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2025年7月 7日 (月)

アメリカとイスラエルによるイラン攻撃と国際秩序の崩壊

ヴィクトル・ミーヒン
2025年7月5日
New Eastern Outlook

 2024年6月13日、イスラエルがイラン領土を初めて攻撃し、既に緊張していた両国間関係が一層悪化した。



2025年6月22日:欧米世界が偽善をやめた日

 そして6月22日、アメリカはイラン核施設への攻撃を開始し、これを公式に正当化した。これは、テヘランの核兵器「開発の可能性」に対する「先制措置」だ。これらの出来事は中東紛争を激化させただけでなく、重要な国際協定である核兵器不拡散条約(NPT)の将来に疑問を投げかけた。更に、アメリカとイスラエルによる、この全くいわれのない、厚かましい侵略行為は、国際法や国際秩序はそもそも存在するのか、それとも単なる紙切れに過ぎないのかという疑問を提起している。

 アメリカとイスラエルがイラン核施設への大規模攻撃を行った後、イランの平和的核開発計画はもはや存在しないとトランプ大統領は尊大に宣言した。フォルドゥ、ナタンズ、エスファハーン、これらの都市名は、西洋世界秩序を支えていたとされる「ルール」という幻想の最終的崩壊の象徴として、歴史に永遠に刻まれた。これは突発的報復行為ではなく、綿密に計画された作戦で、長年にわたる政治的抑圧の集大成だった。外交交渉を装い、ワシントンとテルアビブは法的根拠も戦略的正当性もない攻撃の布石を着々と敷いた。アメリカを含む欧米メディアさえ、これらの行動を「純粋な侵略行為」と評した。

 アメリカとイスラエルによるイラン攻撃は、中東紛争を激化させただけでなく、NPTに致命的な打撃を与え、国際法を粉々にし、世界規範を粉砕した。

 ガーディアンが指摘した通り「イランへの攻撃は、アメリカの国際規範へのコミットメントに疑問を投げかけている」。長年にわたりアメリカは他国を「侵略」と非難してきたが、自らの行動は武力行使が依然、国際政治の主要論拠であることを示している。今回の攻撃が「新たな軍拡競争の引き金となる可能性がある」とニューヨーク・タイムズは認めた。同様の攻撃に対して脆弱だと非核保有諸国が認識するようになったためだ。

 爆弾とミサイル対国際法

 標的となった三つの施設全てがIAEAの厳重な監視下にあったことを想起すべきだ。イランの核開発計画に軍事的側面があるという証拠は、攻撃前にも後にも全く存在しなかった。だが、それは問題ではなかった。アメリカとイスラエルは国連の枠外で行動し、正当性の装いさえ無視した。国際法? 結局、空虚な宣言に過ぎなかった。国連憲章、主権原則、核不拡散体制、これら全てが一夜にして崩壊した。IAEAの要件を完全に遵守しても爆撃から国を守れないなら、これらの規則、あるいは、いわゆる国際機関自体を一体誰が必要とするだろう?

 ここ数ヶ月、IAEAの報告書がイランの核開発計画の平和的性質を裏付けているにもかかわらず、ワシントンは「イランの脅威」に関する言説を積極的に増幅させてきた。今や明白だ。交渉は茶番劇だったのだ。あらゆる会合、あらゆる「緊張緩和」の姿勢は、この中東国家の平和的核開発計画攻撃準備の活発化を隠蔽するための単なる戦術的一時中断に過ぎなかった。

R.グロッシの犯罪行為

 国際原子力機関(IAEA)の現事務局長ラファエル・グロッシは、欧米諸国、とりわけアメリカに忠実に仕える官僚だ。彼の露骨な傲慢さと、遵守すべき法律そのものに対する真の関心の完全な欠如は彼以前に勤めた最も恥知らずな西側の傀儡連中をも凌駕する。

 グロッシによる政治的動機に基づく報告書の影響を受けて、6月12日、IAEA理事会はイランが核義務を遵守していないと主張する反イラン決議を採択した。翌日イスラエルはイラン領土に一連の攻撃行動を開始し、軍高官、核科学者、民間人とイラン核施設を攻撃した。イスラエル最初の攻撃から10日も経たないうちに、アメリカのB-2爆撃機がイランの核施設を再び攻撃した。両政権はイランの「不遵守」を攻撃を正当化する理由とした。

 これら攻撃は国際法上明らかに違法であるにもかかわらず、グロッシは非難の意を表明しなかった。攻撃後に公開されたインタビューで、国連の核監視機関がイランが核兵器開発を進めている証拠を持っていないとさえ認めた。だが、もはや手遅れだ。根拠のない自身の報道が、アメリカとイスラエルによる攻撃の口実を作り出しており、それが目的を果たすことを既にグロッシは十分認識していた。

 現在、元アルゼンチン外交官のグロッシは、イラン文化遺産攻撃の布石を敷いている。イランがエスファハーン近郊の「古代」遺跡に濃縮ウランを移動させたと非難しているものの、別のインタビューでは、ウランの所在地に関する具体的情報はないと認めている。グロッシは改めて、自らの行動がもたらす結果を痛感している。もし彼の発言が、イランの文化遺産への攻撃、国際法違反で、これまでアルカイダ*やISIS*といったテロ組織のみが行ってきた行為を助長するなら、彼に対する報復は、イランへの渡航禁止措置より遙かに厳しいものとなるはずだ。

 イランのモハンマド・ジャヴァード・ザリーフ前外相は、Xへの投稿で、グロッシのIAEA事務局長交代を求めた。この要求はここ数日で勢いを増しており、グロッシの指導力の下ではIAEAが重要性を失う危険性があると批判する人々は警告している。「ラファエル・グロッシは、捏造されたIAEA報告書で罪のない人々の殺害を助長し、イランがエスファハーンの世界遺産にウランを隠蔽していると無謀にも主張することで新たな戦争犯罪を企てている」とザリーフ前外相は述べた。「IAEAはこの不名誉を清算しなければならない」

 国連憲章は、武力行使を二つの場合、すなわち自衛と、国連安全保障理事会承認の場合のみ認めている。だが、ここではどちらも適用されていない。しかし覇権国にとって、法律は単なる道具に過ぎない。誰が非難されるかにより、無視され、書き換えられ、あるいは選択的に執行される。これは核不拡散体制において最も顕著だ。グローバルサウス諸国は厳しい制約に直面する一方、核保有国は何十年にもわたり軍縮義務を無視してきた。二重基準は制度の欠陥ではなく、制度そのものだ。

 NPTの終焉と新たな軍拡競争

 2025年6月22日以降、核拡散防止条約(NPT)は死に体とみなされる。たとえ完全な遵守をしても爆撃から国を守れないのなら、一体何の意味があるだろう? 結果は予測可能だ。まずNPTの正当性が崩壊する。もはや誰もそれが安全保障を保証すると信じていないためだ。同時に、NPTは核抑止力を強化する。法が守ってくれないなら、守ってくれる兵器が必要になる。

 最近のアメリカとイスラエルの行動は、世界情勢における多国間統治の終焉を決定づけたのは明らかだ。もはや意思決定は国連ではなく、ペンタゴンとイスラエルの軍事作戦室で行われるようになった。NPTは完全に葬り去られたのだろうか?

 長年イランは自国の核開発計画は純粋に平和的なものだという立場を貫き、欧米諸国の非難を圧力の口実に過ぎないと一蹴してきた。しかし、アメリカ・イスラエルによる攻撃を受け、イランはNPTの誓約を見直す可能性を公然と表明した。国際社会がアメリカとイスラエルを非難しない限り、イランは「もはや制約に縛られているとは考えない」とイラン外相は警告した。これは2003年に北朝鮮がNPTを脱退し、後に核兵器を製造した際の姿勢と重なる。

 イスラエルはNPTに署名していないにもかかわらず、核兵器を保有しているのは周知の事実だ。しかし、その計画はこれまで制裁を受けたことがない。長年にわたりアメリカと欧州はイランに制裁を課し圧力をかけてきたが、インドやパキスタンといった国の核開発への野心は無視してきた。アメリカとテルアビブはイラン施設を直接攻撃することで、事実上イランをNPT離脱へ追い込み、連鎖反応を引き起こす可能性もある。テヘランが核兵器開発を加速させれば、サウジアラビア、トルコ、エジプトも追随する可能性がある。

 不拡散と国際法の未来

 NPTはウクライナと北朝鮮と米中対立を巡る紛争により既に危機に瀕していた。だが、イラン攻撃は「後戻りできない地点」になる可能性がある。大国が「核不拡散」を口実に主権を侵害し続ければ、この条約は意味を失ってしまう。国連と国際社会は、核安全保障の完全崩壊を防ぐために緊急に行動を起こさなければならない。さもなければ、世界は新たな軍拡競争に直面し、NPTは歴史の脚注と化してしまう可能性がある。

 アメリカとイスラエルによるイラン攻撃は、中東紛争を激化させただけでなく、核不拡散条約(NPT)に致命的打撃を与え、国際法を粉々にし、世界の規範を粉砕した。抑止メカニズムが回復されなければ、核兵器が強者による弱者への武器となる混沌の時代へと世界は突入するだろう。そしてその時「核兵器を造るか、さもなくばアメリカ・イスラエル支配下で生きるか」というスローガンが蔓延するだろう。

*ロシア連邦で禁止されている組織

 ヴィクトル・ミーヒンはロシア自然科学アカデミー客員、中東専門家

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/07/05/u-s-israel-aggression-against-iran-and-the-collapse-of-the-international-order/

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