欧州の「甘やかされた子ども」ゼレンスキー:政治生命の終わりが近づいているのか

Erkin Oncan
2025年9月18日
Strategic Culture Foundation
ウクライナは選択を迫られている。外交上の緻密さと妥協を受け入れるのか、それとも同盟諸国の忍耐力を試し続けるのかだ。
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戦場での粘り強さでウクライナは真の共感を得ている。だが外交政策は反抗的姿勢だけで成立するものではなく、繊細さと巧妙さも必要だ。ここ数ヶ月、キーウと近隣諸国、特にポーランドとハンガリーとの対立は看過できないほど深刻な水準に達している。欧州は引き続きウクライナを支援してはいるが、支援は終わりのない慈善事業ではない。
ポーランド:歴史的な傷と安全保障疲労
ヴォルィーニ虐殺は、ポーランドとウクライナの関係上、依然神経を逆なでする問題だ。1月にワルシャワを訪問したドナルド・トゥスク首相は「制度的解決」の必要性を強調した。一方、遺体発掘を許可したキーウの決定は、事態の打開策というより、一時的緩和策と捉えられていた。
一方、ポーランドでは「ウクライナ疲労」が着実に高まっている。経済的緊張や移民問題への圧力や戦争の果てしない悪影響は、当初の国民の連帯感を揺るがしつつある。有権者の焦燥感に野党勢力が乗じて、国内政治が外交政策に浸透しつつある。最近の国境を越えたドローン事件や領空侵犯はポーランドの安全保障に対する不安を更に高めている。
9月15日、ワルシャワの政府管轄区域上空でドローンが「無力化」され、ベラルーシ人容疑者二人が逮捕された。この事件はポーランドで警戒感を招き、欧州共同防空システムの導入をキーウが呼びかけたことで緊張が高まった。こうした事件は同盟国間の亀裂を深め、脅威認識の相違を露呈させている。
少数派問題をてこ入れ策にするハンガリー
トランスカルパティア地方のハンガリー系少数民族の運命を、キーウに対する武器としてハンガリーは利用してきた。教育と言語の権利の保護をブダペストは主張し、この問題をウクライナのEU加盟への願望と直接結び付けている。拒否権を行使すると脅すことで、ヴィクトル・オルバン首相は、ウクライナに多大な外交的負担を強いるだけでなく、ブリュッセル内の結束も損なっている。
2025年春、両国はスパイ活動疑惑を受けて外交官を追放して、対立は更に激化した。キーウはハンガリーの諜報活動を非難したが、ハンガリーはこれを断固否定した。既に脆弱だった両国の信頼は、その後、一層悪化した。
オルバン首相は更に踏み込んで、EUのウクライナ向け財政・政治支援を阻止し、劇的言説で、その妨害を際立たせており、ある時、キーウ支援は「ヨーロッパを破滅させる」可能性があると彼は警告した。こうした動きは、ブリュッセルの信頼の危機を深刻化させている。
これらの断層線が明らかにするもの
キーウの外交は、無遠慮でせっかちで、歴史的遺恨の重みを過小評価している。ポーランドの国民的記憶に深く刻まれたヴォルィーニ虐殺は、安易な解決策で片付けられるものではない。ワルシャワにとって、歴史的清算は余興ではなく、信頼の基盤だ。
ヨーロッパの「限りない寛大さ」は、結局は神話に過ぎない。パリ、ベルリン、ワルシャワの各政府は戦略的理由からウクライナを支援し続けているが、有権者の疲弊と高騰する費用負担により支援の範囲は狭まっている。「ヨーロッパは依然ウクライナを支持している」という言説は誤りではないものの、支援の形態とペースは、益々キーウの制御を超えつつある。
一方、ハンガリーの戦術的拒否権発動は、ウクライナのEU加盟への野心を損なっている。トランスカルパティアを交渉材料にして、ブダペストは欧州におけるキーウの政治的勢いへの期待を阻んでいる。ウクライナは前進を急ぐあまり、意図せずしてオルバン首相に行動の余地を与えてしまったのだ。
ゼレンスキー・チームも「被害者外交」とでも呼べるものに大きく依存してきた。当初、戦時中の苦しみは世界中で同情を集めた。だが同情が外交上の特権に変質すると、その力は即座に消滅する。感情的訴えは国内では効果を発揮するかもしれないが、国外ではウクライナがヨーロッパの「甘やかされた子ども」だという認識を強める危険性がある。
狭まる活動範囲
拒否権発動や、外交官の相互追放や、防衛をめぐる対立や、国民の疲弊の高まりが相まって、ウクライナの国際的な行動余地は狭まっている。これはゼレンスキー大統領の政治的寿命が直ちに尽きることを意味するものではない。だが彼の外交が、より忍耐強く、繊細で、融和的な姿勢を強めない限り、国際的支持は必然的に縮小するだろう。
欧州はウクライナを支援し続けているが、無条件ではなく、キーウの条件で支援しているわけでもない。支援の動機は道徳的連帯というよりも、安全と安定に対するエリート層の思惑によるものだ。戦争のトラウマや、正当な期待は、外交的機転や近隣諸国との真の和解に取って代わるものではない。
ゼレンスキーにとっての課題は、戦場での戦術的勝利を外交政策上の戦略的成果につなげることだ。それができなければ、同盟諸国の「忍耐力」は枯渇するだろう。確かに欧州は依然支援してはいるが「甘やかされた子ども」のようなキーウの振る舞いに対する欧州の寛容さは薄れつつある。
結局、ウクライナは選択しなければならない。外交的緻密さと妥協を受け入れるか、同盟諸国の忍耐力を試し続けるかだ。後者を選べば、ゼレンスキーは間もなく、政治経歴上、最も危険な岐路に直面することになるかもしれない。
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/09/18/europes-spoiled-child-zelensky-approaching-the-end-of-his-political-lifespan/
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絵はエドゥアール・マネによる『草上の昼食』のパロディー。本物はオルセー美術館所蔵。
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