『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』:ロイ・コーンのマッカーシズムからドナルド・トランプのファシズムまで
ジェイコブ・クロス、フレッド・マゼリス
2024年10月18日
www.wsws.org
ドナルド・トランプとロイ・コーンの関係を描いた優れた新作映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』が、トランプが独裁大統領を目指し二期目を狙う選挙のわずか数週間前の先週末、ついにアメリカの劇場で公開された。
この映画は、イラン系デンマーク人映画監督アリ・アバシ(『ボーダー』『ホーリー・スパイダー』)が監督し、アメリカ人ジャーナリストのガブリエル・シャーマンが脚本を書いたもので、昨年5月カンヌ映画祭で上映され大きな拍手を浴びたが、トランプ大統領とその弁護士らからの法的脅迫により、アメリカで配給会社を見つけるのに苦労した。
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ドナルド・トランプとロイ・コーンの関係を描いた優れた新作映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』が、トランプが独裁大統領を目指し二期目を狙う選挙のわずか数週間前の先週末、ついにアメリカの劇場で公開された。
この映画は、イラン系デンマーク人映画監督アリ・アバシ(『ボーダー』『ホーリー・スパイダー』)が監督し、アメリカ人ジャーナリストのガブリエル・シャーマンが脚本を書いたもので、昨年5月カンヌ映画祭で上映され大きな拍手を浴びたが、トランプ大統領とその弁護士らからの法的脅迫により、アメリカで配給会社を見つけるのに苦労した。
『アプレンティス』のジェレミー・ストロングとセバスチャン・スタン
大統領候補が劇場公開を阻止しようとした理由は明白だ。アバシ監督の映画は、トランプを、単なる悪役として描いていない。その真剣な手法は、トランプにとって事態をさらに悪化させるだけだ。『アプレンティス』は、悪口を言うのではなく、啓蒙的な作品だ。1970年代から80年代にかけて、トランプの名前が、裕福な不動産業者から、残酷さや強欲や人種差別や労働者階級への軽蔑と同義語になる人物へと変貌していく様子を的確かつ娯楽性豊かに描いている。トランプはロイ・コーンの「弟子」であり、コーンを通して、1947年から1957年までウィスコンシン州選出の共和党上院議員を務めたジョセフ・マッカーシーの名にちなんだヒステリックな反共産主義の弟子であることが明らかになる。
トランプの台頭は、1975年、ニューヨーク市が破産寸前まで追い込まれた後の10年間に始まった金融寄生連中の狂騒と切り離せないものだった。不動産王フレッド・トランプの4番目の子供は、この映画の結末となる出来事の20~30年後、共和党有力者になった。
これは彼の個人的資質の結果でもなければ、ナチスに傾倒する元大統領が言うような「遺伝子」の結果でもなかった。トランプは、アメリカや世界の資本主義の急激な衰退と腐敗の産物で、資本主義の衰退はアメリカの二大資本主義政党を急速に右傾化させ、彼らが擁立する益々惨めな人材に表れており、マッカーシーより遙かに極端になり、遙かに高い地位に就くことになる扇動政治家台頭の客観的条件を作り出した。金融オリガルヒの一部に、社会革命から彼らの時代遅れの体制を救ってくれる「強権政治家」への切望が生まれた。トランプは二大政党指導者から支持を得たのだ。マスコミの支援も受けた。これら全てが、民主党であれ他党であれ、資本主義には40年以上も続く反動に対する進歩的な代替案がなかった事実を証明している。
題名に「アプレンティス(見習い)」という言葉を使用しているのは、過去と未来の両方を見つめた言葉遊びだ。セバスチャン・スタン(キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー)が説得力ある演技で演じるトランプは、ジェレミー・ストロング(サクセッション)により命(と死)を与えられたコーンに指導を受ける。また、この映画では、トランプの最初の妻イヴァナ・トランプ役でマリア・バカロワが出演し、ベテラン俳優のマーティン・ドノヴァンがトランプの人種差別主義者の父フレッド・トランプ・シニアを演じている。もちろん、ほとんどの観客は「アプレンティス 」が数年後にトランプを有名にしたリアリティ番組(2004-2017)の名前でもあることを知っているだろう。当時コーンの元「弟子」には独自の弟子がいたが、現在彼は国民の大多数を、弟子ではなく、彼の命令に従いオリガルヒの利益に奉仕するしか選択肢がない連中に変えようとしている。
映画は、1973年、ウォーターゲート事件でわずか1年足らずで辞任に追い込まれたリチャード・ニクソン大統領の悪名高い発言から始まる。「私は詐欺師ではない。持っているものは全て自分で稼いだものだ」。この発言は、まだ経験の浅い20代のドナルド・トランプ(スタン)が初めて登場する場面だ。金髪で自信に満ち溢れながら経験不足のトランプはニューヨークで最も裕福でコネが豊富な人々が集まる薄暗く排他的なクラブに足を踏み入れる。
体制内でトランプとコーンは視線を交わし、すぐ様互恵関係を築き上げ、それはコーンが1986年にエイズで亡くなるまで続くことになる。トランプの政治的個性の多くは、暴力的で凶暴な演説や政敵に対して用いる「大嘘」テクニックからファシストで反共産主義的政治まで、コーンの手法に由来する。
コーンを弁護士に迎えて、不動産業界でのトランプの成功が始まる。ニューヨーク・ミッドタウンのグランド・セントラル駅近くにある旧コモドール・ホテルを、ハイアット・チェーン傘下のきらびやかな高層ホテルに変貌させる計画を彼は掲げる。映画では、フィクサーのコーンが、ハイアットのCEO、ジェイ・プリツカー(現イリノイ州知事の叔父、クリス・オーウェンズが演じる)にトランプを紹介する場面が描かれる。最終的に、コーンの協力のもと、市から未曾有の1億ドルの減税措置をトランプは確保し、取り引きが成立する。その後、更に注目を集める建物、五番街の不気味なトランプ・タワー計画が持ち上がる。
コーンがトランプに紹介した他の人物には、極右メディア王のルパート・マードック(トム・バーネット)や、冷酷さと威圧的な態度で悪名高いもう一人のオリガルヒ、ニューヨーク・ヤンキースのオーナー、ジョージ・スタインブレナー(ジェイソン・ブリッカー)がいる。
2019年の映画の主題であるコーンは、ロイ・コーンはどこ? は1927年、ニューヨーク市の裕福なユダヤ人家庭に生まれた。父親は民主党員で連邦判事だった。エリート寄宿学校を経て、コーンは20歳でコロンビア大学ロースクールを卒業し、家族の縁故で徴兵を免れ、21歳という異例の若さで連邦検事補になった。
『アプレンティス』のマリア・バカロワとセバスチャン・スタン
アバシの著作の中で、コーンの冷酷さで既に知られていたトランプは、連邦政府とNAACP(全米黒人地位向上協会)が父親の不動産を差別訴訟で訴えた際、コーンに助けを求める。一族の人種差別的商習慣を説明しようとして、トランプはコーンにこう告げる。「うちの建物の10%は黒人に貸している。ただ認可されるには収入が家賃の4倍必要だ」。コーンは威圧的手法を使い、トランプ一族に非常に有利な判決を勝ち取る。トランプは当然ながら感銘を受ける。
コーンはトランプに同志を見いだし、若い彼を庇護した。そして「ロイ・コーンのルール」を彼に教え込んだ。1) 攻撃、攻撃、攻撃。2) 何も認めず、全て否定する。3) 勝利を主張し、決して敗北を認めない。この冷酷な「大嘘」の信条を、コーンは大小を問わず貫き通した。公式の場では悪名高い同性愛嫌悪者だった彼は、自分が同性愛者なのを否定し、死に至ったエイズは「肝臓がん」だと主張していた。
脅迫目的で密かに会話を録音するなど、コーンの凶悪かつ違法な手法に、まだ経験の浅いトランプが、ためらいを表明すると、コーンはこう答える。
えー、違法だと? ドナルド、目を覚ませ。ローゼンバーグ夫妻を裁判にかけた時、あの赤いユダヤ人どもが、自分たちの行いの責任を取って死刑に処せられるのを心から望んだんだ。カウフマン判事はジュリアスを裁判長に送るのに何の抵抗もなかったが、エセルは幼い子供がいる母親だった。国を裏切った罪で、まるでそれが特別な免責であるかのように、彼らは彼女の生存を望んでいた。だから裁判中、昼休みにこっそり電話ボックスに行ってカウフマンに電話したんだ。ご存じの通り、厳密に言えば一方的会話は認められない。だが民主主義が危機に瀕している今、多少の法的制約は破っても構わない。彼女が幼い子供がいる母親であろうと、彼女は国を裏切ったのだ。だから死ななければならない。模範を示して、この女性を死刑に処すべきだ。
コーンによるローゼンバーグ夫妻への容赦ない訴追と共産主義への憎悪は、FBIのJ・エドガー・フーバーとマッカーシー上院議員の注目を集めた。裁判後、コーンは二人のために働き始め、マッカーシーのスタッフに加わり、マッカーシーの捜査小委員会の主任顧問になった。ウィスコンシン州選出の上院議員が1954年のいわゆる陸軍・マッカーシー聴聞会で失脚する中、コーンはニューヨークで個人弁護士として活動し、マフィアのボスや大富豪や最終的にトランプの弁護士を務めた。彼は単に有力で裕福な弁護士だっただけでなく、大企業、政治家、組織犯罪を相互利益のために結びつける「フィクサー」として知られていた。その間終始、コーンはフーバーの友人で、文通相手でもあった。
2019年にコーン氏に関する750ページを超えるFBIファイルが公開されたことを報じた ニューヨーク・タイムズ紙は、これらのファイルは「コーンとフーバーが特別な絆で結ばれていたことを示唆している」と記した。1969年にフーバーに宛てた手紙で、コーンは「あなた方はこの国において実に偉大な組織です」と記している。フーバーは「親愛なるロイ」への返信で「私に関する彼の寛大な発言には本当に感謝している」と記している。
コーンが、1970年代に流行した様々なポストモダニズムの潮流が推進した概念、つまり誤解を招くような「左派」としばしば関連付けられる概念を根拠に、自らの非道徳性と完全な嘘を正当化しているのは興味深い。アバシ監督の映画全体を通して、権力と富という目標を実現するには、人間性だけでなく、客観的真実の存在という概念さえ捨て去る必要があるとコーンはトランプに説いている。
「他人がどう思おうと気にしないのが強みだ」とコーンは断言する。「善悪などない。あー、道徳などない。大文字のTで始まる真実などない。それは作り話だ。フィクションだ。勝つこと以外、何も重要でない。そういうことだ」
(この流れで、2004年、ブッシュ政権が「認識可能な現実の慎重な研究」に基づいて設立された「現実に基づく共同体」を否定し「我々は今や帝国であり、行動すれば自らの現実を創造する」と主張したと匿名ホワイトハウス当局者がジャーナリストに語ったのは有名だ。)
コーンとトランプと彼らが代表する体制にとって残念なことに、客観的な現実、つまり理解し、説明し、行動に移すことが可能な客観的な歴史過程が存在している。この現実から階級闘争と労働者階級の道徳観が生まれ、資本主義が人類文明を滅ぼす前に、地球から資本主義を一掃するために闘う何百万もの人々を鼓舞するだろう。
70年前のマッカーシーとコーンによるファシズム的扇動の発展を、今日のトランプに代表されるより発達した脅威へと辿ることも重要だ。マッカーシーは1954年に非難され、影響力を失った。当時、戦後好況の真っ只中にあったアメリカ資本主義には、そのような手段は必要なかったからだ。だが、マッカーシーが絶頂期にあった当時まだ幼かった若者を指導するほどコーンは長生きした。現在、アメリカ大統領選に出馬した候補者中、最年長となったトランプは、世界資本主義の危機が世界中で極右とファシズム運動を生み出す時を待ち備えてきた。彼はまだ大衆ファシスト運動を主導してはいないが、それが彼の狙いで、最も熱狂的な彼の支持者たちの目標でもあるのだ。
記事原文のurl:https://www.wsws.org/en/articles/2024/10/19/bfav-o19.html
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