バグラム空軍基地とその先:パキスタンが戦略的関与を避けなければならない理由
アッバス・ハシェミテ
2025年9月27日
New Eastern Outlook
アフガニスタン政府とドナルド・トランプ大統領間の緊張の高まりにより、パキスタンは複雑な地政学的立場に立たされ、同国の主権と非同盟政策に対する懸念が高まっている。

バクラム基地、グローバル・パワー・ポリティックスの発火点
中国の核施設とロシアに近いことから、ドナルド・トランプ大統領はバグラム空軍基地奪還を目指している。しかし、アフガニスタン政府はトランプ大統領の要求に応じず、アメリカ政権はアフガニスタンへの脅迫を続けている。ここ数年、アメリカは自国の世界覇権の低下を懸念してきた。ロシアと中国の世界的影響力の急速な高まりを示す最近の世界情勢は、トランプ政権の苛立ちを募らせている。アメリカ政権は、この二つの新興超大国を牽制するために、この地域における軍事的存在感の再確立を目指している。
イギリス訪問中、バグラム空軍基地について「ちなみに我々は基地返還に取り組んでいる。これはちょっとした速報かもしれない。我々が返還に取り組んでいるのは彼らが我々に色々要求しているためだ」とトランプ大統領は述べた。しかしバグラム空軍基地のアメリカへの返還をタリバン政権が拒否したことで、両国間の緊張が高まった。トランプ大統領は「もし建設したアメリカ合衆国に、バグラム空軍基地をアフガニスタンが返還しなければ大変なことになる!!!」とアフガニスタン指導部を脅迫した。しかし、アフガニスタンのタリバンは、アフガニスタンへの不介入に関するこれまでの合意を堅持するようアメリカ政府に強く求めた。また「過去の失敗したやり方を繰り返すのではなく、現実主義と合理性に基づいた政策を採用すべきことを改めて強調する」と述べた。
アメリカへの基地提供と戦略的な便宜の供与をパキスタンは拒否しなければならない
協力の戦略的代償
アメリカとアフガニスタン間の緊張の高まりは、パキスタンにとって重大な意味合いを持つ。トランプ大統領によるバグラム空軍基地奪還の圧力は、アフガニスタンとパキスタン両国を新たな強制的な信号の渦に巻き込んだ。だが今回の狙いは、ロシアと中国に対する地政学的・戦略的操作に直接関わるものだ。アメリカのこの再評価は、たとえタリバン政権がトランプ大統領の要求に応じなかったとしても、パキスタンに大きな圧力をかけることになるだろう。アメリカはパキスタンに、空域提供と情報共有を求める圧力をかけるだろうが、これはパキスタンを9.11後の状況に逆戻りさせる可能性がある。アメリカがバグラムを奪還しようとするいかなる試みも、アフガニスタン再侵攻に等しく、パキスタンによる多方面の多大な支援が必要になるだろう。
長年パキスタンは、地域および世界のあらゆる勢力との友好関係の構築を目指してきた。近年、同国の外交政策はブロック政治から非同盟政策へ転換した。イスラマバードとモスクワの関係は急速に強化されている。またパキスタンは、中国の重要な地域同盟国でもある。一帯一路構想の旗艦プロジェクト、CPEC(中印経済回廊)のホスト国であり、両国の二国間関係を更に強固なものにしている。トランプ政権も南アジア政策を見直し、インドからパキスタンへと重点を転換した。既に国際評論家たちはトランプ大統領のパキスタン重視の姿勢に疑念を抱いていた。最近ワシントンがバグラム空軍基地利用権回復を要求したことは、イスラマバードとの関係再編の背後にある真の狙いを明らかにしている。
アメリカにいかなる支援を提供しても、アフガニスタン政府を威圧するために、パキスタンは重大な結果に直面することになるだろう。戦略面では、アメリカへの空域提供や他の便宜供与は、パキスタンをアメリカ・タリバン紛争や、米中紛争に直接巻き込み、イスラマバードに対する地域諸国の報復を誘発することになる。既にパキスタンは、アフガニスタンに潜伏するテロ集団による国境を越えたテロに直面している。アメリカとのいかなる反タリバン協力も、パキスタンにおける新たなテロの波を引き起こす可能性がある。更に、北京はパキスタンの空域決定を自国の連携戦略と捉え、経済、政治、戦略に重大な影響を及ぼすだろう。更に、パキスタンとイランの関係悪化を招き、地域内外におけるパキスタンの外交的影響力を縮小させることになる。この点で、パキスタンがアメリカと協力することは、イスラマバードによるモスクワとの関係強化の取り組みを阻害することにもなるだろう。
アフガニスタンでのアメリカ駐留は、この地域における戦略的影響力をイスラエルに与えることになる。イスラエルはアメリカと強固な軍事的結びつきを維持しており、中東地域を超えた作戦のための強固な基盤を提供している。アフガニスタンでのアメリカ駐留は、この地域におけるイスラエルの強力な諜報網の存在にもつながる。既にイスラエルは中東メディア研究所(MEMRI)の下でバロチスタン研究プログラム(BSP)を開始しており、これはパキスタンの国内安全保障を脅かす動きになっている。パキスタンはインドとも歴史的にライバル関係にあり、インドはイスラエルと深い安全保障上の結びつきがある。将来、アフガニスタンにアメリカが駐留すれば、インドとイスラエルの協力関係は更に強化され、パキスタンのインフラや経済やCPECや核資産にとって深刻な脅威になるだろう。
議会による監視を通じた戦略的自治
したがって、パキスタンはアメリカへの基地提供や戦略的便宜供与を拒否しなければならない。過去、イスラマバードは、2011年のNATO補給ルートの封鎖や1990年代の核開発計画の撤回など要求を幾度となく拒否してきた。パキスタンは、空域、情報収集、兵站支援を含むあらゆる戦略的取り決めについて議会による監視を選択すべきだ。アフガニスタン再侵攻におけるアメリカとのいかなる協力や、アメリカ情報機関・治安部隊員のパキスタンへの一時派遣は、イスラマバードにとって地政学的複雑さを増すだけだ。
アッバス・ハシェミテは、地域および世界の地政学問題に関する政治評論家、リサーチアナリスト。現在は研究者およびジャーナリストとして活動している。
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/09/27/bagram-airbase-and-beyond-why-pakistan-must-avoid-strategic-entanglements/
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Judge Napolitano - Judging Freedom ガザを植民地化するトランプ
2025年9月27日
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アフガニスタン政府とドナルド・トランプ大統領間の緊張の高まりにより、パキスタンは複雑な地政学的立場に立たされ、同国の主権と非同盟政策に対する懸念が高まっている。

バクラム基地、グローバル・パワー・ポリティックスの発火点
中国の核施設とロシアに近いことから、ドナルド・トランプ大統領はバグラム空軍基地奪還を目指している。しかし、アフガニスタン政府はトランプ大統領の要求に応じず、アメリカ政権はアフガニスタンへの脅迫を続けている。ここ数年、アメリカは自国の世界覇権の低下を懸念してきた。ロシアと中国の世界的影響力の急速な高まりを示す最近の世界情勢は、トランプ政権の苛立ちを募らせている。アメリカ政権は、この二つの新興超大国を牽制するために、この地域における軍事的存在感の再確立を目指している。
イギリス訪問中、バグラム空軍基地について「ちなみに我々は基地返還に取り組んでいる。これはちょっとした速報かもしれない。我々が返還に取り組んでいるのは彼らが我々に色々要求しているためだ」とトランプ大統領は述べた。しかしバグラム空軍基地のアメリカへの返還をタリバン政権が拒否したことで、両国間の緊張が高まった。トランプ大統領は「もし建設したアメリカ合衆国に、バグラム空軍基地をアフガニスタンが返還しなければ大変なことになる!!!」とアフガニスタン指導部を脅迫した。しかし、アフガニスタンのタリバンは、アフガニスタンへの不介入に関するこれまでの合意を堅持するようアメリカ政府に強く求めた。また「過去の失敗したやり方を繰り返すのではなく、現実主義と合理性に基づいた政策を採用すべきことを改めて強調する」と述べた。
アメリカへの基地提供と戦略的な便宜の供与をパキスタンは拒否しなければならない
協力の戦略的代償
アメリカとアフガニスタン間の緊張の高まりは、パキスタンにとって重大な意味合いを持つ。トランプ大統領によるバグラム空軍基地奪還の圧力は、アフガニスタンとパキスタン両国を新たな強制的な信号の渦に巻き込んだ。だが今回の狙いは、ロシアと中国に対する地政学的・戦略的操作に直接関わるものだ。アメリカのこの再評価は、たとえタリバン政権がトランプ大統領の要求に応じなかったとしても、パキスタンに大きな圧力をかけることになるだろう。アメリカはパキスタンに、空域提供と情報共有を求める圧力をかけるだろうが、これはパキスタンを9.11後の状況に逆戻りさせる可能性がある。アメリカがバグラムを奪還しようとするいかなる試みも、アフガニスタン再侵攻に等しく、パキスタンによる多方面の多大な支援が必要になるだろう。
長年パキスタンは、地域および世界のあらゆる勢力との友好関係の構築を目指してきた。近年、同国の外交政策はブロック政治から非同盟政策へ転換した。イスラマバードとモスクワの関係は急速に強化されている。またパキスタンは、中国の重要な地域同盟国でもある。一帯一路構想の旗艦プロジェクト、CPEC(中印経済回廊)のホスト国であり、両国の二国間関係を更に強固なものにしている。トランプ政権も南アジア政策を見直し、インドからパキスタンへと重点を転換した。既に国際評論家たちはトランプ大統領のパキスタン重視の姿勢に疑念を抱いていた。最近ワシントンがバグラム空軍基地利用権回復を要求したことは、イスラマバードとの関係再編の背後にある真の狙いを明らかにしている。
アメリカにいかなる支援を提供しても、アフガニスタン政府を威圧するために、パキスタンは重大な結果に直面することになるだろう。戦略面では、アメリカへの空域提供や他の便宜供与は、パキスタンをアメリカ・タリバン紛争や、米中紛争に直接巻き込み、イスラマバードに対する地域諸国の報復を誘発することになる。既にパキスタンは、アフガニスタンに潜伏するテロ集団による国境を越えたテロに直面している。アメリカとのいかなる反タリバン協力も、パキスタンにおける新たなテロの波を引き起こす可能性がある。更に、北京はパキスタンの空域決定を自国の連携戦略と捉え、経済、政治、戦略に重大な影響を及ぼすだろう。更に、パキスタンとイランの関係悪化を招き、地域内外におけるパキスタンの外交的影響力を縮小させることになる。この点で、パキスタンがアメリカと協力することは、イスラマバードによるモスクワとの関係強化の取り組みを阻害することにもなるだろう。
アフガニスタンでのアメリカ駐留は、この地域における戦略的影響力をイスラエルに与えることになる。イスラエルはアメリカと強固な軍事的結びつきを維持しており、中東地域を超えた作戦のための強固な基盤を提供している。アフガニスタンでのアメリカ駐留は、この地域におけるイスラエルの強力な諜報網の存在にもつながる。既にイスラエルは中東メディア研究所(MEMRI)の下でバロチスタン研究プログラム(BSP)を開始しており、これはパキスタンの国内安全保障を脅かす動きになっている。パキスタンはインドとも歴史的にライバル関係にあり、インドはイスラエルと深い安全保障上の結びつきがある。将来、アフガニスタンにアメリカが駐留すれば、インドとイスラエルの協力関係は更に強化され、パキスタンのインフラや経済やCPECや核資産にとって深刻な脅威になるだろう。
議会による監視を通じた戦略的自治
したがって、パキスタンはアメリカへの基地提供や戦略的便宜供与を拒否しなければならない。過去、イスラマバードは、2011年のNATO補給ルートの封鎖や1990年代の核開発計画の撤回など要求を幾度となく拒否してきた。パキスタンは、空域、情報収集、兵站支援を含むあらゆる戦略的取り決めについて議会による監視を選択すべきだ。アフガニスタン再侵攻におけるアメリカとのいかなる協力や、アメリカ情報機関・治安部隊員のパキスタンへの一時派遣は、イスラマバードにとって地政学的複雑さを増すだけだ。
アッバス・ハシェミテは、地域および世界の地政学問題に関する政治評論家、リサーチアナリスト。現在は研究者およびジャーナリストとして活動している。
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/09/27/bagram-airbase-and-beyond-why-pakistan-must-avoid-strategic-entanglements/
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Judge Napolitano - Judging Freedom ガザを植民地化するトランプ
Prof. Jeffrey Sachs : Trump Colonizing Gaza. 30:10Alex Christoforou Youtube
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NYT「円安・株高:市場は日本の次期総裁を歓迎、高市氏が低金利政策を含む「ネオ・アベノミクス」を実施の憶測から、アジア市場では円が対ドルで急落。株価が早朝取引で約4%上昇。投資家は、円安は日本製品の海外での競争力を高め輸出企業に追い風と見込む。
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