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2025年11月 1日 (土)

核兵器運搬装置は核弾頭ではない

2025年10月30日
Moon of Alabama

 核兵器に関するアメリカのドナルド・トランプ大統領によるTruth Socialツイートは混乱を招き、私の推測では誤解も生じている。  
ドナルド・J・トランプ @realDonaldTrump – 2025年10月30日 1:04 UTC

 アメリカ合衆国は、他のどの国より多くの核兵器を保有している。これは、既存の兵器の全面的な更新と改修を含め、私の一期目に達成された。その破壊力の凄まじさゆえに、私はこれをやりたくなかったが、他に選択肢がなかった。ロシアは2位で、中国は大きく離された三位だが、五年以内に追いつく。他国の核実験計画を踏まえ、私は我が国の核兵器でも同等基準で実験を開始するよう戦争省に指示した。この過程は直ちに開始される。ドナルド・J・トランプ大統領
 ワシントン・ポストは、これを核弾頭の実験と解釈している。
 トランプ大統領、1992年以来初めて国防総省に核兵器実験を指示アーカイブ) ?ワシントン・ポスト

 大統領は、実験はロシアと中国と「対等な立場」で行われるべきだと述べた。クレムリンはこの動きを非難し、実験の実施時期は何も示唆されていない。

 木曜朝、ドナルド・トランプ大統領は国防総省に、ロシアや中国と「対等な立場で」核兵器実験を開始するよう指示したと述べ、中国の習近平国家主席との重要な貿易会談を前にアメリカの軍事力を誇示しようとする試みとみられる。

 トランプがTruth Socialで発表した声明は数十年にわたるアメリカ核政策の転換を示唆するもので、アメリカの敵国との関係に広範な影響を及ぼす可能性がある。ただし投稿には実験の具体的内容にはほとんど触れていない。アメリカでの最後の核実験は1992年に行われ、冷戦終結に伴いジョージ・H・W・ブッシュ大統領が核実験モラトリアムを実施する前のことだった。

 トランプは、この過程は直ちに開始され、他国の実験計画に対応するものだと書いた。

 習近平国家主席と会うため金海空軍基地に向かうヘリコプター「Marine One」の飛行中、大統領は核兵器実験再開について投稿した。

 トランプのツイートは、アメリカが他のどの国より多くの核兵器を保有しているという点で誤りだ。あらゆる公開情報源によれば、ロシアは約4,300個の核弾頭を保有しており、アメリカの約3,600個をわずかに上回っている。中国は約500~600個の核弾頭を保有しており、2035年までに核兵器の保有数を約1,000個にまで増強する予定だ。

 しかし、トランプの次の発言は核弾頭実験についてではない。核弾頭を搭載できる運搬システムの実験についてだ。

 トランプは「他国の実験計画のせいだ…」と述べている。

 最近、核実験や他の目的で核爆弾や核弾頭を爆発させた国はない。最後に知られている核実験は、2017年に北朝鮮が実施した。

 核弾頭を搭載するよう設計されたミサイルの実験と、核弾頭自体を爆発させる実験を区別することが重要だ。ミサイルには、爆撃機搭載形や、陸上配備型(大陸間)ミサイルや、潜水艦配備型ミサイルや魚雷などがある。

 ロシアは最近、ブレヴェスニク巡航ミサイルの試験に成功したと発表した。これは、原子力ジェット・エンジンで駆動する核弾頭搭載型ミサイルの可能性を秘めている。  
ロシア大統領は新型の無制限射程の原子力巡航ミサイル「ブレヴェスニク」について語った。この兵器は先週発射実験に成功し、弾頭は14,000キロ以上飛行したと報じられている。

 プーチン大統領はミサイルの原子力ターボ・ジェット・エンジンの詳細を明らかにし、動力装置は「出力は原子力潜水艦の原子炉に匹敵するがサイズは1,000分の1だ」と述べた。

 「重要なのは、従来の原子炉が起動に数時間、数日、あるいは数週間かかるのに対し、この原子炉は数分あるいは数秒で起動する点だ。これは大きな成果だ」と大統領は述べた。
 ブレヴェスニクは、アメリカのトマホーク同様、低高度をマッハ1未満の速度で飛行するように設計されたターボファン駆動巡航ミサイルだ。トマホークはエンジン駆動に液体燃料を用いるのに対し、ブレヴェスニクは小型原子炉(種類は不明)を使用する。これにより、ブレヴェスニクは比類のない航続時間を実現している。どちらのミサイルも、通常弾頭または核弾頭を搭載可能だ。ブレヴェスニクを駆動する原子力ジェット・エンジンは爆弾ではない。墜落時に放射能汚染を引き起こす可能性はあるが、爆発することはない。

 ロシアは、以前から予告していたポセイドン魚雷の実験も行った。  
火曜日、ロシアは原子力推進の水中無人機「ポセイドン」の実験に成功したとプーチン大統領が明らかにした。この巨大魚雷型核推進無人機の開発は2018年に初めて発表されたが、それ以来謎に包まれていた。

 「ブースター・エンジンを使い原子力潜水艦から打ち上げるのに初めて成功しただけでなく、一定時間無人機を推進させる原子力装置の始動にも成功した」とプーチン大統領は述べた。

 プーチン大統領は、この兵器は「速度と射程の深さにおいて世界中のどの兵器にも匹敵するものがない」と強調し、近いうちに同様兵器を配備する国は他にないだろうと付け加えた。「ポセイドン」の威力は、ロシアが開発中の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「サルマト」の性能を遙かに凌駕するとプーチン大統領は述べたが、核弾頭の威力に言及しているものとみられる。
 ポセイドン魚雷は、原理的にはブレヴェスニク巡航ミサイルに搭載されている原子炉と類似した原子炉を使用している可能性が高い。最大の利点は、やはり長い航続距離だ。ポセイドンは大型核弾頭を搭載するよう設計されており、港湾付近で爆発すれば、大規模な津波を引き起こす可能性が高い。

 またトランプは「私は対等な立場で核兵器実験を開始するよう戦争省に指示した」と述べた。

 アメリカが保有する全ての核弾頭はエネルギー省の管理下にある。エネルギー省は核弾頭の爆発実験を行える唯一の機関だ。核弾頭配備に使用される核兵器運搬手段は国防総省(トランプ大統領の呼び方では「戦争省」)の管理下にある。

 トランプ大統領は、他国の核兵器実験について「他国の実験計画のため」に「対等な立場で実験を始める」と述べた。

 トランプ大統領は、ロシアが最近行ったように、核兵器運搬手段の実験を国防総省に命じるつもりだった可能性が高い。エネルギー省に核弾頭の実験を命じたわけではない。

 大陸間ミサイルのような核兵器運搬手段の実験は、それが存在して以来、毎年行われている日常的作業だ。

 慌てる必要はない。

 だが、トランプの言葉はいつものように不正確だ。彼は本当に核弾頭実験を命じたのだろうか? この点についてロシアは確信が持てない。  
ロシア大統領府報道官ドミトリー・ペスコフは、アメリカが核兵器実験のモラトリアム(一時停止)に違反した場合、ロシアは「それに応じて」対応すると述べた。

他国が核実験を実施しているとトランプ大統領が主張したことに対し「今のところ、我々はそのことを承知していない」とペスコフは述べた。

 「もしこれが、ブレヴェスニクについてなら、これは核実験ではない」と彼は主張した。「あらゆる国が防衛システムを開発しているが、核実験ではない」

…  ワシントンは2月に非武装で核弾頭搭載可能なミニットマンIII大陸間弾道ミサイルの発射実験を行い、9月には潜水艦からトライデントIIミサイル4発を発射した。

 ロシアが最後に核兵器実験を行ったのはソ連時代の1990年だった。アメリカは議会の命令によるモラトリアムに基づき、1992年に実験を中止した。
 核弾頭実験を行うには、トランプ大統領は議会に核実験モラトリアム解除を求める必要がある。また、エネルギー省に実験場の準備を命じる必要もある。この過程だけでも三年かかると見込まれる。

 従って、大々的にパニックを巻き起こす理由は皆無だ。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2025/10/a-nuclear-delivery-vehicle-is-not-a-nuclear-war-head.html

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