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2025年10月14日 (火)

20項目計画を待ちながら:トランプ大統領のガザ人道財団はパレスチナ人の民族浄化をしているのか?



ホアキン・フローレス
2025年10月4日
Strategic Culture Foundation

 ガザ地区のパレスチナ人の生存は、単に日々の糧を得るためだけでなく、将来のパレスチナ国家にとっての物質的基盤を形成するものだ。

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 ガザでの戦争を終わらせるための20項目計画をトランプ大統領が発表したのを受けて、現在から、その実施(それ自体まだ保証されていない)までの間に、パレスチナ人が大規模飢餓の脅威に直面している事実に基づいて人道的評価を継続することが極めて重要だ。和平案にネタニヤフ首相が同意したとの報道もあるが、これら問題の歴史は懸念を正当化する。ネタニヤフ首相が、この計画に矛盾する発言をしている兆候が既にある。これは、この計画がパレスチナ人の自己決定権の実現を伴い、最終的にパレスチナ国家を樹立する可能性もあるためと思われる。また、この計画自体、ガザ全域にわたる国連の食糧支援と医療活動を即時に広範囲に再開することを要求している。しかし現時点でガザで活動している最大組織はガザ人道財団(Gaza Humanitarian Foundation GHF)で、この組織は欧米諸国の報道機関や国連報告書や人権団体から広く批判を受けている。

 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相のガザにおける全体的狙いは、パレスチナ人の民族浄化を果たすため飢餓を作り出す効果があると人権団体や国連は結論付けている。しかし、トランプ大統領がパレスチナ人に食糧を供給するために設立したアメリカの計画、ガザ人道財団(Gaza Humanitarian Foundation GHF)は、テレビを含む体制側メディアや左派のインターネット・メディアから否定的反応を受けている。直接、国連自身からも批判されている。表面的には、この批判は二つの事実で正当化されるように思える。書類上、イスラエルがこの構想の共同提案国になっていることと、イスラエル国防軍兵士やアメリカ請負業者がGHF食糧配給所で食糧を受け取るため集まった人々に発砲していることだ。言い換えれば、GHFは真の意味で飢餓による民族浄化への対抗策なのだろうか、それとも食料を求める人々を思いとどまらせるため現場での銃撃と組み合わせた人口削減という犯罪的計画を「人道的隠れ蓑」にしているのかという疑問が浮かび上がる。我々の印象では、国連、報道機関、人権NGOからの報告書をどう読み解き、ネタニヤフ首相の狙いをどう理解するかにかかっている。

 問題は、GHFの系譜、その支援源、そしてその役割を最も適切に解釈できる意味合いに関わる。言い換えれば、もしこれがイスラエルが承認した食糧配給組織で、ネタニヤフ首相がトランプ大統領の20項目計画(但し書き付き)に(暫定的に?)同意したにもかかわらず、ガザ地区からパレスチナ人を民族浄化しようとしている可能性があるとすれば、これら配給拠点は特に危険な場所であることになる。確かにそうだろう。だが、一体何と比べて危険なのか?
 
GHF報道問題を定義する

 そこで疑問となるのが、GHFに対する否定的報道が不完全で文脈から切り離されたものなのか、それとも国連機関による救援など他の人道支援活動の扱い方と一貫性ある方法で報道されているのかということだ。これは非常に大きな問題であるため、重要な疑問だ。欧米諸国のリベラル系新聞における否定的報道は、ガザの飢餓を悪化させる代償を払ってトランプ大統領の正当性を失わせる全体的戦略に寄与するよう意図されているのだろうか。結局、ジャーナリズムや批判や、ある活動に対する国民の支持の度合いは、その活動の将来資源の入手や存続期間にも影響する。GHF攻撃は資金打ち切りにつながる可能性があり、ガザに残る全住民とまではいかないまでも数十万人が犠牲になる。このような大規模飢餓は人権団体や国連がネタニヤフ政権の政策だと言っていることにも合致するが、必ずしもイスラエルではなく他関係者が開始する強制移住の問題を直ちに提起するだろう。

 もしGHFがガザ地区で最大の、あるいは一部の見方によれば唯一の食糧配給機関でなかったら、あるいはイスラエルが国連を封鎖する悲惨な決定を下したことを考えると他に実行可能な代替手段があれば、GHFの真の意図を理由にGHF活動を中傷し、活動を弱体化させることは正当かつ重要だっただろう。そうすれば、より信頼できる他の当事者に現地で活躍の場を与える効果があっただろう。だが現実はそうではない。

 さらに、これらメディアは、トランプを批判してきた実績があり、批判の根拠がタカ派的すぎるかハト派的すぎるかに関わらず、一貫して批判してきた。こうしたメディア言説の一貫性のなさは、事態の本質を理解しようとする人を苛立たせる可能性がある。というのも、同じジャーナリズムにおける最も一貫した姿勢は、トランプの欠点を指摘することだったからだ。批判が左派の論点から来るか右派の論点から来るかに関わらず、伝統的メディアはトランプに否定的な焦点を当てる点で一致している。

 だが、その歴史は次の疑問に答えていない。この場合、GHFを批判することは、イスラエル国防軍の手によってガザで進行中の人道的茶番をソフトに売り込む一貫したイメージにうまく当てはまるのか、それとも、IDFの行動やイスラエル上層部の命令ではなく、GHFに責任を負わせる含みのある修辞技法を用いた報道が実際GHFの有効性を制限しているのだろうか。

 この文脈から抜け落ちているのは、とりわけネタニヤフの政策が飢餓による大量虐殺とそれに続く強制移住で、パレスチナ人に食料を供給する計画ではないことだ。そのため、ガザ地区では、普段は生存の糧となっている同じ食料を求めて列に並んでいる間に、GHF拠点で殺害されたパレスチナ人は合計で約800人だと仮定すると、パレスチナ人が殺害される確率は30万分の1だ。一方、毎日数百万人に食料が供給されている。このような幅広い文脈の欠如は政治においては当然だ。しかし、ここで懸念されるのは、こうした文脈が、GHFの実際の取り組みの正当性を損なわせることだ。GHFは、別の狙いがあるという報告や宣言があるにもかかわらず、今日では実際、飢餓による大量虐殺計画に客観的に反対する唯一の主要組織であり続けている。GHFが唯一の真の主体である事実は、イスラエルがGHFの活動のみ許可しているために問題となっている。これはまさに難問だ。

 欧米諸国の報道機関におけるジャーナリズム、意見、あるいはアドボカシー分析記事の中で、GHFが悪意ある行為者だという批判とは別に、GHFが活動せざるを得ない環境への批判が見受けられるだろうか? GHFの内部問題やガザに対する長期目標に関する真実の(たとえ不完全であれ)報道や、イスラエルによるガザ侵攻への加担や正当化への懸念と並んで、イスラエル国防軍に対してGHF食糧配給拠点への圧力緩和を求める声が見られるだろうか? なぜ、こうした点を別個に明確に表現したり主張したりできないのだろう?

 GHF支援国の一つがイスラエルであるためか、国民全体を飢えさせようとしているという非難がすぐに頭をよぎる。これはイスラエル政府を一枚岩的に扱い、ベネットとラピッドとネタニヤフの違いを取り上げていない。彼らは少数派の民主党(労働党)党首ヤイル・ゴランと共に、人質の帰還と、戦争終結と、復興規範の確立を主張してきた。イスラエルの報道によると、トランプはネタニヤフに対抗し、ベネットとの連携を模索しているという。更に、トランプ要素も加えなければならない。既成メディアはトランプの味方ではない。
 
トランプ大統領のガザ対策20項目計画:リクードとアラブ連盟の間で

 20項目計画の公表により、食糧支援の問題は今や極めて重要になっている。救援再開を含む計画の詳細や、関係者全員が本当に同意するかどうかに世界の注目が集まる中、ガザ地区のパレスチナ人の状況が深刻で、和平計画が実現するまでの間、疾病と飢餓が生存にとって最大のリスクとなっている事実は見落とされがちだ。ジャーナリズムや国連報告書における人道支援活動であれ、あるいはイスラエル国防軍兵士が民間人への発砲命令を実行するという逆の形であれ、GHF(ガザ人道財団)の配給拠点を標的とする連中は、トランプ大統領が承認したガザ復興の中核目標に反する行動をとっていると言えるだろう。

 どのように? これら条項は、パレスチナ人の強制退去を禁じ、一時移住した人々に帰還の権利を与えることを求めている。これは今年3月のカイロ・サミットで採択されたアラブ連盟のガザ復興計画と一致する。トランプ大統領の首席交渉官ウィトコフは、この計画に対しある程度楽観的な見方を示していた。この楽観的な見方は、トランプ大統領の20項目計画に反映されているようだ。GHFはこの構想の重要部分を担い、ネタニヤフ首相の飢餓政策と相反する目標を推進する一方、ガザ復興に向けてアラブ連盟と合意している他のイスラエル企業や政府の利益とも整合している。

 ネタニヤフ首相の政策は、パレスチナ人の全面的強制移住と飢餓という論理的帰結を実行し、イスラエルと世界の投資でガザを植民地化し、過激な入植者集団を満足させ、大イスラエル構想を実現することだったと合理的に結論付けられる。

 これは今年初めにカイロで発表されたアラブ連盟首脳会議案、そして現在トランプ大統領が発表している20項目の計画とも矛盾する。ネタニヤフがハマスの包括的人質解放提案を拒否し、一人か二人ずつの段階的解放を主張してきたのだ。イスラエル政治機構内でも意見の相違が深刻で、彼の法的問題は別としても(無関係ではないが)ネタニヤフ首相の政策に反し、イスラエルの野党は人質全員の一括解放と戦争終結を繰り返し求めている。
 
ネタニヤフの政策に対抗する?

 ネタニヤフ首相のガザ政策は当初から、人口動態的・政治的狙いを実現する手段として飢餓の体系的利用に依存してきた。この戦略には、パレスチナ人を住居から強制的に退去させ、社会基盤を弱体化させ、パレスチナ国家の樹立を事実上不可能にするため、基本的食糧や人道サービス利用を制限することが含まれていた。こうした状況下で、ガザで活動するイスラエル国防軍とアメリカ請負業者は、援助物資配給場所周辺の民間人への発砲など、国際法で広く違法とみなされている命令を公然と受けてきた。請負業者自身からの報告によると、これら命令は正当な理由なく発されることが多いことが確認されており、最近のイスラエル国防軍内での昇進はリクード党への忠誠心と結び付けられており、この地域における軍事作戦の政治化された性質を一層強化している。イスラエルとGHFの関係は、そのプロジェクトを戦争犯罪の隠れ蓑として扱う枠組みの大きな部分を占めている可能性があるが、こうした一般的言説には、その主題に必要な細かさやニュアンスがない。

 この物語は説得力を持つが、事実も語るべきだ。現在、GHFは1日最大200万食を配布しており、これは食糧援助を必要とする人数と同数だ。国内避難民や包囲下で暮らす家族など、飢餓の危険に最もさらされている人々に届けられている。GHFの活動は、こうした制約下でも利用を維持できるよう意図的に構築されており、他の人道支援団体がほぼ機能不全に陥っている状況において、生き残るための具体的手段を提供している。

 GHF配給拠点の立地選択については様々な解釈が可能だ。これら拠点は、パレスチナ人がイスラエル国防軍(IDF)が承認したガザ地区の地域への移住を強いられるような形で配置されていると断言できる。これら拠点が、最終的にパレスチナ人をラファ近郊のガザ地区の狭い地域に定住させる、あるいはキャンプに強制収容し、彼らの意志に反してガザから移送(民族浄化)する計画に結び付けられているのは疑いようがない。同時に、これら食糧配給拠点の存在は、住民が事実上留まるのを可能にし、紛争後の様々な現実的可能性を非常に広く実現可能なものにしている。結局、パレスチナ人は、IDFが実利的理由だけで既に平定した地域から概して立ち退きを強いられることになるだろう。破壊の規模甚大で、もろ戦争犯罪にあたる。トランプ大統領の20項目計画は、ガザ地区全体の再建がパレスチナ人の利益となることを前提としており「2. ガザ地区は、十分すぎるほどの苦しみを味わってきたガザの人々のために再開発される」としている。
 
国連と国際援助の崩壊

 GHF設立以前、ガザにおける国際援助活動は、必要性の規模を満たすには不十分だった。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、 1日あたり約33万食の食料を配布する能力があった。2025年3月2日以降、イスラエル政府にUNRWAはガザへの立ち入りを禁止された。2025年9月23日現在、封鎖状態が続き出入りが制限されているため、ほぼ全ての組織がガザでの食糧配給活動を停止しており、GHFは日々の食糧支援を必要とする約210万人のパレスチナ人にとって唯一の生命線になっている。

 イスラエルは名目上、GHF配給拠点に対する運用監視を行っているものの、この監視によってイスラエル国防軍(IDF)による、これら拠点周辺への攻撃が阻止されているわけではない。請負業者は、援助物資を入手しようとする民間人への発砲命令が継続的に報告されており、GHFの活動が常に脅威にさらされ、物流面および治安面での重大な課題にもかかわらず、粘り強さを発揮する環境が生まれている。
 
トランプ大統領の介入とネタニヤフ首相の戦略に関する結論

 GHF設立と継続的活動は、飢餓による人口削減というネタニヤフ首相のより広範な計画に対する直接介入を意味する。包囲下でも機能する人道インフラを構築することにより、トランプ政権はイスラエルの右派を事実上分裂させ、ネタニヤフ首相にパレスチナ民間人の扱いに関する国内外の監視を強いた。対照的に、バイデン政権とカマラ・ハリス副大統領はパレスチナ人の権利を支持する公式声明は出したものの、当時既に縮小されていた国連の活動を代替する実行可能な仕組みを実施できなかった。この政策の相違は、ネタニヤフ首相が追い詰められて承認した手段を通じて、パレスチナ人の命を守り、自決に必要な物質的条件を維持する上でGHFが果たしてきた独自の役割を浮き彫りにしている。多くの点で、パレスチナ人が残留し、再建し、主な受益者となる復興計画の成功はGHFに依存している。
 
人道的関心と政治的影響

 ガザ地区のパレスチナ人の生存は、単に日々の糧を得ることではなく、将来のパレスチナ国家の物質的基盤を形成するものだ。飢饉、包囲、軍事的脅迫などによる強制移住は、パレスチナ人が居住地に留まり、自決に必要な社会経済構造を維持する能力を損なう。GHFによる1日200万食の食糧支援は、パレスチナ国外への大規模強制移住による死亡を防ぐための重要な介入だ。封鎖の回避、イスラエル国防軍(IDF)や請負業者による安全保障上のリスク、物流上の制約など、運用上の課題は山積しているが、この基金は、国連や国際機関がもはや提供できない命綱を提供し続けている。

 20項目計画で、和平が以前より近づいているように見える一方、ガザにおける食糧危機の本質を理解することは依然重要だ。GHFがなければ、イスラエルが事実上認めている、住民に食糧を供給するための代替機構は存在しない。ネタニヤフ首相の計画実現というあり得る結果の上で、GHFはマイナスに働く可能性がある。しかし、それとは逆に、パレスチナ人が食糧を供給され、ガザから追放されないという条件付きなら、ネタニヤフ首相の計画に反するあらゆる結果が実現可能になる。これにはトランプ大統領の20項目計画や、現在我々が理解している通り、あらゆる点で遙かに近いアラブ連盟の計画の変種などが含まれる。そして、これら計画はパレスチナ人をガザから永久に移住させるネタニヤフ首相の計画とは相容れないものとなっている。

 全体として、これは数多くの報告で示されているものとは異なる観点からGHFを位置づけ、あり得る進展と和平協定自体を巡る各派を特徴づけるガザへの食糧支援を巡るまさに同じ分裂を浮き彫りにしている。

 Telegram @NewResistance または X/twitter @XoaquinFloresでJoaquin Floresをフォローする。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/10/04/awaiting-the-20-point-plan-is-trumps-gaza-humanitarian-foundation-ethnically-cleansing-palestinians/

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