「ロシアを制裁しなければクラブに入れてやらない」と戦勝記念日を前にセルビアを脅迫するユーロ官僚

イアン・プラウド
2025年4月20日
Strategic Culture Foundation
ウクライナ戦争で「我々につくのか、ロシアにつくのか」の二者択一をブリュッセルの欧州官僚がセルビアに迫っている。
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スロバキアをはじめとする中央ヨーロッパ諸国が、ブリュッセルにおける反民主主義的な動きに不満を募らせる中、欧州委員会はEU加盟を目指すセルビアなどの国々に対し、ロシアとの関与を断ち切り、代わりに制裁を課すよう圧力を強めている。これは欧州構想にとって暗い兆しだと言える。
スロバキアのロベルト・フィツォ首相とセルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領は、第二次世界大戦終結80周年を記念し、5月9日にモクワで行われる戦勝記念日パレードに出席する予定だ。両者の大きな違いは、スロバキアはEU加盟国である一方、セルビアは将来の加盟を希望している点だ。
4月14日のEU外相会議後、「ロシアが実際に欧州で本格的戦争を仕掛けていることを考えれば、5月9日にモスクワで行われるパレードや祝賀行事へのいかなる参加も欧州では軽視されない」とEU外務安全保障上級代表カヤ・カラスは述べた。
ラトビアのバイバ・ブラジェ外務大臣も発言し、「EU加盟国は候補者に対し、EUの価値観にそぐわないとして、5月9日のモスクワでの軍事パレードに参加せず、そのような旅行もしないよう明確に指示しており、制裁措置も含め、CFSPの価値観と整合性に関する議論」を指摘した。
エストニア外務省のヨナタン・フセリオフ事務総長は、より率直にこう述べた。「セルビアには、特定の決定には代償が伴うことを理解してもらう必要がある。その結果、彼らは欧州連合(EU)に加盟できない。」
欧州連合(EU)の内部手続きは、脅迫や恐喝が常態化するほど武器化されている。2020年以降、EU加盟プロセスの変更により、加盟国は加盟プロセスのあらゆる段階で加盟候補国を阻止できるようになった。
セルビアは、加盟プロセスの第3クラスター(競争力と包括的成長)の進展に向けた取り組みを、交渉開始に制度上有利な立場にあるように見えるにもかかわらず、ここ数年行き詰まっている。
ハンガリーは、クラスター3交渉を2024年12月に開始することで合意を得ようとしたが、いつもの札付き、エストニアとラトビアとセルビアの隣国クロアチアを含むEU7カ国に阻止された。理由として挙げられたのは、セルビアがロシアへの経済制裁を拒否したこと、その「不明確な地政学的方向性」と、コソボとの関係だ。
セルビアが欧州との関係とロシアとの関係で取ってきたバランスのとれた路線は、ヴチッチ大統領が権力を握っている限り、ブリュッセルにおける大きな争点となるだろう。
ヴチッチはしばしば対話とウクライナ戦争の平和的解決を訴えてきた。しかし、それは彼がモスクワのあらゆる点に同意しているという意味ではない。彼はクリミアをロシア領として承認していない。これはセルビアがコソボの独立を認めていないのと同じ理由だ。だが、彼が指摘する通り、バルカン半島諸国と旧ソ連圏諸国間の関係は複雑で、特定の分野では大きな相違があるにもかかわらず、対話は極めて重要だ。
セルビア外交政策のあらゆる側面が親ロシア的だと断言するのは全くの誤りだ。だが、ジョージアの場合と同様、ウクライナ戦争と欧州の継続的な民主主義の行き過ぎが相まって、ブリュッセルの欧州官僚連中はセルビアに二者択一を迫っている。「我々かロシアか」。
セルビアはロシアとの健全な関係維持に尽力する一方、2009年に初めてEU加盟を申請し、2012年に候補国としての地位を獲得して以来、長年にわたりEU加盟への真摯な姿勢を示してきた。かつては、セルビアが2025年、つまり今年までのEU加盟を目指して奔走しているように見えた時期もあった。政府には欧州統合省が設置されている。2020年のパンデミックによる落ち込みを除けば、セルビアの年間経済成長は力強く、経済開放に向けて大きな前進を遂げている。
しかし、ヴチッチ大統領は最近、セルビアが2030年より前にEUに加盟する可能性は低いと示唆した。それでもなお、あまりに野心的だと思う。たとえウクライナで和平が実現したとしても、ウルズラ・フォン・デア・ライエンとカヤ・カラスが2029年半ばまでEUの事務総長を務める状況で、ロシアに対するEU制裁が完全に解除されると賭けるのは、楽観的な見方でなければ不可能だ。そして、制裁に関するセルビアの立場は、この期間中、加盟交渉を凍結させるだろう。
こうした状況にもかかわらず、ヴチッチ大統領は5月9日にモスクワ訪問予定だ。第二次世界大戦で戦死したユーゴスラビアの100万人を追悼するため、セルビア軍部隊は赤の広場で行われる戦勝記念パレードに参加予定だ。
最近のインタビューで、セルビアのミリツァ・ジュルジェヴィッチ=スタメンコフスキ家族・人口大臣は次のように述べた。「EUがロシアに対する制裁と対決を常に主張し、ウクライナ紛争に関して合理的解決策を避け、自らの機関における民主的正当性の深刻な欠如を認めようとしないこと、これら全てが欧州プロジェクトの権威と魅力を深刻に損なっている。」
そのため、セルビアのEU加盟への意欲は冷めつつあるのかもしれない。EU加盟国であるクロアチアやエストニアなどのEU加盟国と足並みを揃えない限り、セルビアが欧州に加盟することは決してないだろうという認識が広まりつつあるからだ。
EUの政治家たちは、3月のセルビア政府の崩壊につながった広範な反政府抗議行動を支持してきた。これは、2024年11月にノヴィ・サド駅で16人が死亡した悲劇を受けて、汚職と過失の疑惑が浮上したことを受けてのことだった。セルビア国内の状況は、新政権樹立により安定しつつあるように見える。
だがEUとアメリカがトビリシの政権交代を積極的に求め、前大統領の任期終了が近づくにつれジョージアにかけられた大きな圧力が、ここにも反映されているのは憂慮すべきだ。
スロバキアは既にEU加盟国であるため、益々不満を募らせるロベルト・フィツォ首相は、5月9日のモスクワ訪問に関するブリュッセルからの脅迫への対応上、ヴチッチ首相ほど制約を感じていないようだ。Xへの投稿で彼は次のように述べている。
カラスの警告は一種の脅迫なのか、それともモスクワから帰国したら処罰されるというシグナルなのか。私には分からない。しかし、1939年ではなく2025年であるのは確かだ。カラスの警告は、EU内で民主主義の本質について議論する必要があることを改めて示している。ルーマニアとフランスで大統領選挙に関連して何が起きたか、ジョージアとセルビアで欧米諸国が組織した「マイダン」について…そして私はEU内でウクライナの平和の必要性を一貫して訴え、この無意味な戦争の継続を支持しない数少ない人物の一人であることを改めてお伝えしたいと思う。カラス氏発言は失礼で、強く抗議する。
私も全く同感だ。
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/04/20/sanction-russia-or-you-cant-join-our-club-eurocrats-blackmail-serbia-ahead-victory-day/
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Sabby Sabs Larry C. Johnson、経歴を語る。
Larry C. Johnson: CIA, Ukraine, Trump and More! 1:01:45今朝の孫崎享氏のメルマガ題名
日本社会は基本的に米国に隷属していれば①経済は繫栄、②軍事上の安全は保たれると思ってきた。今変化、①石破首相発言(国益冒してまで早期妥結は求めない)、②安全保障に関する世論調査-米国は本気で日本を守らないー。背景に自動車関税。日米主張継続。早期関税合意は不可能。
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