ママエフ・クルガン(ママイの丘) ソビエト国民の英雄的行為への頌歌

エドゥアルド・バスコ 2025年5月10日
Strategic Culture Foundation
ナチス侵略により、この国で2,700万人の命が犠牲になったことを想起すれば、どうして心を動かさずにいられよう。
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2022年4月21日、私はヴォルゴグラードにいた。皆が仕事に駆け出す時間だったにもかかわらず、通りは閑散としていた。ヴォルガ川沿いを散歩した後、街の中心部にあるレーニン像を通り過ぎ、世界で最も美しい英雄的な行為と生命の尊厳を称える記念碑、ママエフ・クルガンが建つ丘にたどり着いた。
私は通常順路を逆にたどり、終点である丘の頂上から始めた。目の前に現れたのは、ほとんど非現実的なものだった。高さ85メートルの巨像だ。四半世紀近くにわたり世界最高の像だった。「祖国の呼び声」は、ギリシャ神話の勝利の女神ニケを象ったもので、ヴォルゴグラードのほぼどこからでも見える。この街は、まだ別の名前を持っていた頃から歴史に名を残し、大祖国戦争の真っ只中、史上最も血みどろで壮大な戦い、スターリングラード攻防戦の舞台となった。1942年7月から解放された1943年2月2日まで、スターリングラードは壮大な光景を目の当たりにし、特に11月以降、赤軍が反撃を開始してからは、その様相は一変した。瓦礫の中、ライフルを失ったソ連兵はナイフ、あるいは素手でドイツ軍を襲った。英雄的蛮行が、彼らに殉教者、半神という地位を与えた。ニケの息子たち。勝利の息子たち。
像の足元に辿り着く前から、人は自らの無力さを痛感させられる。母なる祖国のために、いや人類のために命を捧げた殉教者たちの姿に心を打たれ、その寛大さは女神そのものとして現れる。
天に触れるかのように掲げられ、男たちを神々と繋ぐ彼女の剣は、33メートルもある。剣を右腕に持ち、左腕は横に伸ばされている。そこには母であり祖国である女神の顔が向けられている。それは、神がキリストを召し出し、全人類を罪から贖うように命じたように、獰猛で恐れ知らずの女神は、子どもを殉教へと招いている。風が彼女のチュニカを体にぴったり押し付ける。裸足で左足を前に出し、彼女はナチスの蛮行から民を解放する行進を率いる。エミリア! 私がこれまで目にした中で最も素晴らしい奇跡。だが、私の手では決して触れることができないものだ。
彼女の足元からは街全体が見渡せ、前方にはヴォルガ川が流れている。丘を下りていくと、草の上にはあの戦争の英雄たちの墓石がいくつも並んでいる。身元不明の兵士3万5千人が、この聖なる丘に眠っている。この区画の終点には、高さ10メートルの彫刻が立っている。まるで母が息子の遺体を抱きしめているようだ。まるで、スターリングラード解放のために祖国に捧げられたイエスを、受難の後、マリアが抱きしめたように。
私たちは巨大なホールに入り、ドーム中央に置かれた高さ8メートルの「無名戦士の永遠の炎」が手で掲げられ、静止した兵士たちがそれを守っている。床は大理石で、ブロンズの壁には街を守るために倒れた100万人の兵士と将校一人ひとりの名前が刻まれたタペストリーが飾られている。ドームの天井には英雄たちの勲章と、それを囲む聖ゲオルギオスのリボンが飾られている。私たちはスロープを下り、ドームの内側から一周する。背景には、賛美歌のような静寂な歌声が響き渡り、訪れる人々に、ここが真に神聖な場所、どんな寺院よりも神聖な場所に立っていることを確信させる。
ナチス侵略により、この国では2700万人の命が犠牲になったことを思い出せば、心が動かされないはずがない。子ども、女性、老人、家族全員が。私は涙を流した。世代の抹消。ホロコーストさえ子どもの遊びのように思わせるジェノサイド。だが、なぜこのジェノサイドは語られないのだろう。それは、ホロコーストが第二次世界大戦が帝国主義間戦争であった事実(つまり、アメリカやイギリスも、イスラエル国家の犯罪と同様犯罪者だった)を隠すための煙幕として機能する一方、ロシアは共産主義の国で、帝国主義は共産主義者を犠牲者、ましてや自分たちによる犠牲者として描くことは決してできないためだ。それだけでなく、ロシアは常に征服の対象で、従って決して犠牲者として描かれるべきはなく、可能な限り常に加害者として描かれるべきなのだ。ここで起きたことは、想像を絶する苦しみであり、まさに伝説的規模の克服物語だった。疑いの余地はない。もしこの世界に平和を切望する民族がいるとすれば、それはロシア人だ。史上最悪の犯罪者に屈服することを拒否したため、彼らは打ちのめされ、罰せられた。今日に至るまで、全てのロシア人がその大きなトラウマの傷跡を心に抱えている。
清らかな気持ちでドームから出ると、すぐ下、数段下がった所に英雄広場がある。そこには、あの戦争で戦った様々な集団の兵士たちを象った6体の彫像が並んでいる。続く階段の両脇の壁は、実はドイツ軍の爆撃で破壊された建物の廃墟から彫られたモザイク画で、兵士たちが手榴弾を投げつけ、旗や剣を掲げ、ライフルを手に行進している。突き当たりには、上半身裸の兵士の像が立っている。祖国のように勇ましく、片手にライフルを、もう一方に手榴弾を持ち、地平線を見つめ、今にも戦いに身を投じようと構えている。
複合施設最後の階段(というか一番下の最初の階段)には次のような碑文がある。
「 ЗА НАШУ СОВЕТСКУЮ РОДИНУ! СССР!」
(わが祖国ソビエト連邦のために!)
その先には、ソ連の各英雄都市を称える像や銘板が更に並んでいる。階段は全部で200段あり、スターリングラード攻防戦の200日間を表している。
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/05/10/mamayev-kurgan-ode-heroism-of-soviet-people/
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文中「背景には、賛美歌のような静寂な歌声が響き渡り」とある曲はシューマンのトロイメライ。
植草一秀の『知られざる真実』
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■はじめに~カシミールをめぐるインドとパキスタンの武力衝突を米トランプ政権が仲介して「完全かつ即時の停戦に合意」! ところが、数時間後には、パキスタンがインド領内を大規模ドローン攻撃! パキスタン軍部の暴走か!? ルビオ米国務長官が発表した「中立的な場所での、幅広い問題に関する協議の開始」をインド政府は否定!! パキスタンの後ろ盾はインドとも対立する中国、インド最大の武器供給国はロシア! 3つの大国も絡んだ核保有国同士の対立は予断を許さず!
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■【中継番組表】
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