新たな偽法廷が設置されつつある

スティーブン・カルガノビッチ
2025年5月14日
Strategic Culture Foundation
ウクライナ法廷は、自らに課せられた基本的任務を一切隠さず、むしろそれを誇示している。
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5月9日にモスクワでロシアが勝利を収めた翌日、カヤ・カラスは妄想的で滑稽なほどタイミングの悪い発表をした。ヨーロッパの傀儡指導者連中が、ウクライナでの「侵略」やその他の犯罪疑惑についてロシアを裁くため、欧州評議会の枠組み内に「特別法廷」を設立する計画だと。この発表は、ハーグでの出来事を彷彿とさせる。旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所(ICTY)はハーグに設置されており、カラスが言及した新法廷もハーグに設置される。人生で最も興味深い時期を、筆者はそこで過ごした。
セルビア・ユーゴスラビア両国元大統領スロボダン・ミロシェビッチの記憶は今も鮮明に残っている。彼は2000年10月のカラー革命後、母国に樹立された属国政権に拉致され、ハーグで裁判にかけられた。法廷に初めて出廷した際、判事たちとカルラ・デル・ポンテ検察官に、この裁判所をミロシェビッチは「偽法廷」と言った。
あの言葉が頭から離れない。ミロシェビッチの英語はまずまずだったが、完璧ではなかった。だからこそ、あの絵に描いたような言い回しが使われたのだ。もし彼がもっと英語に堪能だったら、この法廷を「偽物」あるいは「インチキ」と呼んだだろう。ところが、彼は言いたいことを母国語であるセルビア語から直接翻訳した。その結果、学術的に正確というより、むしろ滑稽なものだった。だが害はなかった。むしろ、あの状況下で、明らかに慣用的でない言い回しが、彼の深遠な主張を更に力強くした。
残念ながら、カヤ・カラスは計画中の法廷に関する技術的詳細を明らかにしていない。この構想の信頼性を適切に評価するには、これら詳細を明らかにする必要がある。このような「裁判所」が真剣に受け止められるようになるには、いくつか基準を確立する必要がある。
まず第一に、新たな司法機関の任務を明確に定義することだ。2022年2月以降のウクライナ紛争に起因する戦争犯罪および人道に対する罪を扱うというだけでは不十分だ。誰の犯罪が裁判所の捜査対象となり、最終的に裁かれるのだろう? この裁判所の設立をカラスが正当化する根拠は、この点で深刻な問題を提起する。彼女は「ロシアの犯罪」のみに言及しており、EU委員会のウルズラ・ファン・デン・ライエン委員長とEU法の支配委員のマイケル・マクグラスも同様見解を示している。審議中期間中、あるいはもう少し遡って2014年まで、ウクライナで犯罪を犯した者は他には確認されていないのだろううか? もしこの問題に関し、裁判所の客観性に直接影響を与える疑問が残っているなら、欧州委員会がウェブサイトに掲載した以下の説明により解決される。
「本法廷は、ウクライナに対する侵略犯罪に最も責任を負うロシアの政治・軍事指導者を捜査、起訴、裁く権限を持つことになる。」
カラスが代表する側は、法廷が扱う犯罪が生じたとされる軍事作戦を「全面戦争」と呼んでいる。これほど広範な紛争において、犯罪の実行と裁定を一方側のみに限定し、しかも法廷が活動を開始し適切な捜査が行われる前から、そのようなことを決めつけるのは、果たして信憑性があるだろうか。このよう姿勢は、法廷に関与する司法機関に対する国際社会の信頼と尊敬を勝ち得るだろうか。ここで言う「国際社会」とは、欧米諸国を中心とした比較的小さな集団ではなく、世界全体を指す。この包括的な意味での国際社会が、予定されている法廷の審理に対して、どんな反応を示すかは、ウクライナ法廷のスポンサーや設立者にとって重要な意味を持つはずだ。「正義は行われるだけでなく、行われていると見られることも必要だ」という格言がある。赤い法衣をまとい、厳しい表情の裁判官が繰り広げる、かつての司法の舞台は、もはや誰の心にも響かない。世界の様相は変わり、5月9日にモスクワで起きた出来事はその変容を鮮やかに映し出した。正義の体裁を軽視すれば、新法廷がプロパガンダの狙いを実現する能力は著しく損なわれ、結果として不発に終わるだろう。カヤ・カラスとお仲間連中は、このことを考えたことがあるのだろうか?常識的に考えれば、彼らの法廷は公平な判断を下すふりをするか、一切関与を控えるべきだろう。
この法廷が、上に述べた二つの行動方針のいずれかを取る可能性は低い。なぜなら、ハーグにある他の偽法廷と異なり、全員を欺く可能性がある司法の独立という見せかけさえ意図的に無視する形でこの法廷が設置されているためだ。これは紛争当事者の一方であるウクライナと欧州委員会間で締結された条約の産物で、更にウクライナは、少なくとも作戦初期段階では、法廷の業務遂行に必要な「証拠」を提供することになる。この取り決めは、1943年夏、ドイツの支援の下、カティンの犠牲者の遺体が掘り起こされた際に行われた取り決めと疑わしいほど似ている。捕虜となったポーランド将校の処刑責任を問うためゲッベルスが特別に設置した「国際委員会」に犯罪の現場証拠を提供したのは、ナチス・ドイツ当局だった。ゲッベルス委員会の結論は、予想通りのパターンを辿った。
興味深いことに、欧州委員会によるウクライナ法廷設立の線表には、推定される「侵略」開始から僅か数週間後の2022年3月に同プロジェクトは開始され「ウクライナで犯された中核的国際犯罪」を調査する任務を負っていると記されている。これほど複雑な事業の開始を正当化するほどの重大性や規模の犯罪が、これほど短期間で、一体どのように犯されたのかという疑問が湧くのは当然だ。答えは、同じEC文書の更に後の部分で示唆されている。「ブチャおよびウクライナの他の解放地域で犯された残虐行為の発覚を受け、ウクライナで犯された戦争犯罪および人道に対する罪の捜査と訴追を支援すると欧州委員会は誓った」。手の内をさらけ出したのではなかろうか?
これは1990年代初頭にボスニアでICTY(旧ユーゴスラビア国際法廷)設置の根拠を捏造するため導入されたパターンと全く同じだ。引用文で明確に認められている通り、ウクライナ法廷の前身は、2022年3月にロシア軍がブチャから撤退した直後画策された偽旗作戦に遡る。記憶力が確かな人なら思い出すだろうが、ICTY設立に用いられたプロパガンダも偽旗作戦だった。それは1992年5月、サラエボのヴァーシャ・ミスキン通りで実行されたが、ブチャ同様「高尚な」政治目的のため無辜の人々が冷酷に犠牲にされたのだ。
欺瞞に満ちた二つの「法廷」を結びつける、もう一つの非常に示唆的な類似点がある。ウクライナ法廷は自らに課せられた根本的任務を隠そうともせず、むしろそれを軽視している。証拠を検討する前にロシアを起訴することだ。この義務は、必然的に、将来の法廷判決を決定づける。ボスニア戦争中、同じ地政学主体が全く同じ行動をとっていた。疑わしい「諜報評価」がマデレーン・オルブライトの手に渡り、彼女は速やかにそれを国連で公表し、ICTY設置準備を整えた。この偽調査結果は、何の証拠も方法論的根拠もなしに、ボスニアにおける戦争犯罪の90%はセルビア人に犯され、他者が犯した可能性のあるものはごく僅かだと主張した。今回の場合同様、当時も指定犯人は事前に特定されていた。
2026年に予定されるウクライナ特別法廷の正式開設以前から、この法廷は悪名高い前例の模倣に過ぎず、実質的成果が期待できないのは既に明らかだ。もしウクライナ熱が頂点に達していた時期に開始されていたら、もしかしたら効果があったかもしれない。だがその後、ウクライナ疲れが広がり、一部主要支持者さえ離脱を表明しており、この無謀な試みの時期は最悪と言える。これは欠陥だらけで、ほとんど役に立たない元の前例の貧弱で効果のない模倣に過ぎない。
だが、かつて持っていた創造力が失われ、健全な判断力も、決して彼らが誇れない特質になってしまったコカイン中毒のヨーロッパ指導者連中にこれを言っても無意味だ。
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/05/14/new-false-tribunal-making/
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