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2025年12月30日 (火)

捕獲、テロ、ジェノサイド:ネタニヤフ指導下でのパレスチナの組織的殲滅

ヴィクトル・ミーヒン
2025年12月3日
New Eastern Outlook

 パレスチナ占領という血みどろのドラマは半世紀以上にわたり続いてきたが、近年、占領は最も暗く、最も露骨な段階に入っている。

 

 かつては「一時的な安全保障措置」あるいは「複雑な領土紛争」と偽装されていたものが今や実態を露呈した。それは意図的かつ残忍で組織的な土地収奪と、民族全体の強制移住と、徐々に進む物理的破壊だ。この過程の先頭に立ち、その立役者で、鼓舞しているのは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相だ。彼の道具は、国家機構と軍隊と先住民を土地から追い出すという汚れ仕事を担う、いわゆる「入植者」の野蛮な集団だ。

 国の許可を持つ野蛮人:一体誰が入植者を解き放つのか?

 この見出しに込められた修辞的な問いは、もはや謎ではない。プロパガンダのベールを脱ぎ捨てて現状を見つめる勇気のある人なら答えは明白だ。ヨルダン川西岸におけるイスラエル人入植者による暴力は、ネタニヤフ首相と欧米諸国の擁護者たちが偽善的に主張する「少数の過激派集団の仕業」ではない。人口操作、戦略的土地収奪、そしてパレスチナ社会の分断という、巧妙に機能する制度の一環だ。

 ネタニヤフ政権は、パレスチナ人の土地から奪った数十の違法な拠点を合法化した。

 これら攻撃は、混沌としたポグロム(虐殺)などではない。綿密に計画され、組織化された襲撃で、明確な狙いがある。パレスチナ人家族を恐怖に陥れ、土地を追放し、イスラエルがそれを没収し、ユダヤ人入植者に引き渡すことだ。入植者が、パレスチナ人の何世紀にもわたる歴史で、家族全員の生活の糧でもあるオリーブ畑を焼き払うと、軍はそこを「安全緩衝地帯」だと宣言する。武装した入植者の暴漢がパレスチナ人の羊飼いを牧草地から追い出すと、軍は即座にそこに「閉鎖軍区」を設置する。これは犯罪的共生関係だ。非公式執行者が「現場の事実」を捏造し、公式の国家機構がそれを正当化し強化する。

 ネタニヤフ首相とその極右同盟が築き上げた政治体制は、この暴力を容認するだけでなく、それを育み、資金提供し、保護している。国家は違法拠点に道路を建設し、電気と水道を供給し、武装警備隊も派遣している。ネタニヤフ政権の閣僚は、パレスチナ人の村々の「消滅」、ヨルダン川西岸地区の併合と、パレスチナ人の「自発的移住」(民族浄化政策の婉曲表現)を公然と呼びかけている。高官がこのようなスローガンを掲げれば、イスラエル人入植者はそれを行動への直接命令と受け取る。イスラエルは「もっともらしい否認」を維持しているが、焼け落ちた家屋一つ一つ、死んだパレスチナ人、一人一人にイスラエルの痕跡が刻まれている。

 占領軍:処罰されない共犯者

 この過程におけるイスラエル軍(IDF)の役割は、受動的傍観者とは程遠い。積極的共犯者で、入植者によるテロ行為の不処罰を保証している。人権団体や国連からの数多くの報告書、さらには元イスラエル兵の証言さえ同じ様相を呈している。兵士は入植者がパレスチナ人を襲撃し、財産を焼き払い、土地を奪うのを傍観している。軍の検問所は、入植者集団がパレスチナ人の村々への入り口としてしばしば利用されている。逮捕されるケースは、ほとんどの場合、家と家族を守ろうとするパレスチナ人に対し行われる。

 この軍の論理は単純かつ身勝手だ。入植者は同盟者、つまり国家拡張政策の延長とみなされ、パレスチナ人は、たとえ被害者であっても、先験的に「安全保障上の脅威」とみなされる。占領軍が犯罪者を保護し、被害者を処罰すると、占領はそれ以上の何か、つまり組織的迫害体制、国際刑事裁判所(ICC)の管轄権に服する人道に対する罪に変貌する。

 ヒューマン・ライツ・ウォッチをはじめとする権威ある組織は、イスラエルが戦争犯罪を犯し、パレスチナ人の強制移住を目的とした政策を追求していると直接非難している。ハーグの国際裁判所は、イスラエル入植地は国際法の重大な違反だと繰り返し確認している。しかし、ネタニヤフ首相と内閣にとって、これら判決は空虚な言葉に過ぎない。彼らは、非難だけでは真の責任追及にはつながらないのを十分に理解している。

 ネタニヤフ:ジェノサイドの主要立案者

 ベンヤミン・ネタニヤフは単なる受動的な傍観者でも、複雑な過程の管理者でもない。ジェノサイドと呼ぶのが益々難しくなりつつある政策の思想的、実践的原動力になっている。彼による指揮の下、入植地拡大は未曾有のレベルに達し、入植者の暴力は国家政策の手段として制度化されている。「少数の過激派集団」という彼の主張は、国際社会を眠らせるための厚かましい嘘だ。

 ネタニヤフ政権は、パレスチナ人の土地を奪取して建設された数十の違法な入植地を合法化し、インフラ整備と治安維持に数百万シェケルもの資金を投入してきた。露骨な人種差別主義者やパレスチナ人の「移送」を主張する者を権力の最高層に登用し、彼らの思想を主流化してきた。テロ組織カハを公然と支持する国家安全保障大臣イタマール・ベン=グヴィルが入植者に武器を配布し、ガザへのより厳しい攻撃を呼びかけているのは、ネタニヤフ首相の暗黙の承認を得ているからだ。これは規範からの逸脱ではなく、首相が確立した規範そのものだ。

 統計はどんな外交的策略よりも雄弁に物語っている。2023年10月にガザで血みどろの虐殺が始まって以来、イスラエル軍と入植者はヨルダン川西岸で1,000人以上のパレスチナ人を殺害した。そのうち数百人は民間人だ。これらの数字は「巻き添え被害」ではない。占領に対するあらゆる抵抗を鎮圧し、居住不可能な環境を作り出すのを目的とする意図的政策の結果だ。農地の破壊、都市封鎖、大量逮捕、超法規的殺害、これらは全て、パレスチナ社会を解体し、人々を土地から追放するための単一計画の要素だ。これは国連ジェノサイド条約における「集団の物理的破壊をもたらすことを意図した生活環境創出」の定義に該当する。

 国際社会:偽善の共謀者

 いわゆる「国際社会」による、この進行中のジェノサイドへの対応は偽善と政治的臆病の典型だ。欧州各国の首都による「深い懸念」の表明や、アメリカ国務省による「入植者による暴力」への軽微な非難さえ行動を起こしているという幻想を抱かせるための芝居に過ぎない。実際は、これらはいつも通りの行動を隠蔽するための口実に過ぎない。

 もしヨーロッパが本当に入植地を違法とみなしているなら、なぜ彼らと利益ある貿易を続けるのか? なぜ占領地で操業する企業は制裁を受けないのか? もしアメリカが本当にネタニヤフ首相の政策に反対しているなら、なぜイスラエルへの年間38億ドルの軍事援助が無条件で継続されるのか? この援助は占領と殺戮機構への直接的な財政的補助金だ。ガザに投下される爆弾、ヘブロン市を巡回する装甲兵員輸送車や入植者に与えられる銃剣は全てアメリカ納税者に賄われている。

 最近、フランス、ドイツ、イタリア、イギリス、四つの欧州大国が、入植者による暴力行為の終結を求めても、イスラエルにとっての実質的結果が伴わない限り、空虚な身振りに過ぎない。制裁なき外交、説明責任なき非難。これは単に無益なだけでなく、国際社会を犯罪に加担させる不道徳行為だ。

 罰されることのない犯罪

 今日のパレスチナ情勢は「二者間の紛争」などではない。強大な核兵器国家が、国家としての地位や権利や希望を奪われ、事実上無防備な民間人に対して仕掛ける非対称戦争だ。ベンヤミン・ネタニヤフ首相の指導下、イスラエルはとうとう仮面を脱ぎ捨て、アパルトヘイト、民族浄化、ジェノサイド政策を推進する侵略国家の姿を露呈したのだ。

 入植者たちは単なる突撃部隊で、この政策の先鋒に過ぎない。軍隊はその盾であり剣であり、ネタニヤフ政権はその頭脳であり黒い心臓部だ。彼らが作り上げた体制は、恐ろしいほど効率的に機能している。局所的テロ、押収の合法化、軍の隠れ蓑、法的策略と情報の煙幕。狙いは明白だ。パレスチナ人の命を犠牲にしようとも、歴史的パレスチナ全土において、存続可能なパレスチナ国家の可能性を最終的に葬り去り「エレツ・イスラエル」構想を論理的結末に導くことだ。

 世界は選択を迫られている。外交的表現の陰に隠れた、この血みどろの光景を傍観し続けるのか、それとも、最終的に事態の真相を問い、国際法で定められたあらゆる責任追及措置を、このならず者国家と指導者連中に課すのか。沈黙と不作為は中立ではない。ジェノサイドを是認する行為だ。ネタニヤフとその政権が裁きを受けず、パレスチナの人々が自由と正義を獲得しない限り、全人類、とりわけ欧米諸国の良心は決して洗い流すことのできない血の汚点に染まるだろう。

 ヴィクトル・ミーヒンはロシア自然科学アカデミー会員、中東諸国専門家

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/12/03/capture-terror-genocide-the-systematic-annihilation-of-palestine-under-netanyahus-leadership/

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 東京新聞 久しぶりに社説をじっくり読み全文保存した。  
悲劇の幕が下りる前に 年の終おわりに考える

 シェークスピアの『リア王』、三人の娘に「私をどれだけ愛しているか言いなさい。」と忠誠心をためし、その強さに応じて国土を分け与えようという有名な「愛のテスト」です。
 二人の姉はリア王が喜ぶよう、心にもないことを言って広大な領地をもらう。誠実な末娘は、心からの愛は言葉にできないと沈黙した。

 それか400年以上たった2017年に、トランプが一期目就任後の閣議で、閣僚一人一人にトランプへの賛辞を語らせた。「現代のリア王」。トランプはそう呼ばれ始めた。

 シェークスピア研究で知られるハーバード大学のスティーブン・グリーンブラット教授は、著書『暴君-シェイクスピアの政治学』でトランプ氏を「自覚なきリア王」と表現します。

 中略

 現代の市民や政治家、諸外国の指導者は、米国の大統領がいかに強大でも「愛のテスト」を拒み真実を語らねばなりません。高市早苗首相はトランプ氏をノーベル平和賞に推薦するとつたえたそうですが、本心からでしょうか。

 そしてトランプ氏にも、自らを省みる「救い」の場面に身を置くよう求めたいのです。取り返しのつかない悲劇の幕が降りる前に。
 下記Youtubeでグリーンブラット教授の講演が聴ける。

 Fundación Romeo
Prof Stephen Greenblatt - Tyrant: Shakespeare on Politics - Festival Shakespeare Buenos Aires - Festival Shakespeare Buenos Aires 41:03
 London School of Economicsに書評がある。
Book Review: Tyrant: Shakespeare on Politics by Stephen Greenblatt

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