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2025年4月20日 (日)

イランおよび大中東との戦争の踏み台– ディエゴガルシア島!

Henry Kamens
2025年4月7日
New Eastern Outlook

 ここ数日、英領インド洋地域にある戦略的米軍基地、ディエゴガルシア島に、アメリカはB-2スピリット・ステルス爆撃機を配備している。この不吉な展開は、3月20日にトランプ大統領がイランに出した最後通牒、つまり「交渉しなければ爆撃する」という通告とほぼ確実に関係している。

 イランおよび大中東との戦争への踏み台–ディエゴガルシア島!


 言うまでもなく、イランの反応はそれほど熱心ではなく、イランは圧力や戦争の脅しの下での直接交渉を拒否したが、おそらくオマーンを介した間接交渉の可能性は残している。さらに深刻だったのは、最高指導者アリ・ハメネイの反応で、彼は次のように述べた。  
「アメリカ人は、イスラム共和国と対峙する上で、脅しは何の役にも立たないことを知っておくべきだ」と、金曜日にテヘランで行われた全国放送演説で彼は述べた。「イラン国民に対して悪事を働く者は、厳しい罰を受けることになる」
 イスラエルは絶望から何でもできる。パレスチナ人虐殺で非難されている時に現政権を維持するためだ。

 一方、イラン国会議長モハメド・バゲル・カリバフはより率直に更にこう述べた。  
「もし彼らがイスラム教イランを脅かせば、この地域のアメリカ同盟諸国と米軍基地は火薬庫のように安全でなくなるだろう」
 問題はそこにある。イランは中東全域の米軍基地を容易に攻撃できる。米軍基地はサウジアラビア、オマーン、UAE、ヨルダン、シリア、イラク、トルコの空軍、海軍、陸軍基地から構成される。効果的な防空システムがひどく不足していること、主にアメリカの攻撃的航空力重視と技術的ノウハウの欠如を考えると、これらの基地はイランの弾道ミサイルや巡航ミサイル、更にはイラン無人機の攻撃に対して極めて脆弱だ。

 だがディエゴガルシアではない

 イランが保有する最長距離弾道ミサイルの射程距離は約1,242マイル(2,000キロ)と推定されている。インド洋の島とイラン間の最短距離は約2,358マイル(3,795キロ)だ。

 現在、B-2ステルス爆撃機は3機に増強されているが、本来は4機になるはずだったが、1機、原因不明のためハワイのヒッカム空軍基地に緊急着陸しなければならなかった。これはアメリカの最新鋭爆撃機部隊の約20%を占めており、中国に「メッセージを送る」はずだったオーストラリアへの同様配備と似ており、深刻な脅威になっている。

 さらに懸念されるのは、この基地の歴史だ。この基地は、1990年から91年にかけての第一次湾岸戦争中、B-52爆撃任務に使用され、また2001年にはアフガニスタン、2003年にはイラクに対するB-52とB-2の攻撃にも使用された。現在の行き詰まりにおける双方の厳しい言説を考えると、これは良い兆ではない。

 そもそもアメリカが一体なぜこのような基地を持つに至ったのかということも同様に不吉なことだ。答えは単純で、アメリカの冷酷さに支えられたイギリス植民地支配だ。

 チャゴス諸島の最南端の島、ディエゴガルシア島は、16世紀初頭にポルトガル人に発見され、モーリシャスの一部として統治された。1965年、イギリスは強制購入によりこの島と他の島々を切り離し、イギリス領インド洋地域を創設した。長い間辺境地であったこの島は、アメリカがインド洋に基地を置きたいと考えた時に、戦略的に重要な位置を占めるようになり、イギリスは海外公務員(旧イギリス植民地サービス)を通じて支援し、1968年から1973年にかけて島の住民を強制的に移住させた。

 この「強制的人口削減」は、数々の卑劣な、あるいは全く邪悪な手段により実行された。チャゴス諸島の人々は、インド、マレー、アフリカの混血で、18世紀以降に島に連れてこられたプランテーション労働者の子孫だ。

 島民を追放する際、イギリスが用いた手法は、休暇や治療のために島を離れた人々の帰還を禁じ、食料、水、医療を制限し、更に彼らの飼い犬を殺すなど、かなり残酷なものだった。1973年までに、残っていた住民は強制的に集められ国外追放された。セイシェルでは、彼らは囚人のように扱われ、グアノの積み荷を持って移動するよう強制された。後に多くの人が自殺し、彼らの共同体はモーリシャス、セイシェルやイギリスに意図的に分散された。

 事実上、それはジェノサイド寸前の民族浄化の教科書的事例だった。<br/>
 その後、島民は帰還の権利を得るため長い法廷闘争を繰り広げたが、状況は疑わしい判決と司法の歪曲に満ちていた。

 暗い歴史を持つ基地

 皮肉なことに、アメリカは、この基地の暗い歴史にもかかわらず、この基地を「不沈空母」とみなしてイラン攻撃に利用することを計画している。これは第二次世界大戦中にイギリスが自国の基地を「沈まない空母」とみなしたのとよく似ている。B-2は恐るべき兵器だが、本当に無敵なのだろうか。1991年の湾岸戦争後、F-117ナイトホークについても同様の主張がなされた。

 1999年にセルビア軍がF-117を1機撃墜し、最近明らかになったように2機目を修理不能なほど損傷させたことで、爆撃の不可視性が無残に打ち砕かれたのを忘れてはならない。また、セルビアの防空システムがB-2に損傷を与えたという長年の主張もあるが、言うまでもなくアメリカは、これを否定している。最も興味深いのは、セルビアがF-117を一機撃墜し、もう1機に損傷を与えたのが、1961年に導入された旧式のS-125ネヴァ/ペチョラ地対空ミサイル(SAM)(NATO報告名SA-3ゴア)だったことだ。

 これをイランが使用している遙かに先進的な兵器、すなわちロシアのS-200(SA-5)やS-300(Buk)システムなどのロシア製および国産SAM兵器、新型のアルマン弾道ミサイル迎撃ミサイル(ABM)、最大230kmの距離から標的を攻撃できるバヴァル-373およびサイヤド-2長距離ミサイル、更に中距離、短距離、携帯式兵器と比較願いたい。ロシアと同様、イランは、半世紀前のベトナム以来アメリカが直面してきたものより遙かに優れ、遙かに手ごわい多層防空システムを運用している。

 これらの防衛は、アメリカ製と国内で開発された機体を組み合わせた装備を持つ空軍に完されており、中で最も強力なのはイラン・イラク戦争で大きな効果を発揮したF-14Aで、他にMig-29、F-4DおよびEファントム、F-5Eタイガーと国内で開発された改良型、強力なSu-24およびSu-25攻撃機、そして言うまでもなくイランの膨大な通常弾道ミサイル、巡航ミサイル、ドローンがある。

 特に弾道ミサイルは、イスラエルに対する最近の報復攻撃で効果を発揮し、イスラエルとアメリカのABM防衛網を容易に突破し、ネバティムとテルノフ空軍基地を攻撃した。もちろん、アメリカとイスラエルは「航空機は破壊されなかった」と主張し、この成功を軽視したが、格納庫への攻撃を考えると、これはウクライナの損失宣言と同じくらい信じがたいように思える。

 結局、イランへのいかなる攻撃も「一度きり」の攻撃ではない。アメリカには、イラン国内で報復の可能性がある全ての軍事標的を一挙に攻撃する能力はなく、イランは航空戦力によるいかなる攻撃も非常に高額な費用で実行できる能力があり、F-35やB-2のようなアメリカの驚異的兵器さえ脅かすことになる。

 またイランは、報復能力も十分すぎるほど持っている。この地域の多数の米軍基地は、イランのミサイルやドローン攻撃に非常にさらされている。米空母も同様で、イスラエルの標的は言うまでもない。既にイランは、自国の弾道ミサイルは完全警戒態勢にあり、攻撃があった場合、使用すると警告している。イランはハッタリを言っているわけではなく、米軍だけでなく、この地域で米軍基地があるどの国も攻撃する能力は十分ある。どの国も、イランのミサイル兵器に対抗できる防御力を持っていない。

 ホルムズ海峡

 ホルムズ海峡は、アメリカとイスラエルがイランを攻撃する上で大きなリスクとなる。機雷、高速攻撃艇、潜水艦、ミサイル、航空戦力を使って、イランはこの重要な石油ルートを封鎖できる。西側諸国のアナリストは脅威を軽視しているが、紅海でのフーシ派封鎖は、混乱だけで貿易が麻痺する可能性があることを証明している。イランは船を沈める必要はない。脅すだけで保険料が上がり、輸送が妨げられ、石油価格が急騰する。これは湾岸同盟国を経済的に孤立させ、アメリカとEUの経済に深刻な打撃を与えるだろう。

 トランプ大統領がイランを交渉に追い込むためにブラフをかけていると考える人もいるが、もしそうだとすれば彼は誤算している。核合意は既に存在しており、イランはそのような兵器はイスラム教に反すると繰り返し主張している。

 それは、濃縮制限と定期的査察と引き換えに、イランの平和的核技術の権利と制裁緩和を保証した包括的共同行動計画(JCPOA)だった。トランプ大統領は2018年にアメリカをJCPOAから恣意的に離脱させ、イランに制裁を再発動した。

 おそらくこれが、イランがアメリカとの直接交渉を拒否した理由だが、一体誰が彼らを責められるだろう? また彼らは、アメリカがイランを爆撃する可能性は低いことも認識している。これがアメリカ経済の終焉につながるとトランプはが理解しているためだ。しかし、イスラエルは、パレスチナ人の大量虐殺で非難されている現政権を維持するために、必死に何でもしかねない可能性がある。

 Henry Kamensは、コラムニスト、中央アジアとコーカサスの専門家

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/04/07/diego-garcia-springboard-for-war-with-iran-and-the-greater-middle-east/

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コメント

               ディエゴガルシア島で思い出したこと

  約40年前,ポルトガルに一度旅したことがある。ポルトーではワインの倉庫を訪ねたが観光客にスライドをみせる醸造所では幻灯機がうまく作動しないので「直してくれ」と頼まれて,やったこともないのにその機械をいじってみたら運よく直った。直ったのでそのお礼に十年物のワインをご馳走になった。普通の観光客には2年ものしか出さないそうなので,その恩恵に浴したことをよく覚えている。
  その後,再びポルトガルの文化に出会った。インドのゴアに故フランシスコ・ザビエルを訪ねた。聞けばマラッカ海峡防衛論で有名なマラッカ市にもザビエルの遺骨があるそうで驚いたことがある。マレーシアの民族舞踊はポルトガルの影響を強く受けており,大航海時代にポルトガルやオランダ,イギリスなどが世界各地を植民地化していったことを実感した。”Malay Origin. Melayu dari mana?(マレー人はどこから?)”というYoutube映像は人類の『出アフリカ』から南東アジアまでいかにして人類が到達したかを簡潔に説明していて大いに参考になる。それによれば南東アジアにまで到達した人類の一部がマダガスカル島へ移動していって現地人と混淆して現在のマダガスカル人となったという(BC350-AD550)。その海路の途中でディエゴガルシア島にも上陸したと推測できるが,そういう証拠はないので小生の仮説は現在のところ棄却される。
軍事基地としてディエゴ・ガルシア島を知ったのは以前の記事(題名失念)だったと思うが,英軍が島民を追い出した後,アメリカ軍に貸した。したがって問題解決のためにガルシア島民は誰に訴えればいいのか困ったはずである。英国によるパレスティナに対する3枚舌を思い出させるが,英国は邪悪にもここでもあいまい戦略をとっている。ここからブチャの大虐殺やノルド・ストリーム天然ガスパイプラインⅠ・Ⅱ爆破まで遠くはない。遠くないので誰が爆破したのかを考えたとき犯人は,伝説のセイモア・ハ-シュ記者の主張されるアメリカではなくて英国である。英国の特殊部隊が米軍の助けを借りてNord・StreamⅠ・Ⅱを爆破したと小生は考えている。つまりDNAと同様に方法・手段も遺伝する。

ノー政:
  ところで四月もいよいよ残すところ僅かになったが,資料を整理していたら故加藤周一の『夕陽妄語』(朝日新聞社)の「四月の夢」が目に留まった。トランプ関税は「四月一日の馬鹿」日を避けて四月二日から全世界に向けて発動された。わが日本からは赤沢大臣がワシントンのトランプ大統領を訪ねて交渉に臨んだようだ。農産物輸入の拡大が日本に要求されたようだが全貌は分からない。しかも日本では米不足が報じられている一方で米価の高騰が国民の生活を苦しくしている。日本にはまともな農政がない(ノー政)とも言われているが,米国からコメを輸入するなら訪日客に米国産米コメを食べさせ,日本人には日本産のコメを食べさせるのが良いのではないのかといった意見も聞く。外米の残留農薬が心配であるが,小生などは米国からの輸入と聞くと狂牛病にかかった牛肉を思い出す。『四月の夢』で加藤周一も「いや,たしかに好まないのは,牛海綿状脳症(BSE)の疑いのある牛の肉では」などと米国産牛肉の危険性を指摘している(2005.4.21)。脳症とは医者らしい表現であり小生ら凡人には思いもつかない表現であるとしても,脳症の問題はいつの間にか消えた。どこに消えたのかしら。米国産牛肉は安全なのであろうか。コロナ・ワクチン同様,安全性議論が結論を得る前に日本の外交問題からも消えた。またアメリカからのガイアツによって食品には添加物が制限なく認可され,日本の軍事予算はGNP1%以内から5年間で43兆円に膨らませられた。なし崩し的に日本は破壊されつつある。
  WHOから脱退したアメリカ。食品の安全性の見直しに力を入れているJFKjr長官がいるが,近いうちにElon Musk氏が日本に来るらしい。もし会えたらOsprey部隊を日本から引きあげ,辺野古基地建設を中止するよう訴えたいと考えている。もちろん会って話をする機会はほとんどゼロに近いだろう。しかしTweet上のX投稿によれば,Elon氏は日本人から生の声を聴きたがっている。

MH370民間航空機失踪事件
  2014年3月8日だったと思うが,マレーシア民間航空機MH370が南シナ海上から消えた。その機はインド洋上に墜落したとされたがその証拠はほとんどなく,一部のドアがある島に流れ着いただけである。しかし300人近い乗客の手荷物が一切発見されていない。時の首相マハティール首相などは米国が関係していると疑っていた。或る説ではそのMH370はドローン機であった可能性が高いという。それは9.11にビルに突っ込んだ飛行機同様ドローン同様,遠隔操作されていた可能性が高いが,タイ沖ではタイ軍と米軍の合同軍事演習が行われていたのでMH370がレーダーに映らないはずがないという疑問も出ていた。
  しかしインド洋の目撃者複数から,南シナ海方面からの飛行機がスリランカで機体の塗装が新たになされ,デイエゴ・ガルシア島経由でオランダ方面に向かったのではないのかという,ありそうもない本当のような,嘘のような話が流れた。そしてそれが同年7月のMH17撃墜事件に繋がったという説も出て来た。つまり機体MH370がMH17にすり替えられた(スリランカでは当時統一政権はなく紛争状態であったからマレー機MHにそれほど注意は払われていなかった,と推測できる)。
 
おわりに
  日本の自衛隊の10名が昨年,ウクライナ軍と共に共同軍事演習をしていたことが公にされたが,国民の知らぬ間に何でもありありの,無法地帯の日本に成り下がった。イラク戦争の折,デイエゴ・ガルシア島の米軍にも燃料を供給していたものと疑う。否,これは完全に米軍に燃料補給をしていたと言っても問題ないだろう。誰からも絶縁された南の島で自衛隊は何をやってもバレない。今もし,加藤周一が生き返ったら憲法無視の日本をどのように表現するのであろうか。生き返ってもらい一度尋ねてみたい。どなたか手伝ってください。

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