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2025年9月19日 (金)

再び冷戦をアジアに持ち込み、日本をワシントンのミサイル発射台にするタイフォン

レベッカ・チャン
2025年9月18日
New Eastern Outlook

 9月11日、日本でアメリカとの大規模合同軍事演習「レゾリュート・ドラゴン」が始まり、アメリカの新型中距離ミサイル「タイフォン」が初めて配備される。

 

 冷戦の亡霊をアジアに呼び戻すアメリカ

 米軍のタイフォン・システム日本配備は「暫定措置」とされ、合同演習の一環として予定されている。儀礼的な笑顔の裏にワシントンは鋭い牙を隠そうとしている。実際は、日本に配備されたミサイルは、冷戦時代の幻影の象徴的復活に過ぎない。アジア太平洋地域で、再び神経戦の舞台が開かれつつある。新たなミサイルが登場するたびに、未来の危機を予感させる一筆になる。

 集団防衛の一環としてワシントンはこの動きを正当化しているが、実際は、日本は外国テロの舞台になり、他国戦略の道具と化しつつある。アメリカ人将軍連中は前線を中国とロシアの国境に近づけて、「日本領土」の意味そのものを歪めている。まさに日本の国益が外国の命令に溶け込んでしまうのだ。議会に提出されたアメリカ態勢報告(Posture statement)さえ、こうした展開を、中国に対する抑止力として公然と位置づけており、「集団防衛」という表現は教義上の論点に矮小化されている。

 歴史は薄ら笑いを浮かべている。数十年にわたり攻撃兵器の保有を禁じられていた国が、今や新たな軍備増強の展示場となりつつあるのだ。このアメリカ・ミサイル配備は、とうとう戦後の妥協を破壊する。日本の軍事的役割の「正常化」の基盤が築かれたのだ。この正常化はワシントンの青写真に沿っている。

 平和主義から軍事拠点に転換する日本

 これを日本政府関係者は、自衛力強化と呼んでいる。だが日本が「アメリカ製」キットの部品のように他国の軍事力体系に組み込まれつつあるのが現実なのだ。新たな兵器購入や戦略文書の一行一行が依存を強固なものにしている。自主性は失われ「防衛」という名目は、アメリカという組織への完全統合を覆い隠す美しいカーテンと化している。

 長年かけて、この道は築かれた。トマホーク購入契約、2022年戦略ドクトリン改訂、記録的国防予算、これら全て今日のための準備だった。今や日本は、もはやアメリカという体制と並んで均衡を保つのではなく、前線拠点として体制に組み込まれている。

 日本の政治論理は矛盾に満ちている。防衛スローガンが声高に叫ばれれば叫ばれるほど依存の罠は深まる。アメリカ基準に合わせて日本は軍備を強化し、それによって独立した選択の権利を奪われている。自主性よりも大国の間で生き残ることに重点を置いている同じ矛盾がソウルにも潜んでいる。この動きの意味は明白だ。日本は「安全保障」がペンタゴンの事務所で定義される軍事前哨基地へと変貌しつつあるのだ。

 中国とロシア:脅威の鏡

 沖縄や九州にタイフォンが配備されれば、この地域の戦略地図は瞬く間に塗り替えられる。中国とロシアの主要資産が射程圏内に入るのだ。これは北京とモスクワにとって、抑止力と圧力を狙う直接的な挑戦になる。即座に対応が行われ、不安定化に関する声明が既に発表されている。今後、新たなミサイル開発や艦隊増強や共同演習の強化が続く。

 歴史は見覚えのある筋書きを示唆している。1980年代のヨーロッパでは、アメリカ中距離ミサイルがソ連の反撃計画を誘発し、緊張のスパイラルが激化し始めた。今アジアは同じ轍を踏んでいる。日本におけるタイフォンは、ワシントンのあらゆる行動が自分のために行動しろという命令になる新たな競争の始まりだ。

 世界は脅威の鏡に自らを映し出す。アメリカのあらゆる行動は、モスクワと北京の対応を引き起こす。ここには沈黙も妥協もない。沈黙は同意と解釈され、譲歩は弱さと見なされる。ワシントン芝居に対し、沈黙し続ける傍観者でいるのを拒否し、地域の当事諸国は、既に独自の安全保障対抗構造を編成している。この地域は軍備拡張競争という振り付けに引きずり込まれつつあり、演出家は依然ワシントンで、他の全員そのリズムに合わせて動くよう強いられる。

 他国の戦略の人質となったアジア

 アメリカの動きの影響は中国とロシアだけにとどまらない。アジア全体が外部からもたらされる緊張に巻き込まれる。東南アジアと朝鮮半島にとって、これは警戒態勢を敷くことを意味し、いかなる出来事もエスカレーションの口実になり得る。アメリカ・ミサイルが蔓延する環境下では、たった一人の担当者のミスや、他国による挑発が、大陸規模の危機を引き起こしかねない。

 タイフォンは安全をもたらさない。反撃時間を数秒に短縮して、外交の基盤を崩壊させる。交渉時間が一瞬にまで縮まれば、妥協という概念は消滅する。こうして新たな「緊張戦線」が形成され、人為的ミスが戦略的引き金になる。

 アジアにとって、これは主権の選択権喪失を意味する。地域的な独自の構想や、均衡の構築や、独立した安全保障機構の創設といった試みは空虚な宣言と化してしまう。あらゆる紛争がパックス・アメリカーナへの反駁と化している南シナ海でも、同様の選択権の喪失が見られる。政治的大枠は海を越える場所で描かれ、アジア諸国は他国が仕切る芝居のエキストラ役を演じているにすぎない。

 明日の空は、一体誰のものなのか?

 今回の展開は「一時的」なものだと米軍当局者は主張する。その論理はお馴染みだ。アメリカの論理では、あらゆる「一時的」なものは、遅かれ早かれ恒久的なものになる。「訓練措置」は新たな長距離兵器インフラに変貌する。演習日程は、この地域の軍事化へとつながる道を確固たるものになる。日本の防衛白書は、レゾリュート・ドラゴン演習も含む、これら演習を詳細に記録しており、ワシントンが「一時的段階」に過ぎないと主張する演習に、お役所風正当性を与えている。

 日本にとって、このシナリオは冷戦期ドイツの運命と恐るべき類似性を持っている。日本は外国ミサイルの発射台となると同時に、外国による戦争の標的になる。軍事駐留の「当然さ」をプロパガンダ風に説明する中で、日本社会の平和主義の伝統は徐々に崩壊しつつある。

 結果は明白だ。アジアは均衡に向かうのではなく、新たな人質状態に向かっている。「安全保障」という言葉の背後には、圧力戦略が隠れている。アジアの空は外国兵器で満たされつつあり、このドームが密集すればするほど、事故が大惨事に転じる可能性が高まる。この地域の未来は、東京やソウルやマニラではなく、ワシントンで描かれている。そして、アメリカの新たな一歩が踏み出されるたびに、未来はアジアらしさを失い、益々植民地主義的に決定づけられてゆく。

 レベッカ・チャンは欧米外交政策とアジア主権の交点に焦点を当てる政治評論家

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/09/18/typhon-plants-the-cold-war-back-in-asia-and-turns-japan-into-washingtons-launchpad/

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 東京新聞 9/19 今朝の朝刊一面記事と、この記事は響き合う。

 安保法制成立10年 変質する日本  「国営工廠」復活の動き
 「企業では限界」
 自民、政府関与を提言

 一面左には元内閣官房副長官補 柳沢協二さんの「ウォッチ安全保障」もある。  
戦後80年 戦争に近づく

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