ウクライナ・ナチスの隠蔽は決して目新しいことではない。カナダ人はほぼ80年間そうしている。

イアン・プラウド
2025年4月29日
Strategic Culture Foundation
自国だったら決して容認しないはずの行為を欧米諸国政府は再び見て見ぬふりをしている。
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ウクライナ戦争を議論する上で依然タブー視されている話題が数多くある。「Busification(街頭での強制徴募)」や、ゼレンスキー大統領の民主的信任や、ウクライナ人死傷者数や、ウクライナが勝てないという主張は全てタブー視されている。ウクライナにおけるネオナチ疑惑問題も同様だ。
2022年にウクライナ戦争が始まって以来、最も恥ずかしい出来事の一つは、2023年にゼレンスキー大統領がカナダ下院を訪問した際、カナダ下院傍聴席でヤロスラフ・フンカが国会議員から二度、総立ちの拍手喝采を受けたことだ。フンカは、1944年2月28日に現在のウクライナ西部にある村で500人以上のポーランド系住民が殺害されたフタ・ピエニャツカ虐殺に関与したとされ、ジェノサイドの罪でロシアから告発されている。フンカは武装親衛隊のウクライナ人部隊、SSガリツィア師団隊員で、後にドイツとポーランドの委員会により戦争犯罪のかどで有罪判決を受けた。
これは衝撃的だった。なぜなら、開戦以来、西側主要メディアが、ほとんど沈黙してきた話題、つまりウクライナが現在直面している極右超国家主義の脅威という話題の蓋を開けたからだ。だが、フンカ事件は、第二次世界大戦後も、ウクライナにおけるナチスに関する議論を欧米当局が、いかに覆い隠してきたかをも示している。
1948年7月13日、外務・英連邦省(現在、外務・英連邦・開発省の一部)は、英連邦諸国政府に電報を送り、ドイツ内のイギリス占領地におけるナチス戦争犯罪裁判の終結を提案した。「戦争犯罪処罰は、全有罪人に報復を与えることより、むしろ将来世代の士気をくじくことの方が重要だ…今こそ過去を、できるだけ早急に清算する必要がある。」
1946年ニュルンベルク戦争裁判の終結後、欧米諸国はソ連という新たな敵に直面した。資金難に陥ったイギリスと、その植民地における限られた治安資源は、下級ナチス戦争犯罪者の特定や追跡ではなく、ソ連工作員や共産主義者容疑者の摘発に投入された。
この頃、多くのウクライナ人がソ連から逃れ、カナダに移住した。バルバロッサ作戦開始後の30年間で、カナダのウクライナ人人口は30万人から60万人近くへとほぼ倍増した。彼らのほとんどはナチス協力者ではなかっただろうが、中には確実にそうだった人々もいた。ラトビア人、ハンガリー人、スロバキア人なども、少数ながらカナダに入国した。
この移住者の中には、いわゆる「下級」戦争犯罪者も含まれていたはずだ。ユダヤ人やスラブ人やジプシーや同性愛者を死の収容所へ移送する計画を練り、密告者となり、殺人を犯し、あるいは死の部隊の他の階級や下士官として戦争犯罪に関与した連中だ。彼らは下級協力者で、ナチスが開始した大量虐殺の手先として行動した。
だが、イギリスの指示に従い、1950年から1962年の間に、カナダは移民政策を徐々に緩和し、ドイツのナチスやSSガリツィア師団などドイツ軍部隊の非ドイツ人隊員入国に対する制限を着実に撤廃していった。
だが、1984年にカナダ政府に宛てた書簡で、「死の天使」ヨーゼフ・メンゲレが1962年にカナダへの永住移民ビザを申請していた証拠を入手したとサイモン・ヴィーゼンタール・センターが主張した。これは誤りだと判明したが、カナダのユダヤ人社会の間で激しい怒りを引き起こし、1985年にカナダの戦争犯罪人に関する調査委員会が設立された。
デシェーヌ委員会として知られるこの委員会は、カナダに入国したとされ、更なる調査が必要な774人のリストを明らかにした。このリストのうち、本格的な調査と裁判を受けたのはわずか28人だった。
1942年にベラルーシでユダヤ人410人と非ユダヤ人のポーランド人80人を殺害したとして告発されたミハイル・パウロフスキは、ソ連での検察側の証拠収集を裁判官が阻止したため無罪となった。
ナチス寄りの極右聖職者ファシスト運動組織「フリンカ党」に所属していた当時、スロバキア出身のステファン・ライステッターは、3000人のユダヤ人を拉致し、ナチスの絶滅収容所に送致した容疑で起訴されたが裁判にはかけられなかった。彼の事件は、証人が死亡したため頓挫した。
エーリッヒ・トビアスはラトビアのユダヤ人の処刑に関与したとして告発されたが、裁判が始まる前に亡くなった。
1995年までに、戦争犯罪で有罪判決が下されなかったため、カナダ司法省は戦争犯罪課の人員を24人から11人に削減した。刑事訴追が行われなかったため、カナダ政府は戦争犯罪容疑者の市民権剥奪を求める民事訴訟を起こした。
ワシリー・ボグチンは、ドネツク州セリドヴォ市でナチス占領軍に協力し、ドイツにおける強制労働のための若者の強制連行に直接関与した。1998年2月、連邦裁判所第一審部のマケオン判事は、ボグチンが戦争犯罪への関与を隠蔽していたと判断したが、彼は身柄引き渡し前に死亡した。
民間人をアウシュビッツに送ったスロバキア部隊を指揮していたジョセフ・ネムシラは、市民権を剥奪しないという決定が覆された後、1997年に死亡したが、死により移送は阻止された。
容疑者の身柄引き渡し、または国外退去命令が出されたのはわずか7件だった。その中には、数千人のハンガリー系ユダヤ人の監禁とその後の絶滅収容所への移送に関与したとして告発されたラディスラウス・チシク=チャタリも含まれていた。1997年7月、裁判開始直前、彼は国籍喪失に反対せず、国から自発的に去った。
ウラジミール・カトリウクはベラルーシのハティン虐殺に関与したとして告発され、ワシル・オドニンスキーはトラヴニキとポニアカのSS労働収容所看守だった。彼らの国籍剥奪の動きもあったが、2007年に全ての裁判手続きが終了するまで、彼らはカナダに滞在することを許可された。
カナダにおける戦争犯罪容疑者訴追の進展は常に遅く、消極的な裁判官の足踏みや、ソ連での証拠収集の拒否により遅延することが多かった。
現在でもメディアやユダヤ人団体は、1985年のデシェーヌ委員会が検討した774人全員の名前を明らかにするようカナダ政府に圧力をかけているが、これまでのところほとんど成果は上がっていない。
最近、アメリカの学者が、700人にも及ぶ容疑者を記載したと思われる類似リストを発見した。その中には、SSガリツィア支部の組織化に尽力し、アルバータ大学で編纂されたウクライナ百科事典の編集長を務めたウクライナ人ナチス協力者ヴォロディミル・クビオヴィチが含まれていた。1943年7月、ウクライナのリヴィウで行われたパレードの写真には、SS幹部でガリツィアとクラクフの知事も務めたオットー・ヴェヒターと並んでクビオヴィチがナチス式敬礼をしている様子が写っている。
ヤロスラフ・フンカはそのリストに載っておらず、カナダで発見されなかったナチス協力者が一体何人いたのかという疑問が浮上している。
今日のウクライナがナチス社会だとは思わないし、スヴォボダ党は最盛期でさえ全国投票のわずか10%しか獲得していなかった。だが超国家主義は深刻な問題で、特にウクライナ西部、第二次世界大戦中、ガリツィアと呼ばれた地域で顕著だ。ウクライナにおける超国家主義の問題を西側諸国政府が認めず、声を上げようとしないのは、自国だったら決して我々が容認しないはずの行為に再び目をつぶっていることを意味している。
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/04/29/covering-up-ukrainian-nazis-nothing-new-canadians-have-been-doing-it-for-almost-eighty-years/
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植草一秀の『知られざる真実』
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