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2025年6月 9日 (月)

欧米の敗北と混乱

2025年6月3日
Moon of Alabama

 1976年に、フランスの人類学者エマニュエル・トッドがソビエト連邦の崩壊を予言した。 2001年にフランス語で初版が出版された『After The Empire(邦題:帝国以降)』では、アメリカ合衆国の(相対的)衰退を予言した。

 最新作(で最後の著書)『 La Defaite de l'Occident(邦題:西洋の敗北)』で、ウクライナ戦争における行動で見られる通り、事実と願望を欧米が区別できないことを彼は嘆いている。ニヒリズム、つまり価値観の欠如と現実受容の欠如が西洋思想にはびこっている。  
従って、私の意見では、トランス・イデオロギーはニヒリズムの象徴の一つで、これが、現在欧米を特徴づける物や人だけでなく、現実をも破壊しようとする衝動なのだ。
 最近、トッドは行った演説や講演を投稿するサブスタックを始めた。

 そのうちの二つ、ロシアで最近行われた講演(フランス語) とハンガリーで行われた講演(英語) は、(ほとんど) 同じ点を指摘している。

 ソ連の崩壊は、ロシアに深刻な心理的・社会的混乱をもたらした。欧米諸国、すなわち「自由民主主義」の敗北は、欧米社会に同様の結果をもたらしている。

 トッドはソ連の崩壊は予測していたが、それがロシアにもたらすだろう結果を彼は予期していなかった。  
だが、1990年代のロシア崩壊は、私が決して予想もしていなかった出来事だった。ロシア崩壊そのものを私が理解、あるいは予期できなかった根本的な理由は、共産主義はロシアにおける単なる経済活動を組織する手段ではなく、一種の宗教でもあるのを私が理解していなかったためだ。共産主義体制の存続を可能にしたのは「信仰」で、その信仰の崩壊は、言うまでもなく経済体制の崩壊と同等か、それ以上の損害をもたらすものだった。
 政治・経済体制の崩壊により生じた心理的混乱をロシアが克服するのに30年要した。

 同様の過程が現在欧米諸国でも起きつつあるのではないかとトッドは疑っている。  
これら全てが今日起きていることと関係している。講演では二つの点についてお話しする。一つ目は欧米諸国の敗北についてだ。これは非常に専門的で具体的な話だが、それほど複雑ではなく、私自身も驚いていない。私はそれを予期していたし、ある程度ウクライナで既に進行している。だが今や我々は次の段階、つまり欧米諸国の崩壊に入っている。そして、共産主義、ソ連体制崩壊時と同様、何が起きているのか正確には理解できていないと言わざるを得ない。今我々が持つべき根本的な姿勢は、謙虚さだと言えるだろう。特にドナルド・トランプ当選以降起きていること全てに私は驚いている。

 ウクライナとヨーロッパの同盟諸国、いや、むしろ属国諸国に対し、トランプ大統領が示した暴力に私は驚いている。ヨーロッパが和平協定で最も恩恵を受ける地域であるにもかかわらず、戦争を継続、あるいは再開しようとするヨーロッパの意志も私にとっては大きな驚きだった。起きていることを本当に理解したいなら、こうした驚きから出発しなければならない。
 これらの驚きのうちいくつかは私にとって非常に心配なことなので後ほど別記事で論じるつもりだ。

 ソ連(とロシア)の敗北は、欧米諸国との経済戦争に敗れた後に起きた。アフガニスタン戦争にも敗れ、ソ連体制は失敗に終わった。

 欧米諸国、あるいはミアシャイマーが主張する「リベラル覇権」(動画)は、アフガニスタンで敗北を喫した。リビアとシリアを「解放」する試みは失敗に終わり、アルカイダに対する欧米諸国の「対テロ戦争」は、アルカイダの重鎮をシリア新大統領に据える結果に至った。欧米諸国の経済的衰退は、中国の台頭で実証されている。欧米諸国が自らの「価値観」を道徳的に自らを粉砕する様子はガザで日々見られる。

 数十年、欧米諸国の指導的立場にあった思想体系「自由民主主義」は失敗した。

 ロシアの共産主義と同様「自由民主主義」は経済的側面だけでなく、一種、宗教的側面も持ち合わせている。この信仰体系の崩壊は、まさに目前に迫っている。

 「自由民主主義」体制による敗北の積み重ねは、欧米諸国の心理的崩壊、つまり内部分裂を引き起こした。そして今や非合理的行動や希望的観測への逃避につながっている。



 この現象を要約してアラステア・クルックは次のように要約し警告している。  
「敗北」によって引き起こされた心理的混乱は、(それを正当化するものではないが)世界情勢を理解できない欧米諸国の「奇妙な」無力さの説明になるかもしれない。それは欧米諸国の言動に見られる現実世界からの病的な乖離、つまり無知で、例えば、ロシアの歴史経験や、イランにおけるシーア派の長い抵抗の歴史に対する無知だ。だが政治情勢が悪化する中、欧米諸国がより現実に基づいた理解を深める兆しは見られない。そして欧米諸国は、強制的に追い出されるまで、現実の代替物の中で生き続ける可能性が高い。
記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2025/06/the-defeat-of-the-west-and-its-dislocation.html#more

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 The Chris Hedges Report

How 'Paradise Lost' Revolutionized the World (w/ Orlando Reade) | The Chris Hedges Report  55:49
Professor Orlando Reade joins Chris Hedges to to examine the influence of 'Paradise Lost’ on revolutionary thinkers, and to grapple with the moral grey area that exists in revolutions.

Chris Hedges
Jun 06, 2025

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