致命的な誤り:1997年にNATO首脳はジョージ・ケナンの言い分に耳を傾けるべきだった

イアン・プラウド
2025年4月18日
Strategic Culture Foundation
1997年「NATO拡大は冷戦後の全時代におけるアメリカ外交政策で最も致命的な誤りとなるだろう」と練達のアメリカ外交官ジョージ・ケナンが述べた。
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1997年「NATO拡大は冷戦後全時代におけるアメリカ外交政策の最も致命的な間違いになるだろう」と練達のアメリカ外交官ジョージ・ケナンは述べた。28年後、一体誰が彼の発言が間違っていたと言えるだろう?
1947年のニューヨーク・タイムズ記事で、ソ連封じ込め政策を提唱したことでジョージ・ケナンは有名だ。匿名性を保つため、記事にはXと署名していた。封じ込め政策はソ連の力の最終的崩壊、あるいは弱体化につながると彼は考えており、実際、前者の予測は現実のものとなった。
だがソ連崩壊後のNATO拡大に彼は反対し、欧州諸国にNATOとロシアのどちらかを選ぶよう求めることは最終的に紛争につながると主張した。
1997年2月5日のニューヨーク・タイムズ記事で、彼は次のように問いかけた。「冷戦終結によってあらゆる希望に満ちた可能性が生まれたにもかかわらず、東西関係は、空想的で全く予測不可能で、あり得ない将来の軍事紛争において、誰が誰と同盟を結び、暗黙のうちに誰と敵対するかという問題に集中しなければならないのは一体なぜだろう。」
彼の記事は、1997年7月にマドリードで開催されるNATO首脳会議に先立ち、チェコ共和国、ハンガリー、ポーランド、スロバキアを含むNATO拡大計画を検討する議論に影響を与えることを意図していた。これらの国々は第二次世界大戦後、ソ連の弾圧に苦しんだが、ワルシャワ条約機構解体後、自由で民主的な国家となった。
ケナンの警告は無視され、国民投票で必要票数を獲得できなかったスロバキアを除き、旧ワルシャワ条約機構加盟国四カ国中三カ国をNATOに加盟させることにNATO首脳会議は合意した。
1998年5月1日、アメリカ上院はNATO加盟国すべてに義務付けられている通り、拡大を承認する決議を可決した。上院決議後、当時のクリントン大統領はホワイトハウスで次のように述べた。「ポーランド、ハンガリー、チェコ共和国の加盟を認めることで、世代の夢であるヨーロッパ大陸における国民国家の台頭以来初めて統一され、民主的で安全なヨーロッパの実現に、我々はこれまで以上に近づくことになる。」
当時から現在まで受け継がれている考え方は、NATOは同じ民主主義の原則を持つ国々の軍事同盟で、暗黙のうちにロシアの軍事侵略に対する防壁として機能するというものだ。だが、ロシアが軍事力により西ヨーロッパを征服しようとしているという考え(これは今日でも政治やメディアの議論に散見される)を不合理だとケナンは考えていたようだ。
1998年5月2日、アメリカ上院決議の翌日のニューヨーク・タイムズに掲載された別記事で、ケナンは次のように述べた。「西ヨーロッパへの攻撃をロシアが待ちわびているという記述には特に不快感を覚えた。人々は理解していないのだろうか? 冷戦期における我々の違いは、ソビエト共産主義政権との相違点だった。そして今、我々は、あのソビエト政権を打倒するため、史上最大の無血革命を起こした、まさにその人々に背を向けようとしているのだ。」
1997年の論文で、更に、ロシアは「NATO拡大を軍事的な既成事実として受け入れるしか選択肢はない。だがそれを欧米諸国の拒絶とロシアは捉え続け、安全で希望に満ちた未来の保証を他の場所に求める可能性が高い」とケナンは述べている。
ロシアはNATO拡大を既成事実として受け入れたが、それは抵抗するには弱すぎたからでもある。1998年、ロシア連邦はソ連崩壊後、おそらく最低状態にあった。1998年8月17日、ロシアは国家債務不履行に陥り、ルーブルを切り下げた。目に見えて衰えていく健康状態の中、エリツィン大統領は国際舞台で益々弱体で不安定な印象を与えた。億万長者のオリガルヒ階級は、ローン・フォー・シェア・スキーム下で国有資産を買収し、私腹を肥やすためエリツィンの1996年の選挙勝利に資金提供し、ロシア政治で巨大な役割を築いていた。ロシアは政治的、経済的、軍事的に弱く、国内ではチェチェンでの多大な費用のかかる戦争に気をとられていた。ロシアの恐るべき力はソ連に全く匹敵せず、NATOへの脅威にもなり得なかった。実際、ロシアとNATOは、1999年のコソボ紛争を含め、試行錯誤的に、そして時には緊張しながらも、最終的に協力関係を結ぶことになった。
次の重大局面は2001年9月11日のニューヨークとワシントンDCでのテロ攻撃後だった。
プーチン大統領はブッシュ大統領に電話をかけ、大統領とアメリカ国民への哀悼の意を表し、ブッシュ大統領がどのような対応を取ろうと、断固たる支持を表明した最初の世界指導者の一人だった。これはアフガニスタンにおけるアメリカ軍事作戦へのロシアの具体的支援や、中央アジアにおける米軍基地設置の黙認など米ロ協力の時代へと急速に発展した。
カーネギー財団に寄稿した論文で「ロシアとアメリカの関係に新たな基盤を築く可能性は大きい」と現在最も声高な反ロシア強硬派の一人であるマイケル・マクフォールは述べた。「アメリカはもはやロシアをソ連の後継国として認めない」という宣言から始まる急進的政策を彼は推進した。実質的には、これはロシアがソ連のようにNATOにとって脅威となるという考えを否定することを意味した。
ロシアとNATOの協力強化と将来のロシア加盟の可能性をマクフォールは提案し、プーチン大統領はこれを検討する意向を示していた。またソ連時代の貿易制限の撤廃や、NATO諸国によるロシア製兵器の購入禁止解除やロシアとEUの関係緊密化の促進など他の措置も推奨していた。
だが、マクフォール記事から1週間後、新たな「対テロ戦争」への譲歩として、アメリカが世界各地での関与から離脱することに対し警鐘を鳴らす記事をブルッキングス研究所が掲載した。とりわけ「ロシアとの協力に対する新たな優遇措置は、ワシントンが弾道ミサイル迎撃条約(ABM)からの離脱、NATO拡大、チェチェンにおける人権擁護の訴えといった現在の政策計画を進めるのを困難にし、あるいはコスト増につながる可能性がある」と同研究所は指摘した。
米露協力の深化は、1998年以降加速を続けてきたNATO拡大という巨大な勢力と直ちに衝突した。他の旧ソ連またはワルシャワ条約機構加盟国9カ国は既にNATO加盟を控えており、ロシアとの関係を全面的に再構築すれば、拡大はより困難になっていたはずだ。2003年のアメリカのイラク侵攻に対するロシアの懸念や、プーチン大統領によるオリガルヒ弾圧に対する西側諸国の懸念を背景に、米露協力は勢いを失っていったが、NATOは関係を崩さず前進を続けた。2004年にはバルト諸国、ブルガリア、ルーマニア、スロバキア、スロベニアを含む7カ国が新たに軍事同盟に加盟し、NATOはロシア国境に大きく接近した。
1997年2月5日の記事で、NATO拡大は「ロシア世論の国家主義的、反西側的、軍国主義的傾向を刺激し、ロシアの民主主義の発展に悪影響を及ぼし、東西関係に冷戦の雰囲気を復活させ、ロシアの外交政策を明らかに我々の好みに合わない方向に導くことが予想される」とケナンは述べた。
10年後の2007年2月10日、ミュンヘン安全保障会議において、今や有名な演説をプーチン大統領が行った。その中で彼は「NATO拡大は、同盟自体の近代化やヨーロッパの安全保障と全く関係がないのは明らかだ。それどころか相互信頼を低下させる深刻な挑発行為だ。そして、我々には問う権利がある。この拡大は一体誰を狙っているのか?」
翌年2008年、NATOブカレスト首脳会議で、ジョージアとウクライナが将来NATOに加盟する構想が依然として提示された。首脳会議の一部に参加したプーチン大統領は、演説でNATO加盟を拒否することはできないと認めた。だが続けて「もしウクライナをNATOに加盟させれば、ウクライナを存亡の危機に陥れる可能性がある。ウクライナでは複雑な国内政治問題が起きている。我々は極めて慎重に行動しなければならない」と彼は述べた。
彼の意見は再び無視され、ジョージアとウクライナのNATO加盟構想が、今日我々が目にしている結果を伴って動き始めた。
だが、2013年に初めてロシアに注目し始めた時に私が認識した、ウクライナへのNATO拡大の核心的真実は、西側諸国がウクライナの加盟のために戦うと一度も約束していないことだ。これはまさに、ジョージ・ケナンが1998年の発言で認めた点だ。彼はこう述べている。「真剣に行動する資源も意志もないにもかかわらず、我々は多くの国々を守るため加盟したのだ。」
事実上NATO加盟から排除され、戦争遂行のための米軍展開も拒否され、欧米諸国からの財政支援が徐々に減少し、事実上破産状態にある今日のウクライナを見て、28年前のケナンは間違っていたと言えるだろうか?
ケナン発言が広く引用された1998年のニューヨーク・タイムズ記事では「1990年代後半のアメリカ外交政策を特徴づけていた想像力の完全な欠如について未来の歴史家たちは必ず言及するだろう」とも述べられている。2013年以降の西側諸国の外交政策を、歴史はより厳しく評価するだろう。
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/04/18/fateful-errors-why-nato-leaders-should-have-listened-to-george-kennan-in-1997/
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Judging Freedom 冒頭、ナチス打倒の功績は米軍にあるというトランプ妄言批判。
INTEL Roundtable w/ Johnson & McGovern : Weekly Wrap 2-May 31:15
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