牢獄で孤独に死ぬべきだったチェイニー

ディック・チェイニーは余りにも高齢で、余りにも自由に亡くなった。このような怪物が80代で、檻の中で孤独にではなく、愛する人々に囲まれて亡くなる事実は我々の文明全体への告発だ。

ケイトリン・ジョンストン
2025年11月5日

　この英語記事の朗読を聞く。（ティム・フォーリーによる朗読）

　21世紀におけるアメリカの好戦主義と軍国主義の拡大に最も責任ある政府高官と言えるディック・チェイニーが亡くなった。

　ジョー・バイデン、カマラ・ハリス、ビル・クリントン、ナンシー・ペロシなどの民主党員を含むアメリカ帝国最悪の戦争狂連中が哀悼の意を表す声明を発表した。民主党と共和党を結びつけるものがあるとすれば、戦争犯罪と何百万人もの中東の人々の虐殺だ。

I am saddened to learn of the passing of former Vice President Dick Cheney.

Vice President Cheney was a devoted public servant, from the halls of Congress to many positions of leadership in multiple presidential administrations. His passing marks the loss of a figure who, with a…

— Kamala Harris (@KamalaHarris) November 4, 2025

　ディック・チェイニーは余りにも高齢で、余りにも自由に亡くなった。このような怪物が80代で、檻の中で孤独にではなく、愛する人々に囲まれて亡くなる事実は我々の文明全体への告発だ。

　本当に正気な社会なら、リチャード・ブルース・チェイニーは比較的無名の人生を送り、庭師か何かとして働き、権力に近づくことはなかったはずだで。かなり正気な社会であれば、チェイニーがワシントンで大きな危害を加える前に、人々は彼がどんな怪物かに気づき、彼が入ろうとする町から追い出されていたはずだで。少しでも正気な社会であれば、彼はイラク侵略の罪で罰せられ、ハーグの独房で余生を送っていたはずだ。

　だが我々は本当に正気な社会、あるいはかなり正気な社会、あるいは少しでも正気な社会で暮らしてはいない。我々は何百万人もの人々を殺し、何千万人もの人々を避難させ、理解できる以上の人々の苦しみをもたらす一連の出来事を引き起こし、その後何の責任も負わずに安楽で特権的な生活を送れる社会に暮らしている。

　ディック・チェイニーは亡くなったが、彼の遺産は生き続けている。彼が引き起こした被害は今もなお蔓延している。彼が推進した覇権主義的で超軍国主義的なイデオロギーは、もはや常識になっている。新たな沼の怪物連中が彼の後を継ぎ、彼が推進したのと同じ残忍で暴君的政策を推進している。彼らは、アメリカ帝国への忠誠心に対する報いとして、自分たちも何の責任も負わず長く安楽な生活を送れると確信している。

　ディック・チェイニーは我々人類に汚点を残し、私たちは残りの人生をかけてそれを拭い去ろうとするだろう。まともな人間なら誰であれ彼が血まみれの政治生活を通して我々を導こうとしてきた方向と全く逆の方向に世界が進むよう望んでいる。まともな人間なら誰であれ、ディック・チェイニーがしたこと全てを覆したいと思っている。

The fact that Dick Cheney died of old age, free and probably surrounded by family, is a disgrace that this country will never escape. He made the world we now live in and suffered zero consequences. He won. We lost.

— Will 🦥 Menaker (@willmenaker) November 4, 2025

　とはいえ、ディック・チェイニーがいなくなったことで世界は実際より良くなったように感じる。少し明るく、少し軽く、優しく、穏やかに感じる。

　チェイニーが今地獄で燃えているという考えには慰めを見いだせない。私は地獄を信じていないからだ。チェイニーがいなくなったことで帝国の殺人や虐待が少なくなるという考えに慰めを見いだせない。そうはならないからだ。

　長い年月を経て、ついにディック・チェイニーと共有する必要のない惑星を歩いている事実に、私は慰めを見いだしている。

　素敵な体験だ。ぜひ試して頂きたい。数歩をして、ついにディック・チェイニーのいない地球を歩いているのに気づいて頂きたい。空を見上げて、もうあなたとディック・チェイニーが空の下で一緒に暮らしていない事実を思い返して頂きたい。深呼吸して、「今日はディック・チェイニーのいない人生の最初の日だ」と考えて頂きたい。

　とても素晴らしい気分だ。私の中の何かが少しくつろぐのを感じる。動物的な私の体のどこかが、彼がいなくなったことに、大いに安堵している。

　私にとっては、これで十分だ。これで良しとする。

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　画像：ジョージ・W・ブッシュ・ホワイトハウス（パブリックドメイン）

記事原文のurl：https://caitlinjohnstone.com.au/2025/11/05/cheney-should-have-died-alone-in-a-cage/

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