共感しているようだ」とメイアは書いている。
50年前、ヘンリー・キッシンジャーが提唱した「ニクソン・ゴルダ了解」により、アメリカからイスラエルは唯一NPT加盟義務から免除された。この独自の核保有国としての地位にアメリカは条件を設けた。イスラエルは核兵器保有を宣言せず、核実験も行わないというものだ。これがイスラエル核政策の曖昧性だ。
ネタニヤフ首相が公式の「曖昧さ」からの脱却を検討している理由として考えられるのは、シェムエル・メイアが「トランプ効果」と呼んでいるものだ。
「一方で、国家情報機関がイランは核兵器を開発していないと評価したにもかかわらず、イスラエルに核施設攻撃を許可したアメリカ大統領がいる。だが他方で、気まぐれで予測不能な人物がいる」モサドは「イランは核爆弾製造の機会を待っている。イスラエルを地図から消し去りたいのだ。我々は彼らの工作員を見つけ出し対処する。正義は行われる」と宣言した。これは退任するモサド長官デイビッド・バルネアの発言だ。
「全ての核施設が『破壊された』と宣言した大統領は、ネタニヤフ首相に二回目の予防戦争の選択肢を与える確証を示していない。これはイラン核開発計画再開の兆候(真実かどうかは別として)が発見された場合、イスラエルはいつでも行動の自由があるというネタニヤフ首相の主張とは対照的だ。」
モサド指導者の交代は、年末の首脳会談でイラン核問題が議題に上がることを意図的に示唆しているのかもしれない。
この極めて重要な問題に関して、かつて「資産」だったトランプが今や負債になっているのかどうかネタニヤフ首相が判断するかもしれない。
「もし彼が職にとどまり、親シオニストのオーラを放ちながら金銭的利益の追求に固執し、イスラエルに何も実質的貢献しないなら、どうして彼が職にとどまることが許されるのか私は想像できない」とミズラヒは言う。「彼らはむしろ彼が消え去ることを望んでいる」。
だが今やJ・D・ヴァンス副大統領も汚名を着せられている。「ユダヤ人の正当性の組織的剥奪」が今日、アメリカ副大統領から発せられたとアンナ・バースキーがマーリヴ紙に書いている。
「イスラエル嫌悪と反ユダヤ主義は違う」とアメリカのJ・D・ヴァンス副大統領がソーシャルメディアに書いたとバースキーは書いている。
イスラエルの観点からすれば、この短く、ほとんど何気ない文章ほど気がかりなものはない。驚くべきことでもないし露骨なわけでもない。それが象徴するもの、つまり、アメリカ政府高官が、イスラエルに対する態度とユダヤ人に対する態度を切り離し、ユダヤ国家への根深い敵意を正当化しようとするイデオロギー的言説を公然と採用し、しかも道徳的な見せかけを清廉潔白に保とうとしているからだ。アンナ・バルスキーの言葉を借りれば、「地域の現実」が変化したことにおそらく今やイスラエルは気づきつつあるのかもしれない。
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/12/22/trump-morphs-from-asset-to-liability-for-israel/
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