トランプのトマホーク…ウクライナ和平合意は全て白紙

2025年10月3日
Strategic Culture Foundation
永続的平和のためにはロシアは自国の条件で軍事的に戦争を終わらせなければならないだろう。
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キーウ政権へのトマホーク巡航ミサイル供給をトランプ大統領がほのめかしているのは見苦しい。ロシアへの脅威になるという観点からではなく、むしろ脅威ではない。むしろ、ロシアに対するNATOの代理戦争を終わらせることにトランプが真剣でないことを示している。
従ってロシアは戦場で軍事的に勝利し完全な勝利者として和平条件を提示する必要がある。トランプ政権との紛争を交渉で解決できる可能性は今のところ低いように思える。
8月15日にアラスカでロシアのプーチン大統領をトランプ大統領が出迎えた際、我々の週刊社説は「トランプ・プーチン首脳会談は平和への突破口となるが、アメリカは戦争を終わらせる必要がある」という見出しを掲げた。
アンカレッジでの会談は、ロシアに対するいつもの行き詰まった欧米諸国の敵意ではなく、外交の可能性に向けた突破口となるもので、紛争の根本原因に取り組むロシアの立場をトランプ大統領は理解しているように見えた。
しかし、2ヶ月経過した現在も、トランプは「戦争終結」への意欲を全く見せていない。キーウ政権への米軍支援を全面的に停止することで戦争終結を実現できたはずなのだ。それどころか、アラスカ首脳会談から数週間後、ウクライナへの長距離攻撃ミサイル(ERAM)供給をトランプは発表した。射程距離500キロのERAMは、バイデン政権が提示していた金額を上回る。トランプがこの動きを承認したのは、NATO加盟国の欧州諸国が費用負担するからだが、これは原則的平和推進者とは到底言えない身勝手な計算だ。
つまり、トランプは戦争を終わらせようとはしていない。ヨーロッパ諸国に戦費を払わせようとしている、それだけだ。トランプの問題は、ロシアとの迅速かつ派手な和平合意により四年近く続いたウクライナ戦争を終わらせ、卓越した交渉力でノーベル平和賞を獲ろうと期待していたことだ。まるでハリウッド映画のような結末だ!
現実には、トランプと政権は、代理戦争の根本原因を理解しておらず、それに対処する意思も明らかに欠いている。彼らの言説は代理戦争であることは認めているものの、NATOの歴史的攻勢、冷戦後の約束に対するNATOの裏切り、ロシアの戦略的安全保障上の懸念や、NATO兵器を保有し、大量虐殺を行うネオナチ政権が国境に展開する状況に直面しているロシア国民の権利について真剣な交渉を行うこととなると、トランプと側近連中は空虚な態度をとっている。トランプのこうした表面的な姿勢は、彼の不安定な態度と、プーチン大統領とロシアに対する益々無愛想な発言により露呈している。
ウクライナへのトマホーク巡航ミサイル配備を検討しているとされるトランプ大統領の最近の動きやロシア国内への深部攻撃を狙うためキーウ政権とアメリカの情報共有を承認したとされる報道は全く腑に落ちない。むしろ彼の芝居がかった和平努力にロシアが同調しなかったため、過剰な自尊心を傷つけられた人物による空虚なはったりに聞こえる。
まず第一に、アメリカとNATO加盟諸国は、ミサイルやドローンによるロシア攻撃に関する情報を既にキーウ政権と共有している。そして、その行為によって彼らは深刻な流血を被っている。したがって、トランプ大統領の「情報共有承認」は目新しいものではない。アメリカ・メディアによるこの報道の仕方は、ロシアに対する何らかの圧力としてトランプ大統領が大げさに宣伝しているように思える。
トマホーク自体だが、今週ソチで開催されたヴァルダイ・フォーラムにおける公開討論会でプーチン大統領が認めた通り、トマホークは深刻な被害をもたらす強力な兵器だ。この巡航ミサイルは射程1,500~2,000km、450kgの弾頭を搭載し、爆発力は深い掩蔽壕も貫通可能だ。だが1970年代に開発されたこの亜音速兵器は、現代のロシア防空システムによって効果的に無力化されるだろう。またトマホーク発射はウクライナ軍の能力を超えている。これは軍艦や潜水艦から発射されるのだ。対ロシア長距離ミサイル発射に公然と関与する意思がアメリカにはあるのだろうか?
プーチン大統領も指摘した通り、たとえトマホークが供給されても、NATOの支援を受けるウクライナ軍が1,000キロに及ぶ前線全域で急速に領土を失いつつある戦況は変わるまい。NATOは戦争に敗れたのだ。トマホークは、NATOとプロパガンダ・メディアがこれまで何度も喧伝してきた軍事的成果をあげていない幻の「驚異の兵器」の一つに過ぎない。F-16戦闘機、レオパルト戦車、エイブラムス戦車、チャレンジャー戦車、ストームシャドウ・ミサイル、フランス版ストームシャドーSCALPS、ATACMS等を想起願いたい。これら全て戦争に勝利するはずだったが、勝利はしなかった。
いずれにせよ、今週後半「公式筋」を引用してロイター通信が報じたところによると、現時点でアメリカがウクライナにトマホークを供給する可能性は低い。既存在庫は全て米海軍の要求に充てられており、余剰在庫がないからだ。また「平和の使者」トランプがベネズエラや再びイランと戦争に突入する構えを見せていることを考えれば、アメリカは備蓄を温存しておく方が賢明だろう。
これが示唆するのは、かつてホワイトハウスでの口論でトランプがキーウの傀儡ゼレンスキーを叱責したような使えるカードがほとんどない大口ポーカープレイヤーのように振る舞っていることだ。アメリカ大統領は、粗野な強硬発言と、ウクライナへのトマホーク供与や「情報共有」といった大げさな宣伝により、ロシアを何らかの形で脅し、交渉の席に着かせ、中途半端な和平合意を受け入れさせようとしているのだ。その和平合意は、彼がノーベル賞を獲得して、ネオンライトで自尊心を輝かせるためのものなのだ。
今週スコット・リッターが指摘した通り、トマホークに関するトランプ発言が本物だとすれば「狂気」だ。
だが問題はこれだ。トランプ発言は真摯でないことだ。つまり、ウクライナでロシアと和平合意に至るという彼の姿勢そのものも真摯でないのだ。彼は自らのエゴのために、そして戦費をヨーロッパに転嫁するために策略を巡らせているのだ。
交渉による誠実な根本原因の解決に基づいてトランプ政権が紛争を終結させるとはモスクワは期待できない。根本原因は、アメリカの帝国主義的勢力と、ヨーロッパの手先から生じている。トランプには到底この問題に対処する力量はない。
永続的平和のためには、ロシアは自国の条件で軍事的に戦争を終わらせなければならないだろう。
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/10/03/trumps-tomahawks-all-bets-off-on-peace-deal-ukraine/
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Judge Napolitano - Judging Freedom
INTEL Roundtable w/ Johnson & McGovern - Weekly Wrap 3-OCT 33:43今朝の孫崎享氏メルマガ題名
高市早苗議員票149、地方36計185、小泉進次郎議員票145、地方11計156。高市勝利には麻生氏の支持が大きい役割。一説に一回目麻生票を小林、茂木に与え、逆に決戦時両氏は高市にと言われている。対米隷属、中国との一段の対峙の流れになろう。植草一秀の『知られざる真実』
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