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2025年6月 5日 (木)

オレシュニクを待ちながら「否定的ではなく」進んだイスタンブール歌舞伎



ペペ・エスコバル
2025年6月3日
Strategic Culture Foundation

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 ロシア・ウクライナ「交渉」を巡るイスタンブールでの新たな騒動のわずか数時間前、情報に通じたモスクワの雰囲気はこうだった。三つの要点。
 
  1. ロシア核政策の三本柱の一つ、戦略爆撃機への攻撃は米英共同作戦だった。特にMI6だ。全体的技術支援と戦略は、この情報機関コンビが提供した。
  2.  
  3. トランプが本当に実権を握っているのか、そうでないのかまるでわからない。夜、ある諜報幹部筋が、これを私に確認させてくれた。あらゆる可能性、特に最終的ちそれをを進める許可を出したのは一体誰かクレムリンと治安当局が精査していると彼は更に付け加えた。
  4.  
  5. ほぼ全員一致の国民的合意:オレシュニクを放て。更に弾道ミサイル波状攻撃も。
 予想通り、軍服を着たウクライナ代表団や、1時間15分の短い会談後の記者会見で、簡単な英語も話せないウマロフ国防相が出席するなど、インスタンブール歌舞伎は安物芝居のように終わった。この歌舞伎は「否定的ではなかった」と叙事詩的にトルコ外務省は表現した。

 戦略的または政治的に実質的議論は何も行われず、捕虜交換のみ議論された。更に、ロシアのトップ交渉官メジンスキーは覚書ではなく最後通牒を提示すべきだったというムードがモスクワでは漂っていた。予想通り、バンデラスタンの乞食連中はそれを最後通牒と解釈したが、実際にメジンスキーがウクライナ側に手渡したのは事実上のロードマップ覚書で、三部に分かれ、停戦条件として二つの選択肢と31の項目が提示されていた。その多くは、モスクワが数ヶ月にわたり詳細に提示してきたものだった。

 例: 停戦の第一選択肢は、ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国、ヘルソン、ザポリージャからウクライナ軍が30日以内に完全撤退すること、クリミア、ドンバス、ノヴォロシアをロシアの一部として国際的に承認すること、ウクライナは中立であること、ウクライナが選挙を実施し、その後、法的拘束力ある国連安全保障理事会決議(強調は筆者)に承認された平和条約に署名すること、核兵器の受領と配備を禁止することだ。

 もちろん、キーウのテロ組織や、それを支配するネオナチ組織や、欧米諸国の分裂した様々な好戦的支持者連中は、これらのどれも決して受け入れるまい。だから特別軍事作戦は続く。もしかしたら2026年まで続くかもしれない。イスタンブール歌舞伎の別版と共に、次回は6月下旬までに開催の予定だ。

 ちなみに現在、歌舞伎は、ある程度の(不安定な)「主権」をキーウが維持するための最後の機会になっている。ラブロフ外相が繰り返し述べている通り、全て戦場で決まる。
 
新START条約を破棄する方法

 さて、この攻撃が欧米諸国のプロパガンダ・メディアを、何層にも重なる成層圏レベルのヒステリーに陥れたロシアの戦略的三本柱の一角に対する攻撃の話だ。

 戦略爆撃機を無防備なまま滑走路にロシアが放置した理由は、繰り返し指摘されている。それは新戦略兵器削減条約(START)の規定によるものだ。新戦略兵器削減条約は2010年に署名され、来年2月まで延長されている(今回の出来事を考えれば、この条約は来年葬り去られるかもしれない)。

 新戦略兵器削減条約(START)は、戦略爆撃機は「相手国による監視を可能にするため、衛星画像などの国家技術検証手段(NTM)により視認可能でなければならない」と規定している。従って、その状態(核兵器搭載か通常兵器への転換か)は常に検証可能でなければならない。「奇襲」による先制攻撃の可能性は皆無だ。

 これまで単純なメカニズムで第三次世界大戦の勃発を防いできた冷戦時代の遺物としてまずまずだったものを、この作戦が独力で破壊した。無謀さは桁外れだ。だから、クレムリンから治安機関に至るまでのロシア最高権力層がトランプが事態を把握していたかどうか必死に突き止めようとしているのも無理はない。もし彼が把握していなかったとしたら、最終的に、これを進める許可を出したのは一体誰だろう?

 今までのところ、最高幹部が無言なのも不思議ではない。

 ブリャンスクの列車橋攻撃テロ事件への弔意を表すためにラブロフ外相に電話をかけたのはアメリカ国務長官マルコ・ルビオで、その逆ではないとある諜報筋が私に語った。戦略爆撃機には何も言及がない。それと並行して、イラクで小隊長を務めた後、フォックス・ニュースのキャスターになり、更に国防総省長官になった人物は、ロシア基地への無人機攻撃をリアルタイムで見ていた。

 こうした攻撃の有効性は、愉快な戦争の死の霧を超越する。相反する複数の推定によれば、イルクーツクのベラヤ基地で「ベアーズ」として知られるTu-95MS戦略爆撃機3機が被弾し、うち1機は一部損傷、更にT-22M3も3機が被弾し、うち2機は修復不能な状態になったとされている。Tu-95MS 3機の火災は局所的とみられるため修理できる可能性がある。

 ムルマンスクのオレニャ基地で他にTu-95MS 4機とAn-12 1機が破壊された可能性がある。

 ロシアは今週末までTu-95MSを58機保有していた。たとえ5機が完全に失われてもロシア戦闘機隊の10%に満たない。しかも、これにはTu-160 19機とTu-22M3M 55機は含まれていない。攻撃対象とされた五基地中、成功したのは僅か二基地だけだった。

 これらの損失は、たとえどれほど痛手であるにせよ、ロシア航空宇宙部隊による更なる攻撃に全く影響するまい。

 例:T-95MSMが標準搭載する兵器はX-101巡航ミサイルだ。1回の任務で最大8発まで搭載可能だ。近年の攻撃で、同時に発射されたミサイルは40発以下だ。つまり実戦投入されているTu-95はわずか6機だ。つまりロシアは実際、過去数日、数週間に及ぶような激しい攻撃を行うため、Tu-95MSMを6機しか必要としていない。しかも最近の攻撃にはTu-160さえ使われていない。
 
最大戦略の評価

 本稿執筆時点では、ロシアによる壊滅的反撃は、まだ承認されていない。実に深刻な事態だ。たとえ大統領に知らされていなかったのが事実だとしても、クレムリンと治安機関は、キーウに地獄を解き放つ前に、絶対そのことを確かめたいのだ。それでもトランプ大統領には、もっともらしい否認の余地を与え、ウクライナがSTART議定書に大きく違反する(米英合同)NATO作戦がCIA・MI6情報機関コンビが直接実行したのは明らかだ。

 これら攻撃をトランプが承認していたのなら、それはまさにアメリカによるロシアへの宣戦布告に等しい。従って、最も可能性が高いシナリオは、ワシントン中に点在する特権階級のサイロに潜むネオコンの不意打ちをトランプが食らったというものだ。

 昨年5月のヴォロネジM早期警戒レーダーシステムへの攻撃同様、ロシア戦略爆撃機への攻撃は、核先制攻撃に先立ち、ロシア体制を無力化できるよう、刺激を次第に強化するシナリオに合致する。野心的なストレンジラブ博士連中は、実際に何十年も、このシナリオを夢想しているのだ。

 情報筋が慎重に確認した所では、このPR作戦はロシアに激しい(おそらく核兵器による)反撃を迫るもので、イスタンブールの歌舞伎からモスクワは撤退するという解釈がロシア高官の間で主流になっている。

 これまでのところロシアの反応は極めて整然としている。完全な沈黙、広範囲にわたる調査、そしてイスタンブールでの会談だ。

 だが、避けられない反撃では最大限の戦略が必要のは確実だ。もし反撃が最新のロシア核ドクトリンと整合するものであれば、グローバルサウス諸国のほぼ全会一致の支持を失うリスクをモスクワは負うことになる。

 反撃が手ぬるければ国内の反発は激しいだろう。「オレシニクを放て」という意見でほぼ全員一致している。連続テロ攻撃の標的にされるのに、ロシア世論は全くうんざりし始めている。運命の決断の時は刻一刻過ぎつつある。

 ここで我々は究極のジレンマに陥る。第三次世界大戦を起こさずに、いかに集団的好戦主義を掲げる欧米諸国を打ち負かすかをロシアは思案している。中国にヒントを得た解決策は、孫子と老子を組み合わせ再構築した同盟かもしれない。果てしない戦争を遂行する戦略が欠けた虚無主義的な敵の能力と意志を、何らかの方法、あるいは重層的な方法で、粉砕する方法があるはずだ。

 記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/06/03/waiting-for-oreshniks-while-istanbul-kabuki-proceeds-not-negatively/

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