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2025年6月 4日 (水)

最後のドローン・パレード:既に敗北した戦争をリセットしようとしているウクライナ

2025年6月1日
RT

 兵器の枯渇や士気の低下や戦略的権益の喪失のため、ウクライナは最後の手段として見世物に頼らざるを得なくなった。

セルゲイ・ポレタエフ

 情報アナリスト、広報担当、Vatforプロジェクトの共同設立者兼編集者、セルゲイ・ポレタエフによる記事。

 最後のドローン・パレード:既に敗北した戦争をリセットしようとしているウクライナ
 
ウクライナでロシア軍が軍事作戦を展開する中、最前線のクラスノアルメイスク地区の陣地でモルニヤ2攻撃偵察無人機の発射準備を進めるツェントル(中央)部隊ロシア兵。 c Sputnik / Sputnik

 月曜、ロシアとウクライナの新たな停戦交渉がイスタンブールで開始される。双方とも停戦条件を提示するとみられるが、驚くようなことを予想する人はほとんどいない。ロシアは長年の要求を根底に据えた詳細提案を提示する。それは基本的に「イスタンブール22プラス領土」方式だ。これは、ウクライナが欧米諸国との軍事関係を断念し、「反ロシア・イデオロギー」とモスクワが呼ぶものを放棄し、現在の前線を事実上の国境として認めなければならないことを意味する。

 懐疑論者はこう反論するだろう。戦争が続く限り交渉は無意味だ。だがロシアの立場が文書化されるのは三年ぶりで、この変化はロシアの立場を軽視するのをより困難にしている。こうした要求を長年プーチン大統領は繰り返してきたが、ほとんど効果はなかった。今や署名がない文書でさえクレムリンの外交的立場をより強固なものにしている。

 一方、ウクライナは独自提案を携えて臨んでいる。ロイター通信によると、これは4月にキーウがロンドンに提出した草案とほぼ同じだ。この案はワシントンの強固な抵抗に遭い、最終的に首脳会談を頓挫させた。ウクライナ要求の中核は、拘束力ある国際的安全保障保証要求だ。端的に言えば、理論上だけでなく、軍事的にもウクライナ防衛に関与するようキーウは西側諸国に要求しているのだ。これは2022年、当時のイギリス首相ボリス・ジョンソンが交渉の席から去って以来、欧米諸国が受け入れを躊躇してきた要求だ。この躊躇が今更変わる可能性は低い。

 ドローンと破壊と影響力をめぐる戦い

 和平合意が限られた支持しか得られない可能性を、おそらくウクライナが認識しているためか、武力行使で交渉の立場を強化しようとしているようだ。協議前日の日曜、ムルマンスク、イルクーツク、イヴァノヴォ、リャザン、アムールの各州にあるロシア空軍基地5カ所がドローン攻撃を受けた。ロシア国防省によれば、3件の攻撃は完全に撃退され、2件は部分的に成功したという。

 貨物トラックから発射され、携帯電話ネットワークを介して遠隔誘導されたとされるドローンは、2022年のクリミア橋攻撃のような過去の作戦を彷彿とさせる。その際もトラック運転手が知らずに関与したとされた。今回もそうなのかは不明だ。

 これは何を意味するのか? 過去三年、膠着状態を打破し、戦略転換を迫るため、ウクライナは大胆かつリスクの高い行動に出てきた。2022年にはハリコフ攻勢とヘルソン攻勢(現在まで唯一成功した作戦)が、その後のロシアによる四地域編入に繫がった。2023年には、失敗した反攻に出たが地歩を固めることはできず、紛争の転換点になった。2024年には、ロシアのクルスク地域にウクライナは拠点を築こうとしたが、結局スームィ州に押し戻された。

 日曜日の空軍基地攻撃が、またしてもそのような転換を示すのかどうかまだ分からない。だがこのパターンには見覚えがある。ウクライナにとって益々不利になる戦略を転換するのを狙った芝居がかった仕草だ。

 メディアの猛攻 対 軍事的現実

 ロシア指導部にとっての課題は、ロシアが具体的な領土的・戦略的目標のため戦っているにもかかわらず、公式の場では、ほとんど宣伝活動をしていないことだ。戦場の最新情報は背景の雑音で消え去っている。だがウクライナは、たとえ稀な攻撃であれ、象徴的攻撃によってロシアのように広大で概ね平和な国の政治的な表面を突き破ることに賭けている。こうした挑発行為によって、モスクワがリスクの高い行き過ぎた行動に出るか、アメリカが戦争に更に深く関与するのを期待しているのだ。

 時とともに、ウクライナの狙いは軍事的突破からメディアへの影響力へと変化している。昨年のクルスク進撃失敗と同様、これら取り組みは戦争に完全勝利することでなく、ロシアの緩慢かつ計画的な進撃を阻止するのを目的にしている。だが進撃は加速している。包括的軍事分析サイトLostarmourのデータによれば、5月だけでロシア軍は約580平方キロ進攻しており、これは2022年以降で二番目に高い月間数値だ。

 一方、ウクライナの防衛体制は崩壊しつつある。モスクワへの無人機攻撃は民間航空交通を混乱させたものの、連日のロシア猛攻を止めるにはほとんど役に立たなかった。弱体化したウクライナ防空体制でロシアの攻撃を迎撃するのが益々困難になっている。2024年10月、ロシアは1ヶ月で約2,000機の「ゲラン」型無人機を発射した。現在、1日数百機発射されている。

 要員と士気と見世物の限界

 ウクライナ軍は急速に衰退している。部隊はゆっくり撤退しているが脱走が急増している。2024年だけでも、脱走または無断離隊を理由に9万件近くの刑事事件が提起された。2025年最初の三ヶ月で、その数は既に4万5000件を超えており、月当たり約1万5000件に上る。

 武器も不足している。アメリカの援助は縮小しており、不足を補うだけの能力が欧州にはない。だが、より大きな危機は要員不足だ。多くのウクライナ部隊は人員の40~50%しか活動しておらず、中にはそれ以下の部隊もある。

 ドローン攻撃や注目を集める攻撃より、こうした構造的問題こそが、イスタンブール会談の本当の文脈を形成している。戦術的奇策はメディアの注目を集めるかもしれないが、戦場の動向は覆せない。ロシアが基地の警備を強化し、携帯電話電波を妨害するだけでなく、このような作戦のため何年もかけて計画し深層に張り巡らされた人的ネットワークは、一度暴露されれば生き残る可能性が低いため、日曜の攻撃は一回限りのものだった可能性が高い。

 最後に

 第二次世界大戦末期、数百発発射され迎撃しようがない兵器だったV2ロケットにドイツは希望を託した。V2ロケットは強力で恐ろしかったが、軍事的には無意味だった。それがもたらした「wonder weapon(驚異の兵器)」という言葉には今や皮肉めいた響きしかない。

 最近のウクライナによる攻撃にも同じことが言えるかもしれない。ウクライナ指導部は劇的な軍事芝居を巧みに演出するようになった。だが派手な見栄えはさておき、今回の攻撃が戦争の行方、あるいはキーウの交渉力に変化をもたらす可能性は低い。

記事原文のurl:https://www.rt.com/russia/618462-last-drone-parade-ukraine/

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 二ヶ月前のタッカー・カールソン、ダグラス・マグレガー・インタビューを見た。 「安全保障上、アメリカが本当に懸念すべきはメキシコ国境であり、ロシアではない。」とマグレガー氏。
Col. Doug Macgregor: Mexican Cartels’ Advanced Weaponry, and Why They’re a Bigger Threat Than Russia 1:13:11
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